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変形性関節症・具体的な治療

「どうして関節症の治療が必要なのか」という点について繰り返します。「痛いから」これを取り除いて愛犬の生活の質を向上させるのは第一義的なことなのですが、この治療は介護する側のご家族の生活の質を悪化させないためでもあります。犬にはいつまでも自立していてもらい、介護いらずの健康寿命を延ばすことが目標です。

そして変形性関節症は飼い主さんの認識が最も重要です。「動物が関節症のために痛がっている」ことをまずわかってもらうことから始まります。

変形性関節症の治療は総合的に組み合わせたマルチモーダルな治療法が最も効果的な治療です。体重管理、生活環境の改善、運動療法は重要な治療の要となるものです。サプリメントや疼痛管理の薬は病院からの処方を与えれば良いだけですが、これだけではいけません。どれか一つ二つを治療法として選択するのではなく、すべてを実践していただくと治療がうまく進みます。

変形性関節症の総合治療、具体的な方法についてお話ししていきます。

  

<1・痛みの管理>

さて、関節に異常を示す行動を犬が示し始めたときにはすでに痛みがあります。治療の中心はまさしく、その痛みを和らげることです。

非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)が現在の関節症による痛みのコントロールの主流になっています。投薬により痛みは徐々に引いていきます。たいていは14日の投与で明らかな鎮痛効果を実感できると思います。(14日で終了という意味ではありません。)NSAIDsには消化器系に対する副作用(嘔吐や食欲不振、下痢など)もあるため、痛みを鎮めることができる最小用量にしたり、時々休薬する日を設けたり、肝臓や腎臓のチェックのための血液検査を織り込んだりして、安全で効果のある方法を取りながら継続投与していきます。お薬がなくても十分痛みが緩和され、その他の治療でコントロールが可能になることもあります。消化管粘膜を保護する薬を同時に投与する必要がある場合もあります。「痛み止めと胃薬」の組み合わせについては私たちの方が良く経験する投薬セットですが、それと同じです。

(変形性脊椎症などの神経にも関わる疾患では発生したフリーラジカル(活性酸素)が二次的に損傷を起こさせるため、鎮痛薬のほかにビタミンB製剤を処方しています。)

症状は見られないけれども、たまたまX線検査で撮影した部分に異常な関節も一緒に映し出されていたため、関節症が発覚したというとき、どこかで痛みのサインを見逃している可能性も有り、この時も治療の開始をおすすめします。

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こちらの閲覧用ファイルは
高齢犬の生活を援助する内容で過去のものですが
今回も出しておきました。
 

<2・体重管理>

栄養は犬の変形性関節症を予防し、管理するための重要な一手段です。

体重過多は関節や関節軟骨に過剰な力がかかり、変形性関節症を引き起こす原因にもなり、また悪化させる一要因にもなります。脂肪組織そのものも炎症を誘発します。体重管理は非常に重要です。過体重であれば体重を減らしましょう。このとき、やみくもに減量すれば良いわけではなく、筋肉量を減らさずに脂肪だけを落とすのがポイントです。若いときのように「動いて痩せる」ことができませんから「食事で痩せる」ことになります。処方食で空腹感なく必要な栄養素をきっちりと摂取しながらカロリー制限していきます。関節のための特別な処方食もあります。自己流を試すのではなくぜひ処方食に頼った減量法を実施してください。さらに燃焼系のサプリメントを同時に使うこともできます。

過体重ではない場合も、関節症の痛みのために不活動になると体重増加につながる可能性があります。ボディコンディションスコア(BCS)やマッスルコンディションスコア(MCS)を病院で確認し、維持できるようにすることが大切です。

太りすぎから肥満の犬と変形性関節症の関係については研究があり、同じ食事を与えられた犬の長期研究では、25%少ない量を与えられた犬は最適体重を維持していて、変形性関節症の発症リスクが低く、臨床徴候の発症も遅く、重症度も低いという結果が出ています。また別の研究では、肥満から体重減少した犬では、体重が6%以上軽減されると運動性の改善が見られることが示されています。「ふつう」から「やや細め」に該当するBCS4/95/9)が関節症のための適切な体重になります。

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今回作ったファイルはこちらです。
ブログと同じ内容で、もっとも詳しく
書いています。
 

