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フィラリア症啓蒙月間

 日差しがまぶしく、吹く風も爽やかに感じられるようになってきました。もう4月も半ばを過ぎてしまいました。新年度、新しい人たちとうまく交流できてきましたでしょうか。

さて、4月はNational Heartworm Awareness Month 、フィラリア症の啓発月間です。The Heartworm SocietyAHS)は、犬糸状虫症(フィラリア症)が犬や猫などのほ乳類にとって危険な病気であることを広く知って貰うことを目的に、蚊の活動が活発になり始める春に合わせて、このような啓発活動を行っています。

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 この春、フィラリア予防やフィラリア治療について新しい動きはありませんが、いくつかの注意事項の確認と、AHSの勧めている予防法について、重要だと思うことをお伝えしておきます。

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フィラリアについて。



フィラリア症感染の検査

これは毎年受けてください。シーズンはじめに検査を受け、獣医師と投薬プランを確認し、予防を開始してください。年間を通じて投薬している場合でも検査は毎年受けてください。フィラリア症予防に対し、予防薬の投与は非常に有効な方法ですが、万全ではないからです。

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投薬を始める前の検査、忘れずに。



②予防薬の投与期間

蚊の活動開始1ヶ月後から蚊の活動停止1ヶ月後までがフィラリア予防薬の投与期間です。しかし近年は屋内で飼育される犬や猫も多く、また室温を快適な温度に設定すると冬でも蚊の活動は止みません。私たちも思いも寄らないシーズンに蚊に刺されることがあります。AHSでも12ヶ月間フルに予防することを推奨しています。もし、もう少しの投薬期間延長に同意していただけるのであれば、年間予防をおすすめします。

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できれば年間を通しての治療が理想です。
 

③予防方法

各月ごとに予防薬を投与するのでもいいし、12ヶ月間有効な注射方法(1年に1度の注射)も選択肢にあります。もし過去に投与し忘れ、薬の吐き戻し、内服薬嫌い、糞便中に薬がそのまま出てくる、投薬によりお腹を壊すなどを経験されたことがあるのならば、注射という方法はそれらを解消することができます。間違いなく第一選択になります。お薬大好きさんはこれまで通り、おやつ感覚で投与してください。

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こんなことはありませんでしたか?



④猫の予防

猫のフィラリア予防率は依然低いままです。しかし猫のフィラリア症は「治療方法がない」といっても過言ではありません。呼吸器系の症状、または知らないうちの突然死というかたちをとることもあります。フィラリア症は「猫には関係の無い病気」ではありません。猫こそ犬より重篤な病気。ぜひぜひ予防をしましょう。なお、猫のフィラリア症予防は犬と異なり、内服薬投与ではなく、スポットタイプ滴下剤の投与です。ノミ予防を兼ねたお薬です。
 
猫のフィラリア
AHSの猫フィラリアポスター。
もしあなたの猫にフィラリアが入ってきたら、治療法がないのです。

 
猫のフィラリア症については前にお話ししました。
http://heartah.blog34.fc2.com/blog-entry-909.html 

今日のお話は以上です。

お天気の良い日は愛犬と静かな公園にでも出かけ、思う存分遊ばせてやりたいですね。今日、予報では外気温は30℃を超えるのではないかということですが、愛犬が飲むための水と、おしっこした場合に流すための水を忘れずにお持ちください。また、くれぐれも車中に犬を置いてお出かけにならないようにお願いします。心臓病の犬には「まだ4月だよ?」なんて思わないで、エアコン付けて涼しくしてあげてください。発症してしまった病気を元に戻すことはできませんけど、ちょっとした心遣いでそこから派生するトラブルを防止することはできます。注意してください。

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心臓病から腹水

 犬の心臓病というと、「僧帽弁閉鎖不全症」がその筆頭に揚げられます。小型犬に多い、あの病気です。「左心房と左心室」の間にあるのが「僧帽弁」で、「右心房と右心室」の間にあるのは「三尖弁」です。心臓は血液の流れの途中にあるポンプで、一つの臓器ですが、血液は心房中隔や心室中隔という壁を隔て流れは全く違う方向へ向かっています。そのため「左心系」、「右心系」というふうに、血液の流れを基準に2つの系統に分けています。左心系と右心系では問題が起こったときに発生する症状が違ってきます。

