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慢性腎臓病と栄養

 腎臓病も心臓病と同じように栄養学的サポートが重要です。腎臓病に適した食事によって寿命が延びることも研究によりわかっています。今回は腎臓病のときの食事、栄養についてのお話しです。

 

<腎臓病と食事>

腎臓は糸球体と尿細管から構成されているネフロンの集まりですが、いろいろある腎臓の働きを集約すると、①糸球体で代謝物を濾過して血流から老廃物を無くす「除去」と、②尿細管で水分をもう一度血流に戻し入れる「水分の節約」ということになります。(そのほか、もっとたくさんの仕事も担っています。)腎臓の機能がある一定のところを超えてしまうと、尿素やリンなどの有害な老廃物が体内に戻り始め、また体内の水分がより多く失われるために脱水につながります。

このような問題は食事によって(部分的ですが)対処が可能です。高品質で身体を維持するのに余剰分が出過ぎないレベルの蛋白質とリンを抑えた食事にすれば尿素やリンの生成量は減るので、「除去」という仕事を腎臓に過剰に強いることがなくなります。また水分の多い食事であれば「脱水」の予防に役立ちます。

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極端な分類ですが、
犬は「漉す」力が弱まるタイプ、
猫は「水を節約」する力が弱まるタイプの
腎臓機能低下が多いです。
 

<腎臓病の動物に合った食事をすること>

腎臓病は治る病気ではなく、進行していく病気です。だから残る腎機能を大切に使い、進行を遅らせることが大切です。その一つが栄養管理です。個々の腎臓病患者さんの状況に合わせた治療の一環に食事療法を組み合わせて、腎臓を長持ちさせていきます。

腎臓病用療法食は長年の研究で、通常食を食べた群と比較して長生きするという結果も得られています。

腎臓病療法食の特性についてお話しします。

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犬も猫も腎臓病療法食で長生きすることができます。

  リンが制限されている

 腎臓病療法食として設計された食事はどれもリンが制限されています。体内から排泄されるリンはすべてが腎臓を介して尿中に出て行きます。腎機能が損なわれると、排泄が滞るため体内のリンレベルが上昇し始めます。血中のリン濃度を抑える最も簡単な方法は犬や猫が摂取するリンの量を抑えることです。病気の初期段階では少し制限するだけで良いのですが、病気が進行していくに従い、より多くのリンを制限する必要が出てきます。それでも体内にリンが滞るようになったときは腸管内でリンと結合する「リン吸着薬」を服用する必要が出てきます。それで体内にリンが入るのが制限されます。(初期段階からリン吸着薬を服用する必要はないです。)

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リン制限をしてある療法食と、普通の食事では
生存期間に大きな差が出ました。

  ちょうどいい量の良質な蛋白質が入っている

 食餌中の蛋白質は多すぎると有害になる可能性があります。蛋白質を多く含む食品には必ずリンが多く含まれています。また余剰な蛋白質は分解されて窒素分が高くなります(血液中の窒素レベルが上昇します)。腎臓病で筋肉の衰えが目立つ猫に食餌中の蛋白質が制限された食事を与え続けるとさらに筋肉を消耗することになります。そのときの状態に合った「ちょうどいい量」はそれぞれ違うので、個別対応をしたいです。

 一般に、初期の腎臓病には低レベルの蛋白制限をし、病気が進行するに従って蛋白制限は低レベルより中レベルに抑えられているものを選択します。腎臓病療法食でも「初期用」と「進行時用」にステージにより異なるラインナップができています。

 「良質な蛋白質」というのは良く聞くワードかと思います。最上級A5ランクの牛肉と週末スーパーで購入する大袋入りの鶏ささみの違いでしょうか。いいえ違います。蛋白質は分解されてアミノ酸になりますが、アミノ酸の中でも身体が必要とする、すなわち筋肉量を促進させる「必須アミノ酸」をすべて一定レベル以上バランス良く含むことが「良質」と評価されます。

 タンパク質の少ない食事を与えることに加えて、肉、ジャーキーなどジャンクなおやつ、チーズなどの高タンパク質のおやつを与えないようにする必要もあります。

 蛋白が尿から漏れ出てしまっているのに、もっとたくさんの蛋白質を補わなくていいのかしらという考えをお持ちの患者さんもおられるかもしれません。食餌中の蛋白量は少ない方が漏出する量も少ないという研究結果が出ています。そのほうが腎臓に対する負担も少なくなりますので、ぜひ蛋白制限食を与えてください。

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筋肉の痩せをみるスコア表(犬)です。

  エネルギー(カロリー)の必要量が補えるようになっている

 エネルギー要求量と食餌中のエネルギー量が見合っていないと身体は痩せてきてしまいます。必要量に十分足りる量を与える必要があります。腎臓病で高窒素血症が出てくると、嗜好性も低下し、食欲不振になってきます。しっかりした量を猫自身がカバーできなくなってきますので、少量でも十分なエネルギー量がまかなえるような高カロリーな食事が望ましいのです。腎臓病用療法食は一般にハイカロリーに作られていることが多いです。

 また、それぞれのメーカーさんは嗜好性に対する研究にもしのぎを削っています。「チキン味」のほか、日本の猫がより嗜好性を示す「魚味」などバラエティーも豊かです。

 それでもなお筋肉を削っていくような場合は、カロリーを補う薬を添加します。

 

  缶詰食VSドライフード?