<3・必須脂肪酸>

変形性関節症では関節部に炎症が起こっているため、抗炎症作用のあるサプリメントが薦められます。栄養成分としての具体的なものはオメガ3脂肪酸です。リノレイン酸に代表されるn-6脂肪酸由来のエイコサノイドは血管作用性と炎症誘発性といった作用があります。代謝されてプロスタグランジンなどの炎症を発症させる物質を産生するのです。一方リノール酸に代表されるオメガ3脂肪酸の代謝では組織の炎症は解消されます。

オメガ3脂肪酸と関節疾患の関係は、実験的に作られた関節障害も含めて多数ありますが、報告された研究はどれも効果があり有益という結果です。

腎泌尿器と栄養学の博士であるDr.バージェスはこのサプリメントが「しばしば過少投与されている」と言っています。体重1kgあたりEPADHAの合計は最大175mgが推奨用量で、最初から高用量で与えると下痢をすることがあるため、60~90mgからスタートし徐々に増量するのが好ましいとのことです。

市販されているものは多数あり、一目で良質なものであるかどうかを判断するのは困難です。信頼できるサプリメントをご紹介しています。

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要点をまとめた掲示板です。 

<4・軟骨構成成分>

関節症の時に使うサプリメントとしては、軟骨保護作用の得られるものもおすすめです。軟骨の損傷はあっても、まだ線維軟骨が発達する前段階であるものであればことに有用です。軟骨関節とヒアルロン酸の合成にプラスの効果があります。また、変形性関節症にかかりやすい犬に予防的に使用した場合も有益な効果が得られています。よく知られているのはグルコサミンとコンドロイチン硫酸です。どちらも栄養補助食品の位置づけです。多硫酸化グルコサミノグリカンは米国食品医薬品局(FDA)の承認もある薬剤です。グリコサミノグリカンは関節軟骨の主要成分で、グルコサミンはその前駆体(代謝されてグリコサミノグリカンになる)です。グルコサミンの補充は軟骨の再構築に役立つ可能性があります。残念ながらこれらの成分と関節症に関する研究では、臨床的な有益性の証拠は弱いという結論が出ています。人の整形外科学会の関節炎の診療ガイドラインでもこれら2つの軟骨保護目的使用は推奨されていません。ただし、症状の緩和目的としての使用には一定の理解が得られているそうです。

近年、緑イ貝はグリコサミノグリカンの豊富な供給源として注目の食品です。関節軟骨の補修効果というよりは抗炎症効果によるものと考えられています。臨床的な改善に対する決定的な関係が報告されているわけではありません。

カルトロフェンベットは注射タイプのポリ硫酸化グリコサミノグリカン製剤です。関節の滑液のレベルをあげて、軟骨がすり減らないようにして、関節軟骨を健康に保つのに役立ちます。高齢犬と、変形性関節症の初期段階で来院した場合に最も有効です。軟骨は失われると再生されないため、永久に失われたままになってしまいます。失われる前に補う治療法です。この注射は関節の手術を受けた犬にも有効です。1週間間隔で4回、その後半年に1回の割合で注射していきます。

 

    
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犬の痛みチェック・総合的な治療

 歩けなくなってから介護するのではなく、いつまでも歩いてもらうこと、すなわち健康寿命を延ばすことを目標にお話ししています。ロコモティブシンドロームの入り口になる変形性関節症は、意外と知られていない「かくれ関節症」が多いお話をしました。今回は「それって、関節症の痛みのサインだったんだ!」という、まずは気づいていただくところからお話しを始めます。

 

<犬の痛みチェックシート>

「かくれ関節症」が多いということは、犬は気づいてもらっていない痛みをじっと我慢して暮らしているということになります。それはいけません。どうか犬の痛みに気づいてあげてください。まずは気づいてもらうことから始まります。

