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猫のシュウ酸カルシウム尿石

 シュウ酸カルシウム結石・猫の場合

 

猫で近年問題になっているのはシュウ酸カルシウム結石です。猫にできた腎結石と尿管結石の90%以上はシュウ酸カルシウム結石です。シュウ酸カルシウム結石は内科的な溶解ができません。好ましいのは結石の形成を予防して、腎機能が元に戻らないほどの救急事態を避けることです。

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待合室に掲示しています。

<典型的な例>

    腎臓に石ができることから始まります。けれど石が腎臓にできても症状はありません。腎盂炎があるとか、その石が落ちて尿管を通過する段になるまでは痛くもないからです。

    腎結石が片方だけの時、石が尿管に落ちて、完全な尿管閉塞になり、腎臓が腫れてくると痛みが発生します。このときの痛みを猫が耐えてしまい、数日過ごしてしまえば、病気の検出は困難です。「なんか調子が悪い日があったかな」で終わってしまいます。これが最初の尿管閉塞ですが、結石がないもう一方の腎臓は健全なので、血液検査を行っても腎機能をみる項目には変化はありません。そのまま診断につながらず、閉塞を起こした方の腎臓は緩やかに機能を喪失していき、徐々に委縮して、のちに「小さな腎臓」と言われることになります。残された腎臓は2つ分の働きを余儀なくされるために頑張って働きます。代償性肥大をおこし、のちに「大きな腎臓」と言われることになります。落ちた石は尿管にとどまることもあるし、膀胱まで落下することもあります。

    実質一つで頑張っている腎臓に結石ができ、この石が尿管に落下し排尿困難になった時、2回目の尿管閉塞になるわけですが、このときは1回目の落下時とはだいぶ状況が違ってきます。腎臓が腫れて痛みが出るほか、急な腎機能の低下によって「おう吐」や「だるそう」などの尿毒症症状を出します。これは危機的な状況です。腎機能の障害は全部の機能の2/3から3/4が失われるまで血液検査上では明らかにはならないので、残る機能はわずかになっています。また、いわゆる猫の慢性腎臓病に見られる状態と、こうした救急時に見られる急性の腎障害とでは、同じ検査項目を見ても身体の状態を推し量るのに大きな違いがあるのです。レントゲン検査では大きさの異なる二つの腎臓を確認することができます。これは「大きい腎臓、小さい腎臓症候群」と呼ばれてきました。そして小さな石が尿管で立ち往生していることもわかります。エコー検査でも腎臓の大きさの違いは判りますし、もっと有効なことは腎臓の尿が集まる部分(腎盂)が広く拡張していて、それに続く尿管も太くうねっていることで、腎臓からの尿の流れが悪いことが判明します。痛みのある猫が詳細なエコー検査をするのに耐えてくれるようであれば、尿管内に詰まった石の存在も確認することができます。

このようなストーリーで経過するのが典型的な例ですが、たいていは③の時点で病院に連れてこられることがほとんどです。こうした経過ではない猫もいます。

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急にぐったりして発見されることが多いです。

<緊急事態にどう対応するか>

猫の場合、尿管閉塞の80~90%は部分閉塞で、腎臓で作られた尿は少しずつ膀胱へと流れると考えられています。しかし内科的に尿管の緊張を解き、点滴によって尿管の石を膀胱に導くことをトライするのもせいぜい24時間から72時間程度です。治療をしていても尿がしっかり作られないとか、高窒素血症が進行するとか、そのほかの問題が浮き彫りにされてくるときは緊急の手術を行わなければいけません。この時間は尿管結石が通過することを期待する時間というよりは、むしろ腎臓や尿管の手術に対して熟練した外科系の専門医と連携をとるのに必要になる時間と考えた方がよさそうです。とりあえずの内科療法はまず奏功しないだろうけれど、次の手立てのためのつなぎ治療ということです。代謝性アシドーシスを抑え、命に危険のある高カリウム血症をコントロールします。十分な排尿がない場合は、水分過多になってしまうこともあるためしっかり観察を行う必要があり、入院管理以外は対応不能です。(通院で様子を見ることは危険な状況です。)

家庭ですでにこうした時間を経過してしまった場合、治療に対する効果が芳しくないことが多いです。

運良く、尿管閉塞の事態を内科的に切り抜けることができる(内科治療が有効であった)割合は813%だけだったという報告があります。

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高窒素血症があると激しい嘔吐が続きます。
 

<専門医がやってくれること>

二次病院では、腎臓の圧を回避させ、緊急的に尿を腎臓から排除する処置をしてくれます。そのまま内科的な加療を続け、腎機能の回復を待って(1週間かそこいらです)、本格的な尿管の手術に入ります。尿管に残された機能を推測するために、レントゲンの造影検査を必要とするかもしれません。尿管の機能が残っていれば切開と石の切除を行ないます。尿管の機能が怪しいと、石を取り除いても尿の流れを期待することはできないため、新しく尿路を作る必要があるでしょう。これらの生体に頼る手術をあきらめて、別の装置を体につける(皮下尿管バイパス手術)を行うことになるかもしれません。尿管ステントによる手術は再発率が高いという報告があります。

さらに術後も、腎機能の回復を促すための密度の濃い内科療法が継続的に行われます。

ひとたび急性の腎障害を起こすと、腎臓に対しては機能障害を残しての回復が最良の予後になるかと思います。慢性の腎臓病へと移行することがほとんどで、腎機能を悪化させてこの救急事態の間に死亡してしまうことさえもあるくらいです。全く腎機能を落とさない結果に終わることは期待が薄いです。残念ながら生存率は平均して30%程度と言われています。

