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傍前立腺のう胞(ぼうぜんりつせんのうほう)

 前立腺関連の病気にもう一つありました。
傍前立腺嚢胞(ぼうぜんりつせんのうほう)についてお話しします。ちょっとまれな病気かもしれません。

(傍前立腺のう胞と、前立腺のう胞は違う病気です。)

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お尻が大きく膨らんだタイプです。



<膀胱が二つ?>

前立腺ののう胞が一つだけ(ときに二つとか)巨大に、まるで膀胱のように(膀胱よりも)大きくふくれあがっていることがあります。巨大な袋が形成され、お腹の中にあるときは非常に悪性の腫瘍でもできてしまったのかというような様相です。前立腺の後ろ(尻尾に近い)にできていて、会陰ヘルニアを併発しているとヘルニアの中にすっぽりとはまってお尻がでっぷりとした様子になります。

病因は分かっていません。個体が生まれてお母さんのお腹の中で成長していく過程の途中で発生した組織(ミュラー管)の遺残と考えられています。

のう胞の中には液体が貯留しています。

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<のう胞のサイズによって症状が異なります>

大きくなると、オシッコが出にくい、ウンチをきばってするなどの症状を出します。大きくならないと症状は出ません。

前立腺の前方にあるときはお腹が大きい感じに見えます。前立腺の後方にあるときは会陰部の膨らみが大きくなっています。

動きを妨げるまでに巨大化している場合や痛みがある場合は、後ろ足がぎこちない歩き方になっています。

血尿に気づかれている患者さんもおられます。

大きなのう胞ができているときには、外貌から「大きな腫れもの」「腫瘍なのかしら」と心配されて来院されることが多いです。

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<検査します>

画像の検査が中心になります。外貌の視診からはじめます。
尿道から薄ピンクの分泌液が出ていることがあります。

前立腺の前の方にのう胞ができている場合はお腹が大きくなっています。X線検査では、大きく膨れあがった球形の組織が確認できます。それに続いて小さな球が2つ見え、膀胱の前の方が分かれてお団子のようになっているように思えてしまいます。

前立腺の後ろにのう胞ができた場合には会陰ヘルニアと合併していることが多いです。X線検査をするとヘルニア内に落ちてきているのだろうと思われた膀胱が腹腔内にも存在していて、やはり膀胱が二つあるように思えてしまいます。

超音波検査で内部を見ると液状物で満たされていることが分かります。のう胞の袋に石灰沈着を起こしているのが見つかるときがあります。

尿検査で血尿が確認されることがあります。

膀胱が二つあるように見えるため、X線検査は単純撮影に加え、造影検査も行います。造影剤で尿道から膀胱を映し出して確認をします。傍前立腺のう胞は尿道と連絡していないことが多いので造影剤の入った方(本当の膀胱)と造影剤で満たされなかった方(傍前立腺のう胞)を区別することができます。腹腔内にできた傍前立腺のう胞の場合、3つの球は「傍前立腺のう胞―膀胱―前立腺」の順に並んでいたのだと分かります。前後ではなくて、背中側とお腹側のように並んでいることもあります。また後部の場合、会陰ヘルニア内に落下していた物は膀胱ではないということもはっきりします。

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<外科的に治療します>

アピール度が高い外貌ですが、前立腺膿瘍ほどには悲壮感漂う手術にはなりません。水ぶくれになっている傍前立腺の一部分を開いて排液し、抜き切れたらその部分を縫い縮める手術を行います。同時に去勢手術も行います。前立腺のう胞を含めた前立腺の全切除では無いため、手術手技的にみた難易度は前立腺そのものを切り取る手術に比べれば高くはありません。ただし合併症がある場合の手術は複雑になります。

袋の中に細菌感染をおこしてしまうと慢性的な感染になってしまうので、術後もしっかり抗菌療法を行います。合併症予防のためしばらく抗菌療法は続けます。

 

<アフターケア>

術後も定期的に前立腺とその周囲のチェックに来院いただきます。再発していないかどうか2か月とか3か月ごとに超音波の検査を行います。予後は悪くありません。

 

