猫の知覚過敏症候群

 猫の知覚過敏症候群(Feline Hyperesthesia Syndrome:FHS)は心因性脱毛症」(Psychogenicalopecia / over groomingは、重複するところのある状態です。

知覚過敏というのは、「皮膚が異常に高感度である」ことを意味します。心因性脱毛症は典型的な徴候から始まり、段階的に亢進していきます。知覚過敏症候群はrollong skin syndrome 、rippling skin syndrome self-mutation syndrome twichy cat disease a typical neurodermatitis非定型神経皮膚炎)など、多くの名前で知られています。

 

猫の知覚過敏症候群の徴候

知覚過敏症になっている猫は、背骨に沿って腰部から尾の基部に触れたとき、非常に敏感に反応します。見られる臨床徴候は次のようなことです。

·         背中の皮膚が波打ってぴくぴく動く。

·         筋肉のけいれんのようなうごき。

·         ぴくぴくした背中を気にして舐める、咬む。

·         尻尾を追いかけ、尻尾に噛み付く。

·         脇から脇への横っ飛び。飛び跳ねて急に走り出す。

·         ギャーっというような発声や手を出すなど、背中に触れたことに応じて不思議な行動を起こす。

·         極端な舐め、噛み、髪の毛を引き抜く。

(ここから脱毛につながり、時には重度の皮膚病変になります)

 

こうした過敏症による異常な行動が始まると、これらの行動をやめさせることが困難です。どの行動から始まるのかは決まっていません。何かに飛び乗って落ちて動きをやめることもあるし、その場所で局所を集中して舐めたり噛んだりしていることもあります。

センシティブな行動は、だれかが猫を撫でたことに誘発されて始まることもあります。知覚過敏は、激しく興奮していたり、不安を抱えていたり、または攻撃的な猫で見られます。正確な原因は不明ですが、猫の生活の中でストレスに満ちた出来事があって、それがもとで重度の不安に陥り、それによって過敏症が引き起こされるのかもしれません。慢性不安の間に脳内の化学物質の変化が起こり、これが知覚過敏障害につながると考えられています。

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猫の不安を引き起こすストレス要因

猫のストレス原因はこれまでお話ししてきたようにさまざまです。

·         新しい家への引っ越し。

·         家族のスケジュールの変更。

·         家庭内の人間または同居動物の追加または居なくなること。

·         同居猫の間のけんか。

·         家具の移動、部屋の模様替え。

·         外に新しい動物を見るようになること。

·         家のリフォーム。

·         退屈と不満。

·         根本的な痛みもこの症候群の一部である可能性があります。

進行中の不安は、脳の化学物質の変化を引き起こすと考えられています。ひとたび感情が過敏になると、それを引き起こした元々の状況とは別になって、続く可能性があります。

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猫の知覚過敏症候群の診断

猫の知覚過敏症候群を診断するための特殊検査はなく、心因性脱毛症の場合と同様に、他の病気を除外して診断することになります。

·         皮膚の病気(アレルギー、外寄生虫、皮膚感染など)。

·         背中の痛み、関節炎、肛門嚢病、筋肉痛、脊髄疾患、咬傷、膿瘍、癌、または器官の問題などの根本的な痛みを伴う状態。

などです。とにかく可能性がある病気は非常に多いので、詳しくお話を聞いて、徹底した身体検査と、皮膚検査、血液検査、ウイルス検査、生検、X線などのさまざまな診断検査を行う必要があるのですが、そもそも知覚過敏症になっている猫はとても神経質なため、検査に素直に協力してくれることはまずありません。家庭での猫の行動を動画撮影していただき、それを見せていただくのはとても参考になります。時には、行動療法の専門医への紹介が必要な場合もあります。すべての基礎獣医学的疾患が考えられないとか、あったとしてもそれが適切に治療され、それでもなお症状に変化が起らないようなとき、「知覚過敏症候群」として診断されることになります。

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猫の知覚過敏症候群の治療

知覚過敏症候群は、猫の生活のストレスを軽減することによって治療されます。行動変更を試み、あなたの猫との遊び時間を増やし、猫が興味を示す活動で環境を豊かにすることによって退屈さを減らしてください。行動療法が中心です。