この事態を切り抜けるためのキーポイントは熟練した経験豊富な獣医外科医と、腎臓内科に卓越した獣医腎臓内科医の連携といっても過言ではないでしょう。

退院までに1か月近くを要することになるだろうこと(場合によってはそれ以上)、そしてその後もずっと慢性腎臓病の管理が続くことは覚悟してください。

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生死の分かれ道になります。

<偶然見つかった石をどうするか>

石があっても症状はなく、たまたま別件で検査をしているときに発見することがあります。この場合は定期的に結石の動きを観察することになります。残存する腎臓の機能も検査しながら観察していきます。経過観察は何もしないのではなく、しっかり観察をしながら定期検診を受けていただき、その時々に必要と考えられる検査、血圧測定、血液検査、尿検査、エコー検査、レントゲン検査などを定期的に行うことです。

 

<結石形成のリスク因子>

猫においてもシュウ酸カルシウム結石の形成原因は不明です。

石を形成しやすいリスク因子はいくつか知られています。

・中年齢から高年齢の室内単頭飼育猫で、肥満傾向にある猫

・高ナトリウム、高カルシウム、高シュウ酸食を食べている。

 (もしかしておやつ摂取が多い?)

・水分摂取が少ない。

・酸性尿。

・血液検査で高カルシウム血症のことがある。

個人的には、アメリカンショートヘアーに多いイメージを持っています。

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回復しても腎臓を見守ります。
偶然の石の発見でも定期検診で見守りです。

<結石形成を抑える>

緊急事態を回避できても、次にまた石が形成されてしまうと、同じことが起こりえます。再発を防止するため、また石の形成を抑制するために、できることがあります。

シュウ酸カルシウム結石の再発を最小限に抑えるのは、尿中のシュウ酸カルシウム濃度を下げること、尿の酸性化を避けること、そして過剰なタンパク質含有量の食事を避けることが3本柱です。

シュウ酸カルシウム結石が診断された猫は、高カルシウム血症関連の検査を進めていく必要があるかもしれません。原因として考えられることがわかったら、これを排除するようにします。

再発防止食(病院食)を与えます。再発防止食はタンパク質、カルシウム、ビタミンDが過剰にならないようにそして適度なナトリウムとリンの含有量で、可溶性繊維を含むように設計されています。再発防止食は尿中のシュウ酸カルシウム濃度を下げるのを目的として特別に研究し作られているフードです。

もちろんのこと、水分摂取を増やすようにします。処方食にはドライフードとウェットフードが有りますが、ウェットフードの方が適しています。猫ではシュウ酸カルシウム管理に理想とされる尿比重は1.030以下です。(犬よりは濃いめです)

一般食の中にはストルバイト結石に対応することを目的に、尿を酸性化させるように作られたフードや、マグネシウムを極端に抑えられたフードも有りますが、それらのフードを安易に与えることは危険です。

もちろん、むやみにおやつを与えることも避けるべきです。

それらをもってしても、続けて酸性尿を出す猫には尿をアルカリ化させる薬や、利尿薬などの服用が進められます。

 

<高ナトリウム食はだめ>

犬のシュウ酸カルシウム結石のときと同じで、高ナトリウム食はおすすめしていません。塩分摂取を増やして水をたくさん飲ませようとする方法なのですが、確かに尿中の水分排泄が増えますが、短期間です。食餌中の水分を増やして、尿の濃さを薄めるのとは同じになりません。

 

<おわりに>

猫のシュウ酸カルシウム結石症が、命に関わるほどの怖い病気で、致死率も高いし、回復してからも腎機能に影響を与えることはおわかりいただけたでしょうか。

猫は「本来」肉食だから、とタンパク質含有量の多いフードを選んだり、肉食に偏ったおやつを与え続けることは危険です。「本来」は肉食で有ったかもしれませんが、今は屋内で過ごしており、猫の「本来」の生活はできていません。自由に遊べるエリアが狭められ、ハンティングするという猫の活動は抑えられています。そこに「本来」の理論を持ってきても役に立とうはずがありません。高タンパクフードが美味しければ、肥満を加速させる結果にもなるでしょう。

結石形成の危険はどの猫にもあります。今の食生活を見直していただき、定期検診に画像検査項目を選んでいただけるといいなぁと思います。

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犬のシュウ酸カルシウム尿石

 シュウ酸カルシウム結石・犬の場合

 

尿路結石によって症状が現れるのは、石ができあがったらすぐということではありません。石ができていても無症状です。石が粘膜の表面を刺激したり、石が排尿を妨げたりして、血尿になったり排尿障害をおこすようになって初めて、「おかしいな」と気づくことになります。いわゆる膀胱炎の症状である「オシッコが近い」「赤いオシッコが出る」「オシッコの格好をするのに出てないみたい」「オシッコするのに痛そう」が観察されないまま、ある日突然尿道に石が詰まって「オシッコが出ない!」といった救急事態になることがあります。逆に、別件でエコー検査をしていたら膀胱内に石が見つかったということもあります。

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犬のシュウ酸カルシウム結石について
1枚にまとめてみました。

<結石形成の原因>

シュウ酸カルシウム結石がどうしてできるのか、原因はわかっていません。血中のカルシウム濃度が高い(高カルシウム血症)が必ずあるということもないようです。腸管からのカルシウム吸収が亢進している状態なのか、腎臓からの排泄が高まっているのか、食物からシュウ酸の摂取が多くなっているのか、シュウ酸カルシウムの結晶成長を阻害するたんぱく質(ネフロカルシン)に問題があるのか、など様々な憶測があります。

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オシッコの出が悪いのはQOLが低いです。


<結石形成のリスク因子>

一般にシュウ酸カルシウム結石を形成しやすいといわれていることを挙げておきます。

・高タンパク質の食事

・高ナトリウムの食事

・高カルシウムの食事

・高シュウ酸の食事

・中年齢から高年齢のオス犬(80%以上がオス犬というデータがあります)

・水分摂取量が少ないこと

・酸性の尿を作り出していること

個人的には、栄養バランスを考えていない手作り食を与えられている犬や、肉食に富んだおやつを好んで日常的に食べている犬、人の食事をお相伴する機会が多い(ほとんど常習化している)犬に発生が多いように思います。

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手術しか有りません!


