心臓病を知る血液検査

先週は健康診断の腎臓病特別セットの検査項目、SDMAについてお話ししました。今週は心臓病特別セットの検査項目、ANPについてお話しします。

 

<バイオマーカーというのは>

ANPというのは心臓のバイオマーカーです。バイオマーカーというのは血液とか尿などに含まれるタンパク質やホルモンなどを測定して、ある病気にかかっているのか、どのくらい重症なのかを知ることができる物質のことです。心臓のバイオマーカーには、心筋で作られるホルモン(ANPBNP)や心筋に特異的なタンパク質(心筋トロポニン)があります。心臓細胞に無理がかかっているのかや傷害を受けているのかを血液の検査で数値を出し、その値から心臓病や心不全の様子を把握することができます。

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わんこが歳をとったこと、以外と気づきにくいものです。

<心臓検査に先だって>

心臓の検査といえば、まず聴診。心雑音が聞こえたり、咳や運動不耐症(*)などの臨床症状があればレントゲンや超音波などの画像検査。脈が乱れていれば心電図。という評価方法が一般的です。これらの検査は心臓の機能をみるうえでとても大事です。ですが、レントゲン検査は結構高価です。そして吸気や呼気によって胸郭の膨らみが変わりますし、心臓の方も拡張期と収縮期で大きさに変わりが出ます。それでレントゲンに写った心臓と胸郭の割合を数値で出すのに違いを生じることがあります。また超音波検査は時間がかかります。犬がじっと静かにしていてくれないとうまくポジショニングがとれなくて、詳しく見ようにも時間だけが経ってしまうし、循環器を専門にしている先生のように逆流圧などの測定ができなくてテクニカルエラーも出てしまいがちです。心電図検査は犬が震えていると、その小刻みな震動をとらえてしまいきれいな波形が得られず評価に戸惑うこともあります。

最初のとっかかりを得たいと思うとこのバイオマーカーは血液を採るだけで良いので簡単で実用的です。異常値が出たら次の判断を行えば良いかと思います。

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わんこの死因、第2位は心臓病です。
 

<ナトリウム利尿ペプチド>

これまで心臓の役割は「血液を全身に送り出すポンプ作用」として知られていました。ですが、心臓の研究が進むにつれて、心筋の細胞の中に特殊な顆粒があり、心筋が伸びるときにこの顆粒から血中にホルモンが分泌されることが分かってきました。血管を広げる作用やナトリウムを介してオシッコを出させる作用があることが知られていて、このホルモンの作用によって身体を巡る血液の量が保たれ、血圧も調整されているのです。

心房筋から出されるホルモンは心房性ナトリウム利尿ペプチド(Atrial Natriuretic Peptide : ANP)です。また心室筋から出されるホルモンには脳性ナトリウム利尿ペプチド(Brain Natriuretic Peptide : BNP)があります。どちらのホルモンも分泌されるときにANPNT-proANPBNPNT-proBNPが放出されますが、検査に使われるのはANPのほうはANPが、BNPの方はNT-proBNPが用いられています。

ANPは人用の測定キットが犬猫でも利用可能です。アミノ酸配列が似ているためらしいです。NT-proBNPは犬専用の抗体を用いて測定されます。

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心臓は徐々に悪くなっていきます。

ANPが評価すること>

犬に多い心臓病である僧帽弁閉鎖不全症では、僧帽弁の逆流があるので心臓から全身へしっかり血液を送り出すことができません。血液が心臓内にうっ滞しています。心臓内に多量の血液が充満している状態を「容量負荷がかかっている」と呼んでいます。左心室から大動脈へスムーズに血液が流れず、左心房に血液が逆戻りした病態が進んでいくと、左心房には高い圧がかかることになり、次第に左心房は拡張していきます。左心房圧が高まると肺動脈にも同じように圧力がかかるようになります。

胸部レントゲンによる心臓の検査は、こうして拡張した部分が心臓の陰影で膨らんでいるのを確認します。心臓超音波検査は僧帽弁の逆流している様子をリアルタイムに見たり、左心房のサイズを測定したり、流速の波形からどのくらい圧がかかっているのかを知ります。

ANPは左心房や肺動脈の圧が上昇すると、同じように上昇します。それも重症度と一致して上昇します。おおよその目安として、診断基準値(これ以上高いと心臓病の心配があります。これ以下なら大丈夫でしょう、とする数値)は25pg/mlです。そして、100pg/mlを越えるような数値が出れば重篤な心不全の兆候である肺水腫になってしまうリスクが高いということもわかっています。そして治療により心臓の負荷が抑えられていると、数値は低下してきます。つまり、うっ血の兆候を知ることもできるし、病態によって上下するので、治療効果もこれによって判断することができる検査です。

