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胆のうのおしごと

 胆のうのお仕事

胆のうは人間でも犬でも身体の中の重要な部分ですが、犬の身体の中のどこに胆のうがあるのか、それからどんな働きをしているのかを的確に説明することができる飼い主さんは少数で、「胆石ができたことがある」とおっしゃる経験者さんくらいです。

胆のうと胆汁

胆のうは、肝臓でつくられた胆汁を一時的に蓄えておく袋状の臓器です。胆のうは一部が肝臓の窪みに張り付くように位置していて、肝臓から出ている総胆管が十二指腸につながる途中にあります。胆のうは食事をすると胆汁を排泄するために縮みます。

胆汁もまた、多くの人に理解してもらっていない物質なのですが、胆汁は、小腸で消化される脂質を乳化するために重要な消化液です。脂質は水に溶けませんが、表面に水和性の物質をまとわりつかせると溶け込むことができます。(サラダオイルと酢からセパレートのフレンチドレッシングができますが、ここに卵の黄身を加えてしっかりかき回していくと混濁したドレッシングができあがります。黄身の役割が胆汁というわけです。)ただし消化酵素は含んでいません。必要に応じて十二指腸へ放出されます。胆汁の色は緑がかった黄色です。空腹時に犬が嘔吐した液が黄色い状態だと、多くの飼い主さんは「胃液を吐いた」と言いますが、吐物の黄色い色は胆汁の色です。私たちも嘔吐したときに味わった経験があると思います。

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胆のうのトラブルの兆候

胆のうに問題があるときに身体に現れる異常な症状はかなり一般的で、その他の健康状態や主要な臓器に問題が発生したときにも共通するような症状です。なんとなく調子がおかしいというあいまいな兆候を示している場合、何が問題なのかを正確に特定することは困難です。周期的に食欲がなくなるけれど1日絶食にすると翌日は普通に食べられるとか、明け方に黄色の液を吐いている(朝、夜中のうちに吐いていた食物を含んでいない吐物を発見する)が朝ごはんは普通に食べて吐くことはない、というような状況では誰もが見すごしてしまうと思います。状態が悪くなった場合は、黄疸(目の白目の部分が黄色く見える、尿の色が濃いとして気づかれます)、発熱、食欲不振や食物への無関心、けだるい感じ、吐きそう、吐くなどです。

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犬にみられる胆のうのトラブル

犬の胆のうに問題を起こす可能性のある状態は、閉塞性と非閉塞性の2つのカテゴリに分けられます。

非閉塞性の問題というのは、胆嚢から腸への胆汁の排出を妨げていない状態を指します。犬で最も一般的な非閉塞性胆のうの問題は細菌感染症から来る「胆のう炎」です。エコー検査を実施すると胆のうが大きく腫れていて、胆のうの壁が厚くなっているのを見つけることができます。通常、抗菌薬、胆汁の腸への排出を促す薬が投与されます。

犬が怪我をして胆のうが破裂した場合は、深刻な問題が発生します。交通事故による腹部外傷が主な原因です。胆のうが破裂すると、胆嚢から胆汁が腹腔内に漏れ、(腹部の内側を覆い、内臓を保護する組織である腹膜の炎症を引き起こします。腹膜炎は急速に犬の状態を深刻にします。(胆のう破裂のような目に見えない内部のトラブルが起こることがあるので、たとえ外見上問題がないように見えても、交通事故に遭ったら病院にお越しください。)緊急の手術が必要です。

