皮膚科トピックス

 吹く風も心なしか夏っぽくなってきました。新年度から新しい環境になり、お仕事の内容が変わられた方も多いかと思います。うまくなじめていらっしゃるでしょうか。お疲れではありませんか。

今日のお話しは皮膚病に関する報告です。2件とも、海外の論文からの内容になります。
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<脱毛症> 
一つ目の論文です。ハードなお仕事でストレスがたまるとできると思われている円形脱毛症(Alopecia Areata Universalis)ですが、調べていたら犬にもあることが分かりました。さらにマウスやラット、馬でも同じ脱毛症の報告が見られました。

あら、犬もストレスを感じてできるのかしら。なんて思いましたけど、どうやら原因はストレスでは無く、T細胞が関与した自己免疫性疾患でした。赤血球を破壊する「免疫介在性溶血性貧血」(IMHA)や「免疫介在性血小板減少症」(IMTP)、「エバンス症候群」などと原因が同じで、攻撃される場所が「赤血球」や「血小板」ではなく「毛根部」なんですね。

ちなみにヒトではストレスは発症の一つの因子という見方で、原因ということでは無いそうです。

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報告されていた犬は9歳オスの猟犬の雑種。脱毛の期間は1年くらい続いていたそうです。毛の無かった部分ですが、全身の被毛のほか、まつ毛の部分も抜けて毛がなくなっていたそうです。脱毛している部分の皮膚を病理組織学的な検査を実施すると「炎症のない脱毛」で、免疫系の疾患だと診断されました。それでお薬は免疫抑制剤であるシクロスポリンが使われました。1年半くらい投薬は継続され、全身の被毛は回復しましたが、まつ毛やひげは生えてこなかったそうです。それから薬を中止し、5か月経過しても脱毛が再発することは無かったそうです。

マウスやラットでの発症はそのまま、ヒトの疾患モデルになりそうとのこと。ヒトの円形脱毛症の研究にひと肌脱げそうですね。

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<皮膚糸状菌症> 
もうひとつの興味深い報告は「皮膚真菌症」に関するものです。

皮膚真菌症は真菌(カビ)による皮膚病で、被毛が円形に脱毛します。真菌症はカビの胞子で感染する皮膚病で、先ほどの話題の「円形脱毛症」に比べたら発生率はとても高いです。そして皮膚真菌症の怖いところは、皮膚病になった犬や猫の被毛から私たちも感染してしまうことがある点です。動物の治療は薬浴をしたり、外用薬を皮膚に塗ったり、真菌に有効な薬を内服することです。また感染した動物を治療する飼い主さんの手も消毒してもらい、感染予防します。

ところで、感染動物が日常的に使用している敷物や、薬浴後に使用するタオルですが、真菌の胞子で汚染されているはずです。汚染した布類はどのように洗濯したら衣類からの再感染が防げるでしょうか。それが今回の論文内容です。

今回は敷物、という仮定ですが、感染した動物を膝に載せて処置をすれば、飼い主さんの衣類も同じように汚染されるはず。私たちは白衣を塩素系漂白剤に、薬浴後に使用したタオルは薄いヨウ素液に浸漬して洗うのですが、ご家族の方の衣料はそんなわけにもいきません。そのような意味で、皮膚糸状菌に汚染された洗濯物の除染というタイトルは興味深いものでした。

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実験は水温30℃、60℃、塩素系漂白剤有り、なし、タンブル乾燥有り、なしの異なる条件下で布を洗濯した結果、布にまだ真菌が残っているのかどうかを検査したものです。

結果にはおどろきました。洗濯方法のどれもが結果的に培養陰性になっていました。冷水で水洗しただけの段階では培養は陽性に出ましたが、感染レベルは最小という結果で、2回の洗浄ののちにはそれも陰性になっていました。さらに、すすぎ水は胞子によって汚染されていなかったし、洗濯槽も機械的な洗浄と、その後の消毒剤で簡単に汚染は除去されたということです。

カビの胞子に汚染された布類も「しっかり攪拌できる態勢で(あんまり衣類を入れすぎないということですよね)、洗濯時間は長めに設定して2度洗いを行えば、水温は高くなくても塩素系の漂白剤を使用しなくてもカビの胞子は除去できる」というわけです。

ジーンズに白いまだら模様をつけることなく、普通の洗濯をしていれば大丈夫!ということですね。

安心しました。

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さて、皮膚科に関しては、昨年からアトピー性皮膚炎のための新薬(ヤーヌスキナーゼ阻害薬)が出ていますし、この春からはアレルギー性皮膚炎のための新しい特別療法食も登場しました。アトピー性皮膚炎ですが、原因が明らかになっていても原因除去となる環境整備が難しいことから、治療の3本柱は①皮膚ケア、②投薬、③食事管理です。①に関しても薬浴剤はいろいろ開発されています。皮膚の状態に合わせたシャンプーを選ぶことや適した使用量を惜しみなく使うことなどももちろんですが、薬浴方法(薬浴の頻度、好ましい湯温、薬浴時間、泡シャンプーその他)についても新しい情報が出てきています。そして「皮膚の炎症」を抑えるため、Ω3脂肪酸をはじめさまざまなサプリメントなども使用が望まれるわけですが、今度の療法食にはそうした「入ってくれてるとウレシイ」栄養素や抗酸化物質などもよいバランスで添加されていて、たいへんおすすめです。