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まずは健康診断受けてみませんか。
 

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心臓検査は画像検査まで含めたものが理想ですが、
とりあえずバイオマーカーで心臓の傷害レベルを見ておく、
ANP検査の結果から画像検査をするという順でも
悪くはありません。




<結果から>

僧帽弁閉鎖不全症は、重症度をグレード分けされています。そのグレードにANPの数値を当てはめるとすると、①25 pg/ml未満のものは心臓病の心配は無いでしょう、

25 pg/mlから50 pg/mlの間くらいのものは血液の滞りがきわめて少なく軽症でしょう、

50 pg/mlを越えているものは血液うっ滞が中等度にあると思われるし、

100 pg/mlを越えたものでは重度な心不全である肺水腫になる可能性がかなり高いので十分な注意が必要です、

とお伝えすることになると思います。

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元気いっぱいそうに見えても、
実は心臓病が始まっているかも。

<おわりに>

健康診断では特別なことは行わずできるだけ簡単に、できれば低価格で、確実に悪いところを見つけ出すことを目的にしています。今回、検査機関さんとのタイアップで心臓病特別健診をワクチン時検査に加えることができました。心臓病は心配だったけれど、心臓病の検査はいろいろあって時間がかかるし、費用も心配だったし、と躊躇されていた飼い主さんにはすごくいいんじゃないかなと思います。この機会にぜひご利用ください。 
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動物飼育と子どもの教育

 小動物の獣医さんの参加する学会というと、犬や猫などを対象にした先端獣医療の研究成果を発表したり、聞いたりを想像されるかもしれません。規模の大きな学会は大動物の診療をしている先生、公衆衛生方面の先生、お役所関係の先生、獣医師以外で動物関連のお仕事をされていらっしゃる先生たちも一同に集まります。あまりにも畑違いすぎてタイトルを聞いてもすっかり分からない研究内容のお話しも沢山あります。が、産業動物におけるアニマルウェルフェアのことやホースセラピー、災害時の動物救援センター構想、地域猫対策、笑顔あふれる動物園づくり、動物愛護管理法のことなど、人と動物双方に関わるさまざまな話題も拝聴できます。これは犬猫の病気を中心にした勉強会とはまた違う魅力になります。こんなシンポジウムは複数箇所で同時開催されるので身体一つ、脳みそ一つではとても足りませんから、どのお部屋でどの先生のお話を伺おうか悩みながら参加しています。

今日は学会でも話題になっていた「学校飼育動物」のことについてお話ししたいと思います。

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動物の飼育が子どもに与える影響については日々思うことがいっぱいです。動物病院には飼育者であるお父さんやお母さん、おじいちゃんやおばあちゃんと一緒に、子どもたちも来てくれます。この子たちは動物が大好きです。体調不良で塾をお休みしてもおうちで寝ていないで動物病院には足を運んでくれますし、長期休みには必ず顔を出してくれたりします。いま、家庭で犬や猫を飼育できることはとても貴重なことだと思います。実際には動物が好きだけど親の許可が無くて飼うことができない子どもたちもいるし、残念なことに動物に全く関心が無い子どもたちもいます。

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がっこう動物新聞を掲示することがあります。

<動物飼育と子どもの教育>

①飼育はたいへんだ!

動物を飼うと、自由な時間が減ってしまいます。家庭動物は自分一人では生きていけないので飼育者がいろいろな世話をしなければなりません。まずはそうした管理の手間があることを子どもたちは体験します。

はじめにおうちの方にお願いしたいのは、危なっかしい接し方に対しては「正しい扱い方」を教えてやること。動物に噛まれたり、引っかかれたりしないようにしてください。それから、子どもたちは夢中期が過ぎるとお世話がおろそかになってきますから、そのときの対応です。「あんたが飼いたいっていったから飼ったんでしょ。ちゃんと世話をするって言ったでしょ。ほら、塾の前に犬の散歩に行っといで。」は、忙しいお母さんの発してしまう言葉ですが、ここは一部でも世話ができていることを認め褒めていただきたいです。「ポチは○○ちゃんのことが大好きだよね」「ポチは大喜びだね」と。行動を認めてもらえるとまたモチベーションがあがります。こんなことをしながら、「飼育する方も、飼育される方もいっしょに育っていく」感じです。新米のパパやママが赤ちゃんを育てていくのにちょっと似ているように思います。このようにして子どもたちが達成感のようなものを得られる喜びを持ってくれると、もっと動物好きに育ってくれそうです。

②思うようにならない!