胆のうの閉塞の問題には、胆汁の排泄路が物理的に閉塞したり、胆のう自体が損傷したりして、胆汁が小腸に放出できなくなる状況があります。

慢性的な炎症などの問題により胆のうが腫れ瘢痕化したりすると、胆汁排泄が滞り、時間の経過とともに胆汁が粘稠になり、胆汁の排泄を妨げることがあります。胆のう内部の胆汁の性状により「胆泥症」(たんでいしょう)と、「胆のう粘液のう腫」(ねんえきのうしゅ)、また「胆石症」(たんせき)などに分けられます。胆泥症では排泄障害が発生することはまれですが、胆のう粘液嚢腫は胆汁がプルンプルンのゼリー状で、排泄路の途中で動かなくなり、胆汁が通過できない状況に陥ることがあります。また胆石を形成しているとき、石自体が胆管を塞いで胆汁排泄が滞ってしまうことがあります。こうした排泄路の閉塞問題は犬の状況を悪化させます。過度に濃縮された胆汁が血流に入ると、黄疸につながります。これは犬の消化器系だけにおさまらず、全身の健康状態を混乱させます。

このような場合、閉塞させた粘液様の胆汁や胆石を取り除き、正常な機能を回復するための手術が必要になります。場合によっては、胆のうの切除手術を選択する場合もあります。

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胆のうを守る

脂質を消化する胆汁を生成するには元気な肝臓が必要です。肝酵素値の上昇やエコー検査での異常所見は、身体が高レベルの脂肪を処理する能力が低下しているサインです。今後、手術のお世話になることなく平和な生活を送りたいと希望する場合、食生活を見直す必要があります。脂質がたっぷりの揚げ物やサシの入った肉でなくても、ジャーキーやモイストタイプ(半生)フードには特殊な(構造式がアルコールにそっくりな)物質が含まれています。これはそのまま脂肪肝に結びつきます。脂質の酸化により炎症が発生すると肝組織を治そうとして炎症性細胞が出現し、治癒過程で線維化が進みます。傷跡だらけの肝臓にいつまでも酷な仕事をさせておくわけにはいきません。肝臓とそれに続く胆のうを守るために、低脂肪食を食することをおすすめします。


連日暑い日が続いています。「熱中症=体温上昇」という認識が多いようです。高体温症による「水分と電解質の消失」は急激な脱水症状として救急治療の対象になりますが、気づかれない不感蒸散による「水分と電解質の喪失」もまた、「かくれ熱中症」として身体のだるさや嘔吐、下痢、食欲不振、元気消失などを起こし、補液治療の対象になります。元気な肝臓も、もちろん腎臓をはじめ身体の全組織もたっぷりのお水で守られます。まだまだ暑い日が続くようです。どうぞ、意識してお水を飲ませるよう心がけてください。

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総胆汁酸(TBA)の検査

総胆汁酸値(TBA)の検査

総胆汁酸の検査は、犬の肝機能を調べる検査です。総胆汁酸値が通常の基準範囲外のときには、病気の可能性があります。肝酵素の検査が肝臓の損傷や炎症を特定するのに対し、総胆汁酸の検査は犬の肝臓が正常に機能しているかどうかをみる検査です。

胆汁は肝細胞で産生される消化液で、肝内胆管を通り胆嚢で貯留されます。それから食物を消化するときに十二指腸に排出され、脂肪を分解するように働きますが、腸管内での仕事が終わると腸壁から再吸収(再び血液の中に入る)されて肝臓に戻ります。そして肝臓に帰ってきた血液から肝細胞が胆汁酸を取り除き胆嚢に送り返し、このサイクルが再開します。(腸肝循環といいます)

犬の肝細胞が損傷しているか、または適切に機能できない場合、肝臓は血液中に蓄積された胆汁酸を効率よく除去できないため胆汁酸は血流にとどまります。血中の高濃度の胆汁酸を特定することは、犬の潜在的な肝臓の問題を特定するのに効果的な方法で、総胆汁酸値の上昇は、膵炎やクッシング症候群、肝臓のがんなどさまざまな健康上の問題を示唆します。また、肝臓に関連する血管異常やそれによる問題を早期に特定し、疾患が悪化する前に管理できるようにするため、総胆汁酸の検査は子犬に対して実行する場合にも役立ちます。同時にアンモニア値(NH3)を測定することもあります。