今日は僧帽弁疾患とは少し違う右心系特有の病状のことについてお話しします。

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<左心系と右心系>

左心系を流れる血液はこれから圧がかかって全身に届く酸素に富む血液、動脈血です。それに対し右心系は、全身を流れた血液がたどり着くところで静脈血が流れています。右心系は左心系に比べて圧が低いので、僧帽弁と同じくらい弁に障害があってもなかなか優位な症状を現すことはありません。でも、僧帽弁閉鎖不全症の末期になってくると、慢性的な血液のうっ滞で心臓に負担がかかってきたために、心臓が大きくなり、三尖弁が完全に閉じきれない状態になり、右心系の不全を生じると考えられます。

また、フィラリアの虫体は右心系に寄生するのでフィラリア症になったときも同じような右心系の症状を発生します。(フィラリア特有の別の症状もあります。)

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<三尖弁は3枚の膜>

僧帽弁は弁膜が2枚ですが、三尖弁はその名前の通り3枚の弁で構成されています。丸いケーキをベンツマークのように、120度ずつに3等分したとしましょう。1人前に切り分け扇形になったものが弁で、ケーキ周囲の円は弁輪になります。心臓が拡張していくのに伴って弁輪も大きく広がっていきます。切り分けてからそれぞれのケーキを少し外にずらした状態に同じです。弁輪が開いても、弁の大きさ(切り分けたケーキの大きさ)がそれに伴って大きくならなければ中央部は空いてきます。三尖弁の閉鎖不全はこのような状態です。

 

<腹水>

右心系の異常が発生したときの最も特徴的な症状は「腹水」です。腹水は腹腔内に貯留した液体です。腫瘍や炎症でも腹水は生じますが、右心系に問題があった場合にも腹水が生じます。「腹水」は病気の名前ではなくて、臨床症状の一つです。

腹水は視診でおなかがふくれていることから疑いを持ちます。さらに触診で確かめます。ぽんぽん!っとおなかを弾いたとき、もう一方の手に液体の波が感じられます。そして超音波の検査ではっきりと確認できます。

右心系のうっ血液心不全が生じると毛細血管内の静水圧が上昇するので血管から水分が漏れやすくなり、腹水の発生につながります。内臓の毛細血管の静水圧を上昇させる原因のひとつに門脈高血圧があります。門脈は腸から肝臓へとつながる血管です。右心不全があると門脈高血圧になります。原因と結果がぐるぐる回る、悪循環です。

循環が悪いとき、腹水だけでなく、胸水も貯留することがあります。また腹水が大量に貯留する頃には手足や腹壁の皮下がむくんで指で圧すとへこむこともあります。

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<腹水の影響>

腹水は全身性に影響を及ぼします。

①大量の液体は腹圧を上昇させます。これによりさらに心臓の動きが悪くなります。(静脈還流が悪くなって、心臓の拍出力も減少させてしまうことがあります。)

②腹圧が高まると横隔膜の動きを悪くさせます。それで小刻みに「はぁはぁ」させるパンティング呼吸になります。肺を大きく膨らませることができませんから、身体に十分な酸素を取り込むことができなくなります。

③腹圧は犬にとって非常に不快なものです。

④浸透圧の関係から、便が緩くなることがあります。

⑤活動性の低下が起こります。

⑥食欲も低下します。

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<腹水を抜く>

腹水穿刺をすると、排液した検体を利用して検査することもできるし、抜くことそのものが治療になるので、動物の不快を解消するためにも行われる一石二鳥の処置です。

たいていは鎮静や麻酔の処置なしで実施することができます。

動物の大きさや貯留している液体の量にもよりますが、静脈内点滴などに用いられる留置針や翼状針を用いて、超音波で最適な穿刺位置を探り、おなかに針を刺し、そこから繋げたチューブを介して注射筒に液体を採取します。

