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猫のレトロウイルス簡易検査

 春生まれの子猫たちも不妊手術を実施するのに良い月齢に達しています。それから「生後6か月を過ぎるまではウイルス検査の結果判断が待たれます」としてきた拾った外猫たちも、最終判定の6か月齢にきている(すでに過ぎた)かもしれません。12月1日は世界エイズデー。今日は猫のレトロウイルス検査についてのお話です。一部は以前にお話ししたことがある内容と重複します。

猫白血病ウイルス感染症・猫免疫不全ウイルス感染症のウイルス検査

猫のレトロウイルス検査は、猫自身の健康を維持すること、ほかの猫への感染拡大を防ぐことの2つの目的のために行われます。院内の簡易検査で、猫白血病ウイルス感染症と猫免疫不全ウイルス感染症の2つを同時に検査することができますが、検査の仕組みが違うために、結果の解釈は少し違います。
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猫白血病ウイルス感染症について(ざっとおさらい)

<ウイルスの伝わり方(感染経路)>

猫白血病ウイルスの粒子は感染猫の唾液、鼻汁、尿、糞便、乳汁中に排泄されます。猫はグルーミングや食器の共有、けんかなどによってウイルスは次の猫に伝わります(感染します)。

<体内でのウイルスの増え方(感染してから)>

ウイルスは、感染を受けた猫の局所リンパ節で増殖します。1週間から2週間くらいするとウイルスが血液中に排泄されるようになります。

それから骨髄や全身のリンパ節に行ってそこでもっと増殖を始めます(第2期のウイルス血症)。急性期には熱が出たり、全身のリンパ節が腫れたり、下痢になったりします。(血液検査で白血球数が減少していることから、もしやウイルス感染なのでは?と疑うこともあります。タイミングが良ければわかります。ただ、どんなウイルスの感染なのかはこの時点では分かりません。)

その後の経過は3通り有ります。

1)猫の身体からウイルスが排除され、感染が成立しない。(良かった!)

2)感染性のウイルス粒子を産生することはないけれど、体内にウイルスが存在する状態になる。ストレスがあるとウイルスは再活性化する可能性があります(退行性感染)。ウイルスは体内に潜伏しています。(う~ん、微妙!)

3)持続的にウイルスを産生している状態(進行性感染)になる。感染がずっと続いている状態です。感染した猫の約30%だけが進行性感染の状態になります。(残念!)

そして数ヶ月から数年後に、白血病ウイルス関連の病気が発症します。

*リンパ腫、急性白血病、骨髄異形成症候群(貧血や白血球異常など)、免疫不全症、免疫介在性疾患(タンパク喪失性腎症、ぶどう膜炎、特発性多発性関節炎)、上気道感染症、口内炎、慢性腸症など。血液の病気から目の病気、腎臓病、口腔内、関節、腸にも異変がおこります。とにかく、ありとあらゆる部位での病気がおこります。

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<猫白血病の簡易検査は抗原を検出する検査>

猫白血病ウイルスは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)法により猫白血病ウイルス抗原を検出する方法と、PCR法により猫白血病プロウイルスであるDNAか、ウイルスRNAを検出する方法があります。ELISA法は院内でできるキットで実施が簡単です。スクリーニング検査は院内の検査で行います。抗原は攻撃してくるウイルスのことです。検査材料は全身を流れている血液です。末梢血液中に検出可能なウイルスが存在していると検査で陽性の反応を示します。

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猫免疫不全ウイルス感染症について(こちらもざっとおさらい)

<ウイルスの伝わり方(感染経路)>

猫免疫不全ウイルスは感染性ウイルス粒子を含む唾液や血液を介して伝わります。主な感染経路は咬傷(猫同士のけんか)からおこり、親から子猫への感染や、交尾の時に感染することはごくまれです。

<体内でのウイルスの広まり方(感染してから)>

     感染してすぐに発熱、食欲不振、リンパ節の腫大などがおこります。急性期と呼んでいます。血液検査をすると貧血や白血球の減少が見られます。飼い主さんに気づいてもらえることは少ないです。(自由にしている猫が発熱のために一晩留守にして解熱後に帰宅したら分からないと思います。)ここから数週間から4か月くらいして抗体ができてきます。

     その後、無症候キャリアー期に入ります。数か月から数年間は症状もなく過ごします。けれどこの間に免疫システムの破壊が徐々に進行(免疫関連のリンパ球が減少していく)していきます。

     臨床症状が明らかではないけれども、全身のリンパ節が腫れているだけの時期が来ます。持続性リンパ節腫大期です。リンパ節腫大は身体の防御反応のある印です。

     さらに時を経て、免疫不全に伴う症状が出てきます。慢性的に感染症を繰り返したり、炎症が慢性的に続いていったりなどの不都合なことが発生してきます。エイズ関連症候群期です。この頃に来院される猫たちが多いです。後天性免疫不全症の発生リスクが高まります。