今日も午後から皮膚関連のセミナーに出かけるのですが、いよいよ本格的な痒みの強い季節に突入になります。薬浴の頻度も増しますし、場合によってはお薬の種類など増やさないと乗り切れないわんこも出てくるかもしれません。いつもながら治療のご理解とご協力ありがとうございます。そして今シーズンもよろしくお願いします。

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慢性腎臓病とFGF-23

 前回、慢性腎臓病の猫ではリンのコントロールが重要なことをお話ししました。リンのコントロールをしないと、腎性二次性上皮小体機能亢進症を発症してしまうし、腎性二次性上皮小体機能亢進症は身体にいろいろ悪さをしてしまうから、というのがその理由です。

上皮小体ホルモン(PTH)は骨のミネラル代謝に関係するホルモンで、慢性腎臓病ではIRISの分類でいうステージ3ころから上昇を始めます。PTHの検査は日常的に実施するようなことはありません。もっぱら血漿中のリンとカルシウムの値を調べています。これらの結果からミネラル代謝異常を知ることになるのです。

高窒素血症でも言えることですが、はじめは身体が異常を知ります。それでそこを補うように身体が反応します。代償作用です。検査で分かる数値は、代償作用ではもう頑張りが効かなくなってきてからの上昇です。

腎臓のGFRの低下を高窒素血症となるBUNCREの上昇で知るよりも早くSDMAで知るように、ミネラル代謝異常も血漿リン値が上昇するよりも早く異常を知らせてくれる指標が望まれます。

 

ところで、リンの代謝に深く関わっている物質で、FGF-23というのがあります。今日はFGF-23についておはなしします。

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FGF-23というのは>

FGF-23Fibroblast Growth Factor 23の略で、線維芽細胞増殖性因子、骨の細胞から分泌されるペプチドホルモンです。血漿中のFGF-23は腎臓からのリン排泄を促します。(リンを体外に出すように働きかけます。)それからビタミンD活性を抑え、上皮小体ホルモンの分泌や合成を制御しています。これはカルシウムとリンのバランスを取るための仕組みの一つです。骨からカルシウムが溶け出さないようにすること、正常な骨を造るためにはFGF-23が正常に分泌されることが必要のようです。

FGF-23は腎機能低下に伴って上昇しますが、それは血漿リン濃度が上昇する前の、早期の慢性腎臓病の段階から認められています。(高リン血症になるのは、腎機能低下がかなり進行してからのことです。)

 

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<猫のFGF-23に関する研究>

猫のFGF-23に関する研究はElliott先生たちのグループが行っています。2013年と2015年にその研究の発表がされています。「FGF-23の濃度が高い猫は病気の進行も早いし寿命も短かったこと」や「著しい上昇は死亡リスクの増加と関連があったこと」がわかりました。カルシウムとリンのバランスが崩れることは死亡率に重要な役割を果たしています。また「リン制限の食事療法を始めるとリン濃度と同様FGF-23濃度も下がること」や、「猫の基準的数値は人のそれに比べてはるかに高いこと」も分かっています。(ヒトでは8.254.3pg/ml、猫では56700pg/mlだそうです。)

 

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FGF-23は臨床にどのように応用できるのか>

FGF-23が慢性腎臓病の早期段階で上昇することやリン制限食で低下すること、腎臓病の進行によって上昇することから、

①早期発見のマーカー

②病気進行のマーカー

③予後判定のマーカー

としての使用が期待されます。

そして血漿リン値が高まる前に、その指標がいくつになったらリンコントロールを始めたら良いのかが具体的に分かるとなると、将来的に

④リン制限のためのエビデンスのある数値

ができるかもしれません。するとその指標の検査をこまめに実施することになり、もっとリンコントロールの重要性は知れ渡るのかもしれません。

 

残念ながら、現段階ではヒトのFGF-23も保険適応外なくらいなので、「うちの猫ちゃん」の数値を調べたり、結果から何かを推測していく、これをもとに治療の方針が変わる、とかいうことはまだ先のことです。そのうちには実用化に向けた芳しいお話しができる日が来ることを信じています。

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FGF-23のそのほかの働き>

ヒトではFGF-23が①心不全、②鉄の代謝と造血にも関与があるということがわかってきているようです。

ネズミの実験で、FGF-23が心臓の筋肉細胞にあるFGF受容体を介して直接的に心臓肥大を起こすことが実証されました。これまではリンの値が高くなっていることそのものが心臓病を引き起こすリスクになっていると考えられていましたが、この実験結果から、腎臓病でリン値が上昇することによってFGF-23が増加したことが心臓病のリスクを高めるのではないかというように考えが変わってきました。

Elliott先生によると、FGF-23が猫の心臓に対しても危険因子になっているのかどうかは、まだ不明だそうです。

 

それからご存じのように慢性腎臓病では腎性貧血が発生してきます。貧血を判断する検査項目の一つにPCVがあります。Elliott先生は、PCVは生存期間と優位に関連するとおっしゃっています。PCVが低下すると血液の酸素運搬能の低下から、悪くなっている腎臓が低酸素状態になる可能性があるそうです。PCVのわずかな変化が慢性腎臓病を悪化させ、低酸素により生存期間を短くさせる可能性があります。

腎性貧血の原因は腎臓から分泌される造血ホルモンであるエリスロポエチンの不足からというのが一般的な答えですが、鉄が不足しているとエリスロポエチンを注射で補っても貧血は改善されにくいです。また鉄は身体の中にあってもその分布から、うまく利用されず貧血改善に反映されてこないこともあります。猫のFGF-23の研究がさらに進むと、ヒトと同様の結果が証明されるかもしれません。今は貧血を鉄とエリスロポエチン軸だけで考えていますが、貧血改善にはリンの安定も必要だという答えが出るのかもしれないと思います。