 缶詰やパウチ食はドライフードに比べ水分含有量が多いため、脱水が起こりやすい腎臓病の猫に勧めることが多いです。ただし、その水分量がカロリー密度を下げていますので、ある程度の分量をたべていかないとドライフードに比べて体重維持が難しいこともあります。

 ドライフードよりウエットフードを好んだ場合の注意点は、嗜好性の継続性です。缶詰食に切り替えた当初は喜んで食べてくれるかもしれませんが、その後も嗜好性が維持されるとは限らないのです。もし十分量が食べられず、体重低下があるときはドライとの混合にする、ドライフードにもどすというのも妥当な選択肢になります。絶対に缶詰食の方が勝るというわけではないので臨機応変にとらえてください。

 一方、缶詰食やパウチ食には見向きもしない猫もいます。各社努力はされているのですが、猫は気むずかしい生き物ですので、私たちの意図と希望にすんなり沿ってはくれません。いろいろ試してお気に入りが見つかると、皮下補液を始めるまでの期間を延長させることができるのにと思いますが、これも猫次第のことです。

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おなじく、猫の筋肉スコア表です。
しっかり栄養摂取をしないと筋肉を壊していきます。
(異化亢進状態が進んでしまいます)

  低ナトリウムになっている

 腎臓病では高血圧になっている猫が多いことや、ナトリウムそのものが利尿につながることから、脱水を促進させてしまうため、食餌中のナトリウム量は少なくなっています。

 高塩分(ナトリウム)の食事は血圧を上昇させ、腎臓の損傷を悪化させる可能性があるため、腎臓病のペット用に設計された食事はナトリウムが少ないです。ナトリウムは利尿につながるため、猫の脱水を促進させてしまいます。また、チーズ、パン、多くの市販の犬猫用おやつなどは高塩分ですので、これらを与えることも避けてください。カロリーあたり1 mgkcal)未満のナトリウムを含む食品やおやつは許容できる範囲の量であれば大丈夫です。低ナトリウムのおやつには、果物や野菜が含まれます(ただし、ブドウ、レーズン、玉ねぎ、ニンニクは避けてください!)

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しっかりお水を飲ませてください。


   オメガ3脂肪酸が含まれている

 オメガ-3脂肪酸・EPA(エイコサペンタエン酸)およびDHA(ドコサヘキサエン酸)は、炎症の軽減に役立つことが知られています。慢性腎臓病が進行すると、「フリーラジカル」(酸素代謝中に生成される活性酸素分子)の形成により腎臓が傷つけられる可能性があります。オメガ3脂肪酸は腎臓の血流を良くし、糸球体内圧を下げます。腎臓病用療法食には、糸球体と尿細管間質の健康維持のため、オメガ3脂肪酸が増強されています。

 

  アルギニンが含まれている

 アルギニンが強化されている療法食もあります。アルギニンは、酸素と反応して一酸化窒素を生成する必須アミノ酸です。一酸化窒素は、血管の平滑筋を弛緩させ、血圧を低下させます。うっ血性心不全を有するヒト患者は、血管一酸化窒素のレベルが低く、血管機能障害により運動不耐性が増加し、生活の質が低下すると言われています。アルギニンの補給は、血管機能を改善し腎臓病の動物にも利益をもたらします。

 

  身体を酸性にしないようにできている

 腎臓病用に設計された食事は、身体が非酸性になるように設計されています。(多くのドッグフードとほとんどの猫用食品は酸性になるように設計されています。)腎臓病の猫は酸性になりすぎる(代謝性アシドーシスといいます)ことが多いため、この問題に対処するように設計された腎臓病用療法食を利用しない手はありません。

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食欲がないときに腎臓病療法食に変更すると食べません。
急性悪化期は治療で状態が安定してから食事をスタートさせます。
食事を温めるなどの工夫で嗜好性が高まることがあります。

<手作り食・そのほか>

腎臓病の進行に伴って食欲が減ってきます。健康な体重が維持できなくなってきます。「なんでもいい。食べて欲しい」と思うようになります。けれど特定の食品だけを与えるとそのときは良い選択であったように見えますが、そればかりを与え続けるのは良い方法ではありません。手作り食といえども栄養が不完全にならないよう研究して、安全で栄養価の高いレシピに基づいて衛生的に調理してください。完全手作り食を希望される場合はレシピをお作りしますので、「適当に」作らないでください。

 また、ネット上には多くの「腎臓に良い」と名打った猫用食品が出ていると思いますが、腎臓病療法食とは異なるものです。(本当に間違いのない製品ができたのであれば、彼らはまず動物病院へ売り込みにきているはずです。)賢い消費者であってください。

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病気と食事についてのガイドブック。
待合室の書架にあります。
腎臓病以外の病気食についても書かれています。
お手にとってご覧ください。

<早期発見と早期治療介入>

早期(IRISのCKDステージ1のとき)に積極的な治療介入をすることについては大規模な研究がないため「エビデンスがない」ということになります。けれど血液検査上で異常値が認められるようになるまで何もしないで待つよりは、理論的に合っている食事でケアを開始していくのは、QOLの高い期間を長く過ごさせてやれるのではないかと思います。腎臓に負担のかかるお薬を使わないこと以外にも、お水や食事で腎臓を守っていきたいです。
それから、IRISのCKDステージが2以上の段階では、ここでお話ししてきたような特性を持つ従来の腎臓病用療法食は十分なエビデンスがあります。ぜひこれまでの食事から切り替えていただけたらと思います。

 

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慢性腎臓病に使われるお薬


連日の猛暑で、犬も猫も食欲減退。活動性も低下。元気なく動きが悪いこともあります。水の飲み方に変化はありませんか。もどすようなことはありませんか。「水?減っているかな?」「あれれ?嘔吐した?」どうでしょうか。こんな質問にも「しょうが無いよね、暑いもの」「たまには吐くよね、猫だもの」で済まされてしまうと、慢性疾患の早期発見も、急性悪化も見逃してしまいます。

今日のお話はハートニュース8月号とかぶります。慢性腎臓病のことです。何度も繰り返すお話しで、新しいことが盛り込まれていないかもしれませんが、わかっていらっしゃることでも、また思い出して貰うために、しつこくお話しします。

 