*免疫不全に伴う症状:口内炎、歯肉炎、上気道炎、嘔吐や下痢など

⑤ 病期が進行して、免疫不全から来る症状を発症する、後天性免疫不全症候群期になります。

 *免疫不全から来る病気:クリプトコッカスやカンジダ、アカラスなどの日和見感染、貧血、汎血球減少症、脳炎による神経症、腫瘍など

病気のステージの進行とウイルスの量には関連があると言われています。多くのウイルスが身体を蔓延していると進行は速く、ウイルスの増殖を免疫力で押さえ込むことができていると無症候のまま、別の疾患により天寿を全うするようなこともあります。

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<簡易検査は抗体を検出する検査>
猫免疫不全ウイルスは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査などの手法を使用して検出できます。

病院で行なわれるスクリーニング検査は抗体を用いたELISA法です。血液中に猫免疫不全ウイルスに対する抗体が存在するかどうかを濾紙に発色させて陽性かどうかを見ていきます。抗体は猫が作り出したウイルスと闘う免疫です。

PCR検査は、ウイルス遺伝子を検出する検査で、ウイルスのDNAそのものを検出することによって、血中にFIVウイルスが存在することを確認します。

ELISA法は感染症の理想的なスクリーニング検査ですが、特定の状況がある場合(移行抗体があるかもしれない子猫の感染の確認や、FIVワクチンを接種したことがある猫の感染の判定など)には、PCRの検査が理論的に優れています。PCR検査はELISA法で判定が困難な場合に外注で依頼しています。

12月は1日が世界エイズデー、12日がFIVキャリア猫(りんご猫)の日です。西尾地区では、猫白血病ウイルス感染症に比べ、猫免疫不全ウイルス感染症の方が感染率は高くなっていますので、FIVについてもっと知ってほしいと思いました。12月の掲示板は猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ、FIV)にしました。来年のカレンダーも出来上がってきています。猫さんを飼育の方も、そうじゃないけど猫ちゃんが大好きな方も、ぜひお越しいただいて、つらつらつらぁ~っと掲示板を眺めていただけると嬉しいです。なお、結果の解釈についてのお話は次回にします。

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働く犬たち

多くの犬は家族の仲間として暮らしていますが、中にはすごい仕事をしている犬がいます。介助犬とか補助犬という言葉を聞いたことがあると思います。介助犬や補助犬は、障害などを持つ人々を支援するために特別に訓練された使役犬です。そのほかにも働く犬はたくさんいます。明後日は勤労感謝の日。働く犬たちをご紹介します。

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1)サービスドッグ(補助犬)

サービスドッグは、障害を持つ人々を支援するために訓練された作業犬です。介助犬は、あらゆる状況で適切に動作するように訓練されているため、犬はどこでもハンドラー(ここでは補助を必要としている人になります)に同行できることになっています。日本ではまだ一部の人たちからの理解が得られないために、補助犬の同伴を許されていないところがあります。(残念です)
サービスドッグは、視覚障害者のための盲導犬、聴覚障害のある人のための聴導犬が有名ですが、このほかに身体の不自由な人を補助する身体障害者補助犬がいます。車いすのお供をしてくれている犬たちです。
ラブラドールレトリバーが多いです。

2) セラピードッグ、ファシリティドッグ(こころのケアをしてくれる犬)

アニマルアシステッドセラピー(AAA=動物介在療法)では、医療患者の治療プランの一部として訓練を受けた犬(たち)が活躍します。これらのセラピードッグは、病院やケア施設を訪れることが多く、病気やけがをした人たちにこころのサポートを提供してくれます。学校やデイケアセンターを訪問することもあります。
セラピードッグが訪問で仕事をするのに対し、施設(病院)に常駐して仕事をしている犬もいます。ファシリティドッグです。高度な訓練を受けた犬たちで、入院患者さんと一緒に寝るなどの密接な関わりができます。つらい闘病生活を励ましてくれる犬たちです。
あらゆる品種、サイズ、年齢の犬がセラピードッグになることができますが、セラピードッグは、気性が一定していて、社交的で、よく訓練され、恐がりでない犬でなければいけません。
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3) 警察犬

米国ではK-9と呼ばれ親しまれています。K-9は英語で犬を意味するcanine(ケナイン)の略号です。警察犬は、警察の職務を支援するために特別な訓練を受けています。事件が起こったときに容疑者や不明者が残していった遺留品の匂いから犯人や不明な人の行方を探ったり、時には不審者を威嚇したり警察から逃げようとする容疑者を追いかけて拘束することもできます。
直轄警察犬として使用される犬種は、ジャーマンシェパードとドーベルマンピンシャー、エアデールテリア、ラブラドールレトリバー、ゴールデンレトリバー、ボクサー、コリーです。(決められています)委託警察犬は、日常は家庭犬として過ごし、必要とされて出動する形式です。いろいろな犬種が認定されています。

4) 自衛隊の使役犬

警察犬と同様に、自衛隊の使役犬は自衛隊のメンバーの作戦を支援します。これらの犬には、警備犬(海上自衛隊で警備の仕事をしています)、歩哨犬(航空自衛隊で見張りの仕事をしています)がいて、警備の仕事の他に捜索救助にも参加しています。
ほとんどはジャーマンシェパードです。