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検査の必要性

肝臓を含めた消化器系の症状は、これらの症状が出る原因を特定するのが難しい場合があります。それは同一の病気でも犬によって症状が大きく異なるし、またさまざまな疾患で普通に見られるような症状であるためです。

子犬の成長が良くない、若年期から体調が優れないと思われる場合、肝微小血管異形成症(PHPV)のリスクが他の犬種よりも高い可能性があるテリア種やチワワ、トイプードル、カニヘンダックスと、それらの品種のミックス犬などのごく小さな犬たちにも、幅広い検査パネルの一部として胆汁酸検査を実施する場合があります。

検査の方法

完全な総胆汁酸値を検査するためには、空腹時と満腹後の2回の採血が必要になります。空腹状態(早めに夕食を済ませた翌日の午前)に病院に来て血液を採取します。それから脂肪の多い食事を食べさせ2時間経過したころに、食後のデータとして再度血液を採取します。院内で食事を食べることができれば、2回目の採血が終わると犬は帰宅できます。もし病院内では緊張して食事が摂取できない場合は、帰宅後食事を済ませ再度来院して2回目の採血をします。

食前と食後の2つの血液サンプルの総胆汁酸値を比較します。血中の総胆汁酸値が通常よりも高いことが判明した場合は、肝臓の問題を示している可能性があります。
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検査結果の解釈

健康な犬では脂肪の消化を助けるため、一度消化に使われた胆汁酸を肝臓で血液から再吸収しますが、肝臓に問題があってこの役割を適切に果たさない場合は、食後の血中総胆汁酸値は高いままです。一般的に食後の高い総胆汁酸値は問題を示していますが、より深刻な病態の犬の場合空腹時の総胆汁酸値も異常に高い場合があります。ただし、複数の検査を実施すると、同じ個体でも空腹時よりも食後の結果値が低く出たり、常にボーダーライン上で決定的な高値を示すことがなかったりする場合があります。

わたしたちが犬の総胆汁酸値が異常に高い場合に懸念するのは、「門脈体循環シャント」(Portosystemic shunts : PSS)(「門脈体循環シャント」は単に「門脈シャント」と略して呼ばれることもあります。)の存在です。これは血管の奇形です。総胆汁酸値の検査は「門脈体循環シャント」を診断するのではなく、シャント状態の可能性を診断しています。腸管から流れてくる栄養をたっぷり含んだ血管(門脈)と身体を循環している血管(体循環)は、本来結合することはありません。門脈は一度肝臓内に入り、肝臓内で必要な栄養素の再合成や貯蓄、意図せず入ってきた毒素などの無毒化などの仕事を行ない、全身に回っても問題がない血液に変えて体循環に合流する仕組みになっています。末梢血管から血液を採取する場合、(頸静脈から採取しても、腕から採取しても、下肢から採取してもすべては)体循環系なので、腸管から戻ってくる総胆汁酸が高濃度に存在しているはずがありません。もし総胆汁酸値が高ければ、体循環にある血液に門脈系の血液が混入している可能性があります。

それから機能不全の肝臓が原因で総胆汁酸の上昇が発生する可能性があります。それがもう一つの懸念である「肝臓内の血管異常」(原発性門脈低形成 Primary hypoplasia of the portalvein : PHPV)(肝微小血管低形成と言うこともあります)です。消化後の胆汁酸を多く含んだ門脈系の血液と一般の静脈系の血液が肝臓内で相互に交流を持つために、総胆汁酸値が上昇します。「肝微小血管低形成」でも肝臓は十分に発達がないため「小肝症」と呼ばれるやや小さな肝臓をしています。ケアンテリア、ヨークシャテリアをはじめ、ミニテチュアシュナウザーやマルチーズなどで発生がよく見られます。

注)「門脈シャント」は、高度な技術者による腹部エコー検査で疑いが濃厚になり、麻酔下血管造影CT検査で確定診断になります。一般に先天性の「門脈シャント」は肝臓の十分な発達がないために小さな肝臓をしていることが多いです(小肝症)。肝硬変などの重篤な肝臓病の影響で数本以上の血管が形成される「後天性の門脈シャント」が発生することもあります。
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治療