<治療は外科のみ>

シュウ酸カルシウム結石は獣医学的に溶解させることができません。そのため、生体に危害を加えている石は外科的な方法によって取り除くしかありません。

とても小さくて、まだ問題を起こしていない場合、これはしばし観察することになります。発生原因が不明なので、確実な予防法もなく、ほんの小さな石一つを取り出すために手術を行っても、また次に石ができてしまうかもしれないからです。生涯に何度手術したらいいのかわからないくらい、次の石ができるまでの期間が短い犬もいるくらいです。(1か月で数個形成されるような!)それならば、その石があっても日常生活に差し支えないうちは無理な介入はしないでおき、何か困った事態に発展してからまとめて取ることにしましょう、ということになります。

経過を観察するといっても、まったくそのまま放置するわけではなく、定期的に検診に来ていただきます。小さな石のうちは水圧をかけて石を取り除くことができるかもしれないので、そうした処置をとることも考えられます。ただこの方法は犬の大きさによっては(小型犬では)難しいこともあります。

小さな石が尿道を詰まらせてしまった場合は、のんびり構えてはいられません。尿道に管を通して膀胱へ落とし、そのまま膀胱から石を摘出する手術に入ります。

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検診ではエコーと尿検査、X線検査など行ないます。


<フォローアップ検診>

術後の再発率は12か月で36%24か月で42%36か月で48%という数字があります。やはり石ができやすい犬では2年もすれば半数の犬に再び結石が形成されているのです。

定期的に再診に来ていただき、石ができていないかどうか、もしできていたらどのくらいの大きさの石がいくつできているのかを調べます。

再度できあがってきたときも、対応はその前と同じです。水圧で押し出すことができるようであれば処置を施し、どうにもならなくなったら手術をするということになります。

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いつもオシッコに気を使いましょう。


<再発を減らすこと>

尿路結石を外科的に除去しても、それはどんな複雑な尿路変更の手術を行ったとしても、それで結石形成の永久的な問題を解決したことにはなりません。結石ができる原因に対しての根本的な状況を改善することはできていないので、再形成することが考えられます。シュウ酸カルシウム結石の予防に対して総合的なアプローチが必要です。

まずは結石が作られた個々の理由を検証しなければいけないかもしれません。複数の重なる検査を行うことをお許しください。たとえば高カルシウム血症を管理することで石の形成をコントロールできるとすれば石の再発予防になります。

それから、すべての結石予防に対して有効な、水分を多く含んだ食事を与えることは、シュウ酸カルシウム結石の予防でも基本です。ウェットフードが望ましいのですが、ドライフードに水を添加する方法でもいいです。飲水量を増やす工夫もお願いします。結石形成予防に対して、尿比重の理想は1.020以下と言われています。肉眼的にも尿の色が黄色よりもずいぶん薄いと感じるくらいの濃さです。

結石形成の再発を減らし、反復して膀胱切開結石摘出手術を行うのを避けるために(この部分は、犬にとってだけでなく家計にとっても必要なことだと思うのです)、再発防止食(病院の処方食)は効果的です。処方食はリスクファクターになっている高たんぱく、高カルシウム、高ナトリウムの食事を避け、適量のマグネシウムを含む食事になっています。たくさんの動物性たんぱく質を含む食品を摂取すると尿中のカルシウム排泄量が増加し、尿中のクエン酸排泄量の減少でシュウ酸カルシウム結石ができやすいこともわかっています。食事、おやつには気を配る必要があります。

いろいろな処方食を掲示してあります

さらにこれだけでは不十分だと感じられるときには尿をアルカリ性に傾ける薬や利尿薬を服用していただくこともあります。これで、結石の形成を最小限に抑えることができます。

 

<もうひとつ>

以前から高ナトリウムの食事は腎臓病の初期症状を見逃す危険があると思われるため、お勧めしていませんでした。ACVIM(米国獣医内科学会)でも推奨していません。「少ししょっぱい食事にしてお水を多くとらせる」作戦はよろしくないという結論が出ています。

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猫のストルバイト尿石

 ストルバイト結石・猫の場合

 

<結石形成の原因>

猫ではストルバイト結石形成に細菌感染が関与していることは少なく、食餌由来のことが多いです(無菌性結石)。割合的には少ないですが、犬と同じように尿路の細菌感染によって作られることもあります。「リン酸+アンモニウム+マグネシウム」の組成ですが、リン、マグネシウムが高濃度で、尿の環境がアルカリ性のときにこれらの分子が結合します。

しっかりした石を形成する場合もありますが、ほとんどは細かい砂粒状の結石です。

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猫のストルバイト尿石症について
1枚にまとめました。
ぶら下がりの「尿石症」はお手にとってご覧ください。



<猫の下部尿路結石で緊急事態>

結石が尿道に詰まって、尿の排泄を完全に止めてしまうと一大事です(尿道の完全閉塞)。腎臓からは経時的に尿が造られ膀胱に着々と溜まってきますが、排尿しようにもオシッコが出ません。やがて膀胱は最大限まで膨らみ、伸びきった膀胱粘膜から出血を起こします。膀胱圧が高まり、その圧は尿管から腎臓へと逆行し、お腹はとても痛くなります。尿中には体内で不要になった窒素系廃棄物が含まれていますが、それが排泄できないために尿毒症を発症させてしまいます。ぎりぎり状態になった身体は代謝不良から酸性に傾きます(アシドーシス)。こうして発生する高カリウム血症は、心筋の収縮に関わる電解質で、不整脈を起こしたり心停止させたりすることになります。