<予防について>

これまでの前立腺疾患とちがい、あらかじめ去勢手術を実施すれば予防ができるという報告はありません。

 

前立腺関連の病気は今回で終了です。年の瀬が押し迫ってきました。寒さも増してきています。愛犬も愛猫もみなさまもお身体を大切に。

 

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前立腺の腫瘍

 
前立腺の病気についてお話しをしてきました。今回は前立腺の腫瘍についてお話しします。

<前立腺の腫瘍>
前立腺に発生する腫瘍は「腺がん」か「扁平上皮がん」のことが多いです。(どちらなのかを病理学的に区別するのは難しいそうです。)

前立腺が大きくなる病気のほとんどは未去勢のオス犬に発生しますが、前立腺腫瘍の場合は未去勢のオス犬よりは去勢済みのオス犬の方が発生率は高いです。

とにかく良性腫瘍であることは少なくて、前立腺に腫瘍が発生したとするとそれはほとんどが悪性のものです。「前立腺腫瘍」=「前立腺がん」のイメージです。ですから「あれっ?」と思うような節があれば、とくに去勢済みのオス犬で前立腺が肥大したときの症状を出していれば、大急ぎでお越し下さい。「老齢犬に発生する」と思われがちな腫瘍ですが、老齢のちょっと手前、9歳から10歳くらいの高齢犬に発生のピークがあります。この年齢層が要注意です。

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<気づいて!この症状>

・オシッコが出にくい。(決して尿道の問題だと軽く考えないように!)

・ウンチをするのに息ばる。(便秘かも、ウンチが硬いのかもなどと思わないで!)

・尿道から出血性の液が出てくる。(ひとりエッチのお汁だなんて思わないで!)

・体重減少や食事量の低下。(うまいこと痩せてきて良かったなんて思わないで!)

 

<病院で身体検査>

外から見た感じは普通です。主に直腸検査が診断的に意味のある検査です。実は触った感じから「前立腺腫瘍」の疑いが始まります。

・直腸検査をすると、硬くてごつごつした(弾力性がない)前立腺に触れます。左右対称ではありません。

・犬は前立腺を触られて痛みを示します。

・熱っぽい犬もいます。

・元気がなくなっていることもあります。

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<尿検査や前立腺液の検査>

直腸検査をしないで血液検査や尿検査などのラボ検査をするだけでは、診断へのとっかかりを得られないような気がします。これといった異常点がラボ検査では見つけられません。直腸検査で異常を見つけると積極的に前立腺の検査を実施していきます。

・尿は血尿になっているかもしれません。感染性のこともあります。

・前立腺検査では細胞検査が有益な検査になります。前立腺をマッサージして(痛がります。ごめんね、わんちゃん)、細胞を集め検査します。院内検査でふだん見受けられないような細胞が見つかります。これで疑いが深まります。
 

<細胞の検査>

腫瘍なのかもしれない部分を細い針で刺して腫瘍を疑う組織内の細胞を病理の先生に見ていただく検査(細胞診といいます)があります。皮膚や粘膜、皮膚のすぐ下の組織(目で見て分かるような部分です)にできた細胞の塊はこのように(穿刺)して間違いないだろうと思うのですが、膀胱にできた塊や前立腺にできた塊に針を刺すと、その周囲と針を引いて出してくるお腹の部分に腫瘍細胞をばらまいてしまうかもしれないという「危険」を潜めています。それで前立腺の腫瘍が疑われた場合は、超音波検査で観察しながら(針は刺さずに)カテーテルを使って吸引して細胞を集める検査をしています。
確定診断はこのようにして集めた細胞から病理専門医に委ねられます。

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<超音波の検査>

画像検査は重要な検査です。

・超音波で見ると前立腺は大きくなっていて、内部構造も整っていない部分を見つけることができます。

・前立腺の他、膀胱、その前方の腎臓や尿管もチェックします。前立腺の腫瘍は前立腺尿道から膀胱へ波及します。そして尿管が膀胱に開口するところが腫瘍細胞で埋まってしまうと腎臓からの尿の流れが停滞するために水尿管、水腎症を併発してしまうのです。そのような尿の流れがまだ順調にいっているのかどうか、すでに停滞をおこしてはいないかを確認します。

