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ノミの予防法2

 
前回の続きです。
現在人気のある予防方法です。
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4.スポットオンの滴下剤

フロントライン(ベーリンガーインゲルハイム)、マイフリーガード(DSファーマ)、フィプロスポット(共立製薬)、アドバンテージ(バイエル)、フォートレオン(バイエル)、レボリューション(ゾエティス)

滴下タイプのノミ・マダニ駆除薬は「スポットオン製剤」と呼ばれます。滴下剤は犬や猫の皮膚、通常は肩甲骨の間(~首の付け根)に塗布します。それはこの部位であれば、動物がなめるのを避けることができるからです。局所の滴下剤は注射ではありません。写真で見るとそのように見える製剤もあるかもしれませんが、実際は皮膚に液状の薬を垂らす製剤です。そして滴下した部分にしか効果が無いのではなく、スポットオン製剤中の化学物質が動物の体全体に広がり、皮膚の汗腺に沈着し、そこで数週間にわたって有効成分が放出されるので、全身くまなく薬は行き渡ります。使用するのに非常に便利で、滴下直後でなければ、シャンプーしたり、また雨の中で遊んでも流されない全身性のはっ水シールドが形成されます。ほとんどの薬は1ヶ月続きます。

これらの人気のある製品には、通常、ノミやマダニ、蚊を寄せ付けないで殺す成分が含まれています。フィラリアの感染子虫に対する作用がある(含んだ)製剤も有り、フィラリア予防も可能になっています。主成分(製品名)は、フィプロニル(フロントライン、マイフリーガード、フィプロスポット)、イミダクロプリド(アドバンテージ)、ペルメトリン(フォートレオン)、セラメクチン(レボリューション)フルララネル(ブラベクト=猫のための)で、これに昆虫成長制御剤(IGR)を追加した商品もあります。主成分も追加成分も昆虫類に特異的に作用し、哺乳動物には高い安全性があります。セラメクチンは疥癬虫にも効果を示します。犬や猫からノミやマダニを撃退し、ノミのライフサイクルの積極的な進行を止めることができ、長期間ノミから犬猫を保護するのにも非常に効果的な方法です。食物アレルギーがある犬にも向いています。

ただ、摂取する(舐めてしまう)と有毒になる可能性があるため、注意する必要があります。家庭に子供や他のペットがいる場合は製品が乾くまで犬や猫を見守ったり隔離したりして、子供の手につかないように、または他のペットがグルーミングしている途中に口に入れないように注意する必要があります。なお体重毎に製品の区切りがあります。安全にご使用いただくために、1頭に付き1本をご利用ください。

ホームセンター等でスポットオン製剤を見ることもあります。用法が酷似しているので安価な市販品を選択することがあるかもしれませんが、動物病院取り扱い薬剤とは異なるため、希望される効果を得ることはできないだろうと思います。ご注意ください。

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5.経口薬(犬用)

ネクスガード(ベーリンガーインゲルハイム)、ブラベクト(MSD)、シンパリカ(ゾエティス)

チュアブルとして提供されるノミ・マダニの経口薬は、月に1回(3か月に1回)与えるだけで、犬をノミとマダニの感染から守ることができます。犬に食べさせるのではなく、犬が好んで食べてくれる薬です。数種類の経口薬が開発されていて、1か月続くものと、3か月続くものがあります。一部の製品は、複合製剤(有効成分ミルベマイシンオキシマムを追加してある)になっていて、ノミやマダニへの効果だけでなく、糸状虫、回虫、鉤虫、鞭虫のような内部寄生虫も防ぎます。この系統の薬は、皮膚のダニ(ニキビダニ)にも高い効能を示します。

経口薬は成ノミを殺す作用、幼虫を殺す作用、ノミの卵を産む能力を阻害作用などあります。ノミが犬の身体に接触した時に成虫のノミが死んでいなくなるスポットオンタイプの薬と異なり、成ノミが薬を摂取した犬の血を吸う時に薬にさらされて最短数時間で死にます。ノミのライフサイクルも混乱させるので、ノミの集団が成長し続けることができません。

家に小さな子供がいる人には良い選択で、子どもを刺激する可能性のある局所治療にさらすことがなくなります。複数の犬がいて身体を互いに舐めることがある場合、家庭犬で抱っこが多い場合にも良い選択です。

血漿蛋白との結合率が高い薬なので、NSAIDs(関節炎などで使われる非ステロイドの痛み止め薬)、ACE-I(心臓病や腎臓病で使われるお薬)、利尿薬などを服用している場合は薬の安定化に問題が発生する可能性があります。けいれん発作を持つ犬ではアフォキソラネル、サロラネルは注意して与えます。大豆や豚肉にアレルギーを持つ犬も慎重に選びます。食事との関連は難しくありませんが、フルララネルは食事と一緒に与えると生物学的活性が高くなります。

経口薬に見られる一般的な成分は、すべてオキサゾリン系の化合物です。アフォキソラネル(ネクスガード)、フルララネル(ブラベクト)、サロラネル(シンパリカ)が含まれます。