オシッコが出ない状況は何度もトイレに行く、排泄の格好をする、お腹に触れると痛がるなどの様子が見られるので比較的発見しやすいです。滴々と出る尿が血尿なのも症状発見のポイントです。そわそわして、食事がとれません。やがてぐったりしてきて、ひどい場合にはけいれんをおこしてくることもあります。

オシッコの出が悪そうな様子(排尿障害)が見られたら、すぐに来院してください。尿道を開通させ、排尿させないと命に関わります。猫の様子にもよりますが、鎮静処置(場合によっては麻酔処置)をし、閉塞した尿道に管を通し、石を回収します。同時に血液検査で身体の状態を把握し、点滴も行います。たいていは電解質異常を起こしているため、身体の状態を速く正常に戻す必要があります。また閉塞を治療して再開通させると普段以上にたくさんの尿が作られますので、適切な補液を行なわないと脱水を起こしてしまいます。ひとたび急性の腎障害を起こすと、そのときの処置如何によっては、腎機能の回復に差が出ます。今後の腎臓機能を考えて、しっかり守っていかなくてはいけません。

どうしても、再開通させることが不可能だった場合や、尿道が極端に狭くなっている場合などは、新たな尿の開口部を造設する必要があります。危機的な状態を回避してから、しっかりした麻酔下で尿路変更手術を行なうことになります。

同じような状況は、尿道結石を原因としてではなく、尿路の炎症産物から来る尿道栓子でも発生することがあります。症状は、何度もトイレに行く、しゃがむけれど出ない、出ても滴々で少量、出てきた尿が赤色などほとんど同じです。治療方法もほぼ同じです。

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いわゆるFLUTDには尿石症のほかFIC、尿道栓子によるものなどあり、
症状はどれも同じです。



<膀胱炎とは違うの?>

何度もトイレに行く、赤いオシッコが出る、オシッコが出にくいみたい、オシッコするときに痛そうに鳴く、トイレと違うところでオシッコをしてしまうなどの症状は、下部尿路(膀胱と尿道)が調子悪いときに見られる5大徴候です。これらが見られるとき、原因が何であれ、私たちは「下部尿路疾患」(feline lower urinary tract disease:FLUTD)と言っています。割合的に多いのはストレス原性の特発性膀胱炎(feline idiopathic cystitis:FIC)ですが、このほかに、尿石症、尿路感染症、尿路の腫瘍などが下部尿路疾患の仲間です。ですから、尿路疾患の5大徴候でいらした猫たちには「石じゃないかな?」「感染はないかな?」「まさか腫瘍ができていたりしないだろうな」と検査を進めていき、そのどれにも当てはまらないようなときに「特発性膀胱炎」としています。

特発性膀胱炎でも、尿道栓子ができて、尿石症と似た尿道の完全閉塞を起こすことがあります。閉塞させたのは石なのか、炎症性の細胞等なのかによって、同じ病態である尿道閉塞を発生させたとしても、「尿石症」か「特発性膀胱炎」由来なのかという診断名に違いが出ます。尿道栓子に細胞と石の療法が含まれている場合もあります。こうなると、原因は両方でしょう、といわざるを得ないです。

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猫の膀胱にできる砂粒状結石。
精製水の中に入れてあります。
試験管を振ると右のように石が浮き上がって
濁りが出ます。


<救急ではない猫たちの治療>

細い尿道を持った猫たちは、石によって閉塞が発生し、救急の事態がおこりますが、閉塞までは行かなかったオス猫も、尿道の太さをそこそこ持つメス猫も、尿石症になりますし、この猫たちの治療もしっかり行なわなければいけません。

症状的には膀胱炎と変わり有りませんから、対症療法として膀胱炎治療が必要です。そして、できてしまった石に対しては、食事による溶解療法が進められます。細かな石であることが多いので、1か月かそこいらで溶解が可能です。できるだけ水分を多く取らせるようにします。猫は自主的に水を飲むことができませんから、ドライフードよりはウェットフードで含まれる水分量を増やすのがおすすめです。

ごくまれに「処方食が嫌いです」と言われ、一般食のまま膀胱の炎症を抑える薬だけで対応しようとする飼い主さんがおられます。炎症の原因になっているのは「石」ですから、これがなくならない限り炎症は治りません。症状がなくなることと、炎症がすっかり消えることは同じではありません。目に見える症状が消えたからといって炎症は鎮まっていないこともあります。長期に渡り炎症が続いた場合、膀胱の粘膜が荒れてきます。膀胱粘膜も皮膚と同じような上皮細胞系です。荒れた手の皮膚に何も施さず、原因となった手荒れの作業を継続することを想像してみてください。手荒れはどんどんひどくなり、動かすたびに痛みが出ます。膀胱の中でも同じようになっています。上皮細胞が厚くバキバキになるのです。これを伸び縮みがスムーズにできる上皮組織に変えるには何ヶ月も要します。その間に人の「過活動膀胱」のような神経過敏性のピリピリ膀胱になってしまいます。しっかり根本原因に目を向けて、食事療法に取り組まない限り石の溶解はできません。「オシッコが出そうな気がする」「なんだかスッキリしない」といった猫のQOL低下もありますが、不適切な排尿の範疇に入る「トイレと違うところで排尿してしまう」ことは一緒に暮らす飼い主さんにとってもQOLは低いです。決められた食事を与えるだけです。ぜひ、しっかり治療に取り組んでください。

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猫のストレスは膀胱に現れやすい!
ストレスのない生活を心がけてあげましょう。