·         狩猟本能を満たすような食事の給与形態。また遊び。

·         おやつを得るための簡単なトリック。

·         猫に多くの注意を払い、毎日少なくとも15分間は遊んでください。

·         彼が家庭内の他の猫による攻撃の犠牲者である場合、または猫を分離する場合は、猫に避難路や隠れられる場所などの逃亡経路を与えます。

·         猫の不安を高め、彼の強迫行動症候群を悪化させるかもしれないので、この行動を罰してはいけません。

·         頻繁な再診が必要です。根底にある病的な問題が時間とともに明らかになる可能性があるからです。

·         身体の一部を咬む「自傷行為」が激しく起こる場合は、身体保護のためにエリザベスカラーを付ける必要があります。(はじめは保護目的のためハードカラーを付けることになります。問題行動が治まってきて、ソフトなカラーや布カラーなどに変更することができるか、またカラーを外すことができるか、残念ながら長期にわたって装着が必要になってしまうのかはストレス除去と治療に対する反応によって違ってきます。)

 

行動療法以外の治療

セロトニン(脳の化学物質)を増加させる薬があります。抗不安薬や抗うつ薬です。重度の強迫症があるときに、このお薬を投与するかどうかを話し合って決めましょう。薬の効果の発現までには4週から8週かかるといわれています。途中で「効果が無いみたい」と中止してしまうのはもったいないです。それから効果があった場合でも、通常約12週間は投与を続けます。そして症状が低下してきたらゆっくりと投与量を減らしていきます。一部の猫は薬剤を減らすことができず、無期限に薬を必要とすることがあります。長期連用する猫では治療期間中に薬の副作用が発現していないかどうか、血液検査を実施して監視していきます。 

 

 ☆行動療法については「猫のストレス」の項目、「心因性脱毛」の項目も参考にしてください。もっと詳しくお話ししました。これまでお話ししてきたいくつかの兆候に比べ、知覚過敏症候群は手強い病気になります。長期戦を覚悟でしっかり取り組む必要があります。

 

今回で猫のストレス関連の病気についてのお話をおしまいにします。不適切な排泄については別のところでお話ししてあります。こちらもストレス関連の病気です。

お外に自由に行ける猫さんも、屋内で過ごすだけの猫さんも、そしてご家族のみなさんにもストレスのない明日が毎日訪れますように。

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猫の不適切な爪とぎ

の飼育環境が変わって、猫は本来の行動ができず、ストレスをためることも多くなってきました。「犬に比べると散歩に行かなくてもいいし、トイレのしつけも難しくないし、ねこちゃんって飼育が楽だわ」なんて思うのは大きな間違い。猫にストレスを強いているかもしれません。猫を愛する人にこそ、分かっていただきたい猫のストレスのお話をしています。

今回は不適切な爪とぎについてのお話です。

 

猫の不適切な爪とぎ

猫の爪とぎには二つの意味があります。一つは層状になっている爪の外層部を爪とぎによって取り除くことで、いわゆるグルーミング行動です。筋肉運動としてもいいことですね。もう一つは「ここに私がいます」の意味合いの印をその場に示すことで、これはマーキング行動です。猫の爪とぎ跡には、爪が作った痕や、周囲にこぼれた爪が見られます。視覚的なアピールです。それから私たちには分からないのですけれども、掌に分布する皮脂腺から出るフェロモンが嗅覚的なマーカーとして残っています。

猫の爪とぎによるマーキングは、そのエリアの中で自分の情報を他のネコに伝達したいという希望です。この爪とぎ跡によって、お互いのなわばり範囲を知り、争いごとを避けることができるようになっています。猫は基本的に争いごとを好みませんので、マーキングをつけた方の猫が「ここに僕がいるのだからこの印を見たらよそへいって欲しい」というメッセージを示します。もちろん「僕もここに遊びに来ましたよ」という印を相手の猫も付けるのですが、「これは他の猫の印がたっぷりついている」と感じ、上手に距離を置いて別のところへ流れていってくれると、けんかは始まりません。

現代の猫の飼育状況は、こうした広い屋外での環境と異なります。多頭飼育の場合は、もっと狭い範囲で猫密度高く暮らしています。たまたま同居することになってしまった猫とは血縁関係があるわけでも何でもありません。猫が何らかの状況で不安を抱いてストレスを感じると、縄張りを守るため、自身の居場所の安全を主張しようと家庭用品を傷つけ始めるでしょう。

爪とぎそのものは猫にとって正常な行動です。飼育する家族が「ここで爪とぎをされるのは困る」と感じると「問題行動」として認識されることになります。とはいえ、猫が猫らしい行動を行うのは猫の権利でもあります。爪とぎ行動をなくすことはできません。どこか別の場所で、別の方法で爪とぎをして貰い、お互いの要求を呑むよう交渉する必要が出てきます。

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猫のストレスの原因は何?