「犬の慢性疼痛」に関しては、「動物のいたみ研究会」が作っているチェックシートがあります。当てはまるものはありませんか。

1)散歩に行きたがらなくなった。散歩に行っても走らなくなり、ゆっくりと歩くようになった。

2)階段や段差の上り下りを嫌がるようになったり、その際の動作がゆっくりになった。

3)家の中や外であまり動かなくなった。

4)ソファー、イス、ベッドなどの高いところへの上り下りをしなくなった。

5)立ち上がるのが辛そうに見える。

6)元気がなくなったように見える。

7)飼い主やほかの犬と、またはおもちゃなどで遊びたがらなくなった。

8)尻尾を下げていることが多くなった。

9)足を引きずったり、ケンケンしながら歩く。または足を全く着地せずに挙げながら歩く。

10)     寝ている時間が長くなった。または短くなった。

いかがでしょうか。「この中であてはまるものが〇つ以上あったら関節症です」じゃなくて、「一つでも当てはまるものがあれば関節症の疑い有り」です。

このほかのわかりやすい症状に、次のようなものもあります。

・歩き方がぎこちない。ロボットみたい。飛び跳ねるようなぴょんぴょん歩きをする。

・寝ていて立ち上がるときに時間がかかる。よっこらしょ!というかんじ。

・関節部分が腫れている。関節を触ると骨張った部分が大きくなっているように感じる。

・自分から動いて遊ぶことをしない。ボールを追いかけない。

・同じ姿勢をずっとしていない。落ち着きがない。

・排便や排尿の姿勢が変わった。片足をあげることができない。排泄中によろける。

・手足の同じ部分を舐め続けている。

・しばらく立っていると後ろ足が小刻みに震える。

・触られるのを嫌う。手を出すと不機嫌になって威嚇してくる。

このような変化が認められた場合は慢性の痛みで苦しんでいる可能性があります。ぜひとも診察にいらしてください。

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こんな症状はありませんか。


 
<運動器疾患の診察は?>

「うちの子、関節症かも」ということで来院された場合、ご家庭でどんな生活をしていて、これまでとどのような変化があるのかということをお伺いします。思い当たる節や気になることなどのメモを持ってきてくださると診察当日の言い忘れや伝えそびれがないため多くの情報をもらうことができるので私達にはわかりやすいです。うまく言葉にすることができない行動もありますが、そのようなときにも気になる動きを動画に撮って来てくださるとさらにわかりやすく、ありがたいです。

診察室内または外の駐車場で歩く姿勢(可能ならば走ったりもしてもらいます)、立っているときの姿勢、座っているときの姿勢などを見せてもらいます。診察台の上では筋肉や関節部分を触らせてもらいます。筋肉量の衰えはないのか、太ももは右と左で差がないか、関節を動かしたときにごりごりする音が伝わってこないか、十分な角度まで関節を動かすことができるのかなどをチェックしていきます。

ここで大きな異常が見つかるとX線検査です。

関節症の診察は問診と身体検査が中心になります。その他の病気や投薬に際して必要になる場合は血液検査を実施します。


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お手にとって見やすい
閲覧用も作りました。
掲示板の下に下げておきます。
 

<関節症の治療>

「変形性関節症」が確認されたら治療を開始します。治療の目的は痛みを抑え、関節機能を維持する(進行を抑える)ことです。筋力を高め、関節の動く範囲をできるだけ広げ、今の生活の質を改善しつつ、将来的な関節の(今以上の)変性を防ぐことが望まれます。すり減った関節軟骨を増やすとか、変形した関節を元に戻すといった原因に直結する治療法は現在のところないので、痛みを緩和する治療と代替療法を組み合わせた複合的な治療を行ないます。(マルチモーダルアプローチといいます。)

ボート競技のエイトを想像してもらうといいと思いますが、オールの一つ一つが治療法になります。すべてが噛み合わさってうまくいくとボートが正しい方向に向かって移動していきます。同じように、それぞれの治療が連携すると関節症の治療も思い通りの目的に向かって成功します。オールは一つだけだとがんばって漕いでもなかなか前には進まないことをご想像ください。

主な治療法は次の通りです。

    痛みの管理~消炎鎮痛薬NSAIDsほかの薬剤

    体重管理~栄養学的なカロリー管理

    必須脂肪酸~サプリメント

    関節構成成分~サプリメント

    環境改善~家の改造

    リハビリテーション~運動療法

病院ではお薬を処方したり、おすすめのサプリメントを紹介したり、おすすめのリハビリテーションをお示ししたりするくらいです。投薬をはじめ、ほとんどの治療はご家庭で行なっていただくことになります。是非とも愛情を持って、飽きずに、諦めずに行なってください。