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今春、猫の腎臓病のために新しいお薬も発売になりました。ベラプロストナトリウムというお薬で、これまでも人体薬として肺高血圧症に貢献してきたお薬です。血流を良くする作用があります。血の巡りが良くなることで、慢性炎症を抑え、組織が回復するのを助けるわけです。今後、処方することが増えていくと思います。猫の腎臓病の未来に明かりがまたひとつ灯りました。

というところで、今日のお話はここまでです。

猫の慢性腎臓病、未来のお話しが中心になりました。

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腎臓病と高リン血症のこと

 慢性腎臓病と分かったら、血液中のリン(P)やカルシウム(Ca)の値に注目します。リンやカルシウムはともに骨の主要な構成成分です。これらのミネラルが骨を強く硬くしています。

腎臓と骨。ちょっと関係がなさそうに思える二つの組織ですが、リンとカルシウムを介して密接なつながりがあります。今日はリンと腎臓のお話をします。

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ヒルズさんからの腎臓疾患用療法食です。
はじめに猫用のものを紹介していきます。
Elliott先生の研究のもとになっているのはこちらの療法食です。

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こちらの療法食も世界的なシェアが大きい食事です。

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セレクション。
ロイヤルカナンさんは2種類のラインナップ。

<骨と腎臓の関係>

骨を強くするためには「カルシウムの多い食品を摂ること、できれば腸での吸収の好いものがいいですね。それから日光浴もしなければいけない。」という話も聞いたことがあるかと思います。「日本人は1日に必要なカルシウム量を十分摂れていないから、健康になるためにはカルシウム強化牛乳を飲んでみましょう、おやつには小魚やナッツを食べましょう。」と、カルシウムは身体に良い食べ物として信じられています。絶対的な信頼度でこれを犬や猫に応用されている方もいらっしゃいますよね。事実その通り、骨を強くするためにはカルシウムは必要です。

そして、腸でカルシウムの吸収を高め骨へのカルシウム定着を促す仕事をするのは活性型ビタミンD(カルシトリオール)で、これも強い骨の形成に欠かせません。腎臓はこの活性型ビタミンDの生成に関わっています。ビタミンD(脂溶性ビタミンです)は食事から摂取し、紫外線を皮膚に浴びると体内で合成され、肝臓や腎臓の働きを経て、この活性型ビタミンDに変換されます。ビタミンDが十分活性化されないと、体内で必要なカルシウムが不足するため、骨からカルシウムを溶かして出すことになります。つまり腎臓の機能が低下すると、ビタミンDの活性化が低下してしまうため、「骨がもろくなって」いきます。

そしてカルシウムとともに骨の構成成分となっているのがリンです。リンは骨を強くするほか、エネルギーの運搬をしたり、細胞膜の成分になったりと、やはり身体に欠かすことのできないミネラルです。リンは食事とともに体内に入り、一部腸から吸収され、残りは便と一緒に体外に排出されます。健康なときは吸収されたリンと同じ量のリンが腎臓から 尿中へ排泄されますが、腎機能が低下してくると吸収したリンを排出することができなくなります。腎臓の機能が低下すると、リンは体内でたまって「高リン血症」をおこします。
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日清製粉さんからの療法食です。


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サニメドシリーズはオランダ産です。
いろんなメーカーさんから腎臓病食が出ているので
一つ二つで食べなかったからといって
あきらめないで、いろいろトライしてください。

<異所性石灰化>

高リン血症が進むとリンとカルシウムが結合して、骨以外の組織にくっついてしまうことがあります。「異所性石灰化」といいます。たとえば関節が石灰化を起こすと関節炎になります。腎臓に石灰沈着をおこすと、それは腎臓そのものを悪くすることになります。腎臓が悪くなるとリンがたまり、リンがたまると腎臓を悪くします。そいう悪循環です。

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ヒルズさんの犬用の腎臓疾患用療法食。
お試しできることを知っていただくために
サンプル袋を写真に撮りました。
猫用でもサンプルはご用意があります。
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ロイヤルカナンさんの腎疾患用療法食です。
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猫用と同様、犬の療法食も2種類用意してくれました。

<腎性二次性上皮小体機能亢進症>

腎臓の機能が低下すると、血清リン値が上昇するとともに、活性型ビタミンDの産生が低下して血清カルシウム濃度が低下します。この二つの状況から、上皮小体ホルモン(パラソルモン:PTH)が過剰に分泌されることになります。PTHはリンを排出させる働きがあります。初めのうちはリン排泄の良好な代償作用になるのですが、進行するとリンの排出が滞ってリンがたまってきます。体内の組織のリン過剰がやがて高リン血症をもたらすことになります。それからPTHは骨に作用して、骨からカルシウムとリンを流出させます。その結果骨はもろくなります。これが腎性二次性上皮小体機能亢進症です。

腎臓病をもつ猫の2/3は高リン血症を発生しているといわれています。高リン血症は腎性二次性上皮小体機能亢進症の原因になります。腎性二次性上皮小体機能亢進症は慢性腎臓病をもつ猫の臨床症状の一つでもあるし、慢性腎臓病を進行させる要因でもあります。それから猫の生存期間を縮めてしまうし、猫の具合そのものも悪くさせてしまう、悪いことだらけの病気です。