5) 探知犬

探知犬は非常に優れた嗅覚を持っていて、特定の物質または物質のグループを嗅ぎ分けるように訓練されています。彼らが嗅ぎ分ける一般的な物質には、違法薬物、爆発物、血液、と人間の遺体(!)が含まれます。探知犬は、水際取り締まりとして空港や港湾などで治安目的のために働く麻薬犬が知られています。
一部の探知犬は、特殊な腫瘍(悪性メラノーマのような)、異常な血糖値を検出することも学びます。ヘルスケアのために活躍する犬は、医療支援犬として活躍しています。糖尿病警戒犬は、ハンドラー(ここでは患者さんになります)の血糖値が高すぎたり低すぎたりしたときに教えるよう訓練されています。発作反応犬はてんかん発作をもつ人のために訓練された犬です。発作を警告するまでに訓練された犬もいるそうです。
探知犬の最も古い犬は、トリュフの狩猟に使われていました。
よく使われる品種は、ビーグル犬、ラブラドールレトリバー、ゴールデンレトリバーなどです。
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6) 捜索救助犬

捜索救助犬は敏捷性が高くて嗅覚と聴覚が非常に優れています。高度に訓練された犬は、被災者の捜索や救助を行います。水難救助や雪崩の時などの山岳救助などの分野で活躍しています。捜索活動に参加する犬たちは、がれきで足をけがしても果敢に仕事をしてくれる勇ましい犬たちです。
救助に際して、「自衛隊の~」とだけ聞き、普通に居住地で仕事をしてくれているので陸上自衛隊の犬なのかと思いがちですが、陸上自衛隊には犬はいません。
よく使用される品種は、ラブラドールレトリバー、ゴールデンレトリバー、ボーダーコリー、ジャーマンシェパードなどです。
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7) 作業犬

牧畜犬は、羊や牛など、さまざまな種類の家畜を扱います。牧畜犬は基本的にその仕事のために生まれます。犬は特定の品種で、牧畜犬グループにはいります。トレーニングで磨かれた能力が仕事上発揮できる犬もいますが、コンパニオンドッグとしての生活に適している犬もいます。相対的に他の犬種に比べて動く物を追いかけ回す能力に優れています。これはコンパニオンアニマルに付随していると少々困った特性でもあります。
品種には、ボーダーコリー、ラフコリー、シェトランドシープドッグが含まれます。
猟のお供に出かける犬もいます。猟犬です。彼らは猟師に獲物の場所を教えたり、自分から獲物を捕まえたりします。ポインターやセッター、甲斐犬などが活躍しています。
そりを引いて人の生活に役立っている犬たちもいます。そり犬としてシベリアンハスキーやアラスカンマラミュートが活躍しています。
近頃はまれになっていますが、闘犬というジャンルのスポーツドッグもいます。土佐犬やマスティフが代表的な犬です。

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人のために働く犬はかわいそうなのか

7月の豪雨で災害に遭った熱海では浜松の自衛隊の犬たちが泥まみれの姿になりながらも大活躍してくれました。まだ記憶に新しいと思います。こうした働きをしている犬たちは「かわいそう」なのでしょうか。
米軍の軍用犬がトレーニングを受ける姿を見たことがあります。現場を見ている限り、犬は人のために働くのが好き、使役することを楽しんでいるみたいだと感じます。家庭犬が広い空き地で遊ぶ姿に似た、ほほえましい光景でした。使役犬に対して、「かわいそう」という感情を持ってしまうかもしれませんが、投げられたボールを取ってきて飼い主さんに渡すフェッチの遊びをさらに難易度を高めていったのが彼らのトレーニングと実際の仕事なのかもしれません。
あるトレーナーさんは「彼らは働かされているとは思っていません。すべてゲーム感覚で動いています。不審物を見つけると褒められる。だから頑張っています。むしろ、人から任務を与えられないことの方が犬はつらいのです。」とおっしゃっていました。
「彼らはワークすることを喜んではいますが、ときに任務に対して結果が出せないこともあり、がっかりするようです。それで、自信を回復させるためにトレーナーが隠れて横になり、見つけさせるというようなゲームをすることもあります」という頬が緩むようなお話もありました。
このようなお話を伺うと、「かわいそう」から「がんばってねっ!」に気持ちが変わるのではないでしょうか。

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レスパイトケア

在宅介護する家族の疲れを解消させるための取り組みをレスパイトケアといいます。介護者の一休みです。現代人の多くは介護に限らず仕事の疲れを持っています。家庭犬はみんな、レスパイトケアをしているファシリティドッグな気がします。病院にも、彼ら自体がそれぞれの身体の問題を抱えているのですが癒やしの役割をしている犬猫がいます。健康でワクチン接種に来てくれる犬猫たちも、病気診察の合間に癒やしになってくれています。みんな、ありがとう。明後日の勤労感謝の日は、特別な意識を向けて、みなさんの家の家庭犬に(にゃんこにも)感謝です。

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糖尿病だけじゃない血糖値の上昇

 今月は糖尿病月間、そして今日は世界糖尿病デーです。糖尿病のことを知ってもらう良い機会ですので、かるく糖尿病のお話をしておきます。
それから、健康診断を受けたとき、血糖値の所に▲マークが付いてドキッとされてしまう飼い主さんがおられますが、わずかな上昇は生理的な範囲の可能性もあります。糖尿病以外で血糖値が上昇してしまうこともありますので、それについてもお話ししておきます。