少なくとも数10㎖、場合によっては1ℓもの液体が貯留している場合があります。

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<合併症も考えられる>

腹水を穿刺する場合、全く危険がないわけではありません。呼吸が苦しいときは、動物を横に倒しただけでも呼吸が不安定になります。酸素処置を行いながら処置することもあります。

穿刺位置によっては、大きく腫れた肝臓や脾臓などの臓器の裂傷を起こさせる危険もあります。

ときに腹壁に開けた小孔(小さな針の穴)から皮下組織に腹水が漏れ出ることもありますが、こちらは小さな問題です。

 

<お薬の投与>

大量の腹水の中には、本来からだが利用するはずだったタンパク質が含まれています。何度も腹水を排液しているとタンパク質が枯渇し、さらに腹水が貯留しやすい「低タンパク血症」をもたらすことがあります。そのため、処置としての腹水排液後は必ず「このあと再び腹水が溜まらないようにするお薬」の投与が必要になってきます。

ひとつは利尿薬です。滞って腹腔内に貯留するはずの血液中の水分を、腎臓から尿にして出すようにします。利尿薬は循環を良くする役割も持っています。また循環系に作用する薬である血管を広げる薬(血管拡張薬)や強心薬なども使います。

しかしこのような内服薬をしっかり投与していても、腹水をコントロールできず、定期的に腹腔穿刺をして腹水を抜かなければならないようなこともあります。慢性化してきて、腹水のある状況でも犬が比較的安定していて、呼吸に無理がないようであれば、「抜かない治療」をすることもあります。

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<お願いしたいこと>

わんこのご家族の方にお願いしたいことがあります。

①運動の制限

 激しい運動や興奮することは避けてください。心臓に負担がかかり、腹水は溜まりやすくなります。

②栄養の管理

 ナトリウムを摂取すると、血中のNa量が高まり、水分を呼び込み、血液量が増えるため、心臓はさらに負担が増してしまいます。低Naの食餌を与えるようにお願いします。また、どうしてもタンパク質が腹水に逃げて生きやすいため、必須アミノ酸をしっかり備えた食餌を与えるようにお願いします。

③お薬の服用

 薬にはそれぞれ作用時間があり、24時間効果が続く薬もあれば、8時間しか効果の持続がない薬もあります。ご家庭の都合によって「11回の薬を希望します」といわれることもありますが、残念ながら私の力では薬の効力を延長させることができません。ぜひ処方通りに服用させてください。

④モニタリング来院

 定期的に病院へお越しください。体重測定や血圧測定で犬の様子を観察させて貰うほか、血中の電解質やタンパク質の数値、高窒素血症が発生してはいないかなどを確認するため血液検査を実施します。心臓と腎臓は密接につながっています。腹水をうまくコントロールするために初期は短い期間での来院をお願いすることが多いです。

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<予後は>

運動がほとんどできない、じっとしているだけで元気がなくなった、体重も減ってきてしまっている、食餌を十分に摂れなくなってきている、下痢をしている、時々失神を起こしてしまうなどは悪い兆候です。

 

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810日の「健康ハートの日」にちなんで、当院では81日から92日まで、ワクチン時のサービス価格で心臓病関連の血液検査を行っています。ラボ検査のためお時間はかかりません。結果は後日ご報告いたします。心臓病が気になるわんこさん、春先の検査で「ひょうじゅんコース」や「おてがるコース」を選択されたわんこさん、「心臓病コース」で出た結果をもとに薬の変更があったわんこさんにおすすめです。

 

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いつから心臓病の薬を始めるか

 4月のブログに掲載した心臓の機能をみる血液検査ANP、
(http://heartah.blog34.fc2.com/blog-entry-962.html)
今年の春の健康診断から始めましたが、すでにそれなりの結果が出てきています。ちょっとご紹介しますね。