肝血管の異常から数値が高まっているとしても、肝機能低下症は徐々に進行し肝不全に発展してしまう可能性があります。手術で閉鎖が可能な太さの血管がバイパスしている場合は手術で血管を閉じていきます。「肝性脳症」は肝臓で解毒されなければならない有毒物質が体循環に乗って脳へ達し、神経症状を発生する病態です。激しいけいれんや意識障害ほどではないにしても、性格が変化したり、身体が震えたりよろけたり、行動上の変化が見られます。肝性脳症を防ぐために、肝臓疾患用の特別療法食を利用することができます。また肝保護薬や有毒物質(アンモニアなど)の発生を防ぐ薬や、肝臓を機能的に働かせる必須アミノ酸(サプリメントとして摂取可能)を使うことができます。

7月28日は「世界肝炎デー」です。ふだん、肝臓の検査というと、GOT、GPT(ALT、AST)、ALPなど、肝酵素が主で、総胆汁酸の検査はなじみのない検査かと思います。特殊な血管異常を見つけるための検査項目ですが、青年期の避妊手術前のスクリーニング検査に(主に小型犬種向け)、総胆汁酸値も加えることにしました。肝臓の発達が不十分ではないかどうかを調べ、できれば早期に門脈シャントや門脈低形成を発見していく目的です。







 

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猫の巨大結腸症・2

猫の巨大結腸症の続きです。
治療について詳しく書きました。



<巨大結腸症の内科的治療法>

通常、最初に内科的治療を試みます。(内科的な治療で効果が得られなかった場合、または内科的治療を施しながらも進行してしまった場合に手術が適応されます。)

内科的管理には、5つの要素があります。

1.適切な水分を補給し、水分を維持する
脱水症状の緩和のために水分補給をします。排便困難になって食欲や飲水欲の低下した猫には必須の治療です。

2.蓄積している糞を取り除く、継続的に除去する
薬物投与の前に蓄積してしまった便の排除も不可欠です。

3.食物繊維の多い食事にする、この食事を続ける
食物繊維が多い処方食を与えることや便軟化剤、結腸運動促進薬などの薬の使用は、困った状態がリセットされた後に適応される内科治療です。これらは根本的な原因を修正するものではありませんが、猫が便秘にならないように糞便を通過させる方法です。

4.便軟化剤を試す、身体に合った薬剤と薬量で維持する
便を軟らかくする薬が便軟化剤です。第一選択にしているラクツロースは昔からある薬で、投与量により便の固さが変わります。飼い主さんが希望する便の固さに調整するよう投与量を加減することができます。浸透圧によって腸に水を引き込む消化できない糖です。味や口当たりのために猫が好まない場合もあります(甘いのでたいていの犬は大喜びで舐めてくれます)。猫の好みに合わないときはポリエチレングリコールを選択します。腎臓を悪くする不凍液の成分であるエチレングリコールとは化学構造が違います。これには風味が無いため食事に混ぜて与えることも可能です。こちらも腸管から吸収されず水と結合しやすい物質で、この特性により便を軟らかくさせます。飲水量が足りないと脱水症になる可能性がありますので注意深く投与する必要があります。