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犬の高血糖

健康診断の血液検査で血糖値が高い犬がいます。ブドウ糖は体の主要なエネルギー源で、通常は75120mgの範囲に入っています(検査機器によって多少のズレはあります)が、血糖値が上昇するとインスリンにより正常な糖レベルを維持するようにコントロールされています。インスリンは膵臓で産生され血中に放出されるホルモンで、体内の状況により分泌量が変化するため血糖値は一定になっています。
インスリンのレベルが低いか絶対的に不足していると、血糖値が異常に高くなります。糖尿病です。
糖尿病の原因のいくつかは膵炎の可能性があるのですが、膵炎由来の糖尿病ではインスリンを産生できなくなっていることが多いです。中年以上の犬は糖尿病を発症するリスクが高く、オス犬よりもメス犬に多く見られます。どの品種も影響を受ける可能性がありますが、トイプードルとテリア種、ミニチュアシュナウザー、ダックスフントなどはより発生が高いようです。

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糖尿病の原因

糖尿病の原因は次のとおりです。血液中のブドウ糖をからだが利用するにはインスリンが必要で、インスリンの欠乏やインスリン利用能の低下があるとブドウ糖をうまく利用できないために高血糖になります。ブドウ糖の消費量が少ない(インスリンが少ないために身体がブドウ糖をうまく利用できていない)ために血糖値が高いか、ブドウ糖がたくさん作られすぎる(インスリンの利用が追いついていない)ために高血糖になります。
糖尿病は、生活習慣病として不摂生な生活をしていたことに由来するものではありません。肥満が原因になることもあるけれど、これだけが糖尿病の原因になるのではありません。
おおもな原因です。

・特発性

・自己免疫性

・肥満

・遺伝性(若年性)

・クッシング症候群からの誘発

・すい炎

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糖尿病の症状

一般的な症状は次のとおりです。後半はすごく悪い時の症状です。

  • 喉の渇きの増加(多飲症
  • 排尿の増加(多尿症
  • おとなしい
  • 体重の減少または肥満
  • 過度にお腹が空く
  • 目が白くなる(白内障)
  • 目が赤く充血する(血管の炎症)
  • 肝腫大
  • 足の神経障害
  • ぐったり(血糖値が非常に高い場合)
  • 傷の治りが悪い

臨床症状は、基礎疾患や状態によって異なりますが、初期は深刻な症状を示していない可能性もあります。特に、糖の上昇が一時的な場合や、ホルモン性、またはストレス誘発性の高血糖症の場合は、症状は見られないことが多いです。

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診断

たいていは特徴的な症状(たくさん水を飲んで、たくさん尿を出す、食欲がある、体重が減少したなど)から糖尿病を疑うことになります。血液検査では空腹時のグルコースは200mg/dLを超える上昇がみられ、尿検査で尿糖も陽性になることで判明します。
一時的な高血糖と区別するために、数回の検査を行うこともあれば、長期的に高血糖の状態が続いていたことを示す糖化アルブミン(GA)やフルクトサミンなどの値を参考にすることもあります。
糖尿病であれば、高血糖と尿糖陽性の両方が見られます。
血糖値が正常であるのにもかかわらず、尿糖が陽性に出ることがあります。この場合は腎臓病が疑われます。
血液検査では隠れた病態を知るために、クッシング症候群やすい炎を確認する項目も調べるし、感染症やケトージス、肝臓への脂肪沈着などの状況を考慮する必要があるので、検査項目はいろいろ選択され、血糖値と尿糖の有無だけの判断を行うことはありません。
肝臓組織の脂肪沈着のために、肝臓酵素レベルも存在します。腹部X線および超音波は、基礎疾患に関する重要な情報を提供する場合があります。

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治療

治療目標は家族と犬の生活の質を良好に保つことです。体重や体型、被毛が良好な状態を維持すること、たくさん飲んでたくさんオシッコをする状態を改善させること、白内障や感染症などの糖尿病の合併症を起こさないようにすること、低血糖の状態に陥らせないようにすること、できるだけ飼い主さんの負担にならないように実行していくことなどです。
基礎疾患や併発疾患も一緒に治療し、運動療法と食事療法も組み合わせて健康的な身体を作っていきます。家庭でのインスリン注射は必須ですが、できるなら家庭で尿糖や血糖値の測定をし、病院での定期的な検診を受けていただきます。

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生活と管理

犬や猫の糖尿病を適切に管理するには、飼い主さんの生涯にわたる取り組みが必要です。犬が糖尿病の場合は、血糖値の大きな変動を避けるために、治療ガイドラインに従う必要があります。そのひとつが食事療法で、高タンパク質、低炭水化物、低脂肪、高繊維の食事療法が推奨されます。適度な運動を推奨しているのも急激な血糖値の変化を避けるためです。適切な時間に適切な用量で確実にインスリンを注射する必要があります。
うまくコントロールされた糖尿病の予後は比較的良好で何年も平温に暮らしていくことが可能です。糖尿病で亡くなることはなく、高齢になったための心臓病や腫瘍、老衰などが死因になります。糖尿病性腎症になることもあります。基礎疾患や併発疾患があると要注意です。コントロール不良のために糖尿病性ケトアシドーシスに陥ってしまうと、これが死因になってしまうことがあります。
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さて、