ケース1:
心臓が悪くて薬を服用中だけど大丈夫なのか心配で受けてくれたわんこさん、思いの外「心房の負担は軽度」という結果。お母さんも安心してくれました。

ケース2:
そんなに悪くはなっていないだろうなぁと思いつつも、心臓のお薬を服用しているから確認のために検査になったわんこさん、「あら、いつの間にか進行していたみたい」という結果。それで、お薬増量になりました。

ケース3:
まだ年齢的には大丈夫なんじゃないかしらと思っていたけれど、お母さんの希望で心臓検査コースを選択され実施したわんこさん、「あらまびっくり、こんなに心房筋負担があったなんて」。そして慌てて詳細な心臓検査を実施しました。

概して、この検査は実施して良かったと思っています。

 

 さて、今日は犬の弁膜疾患のときの治療法について、近頃話題の心臓病の論文も併せてお話しします。

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ACVIMのガイドライン>

いま、当院では2009年に米国獣医内科学会(American College of Veterinary Internal Medicine ; ACVIM)から発表された「犬の慢性心臓弁膜疾患の診断および治療ガイドライン」に沿って治療を進めています。10人のメンバーが話し合った結果、「このような状態ならステージはどこで、この場合はこの薬を使うことを推奨します」というものが出されているので、ジェネラリストの私でも心臓病の専門家の先生がおすすめする内容に沿って世界的標準の治療を行えるというわけです。

ただ、「臨床症状がある」「ない」で初期のステージが異なるものがあるのですが、おうちの方がずっと愛犬と一緒にいない場合なども考えて、ご家族の方からのお話しでは「よくわからない」という結果を、「症状なし」にはせず、「ありそう」と思われるものは「症状有り」にしています。少なく見積もって、心臓病が悪くなっているのを放置してしまってもいけないからです。

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<ステージ分け>

さて、この分類では病期は初期段階のAから進行したDまでの大きく4つに分けられています。お薬をスタートする時期は、ステージBの段階です。

ステージAはリスクがある犬、というだけです。小型犬やキャバリアキングチャールズスパニエルです。

ステージBは心雑音がある犬たちですが、このステージのわんこたちが次の段階、ステージCの予備軍です。急性期のステージCである肺水腫という心臓イベントは死亡率も高く、本当に苦しそうで何度経験してもつらいです。できることなら家庭医としては最も力を入れてステージBのわんこたちをより良い状態で毎日過ごすようにさせ、ステージCのイベントを起こさないようにしてやりたいのです。そして、まさか初診時がステージCのイベントだなんてことがないように、日頃から早期発見し、早期治療に向けお話しをしていこうとしている次第です。

肺水腫イベントを何度も繰り返すわんこ、一度でも死亡率高いのに、そこから復活してまた発症してしまう強者のようなわんこもいますが、そんな急性のイベントもなく過ごしてもさらに心臓は弱っていき、慢性期であるステージCを経過し、もうスタンダードな治療には反応しない、末期の心不全であるステージDへと進行していきます。

 

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<ステージごとに異なる治療>

ACVIMのメンバーの先生方は、犬の心臓病の世界的な名医である先生たちですが、治療に対しては統一見解が得られていないものもあります。心臓の薬は先生によって使い慣れた薬がそれぞれ違うのかな、という気がします。

例えば、心臓病の初期段階ステージBで、当院ではじめに処方しているのはアンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACE-I)なのですが、この薬に対し大半の先生が処方することに同意していますが、一部の先生からは同意が得られていません。また、交感神経β受容体遮断薬(βブロッカー)に関していうと、少数の先生方が処方に同意している、というところです。どちらも心機能を応援する薬としては「ゆるい」クラスのお薬です。

ステージCDになってくると、全員の先生が処方に同意する薬も沢山ありますが、すべての先生が同意しているわけではない薬もやはりいくつも出てきます。

動物病院でアンギオテンシン変換酵素阻害薬の次に良く処方されるのがピモベンダンという強心薬ですが、ステージCになると急性期、慢性期を問わずどの先生方もこの薬を処方することに同意しています。