5.結腸運動促進薬を使う
結腸の筋肉を刺激し、腸管運動を促進させる薬(モサプリドなど)も排便状況の改善を目的に使用します。ネコの結腸運動に有効であることが示されている新しい運動促進薬も海外では出ていますが、日本では未だ発売で残念ながらその効果を体験することができません。ミソプロストールは、NSAIDsによる胃の粘膜損傷の発生率を低下させることが示されているお薬ですが、猫の結腸平滑筋の収縮を刺激することが明らかになりました。今後使ってみたいと思います。メトクロプラミドとドンペリドンは、末梢運動促進効果と中枢性制吐効果を持つお薬です。これらの薬剤は胃の運動性を向上させますが、結腸通過時間にはほとんど影響を与えず、便秘や巨大結腸の治療には不向きのようです。
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<進行していく>
軽度または中程度の場合(おそらく病気の初期段階に当たると思われます)は、処方食+便軟化剤+腸管運動促進薬の治療を常に、そして定期的な便排泄処置、時折水分補液という内科的な治療で維持することが可能です。
事態が進むにつれて、便の排泄処置(腹部触診により蓄積された糞便を手動で押し出す用手排便、浣腸や摘便なども含めます)の頻度が増します。重度に便が蓄積された状況では、便を排出するための処置がとられるとき、脱水や電解質の乱れを修正するために静脈内輸液療法を行ない、時に入院になる場合もあります。結腸内の糞便量が大きく硬すぎる場合は全身麻酔が必要になることもあります。浣腸処置により嘔吐を起こすこともあるため、気管挿管が必要になります。浣腸剤には温水や温めた生理食塩水などを使用します。

注意)浣腸処置は動物病院で行ないます。家庭で市販の浣腸剤を使って浣腸を試みるのは危険なため、行なわないでください。浣腸剤によっては重篤な電解質異常を起こしてしまうことがあります。

宿糞量をためないうちに排泄させていけると、内科的なコントロールで数か月から数年は状態の維持が成功していきます。残念ながら、結腸から便を除去する方法の必要性は徐々に頻繁になります。最終的に病気が進行する猫は内科療法には反応しなくなります。その結果、結腸は再び大きく弛緩し、固い糞の塊を内包し便を押し出す力が無いただの袋状の組織になります。

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<巨大結腸症の外科的治療>
内科的アプローチが効力を無くしてしまった場合は手術を検討する必要があります。これは結腸の機能していない部分を除去する大手術ですが、多くの猫は良好な反応を示します。結腸の大部分(ほぼ90%から95%)を切除する結腸全摘出術は、食事管理を含めた内科的管理に反応しない(しなくなった)巨大結腸症の外科的管理に最適な治療法と考えられています。

骨盤骨折などこの病気の元になってしまった原因がある場合は、それに応じた外科処置も必要になります。

術後13日間は輸液で水分補給します。痩せている猫ではハイカロリー輸液を選択することもあります。周術期中(手術後しばらくの間)は、必要に応じて適切な鎮痛薬を使用します。手術を受けた猫が術後食欲不振になることは珍しくありません。が、たいていは一時的に過ぎず、術後の体調の回復と共に食欲も出てきます。手術後72時間くらい経過すると食事を摂ることも可能です。低脂肪の下痢になりにくい食事を選択します。

<結腸が無くなっても大丈夫?>
結腸の主な役割は糞便から過剰な水分を除去することなので、結腸全摘出術を受けた猫は、手術直後はかなり軟便になります。それも1日に数回排便が発生する可能性があります。これが最も一般的な術後の問題です。けれど肛門括約筋はそのままであるため、猫は腸のコントロールを失っているわけではありません。ほとんどの猫は、この段階を経て1か月程度で許容できる軟度の便を形成し始めます。そして2か月くらいでは通常かまたは通常に近い状態の便に戻ります。3か月後には平均して2日に3回くらいの排便を行います。糞便のコントロールの喪失があってもそれは必ず戻ります。 


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しばらく待合室の猫コーナーの
ところに下げておきます。
お手にとって閲覧ができます。
 

<まとめ>
猫の特発性巨大結腸症は、結腸機能障害を特徴とする比較的よくある疾患です。一般的な臨床徴候には、排便障害、食欲不振、体重減少、ときどき嘔吐が含まれ、身体検査では結腸内腔内の非常に硬い糞便物質が触診ですぐに明らかになります。特発性巨大結腸症の診断をする前には、さまざまな検査を実施して素因となる問題を除外する必要があります。食事の変更と下剤、腸の運動促進剤の投与による内科的治療が成功する可能性があります。ただし、薬物療法に反応しなくなった猫には結腸全摘術を考慮しなくてはいけません。