続きは来週に。

 


 

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犬のロコモティブシンドローム・関節の構造


いつまでも元気で歩けるように、

犬のロコモティブシンドロームについてお話しします。冷え込みが強くなると痛みを伴う運動器の病気で犬猫の来院が増えてきます。今日は犬のロコモティブシンドロームについてお話しします。

初回はロコモティブシンドロームの解説と関節の構造について。

 

<ロコモティブシンドローム?>

「ロコモティブシンドローム」という言葉をご存知でしょうか。これは日本整形外科学会によって2007年に提唱された人の方の概念です。別名「運動器症候群」で、略して「ロコモ」と呼ばれることもあります。運動器というのは、身体を動かすために関わる組織全体のことで、骨、筋肉、関節、靱帯(じんたい)、腱(けん)、神経などから構成されています。ロコモティブシンドロームは運動器の障害や衰えによって歩行困難から要介護になるリスクが高まる状態を言います。

人でロコモティブシンドロームの原因疾患というと、運動器の病気と加齢による運動器の機能不全の2系統があげられています。人のロコモの原因となる主な運動器疾患は変形性関節症、椎間板ヘルニア、骨折や骨粗鬆症、関節リウマチ、脊椎症です。専門家たちは私たちが長生きすれば、生涯に何らかのかたちの変性性関節症を患うことがあると言います。

 

<犬もロコモティブシンドローム>

犬に多いのは変形性関節症、変形性脊椎症、椎間板ヘルニアで、人と似ています。犬の変形性関節症の罹患率は高く、成犬の5頭に1頭は症状を経験しているという見解が示されています。また加齢により筋力が低下し、持久力やバランス能力が低下するのも人と同じです。犬も人と同じようにロコモティブシンドロームがあると整形の専門医たちは言っています。そしてこわいのは、犬は人よりもずっと早く老化するため、多くの場合、変形性関節症が人よりも早く進行することです。飼い主さんが愛犬に症状があることに気がつかないでいるうちに変形性関節症は管理が困難になるまで進行してしまうかもしれません。治療と管理には早期診断が不可欠です。歩けなくなってから介護するのではなく、いつまでも歩いてもらうこと、すなわち健康寿命を延ばすことが人と同様に大切なことです。まずはロコモティブシンドロームにならないようにしましょう。その一つが変形性関節症について知っていただくことです。

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人用にはいろいろなロコモ関連商品が出ていますね。
  

<関節の構造>

ここでちょっと、関節と関節軟骨の仕組みについてお話ししておきます。これがわかっている方が理解が進むと思います。

身体を支えるのは骨です。そして骨は家に例えると柱に相当します。家はテントのように曲げて収納することはできませんが、身体の方の骨は関節があるので伸ばしたり曲げたり動かすことができます。折りたたみ式の家のようです。関節は骨と骨をつなぐジョイントですが、なめらかに関節が動くための仕組みがあります。骨の末端は関節軟骨になっています。関節軟骨はなめらかで硬い骨同士が直接ぶつかり合わないようになっています。関節軟骨は骨のクッションです。それから骨と骨は筋肉の最終点の靱帯(じんたい)でぐらぐらしないように固定されています。関節は関節包(かんせつほう)という強力で丈夫な膜で袋状に包まれています。そして関節包の内側は滑膜(かつまく)で、ここからぬめっとした液体(ムチン様成分=ヒアルロン酸です)が分泌されます。これが関節液です。関節液は粘性が強い液体です。関節液は滑膜から出て、また滑膜に吸収されて常に新しいものに変わっています。

関節液はエンジンオイルに例えられることが多いです。それは潤滑の役目を担っているからです。それだけではありませんけれどね。

 

<関節軟骨の構造>

関節内の関節軟骨は、へちまをゼリーで固めたような構造、とでも言いましょうか、コラーゲン線維の網目構造のまわりに軟骨基質が詰まっている状態です。コラーゲン線維がへちまのスジで、軟骨基質がゼリーです。ゼリーというと柔らかに感じるかもしれませんが、軟骨基質は中に水分をたくさん含む高分子化合物です(プロテオグリカン複合体)。ここに軟骨細胞が点在しています。