 使われるお薬のことについてはこちら
http://heartah.blog34.fc2.com/blog-entry-819.html

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<注目の論文>

待望されたEPICStudyの結果です。前述のピモベンダンの使い始めをいつ頃にしたら良いのかの研究です。これまでは「ピモベンダンを使うのはまだ早い」と、ステージBの段階ではどの先生方も処方を推奨されていなかったのですが、この研究では早期からこのピモベンダンを使った犬たちが、従来のように早期の段階でピモベンダンを使わなかったグループと比べて、どのような生活を送り、生存期間はどうであったかを長期にわたり観察し数値化しました。

その結果、投与期間中も安全性は高く、薬の副反応と思われるようなものも対象薬のグループと変わりない割合で、ステージBの期間を長く過ごし、生存期間も長かった、という結論が出ました。

ステージCまで病期が進んでからピモベンダンを使うという従来の方法に比べると、より積極的に心臓を守り拍動を助けていくという感じが強いです。

こちらです。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27678080

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<心臓病の症状はわかりにくい>

心臓が悪いときの症状というと、まず「咳をする」というのがこれまで中心になっていました。心臓が大きくなって、心臓の背中側を走る気管が左右の気管支に枝分かれする場所を心臓が鼓動のたびに圧迫すると、断面が円形だった気管支をつぶし、気管は扁平になります。ストロー笛や草笛は、そのままのかたちだと息を吹いても音はしませんが、つぶすと音が出ます。気管支からの咳はこんなことだと思っていただけると良いかと思います。大きくなった心臓で気管がつぶされて出てくるのが心臓性の咳です。心臓病では、血液の流れを良くするお薬を処方しますが、流れが悪いために心臓に血液がうっ滞し心臓が大きくなっているのですが、血液のうっ滞が解除され心臓の大きさが緩和されると、圧迫がとれるため咳が減り、病犬は楽になります。

ですが、ほぼ「咳」を感じられない犬もいます。

「元気がない」という、何が原因なのかさっぱり分からない症状で来られるわんこの一部が心臓病だったりします。のっそりと食事は食べるけれど、喜んで食べない。時間をかけて1日分をかろうじて食べている。というのも同時に観察されています。また「あまり動かない」「動きが悪い」様子も観察されているのですが、これらを称して「元気がない」と表現されています。まぁ、「動きが悪い」と言われて骨や筋肉、関節や神経などの病気の方向に関心が向いてしまうことを思うと、まだ「元気がない」と表現され、内臓系の疾患に関心が行くので、これも一概に悪いとも思えません。

散歩についての質問では「散歩に行きたがらなくなった」「散歩に出てもダッシュしないでのろのろ歩いている」のですが「年だからこうなんだと思っていた」と言われます。

室内での行動はさらに明らかなものがあります。「家族の誰かが帰宅しても玄関へ走って行かない」「ピンポンが鳴っても客人に吠えまくることがなくなっている」のですが、やはり「年のせいでこうなっている」と思われている節が多く、感じてはいてもこちらから聞き出さないと「行動の変化」として伝えてくださることはまずありません。

「元気がない」の一言ですが、以上のような行動上の変化を一つずつ確認していくと私たちが「運動不耐」とよぶ状態になっていることが分かります。

さらに、この状態が続いた犬たちに血液検査をすると血中尿素窒素(BUN)が高くなっていることがあります。腎臓病だと思われてしまうと、点滴治療などで余計に循環液量を増加させ、症状が悪化してしまいます。クレアチニン値はさほどでもないのにBUNだけ高値なのは、血の巡りが悪くなっている印でも有り、心臓のお薬を飲み始めると劇的に改善することがあります。

心臓病になるのは小型犬に限ったことではなく、柴犬のような中型に分類される犬でも発症します。高齢になるからこそ発症してくるのが心臓病です。この大きさの犬だと、心臓が悪くて静かにしていても「認知症なのか」と思われてしまうこともあります。僧帽弁閉鎖不全症の好発犬種以外でも注意が必要です。