・付近のリンパ節もチェックします。転移の有無を調べます。

 

X線検査>

X線検査も行います。

・前立腺そのものを見るほかに、前立腺近くのリンパ節や腰椎や骨盤の骨に変化が無いかどうかを見ていきます。前立腺は近くのリンパ節や骨に転移しやすく、骨が増殖していることもまた溶けてきて骨密度が低下していることもあります。

・下腹部のほか上腹部や胸部の撮影も行いますが、肺などへの転移病巣が無いかを確認するためです。

・腫瘍の広がりや転移をしっかりつかまないと治療のプランを立てられないため、細かく調べることになります。X線検査も重要な検査です

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<慎重に治療のプランを練りましょう>

前立腺がんの治療は外科、内科、また放射線のオプションもあります。ステージにより選択できる治療が違います。また一度は治療をあきらめてしまう方もいらっしゃいますが、腫瘍は日々増大していき、今の状態がずっと続くわけではありません。次のステージになればまた別の問題が起こってきます。これから起こりえることを想定し、今できることは何か、この後こうなったらどうするのかまで踏まえてしっかりとした治療計画を考える必要があります。


・前立腺の腫瘍で根治を目標に置くのは転移がない初期の場合に限られます。それでも局所再発や遠隔転移が後日発生することもあります。

・根治目的の治療には前立腺切除術があります。前立腺は尿道を取り囲むようにある組織ですので、尿道の取り扱いが検討事項になります。そのまま温存する(前立腺尿道だけを取る)かまたは尿路変更(膀胱から前立腺全体を切除する)の手術を行うのかの問題です。非常に難易度の高い手術ですので、腎泌尿器外科の専門医がいる病院をご紹介します。

・ピロキシカム(鎮痛消炎剤の仲間ですがシクロオキシゲナーゼ(COX-2阻害効果があり、腫瘍の増大を抑制する効果があります)も補助療法として有効です。転移が見られない犬に特に有効です。

・複雑な手術を受けたくない場合には化学療法(抗がん剤による内科療法)を選択することができます。3週に1回の点滴療法です。このときもピロキシカムの併用が可能です。そこそこ手応えのある治療法だという印象はあります。

・すでに不完全ながらも尿路閉鎖がある(膀胱へ腫瘍が拡大してきている)場合に、尿路変更の手術(尿管腹壁瘻)を行うと延命効果が得られます。

・積極的な治療を行わないと決めた場合でも、その後の経過で苦しそうな犬の姿を見て「なんとかならないものか」と後から治療を始めたくなってしまうことがあります。そうなった時点から犬にしてあげられることは大変限られてきます。排泄路だけ確保する手術に踏み切るかどうか、もしくは鎮痛薬を用いた苦痛からの解放だけにするのかなど再び検討する必要が出てきます。

・診断後は選択した治療の種類に関わらず経過観察が必要です。

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<この先どうなるのでしょうか>

予後は大変厳しい病気です。

一般成書に記載がある「生存期間中央値」は甚だしく短いのですが、これは諸外国では「より良く生きる」ことを重要視されているために、進行している症例では発見と同時に安楽死されていて、その場合の生存日数は「0日」となるためです。飼い主さんの「あきらめない気持ち」が動物の未来をもたらしていくのは間違いないと思います。

早期に発見され、早期に根治治療に入った場合、うまくすると1年以上の生存期間を得られるようです。定期的なフォローアップには必ずお越し下さい。

診断された時点で既に進行していた症例では余命が短いことを覚悟して下さい。さらに進行していった場合(転移も含めて)有効な治療策は無くなってしまいます。犬のQOLを考えた人道的な処置も考慮の一つになります。