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6.環境への予防対策

犬や猫に予防的に駆除薬を投与することに加え、環境に対する対策も一緒に行ってもらうと守りが万全になります。

   庭の掃除と噴霧・ノミのトラップ

芝生、茂み、木を刈り込んでおくと、家の屋外のノミの数を抑えるのに役立ちます。屋外の化学処理(薬剤を使う方法)も使用できます。噴霧剤です。毒性があり、誤って接触すると有害な影響を与える可能性もありますので植え込みに噴霧するとき、そしてその後も動物が近寄らないようにしておく必要があります。

手作りの(そして無毒な)ノミのトラップを自宅で作るには、石鹸の入った小さな皿を光源の近くの地面に(夜間照明またはランプを使用して)一晩置きます。暖かさと光に惹かれて、ノミは水の中に飛び込んで閉じ込められます。市販でもノミホイホイなるものがあるようです。
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   家の掃除

犬や猫に付着した成ノミは環境中にばらまかれた全ノミ(卵や幼虫やさなぎ)中の5%に過ぎないという研究があります。徹底的なハウスクリーニングが予防に有効です。治療のために必要だった屋内掃除は、予防のときにも有効な手段です。そして、犬の寝具やおもちゃも温水(できれば熱めのお湯)と石鹸や洗剤で洗うことも忘れないでください。家庭用の洗濯機と乾燥機よりも業務用の乾燥機(コインランドリー)の方が高温になるので治療にはそちらが有効です。最後に、犬や猫を車に乗せることがなくても車に掃除機をかけるのもお忘れ無く。人の靴底で知らないうちにノミを運んでいる可能性もあります。ノミは、暗くて暖かい場所に隠れることが大好きです。詳しいお話しは前回しました。

   世帯のすべての動物を治療すること

他の動物を飼っているけれど、その個体は治療していないということが実際にはうまくいかない理由の一つになっています。小型ペット(フェレットやウサギなど)もノミをもつ可能性がありますが、考慮されないことがよくあります。自由に歩き回ることが許可されている猫は、ノミに感染した動物と接触し簡単に再感染する可能性があります。治療されたペットが直接接触するかどうかに関係なく、すぐ近くの環境にいるすべての動物がノミを運んできてしまいます。

   野生動物も考慮すること

環境汚染の別の原因は野生生物です。多くの小型野生生物(アライグマやタヌキなど)がノミを運び、ライフサイクルを継続させることがあります。庭先でペットは野生生物と直接接触することがないかもしれませんが、植え込みの下、屋外の小屋やガレージなどには野生動物が侵入します。理想的には、野生生物が来ないようにし、ペットもこれらの場所に行かないようにする必要があります。

とにかく、簡単に済ませるには犬や猫にお薬を投与してしまうことです。ただし、「感染しないようにする予防薬」という考えではなくて、「感染してもノミやマダニがお薬に反応して卵を産まないくらいの短時間で死んでいく殺虫薬」であることをご理解ください。そのため、投与しているのに体表にノミを見つけることもあります。晴れた日の昼間は熱中症も心配されるほどの陽気になってきました。暑くなる前に投与を始めることをおすすめします。
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ノミの予防法1

 

ノミ(とマダニ)の予防法

2週つづけて、ノミの刺咬症やノミ感染の合併症そして環境対策についてお話ししました。ノミは本当に迷惑な寄生虫で、動物がノミに寄生されたことに気がつかないでいると、瞬く間に家庭内で繁殖してしまい、家族が被害に遭うなどの深刻な問題が生まれます。1匹のメスのノミは3週間の寿命で最大2,000個の卵を産むことができると言われています。生半可な対策では、ノミ退治ができたと思っても、すぐにまた寄生されてしまいます。暖かい条件下でノミは越冬できるので、冬でもふ化したりさなぎから成ノミに返ったりしてノミは増え続けます。

ノミの被害が犬猫と家族に及ぶのを防ぐために利用できるノミとマダニの薬がたくさん出ています。最も有効なのは、滴下剤(スポットオン)と経口薬ですが、ご存知の通りこれら2つの方法以外にもあります。順にご紹介しますので、どの方法が「うちの子」に最適かを知り、良い方法を選択してください。とにかく、家に持ち込まないことが最も重要です。そして犬や猫に付着したノミは繁殖しないうちに排除することが大切です。

なお、多くのノミ駆除薬はマダニに対する効果も持っています。マダニに刺されるのはノミ以上に危険です。ダニ刺咬により感染する病気はたくさんあり、なかでも近年西日本を中心に感染者が増大している重症熱性血小板減少症(SFTS)の感染は深刻です。感染した犬猫からヒトに感染する事例も認められています。薬剤を選ぶ際は、剤形のほかにマダニに対する効果の有無も考慮しておくと良いと思います。

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1.カラー(首輪)

ボルホプラスカラー(バイエル社)←カラーで有効なのはこれだけです

ノミの首輪は、濃縮化学物質を使用して、犬のノミ(およびマダニ)を撃退します。化学物質は首輪から徐々に放出され、動物のからだ全体に分散し、効果は約5か月間続きます。ノミとマダニの首輪の成分はプロポクスルとフルメトリンです。屋内飼育の犬、猫には使用してはいけません。このカラーを付けている犬を長時間にわたって抱いていてもいけません。ノミの首輪は、皮膚に密着させて使用する必要があります。カラーの下に2本の指を置いて、しっかりと固定しないようにします。くるくる回るくらいに締めます。余った部分を犬が噛んで飲み込んでしまわないように切り取ります。また、襟の周りに傷がないことも確認してください。この化学物質に非常に敏感な個体があり、首回りに皮膚炎をおこすことがあります。「首輪」とありますが、普段使いの首輪の代わりになるものではありません。一定の力が加わるとちぎれるような加工がされています。