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<心臓病だと分かったら>

心臓病だとわかったら、快適な状態をできるだけ長く続けることが目標になります。早期に治療介入し、穏やかに過ごすようにお願いしたいです。ナトリウム摂取制限食、心臓のための薬の継続、運動負荷をかけないこと、暑さや寒さに配慮した環境を提供することなど家庭での注意事項がいくつかあります。

もうひとつ、安静時呼吸数を数え、万が一のときに慌てないようにしていただきたいです。吸ってはいてで、ひと呼吸です。胸またはおなかが上に下に動くので、この動きを見るまたは胸に手を当て動きを感じるのでもカウントできると思います。静かにしているとき、特に睡眠時に1分間に何回呼吸をしているのか数え、記録してください。30秒間カウントして2倍するのでもOKです。「Heart2Heart」というスマホのアプリもあります。大変便利です。

院内にはパンフレットもご用意があります。遠慮なくおたずねください。

 

 

心臓病のお話し、今日はここまでです。

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「フィラリア陽性です」と言われたら

 毎年のことですが、フィラリアの血液検査をしていて、「陽性」の結果が出るわんこがいます。今日は「フィラリア検査結果が陽性です」となったわんこのお話しをします。

 

<フィラリア予防薬注意書き>

西尾地区はフィラリア予防薬の投与前に血液検査を受けていないわんこたちもいます。が、フィラリアの予防薬には注意事項があります。以下、某フィラリア予防薬に添付されている効能書の抜粋です。

 

1,制限事項

(1)本剤の投与前には健康状態について検査し、異常のある犬には投与しないこと。

(2)本剤の投与前には犬糸状虫感染の有無を集虫法、抗原検査法等により検査し、犬糸状虫感染犬に投与する場合は、成虫及びミクロフィラリアを駆除するなど適切な処置を行い、慎重に投与すること。

 …略…

2,副作用

 …略…

(3)本剤を犬糸状虫感染犬に投与することにより、急性犬糸状虫症(大静脈症候群)、食欲不振、嘔吐、下痢(軟便)、元気消失、歩様異常、けいれん、流涎及び皮膚アレルギー症状(発赤、搔痒)がみられることがある。(

 …略…

注意:獣医師の処方せん・指示により使用すること

 

つまり、

①投与前にはちゃんと診察に来て、健康状態をチェックさせてくださいね。

②そして血液検査でフィラリアに感染していないことを確認させてくださいね。

③ご自身で、ネットでお取り寄せして投与するのはいけないことなんですよ。

ということになっています。

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こちらが抗原検査キットです。
Tのところに縦線が浮かぶかどうかで判定します。
この子は陰性です。

<フィラリアの血液検査>

血液検査は、

①スライドガラスの上に薄くのばした血液を直接顕微鏡で観察し、血中にフィラリアの赤ちゃん虫(ミクロフィラリア)がいないかどうかを検査する方法(ミクロフィラリア検査)、
と、

②検査キットに血液を滴下し、フィラリア成虫が関係する物質とキット内の物質が結合して反応が出る検査で、心臓内にフィラリアの親虫がいないかどうかを確認する方法(フィラリア抗原検査)

の二つがあります。

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顕微鏡画面です。
糸くずのような虫が2ひき見えます。
長さは300ミクロン、ミクロフィラリアです。
ピンクのつぶつぶは赤血球です。

子どもの虫がいないこと(①)、親虫がいないこと(②)を両方確認するのです。それは万が一、感染しているのに予防薬を投与してしまうと、(☆)のような副作用を出してしまう危険があるからです。

 わんこはみんな、たぶん、みんな、採血は好きではありません。でも、がんばって受けてくれます。それに毎年のことだし、慣れてきます。もし病気になったときでも採血はつきものです。慣れてもらっている方が良いです。それについでに他の項目も検査して、健康状態をみることだってできます。わんこはみんないい子です。大丈夫。これまでやったこと無かったよ、という子でもちゃんとできます。もしまだのわんこがいたら、ぜひ血液検査をしましょう。(余談になりました)

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陽性だとTのところにも縦ラインが出て、
縦線が2本現れます。


