猫の骨関節症・治療

猫の骨関節症のおはなしの2回目、治療についてです。

 

治療により猫はQOLが向上します。ぜひ骨関節症にご理解いただき、治療をしていただきたいと思います。治療の内容ですが、薬だけでなく、さまざまな方面からのアプローチがあります。

 

1.生活環境の改善

 これはご家族にご協力いただく内容です。これを一番最初に持ってきているのは、そのくらい重要だからです。安易に「お薬でなんとか」と思わないで、実践してください。

①寝る場所が高いところにあるなら低い場所に下ろす。

②日中よく行く場所(トイレや食餌の場所、給水器のあるところ)へのアクセスの途中に休憩できる座布団などを置く。

③トイレや食餌の食器、給水器を近くに寄せる。

④トイレを浅いものに変更する。

⑤猫が乗ってもよろけないような細かな砂を選ぶ。(固まる砂が好ましいです。)

⑥ベッドや窓辺がお気に入りならそこへ行けるようスロープを設置する。(傾斜角度は30度未満に。)

⑦ベッドパットは柔らかなものにし、局所暖房器具を使用する。

⑧グルーミングや爪切りを家族が肩代わりする。(もしくは病院で行います。)

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猫の骨関節症は地味ですが多発する病気でした。

 

2.鎮痛療法

疼痛緩和は効果的です。いわゆるNSAIDsが好ましく、チュアブル(喜んで食べることができる錠剤)とシロップの2剤を選択することができます。猫への飲ませやすさを考えて処方します。高齢猫では腎機能の低下がつきものですが、最近の研究ではメーカーが推奨している投与量よりも少ない量で有効な鎮痛効果があることも知られており、腎疾患を持っていても安全性は高くなっています。鎮痛薬の副反応としては消化器症状が主になっていて、嘔吐や食欲不振など飼い主さんにも分かりやすいです。ほとんどの猫は痛みから解放されて活動性が上昇します。

 グルココルチコイドは経済的な面で飼い主さんにやさしい薬ですが、コラーゲンやそのほかのマトリクスを低下させてしまうため結果的に軟骨に障害を与えることになります。骨関節疾患では使用しません。

 

3.軟骨保護のサプリメント

 軟骨の分解を減速させたり、軟骨の修復を促進させたりする目的で関節のサプリメントを使用します。コンドロイチンやグルコサミンは相乗効果があるため両方を含むものが適切です。コンドロイチンは軟骨関節に存在するグリコサミノグリカンで、グルコサミンはグリコサミノグリカン産生の前駆体です。滑膜細胞によるヒアルロン酸産生も行っています。

 最近当院でおすすめしているサプリメントのひとつにモエギガイ抽出オイルがあります(商品名:アンチノール)。脂肪酸製剤は多くのメーカーから出ていますが、この製品は抗炎症作用が大変強く、使用してみて効果発現までの期間が他社のものに比べ大変短いです。つまり速く良く効く感じがします。

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日常の注意点です。
 

4.体重管理

 肥満は猫の骨関節症発生の原因として確定しているものではありません。しかし、罹患している関節への過剰な体重負荷は骨関節症を悪化させるものであることが認められています。適正な体重に持っていくことは長期管理を行う上で大切です。

 

5.理学療法(リハビリテーション)

 猫が動きたがらないとき、家族が体を触るのを嫌がらなければ、マッサージをして肢の曲げ伸ばしをするのは良いことです。犬のようにバランスボールや水中ウォークなどができないため、猫のリハビリは受け身で関節を動かすことが主体になります。

 針治療は縮まった筋肉に関連した疼痛をやわらげる効果があることも知られています。残念ながら当院では針治療は行えませんが、お近くで行っている病院があればお願いすると良いかもしれません。有効という報告があります。

 

6.食餌療法

 犬のJ/Dのような関節のための処方食は日本では発売されていません。ざんねんですね。Hill’sJ/DやロイヤルカナンのMobilityにはアルファリノール酸やエイコサペンタ酸、ドコサヘキサエン酸などの脂肪酸が添加されています。また抗酸化物質や軟骨合成を促進させる物質やグルコサミン、コンドロイチンなども含まれています。つまり、いつもの食事に上記サプリメントを摂取すると処方食を食べているのと同じことになります。そうした意味からもサプリメントを飲ませるのは有効な治療法です。

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さまざまな角度から総合的に治療できます。
今月いっぱい、猫の骨関節症の掲示板を続ける予定です。