それから、そのような手間をかけても、動物は勝手に行動します。自分の思うようにならないことを体験することも大切なことです。

思うようにならない動物を「しかる」のは間違いで、正しい接し方をすると動物は好ましくない行動をしなくなることを子どもたちに教えてやりたいです。こちらが思うようにしようとしても相手には相手なりの理由があるからそのような行動に出るのだと分かって初めて、「相手の立場に立って」「相手がどう考えているのか」をおもんばかることができます。「動物の行動学」という理論に基づいた「愛犬のしつけ」が有効です。そうした行動の中には「動物本来の本能に基づいた行動」もありますが、相手を理解することから「良好な関係性を築くこと」が学べます。

もし困った行動をとる動物にどう対処したら良いのか分からないときは、ご相談にお越しください。

③話し相手になってくれる!

楽しい時間を共有できる!

さらに動物と子どもたちとの距離が縮まると、子どもたちは世話をしながら学校であったいろいろな出来事を動物に打ち明けるようになります。テストの点が悪かったとか、時には友達関係のこともあるかもしれません。どんなことがあってもいつでも動物はやさしく受け止めてくれます。もちろんいっしょに楽しい時間を過ごすこともあります。たのしくじゃれ合って遊ぶ兄弟のような関係です。

動物飼育を通してこういう時間を過ごすことが子どもの成長に良い影響を与えてくれます。ここで動物は子どもたちに対して「心理的なサポーター」という大切な役割を果たしています。

④そしてオンリーワン!

愛情をかけることはいつも気づかっている、関心を持っているという行動や態度から現れます。名前をつけてかわいがるのはその動物が自分にとって「オンリーワン」になっていることです。ご家族の動物に対する接し方から子どもたちはこれを自然に身につけていきます。

ただ、残念なことに逆効果になってしまうこともあります。もしご家族の方が多忙やそのほかを理由に十分な世話ができていないと、それが子どもたちの愛着のレベル低下になってしまいます。どのような場合もぜひ、動物への気づかいを忘れないでください。

⑤家族が一つに!

家族間の会話も動物の話題で増えてきます。動物に何かイベントがあると家族の目が同じ方向を向くようになります。

誰かが気づいた動物の変化、面白い動作、誕生日のお祝い事でも会話は弾むでしょうが、具合が悪いとかいうときにも家族が共通の話題について考え、解決策を練っていきます。思いは一つです。もし動物の変化に最初に気づいたのが子どもであったら、それは観察眼に対して褒めてやりたいところです。とにかく動物にはこうした求心力があります。

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愛知県獣医師会編著の飼育ハンドブックです。

<学校での飼育動物管理>

子どもたちが家庭で犬や猫を飼育した経験があると答えているのは約半数、という結果が出ています。(国立青少年教育振興機構。2016.7)このように直接体験の機会が減っているこどもたちには学校飼育動物の果たす役割は大きいものになってきます。生き物に親しみを持つこと、そこから命を尊重すること、慈しむこと、そして命について学ぶことなど学年が上がるにつれて目標は変化していきますが、底辺をなすものは温かさの通ういのちを大切にすることです。

家庭飼育と同じように、①世話のたいへんなことを感じ、②動物が思わぬ行動に出ることを困ることでしょう。それはお休みの日、特に長期休暇中の「餌やり当番」に現れてくるかと思います。学校での飼育にはともすると③動物から心理的サポーターをしてもらっていることや④オンリーワンとしての深い愛着を感じ取れない子どもたちも多いのではないかと思います。飼育係の子どもたちの間では⑤共通の話題から友達意識が増すかもしれません。けれど義務でお世話をするだけの教育では本末転倒になってしまいます。世話をしていく中で、子どもたちにはぜひ動物の温もりや命を感じてもらいたいと思います。

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どんな飼育舎が良いのかわかります。

<虹の橋のたもとへ>

それからどうしても避けることができないことに「死を体験すること」があります。

子どもたちが生まれたときにすでにご家庭で動物を飼育していた場合、または残念なことに寿命よりも早く伴侶動物に死が訪れたようなときに、子どもたちは各ご家庭で「死」を体験することになると思います。ウサギの寿命は犬や猫の寿命よりも短く平均5歳から8歳くらいです。ある程度お子さんが大きくなってから動物飼育を始めたようなご家庭だと、ライフサイクル的にみて初めての死の体験は家庭動物よりは学校飼育動物の方が確率は高くなるかもしれません。