ホームセンターで購入が可能な首輪はピレトリンやフェノトリンなどのピレスロイド系殺虫剤を主成分とし、昆虫成長阻止剤(IGR)を含む製剤です。市販品のノミとり首輪は安価でお手軽なため、選択している飼い主さんもよく見受けます。ピレトリンは除虫菊の成分で、薬効は限られています。近くの地域での寄生の程度(ほぼいないに等しいくらいの状況)、付けてからの期間(短く、1か月後には薬剤濃度が低下)など、限定的です。犬をノミやマダニから保護する力は弱く(つまり、大して効かない)、そのわりに臭いが強く、ペットを刺激することもあります。

もう一つ注意したいことがあります。ピレスロイド(合成ピレトリン、例としてペルメトリンおよびシフェノトリン)は、猫にとって非常に有毒です。Malik先生らによる研究では、ピレスロイド中毒の猫が何匹か報告されています。誤って、または故意に犬専用製剤を使用したケースと、猫が薬剤使用した犬に密接に接触したケースで発生しました。このため、猫と一緒に暮らす犬や猫のいる家庭で環境処理を使用する場合は、犬には安全であってもピレスロイドを選択しない方が賢明です。
*とにかく、大型犬用のボルホカラー以外は効果の面でおすすめできるものはありません。

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2.スプレーとパウダー(粉)

フロントスプレー(ベーリンガーインゲルハイム)←有効です

ペット用ノミ取りスプレーは即効性があります。「成ノミが卵を産むまでに要する時間」は寄生吸血後24時間から48時間と言われていますが、スプレー投与するとこの時間内に寄生する成ノミを100%駆除します。体重量から換算して体表面に適した分量を投与することができるので、未成熟な犬や猫ではスポットオンタイプの製品よりも安全に使用することができます。(生後2日齢の子犬子猫に対する投与試験でも安全性が認められています)しかし、投与は慎重に行なわなければいけません。作業する人も、口と目を保護し、薬剤を吸わないように注意して使用する必要があります。やや煩雑な面があるため、スプレーによる治療は診察室で行なっています。処置をしながら成ノミが死滅して身体から落下してくるのがわかります。有効成分はフィプロニルです。皮膚の皮脂に広がって全身に行き渡り効果も約1か月持続します。

市販薬のスプレーまたはパウダー製品もあります。比較的安価な商品です。これらの製品はピレトリンやフェノトリンなどのピレスロイド系殺虫剤とノミの卵や幼虫が繁殖するのを防ぐ昆虫成長阻止剤(IGR)が含まれている商品が多いです。除虫菊成分が主になった商品の有効性は低く、環境中のノミ生育数が少ない場合には「効いた気がする」かもしれませんが、すでに発生している成ノミに対する撃退効果は低いと思います。なお猫は「シューッ!」という音を嫌う動物であることも心に留め置きください。猫が居ないところで環境中(猫がよく居る場所)に噴霧するのは「猫のために対処している」という気分になれていいと思います。

柑橘油や他の植物抽出物を使用してノミやダニを撃退する天然由来のスプレーもあります。猫は柑橘類の抽出物に敏感である可能性があるため、猫には注意が必要です。商品のラベルを注意深く読んでください。ナチュラル製品とあっても、敏感な動物にとって有害になります。

*スプレー製剤で効果があるのは、フロントスプレーだけです。自家製でレモンからスプレーを作ることも知られています。このような、ナチュラルに、ごくごく自然なものだけでなんとかしたい場合のことは次々回に回します。

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3・シャンプー

ノミから犬を守るための防御策として薬用のノミ取りシャンプーという手段は概して気持ちの問題になると思います。安くて、寄生虫感染症から犬を保護している気持ちが高まる方法かもしれません。(既に寄生を受けた場合は数を減らすことができます。それも一時的です)

ノミ取りシャンプー製品の一般的な成分は通常フェノトリンなどのピレスロイド系殺虫剤で、接触した成虫のノミを殺すことになっています。殺虫効果はマイルドで、気絶させるレベルと考えてください。シャンプーを使用するときは、少なくとも1015分間、シャンプー剤を被毛に接触させたままにしてください。犬の目や口にシャンプー剤を入れないように気をつけてください。頭部を洗うのが怖いからと濡らさないでいると、体部を洗っている間にノミが頭部に這い上がってきて、すべてのノミを退治できないことが多いです。もしノミ退治にシャンプーだけを使用することに決めた場合は、頻繁に洗う必要があります。シャンプー後は十分にすすいで、被毛を乾燥させてください。

ノミとマダニのシャンプーは、成ノミとその卵を短時間洗い流すのに役立ちますが、全部を死滅させることはありません。駆除効果は「数を減らす」程度です。

ノミが寄生しないように予防することや、(一度数が減った後で)再寄生しないようにする効果、つまり長期的なノミ避けにはなりません。ノミの季節には、毎週シャンプーしてください。短期間かもしれませんが、動物はノミがいっぱいからだに付いた状態でいるより、快適だと思います。