糖尿病以外でも高血糖になることがあります

からだは侵襲を受けると内分泌や免疫機構がうまく反応し、急性の生体反応が出現します。急性相反応といいます。急性相反応では、身体からコルチゾールやアドレナリン、ノルアドレナリンなどのホルモンが分泌され血糖値を上昇させます。精神的なストレスや術後の痛み、不安などでもこれらのホルモンが分泌されるため、血糖値は上昇します。不安が強いとき、食欲がなくなります。これはこのようなホルモンの影響で血糖値が上昇しているためです。体内からコルチゾールがたくさん分泌される病気(副腎皮質機能亢進症)のときにも軽度の上昇が見られます。

それから体内に感染症があるとサイトカイン(炎症性物質)の影響で、肝臓に貯蔵されているグリコーゲンの分解が進み、インスリンの抵抗性が引き起こされます。インスリンがあっても血中のブドウ糖がうまく使えないため、血糖値の上昇を抑えることができなくなります。歯科疾患や無症候性の尿路感染症は目立たないけれど高血糖の原因になる病気です。
また生理的な高血糖の原因として、食後があります。食べた後は腸からの吸収があるために血糖値が上昇するというわけです。また労働後も糖新生が盛んになるために血糖値は上昇します。
妊娠や未避妊の状態で発情があると、ホルモンのせいでインスリン抵抗性が高まり高血糖になることもあります。
(当然のことですが、糖類を含む輸液剤を直接血管から点滴補液されている間に採血された血液では、輸液による影響で血糖値が高くなっています。)


わずかな上昇のときは、「糖尿病」よりもこうした生理的な原因による可能性が高いと思われます。健康診断のときは多少ご機嫌が斜めになってしまっても、朝ご飯抜きでいらしてください。駐車場で激しい運動をしてから院内に入ってきましたというのも検査結果に影響を与えるし、とてつもない恐がりさんの場合は不安から血糖値が高くなることがあります。

このように、▲マークが付いていても心配がいらないこともあります。健康診断の結果の判断は総合的に行っています。

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首輪、胴輪とリードのおはなし

 首輪とリードのおはなし。雑談です。
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リードの役割

リードは毎日の散歩や外出先などで、愛犬の行動範囲を規制するために重要な道具です。ひとつ間違えて飼い主さんの手からリードが離れてしまうと、交通事故に遭ったり攻撃的な犬にけがをさせられてしまうなど、犬の命に関わるようなトラブルに巻き込まれてしまいます。リードには愛犬をコントロールするという重要な役割もあります。飼い主さんの意思を、リードを通じて伝えるのがリードコントロールです。行って欲しくない場所に侵入しないように制御することができますから、異物や毒物などを摂取してしまうのを事前に防ぐこともできます。

犬の行動をきっちり制御し危険回避するには、安全面で絶対的な信頼がおけるリードでなくてはいけません。「手からリードが離れて犬が逃走」という事故は毎年、1年間に数例以上必ず聞かれる事故です。そのまま捕獲できて危うきを免れた犬もいれば、そのまま走り去ってしまい数日後に管理センターに保護され連絡が取れた犬もいますし、残念ながらその日を最後に巡り会えなかった犬もいます。病院に来院されているときでも、トラブルから駐車場を自由奔放に走り回っていて実にうれしそうにしている犬もいます。自由に走れるのは犬にとって幸せだろうと思いますが、道路にそのまま走り出てもらっては困ります。たいていは首輪のサイズがあっていないことに寄るのですが、リードの金具部分の不具合がみられることもあります。丈夫で、手から滑りにくいリードあることも望まれます。とにかく、首輪または胴輪とリードはセットで安全性を考えないといけません。
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首輪と胴輪