<診断された日が始まりの日>

猫の腎臓病はたとえ治療をしていても進行していく病気です。「慢性腎臓病」だと診断したとき、これはゴールではなくてこれからの長い道のりのスタートです。

 ひとことで「腎臓病」といっても、初期のもの、中間のもの、進行した後期の段階のものまでさまざまで、大筋の治療は同じであっても細かな個々の状態(高血圧があるとか貧血があるとかなど)によって、対応は違ってきます。こうした治療は犬でも同様です。

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<いろいろな治療がある>

腎臓病というと、「毎日皮下点滴をしなくてはいけない」というイメージを抱かれる患者さんがいらっしゃいます。以前に飼っていた猫がそういう治療だったから、もしくはお知り合いの方の猫がそのような治療を受けていたからです。けれど、病名は同じでも病期(病気のステージ)も病態も違うので、選択する治療法は異なります。慢性腎臓病のときに使う主な治療(治療薬)を挙げてみます。

1. 水分を補う

初期は自分自身で水を飲むことに任せます。欲しいときに水がない!という事態は避けるようにします。給水の方法はどんなものでもかまいません。「カルキ臭くない水」「動く水」が好きなようです。いろいろ気づかってあげてください。

2.   高血圧の管理をする

腎臓病だとわかったら血圧測定を行ないます。そこで、もし血圧が高く、標的臓器に障害を与えそうなレベルであったとしたら、高血圧をコントロールする薬を服用してもらいます。

3. 蛋白尿の管理をする

  腎臓病の発見では、血圧測定のほか、尿検査も行ないます。そこで尿タンパクが一定の数値を超えるほどになっていれば、蛋白尿を管理する薬も処方になります。蛋白尿はそれ自体が腎臓を悪化させるし、たくさん尿タンパクが漏れ出て、体蛋白が減少してしまう(ネフローゼ症候群)になるのを避けなければいけません。

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4. リン吸着薬を使う

  病期が進んでいくと、リン制限食を食べていてもリンの腎臓からの排泄が滞りがちになります。そうなったら薬です。リン吸着薬は食べ物の中に含まれるリンを薬でとらえて体内に吸収させないようにし、糞便とともに体外に排泄させるようにするお薬です。薬のほかにサプリメントもあります。

5. アシドーシスの管理をする

  腎臓で窒素代謝物がうまく排泄されないと、身体の中に酸が溜まってきて、身体は酸性に傾いてしまいます。けだるい感じになり、生活の質を低下させます。身体を中性にもどすためアルカリ薬が必要になります。

6. 貧血の管理をする

  腎臓は赤血球を作るホルモンを産生していますが、腎臓病になるとこのホルモンが十分に作れなくなり、赤血球の数も減りますし、作れても寿命の短い赤血球になってしまいます。ホルモン補充の注射や、赤血球を作る材料でもある鉄剤を補って貧血を回避するようにします。

4リン 

7.
 嘔吐させない、食欲を出させる

  窒素代謝物の排泄が滞ってくると、気持ち悪くなって吐いたり、そうでなくても食欲が湧いてきません。窒素系の毒物を排泄させる治療だけでは追いつかないこともありますので、対症療法として嘔吐を止め食欲が出るお薬を使います。

8. 腎臓病用療法食を使う

  腎臓病のための食事は窒素系代謝物が最小量になるように設計されています。(必須アミノ酸が不足しないように配慮された良質な蛋白質で構成されています。)また低リン、低ナトリウムで、少量でも十分なカロリーが得られるように脂質はやや高めです。そのほか、不足しがちなビタミン類も補充されています。フードはドライタイプ、ウエットタイプがあります。また、胃瘻チューブを設置した動物のためのリキッドタイプもあります。

一般食に比べて長生きしたというデータが出ています。

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9. 活性炭製剤を使う

  「毒素の吸着薬」と言われているのが、活性炭製剤です。食事で生まれる窒素代謝産物を腸内で吸着し、体内に吸収されるのを防ぎます。毒素だけを吸着し、糞便として体外に排泄させる仕組みです。活性炭の表面の小さな穴に栄養素やお薬の成分は吸着しないようになっていますが、念のため一般の薬とは時間をずらして投与していただいています。

10. 抗菌薬を使う

  慢性腎臓病では尿路の細菌感染率が高く、膀胱から逆行性に腎臓まで細菌が上っていくと、さらに腎臓機能を悪化させてしまいます。それで定期的に尿検査を行ない、感染が見つかれば抗菌薬で細菌をやっつけます。

11. 腸管に作用するサプリメントを使う

  窒素代謝物を栄養にする腸内細菌を増やし、尿毒症性毒素を食べて処理して貰います。腸内細菌が住みやすいようにプレバイオティクスのほかシンバイオティクスになっている製剤もあるし、リン吸着能を併せ持たせるように複数の物質を組み合わせたサプリメントもあります。

9クレメジン 

12.
 プロスタサイクリン製剤を使う

  比較的新しい薬です。血管内皮細胞保護作用、血管拡張作用、炎症性サイトカイン産生抑制作用、抗血小板作用を通して、腎臓を保護し、腎臓病が進行したり悪化したりするのを防ぎます。

13. ω3脂肪酸系のサプリメントを与える

  ω(オメガ)3脂肪酸には抗高脂血症作用や抗炎症作用、抗血小板凝集作用など一部プロスタサイクリン製剤の作用と共通する作用があります。

14. 電解質バランスを調整する

  電解質の中でも、とくにカリウムは心臓の動きに直接関わってくるミネラルです。高すぎても低すぎても不整脈を発生させ、心停止を起こさせます。低いときはサプリメントで補い、高いときは静脈内点滴で徐々に低下させます。