*今回ご紹介した方法は一般的ではありません。病院で使う薬以外でなんとかしたいというお気持ちは分かりますが、「掃除する」「洗濯をする」「動物をシャンプーする」は予防や治療の一部でもあり、併用してもらいたい方法ですが、「市販薬に頼る」は無理があります。
次回は一般的なノミ予防の方法をお伝えします。



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ノミの被害と退治.2

ノミ感染の被害と退治について。前回の続きです。

5.人への被害

ノミは人も噛みます。ノミの感染がひどくなると、人間が次の標的になる可能性があります。そのため環境でのノミのライフサイクルを防ぐことは、ノミのアレルギーを持つ犬のノミ制御の重要な部分です。

  1. ノミにアレルギーのある人は、感染した場合に痒みを和らげるためにステロイドや抗ヒスタミン薬が主成分になっている局所薬(虫刺されクリーム)が必要になる場合があります。悪化すると赤く大きく腫れ、水ぶくれのようになることもあります。跡が残ることもあります。ヒトにもノミの刺咬症があります。
  2. さらに怖いのは「猫ひっかき病」です。リンパ節が腫れ、全身症状としては発熱やだるい感じ、頭痛などが起こります。猫がバルトネラ・ヘンセラ菌に感染していても発症はありません。ノミが猫を吸血するときにバルトネラ菌も一緒に体内に入れます。次にこのノミがヒトを刺したときに菌が入り込んで感染させます。「猫→ノミ→ヒト」で発症する感染症です。
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6
.犬猫の身体についたノミの駆除

動物の身体に付いたノミに対処する方法は駆除剤の投与です。ノミ・マダニ駆除剤は局所の皮膚に滴下するスポットオン製剤の経口内服薬があります。どちらも約1か月の間効果が持続します。スポットオン製剤を投与された動物に接触したノミは短時間のうちに死滅します。また経口内服薬を投与された動物の血液を吸ったノミも同様に数時間で死滅します。経口薬または滴下薬のどちらかを予防的に定期投与しておくのが今流です。ノミはノミ駆除薬を投与されている犬猫に関わると、産卵時間前に死滅するため、犬や猫がノミを家に持ち帰るのを防ぐこともできますが、さらに「昆虫生育阻止剤=IGR製剤」を含む薬は、ノミの卵が昆虫に生育することを抑制することができます。もし死滅時刻をかいくぐって成ノミが産卵しても、そこからの繁殖を阻止できます。

市販薬の中には、動物病院で取り扱う医薬品と大変似た薬もありますが、効きません。しっかりと効果がある方法は動物病院に相談してください。

予防については来週とその次にまとめてお話しします。

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経口薬はオイシイお薬ですがまれに合わないこともあります。
食べない、食べるが吐くというときは別の方法に切り替えが可能です。
ご相談ください。

7.合併症の治療

犬や猫のノミ刺咬症を早期に治癒させる最善策はノミ駆除と同時に全身の薬浴を行うことです。洗うとより早くかゆみを鎮めることができます。さほど強くない痒みであれば、駆除薬の投与だけでも十分だろうと思いますが、合併症を併発している場合はノミ駆除だけではうまくいきません。さらに以下の合併症がある場合、合併症の治療は必須です。

    ノミアレルギー性皮膚炎は痒みが大変強いため、とても不快です。ノミアレルギー性皮膚炎があればノミ駆除と同時に皮膚炎の治療が必要です。アレルギーの治療には、注射や内服薬が考えられます。皮膚炎の程度によっては薬浴を行いますが、じくじくしている場合はお薬で炎症を鎮めてから薬浴します。

    貧血がある場合の治療は大変深刻で、ノミ駆除はスタートの一部です。鉄剤の投与(注射や内服薬があります)、場合によっては輸血が必要になることもあります。

    ノミ条虫(または、うりざね条虫とかサナダムシということもあります)はノミが伝播する腸内寄生虫です。幸いなことに、この寄生虫は扱いやすく、通常は駆虫薬の投与(内服または注射)で駆除が可能です。もし下痢を伴っていれば対症療法的な下痢の治療をします。たいていは消化剤や腸内細菌を補う内服薬、消化に良好な食事によるものです。市販の虫下しでは効果はありません。

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ノミ感染をそのままにしないでください。
一番いいのは感染してからの治療ではなく、ノミの予防です。

 8.ノミを家から無くす!(←これがとても大切です)

犬や猫にノミが湧いてしまった場合(ノミが湧くという表現は昔から用いられていますが、どこからか湧き出るようにノミは犬や猫の身体に寄生してしまうものです)、家庭内にすでにノミが持ち込まれている可能性が非常に高いです。そしてより積極的な行動をとる必要があります。

犬や猫に付いているノミを殺すことはノミ退治問題のほんの一部に過ぎません。それに比べると家に湧いてしまったノミを退治するのは、とても深刻な問題で、なのに面倒で、我慢強く実行していかないと成功しません。家中のすべてのノミがそれぞれのライフステージの段階を経るのに時間がかかるので、侵入したノミのすべて(卵から成虫まで)を取り除くには34ヶ月かかります。例えば殻のなかにある卵は薬剤の影響を受けにくく卵を殺すのは難しいけれども、幼虫になると薬剤に触れると死んでいくので、幼虫になるのを待って再攻撃する必要があるのです。家中のノミを根絶するために必要な方法がいくつかあります。