<予防できる?>

残念ながら予防方法はなく、早期発見と早期治療でステージが進む前に対処するのが最善策になっています。

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<早期発見はできるのか>

現在、BRAF遺伝子を調べると、移行上皮がんや前立腺がんの場合高い頻度で変異が見られます。この検査は「おかしなところがあるけれど、がんによるものなのかそれとも炎症性の変化なのか悩ましい」というようなときに用いる検査で、前立腺がんがあるかどうか分からないけれど広く網にかける検査(スクリーニング検査)ではありません。

無の段階から有を探し当てるのには広く誰でも検査が受けられ(検査が簡単であること)、そして安価で調べられる検査で、その検査の検出率が高く(感度が高いこと)、他のことではその検査項目に引っかかって来ない(特異度が高い)ことが望まれます。人の前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSA検査(prostate specific antigen:前立腺特異抗原)は人において前立腺がんの早期発見に有用で、これができてから前立腺がんの死亡率が格段に減少したそうですが、犬では有用ではありません。犬に有用な腫瘍マーカーが発見されて、「もしかしたら前立腺がんが生まれているかも」を早期にお安く知ることができたら良いのにと思います。

 
<おわりに>

もし愛犬が腫瘍だと分かったときご家族の皆さんはすごくがっかりされているだろうと思います。前立腺がんでは先が長くないかもしれません。でもまだ間があります。虹の橋のたもとに彼らを送るまでには時間があります。だって今生きて闘病しているところなのですから。悲しんでいる時間を今の彼らとの思い出づくりの時間に変えてみてはどうでしょうか。治療によって時間が稼げます。このあともっと状態は悪くなるのかもしれませんから、今こそいっぱい写真を撮ってあげて下さい。好きな物は何だったでしょう。好物メニューを思い出して作って下さい。でもグルメすぎてしまうと下痢になることもありますのでご注意下さい。

 

前立腺の主な病気をご紹介しようと始め、11月中このテーマとするつもりだったのに、クリスマスソングの聞こえる今日までかかってしまいました。お忙しい季節かと思いますが、愛犬のことをしてあげられるのは健康なあなたです。どうかあなた自身の健康にもご留意してください。


もう一回、前立腺関連の病気についてお話しして、この前立腺シリーズを終わりにしようと思います。

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前立腺膿瘍

前立腺の感染性の病気に、急性炎症と慢性炎症ともう一つ、膿瘍ができる病気があります。

3.前立腺の膿瘍形成

慢性の前立腺炎が重篤になったとき、前立腺の中に「膿瘍(のうよう)」を形成します。「前立腺嚢胞(のうほう)」は内部に前立腺液が貯留したものですが膿瘍は細菌と化膿性産出物(うみ)を貯めた物で、いつでも前立腺炎を引き起こさせる菌が前立腺内に潜んでいる状態です。慢性炎症が経過してさらに重症になってしまった状態という概念です。

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<犬の状態は?>

状況に応じてさまざまな様子を示します。総じて、前立腺の過形成を起こしたときや前立腺炎のときの症状のミックスのような感じです。急性炎症のときのように沈うつな様子を見せることもあります。ショック症状で粘膜が真っ白になり、脈も弱くなっているようなことがあり、驚かれるかもしれません。以下に症状をお示ししますが、常にこのような症状を出すわけではありません。

・一生懸命いきんで排尿、排便しようとする。

・尿道からの分泌物がある。出血性や膿性。

・尿のお漏らし。

・血尿。

・発熱や元気消失、食欲の廃絶、嘔吐。

・無気力。

・痛み。これは排尿時だけのことも。

 

<診察すると・・>

・前立腺の肥大が見られます。

・触ると痛がります。

・右と左のサイズが違うことがあります。

・柔らかいところと硬いところがあります。

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<血液検査では・・>

・血液検査も尿検査や前立腺液の検査でも、感染性の所見が見られます。それは白血球数が多かったり、C反応性蛋白が上昇していたり高グロブリン血症があったりするので分かります。そのほか貧血や肝酵素の上昇があることがあります。肝臓が悪いのでは無く「反応性肝障害」で、ときに黄疸があることもあります。