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猫の巨大結腸症

ウンチが出ない!
 猫の巨大結腸症

特発性(原因は不明)メガコロンと呼ばれる大腸障害についてお話ししたいと思います。この病気は結腸から直腸にかけて大量の便を貯留し、排便が著しく困難な状況です。いわゆる便秘がまれに発生する程度ならあまり心配する必要はありません。けれど頻繁に便秘が発生するようになると、最終的に巨大結腸症につながることになります。これは、下剤などの処置だけでは制御できない便秘です。早期に治療されないと、結腸が慢性的に膨らみ腸の運動性を引き起こさせる腸壁の筋肉にダメージをもたらし、自力で排便することができなくなってしまいます。

単純な便秘も巨大結腸症の入り口になっています。
毎日の排便を確認するだけで重症化を未然に防げます。

<解剖学的なこと>

消化管は管状器官で、口から食道、胃へ、そして十二指腸、回腸、空腸の小腸を経て、盲腸に接続します。続いて結腸、直腸があり、肛門部で消化管は終わりです。消化管の機能は食物を消化し、栄養素を体内に吸収することです。胃は消化管が拡張した部分です。酸を生成し、タンパク質の初期分解を助けます。小腸は胃から結腸までのとても長い領域です。食物を吸収可能な栄養素に分解する働きをしています。結腸は水分の吸収と糞便の貯蔵のための場所として機能します。また、腸内細菌は特定のビタミンを産生する場所でもあります。結腸の壁には、脊髄からの神経刺激によって収縮する筋肉の層があります。結腸が収縮すると、糞便がからだから押し出されます。

 <巨大結腸症というのは?>

結腸への神経が正常に機能しない場合、結腸壁の筋肉は適切に収縮しません。結腸壁の筋収縮が無くなると、筋肉が弛緩して結腸の直径が大きく広がります。このだるんと広がった結腸の直径は、通常の猫の直径の3倍から4倍にもなります。糞便は通常の方法で直腸に押し込まれるのではなく、膨張した結腸に蓄積していき、そのまま動かず結腸にとどまり、重度の便秘を引き起こします。この結腸の巨大な拡大とその結果生じた便秘が「巨大結腸症」です。

巨大結腸症は結腸の平滑筋機能不全から来る状態です。

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閲覧用紙つくりました

<症状は?>

「便秘」は排便がまれな(規則正しく出ない)こと、または不完全である(出きらない)状態であると定義されます。便は排出されないと結腸に溜まります。猫はそれでも食事をしていきますから溜まりが徐々に増えていきます。そして結腸の仕事は糞便から水分を吸収させることなので、結腸部にとどまればとどまるほど水分が抜けてカチコチの便になっていきます。最初は単純な便秘でも、ゆっくりと排便困難が進行していき、最終的に巨大結腸症になります。

しっかり観察している飼い主さんは、猫が(さまざまな期間で)排便が減少しているとか、便が出ていない、排便にいきみを伴う(努力して出そうとするけれど出ない)と言われることが多いです。「いきみすぎて吐いているみたい」という様子を伺うこともあります。便秘になっている猫は週に1回から3回程度しか排便をしません。硬くて乾燥した便をぽろりと出す程度で、直腸内には糞便を留めていることが多いです。たまに大量の便が出ます。慢性便秘の猫は、結腸粘膜に対する糞便の刺激作用により、かちこち便(血が付いていることもある)または下痢を交互に繰り返すというエピソードを起こすことがあります。排便困難は猫一生懸命いきんでいるがウンチがでないということで比較的発見されやすいですが、排便状況を見る機会が無い猫、屋外のトイレで用を足すとか猫を多頭飼育しているとか、勤務の都合で長く家を留守にしている飼い主さんの場合は発見の機会を逃してしまうことも少なくありません。便秘が長引いた猫では、食欲不振、体重減少、嘔吐が観察される場合があります。巨大な糞塊の間をぬってとろんとした腸液が出てくることが有り、これを飼い主さんは下痢だと勘違いされる場合もあります。