どんなことが猫にとってストレスになるのかは、前回も、また他の機会にもお話ししてあり、同じことの繰り返しにはなりますが、例を挙げますと次のようなことです。

·         家族の人間のスケジュールの変化。(勤務形態や進学による変化など)

·         新しい家族。(人のこともあるし動物のこともあります)

·         家庭内のペットや人の喪失。(入院など)

·         屋外動物、特に他の猫の存在。(窓を介して見えること)

·         家のリフォームまたは家具の配置換え。

·         移動。(キャリーでどこかに連れて行かれること)

·         休暇、来客。

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ストレスに関連した爪とぎ

爪とぎの頻度や激しさが突然増加しているときや、ターゲットになっているのがいつもの爪とぎから家具の足、ソファのアームレスト、壁などの垂直面に移行しているときは、特にストレスに反応している可能性があります。

猫の不適切な爪とぎ行動は、ストレスとは関係が無いときもあります。屋内の猫は、侵入して来そうな外猫を目にしたり、においを感じたりしているのですが、外に出ることができません。その結果、扉や窓枠を引っ掻いて傷付けることがあります。

ストレスの結果として爪とぎ行動が激しくなった猫では、他の不安行動の徴候を示している可能性があります。 これらには次のものがあります。

·         隠れる。

·         過度のグルーミングをする。

·         おかしな声を出す。

·         食欲が減る。

·         他のペットを攻撃する。

·         尿マーキングをする。

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困った爪とぎをやめさせる

ストレスに関連した過剰な爪とぎを減らす最良の方法は、ストレスの管理です。原因を特定できる場合は、その原因を取り除くか、できない場合でもストレスを減らすように他の代替えを行うことにします。猫のストレスを軽減するための一般的な方法については、これまでのお話と大差なく、重複します。爪とぎ行動に関しての行動療法的なことを中心にお話しします。

·         なでたり遊んだりして。

11の時間をたくさん作って遊ぶことに費やしてください。猫を走り回らせるようなアクティブな遊びは夕食後の安定した時間にまとまって15分くらいとれるといいと思います。優れたハンターである猫に生き生きとした活動を屋内で体験させるには、捕食対象であるねずみや鳥を真似たおもちゃを使いうと、肉食動物の本能を働かせることができ、ストレスを軽減させることができます。レーザーポインターなどの光で遊ぶのは昆虫の補食行動のまねになります。しかし光で遊ぶ場合は実態がないので最後の「仕留める」行動を起こすことができないため、最後には丸めた紙などを光に投げ込んでやってください。

·         別の爪とぎを用意して。

猫は、本来は木の幹で爪とぎをします。爪とぎの素材は縦に裂けやすいもので、十分な大きさがあり、爪を引っ掻いても動かない安定感があるものを垂直に設置するのがおすすめです。段ボール製の爪とぎはゴミが出やすいのですが、大きな木の幹の代替えに屋内で用意する物としてはなかなかよいと思います。本物の木の切り株を用意できるのであれば、なんて贅沢なことでしょう。工事に使われる麻袋のような生地とか荒目のカーペット素材で覆われた背の高い、丈夫なポストみたいな柱であると猫の好みになります。

爪とぎは猫が寝る場所の近くで目立つところに置きます。猫は寝起きに爪を研ぐことが多いというのがその理由です。または、今爪とぎをして困っている場所に置きます。外にいる別の猫を見て窓や引き戸のそばの壁を傷つけている場合は、その場所に爪とぎを置いてください。ドアの底にある床を引っ掻いている場合は、水平なものや少し斜めに傾いている爪とぎを置きます。

市販品の中にはキャットニップの袋が添付されていることがあります。猫の関心を引きつけるために使います。飽きてきた頃に追加で匂い付けしますが、はじめの頃の勢いが得られない場合もあります。爪とぎの替え時かもしれません。

·     困った場所には近づけないように。 

新しい爪とぎを用意しても、それまで常用していた爪とぎ場所がいつものままになっていればそこで爪とぎをしてしまいます。爪とぎをされては困る場所には近づけないようにするのが一番です。でもそれができない場合は、爪とぎには適さない素材でカバーします。レジャーシートは猫が嫌いな素材です。ソファーのアームであれば、十分に隠れるような厚い毛布で覆い、その前に新しい爪とぎポストを置きます。