・尿検査や前立腺の検査で細菌感染が発見できます。

・超音波検査で左右不対症の前立腺に大小それぞれのシストがあるのが見つけられます。

 

<緊急治療です!>

前立腺膿瘍の治療はなかなか大変です。治療目的は腹膜炎へ進行しないようにすることです。そのまま放置しておくと、菌が血管内に入り、全身に回り敗血症を起こします。また膿瘍を包む膜が破れ膿がお腹に出て腹膜炎になることもあります。急激にショック症状を発します。敗血症も腹膜炎も致死率の高い全身性疾患です。

そうならないように外科的な処置が必要です。膿瘍ができているところに穴を開け、排膿させ、袋の中をきれいにしてから縫い合わせて閉じます。一緒に去勢手術も行います。術後もしばらく抗菌薬による治療を続けます。

手術はお腹の中でも一番尻尾に近い部分で、皮膚は広く大きく切って前立腺を操作しやすいようにする必要があります。血管や神経が豊富で取り扱いが難しいのが前立腺です。術中に膿瘍が破裂して膿が腹腔内に漏れてしまうという合併症の心配もあります。また術後も尿失禁などの問題を起こすこともあります。

前立腺が大きく肥大し排尿困難が長く続いていた場合は、膀胱が膨らみきっていて前立腺が小さくなっても思うように排尿できないことが有り(膀胱アトニーと呼んでいます)、膀胱の筋肉がしっかり収縮する力を取り戻すまでの間(ずっと取り戻せないこともあります)尿道から膀胱へ管を入れて排尿を管理しなければならないこともあります。

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<内科治療ではだめなの?>

膿瘍のできたところには抗菌薬が入り込めません。そのため内科的な治療は基本的に無理です。また前立腺には障害を受けていない部分もあるため、前回お話しした「血液-前立腺関門」のバリアがあるためになおさら抗菌薬は希望する部分に入り込めないのです。外科治療への判断が遅れるとそれだけ膿瘍が自潰するリスクは高まり、それはそのまま敗血症と死亡リスクを高めることになります。外科手術への覚悟を決めて下さい。


<こうなる前に!>

前立腺膿瘍の治療は難しくも有り高価であるのに、結果はあまり芳しくない(1年後の生存率が50%くらい)ものです。慢性の前立腺炎が前立腺膿瘍にならないようにしっかり治療するのがとても重要です。

もっと良いのは、幼少時に去勢手術をしておくことです。

 

細菌感染による前立腺の病気について3回にわたりお話ししました。単純な前立腺の過形成くらいだと去勢手術のことを検討する気になれないかもしれませんが、細菌感染をおこした前立腺はとても重篤な状態に発展する可能性があります。そうなる前の去勢手術は大変重要です。

 

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慢性前立腺炎

感染性の前立腺の病気、急性前立腺炎の次は慢性の前立腺炎です。

2.慢性の細菌性前立腺炎

急性の前立腺炎の治療が集中的にできなかったり、犬が我慢強く急性期に炎症があることを飼い主さんに知らせられなかった場合には、炎症は慢性化します。また、尿路感染が慢性化したときに前立腺に炎症が波及し、慢性の膀胱炎とともにじわじわ~っと慢性の前立腺炎になっていることがあります。オス犬の10%くらいは尿路感染症を持っていると言われていますから、膀胱炎などの尿路感染から前立腺炎があるのもごく普通のことです。無症候性膀胱炎といって、細菌感染が有りながらも症状を現さない尿路感染もあるため、分からないままのこともあるかと思います。

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<慢性の前立腺炎は症状が現れる?>

前立腺の炎症があることを全く現さない犬もいます。むしろ大半がこれといった症状が無くて、診断も決定的にできないことが多いです。ただ、こういう犬たちは再発性の膀胱炎だと思われていることの方が多いように思います。なんとなく元気が無いとか、食事が進まない、お散歩に行くのをいやがる、歩きたがらないなどの「訳が分からない!」といった症状を出している犬もいます。