関節軟骨(ゼリーで固まったへちま)が関節液(ぷるん、ねっとりの液体)を保持しています。衝撃を受けると関節軟骨は関節液をしみ出させるので衝撃を吸収できるようになっています。ゼリーから水分が出たり入ったりするのを想像してみてください。軟骨組織には血管や神経は通っていません。ですからほんの少しの衝撃で出血したり神経が傷ついて痛みが走るというようなことは起こりません。軟骨組織は血液ではなく、関節液から栄養をもらっています。

ゼリーに例えましたが、この軟骨基質を構成するのがあのヒアルロン酸です。グルコサミン、コンドロイチンもプロテオグリカン複合体の構成成分になります。 
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今月は犬と猫の関節症について掲示しています。
 

<関節の老化>

関節軟骨は荷重を受けると軟骨の表面が互いに密着しすれてきます。軟骨組織がすり減っても関節軟骨にある軟骨細胞が軟骨基質を作ってほんの少しですが組織修復します。

けれど老化すると、修復のスピードがすり減りのスピードに追いつきません。関節を使いすぎて痛んだときには、少し安静にして関節を休ませてあげる必要があります。その一方で、修復には軟骨細胞が元気に働く必要があります。軟骨細胞に栄養を届けるのは関節液です。そして関節液の栄養を軟骨細胞に染み渡らせるのには少しの運動が欠かせません。ある程度関節を動かしてあげないと滑膜からあたらしい関節液が分泌されないのです。骨折してギプスで固定されたあと関節を動かさなかったらうまく関節が曲げられなくなったという話を聞いたことがあるでしょう。休ませてばかりいてはいけないのです。関節を健康的に維持するためには無理のない程度で静かに動かす必要があります。

<犬の変形性関節症>

変形性関節症は、関節軟骨の変性や破壊が起こった結果、骨や軟骨に正常とは異なるトゲトゲしい構造ができて、関節を包む滑膜に炎症が生じる病気です。単純に「関節炎」と説明することも多いのですが、「関節炎」の原因は変形性関節症以外にもあります。変形性関節症は加齢によって発症してくる関節疾患の代表的なものです。

滑膜に炎症が起こると痛み物質が出てきます。徐々に炎症は重症化していきます。そして飼い主さんが異変に気づいて来院してくれるわけですが、実はX線検査に異常が認められるときには最終段階になっています。関節炎がひどくなると痛みのために動くことを嫌い、筋肉を動かさなくなるので筋肉が細く萎えてきます。また長時間同じ姿勢を取っていると関節は硬くなり固まってきてしまいます。こうして「動けない」「立てない」犬になってしまいます。

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これって年のせいじゃなかったんですね、
って気づいてください。
そして治療のために
是非来院してください。 

<かくれ関節症>

胸やお腹のレントゲン撮影をしていると背骨の骨が一緒に撮影されます。このときに偶然脊椎の異常を見つけることがあります。「ここ、痛い場所ですよ」とお知らせするのですが「特に何もおかしなことはありません」と言われることがあります。知られていない炎症が進んだ結果が「かくれ関節症」になります。

日本大学動物病院での調査報告ですが、10歳を超えた犬のX線写真を調べ直したら12歳以上の犬の45%以上に変形性関節症または変形性脊椎症が見られたそうです。大型犬では74%に、小型犬でも34%の割合で異常が発見されました。さらに変形性関節症の見られた犬のうち、何らかの関節症関連の症状に飼い主さんが気づいていた割合は約半数だけ、変形性脊椎症に関してはたったの7.6%の飼い主さんしか気づいていなかったそうです。

初期の段階でX線撮影しても「ここ!」という目立った異変が見つけられることはまれです。ですからX線での異常があるにもかかわらず知られていなかったというのは、「かくれ関節症」が多いことを物語っていると思います。

   

続きは次回に。

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猫の巨大結腸症・2

猫の巨大結腸症の続きです。
治療について詳しく書きました。



<巨大結腸症の内科的治療法>

通常、最初に内科的治療を試みます。(内科的な治療で効果が得られなかった場合、または内科的治療を施しながらも進行してしまった場合に手術が適応されます。)