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毎日の排便確認が重要です

<診断と検査>

重篤な結腸宿便が特発性巨大結腸の猫の身体検査所見です。身体検査では、結腸内で触知可能な非常に硬い糞便が大量に明らかになります。さらに、重度の罹患猫では脱水症、貧血、腹痛、および軽度から中等度の腸間膜リンパ節腫大が発生する場合があります。

診断調査は、結腸の狭窄および/または閉塞を引き起こす可能性のある根本的な問題を除外することを目的としています。血液検査や尿検査のほか、必要を感じる場合は神経学的な検査なども行ないます。

腹部X線撮影は、結腸埋伏の重症度の特徴を明らかにし、異物、腫瘤病変、骨盤骨折、結腸狭窄、脊柱異常などの素因を特定するために不可欠です。

子猫の巨大結腸症は甲状腺の機能不全によって引き起こされる可能性があるため、血液検査が必須です。

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毛球もウンチを出にくくする要因になります

<巨大結腸症の原因は?>

便秘には多くの原因があります。先天性巨大結腸(腸神経系の発達異常が原因であると推定されます)のこともありますが、大部分は後天性です。巨大結腸症につながる可能性のある病気は、直腸や肛門を狭くして便通が困難になる病気です。例えば、腫瘍や異物などで結腸が狭窄され機械的な閉塞があると巨大結腸症につながる可能性があります。骨盤骨の骨折やゆがみは便の通り道を狭めるため巨大結腸を引き起こす原因として比較的多い原因です。肛門嚢膿瘍などの肛門の疾患があると猫は痛みのために排便をこらえ、結果的に巨大結腸症につながります。マンクスは、巨大結腸を引き起こす可能性のある脊髄変形を起こしやすい猫で、神経の損傷があると結腸の運動性にも影響を与える可能性があります。マンクスのほかでも脊椎疾患から神経性に腸の動きを悪くさせ、結果的に巨大結腸症になってしまう猫もいます。

潜在的な原因として猫の食事または環境要因に関連している可能性があります。トイレが汚れていると猫は定期的に排便するのを拒否し、最終的に結腸が伸びることになります。骨などの非吸収性物質が摂取されると異物として結腸に影響を与える可能性があります。高齢猫によくみられる慢性腎臓病のように脱水をおこしやすい疾患では、便をカチコチにすることで便秘を呼ぶこともあります。

ほとんどの場合、結腸が機能を停止する理由を特定することはできません。この病気が最も一般的にみられるのは、肥満傾向の中高年齢のオス猫です。原因不明の巨大結腸症は「特発性巨大結腸症」と呼ばれます。巨大結腸症のうち62%が特発性です。

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腸内細菌のこと・つづき

蛋白漏出性腸症の治療のために腸内細菌を整えることは、過剰になっている免疫系に対しステロイド療法に頼らずにブレーキをかけることになります。もう少し、お話しを続けます。 



<腸内細菌が作り出す物質>

活性化された腸内細菌が作り出す産物をポストバイオティクスといいます。「post:あとに、biosis:生物」なるほど、わかりやすい言葉です。しかしポストバイオティクスはバイオジュニックスとかバイオジェニックスといわれることの方が多いです。バイオジェニックスとして酪酸や酢酸、プロピオン酸などの短鎖脂肪酸やポリフェノールなどが知られています。今後研究が進むとさらにいろいろな成分がわかってくると思います。

ビフィズス菌やラクトバチルス菌などから作られたバイオジュニックスは商品化されていて、こうした製品からはこれまでのプロバイオティクスなどで得られていた有益な効果、便の質の改善、規則的で健康的な便の維持や免疫に良い作用なども同様に得られています。

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新しいフードです。
名前がそのまま腸内バイオーム。
急性下痢にも効果有りです。