 

<診察してみると・・>

・尿道や包皮から分泌物が出ています。

・前立腺の肥大が認められます。

・直腸を介して前立腺に触ると少し痛みがあるようです。

・触った感じはなめらかな腫れでごつごつしていません。

 

<検査は?>

尿検査や前立腺液の検査、前立腺の画像的な検査を中心に、押さえとして血液検査も行います。

<診断は?>
これといって他の病気が考えられないかな、という感じで診断を進めていきます。

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<治療は抗菌薬>

治療の中心は抗菌薬です。中期から長期の投薬期間を必要とします。どの抗菌薬を選択したら最良の効果が得られるのかを考えて選びます。

「血液―前立腺液関門」というのがあります。聞き慣れない言葉だと思いますが、血液と前立腺の組織液とが物質を交換する際にはたらくバリアー機構があります。いわゆる血液の「関所」です。前立腺にとっての有害物質が血中から前立腺の中に入り込めないようにブロックされる仕組みです。急性前立腺炎ではこのバリアシステムが破綻しているため静脈性にすぐに効果が出る抗菌薬を選びますが、慢性前立腺炎ではバリアシステムが破綻していないので、どんな抗菌薬でも効果的な治療効果が期待できるわけではありません。抗菌薬も種類によってはこのバリアシステムにより前立腺の中に入り込めない薬があるのです。抗菌薬のpH、また薬が脂溶性か水溶性か、蛋白結合性はどうかなど考えて、有効に働きそうな抗菌薬を選択しています。同じキノロン系であっても有効な薬とそうでない薬がありますし、人では有効ではないのに犬では有効なものもあるなどします。はじめは目星をつけて治療に入りますが、細菌培養の結果と併せて薬が変更になることがあります。ですから「長く効く注射がいい!」とか「1日に1回だけのシロップならのませられるんだけど」とか「味が付いてるお薬が良いわ」なんて贅沢な希望を叶えてあげられません。

結構長く、たいていは2か月くらいお薬を続けて貰います。効果の判定のためにまず1週間で、それから2週間で、さらに1か月で、というように綿密に再診に来て貰って評価をします。

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<補助療法があります>

この病気でも「去勢手術」をおすすめしています。抗菌薬だけの治療の反応が芳しくないときに行います。去勢手術をしても、まだ反応が良くないときもあります。追加の検査で他の病気が顕わにになっていないようだったら、さらにしばらく抗菌薬を続けることにします。






11月中に前立腺のお話しが終了しきれませんでした。このままもう少し続けます。次回はちょっとこわい「前立腺膿瘍」のお話し、そしてさらにこわい「前立腺の腫瘍」のお話しもいていきます。

山間部から平野部に紅葉と落葉のコラボが降りてきました。冷えは万病の元です。夜は温かくしてお休みください。

   


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急性前立腺炎

細菌が感染したときの前立腺の病気についてお話しします。
細菌感染による前立腺の病気は3つあります。
急性前立腺炎、慢性前立腺炎、前立腺膿瘍の3つです。
 

<細菌感染がおこる>

前立腺には正常な防御機構が働いています。前立腺尿道を膀胱から排泄された尿がザーッと勢いよく流れて菌の洗い流し効果があるのもその一つですし、前立腺液そのものには前立腺抗細菌因子(PAF)と呼ばれる抗細菌物質が産生されているので、細菌感染から守られているのです。けれどこのシステムに障害が発生(尿の流れの勢いが無くなる、前立腺のIgA産生が低下するなど)すると、前立腺炎をおこすもとになります。

前立腺は尿道の病気(尿道内に石ができている、尿道に何らかの原因で狭くなっているところがあるなど)や尿路の感染などに付随して感染をおこします。また良性の過形成であっても、前立腺内にのう胞ができると、細菌が繁殖するのに好適な場所になります。感染のルートは血液や精管なども考えられないことはありませんが、たいていは尿路(尿道)を経由して感染します。