<予防ができます>

一般にストルバイト尿石は予防することができます。正しい栄養学的な関与によります。

予防食、または再発防止食と呼ばれる処方食はいろいろなメーカーさんからたくさん出ています。風味違いなど、同じメーカーさんでも異なるシリーズで出されていますので、選びたい放題です。ぜひご相談ください。一つに飽きてきたとしても、別のものを選択できます。ぜひぜひ、あきらめないで、続けてください。

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結石形成のためには、
栄養学的なケアと生活などの見直しなどの
総合的な改善が求められます。


<総合的な予防対策>

それから、特発性膀胱炎にしても、尿石症にしても、管理としては多面的環境改善をお願いしたいです。箇条書きします。

室内環境として

・高いところにも上れるように部屋の中を工夫してください。(猫は立体的空間で遊びたいのです)

・ときにベランダに出したりリードを付けて外を散歩したりしてください。(外の空気を吸いたいのです)

・静かな隠れ場所を用意してください。(かくれんぼしてくつろぐのも好きです)

・食事場所は静かなところにしてください。(騒音の中で食べるのはイヤです)

・毎日猫が狩猟ごっこをできるよう、遊んであげてください。(猫はハンターなのです)

②トイレのストレスに対して

・トイレは静かなところに置いてください。(賑やかなところで排泄するのはキライです)

・猫の頭数+1つのトイレを用意してください。(自分で汚したトイレでも汚いのは使いたくありません)

・トイレは毎日キレイにしてください。(できれば排泄のたびにキレイにして欲しいです)

・砂の種類、トイレの種類(大きさなど)も好みのものを用意してください。(清潔でゆったりできるトイレが好きです)

③水分摂取量を増やす工夫を

・ウェットフードを増やす方が安心です。

・循環式給水器も置いてください。

・お風呂場で洗面器に水をためておくのも一つの方法です。

・洗面所やお勝手の蛇口から直接飲むことが好きかもしれません。

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そしていつの日か、
膀胱の問題から腎臓の問題に発展する日が来るかも!
ネットで猫の食料品調達、病院とは長い間ご無沙汰、
「うちの猫は病気知らず」だと思っていると、
サイレントに病気が進行しているかもしれません。

<ご注意いただきたいこと>

せっかくの処方食なのに、おやつを与えたりしては、尿の組成が変わってきてしまい、予防にはならなくなってしまいます。

また、市販の食事ではどうしても石ができてしまう猫も一定数います。「同じメーカーのフード」でも、「同じ猫の絵がついている」かもしれませんけれど、「石に対応と書いてある」こともありましょうが、病院食から普通食に変更してしまわれると、再発の可能性は否定できません。

それから、年齢的にストルバイト尿石を発生しやすい年齢がやがて別の病気の発生リスクと取って代わるときが来ます。一度処方されたフードを再診されることなく、ずーっと継続しているのは猫にとって好ましいことではありません。動物病院と密に連携を取って猫の健康のことを考えていただけたら、こうしたことは起こらないだろうと思います。何がなくても年に1回はワクチン接種と一緒に健康診断を受け、一緒にお食事相談もできたら猫の健康に役立ちます。

 

 まだまだ昔の病気にならず、古典的なストルバイト尿石は存在します。内外自由生活から、屋内生活だけの猫の割合が増えてきています。猫の自由は猫の安全と引き換えに減少してしまいました。猫には猫にしかわからないストレスがあることも考えに入れてあげてください。

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犬のストルバイト尿石

ストルバイト結石・犬の場合

ストルバイト結石は主に下部尿路に問題を起こします(膀胱結石、尿道結石)が、腎臓にまで影響を及ぼす(腎結石)こともあります。

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尿石症のおはなし、続きです。

<犬のストルバイト結石の原因は感染!>

昔から多かったストルバイトの石は尿の細菌感染(ウレアーゼを作り出す細菌)が原因です。

細菌性膀胱炎を何度も繰り返している犬は、リスクが高いです。「オシッコが赤い」「何度もトイレに行こうとする」「すぐしゃがみ込む」「滴々ともらす」「おなかを硬くして痛そう」「便秘かと思った」などの膀胱炎関連の症状が繰り返され、「またいつものやつだ」と思って薬だけもらってすごしていると、実は石が育っている場合があります。敏感な飼い主さんだと「ちかごろオシッコがにおう」ことにも気づかれていることがあります。オシッコはオシッコの臭いがありますが、細菌感染を起こしているときは、健康なオシッコとは違うアンモニア臭のキツいにおいがしてきます。

「膀胱炎はしっかり治しましょう。」

で、お話は終わりません。実は繰り返し感染してしまうには、それなりの理由があるのです。しっかり治しても再発を繰り返す犬たちがいます。

・オシッコがジャーっと出ない、

・自在に排尿できない、

・何かの拍子にお漏らしがある、

・膀胱炎以外にも細菌感染をおこしやすい、

・お水をたくさん飲む、

・オシッコの濃度が薄い

など、思い当たる節があるときは膀胱炎関連だけでなく、もっと広範囲に検査を受ける必要があります。検査は「再発しやすかった感染性膀胱炎」の原因を探って、再発に対処できるものなら対処するという目的です。

細菌感染は、尿の排泄順路に逆らって、膀胱から尿管、腎臓に上って行ってしまうことがあり、そうすると腎盂炎を起こし、最終的に腎盂にもストルバイト結石を形成します。ときに左右ともに大きな石ができていて驚かされます。腎盂炎があると急な発熱や痛みがみられますが、一定時期を過ぎたのか、石はあるけれど無症状な犬もいます。腎臓にできた石の治療は簡単ではありません。また腎臓機能を脅かします。繰り返しを許してはいけないのです。

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犬のストルバイト結石の特徴を1枚にまとめました。
ぶら下げであります。
お手にとってご覧ください。
決しておよそのわんこだけの問題ではないです。