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ドクターズの療法食は、あの「ヨード卵光」で
みなさんご存じの日本農産さんが作ってくれています。
もちろん、国産が強みなんです。

<高リン血症の発生>

高リン血症は慢性腎臓病がだいぶ進行してから発生します。その段階ではすでに身体の中で、大きな問題が発生しています。腎臓病が悪化した犬や猫はみな高窒素血症(BUNCreが高い値になっている)を発生していて、食欲の低下や時折の嘔吐などを示しますが、高リン血症があっても特徴的な臨床症状を出しません。検査をしないと分からないのです。しかし高リン血症なら腎性二次性上皮小体機能亢進症ですといえますが、リンの値が正常範囲内に入っていても腎性二次性上皮小体機能亢進症ではないとはいえないと言われています。

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猫用のウェット食。
缶詰やアルミパック、パウチがあります。
液体のものは経鼻カテーテルなどにも使えますが、
味も悪くなく、そのままお口からの投与OKです。

<高リン血症を避ける方が良い理由>

高リン血症があると

     上皮小体ホルモンの排出が高まります。

     腎性二次性上皮小体機能亢進症をおこします。

     活性型ビタミンD(カルシトリオール)が低下します。

     骨からカルシウムやリンが溶けて骨がもろくなります。

     骨以外のところに石灰沈着をおこします。

     猫の具合を悪くします。

     結局、猫の生存期間を縮めてしまいます。

リンを制御すると、

     腎臓病の猫は調子が良くなります。

     生存期間が長くなります。

     腎臓病の進行も遅くなります。

「高リン血症でなくても腎性二次性上皮小体機能亢進症になっているかもしれない」ということは、高リン血症を起こしていなくても腎臓病であるのがわかっていたらリンのコントロールをしていった方が猫にとって有益だ、ということですね。

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犬用の缶詰、アルミパックとリキッドです。
液剤はハイカロリーです。
食欲不振時でも嘔吐さえコントロールできれば
最低限度の栄養を確保できます。

<高リン血症の治療>

リンのコントロールは食事療法と薬物療法で行います。

腎臓のための特別療法食は、すでにリンが制限されているので、一般食から腎臓病食に切り替えるだけで、第一段階のリン制限はクリアされます。リンはタンパク質が豊富な食品に含まれているので、タンパク制限をすると、同時にリンの過剰摂取を防ぐことができます。

このときにおやつや副食としてリンの多い食品を与えないように注意することも必要です。リンが多く含まれていて、猫に与えがちだけれど、それにはふさわしくない食品をあげておきます。肉類、魚類、小魚、桜エビ、牛乳、チーズ、ヨーグルト、するめ、アサリ、ナッツ、ハム、ソーセージ、かまぼこなどです。

リンを制限した食事で生存期間が延長することが分かっています。2000年のElliott先生たちの研究によると、一般食だと264日、リン制限食の場合だと633日という驚くほど生存日数が違う結果が出ています。

血清リン値は食事を変更してすぐに低下していくわけではありません。気長に治療していきます。6週から8週くらい開けてモニタリングします。目標達成まで数ヶ月かかる場合もあります。

なかなか下がらない場合は、「療法食+薬」だったり、別の種類の薬を2つ組み合わせ「療法食+薬+薬」にして対応します。それからどうしても療法食への切り替えがうまくいかなかった猫では「薬」だけで下げるようにします。

 

<経口リン吸着薬>

経口リン吸着薬は消化管内で食事に含まれるリンと結合して、腸内にとどまりそのまま便とともに排泄されます。結果として体内に吸収されるリンが減少することになります。

リンの吸着薬には、水酸化アルミニウム製剤、炭酸カルシウム、炭酸ランタン、クエン酸第二鉄、リン酸結合性ポリマー(塩酸セベラマー、ビキサロマー)などがありますが、安価なもの、高価なもの、それぞれの利点欠点もさまざまです。これらはすべて人体薬です。各先生で得意な薬、処方慣れしている薬があるかと思います。

動物薬として出ているものがあります。これらは、すべてサプリメント扱いです。

     レンジアレン
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鉄剤を主にしているので貧血を伴う腎臓病猫さんには
こちらはおすすめです。
旧ノバルティス社から出ています。

塩化第二鉄や炭酸ナトリウムを主成分にしています。

個包装で、1日に1~4袋を食事と一緒に食べさせます。

     カリナール1
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低カリウムになりがちな猫の腎臓病に
おすすめです。
リンに続いてカルシウムも高値になってしまった
動物では別のものをおすすめします。

  バイエル社から出ています。

炭酸カルシウム、グルコン酸乳酸カルシウム、クエン酸カリウム、キトサンなどが成分です。

1日に備え付けのスプーンで1~2杯を食事に混ぜて与えます。

     イパキチン
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ベトキノール社から出ていたIPAKITINEですが、
日本でも昨年から入手可能になっていました。
キトサンが硫化物も吸着するようです。
高カルシウム血症の動物には
おすすめではありません。

  日本全薬社から出ています。

炭酸カルシウム、キトサンなどが主成分です。

 

④海外の水酸化アルミニウム製剤(動物用)

*Alu-capR :3M社から。

⑤同、炭酸カルシウム製剤(動物用)

*pronefraR :Virbac社から。

*Easypill Kidney Support CatR :VetExchange社から。

*IpakitineR :Vetoquinol社から。

<おわりに>
リンのコントロールで長生きできます。
今日はリンの少ない腎臓疾患用特別療法食の代表的なものと、リンの吸着薬として扱われるサプリメントをご紹介しました。