    寝具をコインランドリーで洗い、乾燥機に回します。ノミは65℃以上の温度にならないと死滅しません。家庭用の洗濯乾燥機では内部温度が65℃までは上がらないようです。

    床に掃除機をかけます。掃除機をかける前に、屋内用のノミマダニスプレーやノミ取り粉をふりかけて掃除することもできます。ダニアースなどの製品を屋内環境に使うことができます。これは、薬局で入手できます。畳のへり、床材の合わせ目、隙間の溝などにはじっくりと時間をかけます。さらに細かいところは念入りにコロコロをかけるなどして、粘着紙に貼り付けます。掃除後のごみバッグやコロコロの紙はすぐにゴミ箱に捨て、屋外へ持ち出します。最近の研究では、掃除機はすべてのライフステージのノミを集めて殺すことができることが示されています。成虫のノミを殺すのに96%、ノミの卵を殺すのに100%効果があるそうです。スチーム式クリーニングもノミの卵を殺すのに役に立つそうです。屋内を整理すると掃除をしやすく、またノミの卵が隠れる場所を減らすことができます。
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犬や猫が使う敷物も定期的に洗濯し高熱で乾燥させましょう。

    燻煙剤バルサンなど、煙の出ないタイプもあります)を使って家の中のノミを殺虫します。動物にも食器類にも安全な物が出ていますが小動物に有毒になる可能性があるため、使用する場合は注意が必要です。使用する前にラベルをよく読んでお使いください。使用する日は動物をペットホテルに預けておくと安心です。魚の水槽も別の部屋に、小鳥も外に出すなどの配慮をとってください。ご自身で行うのが難しい場合は害虫駆除業者に電話してノミ駆除をお願いしてください。燻煙後はしっかり掃除機をかけてください。拭き掃除もお願いします。燻煙による殺虫も1回だけでは十分ではない場合があります。

    庭の植え込みにもスプレー処理します。噴霧した後は犬や猫が近寄らないように注意してください。

    犬や猫を毎月予防的に治療し続けてください。薬浴とノミ・マダニ駆除薬の投与は継続が大切です。近年は通年予防(1年を通じてずっと予防薬を与える方法)が主流になりつつあります。
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なんといっても掃除は基本中の基本です。

*動物病院にご来院ください

ノミでお困りのときは連絡してください。最新のノミの治療法と予防法について、個々のご家庭で最良の方法はどんなことかを考えたいと思います。また、犬や猫のノミを取り除く方法や家庭内で広がってしまったノミの被害を鎮める方法についても遠慮なくお尋ねください。どんな病気でもそうですが、予防に勝る治療はありません。予防なら簡単でコストパフォーマンスも高いです。ひどくなってから処置するのは大変です。ノミに翻弄される前に予防を始めましょう。

もっといろいろ知りたい方へ。
企業さんのノミ予防関連のページです。
・Zoetisさん:
https://www.xn--u9j2i7ak9f1661c.com/flea/sick/

・MSDさん:https://www.bravopets.jp/owner/nomi/

・MSDさん(猫):https://www.bravopets.jp/owner/cat/

・Zoetisさん(猫):https://www.nekomamo.com/parasite/

・Bayerさん:
https://www.bayer-pet.jp/pet/library/parasite/


次回、予防に焦点を当てたお話しにします。
 

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ノミの被害と退治.1

 犬や猫についたノミの被害と退治

お散歩ものびのび出かけるのがはばかられる今日このごろ。2m(歩幅で3歩分くらい)の距離を離れて出かけるのは大丈夫です。むしろ、愛犬のストレスを取り除くためにも、飼い主さんの精神的な健康のためにもお出かけください。その前に、ノミやマダニの予防をしてください。

ノミは犬や猫にくっついて屋内に侵入します。犬や猫の血を吸って繁殖し、ノミはどんどん増えていきます。「我が家にノミがやってきてしまった!」と気づくのは、ずっと後になってからです。犬や猫が身体を掻いて、「まさかうちの子にノミが付いてる?」「ノミを取るいい方法は何だ?」と思うようになったころにはきっと家族にも被害が及んでいるでしょう。

非常に迷惑なノミの撃退法についてお話しします。効率よくノミを退治するには、1つか2つの方法を選択するのではなく、すべてを実行する必要があります。
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バイエルさんのHPではさらに詳しくノミを知ることができます。
https://www.bayer-pet.jp/pet/library/parasite/nomi/nomi05.html

1.ノミのライフサイクルを理解する

最初のステップは、敵を理解することです。

犬にも猫にも、最も頻繁に寄生するノミは、イヌノミではなく、科学的にCtenocephalides felisとして知られているネコノミです。

ノミは4つのライフサイクルステージを通過します。

  1. 幼虫
  2. さなぎ
  3. 成ノミ

成ノミは犬や猫に付いて吸血し、身体の上で卵を産みます。メスのノミは、1日に最大50個、100日間で1日平均27個の卵を産むことができます。卵は犬や猫が揺れたり、引っ掻いたり、横になったりするたびに床面(地面)に落ち、家(や庭)に広がります。それから16日後に、ふ化して幼虫になります。

幼虫は屋内ではカーペット(の繊維の奥深く!)、ソファ、またはベッドなど温かくて快適な場所でぬくぬく過ごします。屋外だと、草や葉、土壌に穴を開けたりし、12週間後にさなぎを形成します。

