猫のフィラリア症

 猫のフィラリア症

 

「犬はフィラリア予防してるけど、猫はしなくて大丈夫なの?」というご質問をいただきます。このような内容のご質問は毎年聞かれます。答えは「ノミ予防と一緒にしていますよ」になります。レボリューションスポットを滴下している猫さんはフィラリア予防もいっしょにできているのでした。

今日は「猫のフィラリア感染」についてちょっと詳しくお話します。

 

<猫の犬糸状虫症>

猫の犬糸状虫症については丁寧にお話しする機会が少ないので、あまり知られていないかもしれません。「えっ!猫でも?」と驚かれる飼い主さんもいそうです。

猫は犬糸状虫とは相性が良くないので、蚊に刺されて感染子虫が体内に入っても心臓まで到達できず途中で死んでしまうことがほとんどです。それで感染した場合に出る症状が犬とだいぶ違います。昔は「心臓に虫が入らないから大丈夫」と思われていたのですが、様々な研究から今は、途中で死んでしまうことそのものが猫の体にとても大きな害を及ぼすことが分かってきています。

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今月の掲示板は猫のフィラリア症についてです。

<猫の体内に入った虫のゆくえ>

フィラリアは蝶々などの昆虫と同じように脱皮して体を変えていく寄生虫です。蝶々は「卵⇒幼虫(あおむし)⇒さなぎ⇒成虫(蝶々)」という変化ですが、フィラリアは子供の虫から大人の虫まで、形そのものはそうめん状の虫で形態に変化はありません。ただ大きくなるだけです。けれど脱皮して成長をする過程で、5段階の変化があります。

 (犬の体内)最初はフィラリアに感染した犬の血液中に出現する子供の虫で「ミクロフィラリア」です。体長は300ミクロン。顕微鏡でなければ見えない大きさのものです。

-2 (蚊の中に)フィラリアにかかっている犬の血を蚊が吸うとき、ミクロフィラリアが血と一緒に蚊の体に入ります。蚊に吸われた虫は「第1期幼虫」です。蚊の体内で1週間もすると脱皮して大きくなります。

 (蚊の体内)1回目の脱皮で「第2期幼虫」になります。それから2週間くらいでまた脱皮します。

 (蚊の体内)2回目の脱皮で「第3期幼虫」になります。

-2 (猫の中に)蚊が猫を刺したときに「第3期幼虫」は猫の体に入り込みます。猫の体に入った「第3期幼虫」は「感染子虫」と呼ばれます。猫の体に入ってから10日くらいすると脱皮します。

 (猫の体内)3回目の脱皮で「第4期幼虫」になります。ここから約2か月すると、また脱皮します。

 (猫の体内)4回目の脱皮で「第5期幼虫」になります。成熟には達していない、という意味で「未成熟虫」とも呼ばれますが、ここからが犬と異なる点です。犬ではここから末梢血の中に入り込み、血液の流れに沿って心臓(右心室を経て肺動脈)に行き成熟するのですが、猫では免疫作用を受け肺動脈で死んでしまいます。(*危険1)

-2 (猫の体内)一部の虫は死なずに成熟することもあります。心臓に入ります。しかしたいていはごくわずかなため、子供を産むことはありません。それで犬のように検査をしてもミクロフィラリアを検出できません。この後、成虫は2年から3年ほど生きて死にます。(*危険2)

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猫を宿主としたときのフィラリアの行方についての図です。

<猫のフィラリア症の症状は?>

猫のフィラリア症の症状は犬のフィラリア症の症状と大きく異なります。フィラリアが悪さをする時期は3つあります。

➀第1病期
 上述のライフサイクルの中の(*危険1)の時がまず初めの病期です。急激に死亡したフィラリアの虫が肺の血管や間質組織で炎症を起こします。これは犬糸状虫随伴呼吸器疾患(Heartworm Associated Respiratory Disease : HARD)と言われているもので、咳や呼吸困難が特徴です。喘息のような症状です。おう吐する場合もありますが、全くの無症状で経過することもあります。