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 複数の猫を飼っている場合、猫のストレスレベルは、一頭で飼われている猫よりも少し高くなります。

·     生活用品が足りているのかを確認して。 

フードの食器、水の食器(給水器)、トイレ、猫用ベッド(休めるスポット)、爪とぎなどは1頭の場合の何倍にもなります。それらを家の別の場所に置き、猫同士が接近してそれらを使用しても大丈夫な場所、または関係性のよくない猫が居ても敵対空間にならないように分散させて、いくつか(複数個)設置するようにしてください。生活用品だけで無く、空間も重要です。1頭ずつの占有スペースも広くとれるように確保してやるといいです。猫密度には気を配ってください。

·     いろいろな爪とぎ。 

猫は「ここは自分のエリア!」と印を付けると、気分が良くなります。他の猫に領土問題を伝える必要があるからです。たとえ飼育している猫が一頭だけであっても、「わたしの居るところ」としてアピールするために爪とぎをする必要はあります。爪とぎは猫が「爪の外層を吹き飛ばす」ための物理的な道具でもあります。猫が好む種類を選ぶ必要もあるし、その日そのときの気分屋でもある猫が気に入るように複数の爪とぎを提供する必要もあります。猫なので。理由はそれだけです。

·     窓の高さに置いた爪とぎ。

外側から見てもアピール度がある爪とぎになります。猫の気分を良くするのに役立ちます。 

·    フェリウェイ。

猫を落ち着かせる働きがあるフェイシャルフェロモンを成分としたフェリウェイは、ネコのストレスを軽減するのにとても役立ちます。屋内でフェリウェイスプレーを使用すると、特に複数の猫がいる場合は、ストレスに関連する爪痕を減らすことができます。拡散タイプはコンセントに刺すだけでフェロモンがゆっくりと広がります。常にストレスを抱えていて場所を特定しない場合は部屋に用意すると良好な効果が得られます。

·     爪切りとネイルキャップ。

定期的に爪を切ると、万が一爪とぎをしても被害は少なくなります。また爪切りの後、ネイルキャップを付けるのも被害を少なくするのに役立ちます。ネイルキャップは4週から8週くらいで付け直さなくてはなりません。しかし猫にとって最良の方法というわけではありません。爪切りは押さえつけて行うものではなく、できるだけリラックスさせて行います。場合によっては1日に1本か2本しか切れないかもしれません。おうちで爪切りをするのは大変な場合は、病院にお連れください。

·     叱ってはだめ。

罰を与えるのは有効ではありません。

·     子猫のうちから。

専用の爪とぎに子猫のうちからならしておくと被害は少なくなります。

 

猫の困った行動、「不適切な爪とぎ」についてお話ししました。爪とぎ行動の中にもストレス関連の行為があるというのをお知らせしたくてお話ししました。

あなたの猫にお気に入りの爪とぎが見つかりますように。

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歯科治療と歯科予防・掲示板から

 猫さんのストレスと行動異常のことについてお話を続けていて、あと2回分お話を残していますが、月が変わりましたので、2月のトピックスとして、今回別のお話を挟むことにします。

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今月の掲示板は歯周病と歯科ケアについてです。

今月はナショナルペット歯科保健月間です。掲示板の内容は歯周病のこと、歯科衛生のこと、歯みがきに関するQ&Aなどです。自販機前の掲示板の他、(貼りきれないほどのボリュームになってしまったので!)診察室前の掲示板にも貼りました。ご来院の折にぜひご覧ください!

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診察室前の掲示板です。
歯みがきに関する疑問にお答えしています。

脅かすようなことになってしまうので、外来では「歯周病を放置してしまうと予後がどんなにひどいことになってしまうのか」というお話は控えるようにしているのですが、ここですと「うちのわんこに直接向けられたお話ではない」ので、心にぐさっと来ないかもしれません。ひどいお話しもしてしまいます。

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正常な歯。
この状態を維持できるといいですね。

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軽度の歯周病になってしまった状態。
炎症を抑えてから歯みがきを始めてください。
  
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さらに進んだ歯周病になっている状態。
歯科治療をしっかりしてからおうちケアを始めましょう。

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重度の歯周病。
歯が汚れているを通り越して、全身に影響が及んでしまいます。
すぐに治療が必要です。