内科的管理には、5つの要素があります。

1.適切な水分を補給し、水分を維持する
脱水症状の緩和のために水分補給をします。排便困難になって食欲や飲水欲の低下した猫には必須の治療です。

2.蓄積している糞を取り除く、継続的に除去する
薬物投与の前に蓄積してしまった便の排除も不可欠です。

3.食物繊維の多い食事にする、この食事を続ける
食物繊維が多い処方食を与えることや便軟化剤、結腸運動促進薬などの薬の使用は、困った状態がリセットされた後に適応される内科治療です。これらは根本的な原因を修正するものではありませんが、猫が便秘にならないように糞便を通過させる方法です。

4.便軟化剤を試す、身体に合った薬剤と薬量で維持する
便を軟らかくする薬が便軟化剤です。第一選択にしているラクツロースは昔からある薬で、投与量により便の固さが変わります。飼い主さんが希望する便の固さに調整するよう投与量を加減することができます。浸透圧によって腸に水を引き込む消化できない糖です。味や口当たりのために猫が好まない場合もあります(甘いのでたいていの犬は大喜びで舐めてくれます)。猫の好みに合わないときはポリエチレングリコールを選択します。腎臓を悪くする不凍液の成分であるエチレングリコールとは化学構造が違います。これには風味が無いため食事に混ぜて与えることも可能です。こちらも腸管から吸収されず水と結合しやすい物質で、この特性により便を軟らかくさせます。飲水量が足りないと脱水症になる可能性がありますので注意深く投与する必要があります。

5.結腸運動促進薬を使う
結腸の筋肉を刺激し、腸管運動を促進させる薬(モサプリドなど)も排便状況の改善を目的に使用します。ネコの結腸運動に有効であることが示されている新しい運動促進薬も海外では出ていますが、日本では未だ発売で残念ながらその効果を体験することができません。ミソプロストールは、NSAIDsによる胃の粘膜損傷の発生率を低下させることが示されているお薬ですが、猫の結腸平滑筋の収縮を刺激することが明らかになりました。今後使ってみたいと思います。メトクロプラミドとドンペリドンは、末梢運動促進効果と中枢性制吐効果を持つお薬です。これらの薬剤は胃の運動性を向上させますが、結腸通過時間にはほとんど影響を与えず、便秘や巨大結腸の治療には不向きのようです。
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<進行していく>
軽度または中程度の場合(おそらく病気の初期段階に当たると思われます)は、処方食+便軟化剤+腸管運動促進薬の治療を常に、そして定期的な便排泄処置、時折水分補液という内科的な治療で維持することが可能です。
事態が進むにつれて、便の排泄処置(腹部触診により蓄積された糞便を手動で押し出す用手排便、浣腸や摘便なども含めます)の頻度が増します。重度に便が蓄積された状況では、便を排出するための処置がとられるとき、脱水や電解質の乱れを修正するために静脈内輸液療法を行ない、時に入院になる場合もあります。結腸内の糞便量が大きく硬すぎる場合は全身麻酔が必要になることもあります。浣腸処置により嘔吐を起こすこともあるため、気管挿管が必要になります。浣腸剤には温水や温めた生理食塩水などを使用します。

注意)浣腸処置は動物病院で行ないます。家庭で市販の浣腸剤を使って浣腸を試みるのは危険なため、行なわないでください。浣腸剤によっては重篤な電解質異常を起こしてしまうことがあります。

宿糞量をためないうちに排泄させていけると、内科的なコントロールで数か月から数年は状態の維持が成功していきます。残念ながら、結腸から便を除去する方法の必要性は徐々に頻繁になります。最終的に病気が進行する猫は内科療法には反応しなくなります。その結果、結腸は再び大きく弛緩し、固い糞の塊を内包し便を押し出す力が無いただの袋状の組織になります。

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<巨大結腸症の外科的治療>
内科的アプローチが効力を無くしてしまった場合は手術を検討する必要があります。これは結腸の機能していない部分を除去する大手術ですが、多くの猫は良好な反応を示します。結腸の大部分(ほぼ90%から95%)を切除する結腸全摘出術は、食事管理を含めた内科的管理に反応しない(しなくなった)巨大結腸症の外科的管理に最適な治療法と考えられています。