さなぎの中で、幼虫は成ノミに成長します。近くを誰かが通り過ぎるのを待っています。振動を感知して、さなぎの殻を破り、成ノミとして通りかかった誰かにジャンプして飛び乗ります。さなぎ段階の虫は、適切な条件下であれば数週間から数ヶ月間生き残ることができます。秋口に眠りについたさなぎも、越冬し、春先になって活動を始めることができます。(冬寒くても死なないのです。)これは家からノミを除去することが非常に難しい理由の1つになります。
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2.ノミに刺された犬や猫の症状

ノミに刺されると、犬や猫の皮膚には小さな、赤い、隆起した点が残ります。点になった皮膚を動物が引っ掻くと、炎症を起こす可能性がありますが、通常、他の虫刺されよりも小さくてわかりにくいです。個体によっては、ノミに刺されたときに強いかゆみ反応を示します。ノミの刺咬症は咬まれたときのノミの唾液に対するアレルギー反応の現れです。

ノミの刺咬傷は、犬よりもヒトの方がわかりやすいと思います。たぶん、毛がないから発見しやすいのかもしれません。ヒトでも、ノミの咬傷は小さな赤い点のように見えます。とても痒いようです。

ノミに刺された犬の症状です。

・足で身体をかく。

・皮膚を前歯でカチカチ噛む。

・床面(地面)に身体をこすりつける。

・毛が抜ける。

・かさぶたができる。

・赤く、刺激された肌が露出する。
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丁寧にグルーミングして地肌を観察しましょう。

3.ノミを見つける

皮膚を見て、「ノミの刺咬症」と判断することは難しいです。犬や猫の行動から「ノミの寄生」があることを疑います。

ノミ刺されの症状に加えて、ノミを見つけることは確かな証明になります。動物にノミがついているかどうかを判断する方法は、ノミの成虫かノミの糞を探すことです。ノミは、犬の首、耳、腰、腹部、尾の付け根に寄生します。ノミの大きさは約13ミリメートルで暗褐色(黒っぽい茶色)をしています。明るい毛色の犬猫や毛の薄い犬では、皮膚の上をノミが動き回っていると比較的見つけやすいかもしれませんが、一般には毛むくじゃらで濃い色をした犬猫のからだにノミが付いているのを発見することは難しいです。ノミ取りくし(非常に目の細かな櫛です)で毛をといて見つけることもできます。ノミが動いている間にノミを発見するのでなければ、ノミ糞を探し出すのもノミ寄生の証拠になります。ノミの糞は黒い点々ですが、実際には乾燥した血液です。ノミ糞かどうかわからない場合は、黒い点々を湿らせたペーパータオルの上に置いて挟むと、血液が再水和して黒から茶色に変わり、溶けた周囲が茶色ににじむので、ノミ糞であることがわかります。
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ノミに刺されて痒い!ほかにもいろいろと弊害があります。

4.ノミ刺咬の合併症

ノミの制御をおすすめする理由は、「刺されると痒い」「屋内に持ち込まれると厄介」なことに加え、ほかの合併症を引き起こす可能性があるためです。ワースト3は次のとおりです。

    ノミアレルギー性皮膚炎

    貧血

    サナダムシ(うりざね条虫)

    犬のノミアレルギー性皮膚炎は、わりとよく見られる皮膚炎で、犬がノミの唾液に対してアレルギー反応を起こした結果発症します。背中から腰の部分に発生することが多いです。かいて脱毛、またうろこ状に厚くなった皮膚や二次的な細菌感染によりじくじくした赤みや黄色っぽい分泌物、掻き壊した傷を伴うことがあります。

猫の皮膚炎は犬とだいぶ違います。特定の部位に皮膚炎ができるのではなく、何かのアレルギーがあるときに、それがノミだろうが環境中のアレルゲン(花粉やハウスダストなど)だろうが食物由来のものであろうが、あらわれる症状が共通しています。背中や足などをカチカチする、後ろ足でからだを掻くなど共通する部分もありますが、身体の一部分を良く舐める(おなかのことが多い)、毛が薄くなっている(はっきりと脱毛していることも)、地肌が赤くただれて見える(太ももや首回りが多い)などです。

    ノミの大量感染があると、幼少の動物(飼い主さんがいない赤ちゃん年齢の外猫)では貧血を起こすことはよくあります。肌色に見えるはずの皮膚や粘膜がうすく透き通るような白い色になります。単に「ノミ貧血」なんて呼ぶこともあります。貧血があると息が切れたり食欲がなくなったりして、最終的に生命に危険が及びます。

    犬や猫は、かゆみのある場所を噛んだり、毛づくろいしながらノミを食べてしまいます。残念なことにノミには、別の望ましくない寄生虫、サナダムシが含まれている可能性があります。犬が(サナダムシの卵を持っている)ノミを食べると、サナダムシの卵は犬の小腸で育っていきます。そして十分成熟すると、犬の肛門から5mmくらいの白い平らな虫として伸び縮みしながら出てきます。サナダムシは本来、腸の中でこの小さな部分が連なっている長い虫で、ちぎれた一部は片節といいます。これが出てくるのは腸の中にまだ長い虫がいることを意味しています。虫は肛門付近に見られるときと、糞便に付着して見られるときとあります。身体から出てしばらくすると白い虫は乾燥して米粒のように硬く立体的になり、白から薄いクリーム色に見えてきます。また乾燥した変節は動かず、ぽろっとどこかに転がっていきます。片節の中には多数のうりざね条虫の卵(正しくは六鈎幼虫)を含んでいて、ノミは顕微鏡でしか見えないこの虫を食べてうりざね条虫のライフサイクルを回します。消化管内寄生虫は犬や猫に下痢を起こさせたり、栄養障害を起こさせたりします。