<フィラリア検査陽性です!>

A病院でお薬をもらって毎年きちんとやってたんだけど、B病院で検査を受けたら「陽性」って言われちゃって、どうしていいのか分からない!」って連れてこられましたわんこがいました。

 こういうときは再検査です。

子どもをみるミクロフィラリアの検査は寄生する虫の数や、検査する時間帯によっては陽性であっても「陰性」に出ることがあります。しかし「陽性」の結果が出たときは間違いなく「陽性」になります。

成虫をみる検査キットはたま~に間違いが出ることがあります。本当は陰性なのに陽性にでてしまうことがあるのです。(この反対も無いことはありません。)こういうときは、もっと正確に結果を出せる検査機関に血液を送って調べてもらうこともできます。詳細な検査で陰性結果が出たら「一安心」です。ここで陽性結果が出たら「う~ん、今年から気を引き締めて、予防を頑張りましょう」になります。

 F症尿
辛そうな表情をしているコロちゃん。
フィラリアは予防をしないと
年々成虫が増えてしまいます。

もらったお薬を投与していたにもかかわらず陽性結果になっているのは、いくつか原因が考えられます。

①はじめに薬を処方して貰ったときより、体重が増えてしまって、薬の量が不足してしまった。

②お薬を投与したのに、知らないところでわんこがペッとはき出していて、実はのんでいなかった。

③投与期間中、1か月ごとのはずが途中で間が開いてしまった。

④冬まで投与しないとイケナイのだけれど、秋になって涼しくなったからもうイイヤと早めに切り上げてしまった。

などはよくあるケースです。

 また譲渡施設から保護してきたわんこの中にはこれまでフィラリア予防をして貰ってなかったわんこもいますし、飼育中のわんこでもご家族のよんどころない事情で予防の時季にどうしても病院に来れなかったというわんこもいます。それから「フィラリア症」という病気について知らなかったから予防する機会が無かったわんこもいます。みんな、いくつかの夏を越し、今があります。

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なっちゃん、緊張の面持ち。
保護当時の面影はありません。
今では体重も増え毛のつやも良好です。



<陽性だったらどうする?>

では、フィラリア検査「陽性」のわんこは今後どうしたら良いのでしょうか。

心臓には親虫が、血液中には子どもの虫がいます。そして蚊にさされると感染子虫がさらに体内に入り、そのままだと成虫が増えることになります。

<ミクロフィラリア退治>

①はじめは、予防薬を投与するのに副作用を起こすもとになるのは子どもの虫を退治します。これにはフィラリア予防薬の極少量投与を行います。期間を空けて、少しずつ投与量を増やしていきます。フィラリア予防薬はノーベル症を受賞した薬を代表格として、それに似た「いとこ」の構造の薬も有り、ミクロフィラリアに対する作用が比較的穏やかなものがありますので、そちらの薬を使用します。使い始めの季節にもよりますが、春から始めると夏の終わりまでには安全に本来の投与量に近い分量にまで増量することができます。そしてほかのみんながお休み期間になる冬の間もそのまま投与を続けますと、翌年の春には検査で「陰性」になることが大半です。

<成虫の退治>

②心臓内の成虫に対しては、絶対安静の状態できつい駆除薬を注射し、成虫が死ぬのを待つ方法があります。成虫の生存期間は約5年なので、一度も予防をしたことがない場合には5年分の成虫が心臓内にいることが予想されます。心臓内の成虫が一度に沢山なくなると、血液の流れに沿って虫は心臓から肺へと流れ込み、急性の肺塞栓を発症することがあります。成虫を内科的に駆除するのは危険が伴います。おすすめしていません。

②’外科的に成虫を取り出すのは開胸、開心手術です。現実的ではありません。

②’’たまたま大静脈症候群を発症した場合は、開胸しなくても、心臓内の成虫が頸静脈から入れた長いフィラリア鉗子(フィラリア成虫をつかむために作られた特殊な外科器具です)で引っ張り出すことができます。人工的にこの状態を作り出し、この方法で手術をしようとするのも現実的ではありません。偶然こうなったら、手術しましょう。