他にもあります。
とにかく、いろいろあります。

動物病院の先生がおすすめしてくださるもの、いろいろ試してみてください。
一つだけで「食べなかった」とあきらめてしまうのはもったいないです。
「療法食+薬」だからリンが下がるみたいで、「一般食+薬」ではあまりリンは下がらない感があります。

それから、高窒素血症が高くなっているとき、例えば初診から間が無く「今から補液治療で高窒素血症をコントロールしましょう」というときにはまだ始めないでください。先生から療法食の紹介が無いのは「今は悪気や嘔吐をコントロールしたいとき」だからです。こういうときに無理に療法食を与えると、療法食のことが大嫌いになってしまいます。BUNやCREの値が下がってきて、気分も良くなり、これまでの食事ものどを通るようになってから、食事変更をしていきたいです。
それから、第4期になるとこれもやっぱり食欲が湧きません。ここからは栄養補給を主目的にして、無理なく好きなものを食べてもらいたいと思います。 

 

次回、リン代謝に関与するペプチドホルモンについてお話しします。

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尿検査とその結果の見方

 今日は尿検査についてお話しします。

もう、ずーっと健康診断がらみのお話しばっかり続けております。尿検査を受ける方は少ないかもしれませんが、これでなかなか、いろいろなことが分かるので、腎臓病関連で心配される方は、いえ、そうではない方もぜひ受けていただきたい検査です。

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オシッコのもとは血液。腎臓で血液から尿ができます。

<尿のもとは血液です>

心臓から送り出された血液は、全身を巡りながら酸素や栄養素を各組織に運び、そこから二酸化炭素や老廃物を受け取り、各臓器で処理され再び心臓に戻ってきます。腎臓では血液を濾過し、身体に不要なものを尿として排泄していきます。

 

<尿が作られます>

血液を濾過しているのは腎臓の「糸球体」です。名前の通り、毛糸玉のように細い血管がぐるぐる巻き付いた球形のところが糸球体です。血液を濾過するフィルターになっていて、ここを血液が通過するときに「原尿」と呼ばれる尿の大元が漉されて出てきます。糸球体はネフロン1つに1つあります。ネフロンは30万個から40万個が腎臓に備わっています。糸球体からは「尿細管」がつながっています。こちらも名前の通り細い管状の構造物です。全部が漉しとられた原尿から、もう一度からだに必要なものを尿細管が選び出して体内に再吸収される仕組みになっています。そして最終的に「尿」ができ、尿は尿細管から集合管を経て腎盂(じんう)に集まり尿管から膀胱へと出て行きます。膀胱である程度尿がためられると「尿意」をもよおして排尿することになります。

 

<尿からのサイン>

尿中のほとんどの成分は血液に由来しています。尿の変化は身体の状態を反映しています。尿の成分だけでなく、尿量そのものも身体の変化に対応して増えたり減ったりしています。腎臓に傷害があり、急な腎機能低下が起こると、尿がほとんど作られなくなる「乏尿」や全く作られない「無尿」ということになることもあります。糖尿病や腎臓のホルモン異常があると「多尿」になります。猫によく見られる慢性腎臓病では尿の濃さが低い尿を大量に出す「多尿」になることがよく知られています。腎臓のネフロンはフィルターの役割をする「糸球体」の部分と、再吸収を行う「尿細管」の2つの機能の構造体からできています。単に腎臓が悪いといっても、そのどちらの方の機能が悪くなっているのかは尿検査を通しておおよその見当がついてきます。

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自然尿を採取して持ってきてくださる時は
新鮮なものをお願いします。


<尿を採る>

採尿にはいくつかの方法があります。それによって検査結果に影響を与えることがあります。採尿方法も検査結果を判断する材料になります。また検査目的によっては好ましくない採取方法もあります。健康診断のためのスクリーニング検査でしたら、自然採取尿で十分です。

・自然採尿:普通に排泄された尿を紙コップなどでキャッチします。

・カテーテル採尿:尿道口から膀胱へ管を通してポンプで尿を吸引します。

・穿刺採尿:超音波検査をしながら膀胱に針を刺し、ポンプで吸引します。

*自然尿の場合は、ご家庭で排尿時に尿キャッチして持ってきてもらいます。未使用の紙コップやトレーで受けてください。それから試験管に移し替え、しっかりと栓をしてください。時間の経過とともに結果が左右されますから、できれば30分以内のうちに病院に持ち込んでください。それ以上時間が経ってしまうときは冷蔵庫で保存して24時間以内に持ってきてください。

*病院では穿刺尿を用いて検査することが多いです。尿道に閉塞がないかを知るためにカテーテルを通して採尿することもあります。病院に連れて来られたときに膀胱内に尿が貯留していないと採尿ができません。後日あらためて尿検査に来てもらうこともあります。

 

<尿検査の手順>

尿検査といっても一連の検査をすべて実施するのに、いろいろな行程があります。

最初に色調や濁りなどを肉眼的に観察します。ニオイも判断材料です。それから尿試験紙(ウロスティック)を尿に浸して化学的な性状を調べます。尿比重はスティック検査にも含まれていますが、正確ではないため、比重計で特別に調べます。尿をスピッツに入れて遠心分離したあと、沈殿物(尿沈渣)をスライドに載せて、そのまま、そして染色したものの2つを作成し、顕微鏡で観察します。

 