続きは次回にします。
今月はずっとノミ関連のお話しを続ける予定です。院内の掲示板をじっくり見ていただく時間が取れないと思いますので、できたらこちらを続けて見ていただけると嬉しいです。

テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

猫伝染性腹膜炎2

 猫伝染性腹膜炎のお話し、続きです。
ネコ伝染性腹膜炎は、ネココロナウイルスの感染によって引き起こされますが、現在猛威を振るっているヒトの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を引き起こすコロナウイルスと、猫伝染性腹膜炎を引き起こすコロナウイルスは異なるものです。

猫伝染性腹膜炎の影響を受けやすい猫

猫伝染性腹膜炎はあらゆる年齢の猫に発生する可能性がありますが、若い猫によく見られます。診断された症例の約80%は2歳未満の猫で、多くの症例は412か月齢の子猫で見られます。猫伝染性腹膜炎は猫コロナウイルス感染が容易に広がる環境であるため、多頭飼育や繁殖世帯で飼育されている猫にもよく見られます。混雑した環境(猫密度が高い)は猫ストレスの原因のひとつで、免疫応答を損なうので病気の発症の要因となる可能性があります。(遺伝学も疾患への感受性に役割を果たすことができるという証拠があります。)
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血液検査だけで分かるわけではありません。

猫伝染性腹膜炎の診断

猫伝染性腹膜炎は、猫伝染性腹膜炎の診断に特有の臨床的兆候がなく、診断を確認する簡単な血液検査もないため、対処が非常に難しい疾患です。疑わしいと思うのは次のようなときです。

1)猫伝染性腹膜炎でよく見られる症状が出ている
2)猫の疫学的な条件が一致する(2歳未満、または高齢、多頭飼育の中に居る、繁殖場で生まれ育ってきた)。
3)日常的な血液検査での所見は
  •  リンパ球の数が少ない
  •   好中球が多い
  •  貧血
  •  グロブリン値が高い(TP↑ALB↓A/G↓
  •   肝臓酵素が上昇している(ALT↑ALP↑
  •  ビリルビン値が上昇している(BIL↑:黄疸)   
です。ただし3)の血液検査の変化は猫伝染性腹膜炎にだけ見られものではなく、他の疾患でも発生しますが、適切な兆候と組み合わせて複数の変化が見られる場合、猫伝染性腹膜炎の診断はより可能性が高くなります。これらの異常の多くは、疾患の初期段階には存在しない可能性があります。(のちになって出てくることもあるので、継続した血液検査が必要になることがあります。)最近では
  • 血清アミロイドA(SAA)
がFIPのときの炎症反応を反映して高くなることも知られているので、検査項目に追加しています。
腹水や胸水ある場合は、穿刺して体液サンプルを採取し、細胞とタンパク質の含有量を分析します。この検査はかなり診断に対して有用になります。場合によってはタンパク質の分類を検査します。(グロブリン濃度が高いと感染陽性が濃厚です。)

血液でコロナウイルスに対する抗体を探すのは限定的な価値しかありません。猫が猫伝染性腹膜炎ウイルスに感染していようといまいと、猫コロナウイルスに対する抗体が発生していて、抗体検査では猫伝染性腹膜炎ウイルス株を区別できないのです。(完全に健康でも検査結果は陽性に出てきます。)そして抗体価はほとんどがグレーゾーン部分に入ってきます。
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総合的な診断です。

猫伝染性腹膜炎の診断の確認

猫伝染性腹膜炎の診断を確認するのに最も適した検査は、影響を受けた組織から生検サンプルを採取することです。手術により採取します。典型的な猫伝染性腹膜炎の炎症が見られます。これでも猫伝染性腹膜炎ウイルスの感染を示唆するというレベルです。確定診断は、損傷した組織内にウイルス自体の存在を示す「免疫組織化学」と呼ばれる方法にゆだねられます。

けれど病状が深刻な猫では検体採取のために手術することができないし、また飼い主さんも希望されないこともあって、たいていはウイルスの存在をもって証明することになる「確定診断」はつきません。「限りなく陽性」で終わります。グループ内の他の猫への影響を考えた場合、死後の病理解剖検査(免疫組織化学を使用して)で陽性を確認する必要があるかもしれませんが、ほとんど行なわれません。

ウイルス自体は、PCR検査(連日の報道で名前が知られるようになりました。ウイルスの存在を見つけ出す分子技術です)を使用して検出することもできます。たとえば、猫伝染性腹膜炎の典型的な特性を持つ液体貯留があるとき、腹水や胸水のサンプルがコロナウイルスのPCR陽性であるとき、猫伝染性腹膜炎が根本的な原因であることを強く示唆することになります。けれどPCRでも異なるタイプのコロナウイルス(猫伝染性腹膜炎ウイルス株と猫腸炎コロナウイルス株)を区別できないため、決定的なものではありません。
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ウイルスをやっつける薬が見つかりましたが実用化には至っていません。