<切らなきゃだめですか?>

膀胱に石があることが分かり、それがストルバイトの石だと判断されたら、基本は溶解です。そのまま、内科療法にまっしぐら。抗菌薬を服用しつつ、溶解のための特別療法食をしっかり食べてください。

治療中に心配なことがあります。溶けている途中で膀胱結石が小さくなって、尿道に石が落ちてしまうことがあることです。そのようなときは、犬は排尿がスムーズでは無くなるので、すぐに分かります。来院し、尿道に管を通し、フラッスして石を膀胱に戻します。

腎臓にあって、すごくでかくて、実質を圧迫するほどの石の場合、「切るしかない」と手術をにおわすことがあるかもしれません。膀胱内の石が、膀胱そのもの、すっぽり、というくらい大きい場合も、「切って出す」ことをおすすめするかもしれません。特別療法食で、という制限が守れない場合も、「溶かすのは難しいかも=切った方が速い」になります。これまでの自由食では石が成長したけど、処方食プラスおやつ食のために石の成長を止めた、くらいで終わってしまう可能性があります。しっかり溶かせない場合は外科的に取り出すしか有りません。

「溶かす」、というのは溶かすことができる溶液(酸性の尿)のなかに石がしっかり浸かり混んで初めて溶解状況が整います。溶かす液体に十分石が浸かることができなければ溶けてこないので、大きすぎる石や、溶解液をしっかり作り出せない場合は、溶かそうにも無理なわけです。キュウリのぬか漬けなんか考えてもらえるといいですけれど、ぬか床がしっかりしていないとうまく漬からないのです。石がでかすぎて尿に浸らないような状況は、漬け物樽いっぱいに野菜が入っていてぬか床との接地面が不足しているような状況です。それから特別療法食がうまく食べられない状況は、ぬか床の塩分濃度とか乳酸発酵がうまくできていないような状況です。

こんなときは「切らなきゃだめです」のときです。でも、犬のためにいいことは何かというと、「食べないから切る」ことでは無く、「食べさせて溶かす」ことです。

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いろいろの石。
この中で、おにぎり型、色白、すごくでっかい!
のはストルバイトの石です。


 <溶けましたけど、もういいですよね?>

素直に療法食を食べられたわんこで石の具合も良い状況だと、石は1か月後には必ず変化があるものです。

これまで再発を繰り返していたというわんこでも、再発原因が明らかになり、そちらの治療も行うことで再発しにくくなります。けれど、再発原因をどうにもすることができない場合もありますので、問題が改善された場合も、改善できなかった場合も、石が消失してから定期的に尿検査をして再発を防止するようにします。1か月とか3か月で尿の感染が無いかどうかを調べます。一次予防は尿路感染症を継続してなくすことです。感染さえ抑えられればこの石の再発はありません。

特別療法食の中に「再発防止食」があります。これさえ食べていれば「再発が防止できる」と誤解をされている飼い主さんもおられます。この食餌はこれ単体では再発を防ぐことはできませんが、私たちはそれでもおすすめしています。それは、発見できなかった尿路感染があったとき、尿結石を形成されるのを遅らせたり、最小限に抑えることができるからです。再発防止の食事は、結石を作らせる物質(前駆物質)が少なく、尿の酸性度が調整してあります。もちろん、一般食と混ぜて食べさせていたり、おやつを与えていたりするとその効果は得られません。

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うちわがあります。
ご自由にお持ち帰りいただけます。
無くなってたらごめんね。
なかなか好評です。

<続きますが、ひとこと>

細菌感染による尿石ではありますけれど、別に不潔にしていたから感染を起こすというわけでもありません。感染しやすい構造的な特徴をもつ犬がいます。

例えば交通事故の結果とか神経系の病気の結果、不幸にも腰麻痺になってしまった犬はとてもハイリスクな犬たちです。二重に、三重にいろいろなことが身体に起こります。そうで無くてもいろいろとお世話くださっているのに、こういうことが起こります。介護不足だったからということではありません。ご自身を責める必要などありません。腫瘍などで新しい尿路口を造設した犬も同じで、感染しやすいです。自然の排泄口がいかに素晴らしくできていることかと感心します。

副腎皮質機能亢進症では体内からステロイドホルモンが多量に分泌される結果、感染を起こしやすい身体になっています。こういう犬たちもハイリスクさんです。

    

テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

犬と猫の尿石症

 犬と猫の尿石症についてのお話しです。

6月から待合室で「犬猫の尿石症」について掲示しています。暑くなってくる前に、飲水量を増やすことに注目していただきたいので梅雨時だけど今がいい頃合いだというのと、たまたま某メーカーさんの予防食リニューアルというのもあって、オリジナルの説明プレートを用意してみました。今日までに2週間ほど経過しましたが、初診で尿石症を診断することが多く、尿石症はどちらかというと少し冷えてくる秋に多いイメージでしたが、そんなこともない、やっぱりオールシーズンいつでも発生している一般的な病気であることを痛感しています。

尿結石の中には、注意しておけば予防できるものがあります。今はなんともないように見えて、問題はこれから発生するかもしれません。決して他人事の病気ではないのです。

そんなわけで、尿路にできる石のお話にお付き合いください。

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尿路結石についてご紹介しています。
別の用件で診察に来られても、
「あっ!そうだ!オシッコがおかしかった!」
なんてことがあれば、ついでにお話しください。

<尿路に石があるとどうなるか>

尿路はオシッコができて、流れて、排泄される経路です。腎臓~尿管~膀胱~尿道になります。

腎臓~尿管を上部尿路、

膀胱~尿道を下部尿路

といって、分けています。尿管と尿道は一文字違いですが、別の組織です。

尿結石はこのうちのどこかに存在する石です。

尿結石は尿路のさまざまな場所を自然に通過したり、ずっとそこに居続けたりします。そのあいだ、そのままの状態で成長せずにいることもあるし、自然に溶解してしまうこともありますが、成長を続ける(大きくなる、数が増える)こともあります。どこかにある石全部が何かしらの症状を出すのではなくサイレントで、気がつかれないこともあります。たった一度血尿を出したけれど、その後はなんともない、なんていうこともあります。たまたま画像検査をしたら発見するということもあります。