<肉眼的な観察>

尿の外観、色と濁りを目で見て判断します。ミネラル成分が出てきたり、膀胱炎があって尿中に細胞成分や細菌が出現しているときは尿が濁ってきます。血液が混じるなどすると尿の色が変わります。

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いわゆるスティック検査は尿の化学的検査です。
 

<化学的な尿性状の検査>

試験紙の種類にもよりますが、尿性状の検査では尿pHとタンパク、糖、ケトン体、潜血、ビリルビン、ウロビリノーゲンなどの尿中濃度を調べることができます。大まかな段階で表示されます。決まった数値は出されません。

①尿pH

 5から9までの5段階で評価されます。機械を通すと中間点を0.5刻みで表示します。

正常では5.5から7.5くらいです。

食事の内容に大きく影響を受けます。pH7.0が中性で、それよりも低いのは酸性尿、高いのはアルカリ尿になります。ウレアーゼ産生菌に感染した場合はアルカリ尿になります。アルカリ尿ではストルバイト結石を形成しやすくなります。酸性尿ではアシドーシスがあるかもしれません。

②タンパク

 (-)から(+-)、(+)~(4+)まで6段階で評価されます。

正常では(-)から(+)の3段階までで、数値で概算すると30mg/dl以下に相当します。

濃縮された尿では尿路から分泌される蛋白成分が(+)くらいは検出される可能性があります。尿路の感染や出血、精子の混入で簡単に(+)になります。

尿比重が低いのにタンパクが出ているのは腎疾患が心配になります。比重や沈渣とともに評価します。多くのタンパクが出現している場合には、タンパククレアチニン比(UPC)を追加検査します。腎機能をさらに詳しくみることができます。

③糖

 (-)から(+-)、(+)~(4+)まで6段階で評価されます。

正常では(-)です。糖尿病のように高血糖状態が持続している(犬で180mg/dl以上、猫で250mg/dl以上)と、尿細管で行われる糖の再吸収の能力を超えてしまい、尿糖は(+)になります。

高血糖ではないのに尿糖だけ(+)に出る場合があります。腎臓の再吸収能の異常で、ファンコニー症候群が疑われます。血糖値とともに評価します。

④ケトン体

 (-)から(+-)、(+)~(4+)まで6段階で評価されます。

 正常では(-)です。

 絶食や糖尿病のときにグルコースの利用ができず、体脂肪が分解され、肝臓でケトン体を作っていると尿中にケトン体が出現します。

 糖尿病性ケトアシドーシスのときなどに見られます。

⑤潜血

 (-)から(+-)、(+)~(3+)までの5段階で評価されます。

正常では(-)です。

膀胱炎や腫瘍などで尿路に出血があると赤血球に反応し(+)になります。

尿中のヘモグロビンやミオグロビンも検出します。身体の中で溶血が起こり、ヘモグロビン尿になっても(+)になりますし、筋肉の損傷があってミオグロビン尿になっても(+)になります。

赤血球のために潜血(+)なのか溶血のために(+)になっているのかの判断は尿沈渣で確認する必要があります。

⑥ビリルビン

 (-)から(4+)までの5段階で評価されます。(+-)はありません。

正常では(-)です。

 血中のビリルビン濃度が高いと尿中にもビリルビンが排泄されます。黄疸の指標になります。高いのは肝胆道系の病気が疑われます。

 犬の場合、濃縮尿では正常でもビリルビンは尿から排泄されます。濃い尿での(+)は心配がありません。

 猫では尿の濃さに関係なく(+)は異常です。

⑦ウロビリノーゲン

 (-)から(4+)までの5段階で評価されます。(+-)はありません。

 臨床的な意味は少ないといわれています。

 

<尿比重の検査>

 水を1としたときの尿の重量比が尿比重です。動物の水和状態によって数値は変動します。1回だけの評価では正確ではないため、日をあらため、繰り返し2回から3回くらい測定します。

 夜間はあまり水を飲まないため、朝一番の尿で尿比重を測定し、腎臓の尿濃縮能を評価するのがもっとも良い測定になると思います。

 ふつう犬は(1.0151.045)の間になり、猫では(1.015~1.060)の間になります。

 腎機能が正常に働いていると、濃縮された尿は犬で1.030以上、猫で1.035以上になります。

 1.007よりも低いのは低張尿で、ごく薄い濃度です。

1.008~1.012の間にあるものは等張尿で、腎臓は尿を濃くすることも薄くすることもできないと判断されます。

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尿沈渣は顕微鏡で観察します。
 

<尿沈渣の検査>

尿を高速で回転させると、上澄みと沈殿物とに分かれます。沈殿物を顕微鏡で観察するのが尿沈渣の検査です。尿沈渣では細胞成分、結晶成分、尿円柱、微生物、その他が観察されます。

①細胞成分

 赤血球や白血球、上皮細胞を観察します。正常では赤血球はほとんど観察されませんし、白血球の存在は炎症が疑われます。細胞成分の種類や量によって異常のある部位や原因を推定することができます。

②結晶成分

 それぞれの結晶はその形態から判断ができます。結石としてはストルバイトやシュウ酸カルシウムがほとんどを占めるのですが、結晶のできそこないともいえるリン酸塩や尿酸塩も多く見られます。

 特定の病気の時に出現する結晶もあります。肝疾患では尿酸アンモニウム結晶、高ビリルビン血症ではビリルビン結晶などです。

③尿円柱

 尿円柱は尿細管の中で円筒形に作られます。タンパクと細胞成分からできています。腎臓病では多くの尿円柱が出現してきます。正常でもみられるものから腎障害があると出てくるものなどさまざまです。