「死んだら生き返らない、死んだ動物は見たり感じたりすることができない、誰にも死が訪れる」ことが「死」の概念だそうです。低学年の子どもたちにどのくらい理解されるのかは分かりませんが、お世話当番が回ってくる中学年の子どもたちにはもう理解できるはずです。

ずいぶん前になりますが、「温かい」こと、「触ると(受動的に)うごく」(能動的なものではないのだけれど)ことから、「まだ死んでいないはず」と飼育係の小学生さんが横たわったウサギを連れてきてくれました。若い先生も対応に困っていらっしゃいました。もしかすると死を分かっていたのだけれど受け入れられなかったのかもしれません。大切なものを失った子どもの反応に、ウサギに対する愛情が深かったことを感じました。死を受け入れることは私たち大人にだってつらいことです。それでも、喪失の悲しみから立ち直ることは、飼育していること以上に子どもたちに大きな成長が得られることだろうと信じています。

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オスメスの見分け方とか繁殖について。

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理想の食餌は?

<みんなに愛されて幸せだった>

今回の学会のご講演の中で、西東京市保谷第二小学校の古家、高橋両先生から子どもたちの「死」に対する反応がまちまちであることを教えていただきました。大泣きする子ども、静かになく子ども、受け入れられず落ち着かない子ども。その中で先生が「泣いていないのは愛情が浅いからなのではない」「悲しい出来事に対して受け取り方や反応はみんな違う」「しっかりお別れしましょう」と子どもたちに伝えると子どもたちの緊張もほぐれたとおっしゃっておられました。

子どもが初めて「死」と向き合うとき、大人はどのように対応したら良いのか、悩むところです。まずは静かに、お別れは悲しいことだと共感してやりたいです。そしてご遺体になったお身体にもそれまでと同じ姿勢で、自然になでて接してやりたいです。ブラシングやリボン付け、大好きだったおやつやおもちゃ、お花などを添えるなどの旅立ちへのお支度を調えつつも、また膝に抱いてなでるのも有りだと思います。お手紙を書くことができるお子さんならぜひお別れの言葉や絵を描いて、お手紙にしてもらいたいです。楽しかった思い出をお話ししながら、亡くなってもいつでも話しかけて良いし、それを動物は喜ぶと教えてやりたいと思います。

「生きているうちにしっかり愛情を注ぐ」のは後悔のない死を迎えるのに重要だと思います。

「みんなに愛されて動物が幸せだった」。旅立っていくすべての動物たちに、それからその動物に関わったすべての方にそう伝えたいと思います。

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飼育について、よくある質問と答え。

<本のご紹介>

新年度が始まりました。今年から新しく飼育係の学年に進級した子どもさんもいらっしゃるでしょう。着任早々、経験のない先生が動物飼育係に任命されることがあるともお聞きしました。愛知県獣医師会から「学校どうぶつ飼育ハンドブック」が出ています。待合室においてあります。実践的な内容なので、すぐに役に立つことばかりかと思います。お時間あるときに開いてみてください。

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動物の戸籍を作りましょう。

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飼育日誌をつけましょう。

<追加>

そうそう。はじめにご紹介したような学会には必ず「市民公開講座」があって、自由にご参加いただけます。もしお近くで開催されるというような情報が入手された日にはぜひぜひ、いらしてくださいませ。

 

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大井神社 島田市

 堅いお話が続いていました。
今日は神社さんの話題でひと休憩。

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すっきり。すがすがしい。

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お鈴のハートがかわいらしいです。
 
静岡県島田市にある大井神社さんです。

ご祭神は三柱ともに女性の神さま。そのためでしょうね、ご縁のお願い、安産のお願い、そして子供の安らかな成長のお願いといった内容のお願い事のご案内が目に入ります。お参りにいらしていたのも「お子さんを連れたおかあさんたち」で、「お誕生のご報告」や「子供の成長の折々のご報告」。
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馬酔木の花、咲いていました。
 

 
例によって写真だけで、文字はごくわずかのブログです。
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大黒さまのお社もありました。

神社さんに入ったときに感じるものがある神社さんと、残念ながら感じるものがない神社さんとあります。神社さんの格とか広さなどとは関係ありません。こういうのは神さまとの相性もあるのでしょう。強く惹かれて何度でも行きたくなってしまう神社さんとか、深く心証に残る神社さんとか。不思議です。それからその感じ方がいろいろです。で、ここは穏やかで、やさしい気持ちになれる神社さんでした。