けれど、好ましくないことも起こします。

いくつかの、怖い例を挙げてみます。

・石がある組織の内側の壁、たとえば膀胱なら膀胱の粘膜を傷つけます。傷がつくと粘膜表面から量の問題はありますが出血します。

・傷があると、細菌感染を起こしやすいです。

・慢性的な刺激によって粘膜はポリープを作るかもしれません。それは腫瘍と区別がつきにくいものです。

・腎盂(やや広い)→尿管(とても狭い)→膀胱(広い)→尿道(狭い)という構造になっていますので、石が移動し、狭い部分を通過する途中で閉塞を起こすかもしれません。

・両腎に影響するほどの完全で持続的な閉塞が起こると、腎障害を起こします。それは急性の尿毒症を起こすかもしれません。

・重篤な閉塞が生じた後、尿の流れを早急に再開させないと腎臓は急速に壊れ、2日から4日くらいの間には亡くなることも予想されます。

 IMGP1338.jpg
いろんな石があります。
石毎にでき方に特徴が有ります。
手術しなくても大丈夫な石もあります。
きちんとしてれば予防も再発しないようにもできる石もあります。

<石によって組成が違います>

尿路結石にはいろいろ種類があります。石の成分のことです。

昔、激しく昔ではないけど、そう、昭和の頃です。犬も猫も、「尿石ができているぞ」とわかったとき、その石はほとんどがリン酸アンモニウムマグネシウム(ストルバイト)でできていました。この石は長いこと、結石の原因のNO.1でした。それも80%くらいはこの石でした。今は減ってきています。この石は予防が可能になったからかもしれないし、飼い方が良くなったせいかもしれません。

近年増えてきているのがシュウ酸カルシウム結石です。これまで80%を占めていたストルバイト結石は、その半分(よりちょっと多く)をシュウ酸カルシウム結石に譲った感じです。猫のシュウ酸カルシウム結石は腎臓から落ちて(膀胱まで行く途中の)細い尿管で石が立ち往生してしまうと、急性の腎障害を起こし命の危険が高いので、特に注目が集まっています。この状態に対しては外科、それも緊急の外科が必要ですし、手術ができたからといってこうなった猫たちを100%救えるかというとそうではなく、もし危機的状況を一旦回避できても難しい状態が継続します。亡くなる確率も高いし、救えても慢性の腎臓病となってしまうことも多い厳しい病気です。

ストルバイト結石が大半を占めていた昔でも、シュウ酸カルシウム結石がその半分を譲られた今でも、変わらず10%~20%くらいは別の石が占めています。それが代謝に関係してくる石と不明の石です。一部の犬では腸から肝臓に行く血管(門脈)に異常があったり、また肝臓に障害のある犬があり、そのために尿酸アンモニウム結石を形成することがあります。またダルメシアンに代表されますが、遺伝的にプリン体の代謝ができない個体でも発生しやすいことがあります。それから腎尿細管で再吸収されないことから発生してしまうシスチン結石があります。まれなのですが、これも遺伝的疾患で、できてしまう犬には繰り返し石ができてしまいます。原因はわかっているけれどコントロールが難しい結石です。

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犬も猫も、よく見られる石の種類は変わってきています。

<尿結石を発見する>

石の発見に使われるのは、レントゲン検査や超音波検査などの画像検査(と尿検査、可能ならば血液検査)です。レントゲン検査するとき私たちは、「KUB」:腎臓(K)~尿管(U)~膀胱(B)を全部入れて撮影しますが、さらに尿道とその先の出口までしっかり撮影するようにしています。ときに、一枚では治りきらず、前の方、後ろの方の2枚に分かれて撮影することもあります。(横から撮影するだけで)

読影するときはじっくり見ていきます。小さい動物ではできている石も、ほんの小さな石であることがあります。撮影後も色合いの調整や拡大など、画像を調整して確認します。X線の「透過性」と私たちは呼んでいますが、くっきり写る石からぼんやりレベルの石、また、X線をすり抜けて写らない石というのもあります。レントゲン撮影そのものは皆さんもご存じの通り、「はい、息を大きく吸って~止めて~はい」「バシャン!」の数秒のことなのですが、読影には時間がかかります。

超音波検査では、動物にじっとしていただくことが要求されます。一瞬の撮影タイムであるレントゲン撮影と違って、それなりの時間が必要です。石のようなもの、石かどうか怪しい物体があるような場合は、尿道に管を入れその管から生理食塩水を流し、水の流れや物体の動きを通して、怪しい物体を探ります。大きな石でしっかり影を作るようなものだと判断しやすいのですが、微妙なときは判断するのに困ることがあります。直腸にウンチがいっぱいあってわかりにくいということもあり、「浣腸してから撮りなおししようか」なんてことにもなります。

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腎臓から尿管、膀胱、そして尿道まで、
石はどこにでもできてしまいます。
レントゲン検査でわかる石を載せています。

<見つかった石、取らなきゃいけない?>

「悪さをしている石」は無くした方がいいです。たまたま偶然見つかっただけで「悪さをしていそうに無い石」の場合は見守りもありです。

「悪さをしている」、「悪さをしそう」などの判断は重要ポイントです。たとえば腎結石が見つかっても、流れを妨げている、感染症を繰り返している、痛みを出している、腎臓が圧迫されるくらいでっかいなどは「悪さをしている」ので「切る方」に入る石です。偶然見つけた小さな腎結石で、流れも妨げていない、感染もしていない、痛みももい、とても小さな石の場合は「見守り」になります。また膀胱にあって「悪さをしそうにない石」というのは、今も問題を起こしていない(血尿とか尿路感染などの症状が全く出ていない)し、適度な大きさがあって尿道に落ちそうにない(閉塞しそうにない)石です。症状が出たときにどうしようか考えれば良い「見守り」になります。