首輪と胴輪、どちらが良いのかという質問を承ることがあります。

首輪はリードを引っ張ったときの力がそのまま首に掛かるので、リードを使ってコントロールをしていこうというときには有効です。けれど首が弱い犬や、気管に問題を抱えている犬、顎が細くてぴったりサイズの首輪を見つけるのが難しい犬には向きません。パグやフレンチブルは首が太くて首輪が抜けやすい犬種で、首輪よりも胴輪が向いている犬種です。超小型の犬で首輪が重すぎてしまう場合も胴輪向きです。椎間板に問題を起こしやすいダックスフントなどの軟骨異栄養犬種も、首輪はおしゃれ用にして散歩用には胴輪を選んでください。それから鈴やタグはしつけをするときに集中を損ねるので、リードを使って散歩の練習をしていく段階では飾り物がないものを選んでください。いつも耳元で音が出てしまうのは憂鬱になると思いますので、迷子札などのタグは金具同士がふれあって音が出てしまわないような物を選んでください。なお、チョークチェーンは動物愛護の観点から使用を否定しています。
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一方胴輪ですが、犬の引っ張る力が強すぎて散歩中に首が締め付けられて「ケッケ」となるから胴輪を付けているという飼い主さんが多いように思います。中型犬以上の犬です。「そり犬」は引っ張ることを仕事にしていて、彼らは胴輪を使ってガシガシ引いてくれています。胴輪は苦しくないから犬が「思う存分」引っ張っていくことができるのです。ですから「引っ張って、引っ張って困っちゃう」犬に胴輪を付けると犬には好都合になります。引っ張らないようにしたいのであれば、胴輪ではなく、犬が力任せに走って行くと苦しくなってしまう首輪と、コントロールの力が加わりやすいように短い長さのショートリードを使って訓練をする方が効果的です。しかし胴輪だとまるっきり訓練に向かないかというとそういうこともなく、リードを装着するところが前胸部にある胴輪だともう少し力の分散が起こります。背中にリードの装着部分がある一般的な胴輪に対し、前の方に装着部があるのは「イージーウォークハーネス」といいます。いずれにせよ、「引っ張りすぎて困ってしまう犬」に必要なのは、新しい胴輪と頑丈なリードではなく、正しいしつけと訓練です。困ったときのしつけ直しについては個別にお話をすることにします。

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リード(引き紐)(引き綱)

リードにはいろいろな種類があります。用途によって使い分ける必要があり、愛犬に合った長さや素材のアイテムを選ぶようにします。

一番一般的なのは「スタンダードリード」です。定番のリードです。長さは1Mくらい。布製、ナイロン製のロープ、革製の物もあります。布製はデザインも豊富で好みの柄を選ぶことができます。汚れても洗濯ネットに入れて洗濯ができる物が多いです。持ち手も平べったいので手になじみます。ナイロン製のロープは頑丈です。中型犬以上の力が強い犬に向いています。ナイロンも洗うことができます。軽くて扱いやすいのですが、乾燥する冬場に静電気パチパチが発生することがあります。犬によっては噛んでしまうので複数必要かもしれません。革製のリードは見た目の高級感が魅力的です。ちょっと重たいです。お出かけ用、おしゃれ用かもしれません。雨に濡れるとくたびれますので、晴れた日専用にしておくと長く使えます。フェイクレザーもあります。こちらはリーズナブルで良いかもしれません。病院に来るときはこれらのリードで来てください。

金属製のリード」は長さ的にはスタンダードリードになります。リードをかじるクセがついてしまっている犬には引きちぎられる心配がないので向いています。重たいです。金属ですのでさびます。金属アレルギーがあるときはおすすめできません。一部が金属で持ち手部分は金属ではないものもあるので、選ぶならこちらをおすすめします。

ロングリード」は「トレーニングリード」ともいわれ、
3Mから中には30Mもある長いのがあります。長いロープでできている物が多いです。呼び戻しの訓練()をするときや、ディスク遊びやボールキャッチ遊びを始めるとき、広場や公園やドッグランなどアウトドアの広い場所で遊ばせるときに向いています。ロングリードでは犬のコントロールは効きません。伸びる範囲の中に他の人や犬がいないことを確認してから使ってください。ハンドル部分にクッションが付いてちょっと厚手になっている物を選ぶとリードを持つ手の負担が減ります。基本的に「来い」の訓練ができる犬にだけ使って良いリードです。(上級者、上級犬向き)

距離を伸ばした状態で「すわれ」「伏せ」「待て」をさせ、「来い」(「おいで」)の支持で走ってこさせる訓練



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フレキシブルリード」は伸縮性のあるリードで、スイッチで巻き取って手軽に長さを調節することができます。ロックで長さを一定にすることもできて広い場所での運動に向いています。便利なリードですが、用途はロングリードと同じです。安易に使うと事故や迷惑の元で、町中の散歩や病院への来院には不向きです。伸縮リードのロックを解除した状態では犬のコントロールが効きません。犬が自由に入って欲しくない場所に入り込んだり、拾い食いをしたり、好ましくない場所で排泄をしたり、通行する人や他の散歩している犬に飛びかかったり、道路に飛び出したりなど、事故に結びつくことを起こしてしまいます。必ずロックすることを忘れないでください。何かの拍子にロック解除してしまうこともあるので、普段の散歩は基本的にスタンダードリードを使うことをおすすめします。広場に出かけるときも、行くまではスタンダードリードを使い、目的地に着いてから交換して訓練を行ってください。持ち手が手になじむかどうか、握りごこちは重要なチェックポイントです。巻き取れるリードは意外と細く、巻き取りと握りのプラスチック部分の重さとのバランスが取れません。グリップ部分のプラスチックが滑り止め加工になっていないと、手から滑って落ちることがあります。選ぶときはグリップ部に注意してください。

マルチファンクションリード」は両端に留め具があります。片方はもちろん犬に付けますが、もう一方は散歩する人の腰に巻いてウエストサイズに合わせて留められるようになっています。(たすき掛けにしても良いです。)散歩の時に両手が自由に使えるようになって便利です。2頭の犬に繋げることができるのもあります。
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正しく装着しないと命が危ない