④微生物

 細菌や真菌、寄生虫を観察することがあります。

 細菌は形状から球菌なのか桿菌なのか判断します。尿路の感染を意味するものなので、培養検査、抗菌薬の感受性検査など追加検査を行うことが多いです。

⑤そのほかの成分

 油滴や精子のほかトイレ砂や花粉なども混じって見えることがあります。これらは生理的なものです。

 DSC_9704.jpg
直接見たものです。
ストルバイトの結晶が見られます。
バックに写っている小さな点々は赤血球です。



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染めた標本です。
細菌がいるのが分かります。


<おわりに>

健康診断のスクリーニング検査であれば、尿検査は外観検査、スティック検査、比重の検査だけでも十分で、それだけでも欲しい情報は得られます。そうなると自然尿を用いた検査で可能ですから、動物は痛くも痒くも無く検査を受けられます。犬では散歩で排尿をするならば紙コップ持参で出かければ採取できますし、猫の場合もトイレ砂を非吸収性のものにして受け皿にペットシーツを敷かなければ採尿できます。飼い主さんの少しの工夫と、やる気さえあれば、動物は病院での採尿の苦痛を受けずに尿検査だけ受けることが可能です。

一度採尿に挑戦してみてはいかがでしょうか。詳しくはスタッフがお伝えします。

テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

検査結果の見方

 検査結果の見方についてお話しします。

 

この春は健康診断について集中的にお話ししてきました。幼少期の犬猫でも遺伝性疾患を知る機会になること、青年期から中年期は生活習慣を見直す機会になること、高齢期から老齢期は慢性疾患を早く知り早期に治療に入ることができることなどから、健康診断はすべての年齢の犬猫たちの健康を守るのに必要なことだと思います。

 

で、受けていただいた検査からどのようなことを知ることができるのかをお伝えします。検査結果の付票にも記してありますが、箇条書きではわかりにくい点もあるかもしれないので、あらためて記述です。

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簡単な検査は赤血球や白血球、血小板の
数をカウントするだけですが、
さらにくわしく見ていくこともあります。

 <血球の検査>

血液細胞には赤血球、白血球、血小板があります。

貧血や炎症、感染などの有無を知ることができます。

①赤血球の検査

・赤血球の数(RBC

・ヘモグロビン濃度(Hb

・ヘマトクリット(Ht、HCT

・平均赤血球容積(MCV) 

・平均赤血球ヘモグロビン量(MCH

・平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC

・網状赤血球数(RET

*これらは貧血や赤血球増加症などを示す指標になるものです。

*高いとき:脱水、心臓の病気、赤血球増加症などの病気が疑われます。

*低いとき:貧血です。しかしこの検査から貧血の原因を探ることはできません。

*網赤血球は未成熟の赤血球で、高ければ骨髄で再生していることを示します。

②白血球の検査

・白血球数(WBC

*白血球は炎症性疾患などを示す指標になるものです。炎症や感染などで増減します。白血球はさらに5つの分類があります。血液を薄くのばして染色したスライドを作成します。そしてそのスライドを顕微鏡で観察すると、白血球を観察することができます。5種類のうちのどの白血球が増えて(減って)いるのかを知ることができるわけです。

*好中球(Neu)は運動やストレス、炎症で増加します。コルチコステロイドなどの薬の影響でも増加します。ウィルス感染や激しい細菌感染では減少します。

*リンパ球(Lym)は慢性炎症や白血病の時に増加し、ストレスで低値に出ます。

*好酸球(Eos)はアレルギーや寄生虫、腫瘍のときに高値になります。

*単球(Mon)は慢性炎症で高値になります。

*好塩基球(Bas)は慢性炎症の時などで高値になります。

③血小板の検査

・血小板数(PLT

*血小板数は出血性疾患などを示す指標になるものです。急性出血や血小板再生反応があるときに高くなり、慢性の出血で低くなります。免疫介在性血小板減少症など、特定の病気の存在を知る手立てになります。

*出血性の疾患や血管内凝固が疑われるときには全く別の凝固系検査を実施することがあります。

 IMGP0042.jpg
いわゆる生化学検査は、系統別に判断していきます。
同じ検査項目でも複数の組織にまたがって影響しています。


<血液生化学検査>

血液の生化学検査は数値から身体のどこの器官に問題があるのかを検出することを目的にしています。複数の項目を総合的に見て判断していきます。

項目それぞれについての解説ではなく、身体の器官別に、どのような項目で判断していくのかお話ししていこうと思います。今春から、検査項目を増やし、ワクチン時の検査を一部有料にさせていただいておりますが、検査項目が少ないと、少しの臓器のことしか判断ができませんし、異常を見逃すことにもなるのを分かっていただけるとうれしいです。

①蛋白の検査

・総蛋白(TP

・アルブミン(ALB

・グロブリン(GLB

・アルブミン/グロブリン比(A/G

*総蛋白は血液中の蛋白質の総量です。栄養状態や肝機能、腎機能、免疫機能の指標になります。アルブミンの上昇は脱水、低下は肝臓や腎臓、腸などの病気や出血などが疑われます。グロブリンの上昇は脱水のほか、慢性の炎症、腫瘍を心配します。