そして「手術でなければ取り出せない石」と「内科的に溶解が可能な石」があり、溶かせることができる石ならば(何か緊急に困ることが無ければ)ゆっくり溶かしていくのが動物にやさしい方法です。「手術しなければならない石」で「予防法がない石」ならば、何度も繰り返し手術するくらいなら、見守り続け、必要以上に手術回数を増やさない方法もあることになります。

「見守る石」は「様子を見ましょう」と言われるかもしれません。これは「そのままにしておいて良い」という意味ではありません。定期的にチェックが必要ですが今は手を出さないという意味です。獣医師からの言葉をちょっとアレンジして判断されてしまっている飼い主さんもおられますのでお伝えしておきます。

基本的にストルバイト結石は溶かす石に分類されています。尿酸結石とシスチン結石も一度は溶解を検討してみる石です。見守りや取り出しの手術になりやすいのはシュウ酸カルシウム結石です。

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今月からリニューアルの尿石予防食です。

<石の種類は体内にあるときに特定できるか>

石によって切らなくても溶かせる石がある、となると、取り出してから検査するのでは無く、体内にあるうちに決定して処置を決める必要があります。出てきていない石がどの組成の石なのか、外から見て分かるものでしょうか。

動物の品種・性別・年齢やできている石の場所、代謝異常などの病気の様子、尿路感染の有無、食餌などから、どの石なのかを予測することは可能です。また画像検査で推測することも可能です。例えば、X線には写らないけれど超音波検査だとはっきりわかる石、X線でぼんやりわかる石、X線で小さくてもくっきりわかる石などの写り方によっても判断できます。それから超音波検査でいろいろな角度からあててみて推測されるおおまかな形、石の大きさと数なども参考になります。尿検査で尿のpHを調べることができますが、酸性度、アルカリ度によってできやすい石に違いがあるので、これも参考になります。結石成分が過飽和であったとき、管に入れた尿を回転させ沈んだ物を顕微鏡で調べてみると、結晶成分を見つけ出すことができます。有力な手がかりです。

こんなことをヒントに、だいたい推測することができます。しかし、ある石が原因で感染が起こり二次的に感染性のストルバイト結石を形成することもあります。血液検査でミネラル成分を調べ、高カルシウム血症があるなど、というのもヒントにはなります。

しかし状況証拠が一つの方向に正しく導かれるとも限りませんので、判断に苦しむこともあるし、複数の成分が絡み合ってできている「混合結石」の場合もあるため、決定が難しいときもあります。

 IMG_1076.jpg
サンプルフードが並べてあります。
石ができていない犬猫でも、
肥満を含めたほかの病気がないときには
これらを利用することが可能です。
予防になります。

<特殊な犬?普通の犬?>

遺伝的疾患を持った特別な犬や猫だけに尿結石ができるのはできた石全部のなかで10%~20%未満です。あとは「こんな風に飼っていると石ができちゃうかも」というのがあります。もちろん体質によって「すぐにできちゃうぞ」から「いずれできちゃうぞ」くらいの巾は有るかもしれません。「うちの子は一度もできたことないし、関係ない病気じゃないかな」と思われていらっしゃる飼い主さんはとても多いです。でも人生における「まさか」は犬でも猫でも起こりますので、「関係ないぞ」なんて思わないで予備知識を入れておいていただけると良いなぁと思います。

 

<続きますが、ひとこと>

「様子を見ているうちに変化して、すぐになんとかしなければいけなくなる結石」は一定数あります。はじめはきっと「見守り」だったのだけど、どこかで「悪さをし始めた石」に変わったはずです。はじめから「切除が必要だったけれどそのままにしちゃった石」も無いとはいえませんが、すべてがそうではないと思うのです。「定期的な検査で様子を追っていく」ことで「切りどき」を逃さないようにすることが大切です。「様子を見る」というのを「何もしなくてもいい」と読み違えてしまうと、「切りどき」を過ごしてしまう危険があります。

「見守り」「様子観察」「様子見」はいつも以上に「神経を細やかにして臨床症状が出ていないかどうか気を配る」必要があるし、忘れずに再診に出かける必要があるというのを心に留め置いてください。

<改正動物愛護法のこと>

話は変わりますが、動物愛護法が変わりました。これまで以上に罰則は強化されました。心を痛める事件もありますが、これによって無くなればウレシイです。
ショップで売られる子犬の週齢も、今後引き上げられることが決定しました。小さい方がかわいい、幼い方がなつきやすいといった逸話は、動物行動学からは完全に否定的です。幼少時には親子のスキンシップと同腹子同士の遊びを通じて得られるものが多く、これが日本犬に適応されなかったことはとても残念です。日本犬だけを除外するエビデンスはありません。
飼育者にとって関連してくるのは「マイクロチップ」の埋め込みです。これまで飼育されてきた動物には努めて入れて欲しいということになっています。終生飼育の義務づけ的な側面もありますが、むしろ、万が一大きな災害が起こって迷子になっても、最後はマイクロチップの情報を頼りに飼い主さんと再会することができます。いつでも挿入は可能です。この際にぜひ、ご検討ください。不安に思うこと、知りたいことがあれば診察のときにどうぞ。






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ハート動物病院です。
〒445-0062
愛知県西尾市丁田町杢左51-3
TEL/0563-57-4111
オフィシャルサイト:http://www.heart-ah.com/

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