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ジャンル : 旅行

腎臓機能のバイオマーカーSDMA

 犬の10頭に1頭が、猫の3頭に1頭が腎臓病になるといわれている現在、腎臓病を早期に発見し早いうちから腎臓を守っていくことは、動物の健康寿命を延ばし、QOLの高い生涯を提供することができます。

今日は腎臓のバイオマーカーとして、今年から積極的におすすめする検査項目、SDMAについてお話しします。

 

<腎バイオマーカー>

バイオマーカーというのは、病気があるのか無いのかということや、病気があるという場合その病気の程度を、血液中のタンパク質などの物質の濃度として知ることができる検査項目です。

腎臓の機能は大きく二つの系統から調べることができます。腎臓を構成しているネフロンの構造からこうなります。

一つ目は

①糸球体濾過率(GFR)で、身体の中で不要になった老廃物を漉しとる「糸球体」の力を調べるものです。

もう一つは

②尿濃縮能で、尿が漉されてからも再利用できるものをもう一度身体の中に戻す仕事をする「尿細管」部分の力を調べるものです。

一般によく知られている腎機能をみる検査項目は血中尿素窒素(BUN)と血清クレアチニン(CRE)値です。これらは二つとも糸球体の機能をみています。一方、尿細管の機能をみるのは尿比重(USG)になります。

初めて聞く検査項目かもしれませんが、腎バイオマーカーとして腎臓病の早期発見に用いられる検査にシスタチンCとSDMAがあります。これらは二つとも糸球体の機能をみる検査です。

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症状を出す前の健康診断で病気を早く発見していくことが大切です。

 <求められる検査>

腎臓の機能を調べるとき、糸球体濾過率(GFR)は絶対的信頼のおける検査です。しかし検査が煩雑で大変なため、犬や猫では簡単に調べることができません。人では年齢や性別、血清クレアチニン(CRE)値からGFRを求める計算式もできていますが、犬猫にはそれもありません。そこでGFRに代わる何か適切な検査がどうしても欲しいところです。

腎バイオマーカーには、

     できるだけGFRとぴったり重なり合うような検査結果が出るようなもの(正確性)、

     簡素な検査で調べられるもの(利便性)、

     誰もが無理なく受けられるもの(経済性)、

     他の因子に影響を受けないもの(単独性)

が求められます。そして、

     早期に病気を発見できること

は健康診断などのスクリーニング検査では大変重要なことです。

 

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腎臓病は隠れて進行していきます。

<これまでの腎機能検査の経過>

もともとは臨床症状が出て初めて来院され、検査をして病気を知り、治療を始めていました。臨床症状がはっきり分かるのは尿毒症のような状況になってからです。がんばっても良い結果が出ることはありませんでした。「腎臓を悪くするとそれはおしまいを意味する」と思われていました。こんな時代もありました。(今でも情報を広くお届けすることができず、猫や犬に腎臓病があることを知らないで来られた患者さんもいて、ずいぶんと病状が進行してしまっていることもあります。それはそれで仕方がないので、この時点から頑張って治療をスタートさせます。昔に比べると治療も進歩してきましたから、まだ頑張れることが沢山あります。)

それから、それではあまりに悲しいので「腎臓が悪くなる前に知りましょうよ」ということで、定期の健康診断で血液検査を受けてもらうことになりました。BUNCreの数値から腎臓が悪くなっているのを発見しました。けれどこれらの数値が上昇し始めるのは、腎臓の機能が約75%失われた段階です。見つかったときには残りが1/4という寂しい結果です。それでは遅すぎると誰でも思います。

それで、今度は「定期健康診断の血液検査に加え尿検査や血圧測定なども実施出来ると良いよね」ということになりました。まだBUNCreがあまり高くなっていないうちに腎臓の機能の低下を知り、早いうちから腎臓を守りましょう、ということになりました。尿比重はクレアチニン値の上昇が始まるより少し前に低下し、腎臓病をより早期に発見することができます。しかし様々な要因によって飲水量が増えると当然のこととして尿比重も下がりますし、糸球体の機能(老廃物を漉しとる力)というより、尿細管の機能(尿を濃くする力)をみるためのものですからGFRとの相関がぴったり合うものではありません。また猫から尿を採ることはそう簡単ではありません。病院で採尿しようにも、連れてこられる前にトイレを済ませた後で膀胱に尿がたまっていないこともあります。