骨盤骨折などこの病気の元になってしまった原因がある場合は、それに応じた外科処置も必要になります。

術後13日間は輸液で水分補給します。痩せている猫ではハイカロリー輸液を選択することもあります。周術期中(手術後しばらくの間)は、必要に応じて適切な鎮痛薬を使用します。手術を受けた猫が術後食欲不振になることは珍しくありません。が、たいていは一時的に過ぎず、術後の体調の回復と共に食欲も出てきます。手術後72時間くらい経過すると食事を摂ることも可能です。低脂肪の下痢になりにくい食事を選択します。

<結腸が無くなっても大丈夫?>
結腸の主な役割は糞便から過剰な水分を除去することなので、結腸全摘出術を受けた猫は、手術直後はかなり軟便になります。それも1日に数回排便が発生する可能性があります。これが最も一般的な術後の問題です。けれど肛門括約筋はそのままであるため、猫は腸のコントロールを失っているわけではありません。ほとんどの猫は、この段階を経て1か月程度で許容できる軟度の便を形成し始めます。そして2か月くらいでは通常かまたは通常に近い状態の便に戻ります。3か月後には平均して2日に3回くらいの排便を行います。糞便のコントロールの喪失があってもそれは必ず戻ります。 


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しばらく待合室の猫コーナーの
ところに下げておきます。
お手にとって閲覧ができます。
 

<まとめ>
猫の特発性巨大結腸症は、結腸機能障害を特徴とする比較的よくある疾患です。一般的な臨床徴候には、排便障害、食欲不振、体重減少、ときどき嘔吐が含まれ、身体検査では結腸内腔内の非常に硬い糞便物質が触診ですぐに明らかになります。特発性巨大結腸症の診断をする前には、さまざまな検査を実施して素因となる問題を除外する必要があります。食事の変更と下剤、腸の運動促進剤の投与による内科的治療が成功する可能性があります。ただし、薬物療法に反応しなくなった猫には結腸全摘術を考慮しなくてはいけません。

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猫の巨大結腸症

ウンチが出ない!
 猫の巨大結腸症

特発性(原因は不明)メガコロンと呼ばれる大腸障害についてお話ししたいと思います。この病気は結腸から直腸にかけて大量の便を貯留し、排便が著しく困難な状況です。いわゆる便秘がまれに発生する程度ならあまり心配する必要はありません。けれど頻繁に便秘が発生するようになると、最終的に巨大結腸症につながることになります。これは、下剤などの処置だけでは制御できない便秘です。早期に治療されないと、結腸が慢性的に膨らみ腸の運動性を引き起こさせる腸壁の筋肉にダメージをもたらし、自力で排便することができなくなってしまいます。

単純な便秘も巨大結腸症の入り口になっています。
毎日の排便を確認するだけで重症化を未然に防げます。

<解剖学的なこと>

消化管は管状器官で、口から食道、胃へ、そして十二指腸、回腸、空腸の小腸を経て、盲腸に接続します。続いて結腸、直腸があり、肛門部で消化管は終わりです。消化管の機能は食物を消化し、栄養素を体内に吸収することです。胃は消化管が拡張した部分です。酸を生成し、タンパク質の初期分解を助けます。小腸は胃から結腸までのとても長い領域です。食物を吸収可能な栄養素に分解する働きをしています。結腸は水分の吸収と糞便の貯蔵のための場所として機能します。また、腸内細菌は特定のビタミンを産生する場所でもあります。結腸の壁には、脊髄からの神経刺激によって収縮する筋肉の層があります。結腸が収縮すると、糞便がからだから押し出されます。

 <巨大結腸症というのは?>

結腸への神経が正常に機能しない場合、結腸壁の筋肉は適切に収縮しません。結腸壁の筋収縮が無くなると、筋肉が弛緩して結腸の直径が大きく広がります。このだるんと広がった結腸の直径は、通常の猫の直径の3倍から4倍にもなります。糞便は通常の方法で直腸に押し込まれるのではなく、膨張した結腸に蓄積していき、そのまま動かず結腸にとどまり、重度の便秘を引き起こします。この結腸の巨大な拡大とその結果生じた便秘が「巨大結腸症」です。