歯は歯槽骨に植わっています。歯周病により歯のまわりが菌に冒されると骨を溶かしていきます。そしてもろくなった骨は砕けて折れてしまいます。そうなんです。歯周病は最終的には「額骨の骨折」を引き起こしてしまうのです。

歯周病は、「ぐらつく歯があるために食事がうまく進まないので身体がやせてしまう」くらいに思われているかもしれませんが、歯周病菌が血液に乗って他の臓器にたどり着き、そこで悪さを起こすと、それぞれの器官で不良を起こさせます。「歯が悪い」ということが「ほかの病気」を引き起こすのです。それから、免疫系は絶えずこの菌が体内に入ってくるのを防御しようと頑張るために、ピリピリした状態になっています。免疫に関する病気も誘発することがあります。とにかく「歯」だけに終わらない問題だということを分かってもらえるとうれしいです。

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歯みがきは思いついたら始めるなんてことできません。
まずは悪いところの治療を行います。
痛いうちは何もできません。
痛みが消えたころから
少しずつならしていきましょう。
 
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お口を開けても問題が無くなったら
少しずつ指で歯みがきをします。

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最終目標は歯みがきをできるようにすること。
歯みがきペーストを使うのがコツです。


今月はまだ閑散期で、予約の歯科処置がとりやすい状態になっています。場合によっては平日の午前に朝ごはん抜きでいらしてもらうと、当日、処置ができる日もあるかもしれません。「歯が汚いのは分かっているんだけど、どうしたらいいのか分からない」という患者さん、多いです。もののついででも結構です。ご相談ください。
「歯みがきしていないのが恥ずかしい」ということもありません。忙しくてできない、わんこがすごい勢いで怒るからできない、みなさんいろいろな事情をお持ちです。そして、どういうわけか「うちではどうにもならない!」というわんこが病院だと「歯科処置させてくれるよい子」であることがあります。そんなお話もご遠慮なく診察室でぶつけてくださって結構です。いろいろなお話をお伺いします。

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お口を開けるのも難しい!
そうういうわんこのためのファーストステップもご紹介しています。

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口腔内細菌を減らし、歯肉の炎症を抑えていく薬。
歯みがき前の練習にもおすすめしているお薬、
インターベリーの説明もしています。

 

当院は「普段着のままで」「お化粧しなくても」来られる病院を目指しています。イケメン先生はいませんが、ぶっちゃけ話ができるスタッフがそろってお迎えしております。「歯が汚くて恥ずかしい」なんてことは気にしなくてOK。ほかの診察の合間でも、心配な点がありましたら遠慮無くおっしゃってくださいね。

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猫の心因性脱毛症

猫本来の活動をできなくなっている現代の飼育環境で、猫は日常的にある程度のストレスをためながら生活しています。それで、ほんの少しのプラス要因が加わるとストレス関連性の病気を発症してしまいます。特発性膀胱炎は寒い季節に多い病気ですが、このほかに「病気なんだ!」と気づかれにくい行動学的な病気があります。猫とストレスについてお話をしています。

 猫のストレス行動の一つに「過度のグルーミング」があげられます。度が過ぎたグルーミングは決まった場所を舐め続けて終いには毛が無くなってつるんとした地肌が見えるまでになってしまうことがあります。今日は過剰なグルーミング行動によって発生する「心因性皮膚炎」についておはなしします。「皮膚炎」ではありますが、皮膚そのものに「炎症」が見られることもみられないこともあります。

 

猫の心因性脱毛症というのは

猫は通常、起床時間の525%を毛づくろいに費やすといわれています。(3050%だという先生もいらっしゃるくらいです。何ら明確な目標もないのに、グルーミングの動作が他の行動よりも優先されて行われることがあります。グルーミングは、単に身繕いのための行動ではなく、猫が不安や不満、葛藤などのストレスを感じたときに気分を変えるために行う行動でもあります。何らかの精神的な原因によって猫が身体の特定の一部分(数カ所のこともあります)を過度にグルーミングした結果、本来ならばふさふさした毛に覆われているはずの部分の毛がうすくなっていたり、肌が露出してしまった状態のとき、私たちは「猫の心因性脱毛症」を疑います。

猫の心因性脱毛症は、「知覚過敏症」に移行してしまうことがあります。また、「知覚過敏症」をすでに併発しているようなこともあります。これはさらに複雑な病気です。さらに、犬にもみられる「ウールサッキング」(毛布吸い)(毛織物摂食行動)や「尾追い」(尾かじり)などと並んだ「常同障害」として根幹の病気は同じとする考えがとられています。