前立腺の細菌感染は急性のことと、慢性のことがあります。さらに慢性の炎症が重篤になったり前立腺内のう胞に細菌が感染して「膿瘍」を作ることがあります

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1.急性の細菌性前立腺炎

非常に急に(甚急性といいます)発生します。症状も重く(劇症型とでも言いましょうか)、犬の様子が「オカシイ」ことにすぐに気づかれます。「死んじゃうんじゃないの?」と感じられるくらい調子が悪いです。

ですので、見逃さないように「チェックポイント」とか、「こんな症状に要注意」的なものをあらかじめ見て知っておこうとしなくても犬の異変には間違いなく気づかれると思います。むしろ、私たち獣医師の側で「他の病気と間違えた!」ということがないように、気を引き締めておきたいと思うようなところがあります。急性の前立腺炎を発症するのは未去勢のオス犬ですけれど、中年齢にくくるにはちょっと可愛そうだよねと思うような年齢層の成犬に多いイメージで、ほかの前立腺疾患が中高年であるのと対照的な感じがします。

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<どんな様子になる?>

・ぐったりします。(無気力といっています)

・嘔吐することがあります。(高熱のためです)

・ぎこちない歩き方をします。(後ろ足がこわばった感じ)

・ぐったりしすぎて歩けないこともあります。

・包皮から汁が出ることがあります。

 

<病院で診察すると・・>

・発熱が見られます。40℃とかそのくらいの高熱です。

・沈うつで、ふだんなら診察に抵抗するような犬も無抵抗です。

・触診すると前立腺周り(お腹の後ろの方)に痛みを示します。

・直腸検査で前立腺が大きくなっているのが分かります。

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<検査をすると・・>

・尿中に炎症性の細胞や細菌が出現しています。

・血液検査で白血球増多が確認できます。(少なくなっていることもあります)

・超音波やX線などの画像検査で前立腺が大きくなっているのが確認できます。前立腺にはのうほうができていることが多いです。

 

<診断には・・>

おうちでの様子、診察した所見、検査の結果などから総合的に判断して「急性の前立腺炎」を診断します。他にも発熱性の疾患はあります。前立腺意外の病気でも同じような症状が出ることがあるので、別の病気では無いことも確認して決定します。

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<念入りな治療になります>

高熱でぐったりしていることがほとんどです。これは急性の前立腺の細菌感染はそのまま、敗血症(全身に菌が回っている)になっていることが多いためです。できるだけ早く解熱させてやりたいです。それで、

・補液剤とともに静脈性の抗生剤を点滴で入れていきます。

・嘔吐して電解質のバランスが崩れていると補液剤を調製しなくてはいけないかもしれません。

・中枢性の制吐剤で嘔吐を止めてやります。

・点滴による抗生剤治療は3日から7日くらい続け、効果の判定ができたらその後は内服薬に切り替え、さらにしばらく投薬を続けます。

・炎症が鎮まり、病態も安定したら再発が起こらないように去勢手術の同意をお願いします。



<注意>
菌血症による発熱がおさまり、平熱になると犬はものすごく元気になります。たいていの飼い主さんは「もう点滴治療なんかしなくたって餌も十分食べるし大丈夫だ」と思われます。中には「早く点滴を止めてくれ」と言われる方もおられます。しかし個々で油断をすると抑えられていた菌の残りが再活動を始め、慢性の前立腺炎に発展する可能性があります。
慢性の前立腺炎の方が扱いはやっかいです。せっかく急性の症状を出し私たちに積極的なアピールをしてくれたわけですから、ここは大事に扱い、これだけで病気を鎮めてやりたいと思います。



細菌感染による前立腺の病気、慢性前立腺炎と前立腺膿瘍は次に続けます。大変お寒くなってきました。どなたさまもお身体をおだいじにしてください。

 

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プロフィール

ハート動物病院

Author:ハート動物病院
ハート動物病院です。
〒445-0062
愛知県西尾市丁田町杢左51-3
TEL/0563-57-4111
オフィシャルサイト:http://www.heart-ah.com/

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