こうなると、やはり血液検査で腎臓の変化を知ることが出来るのはとても便利なことです。今回ご紹介するSDMAは血液検査で調べることができます。そして何より、今までよりももっと早期に腎臓病を発見できることができます。

SDMAの値を調べるのは院内のラボでは出来ませんが、昨年からIDEXXさんで、今年からは富士フィルム・モノリスさんでも検査を実施してくださいます。信頼できる外注検査機関です。

 

腎臓は30万とか40万個ある腎臓内のネフロンそれぞれの働きで成り立っていて、個々のネフロンが少しずつ働けなくなってやがては全部のネフロンが働かなくなってしまうものですから、働けるネフロンが減少してきたら、残るネフロンには無理をさせず、ぼちぼちでいいのでなが~く仕事をしてもらうのが、腎臓を長生きさせる秘訣になります。臨床症状を出していない、一見健康なときから腎ケアをし、腎臓寿命を延ばしていくことが大切なことになります。

これまでは血中尿素窒素(BUN)や血清クレアチニン(CRE)濃度を中心に腎臓を評価してきました。これからもこの2つの検査項目は腎臓をみるのに外すことができない項目であることに変わりはありません。SDMAに関しては、それらに加えて腎臓機能を知る強いメンバーが登場したということです。

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まだ腎臓の機能を残しているうちに異常を発見します。

SDMAというのは>

さて、腎機能評価項目、SDMASymmetric dimethlarginine(対称性ジメチルアルギニン)の略です。前述の通り、血液検査で数値を知ることができます。SDMAはクレアチニンとの相関も高く、腎臓の機能を表すことができます。腎機能が約40%失われた段階で上昇を始めるので、早期診断に役立ちます。これまでの検査に比べ、どのくらい早く腎機能の低下を知ることができるのかといいますと、2015年のACVIM Forumで報告された内容からすると、血漿クレアチニン値が上昇する(2.0mg/dlよりも高値になる)前、犬では平均11か月、猫では平均17か月くらい前に、血漿SDMAは異常値としている数値を超えたということです。

この検査は身体の筋肉量に影響されないため、筋肉量の少ない小型犬や高齢の動物、痩せている動物でもそのまま腎機能を見ることが可能です。

ただし血液が溶血していたり、黄疸があったり、高脂血症がある場合はそれらの影響を受けるので、それらが無い場合に数値を判断します。

動物の腎臓病を気にする飼い主さんには、もちろん私たちにとっても、うれしい検査項目です。

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猫さんは慢性腎臓病を発症することが多いです。
でも腎臓病は猫ちゃんだけの病気ではありません。
わんこも要注意!

<もうすこしSDMAのこと>

SDMAが身体でどのような役割のある物質なのかはよく分かっていません。「対称性」という頭が付くくらいですから、非対称性のジメチルアルギニンもあります。Asymmetric dimethlarginine ADMA)です。どちらもタンパク質がメチル化してできたものです。ADMAはさらに分解され、別の物質になります。腎臓からの排泄は20%くらいです。(SDMAは分解されること無く90%以上がそのまま尿中に排泄されるので、腎臓機能の指標になります。)

ADMAは人で心血管系の病気の発生と関連があることが分かっています。高血圧や血管内皮の障害にも関与しているようです。もしかすると犬や猫のSDMAも心血管系疾患の発生に関与しているのかもしれません。

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早く治療を始めれば、病気の進行を遅らせることができます。

SDMAIRISCKDステージ>

ここまでなら腎臓は大丈夫、これ以上だと心配というラインを引くところのSDMAの数値は14㎍/㎗です。

クレアチニン値が参考範囲(犬ではCre1.4mg/dl、猫では1.6mg/dl)に入っていてもSDMAが続いて(1回だけで無く複数回の検査で)14㎍/㎗を超えていればIRISCKDステージ1に入ることになります。ステージ1では、尿検査や血圧測定などが実施され、それぞれに異常が見られたら治療を開始することになります。高窒素血症になる前の最も早期の段階で腎臓の危険信号を発見できて、ラッキーな犬猫たちがこのグループになります。

さらにIRISのステージ2、ステージ3とSDMAの数値とを見合わせて、従来の結果からはステージ2(または3)と評価されていても、その上の段階、ステージ3(または4)の範囲に入ることになる場合もあります。早々に次の段階の推奨される治療に入っていくことになります。今回は早期発見の意義としてのSDMAの紹介のため、具体的な数値は割愛します。

腎機能低下が進行するとSDMAの値はそれに伴って高くなっていきます。そのため、SDMAは早期発見の指標となるだけでなく、慢性腎臓病の進行具合を見たり予後を考えたりする参考にもなります。