猫伝染性腹膜炎の治療

猫伝染性腹膜炎は診断だけでなく、治療が難しい状況も続いています。つまり不治で致命的です。支持療法(輸液療法、抗炎症薬)は、状態を緩和するために行ないます。インターフェロン療法は免疫系や炎症の調節などに作用する効果を期待して使います。

ヒトの新興ウイルス感染症に使用されている新しい抗ウイルス薬が、猫伝染性腹膜炎に対しても有効な可能性があることが示されています。最近ではCOVID-19の情報の中で登場しているので名前を聞いたことがあるかもしれません。核酸アナログ製剤であるGS-441524のプロドラッグであるレムデシビルがそれです。ウイルスに、複製に必要な核酸に類似した偽物を取り込ませ、ウイルスの増殖を抑える仕組みです。(プロドラッグというのは、体内に入ってから有効成分が分解されないように化学構造を変換した薬です)これまで、様々な研究をされてきても何一つ有効な答えが見つからなかった中で、一筋の光が差してきたような感じです。けれど現実的な実用段階に至るまでにはもう少し時間がかかりそうです。現時点では、猫に対して安全であることを証明された正規の研究報告が出ていません。海外薬は出ていますが、個人輸入して使用するのは推奨されません。(なお、現在海外で使われている動物用薬の治療方法は12週間、毎日、11回皮下注射する方法で、現実的ではないように思います。
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ワクチン開発には困難があります。

猫伝染性腹膜炎の予防

猫伝染性腹膜炎のワクチンを入手できる国も有ります。ただしこのワクチンは16週齢以上の子猫にしか接種できません。このようなワクチンを使用する主な兆候は、特に猫伝染性腹膜炎の病歴がある飼育世帯ですが、子猫にワクチン接種できるまで(16週間)、ほぼ常に猫コロナウイルスに曝されているため、ワクチンの価値はないだろうとされています。
コロナウイルスは特殊な免疫システムが働くため、ワクチンを作るのも難しいとされています。それは抗体依存性感染増強(ADE)が起こりやすいからです。これはウイルスなどから身体を守るはずの抗体が免疫細胞などへのウイルス感染を促進させてしまう仕組みです。この結果、ウイルスに感染した免疫細胞は暴走し、症状を悪化させてしまうのです。猫コロナウイルスに対する抗体を持った猫がもう一度同じウイルスに感染すると重症化することが有るのですが、それはこのようなことが起こっているからだろうと推測されています。どのような条件でこのようなことが発生するのかは分かっていません。
ワクチンの開発に対しては抗体が関連する免疫(液性免疫)を発動させることなく、免疫細胞に主導権を持たせた免疫が獲得できるように作られる必要があるといわれています。

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元気でいるためにできること。

発症リスクを軽減するには

猫伝染性腹膜炎は一般的な家庭猫ではあまり見られることではありません。発生リスクを減らすためには、
  猫の数が多くないところから入手し、

  少ない頭数で、

  新規の導入を行なわず

  安定したグループで飼うこと

が必要です。なお
⑤ トイレと食器や水食器は離して設置し
  毎日トイレ掃除をし、
  良好な衛生状態を維持してください
  すべての猫にストレスがないように環境を整え、
  予防医療(ワクチンその他)の実施を心がけてください。
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飼い主さんの体調不良のときには、
猫の世話をお願いできる方を探してください。
新型コロナウイルス感染症が疑われるときは
できれば猫とも離れてお過ごしください。

さて、今週はニューヨークから2頭の飼い猫でCOVID-19の感染が見られたというニュースが入ってきました。1頭は家族に感染症状は見られなかったため屋外で感染してきたかまたは家族が不顕性感染であった可能性がありそうです。もう一頭は感染していた飼い主からの感染が疑われています。2頭とも呼吸器感染が有り、動物の検査機関でPCR検査を受け陽性が確認され、追って国立獣医検査機関(National Veterinary services Laboratories : NVSL)で再検査され再度陽性が確認されています。

米国疾病対策予防センター(CDC)の推奨しているペットの扱いについて、以前のWSAVAの提言と重なる部分もありますが、載せておきます。
<家族もペットも健康で症状がないとき>
・うちの子を他の人に触らせない
・うちの子を外で他の動物と接触させない
・犬の散歩は2mの距離を守る
・人が集まるところやドッグランには行かない
<自分や家族の誰かが感染してしまった>
・感染者ではない人が動物の世話をする
・感染者はペットと濃厚接触しない
・どうしても世話を変わってもらえないときはマスクをし、手洗いをしっかりする
・うちの子が誰かと接触しないようにする

現在の日本では感染が疑われても犬や猫のコロナウイルスPCR検査を受けることはできません。IDEXXラボラトリー(検査機関の名前です)でも検査できません。
・犬呼吸器パネル→犬コロナウイルスが含まれますが新型コロナウイルスを調べるものではありません
・猫の上気道呼吸器疾患/結膜炎パネル→コロナウイルスは含まれていません。
・猫伝染性腹膜炎パネル→猫コロナウイルス、FIP、FECVで、新型コロナウイルスを調べるものではありません。

GWが始まりました。みなさま、お家にいるばかりで退屈かもしれませんが、それこそがご自愛の道です。お休み明けに元気でお目にかかれますよう、犬猫といっしょにお家遊びを楽しんでください。





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