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<細かな治療はみんなそれぞれ>

思いつくままに並べました。もしかするとこれ以外の薬を使う(使っている)ことがあるかもしれません。このたくさんの治療(薬)が慢性腎臓病のときに、いつも、すべて使われるというものではありません。その時々で必要になるものを選んで使います。病期の進行によって、追加で薬が増えることもあるし、それまでは使っていた薬を使わなくなることもあります。また個体によっても違いますので、お隣さんの猫が同じ慢性腎臓病だったとしても、うちの猫ちゃんと違う薬を使っているということもあります。「フードくらいは一緒だろう」と思われるかもしれませんが、病期によっては、また治療の段階によってはおすすめしないこともあります。100頭の慢性腎臓病の猫が居れば100通りの治療があります

 

<やっぱり検診が大切>

飼い主さんがわかる変化は、食事の量や準備した水の減り具合、活動性などで、これらは腎臓病に特化した情報ではありません。猫の身体を知るために必要なのは定期検診です。(定期検診は健康診断と少し違います。)定期検診は病期が進行していないか、合併症を併発してはいないか、もう少し薬を増やして身体を補助した方が良くはないだろうかなど、いろいろ評価し次に備えるのに有効です。健康診断が広い範囲のチェックを行なうのに対し、検診は腎臓関連にターゲットを絞って行なうチェック体制ですので、的を絞って効率的に検査を行なうことができます。

近頃注目している検査に「シスタチンC」という項目があります。予後の判定にも利用できそうです。健康診断ではあまり出てこない、腎臓に特化した検査を行なうのも検診(健診と検診、ちがうのです)ならではです。

慢性腎臓病であっても、早期に発見でき、すぐに治療をはじめていれば、数年の単位で猫の生活の質を高いまま、生活していくことが可能で、予後は良好です。かつてはできなかった治療が今できるようになっていることを鑑みると、長生きすることは大切です。

「猫が嫌がる」とか、「検査は猫にとってストレスがかかる」とか、マイナス思考はやめ、定期的に病院に猫を連れてくることで、猫を慣れさせる方向に努力をしてみてはいかがでしょうか。

 

 

今日のお話はこれでおしまいです。


先日「皮下点滴だけおいくらですか」というお問い合わせがありました。返答に困ってしまいました。
二次病院で診断され日常の治療だけをご希望される場合は、
最近の検査データと次回診察日まで必要な治療内容等の診療情報提供書とともにご来院ください。担当の先生とタッグを組んで最良の治療体勢が取れるようにしたいと思います。専門医さんとチームを組んでの仕事、大歓迎です。

8月の掲示板は、慢性腎臓病について。「好んで食べてくれるフードがなかなか見つからない」こともあるかもしれません。腎臓病用療法食について陳列しておきます。さらに、「できることがいろいろあるのね」と思っていただけるように、治療薬やサプリメントなども一緒にご紹介してあります。待ち時間等にご覧ください。なお、治療に関するご質問もお気軽にどうぞ。

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猫のシュウ酸カルシウム尿石

 シュウ酸カルシウム結石・猫の場合

 

猫で近年問題になっているのはシュウ酸カルシウム結石です。猫にできた腎結石と尿管結石の90%以上はシュウ酸カルシウム結石です。シュウ酸カルシウム結石は内科的な溶解ができません。好ましいのは結石の形成を予防して、腎機能が元に戻らないほどの救急事態を避けることです。

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待合室に掲示しています。

<典型的な例>

    腎臓に石ができることから始まります。けれど石が腎臓にできても症状はありません。腎盂炎があるとか、その石が落ちて尿管を通過する段になるまでは痛くもないからです。

    腎結石が片方だけの時、石が尿管に落ちて、完全な尿管閉塞になり、腎臓が腫れてくると痛みが発生します。このときの痛みを猫が耐えてしまい、数日過ごしてしまえば、病気の検出は困難です。「なんか調子が悪い日があったかな」で終わってしまいます。これが最初の尿管閉塞ですが、結石がないもう一方の腎臓は健全なので、血液検査を行っても腎機能をみる項目には変化はありません。そのまま診断につながらず、閉塞を起こした方の腎臓は緩やかに機能を喪失していき、徐々に委縮して、のちに「小さな腎臓」と言われることになります。残された腎臓は2つ分の働きを余儀なくされるために頑張って働きます。代償性肥大をおこし、のちに「大きな腎臓」と言われることになります。落ちた石は尿管にとどまることもあるし、膀胱まで落下することもあります。

    実質一つで頑張っている腎臓に結石ができ、この石が尿管に落下し排尿困難になった時、2回目の尿管閉塞になるわけですが、このときは1回目の落下時とはだいぶ状況が違ってきます。腎臓が腫れて痛みが出るほか、急な腎機能の低下によって「おう吐」や「だるそう」などの尿毒症症状を出します。これは危機的な状況です。腎機能の障害は全部の機能の2/3から3/4が失われるまで血液検査上では明らかにはならないので、残る機能はわずかになっています。また、いわゆる猫の慢性腎臓病に見られる状態と、こうした救急時に見られる急性の腎障害とでは、同じ検査項目を見ても身体の状態を推し量るのに大きな違いがあるのです。レントゲン検査では大きさの異なる二つの腎臓を確認することができます。これは「大きい腎臓、小さい腎臓症候群」と呼ばれてきました。そして小さな石が尿管で立ち往生していることもわかります。エコー検査でも腎臓の大きさの違いは判りますし、もっと有効なことは腎臓の尿が集まる部分(腎盂)が広く拡張していて、それに続く尿管も太くうねっていることで、腎臓からの尿の流れが悪いことが判明します。痛みのある猫が詳細なエコー検査をするのに耐えてくれるようであれば、尿管内に詰まった石の存在も確認することができます。