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症状に気づいてからでは遅い!
気づく前の検査が重要です。

<まとめです>

SDMAは糸球体濾過率(GFR)と相関して数値が上昇します。これはクレアチニン(CRE)とほぼ同じです。ですが、クレアチニン(CRE)よりも少し有用です。それは患者の筋肉量に影響を受けることがないからです。それからクレアチニン(CRE)濃度が上昇するよりも早くSDMAが上昇するので、このバイオマーカーを使うと、慢性腎臓病を早期に診断することができます。SDMAは腎臓の悪化具合を示すバロメーターにもなります。腎機能の悪化に伴ってSDMAの数値も上昇するので、病気の進行の指標にもなりますが、予後の判断をする材料にもなります。

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健康診断のすすめ

いまさらですが、今日は健康診断のおすすめです。

ホームページを新しくした際に、予防獣医学の重要性を強調しました。春、年に1回だけ来てくれるわんこさんが多く訪れる季節です。せっかくですから、狂犬病の予防注射をし、フィラリアの血液検査を行う時に健康診断もどうかしら、という当院からのご紹介です。

 

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パンフレットをお手にとってご覧ください。

<予防獣医学というのは?>

WHOの提唱している予防医学というのは、「病気になってしまってから病気を治すより、病気になりにくい身体をつくり、病気を予防して健康を維持する」という考えに基づいています。これを獣医学に当てはめて考えてみます。

1次予防

健康な時から栄養や運動に気を配り、生活習慣の改善、生活環境の改善を通して病気にならない強い身体をつくります。

ワクチン接種による病気予防、

フィラリア予防薬の投与、

③ノミやマダニの駆除剤による外部寄生虫の予防

はよく知られていますね。そのほかに、事故を防いでけがをしないようにするという観点から、

猫を屋内飼育にすること

も予防対策です。さらに

避妊手術や去勢手術を行うと将来的に予防することができる病気もあり、

幼いうちに不妊手術を行うことも有意義なことです。

歯科ケアで歯周病予防をする

ことも大切です。

バランスのとれた食事と

適度な運動で肥満予防

をするのも大切です。

2次予防

病気の発生を早期に発見し、早期に治療に入り、病気が重症化するのを防いだり、進行するのを抑えたり、合併症の発生を阻止します。

これには

定期的な健康診断と

結果に基づくアフターケア管理、

フォローアップの治療

が欠かせません。

3次予防

不幸にして病気になってしまってからも、

今後の再発を予防する

ことは大切ですし、一時的に機能が低下してしまった状況からでも

②リハビリテーション

によって、機能を回復させQOLの高い生活を得ることができます。

 

今からお話しする健康診断は2次予防になります。

病気の2次予防の目的は、放っておくと重症化したり合併症を併発したりする病気を早期に見つけ、悪くならないうちに治療を開始し、進行するのを抑えて、生活の質を高くすることです。

症状として表れる前の小さな変化を検査で見つけましょう。

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各コースのご案内です。


<ライフステージに応じた検査>

健康診断が必要なのは高齢の動物たちだけではありません。それぞれのライフステージに応じて発見できるとよい病気があります。

①幼少期の犬と猫

幼少期の健康診断では、遺伝性の病気を発見できることがあります。また、病気予防のために不妊手術を受けようと思っていらっしゃる場合にも、ぜひおすすめしたい検査になります。

②青年期から壮年期の犬と猫

青年期から壮年期は病気とは無縁のように思われがちですが、この時期から生活習慣病は始まっています。健康診断で病気を発見し、早期に生活改善を行いましょう。大事に至らないように治療を始めることが大切です。

③高齢期から老齢期の犬と猫

さまざまな慢性疾患が発症するときです。あらゆる角度から幅広い検査をして、まさか!というような病気を発見していきます。健康で長生きしてもらうのが目的です。

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動物は気づかないうちに私たちの年齢を越えていきますね。

<健康診断のプラン>

お気軽に受けていただけるよう、血液検査だけの簡易コースから、尿検査や血圧測定などを加えたコース、画像検査(レントゲン検査、超音波検査)を含めたコースまでいくつかのプランをご用意しました。

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おきがるコース、ひょうじゅんコース、あんしんコース、かがやきコース。
検査内容のご説明です。