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猫の心因性脱毛症の徴候

猫の心因性脱毛症の脱毛は、通常左右対称性に発生する脱毛で、典型的には胴体(わき腹)、お腹、太ももの内側、後ろ足の付け根、おしり(後ろ足の後面)に見られます。ぼんやりと毛が残っていることがほとんどですが、時には明らかに禿げているのが分かります。猫は舐めたり、噛んだりします。それで皮膚自体は正常に見える段階のものから、刺激を受けて赤くなっているもの、ときにはただれて小さな傷のよう(びらんや潰瘍)になったものまであります。

グルーミング過剰のとき、うんちを確認すると、うんちの中身がヘアボールでできていて、それがいつも以上にたくさんできていることに気づかれるかもしれません。また、空腹時の嘔吐(よく「胃液を吐いた」と表現されるのですが、黄色や白い液体または泡状の、またはどろっとした状態の吐物です)の中に、丸まった毛玉が混じっているのを見たり、そうした嘔吐が頻回に起ることを確認することがあるかもしれません。グルーミング過剰ははじめに毛球関連で消化器系に影響が出ることもあります。皮膚に問題が無いと「皮膚炎」にはなりません。「グルーミング過多」の兆候だけです。

猫によっては人が見ている前でグルーミングをしないため、行為そのものに気づかれないことがあります。こういう隠れてグルーミングをすることは「クローゼットの舐め」として知られています。

 

猫の心因性脱毛症の原因

猫が生活の中でストレスを抱えていると過度のグルーミングを引き起こす可能性があります。ストレスというのは不安や不満(こんな風にしたいのだけどできない)、葛藤(できないことを我慢している)により発生します。ほとんどは猫が過ごしている環境によるものです。猫のストレスの項目でもお話ししましたが、次のようなことが考えられます。

·         新しい家、リフォーム、部屋の模様替え(家具の配置変更)

·         家族のスケジュールの変更(家族の入院や勤務形態の変更などで、一緒にいる家族が家にいる時間が変わった)

·         他の動物を含む家族の数の変化

·         同居猫からの攻撃

·         家庭における騒音または激動(改築中とか、常に騒々しい家?)

·         外に新しい動物を見る(野良猫が窓際にやって来て威嚇するなど)

·         退屈または欲求不満(刺激の少ない環境でもストレスになります)

ストレスの原因に心当たりはないかもしれません。

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行動の変化

セルフグルーミングの行動をとると猫はリラックスし、不安は解消されます。これは脳内に脳内麻薬物質(エンドルフィン・幸福ホルモンといいます)が放出され、快い情動が働くためです。それでグルーミング行動は繰り返し行われるようになります(自己強化といいます)。こんな風に時間が経って習慣になった行動は、環境のストレスとは無関係におこります。こうなると単純な「心因性皮膚炎」「舐性皮膚炎」という名称では片付けられないくらい発展した状態の、「常同障害」とか「強迫障害」になります。はっきりした「こころの病気」になるわけです。これは「尾かじり」や「知覚過敏症候群」でよく見られる徴候である「極度の自傷行為」や「自己攻撃」に進行することになります。

 

猫の心因性脱毛症の診断

心因性脱毛症を診断するための特殊な検査はありません。他のどの皮膚病でもないことを確認することで診断されることになります。例を挙げると

·         ノミアレルギー性皮膚炎

·         その他のアレルギー疾患(接触、吸入/アトピー、食物アレルギーなど)

·         ノミやダニ、シラミなどの外部寄生虫

·         細菌感染症や皮膚真菌症

·         皮膚にできた腫瘍

·         過度にグルーミングされた皮膚の痛み

です。

 

これらを鑑別診断するには身体検査といろいろな診断検査が含まれます。

·         顕微鏡下の毛髪検査(毛切れしたものかどうかを見ます)

·         血液検査(他の内臓疾患や代謝性疾患との関連性をみます)

·         皮膚掻爬試験(皮膚を削って破片を顕微鏡で観察します)

·         真菌培養(カビ菌による感染ではないかどうか確認します)

·         ノミの確認と駆除・予防剤の投与

·         アレルギー検査(血液の検査です)

·         除去食試験(低アレルギー性の食品を食べさせて、痒みが減るかどうかを確認します)

·         肛門嚢を調べ、処置をする

·         皮膚生検(病理学的な検査です)

·         潜在的な疼痛源を見つけるためのX線検査(関節痛などを探し出します)