このようなストーリーで経過するのが典型的な例ですが、たいていは③の時点で病院に連れてこられることがほとんどです。こうした経過ではない猫もいます。

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急にぐったりして発見されることが多いです。

<緊急事態にどう対応するか>

猫の場合、尿管閉塞の80~90%は部分閉塞で、腎臓で作られた尿は少しずつ膀胱へと流れると考えられています。しかし内科的に尿管の緊張を解き、点滴によって尿管の石を膀胱に導くことをトライするのもせいぜい24時間から72時間程度です。治療をしていても尿がしっかり作られないとか、高窒素血症が進行するとか、そのほかの問題が浮き彫りにされてくるときは緊急の手術を行わなければいけません。この時間は尿管結石が通過することを期待する時間というよりは、むしろ腎臓や尿管の手術に対して熟練した外科系の専門医と連携をとるのに必要になる時間と考えた方がよさそうです。とりあえずの内科療法はまず奏功しないだろうけれど、次の手立てのためのつなぎ治療ということです。代謝性アシドーシスを抑え、命に危険のある高カリウム血症をコントロールします。十分な排尿がない場合は、水分過多になってしまうこともあるためしっかり観察を行う必要があり、入院管理以外は対応不能です。(通院で様子を見ることは危険な状況です。)

家庭ですでにこうした時間を経過してしまった場合、治療に対する効果が芳しくないことが多いです。

運良く、尿管閉塞の事態を内科的に切り抜けることができる(内科治療が有効であった)割合は813%だけだったという報告があります。

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高窒素血症があると激しい嘔吐が続きます。
 

<専門医がやってくれること>

二次病院では、腎臓の圧を回避させ、緊急的に尿を腎臓から排除する処置をしてくれます。そのまま内科的な加療を続け、腎機能の回復を待って(1週間かそこいらです)、本格的な尿管の手術に入ります。尿管に残された機能を推測するために、レントゲンの造影検査を必要とするかもしれません。尿管の機能が残っていれば切開と石の切除を行ないます。尿管の機能が怪しいと、石を取り除いても尿の流れを期待することはできないため、新しく尿路を作る必要があるでしょう。これらの生体に頼る手術をあきらめて、別の装置を体につける(皮下尿管バイパス手術)を行うことになるかもしれません。尿管ステントによる手術は再発率が高いという報告があります。

さらに術後も、腎機能の回復を促すための密度の濃い内科療法が継続的に行われます。

ひとたび急性の腎障害を起こすと、腎臓に対しては機能障害を残しての回復が最良の予後になるかと思います。慢性の腎臓病へと移行することがほとんどで、腎機能を悪化させてこの救急事態の間に死亡してしまうことさえもあるくらいです。全く腎機能を落とさない結果に終わることは期待が薄いです。残念ながら生存率は平均して30%程度と言われています。

この事態を切り抜けるためのキーポイントは熟練した経験豊富な獣医外科医と、腎臓内科に卓越した獣医腎臓内科医の連携といっても過言ではないでしょう。

退院までに1か月近くを要することになるだろうこと(場合によってはそれ以上)、そしてその後もずっと慢性腎臓病の管理が続くことは覚悟してください。

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生死の分かれ道になります。

<偶然見つかった石をどうするか>

石があっても症状はなく、たまたま別件で検査をしているときに発見することがあります。この場合は定期的に結石の動きを観察することになります。残存する腎臓の機能も検査しながら観察していきます。経過観察は何もしないのではなく、しっかり観察をしながら定期検診を受けていただき、その時々に必要と考えられる検査、血圧測定、血液検査、尿検査、エコー検査、レントゲン検査などを定期的に行うことです。

 

<結石形成のリスク因子>

猫においてもシュウ酸カルシウム結石の形成原因は不明です。

石を形成しやすいリスク因子はいくつか知られています。

・中年齢から高年齢の室内単頭飼育猫で、肥満傾向にある猫

・高ナトリウム、高カルシウム、高シュウ酸食を食べている。

 (もしかしておやつ摂取が多い?)

・水分摂取が少ない。

・酸性尿。

・血液検査で高カルシウム血症のことがある。

個人的には、アメリカンショートヘアーに多いイメージを持っています。

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回復しても腎臓を見守ります。
偶然の石の発見でも定期検診で見守りです。

<結石形成を抑える>

緊急事態を回避できても、次にまた石が形成されてしまうと、同じことが起こりえます。再発を防止するため、また石の形成を抑制するために、できることがあります。

シュウ酸カルシウム結石の再発を最小限に抑えるのは、尿中のシュウ酸カルシウム濃度を下げること、尿の酸性化を避けること、そして過剰なタンパク質含有量の食事を避けることが3本柱です。

シュウ酸カルシウム結石が診断された猫は、高カルシウム血症関連の検査を進めていく必要があるかもしれません。原因として考えられることがわかったら、これを排除するようにします。

再発防止食(病院食)を与えます。再発防止食はタンパク質、カルシウム、ビタミンDが過剰にならないようにそして適度なナトリウムとリンの含有量で、可溶性繊維を含むように設計されています。再発防止食は尿中のシュウ酸カルシウム濃度を下げるのを目的として特別に研究し作られているフードです。

もちろんのこと、水分摂取を増やすようにします。処方食にはドライフードとウェットフードが有りますが、ウェットフードの方が適しています。猫ではシュウ酸カルシウム管理に理想とされる尿比重は1.030以下です。(犬よりは濃いめです)

一般食の中にはストルバイト結石に対応することを目的に、尿を酸性化させるように作られたフードや、マグネシウムを極端に抑えられたフードも有りますが、それらのフードを安易に与えることは危険です。

もちろん、むやみにおやつを与えることも避けるべきです。

それらをもってしても、続けて酸性尿を出す猫には尿をアルカリ化させる薬や、利尿薬などの服用が進められます。

 

<高ナトリウム食はだめ>

犬のシュウ酸カルシウム結石のときと同じで、高ナトリウム食はおすすめしていません。塩分摂取を増やして水をたくさん飲ませようとする方法なのですが、確かに尿中の水分排泄が増えますが、短期間です。食餌中の水分を増やして、尿の濃さを薄めるのとは同じになりません。