<バイオジェニックス>

腸内細菌の機能的最終産物が生体のどこにどのように作用するのかということも徐々にわかってきています。酪酸は粘膜細胞に栄養を与えますので、傷ついた腸粘膜上皮の再生作用が得られます。またポリフェノールからは抗炎症、抗酸化作用が得られます。そのほか、機能的物質は血管、膵臓、脳、末梢神経、脂肪細胞など多くの組織にも影響を与えることから、糖尿病やメタボリックシンドローム、アルツハイマー病などの治療の一つの面として期待されています。

 

<腸内細菌と免疫>

免疫というのは、外から侵入した細菌やウイルスなどを撃退し、病気を発生させないようにする自己防衛システムです。がん細胞の発生に備えて常に監視も行なっており、新生のがん細胞への攻撃も行なっています。

ときに自分自身を異物と誤解して攻撃をしてしまうこともあります。この誤爆ともいえる事態は自己免疫性疾患で見られます。またアレルギーは病原性を示していない花粉や食品などに対して過度に攻撃してしまうわけですが、こちらは過剰防衛に当たります。炎症性疾患では必要以上に兵士が現場に駆り出されて集まっている状態とも言えます。これらの病気はすべて免疫の異常から発生する病気です。

身体には免疫応答にブレーキをかける細胞が存在しています。制御性T細胞(Treg)です。この細胞がしっかり働いてくれると、免疫系の病気、アレルギー性の病気、炎症性疾患などを抑制してくれます。(過剰に働き過ぎるとがん細胞の成長に荷担してしまうという悪い結果にもなります。)

免疫応答に異常のある病気ではこの免疫にブレーキをかける細胞Tregが減少していることがわかっています。炎症性腸疾患のある患者さん(人)、慢性腸症になっている犬では減少しています。

腸内細菌が産生した短鎖脂肪酸は大腸のTregを増やすことに関係しています。過剰な免疫にブレーキをかけるTregが増えることで、正しい免疫応答ができるようになります。

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猫用もあります。
下痢だけでなく排便困難な猫ちゃんにも効果有りです。
猫ではフードのほかにサプリメントでシンバイオティクスを
加えることが難しいのでフードに入っていると好都合です。



<期待される病気>

腸内細菌の話題ですが、犬の慢性腸症、ことに炎症性腸疾患に対して期待されるため、蛋白漏出性腸症の続きとしてお話しを続けてきましたが、その他にもミニチュアダックスの大腸にできるポリープ、膵外分泌不全症の治療に期待が持てそうです。さらに、肥満、糖尿病、胆肝系(胆汁酸の組成変化による肝疾患)、加齢、認知障害、感情機能に関する問題(これまで抗うつ薬を使用してきた攻撃性などの行動学的な困った案件)にもぜひ使いたい治療です。

腸内細菌のバランスを整えて腸の健康をもたらすことがからだのために大切であると言われています。「善玉菌を増やしこれを維持すること」は昔から健康に良いこととされてきました。今も変わりがありません。バランスの取れた腸内細菌叢を維持することは健康のために必要です。が、腸内細菌の作り出す世界と可能性はまだ無限にあります。

腸内細菌が作る最終産物は腸に限らず全身の各所(脳や膵臓、脂肪組織そのほか)に効果があることがわかってきました。これまでざっくりと「免疫力が強くなる」といわれてきたことの実態もわかってきました。病気により腸内細菌の中で増える菌群と減少する菌群が明らかになり、病気が治癒するとその細菌群も健康な動物と同じ組成になっていくというようなこともわかってきました。腸内細菌の安定化は「腸の健康のため」だけにとどまらず、身体全体に良い効果をもたらしていることがわかります。病気を管理し治癒に導くために、腸内細菌の構成比を整えることが大切なようです。腸内細菌は補助的でも有効に働いてくれそうです。

 

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プロフィール

ハート動物病院

Author:ハート動物病院
ハート動物病院です。
〒445-0062
愛知県西尾市丁田町杢左51-3
TEL/0563-57-4111
オフィシャルサイト:http://www.heart-ah.com/

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