首輪にしても胴輪にしても、指2本が入るくらいのゆとりで装着します。首輪の場合は特に抜けないかどうかをあらかじめ確認してから散歩に出かけてください。知らないうちに痩せていて、首輪や胴輪が緩くなっていることがあります。散歩の前には毎回サイズが合っているかどうか確認してください。キツくなった首輪の下で、ネック状に被毛が抜け皮膚が赤くただれてじくじくしていることがあります。胴輪を装着したままになっていることはあまりないかと思いますが、胴輪はキツくなったときに、首輪以上に気づかれにくいです。長いこと胴輪を付けたままにしていて、脇の下に胴輪のベルトが食い込んでしまって、皮膚が赤く削れていることもあります。身体のサイズに合っていないのは、緩すぎても、キツすぎても問題があります。ちょうどいいサイズの物を選ぶことは犬が快適に過ごすためにとても大切です。

替え時がある

古くなって首輪の内側にアカが付いている首輪を付けている犬を見ることがあります。首輪がにおっているのは細菌が付いているからかもしれません。首輪は古くなってくると細菌が繁殖しやすいのです。首輪周りだけ痒がっているのは首輪の素材と相性が良くないせいかもしれません。皮膚炎になる前に交換してください。すり切れてほつれがあるリードも時々見受けます。ロープのリードの折り返しをビニールレザーで縫い合わせている物がありますが合わせのレザーの縫い目がほつれかけていたり、布製やロープのリードがすり切れてくると安全性に問題有りです。突然切れてリードが手から離れてしまうかもしれません。そんなときに他の犬と遭遇したら咬傷事件に発展してしまう可能性もあります。リードは雨に濡れたり泥が付いたりして臭ってくることがあります。不衛生です。私たちよりもずっと嗅覚に優れた犬の鼻近くに臭うリードがあるのはなんとも気の毒なことです。また首輪に付いた金具が壊れて一部が首の皮膚に当たっていて皮膚に傷を付けていることがあります。留め具にも注意してください。首輪とリードをつなぐ金具がきっちり作用していなくてルーズになっている場合もあります。きっちりと止まっていないと危険です。逆に硬くなって素早い取り外しができなくなっていることもあります。首輪も胴輪もリードも、愛犬の命を守るアイテムで、消耗品であることを認識してください。常に換えのリードや首輪を用意してあると安心ですし、早めの交換は愛犬の命を守る愛情を形にしたものだと思います。
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おわりに

おはなしが長くなりました。替え時だと思う首輪や洗濯して欲しいリードが付いていると、お節介にも声をかけたくなります。声にすることはなくても「頼むよ、気づいてやってよ」って気にはなっています。年に1度は新しい物を購入してもらうと良いなと思います。今年は愛犬にクリスマスプレゼントをしてみてはいかがでしょうか。気分が新たになります。外猫募金に、院長セレクトのスタンダードリードと胴輪のセットを数組用意しています。ブランド品です。こちらは院長からの全額寄付で、全てが外猫募金に入ります。ご協力いただけると幸いです。

テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

猫の上部気道感染症

 寒くなると多く来院されるのが、猫風邪とよく言われる呼吸器感染症です。「鼻水とくしゃみ」を主症状にしていますが、そのままにしておくと発熱して食欲廃絶になり、肺炎にもつながります。今日はたかが猫風邪でもスルーしてはいけない猫の呼吸器感染症について。


猫上部気道感染症(伝染性鼻気管炎)

病気の概要

猫ヘルペスウイルスや猫伝染性鼻気管炎ウイルスにより引き起こされる上部気道感染症です。猫カリシウイルスやほかの細菌(ブルデテラやクラミジア)なども原因になります。猫風邪、猫のインフルエンザなどと呼ばれることもあります。

猫同士の接触頻度が高い状況で発症リスクが高く、口や鼻、目の粘膜を通して感染します。ウイルスは侵入すると結膜や気管、気管支などに広がり発症します。母親からの免疫が低下する生後8週齢から12週齢の子猫で発症が多く、免疫が低下するにつれて悪化する傾向が見られますが、大人猫の発症も珍しいことではありません。成長が悪い子猫は要注意です。

主な症状は、発熱、沈うつ、元気消沈、食欲不振、くしゃみ、目やに、鼻水や鼻汁、よだれなどです。目の症状がひどくなるとつぶれてしまうことがあります。(ウイルス性結膜炎)
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治療

・注射

猫インターフェロンには抗ウイルス作用と、猫の免疫増強作用があります。連続投与すると効果が高まります。抗菌薬は細菌感染を合併している場合に、細菌に対して有効です。
食事がうまく取れない場合は点滴などで水分や電解質を補充するなどの支持療法も必要になります。
細菌感染が絡んでいると考えられるときは抗菌薬を使います。

・内服薬

ファムシクロビルは猫にも安心して投与できる抗ウイルス薬です。抗菌薬も細菌感染に対して有効です。免疫作用を高める作用のある生薬(漢方薬)を処方することもあります。L―リジンはアミノ酸で、猫ヘルペスウイルスが増幅する際に必要とするアルギニンと競合しウイルスの複製を抑える作用があります。