 

<おわりに>

猫のシュウ酸カルシウム結石症が、命に関わるほどの怖い病気で、致死率も高いし、回復してからも腎機能に影響を与えることはおわかりいただけたでしょうか。

猫は「本来」肉食だから、とタンパク質含有量の多いフードを選んだり、肉食に偏ったおやつを与え続けることは危険です。「本来」は肉食で有ったかもしれませんが、今は屋内で過ごしており、猫の「本来」の生活はできていません。自由に遊べるエリアが狭められ、ハンティングするという猫の活動は抑えられています。そこに「本来」の理論を持ってきても役に立とうはずがありません。高タンパクフードが美味しければ、肥満を加速させる結果にもなるでしょう。

結石形成の危険はどの猫にもあります。今の食生活を見直していただき、定期検診に画像検査項目を選んでいただけるといいなぁと思います。

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犬のシュウ酸カルシウム尿石

 シュウ酸カルシウム結石・犬の場合

 

尿路結石によって症状が現れるのは、石ができあがったらすぐということではありません。石ができていても無症状です。石が粘膜の表面を刺激したり、石が排尿を妨げたりして、血尿になったり排尿障害をおこすようになって初めて、「おかしいな」と気づくことになります。いわゆる膀胱炎の症状である「オシッコが近い」「赤いオシッコが出る」「オシッコの格好をするのに出てないみたい」「オシッコするのに痛そう」が観察されないまま、ある日突然尿道に石が詰まって「オシッコが出ない!」といった救急事態になることがあります。逆に、別件でエコー検査をしていたら膀胱内に石が見つかったということもあります。

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犬のシュウ酸カルシウム結石について
1枚にまとめてみました。

<結石形成の原因>

シュウ酸カルシウム結石がどうしてできるのか、原因はわかっていません。血中のカルシウム濃度が高い(高カルシウム血症)が必ずあるということもないようです。腸管からのカルシウム吸収が亢進している状態なのか、腎臓からの排泄が高まっているのか、食物からシュウ酸の摂取が多くなっているのか、シュウ酸カルシウムの結晶成長を阻害するたんぱく質(ネフロカルシン)に問題があるのか、など様々な憶測があります。

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オシッコの出が悪いのはQOLが低いです。


<結石形成のリスク因子>

一般にシュウ酸カルシウム結石を形成しやすいといわれていることを挙げておきます。

・高タンパク質の食事

・高ナトリウムの食事

・高カルシウムの食事

・高シュウ酸の食事

・中年齢から高年齢のオス犬(80%以上がオス犬というデータがあります)

・水分摂取量が少ないこと

・酸性の尿を作り出していること

個人的には、栄養バランスを考えていない手作り食を与えられている犬や、肉食に富んだおやつを好んで日常的に食べている犬、人の食事をお相伴する機会が多い(ほとんど常習化している)犬に発生が多いように思います。

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手術しか有りません!


<治療は外科のみ>

シュウ酸カルシウム結石は獣医学的に溶解させることができません。そのため、生体に危害を加えている石は外科的な方法によって取り除くしかありません。

とても小さくて、まだ問題を起こしていない場合、これはしばし観察することになります。発生原因が不明なので、確実な予防法もなく、ほんの小さな石一つを取り出すために手術を行っても、また次に石ができてしまうかもしれないからです。生涯に何度手術したらいいのかわからないくらい、次の石ができるまでの期間が短い犬もいるくらいです。(1か月で数個形成されるような!)それならば、その石があっても日常生活に差し支えないうちは無理な介入はしないでおき、何か困った事態に発展してからまとめて取ることにしましょう、ということになります。

経過を観察するといっても、まったくそのまま放置するわけではなく、定期的に検診に来ていただきます。小さな石のうちは水圧をかけて石を取り除くことができるかもしれないので、そうした処置をとることも考えられます。ただこの方法は犬の大きさによっては(小型犬では)難しいこともあります。

小さな石が尿道を詰まらせてしまった場合は、のんびり構えてはいられません。尿道に管を通して膀胱へ落とし、そのまま膀胱から石を摘出する手術に入ります。

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検診ではエコーと尿検査、X線検査など行ないます。


<フォローアップ検診>

術後の再発率は12か月で36%24か月で42%36か月で48%という数字があります。やはり石ができやすい犬では2年もすれば半数の犬に再び結石が形成されているのです。

定期的に再診に来ていただき、石ができていないかどうか、もしできていたらどのくらいの大きさの石がいくつできているのかを調べます。

再度できあがってきたときも、対応はその前と同じです。水圧で押し出すことができるようであれば処置を施し、どうにもならなくなったら手術をするということになります。

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いつもオシッコに気を使いましょう。


<再発を減らすこと>

尿路結石を外科的に除去しても、それはどんな複雑な尿路変更の手術を行ったとしても、それで結石形成の永久的な問題を解決したことにはなりません。結石ができる原因に対しての根本的な状況を改善することはできていないので、再形成することが考えられます。シュウ酸カルシウム結石の予防に対して総合的なアプローチが必要です。

まずは結石が作られた個々の理由を検証しなければいけないかもしれません。複数の重なる検査を行うことをお許しください。たとえば高カルシウム血症を管理することで石の形成をコントロールできるとすれば石の再発予防になります。

それから、すべての結石予防に対して有効な、水分を多く含んだ食事を与えることは、シュウ酸カルシウム結石の予防でも基本です。ウェットフードが望ましいのですが、ドライフードに水を添加する方法でもいいです。飲水量を増やす工夫もお願いします。結石形成予防に対して、尿比重の理想は1.020以下と言われています。肉眼的にも尿の色が黄色よりもずいぶん薄いと感じるくらいの濃さです。