巨大結腸症は結腸の平滑筋機能不全から来る状態です。

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閲覧用紙つくりました

<症状は?>

「便秘」は排便がまれな(規則正しく出ない)こと、または不完全である(出きらない)状態であると定義されます。便は排出されないと結腸に溜まります。猫はそれでも食事をしていきますから溜まりが徐々に増えていきます。そして結腸の仕事は糞便から水分を吸収させることなので、結腸部にとどまればとどまるほど水分が抜けてカチコチの便になっていきます。最初は単純な便秘でも、ゆっくりと排便困難が進行していき、最終的に巨大結腸症になります。

しっかり観察している飼い主さんは、猫が(さまざまな期間で)排便が減少しているとか、便が出ていない、排便にいきみを伴う(努力して出そうとするけれど出ない)と言われることが多いです。「いきみすぎて吐いているみたい」という様子を伺うこともあります。便秘になっている猫は週に1回から3回程度しか排便をしません。硬くて乾燥した便をぽろりと出す程度で、直腸内には糞便を留めていることが多いです。たまに大量の便が出ます。慢性便秘の猫は、結腸粘膜に対する糞便の刺激作用により、かちこち便(血が付いていることもある)または下痢を交互に繰り返すというエピソードを起こすことがあります。排便困難は猫一生懸命いきんでいるがウンチがでないということで比較的発見されやすいですが、排便状況を見る機会が無い猫、屋外のトイレで用を足すとか猫を多頭飼育しているとか、勤務の都合で長く家を留守にしている飼い主さんの場合は発見の機会を逃してしまうことも少なくありません。便秘が長引いた猫では、食欲不振、体重減少、嘔吐が観察される場合があります。巨大な糞塊の間をぬってとろんとした腸液が出てくることが有り、これを飼い主さんは下痢だと勘違いされる場合もあります。

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毎日の排便確認が重要です

<診断と検査>

重篤な結腸宿便が特発性巨大結腸の猫の身体検査所見です。身体検査では、結腸内で触知可能な非常に硬い糞便が大量に明らかになります。さらに、重度の罹患猫では脱水症、貧血、腹痛、および軽度から中等度の腸間膜リンパ節腫大が発生する場合があります。

診断調査は、結腸の狭窄および/または閉塞を引き起こす可能性のある根本的な問題を除外することを目的としています。血液検査や尿検査のほか、必要を感じる場合は神経学的な検査なども行ないます。

腹部X線撮影は、結腸埋伏の重症度の特徴を明らかにし、異物、腫瘤病変、骨盤骨折、結腸狭窄、脊柱異常などの素因を特定するために不可欠です。

子猫の巨大結腸症は甲状腺の機能不全によって引き起こされる可能性があるため、血液検査が必須です。

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毛球もウンチを出にくくする要因になります

<巨大結腸症の原因は?>

便秘には多くの原因があります。先天性巨大結腸(腸神経系の発達異常が原因であると推定されます)のこともありますが、大部分は後天性です。巨大結腸症につながる可能性のある病気は、直腸や肛門を狭くして便通が困難になる病気です。例えば、腫瘍や異物などで結腸が狭窄され機械的な閉塞があると巨大結腸症につながる可能性があります。骨盤骨の骨折やゆがみは便の通り道を狭めるため巨大結腸を引き起こす原因として比較的多い原因です。肛門嚢膿瘍などの肛門の疾患があると猫は痛みのために排便をこらえ、結果的に巨大結腸症につながります。マンクスは、巨大結腸を引き起こす可能性のある脊髄変形を起こしやすい猫で、神経の損傷があると結腸の運動性にも影響を与える可能性があります。マンクスのほかでも脊椎疾患から神経性に腸の動きを悪くさせ、結果的に巨大結腸症になってしまう猫もいます。

潜在的な原因として猫の食事または環境要因に関連している可能性があります。トイレが汚れていると猫は定期的に排便するのを拒否し、最終的に結腸が伸びることになります。骨などの非吸収性物質が摂取されると異物として結腸に影響を与える可能性があります。高齢猫によくみられる慢性腎臓病のように脱水をおこしやすい疾患では、便をカチコチにすることで便秘を呼ぶこともあります。

ほとんどの場合、結腸が機能を停止する理由を特定することはできません。この病気が最も一般的にみられるのは、肥満傾向の中高年齢のオス猫です。原因不明の巨大結腸症は「特発性巨大結腸症」と呼ばれます。巨大結腸症のうち62%が特発性です。

テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

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