猫の骨関節症のお話、これでおしまいです。

犬と猫とでは現れる症状は違いますが、病態や有効な治療などは共通している部分もあります。犬の骨関節症でも触れた部分があります。参考になさってください。

 
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猫の骨関節症・症状

 高齢猫と骨関節症OsteoarthritisOA)についておはなしします。

 

 猫の骨関節症は長いこと見過ごされてきた病気です。過去にはレントゲン撮影をして関節に異常がみられても「これによって猫に弊害があることは無い」「猫は体が小さく軽いのでそのような所見がみられても臨床的に有意な問題は発生しない」と考えられていました。この10年あまりで「猫の痛み」に関する認識が高まり、治療法も大きく進展したことからこの病気が注目されるようになってきました。現在では犬とは違う臨床症状を伴うものの、犬と同様、骨関節症は高齢猫にとって一般的なことと考えられています。実際、数々の研究報告によれば高齢猫が骨関節症にかかっているリスクは想像以上に高く驚かされます。2002Hardie先生、2005Clarke先生、2005Godfrey先生は12歳以上の猫の90%が罹患していると発表しています。2011Slingerland先生の報告では6歳以上の猫の61%が少なくとも1つの関節にX線学的にみて骨関節症の所見がみられるとのことです。

 

こんなにも広く、多くの猫がかかっている病気だったのに、どうして私たちは気付いてあげられなかったのでしょうか。これは猫が「痛みを隠す」動物で、症状を表に出さなかったからです。猫にどのような行動が見られたら骨関節症のサインなのでしょうか。疼痛に伴う運動障害があるときに猫にみられる変化には次のようなものがあります。細かくチェックしてみてください。

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今月の掲示板は猫の骨関節症のご案内をしています。

 

<猫の骨関節症に関するチェック>

1、行動の変化

次のような行動をするとき、

「できていた」⇒「できなくなった」または

「普通にしていた」⇒「やりたがらなくなった」

などの能力的または意欲的な変化があるでしょうか。

①階段の上り下り

②ベッドやソファ、人の膝、作業台などへの飛び降りや飛び乗り

③屋外のフェンスなどに飛び乗ること

④木登りや屋根に上がること

⑤爪とぎ

⑥活発な運動

⑦猫用の扉(屋外から屋内に入る際の小さな猫用ドア)の使用

 

2、猫らしい動きや反応

 次のような動きにあてはまるものがありますか。

①こわばったようなぎこちない動き

②足を引きずる

③動くときに声をあげる

④体をなでたときに怒る

 

3、さまざまな変化

 次のような変化が見られますか。

①同居猫や家族に対して怒りっぽい

②ひきこもる、交わろうとしない

③活動性の低下、

④違うところで寝る

⑤2階に昇らない

⑥トイレの中に排泄物がおさまっていない

⑦「ごろごろ」とのどを鳴らすことが減少する

⑧食欲の低下

⑨身づくろいの回数の低下(被毛の変化)

⑩特定の部位だけ舐める

⑪爪とぎ回数の低下(爪が幅広く丸まって伸びている)

⑫これまで見せていたアクロバティックなグルーミング姿勢を見せない

 

どうでしょうか。「以上のような問題点が○個以上あれば骨関節症です」ではなくて、これらのうちどれもが骨関節症に対して「疑われるべき問題点」です。関節の痛みがあるために動きが鈍くなり、これまで普通にできていた動作をしなくなります。「猫って体が軟らかいよね、あんな姿勢で身づくろいしちゃう!」はずだったのに、いつの間にか「舐めやすいお腹のあたりとか顔洗いくらいしかグルーミングしてない、足をあげて内股を舐めることがなくなった!」ことに気付いていただけたでしょうか。こういう変化がみられるようになります。

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猫は痛みを隠すので症状が分かりにくいですね。

 

さて、病院では歩く様子を検査したり、ひじやひざ、股関節などの病変が表れやすい部分を中心にX線検査をします。猫によっては協力的ではないですから、このような検査を実施できないこともあります。そうなると、家でどのような様子なのか、行動の変化がどのようなものなのかというご家族の皆さんからのご報告がとても重要です。もちろん、階段下で「にゃごー、にゃごー、お迎えに来てー」と叫ぶシーンや「がんばって登っておいで」の声に反応してえっちらおっちら登るところの動画などを撮影してお持ちいただけるとこれは非常に有用なものになります。ご協力していただけるとありがたいです。

 

続きは次回お話しします。猫の骨関節症の治療についてです。

 

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