結石形成の再発を減らし、反復して膀胱切開結石摘出手術を行うのを避けるために(この部分は、犬にとってだけでなく家計にとっても必要なことだと思うのです)、再発防止食(病院の処方食)は効果的です。処方食はリスクファクターになっている高たんぱく、高カルシウム、高ナトリウムの食事を避け、適量のマグネシウムを含む食事になっています。たくさんの動物性たんぱく質を含む食品を摂取すると尿中のカルシウム排泄量が増加し、尿中のクエン酸排泄量の減少でシュウ酸カルシウム結石ができやすいこともわかっています。食事、おやつには気を配る必要があります。

いろいろな処方食を掲示してあります

さらにこれだけでは不十分だと感じられるときには尿をアルカリ性に傾ける薬や利尿薬を服用していただくこともあります。これで、結石の形成を最小限に抑えることができます。

 

<もうひとつ>

以前から高ナトリウムの食事は腎臓病の初期症状を見逃す危険があると思われるため、お勧めしていませんでした。ACVIM(米国獣医内科学会)でも推奨していません。「少ししょっぱい食事にしてお水を多くとらせる」作戦はよろしくないという結論が出ています。

テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

猫のストルバイト尿石

 ストルバイト結石・猫の場合

 

<結石形成の原因>

猫ではストルバイト結石形成に細菌感染が関与していることは少なく、食餌由来のことが多いです(無菌性結石)。割合的には少ないですが、犬と同じように尿路の細菌感染によって作られることもあります。「リン酸+アンモニウム+マグネシウム」の組成ですが、リン、マグネシウムが高濃度で、尿の環境がアルカリ性のときにこれらの分子が結合します。

しっかりした石を形成する場合もありますが、ほとんどは細かい砂粒状の結石です。

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猫のストルバイト尿石症について
1枚にまとめました。
ぶら下がりの「尿石症」はお手にとってご覧ください。



<猫の下部尿路結石で緊急事態>

結石が尿道に詰まって、尿の排泄を完全に止めてしまうと一大事です(尿道の完全閉塞)。腎臓からは経時的に尿が造られ膀胱に着々と溜まってきますが、排尿しようにもオシッコが出ません。やがて膀胱は最大限まで膨らみ、伸びきった膀胱粘膜から出血を起こします。膀胱圧が高まり、その圧は尿管から腎臓へと逆行し、お腹はとても痛くなります。尿中には体内で不要になった窒素系廃棄物が含まれていますが、それが排泄できないために尿毒症を発症させてしまいます。ぎりぎり状態になった身体は代謝不良から酸性に傾きます(アシドーシス)。こうして発生する高カリウム血症は、心筋の収縮に関わる電解質で、不整脈を起こしたり心停止させたりすることになります。

オシッコが出ない状況は何度もトイレに行く、排泄の格好をする、お腹に触れると痛がるなどの様子が見られるので比較的発見しやすいです。滴々と出る尿が血尿なのも症状発見のポイントです。そわそわして、食事がとれません。やがてぐったりしてきて、ひどい場合にはけいれんをおこしてくることもあります。

オシッコの出が悪そうな様子(排尿障害)が見られたら、すぐに来院してください。尿道を開通させ、排尿させないと命に関わります。猫の様子にもよりますが、鎮静処置(場合によっては麻酔処置)をし、閉塞した尿道に管を通し、石を回収します。同時に血液検査で身体の状態を把握し、点滴も行います。たいていは電解質異常を起こしているため、身体の状態を速く正常に戻す必要があります。また閉塞を治療して再開通させると普段以上にたくさんの尿が作られますので、適切な補液を行なわないと脱水を起こしてしまいます。ひとたび急性の腎障害を起こすと、そのときの処置如何によっては、腎機能の回復に差が出ます。今後の腎臓機能を考えて、しっかり守っていかなくてはいけません。

どうしても、再開通させることが不可能だった場合や、尿道が極端に狭くなっている場合などは、新たな尿の開口部を造設する必要があります。危機的な状態を回避してから、しっかりした麻酔下で尿路変更手術を行なうことになります。

同じような状況は、尿道結石を原因としてではなく、尿路の炎症産物から来る尿道栓子でも発生することがあります。症状は、何度もトイレに行く、しゃがむけれど出ない、出ても滴々で少量、出てきた尿が赤色などほとんど同じです。治療方法もほぼ同じです。

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いわゆるFLUTDには尿石症のほかFIC、尿道栓子によるものなどあり、
症状はどれも同じです。



<膀胱炎とは違うの?>

何度もトイレに行く、赤いオシッコが出る、オシッコが出にくいみたい、オシッコするときに痛そうに鳴く、トイレと違うところでオシッコをしてしまうなどの症状は、下部尿路(膀胱と尿道)が調子悪いときに見られる5大徴候です。これらが見られるとき、原因が何であれ、私たちは「下部尿路疾患」(feline lower urinary tract disease:FLUTD)と言っています。割合的に多いのはストレス原性の特発性膀胱炎(feline idiopathic cystitis:FIC)ですが、このほかに、尿石症、尿路感染症、尿路の腫瘍などが下部尿路疾患の仲間です。ですから、尿路疾患の5大徴候でいらした猫たちには「石じゃないかな?」「感染はないかな?」「まさか腫瘍ができていたりしないだろうな」と検査を進めていき、そのどれにも当てはまらないようなときに「特発性膀胱炎」としています。

特発性膀胱炎でも、尿道栓子ができて、尿石症と似た尿道の完全閉塞を起こすことがあります。閉塞させたのは石なのか、炎症性の細胞等なのかによって、同じ病態である尿道閉塞を発生させたとしても、「尿石症」か「特発性膀胱炎」由来なのかという診断名に違いが出ます。尿道栓子に細胞と石の療法が含まれている場合もあります。こうなると、原因は両方でしょう、といわざるを得ないです。

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猫の膀胱にできる砂粒状結石。
精製水の中に入れてあります。
試験管を振ると右のように石が浮き上がって
濁りが出ます。