①おきがるコース

血球検査と16項目の血液生化学検査を行います。

貧血の有無、血糖値、肝臓や腎臓の機能を知ることができます。

定期健康診断の入門に。

②ひょうじゅんコース

おきがるコースに電解質の検査を加えています。膵臓の働き、高脂血症についても知ることができます。心配になっている病気にターゲットを絞った追加検査もできます。

すべての犬、猫におすすめです。

③あんしんコース

ひょうじゅんコースに尿検査と血圧測定を行います。腎臓の機能をより詳しくみていくことができます。

オプションで炎症の有無や、心臓や甲状腺の機能を調べることもできます。

高齢の動物におすすめです。

④かがやきコース

あんしんコースに画像検査(レントゲン検査、超音波検査)を加えています。心臓の大きさや肺の様子、体内の腫瘍、腎臓の内部構造や胆のうや肝臓などについて、外観からは分からない各臓器の異常を見つけることが出来ます。さまざまなオプションの追加が可能です。

身体の状況をしっかりつかんでおきたい、いつまでも元気でいて欲しい。そんな願いに直結します。

*かがやきコースはご予約ください。

*検査結果は後日報告です。

*膀胱内に尿がたまっていないと採尿できないことがあります。自然尿をお持ちくださるか、お預かりし、時間をおいて院内で採尿するか、または後日いらしていただくことになります。

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病気になる前、症状が出る前の健康診断をしましょう。

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検査をしたら異常が出た、というのは7歳以上からのことが多いみたい。

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わんちゃんの健康診断、いろんな検査があります。

 <ワクチン接種のときの血液検査プラン>

さらにお手軽に受けていただけるよう、ワクチン接種時の特別コースもご用意しました。以下にご紹介するのは一般身体検査と血液検査だけのコースで、お時間のかからないプランです。
  
①プラン1:おてがるコース

血球検査と16項目の生化学検査を行います。

②プラン2:ひょうじゅんコース

血球検査と16項目の生化学検査、電解質検査を行います。

すべての犬に。前年の6項目検査で異常値が見られた場合には特におすすめです。

2500円でご提供いたします。

これだけではご心配だとお考えの場合は、オプションで追加項目を設定します。

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検査機関さんとのタイアップでできあがりました。
ハート動物病院オリジナルの検査項目を選りすぐって
コスパの高い検査が実現しました。
一押しはこの2つの検査です。

③プラン3:ハートの心臓病コース

血球検査と心臓病に関連する10項目の生化学検査に、心臓病のバイオマーカーである心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)を組み合わせました。心臓病を早期に発見するための特別コースです。

8歳を超えた小型犬におすすめです。

3500円でご提供します。ANPだけでも5000円いたします。たいへんお値打ちです。
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④プラン4:ハートの腎臓病コース

血液検査と電解質検査、16項目の生化学検査に、腎臓病のバイオマーカーである対称性ジメチルアルギニン(SDMA)を組み合わせました。腎臓病を早期に発見するための特別コースです。

9歳を超えた犬におすすめです。

3500円でご提供します。
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 猫ちゃんの健康診断>

ワクチン時プラン1以外の検査を随時お受けしています。ワクチン接種と同じ日でも、それ以外の日でもOKです。

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猫さんも健康診断!

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オプションで感染症や糖尿病の検査もお受けします。

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高齢猫ちゃんに多い慢性腎臓病の早期発見コースおすすめです。
甲状腺機能亢進症の検査はこの検査にオプションで。
いつもよりお値打ちにご提供しています。

①ひょうじゅんコース、

②ハートの心臓病コース、

③ハートの腎臓病コース、

④あんしんコース、

⑤かがやきコース

からお選びください。

猫さんはたいへんデリケートな動物です。犬の来院が多い賑やかな季節にいらっしゃった場合は、採血などの獣医療行為に協力的になってくれない場合があります。もし来院されて、「わんこが多いな」「混んできたぞ」と感じられたときは、すぐに受け付けまでご連絡ください。先に静かなお部屋にお預かりし、順番が来たらお呼びします。

 

<健康診断で異常が分かったら>

健康診断を通して生活上の改善すべき点や健康状態が見えてきます。

これから生活習慣を「変えていこう!」と思われた飼い主さんには、生活改善や食事変更のプランニングを立て、サプリメントの利用などお薬に頼らないプレ治療など、今後の生活を総合的にフォローアップいたします。

病気の発見があった場合には、治療のご提案をさせていただきます。 

この機会にぜひ健康診断を受けてください。




テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

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ハート動物病院

Author:ハート動物病院
ハート動物病院です。
〒445-0062
愛知県西尾市丁田町杢左51-3
TEL/0563-57-4111
オフィシャルサイト:http://www.heart-ah.com/

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