 この時期を過ぎると猫には何ら問題のない期間が過ぎていきます。

②第2病期
 次にトラブルが起こるのは心臓内に寄生した成熟虫が死んで肺に流れ肺塞栓を起こす(*危険2)の時です。肺の炎症、急な肺障害が起こります。突然死を起こすこともあります。

③第3病期
 第2病期を乗り切った猫では、肺の変化からくる慢性呼吸器病を発症します。



いずれの相でも、咳や呼吸困難などを示す呼吸器の病気になります。たいていの猫の呼吸器病ではこのような症状を出しているので、フィラリア症と診断されずに終わっているケースもたくさんあるのかもしれません。

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犬糸状虫のライフサイクル。
犬と猫で違うのを表した図です。


<猫のフィラリア症を発見するには?>

犬のフィラリア症は予防薬投与前に2つの検査を行っています。一つは血液の中のミクロフィラリアを発見する検査で、顕微鏡で確認します。もう一つは心臓内の成熟虫を確認する免疫学的な検査(抗原検査)です。キットに血液を滴下し、反応して現れる赤い線を目視し判定します。

しかし猫の場合は診断がとても難しいです。心臓内に寄生する成熟虫の数が少なくミクロフィラリアを産まないことから、犬で行われるミクロフィラリア検査の結果は陰性になります。免疫学的な検査(抗原検査)は寄生する成熟虫が少ないと陰性になります。もう一つの免疫学的検査(抗体検査)では寄生があることを確認することができても、今の状況をそのまま表すものではありません。レントゲン検査で気管支を見ますが、喘息と似た所見で、区別がつきにくいです。心臓内を超音波で観察するのには猫の心拍数は早く、呼吸が荒いときはきれいに見えないことが多いです。
このようにそれぞれの判断が大変微妙ですが様々な検査を実施し、総合的な判断をします。それでも白黒はっきりつかないもどかしさがあります。

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Q&A方式でわかりやすくしました。



<猫のフィラリア症の治療は?>

おなかの虫だと、寄生している虫を駆虫するのが寄生虫治療の基本ですが、フィラリアの場合は成熟虫を死滅させる薬を使うことはありません。血管系は閉鎖されていますから、死んだ虫が肺に流れて閉塞を起こすからです。肺動脈塞栓症は危険な状態です。

それで「虫を殺してなくす」という治療ではなく、「猫が苦しんでいる臨床症状の改善をする」治療を行います。狭いケージの中で静かにさせる、酸素を流す、気管支を広げる薬や炎症をやわらげる薬を投与する、場合によっては点滴などの支持療法です。

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予防方法はレボリューションスポットでできます。

<どうやって予防しましょうか?>

このように、猫のフィラリア症はとても怖い病気です。運悪くかかってしまうと、どうにもならないようなところがあります。診断は難しいし、根本的な治療方法がありません。蚊は犬も猫も関係なく刺すでしょう。一番良いのは刺されても感染子虫が猫の体内で成熟しないように予防薬を投与することです。

現在、猫のフィラリア予防には内服薬と外用薬があります。カルドメックチュアブルはジャーキータイプの内服薬で、外用薬はレボリューションスポット。ノミ予防のためにいつも使っていただいている滴下剤です。(当院では取り扱いしておりませんが、バイエル社のアドボケートやメリアル社のブロードライン等でも滴下予防が可能です。)内服薬も滴下剤もどちらも1か月に1回投与します。

というわけで、これまでノミ予防としてお使いいただいてきたレボリューションスポットを、シーズン中忘れずに1か月間隔で使っていただくだけで猫さんはフィラリア予防ができます。夏の暑いときだけ、ノミが気になるときだけ、時々2か月くらい間が開いちゃうけど、という使い方を改めてもらうだけで、真新しいことはありません。

猫の
10頭に1頭が感染している?ともいわれている猫のフィラリア症。今年はきっちりお使いいただくと安心ですね。


今日のお話はここまでです。

長くなりましたが、「猫のフィラリア症は犬よりも怖いな」でも「予防は簡単だ」。これだけわかっていただけたら十分です。
それではしっかり予防をお願いします。

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テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

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