 

診断的に薬を使ったり処方食を試したりすることがあります。これは外部寄生虫や食物アレルギーを原因として排除するために使うものです。原発の皮膚病によって最初は過剰な毛づくろいが始まるのですが、その後習慣的で強迫神経症的なグルーミング行動に変わって、見た目が複雑になっていることもあります。「ストレスだけが原因ではないのかもしれない」というところをきっちり調べ、診断的な治療を行うものです。すべての皮膚病が除外されて「心因性脱毛症」は診断されます。

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心因性脱毛症の治療

心因性脱毛症は、生活の中のストレスを減らすことによって治療されます。これには、行動の変更、つまり猫の遊び時間を増やすこと、刺激的な活動で環境を豊かにして退屈させないことも含まれます。

過度のグルーミング行動を無視することは重要です。特に注意を払うこと(声がけをする=たとえやめさせるためであっても、また叱るのも)は、過剰なグルーミング行動に対してご褒美を与えることになります。時には、飼育や遊びの時間など、他の行動を促し。グルーミングをやめさせるようにします。グルーミングしているときに罰を与えてはいけません。(コラッ!と大きな声を出すとか叩くとかすることです。)不安を増大させるため、結果的に過剰なグルーミング行動を増やしてしまいます。

同居猫とのトラブルが原因になっている場合には、攻撃的な猫から分離することは非常に役に立ちます。また猫が安心して身を隠す場所があることも重要です。

12回くらい、少なくとも15分間は猫と遊ぶのが、有益な戦略になっていることが報告されています。

抗不安薬や抗うつ薬が必要なレベルになっているときには、これらの薬を処方することがあります。これらの薬物は、通常、効果の発現までに4週程度を要します。約12週間、または症状が減るまで投与してもらうことになります。ときにはもっとかかることもあります。効果が見られてからもしばらく投与は続けていただき、ゆっくりと薬を減らしていきます。一部の猫は薬剤を減らすことができず、無期限に必要になることがあります。そういうときは薬による副作用をチェックするために血液検査を実施し、獣医学的な意味で十分な監視をすることになります。抗うつ薬の多くは、広く処方されていますが、ご家族が希望しない場合には使いません。

行動療法、薬物療法のほか、サプリメントやフェロモンなども有効です。

 

どうにも変化が見られないほどに重症化していると判断した場合には、動物行動学の専門家に紹介するかもしれません。

 

 

今日は猫のストレス行動である「過度のグルーミング」と、「心因性脱毛症」についてお話ししました。

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猫のストレスに対処する・予防する

 猫のストレスについてのお話、つづきです。

本来、家の中と外を自由に動き回っていた猫ですが、屋内でだけ生活させるようになってきて、猫は本来の行動ができすにストレスを持ち、困った行動を示す猫も増えてきました。猫のストレスについてお話を続けています。

今日は一般的な行動療法と、予防方法についてお話しします。

個々の困った行動とそれに対する治療は次回からのおはなしのときにします。

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一般的な行動療法(環境エンリッチメント)

猫のストレスの主な原因がわからない場合でもすべてに対応できる方法です。

·         あなた自身を落ち着かせて

猫がいる環境ではいつも穏やかな声で話してください。80代のおじいちゃんやおばあちゃんになったような気分で接します。声のトーンを下げ静かにゆっくりと。猫は感受性が豊かなので、あなたの感情やあなたの声にセンシティブに反応します。

·         静かな部屋でゆっくりとマッサージして

やさしくなでなでするのはストレスを回避します。これはあなた自身の緊張を緩和するのにも役立ちます。静かでリラックスした状態の時間を作り出します。ただし、「こうしよう!」と意気込んで、この状況を作るためにいやがる猫を無理矢理膝の上に抱きかかえるのはよくありません。

·         おもちゃを使ってあなたの猫と遊んで

1日に15分くらい、猫とだけ遊ぶ時間を作ってください。狩猟行動を模倣した遊びが好ましいです。(獲物を狙うのは猫です。追いかけっこして猫を獲物の役に回すことのないように!)