②肝臓の検査

・アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT

*肝細胞に含まれている酵素です。肝機能の指標に使われます。肝細胞が腫大したり壊死したりすると高値になります。

*肝疾患の追加検査として総胆汁酸(TBA)やアンモニア(NH3)を実施することがあります。肝臓外、肝臓内の血管系異常があると高値になります。

③胆道系の検査

・アルカリフォスファターゼ(ALP

・γグルタミルトランスペプチターゼ(GGT

・総ビリルビン(TBil

・総コレステロール(TCho

*胆道系の疾患の指標になるこれらの検査値は胆汁のうっ滞や胆管炎があると上昇します。

*ビリルビンはヘモグロビンの代謝産物で、溶血や肝傷害、排泄路の閉塞などで上昇します。黄疸を見る検査です。

*アルカリフォスファターゼは骨の成長期(子犬など)、ステロイドなどの薬の影響、腫瘍でも上昇します。

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春の健康診断、受けてみませんか。

④肝不全の検査

・アルブミン(ALB

・総コレステロール(TCho

・血糖グルコース(Glu

・尿素窒素(BUN

*肝疾患が進み、肝不全になると、アルブミンの合成ができなくなるので低値になります。さまざまな代謝がうまくいかず、血糖値や尿素窒素も低下します。この頃には肝酵素の主体となっているアラニンアミノトランスフェラーゼの上昇はなくなります。

⑤腎臓の検査

・アルブミン(ALB

・尿素窒素(BUN

・クレアチニン(CRe

・リン(IP

・カルシウム(Ca

・電解質(Na,K,Cl

・尿素窒素クレアチニン比(BUN/Cre

・対称性ジメチルアルギニン(SDMA

*尿素窒素は腎臓から排泄される窒素代謝物です。腎機能が低下したり出血があると上昇します。クレアチニンも腎機能の低下で上昇します。尿素窒素とクレアチニンの比は二つの数値から算出するものですが、腎疾患ではなく、脱水のために見せかけの高値になってはいないかを判断するのに用いられます。リンとカルシウムは骨の代謝に関係するミネラルです。腎疾患では腎性二次性上皮小体機能亢進症から骨が脆弱になることが多く、リンは高値を示します。腎疾患ではナトリウム、カリウム、クロールなどの電解質の変動を起こすこともあります。対称性ジメチルアルギニンは新しい腎機能マーカーです。早期の腎疾患の発見が可能になりました。

*ネフローゼ症候群があるとアルブミンや総コレステロールに異常が現れます。追加検査として尿検査が必須になります。

⑥膵炎の検査

・アルブミン(ALB

・アミラーゼ(Amy

・リパーゼ(Lip

・尿素窒素(BUN

・クレアチニン(Cre

・カルシウム(Ca

*アミラーゼやリパーゼは膵臓から分泌される消化酵素です。膵炎の指標として使われます。そのほかの検査項目も総合的な判断材料になります。

*膵炎が疑われるときの追加検査として、c反応性蛋白(CRP)や膵特異的リパーゼ(犬:SpecPLi、猫:SpecfPLi)、犬トリプシン様反応物質(TLI)を実施することがあります。

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猫ちゃんだって、健康診断を。

⑦糖尿病の検査

・グルコース(GLu

*血糖値は糖尿病で上昇、低血糖症で低下します。食事に影響を受けるので空腹時に検査をするのが望ましいです。またストレスやステロイドホルモンの影響によっても上昇します。

*糖尿病が疑われる場合は、糖化アルブミン(GA)や尿検査が追加検査になります。

*血糖値が低いとき、子犬の低血糖症や成犬の膵臓腫瘍が心配です。

⑧副腎をみる検査

・アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT

・アルカリフォスファターゼ(ALP

・γグルタミルトランスペプチターゼ(GGT

・総ビリルビン(TBil

・総コレステロール(TCho

・血糖グルコース(Glu

*これらの上昇は副腎皮質機能亢進症を疑わせます。

・グルコース(GLU

・尿素窒素(BUN

・クレアチニン(CRe

・電解質(Na,K,Cl

・尿素窒素クレアチニン比(BUN/Cre

*これらは副腎皮質機能低下症を総合的に判断するときに用います。

*副腎の病気が疑われるとき、追加検査としてコルチゾール値を調べます。特殊な検査方法を採ることがあります。

⑨甲状腺をみる検査

・総コレステロール(Tcho

・アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT

・アルカリフォスファターゼ(ALP

*犬では総コレステロールの上昇で甲状腺機能低下症が、猫ではアラニンアミノトランスフェラーゼやアルカリフォスファターゼの上昇で甲状腺機能亢進症を疑うことがあります。(血液検査結果からだけでなく、生体の方からも総合判断して疑いが出てくるものです)血清総サイロキシン(T4)や遊離サイロキシン(FT4)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の(猫ではおもにT4のみ)追加検査が必要になります。

 IMGP0043.jpg
血液検査だけで無く、尿検査や画像検査なども見て
総合的に判断しないと分からない病気もあります。


<おわりに>

同じ検査項目が何度も出てきていることにお気づきのことかと思います。一つの検査項目が高いまたは低いということで一つの病気を疑うわけではありません。すべて総合判断で、さらに身体をよく知るためにはそこから追加検査等も必要になってきます。検査結果の解釈は実はとても難しいものなのです。

臨床検査から謎解きのように病気の本丸に入っていく学問は「臨床病理」といってひとつの独立した分野になっています。すべてを総合的に理解していると、からだが発信している情報をクロスワードパズルのように当てはめ、病気を探り出すことができます。非常に理論的で奥の深い分野です。

きょうのお話しはここまでです。

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ハート動物病院

Author:ハート動物病院
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オフィシャルサイト:http://www.heart-ah.com/

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