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・点眼薬

抗ウイルス薬のIDU点眼液や抗炎症作用のある点眼液、抗菌薬の眼軟膏などを投与します。目やにをきれいに拭き取ってから使ってください。

隔離の必要性

ウイルスは発症している猫だけでなく、無症状の感染猫からも長期間(30日程度)排泄され、その後環境中に1か月程度存在すると考えられています。一旦感染から治癒していてもウイルスは排泄し続けるので、感染後もしばらくは複数飼育している場合には隔離が必要です。

予防

ワクチンは感染を阻止することはできませんが、発症した場合の症状を軽減させる作用が期待できます。治癒後、ワクチン接種をおすすめします。追加接種は1年に1回です。

感染予防には、ストレスの軽減と良好な飼育環境の維持が大切です。

注)近年、強毒全身性猫カリシウイルス(VS-FCV)が報告されました。成猫において発熱や皮下浮腫、頭部や下肢の潰瘍、黄疸などの全身症状を起こします。非常に致死率の高い疾患です。

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ウイルス性の結膜炎、角膜炎

伝染性鼻気管炎の原因になるウイルスから結膜炎も発症します。飛沫や接触感染のほか、お母さん猫から子猫へと垂直感染します。猫ヘルペスウイルスは猫に感染した後、80%は三叉神経節に潜伏し、猫はキャリアとなり再発を繰り返します。成猫の発症はストレスと関係があるとされています。発熱や元気消沈、食欲不振などの全身症状や鼻水やくしゃみなどの呼吸器症状が注目される上部気道感染症ですが、結膜浮腫、結膜の充血、目やに、涙などの症状だけが目立つ猫もいます。
呼吸器を好んで感染するウイルスが起こす眼病はいくつか知られています。臨床的に区別することは難しいです。


クラミジア性結膜炎

クラミジアは粘膜を好んで感染する細菌です。はじめ片目だけ赤くなっていても、数日すると両目ともに赤くなってきます。また涙のような目やにも粘液膿性に変わってきます。結膜浮腫が進行すると結膜は厚くなり充血が増してきます。結膜がたらこのようにぷっくりと腫れます。鼻水とくしゃみは軽度です。経過は数か月という長期に及びます。

生まれてすぐに感染する子猫は母猫から感染していて、開眼前に新生児結膜炎になります。

抗菌薬の全身投与(内服薬)と抗菌薬の点眼で治療します。症状が消失しても2週間は薬を投与します。再発率が高い病気です。


新生子眼炎

子猫の結膜感染症です。新生子に発生します。子宮内や産道で母親から感染するほか、生後不衛生な環境にいて感染することもあります。屋外の野猫の子どもに多く見られます。感染源は猫ヘルペスウイルスや猫カリシウイルス、ブドウ球菌などです。多量の膿性眼分泌物が特徴です。

子猫は生後10日から14日で開眼しますが、その際に開いた目の隙間から感染し、まぶたの下で炎症を起こし、まぶたの下のポケットの中で膿が溜まると(眼内蓄膿)、眼が大きく膨らんでしまいます。まぶたを開けてうまく点眼することができないと角膜と結膜、結膜同士がくっついて癒着し、視力を失ってしまいます。

外用薬(点眼)を中心に投与しますが、抗ウイルス薬や抗菌薬を全身投与する必要がある場合もあります。

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角膜分離症~角膜黒色壊死症

猫ヘルペスウイルス感染などの角膜への慢性刺激が原因になって、角膜分離症を発症することがあります。

赤茶色の涙や目やに、眼瞼のけいれんが起こります。眼に痛みがあります。

たいていの病変は眼の中心部とその周囲に発生します。角膜が白く濁り、周囲に血管新生を伴うこともあります。進行すると、角膜上皮に境界明瞭な黒色の壊死病巣を作ります。壊死組織が角膜の深い部分まで到達すると、角膜穿孔してしまいます。

角膜潰瘍を管理しつつ、内科的に経過観察をします。突発的に黒い部分が脱落し、治癒することもありますが、再発もします。ヒアルロン酸の点眼液や、抗菌薬の眼軟膏、抗ウイルス薬の眼軟膏を使います。全身投与として抗ウイルス薬を使います。

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<注意していただきたいこと>

寒い季節にはお外猫の健康が心配になります。家で飼っている猫は温かいこたつの中でぬくぬくと幸せに過ごしているのに、お外猫たちは夜をどう過ごすのだろうかと気が気ではない猫好きさんはとても多いです。鼻水を垂らしていてはかわいそうに思い、せめて食事くらいは不自由がないようにとフードを運んでくれる愛猫ぶりです。しかしお外猫の鼻水はウイルス性の感染症が多いため、そうした猫に触れた後手指の消毒をしっかりしておかないと、ウイルスを家庭内に持ち込んでしまう可能性があります。「うちのねこは屋内飼育100%、全く外に出ないし、よその猫との接触もないからワクチンはしなくても大丈夫」と考えていると、思わぬところで飼い主さん自身がウイルスの運び屋になっていて、安全に暮らしているはずのお家猫に感染させてしまう可能性もあります。
むやみに知らない猫を触らないこと、お世話したら消毒すること、年に1回のワクチン接種を怠らないことが大切です。

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