<救急ではない猫たちの治療>

細い尿道を持った猫たちは、石によって閉塞が発生し、救急の事態がおこりますが、閉塞までは行かなかったオス猫も、尿道の太さをそこそこ持つメス猫も、尿石症になりますし、この猫たちの治療もしっかり行なわなければいけません。

症状的には膀胱炎と変わり有りませんから、対症療法として膀胱炎治療が必要です。そして、できてしまった石に対しては、食事による溶解療法が進められます。細かな石であることが多いので、1か月かそこいらで溶解が可能です。できるだけ水分を多く取らせるようにします。猫は自主的に水を飲むことができませんから、ドライフードよりはウェットフードで含まれる水分量を増やすのがおすすめです。

ごくまれに「処方食が嫌いです」と言われ、一般食のまま膀胱の炎症を抑える薬だけで対応しようとする飼い主さんがおられます。炎症の原因になっているのは「石」ですから、これがなくならない限り炎症は治りません。症状がなくなることと、炎症がすっかり消えることは同じではありません。目に見える症状が消えたからといって炎症は鎮まっていないこともあります。長期に渡り炎症が続いた場合、膀胱の粘膜が荒れてきます。膀胱粘膜も皮膚と同じような上皮細胞系です。荒れた手の皮膚に何も施さず、原因となった手荒れの作業を継続することを想像してみてください。手荒れはどんどんひどくなり、動かすたびに痛みが出ます。膀胱の中でも同じようになっています。上皮細胞が厚くバキバキになるのです。これを伸び縮みがスムーズにできる上皮組織に変えるには何ヶ月も要します。その間に人の「過活動膀胱」のような神経過敏性のピリピリ膀胱になってしまいます。しっかり根本原因に目を向けて、食事療法に取り組まない限り石の溶解はできません。「オシッコが出そうな気がする」「なんだかスッキリしない」といった猫のQOL低下もありますが、不適切な排尿の範疇に入る「トイレと違うところで排尿してしまう」ことは一緒に暮らす飼い主さんにとってもQOLは低いです。決められた食事を与えるだけです。ぜひ、しっかり治療に取り組んでください。

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猫のストレスは膀胱に現れやすい!
ストレスのない生活を心がけてあげましょう。


<予防ができます>

一般にストルバイト尿石は予防することができます。正しい栄養学的な関与によります。

予防食、または再発防止食と呼ばれる処方食はいろいろなメーカーさんからたくさん出ています。風味違いなど、同じメーカーさんでも異なるシリーズで出されていますので、選びたい放題です。ぜひご相談ください。一つに飽きてきたとしても、別のものを選択できます。ぜひぜひ、あきらめないで、続けてください。

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結石形成のためには、
栄養学的なケアと生活などの見直しなどの
総合的な改善が求められます。


<総合的な予防対策>

それから、特発性膀胱炎にしても、尿石症にしても、管理としては多面的環境改善をお願いしたいです。箇条書きします。

室内環境として

・高いところにも上れるように部屋の中を工夫してください。(猫は立体的空間で遊びたいのです)

・ときにベランダに出したりリードを付けて外を散歩したりしてください。(外の空気を吸いたいのです)

・静かな隠れ場所を用意してください。(かくれんぼしてくつろぐのも好きです)

・食事場所は静かなところにしてください。(騒音の中で食べるのはイヤです)

・毎日猫が狩猟ごっこをできるよう、遊んであげてください。(猫はハンターなのです)

②トイレのストレスに対して

・トイレは静かなところに置いてください。(賑やかなところで排泄するのはキライです)

・猫の頭数+1つのトイレを用意してください。(自分で汚したトイレでも汚いのは使いたくありません)

・トイレは毎日キレイにしてください。(できれば排泄のたびにキレイにして欲しいです)

・砂の種類、トイレの種類(大きさなど)も好みのものを用意してください。(清潔でゆったりできるトイレが好きです)

③水分摂取量を増やす工夫を

・ウェットフードを増やす方が安心です。

・循環式給水器も置いてください。

・お風呂場で洗面器に水をためておくのも一つの方法です。

・洗面所やお勝手の蛇口から直接飲むことが好きかもしれません。

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そしていつの日か、
膀胱の問題から腎臓の問題に発展する日が来るかも!
ネットで猫の食料品調達、病院とは長い間ご無沙汰、
「うちの猫は病気知らず」だと思っていると、
サイレントに病気が進行しているかもしれません。

<ご注意いただきたいこと>

せっかくの処方食なのに、おやつを与えたりしては、尿の組成が変わってきてしまい、予防にはならなくなってしまいます。

また、市販の食事ではどうしても石ができてしまう猫も一定数います。「同じメーカーのフード」でも、「同じ猫の絵がついている」かもしれませんけれど、「石に対応と書いてある」こともありましょうが、病院食から普通食に変更してしまわれると、再発の可能性は否定できません。

それから、年齢的にストルバイト尿石を発生しやすい年齢がやがて別の病気の発生リスクと取って代わるときが来ます。一度処方されたフードを再診されることなく、ずーっと継続しているのは猫にとって好ましいことではありません。動物病院と密に連携を取って猫の健康のことを考えていただけたら、こうしたことは起こらないだろうと思います。何がなくても年に1回はワクチン接種と一緒に健康診断を受け、一緒にお食事相談もできたら猫の健康に役立ちます。

 

 まだまだ昔の病気にならず、古典的なストルバイト尿石は存在します。内外自由生活から、屋内生活だけの猫の割合が増えてきています。猫の自由は猫の安全と引き換えに減少してしまいました。猫には猫にしかわからないストレスがあることも考えに入れてあげてください。

テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

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Author:ハート動物病院
ハート動物病院です。
〒445-0062
愛知県西尾市丁田町杢左51-3
TEL/0563-57-4111
オフィシャルサイト:http://www.heart-ah.com/

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