·         フェロモンを使ってみて

猫のフェイシャルフェロモンは猫が物体(または人間)に頬をすりすりしたときに出てくるフェロモンです。フェリウェイは、このネコフェイシャルフェロモンを模倣した製品で、猫に落ち着いた気持ちを促進させることができます。

·         音楽を流してみて 

柔らかな音楽を流すのもいいですし演奏してみるのもいいと思います。空間に静かな雰囲気が加わります。

 

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ストレスの予防

猫のストレス問題は生活の中で慢性化しわかりにくくなっています。はじめからストレスを作らないように予防した生活を提案することができます。一般的に言われている「動物福祉の5つの自由」がストレスを考える上でとても参考になります。これらをまず満たしてやることがストレスの回避になります。

  飢えと渇きからの自由

適切な食べ物が有り、いつでもきれいな水が飲める状態であること。これは同居猫が居て、食事や水飲み場へのアクセスが不自由になっているとストレスは発生してしまいます。必要とするときに、邪魔にされず自由に行けることが重要です。

  不快からの自由

清潔で快適な居場所が用意されること。きれいなトイレを使えることもそうです。

  痛み、けが、病気からの自由

体調不良があれば適切な獣医療を受けることができること。体調不良を早期に気づいてもらえることも含まれます。高齢になって関節痛があるなど、猫はひた隠しにするためわかりにくいのですが、ぜひ理解してあげてください。

  恐怖や苦悩(精神的な苦痛)からの自由

安心できる環境にいること。

穏やかな家庭を維持されることは猫にとって幸せなことです。猫は肯定的であろうと否定的であろうと一緒に暮らす人間の気持ちを汲んでいます。住む家の雰囲気が静かで穏やかであると受けるストレスは少なくなります。

日常生活をできるだけ一定にするよう考えてそのプランに従うようにします。ほとんどの猫は、いつ何が起るのかを知っていると、安心します。緩やかなスケジュールに従い、急な変更を避けます。(スケジュールを設定しても、あなたの猫が退屈になるようにはしないでください。日常の中でおもちゃを用いた遊びを提供してやってください。)

  正常な行動を表出する自由

動物本来の行動を示すことができることはとても重要です。猫は優れたハンターなので、襲いかかり、襲撃し、獲物をキャッチする行動を日常的に行いたいのです。屋内飼育の猫はこれらのニーズを満たす機会がありません。鳥の羽がついた「猫釣り棒」や、部屋中を走り回ることができるようにネズミを模倣したおもちゃなどを使って「獲物を狙い仕留める行動」を屋内で再現できるようにします。おもちゃを使って遊ぶと狩猟行動に対する欲求を満たすことができます。あなたにとっても猫にとっても一緒に遊ぶ時間はストレスに対して治療になります。こういう遊びを通して運動すると、猫は免疫システムの強化につながり、より健康的になれます。運動そのものは私たちにとっても沈着した負のエネルギーを解放させてくれます。

鳥など外の景色を見るための高い台など適切な場所を提供することも必要です。 気晴らしでにもなるし、退屈しのぎになります。

それから猫は爪研ぎする必要があります。爪とぎは筋肉に良いのと、自分の領域をマーキングすることができ、緊張を解放させる手段にもなります。

猫が隠れて待機できる場所を提供することも重要です。自然界で、猫は獲物を狙う前に物陰に潜んでいることを忘れないでください。

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  退屈を避けるための工夫のご紹介

o    思いがけない場所から何かが出てくるのを好みます。ベッドの下、ソファの後ろ、カーテンの陰などにドライフードを入れたペットボトルや蓋付きで手が入るくらいの穴を開けたプリンカップなどを仕掛けておきます。いつも同じ場所に同じ物を置かないように気をつけてください。獲物探しの行動になります。

o    新しいダンボール箱や紙袋(持ち手の部分は切り取って与えてください)を定期的に提供してください。猫は箱が大好きです。また前の物に飽きた頃、新しいものを発見すると興味津々でまた新しい袋に入って喜んでくれます。

 

愛は強力なストレス緩和剤

飼い主さんが猫のストレスを減らすための措置を講じると猫もそれに応えて変化します。それは飼い主さんのストレスも減らします。愛は伝染性があるみたいですね。あなたが無条件の愛を猫に与えると、お互いがHAPPYになります。「癒やしを求めて」猫を飼育するのではなくて、「一緒に暮らす家族」の感覚を忘れて欲しくないと思います。猫の方は「私の世話をする役目をあなたになら任せてあげてもいいのよ」と思って同居しているくらいの感じなのですから。

人生にはストレスはつきものです。けれどこのようにしてうまくストレスと回避していくと幸せになれるように思います。

今日も明日も、幸せな日でありますように。

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テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

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愛知県西尾市丁田町杢左51-3
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