②’’’心臓内の成虫は5年くらいの生存で、寿命が来ます。5年間予防に専念していると、自然に無くなるというわけです。死んだ成虫は肺に流れるわけですが、1年分ずつ(少しずつ)徐々に流れるため、人為的に駆除したときのような激しい肺塞栓になることは少ないようです。

<感染子虫の退治>

③感染子虫に対しては、他のわんこと同様の、いわゆる「フィラリア予防」になります。ただし、1年分の予防を1回の注射で済ませてしまいましょうという「注射による方法」を選択することはできません。1か月に1回、(ミクロフィラリアに対して比較的安全なタイプの予防薬を選んで)体重量よりオーバーにならないくらいの分量を(低用量ぎりぎりくらいで)予防していきます。①に連動します。

 

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モカちゃん、舌の色も鮮やか。
体調良好です。


<この先起こりそうなこと>

それでも、心臓内に成虫がいて、血中には子どもの虫がいるので、今は元気でも今後フィラリア症の症状や、後遺症を出すことも考えられます。

①急性犬糸状虫症は前大静脈症候群などとも呼ばれます。急な元気消失、食欲不振、赤色尿を特徴にしたものです。もしこんな病態になったら、一大決心をして貰い、外科手術に踏み切りましょう。

②数年後、運動を喜ばなくなったり、呼吸が苦しそうだったり、咳をするなどの症状を出すことがあるかもしれません。心臓内に成虫がいた結果、三尖弁の調子を悪くしたり、肺に流れた成虫が溶解した後に肺動脈の内壁が石灰化をおこして肺の機能を悪化させてくる可能性があります。このときは心臓や気管支のための薬を投与します。また、さまざまな影響から肝臓や腎臓の機能を低下させることも有り、フィラリア寄生がないわんこに比べると寿命が短くなる可能性もあります。

大量感染を何年も繰り返していた昔に比べ、「やせこけているのに腹水のために腹囲だけがぽっちゃりする」体型の典型的な「フィラリアわんこ」は少ないです。よくある「フィラリアの犬」として目にする絵のような状態になることは、「陽性」確認後すぐに対応してもらえたわんこではまれかと思います。

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急性のフィラリア症、前大静脈症候群では
こんな風な茶色いオシッコが出ます。
高速回転させていますが、膀胱炎の血尿のように
上澄みが黄色くなることはありません。

F症血液
右が前大静脈症候群のときの血液です。
左の正常わんこの血液と比べてみると、
血清が赤色になっている(溶血している)のがわかります。

 <おわりに>

「フィラリア陽性です」と言われると、皆さん、「頭が真っ白になってどうしたらよいのかわからない」、「獣医さんに話しは聴いたはずだけど全く頭に残っていない」という感想を持たれるようです。大丈夫。分からなかったり、心配になったりしたら、何度でも聞けば良いんです。

先日は遠方からお越しいただいたのにお時間が無くてお話しできずに終わってしまった患者さんには、お電話で失礼いたしました。「フィラリア陽性」が分かったときにお話しする内容はだいたいこんなお話しです。個別だと、疑問についてピンポイントでお話しができるのでもっと良いのでしょうが、紙面ではこんな感じのところです。

 

今年のフィラリア予防はまだ始まったところです。もし、まだのわんこがいたら、どうぞお早めにお連れください。そして、「めんどくさいから検査はパスしたいなぁ」とおっしゃる患者さん、「血液検査って大事なんだね」って分かってもらえるとうれしいです。

 

今日のお話はこれでおしまいです。

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心臓病を知る血液検査

先週は健康診断の腎臓病特別セットの検査項目、SDMAについてお話ししました。今週は心臓病特別セットの検査項目、ANPについてお話しします。

 

<バイオマーカーというのは>

ANPというのは心臓のバイオマーカーです。バイオマーカーというのは血液とか尿などに含まれるタンパク質やホルモンなどを測定して、ある病気にかかっているのか、どのくらい重症なのかを知ることができる物質のことです。心臓のバイオマーカーには、心筋で作られるホルモン(ANPBNP)や心筋に特異的なタンパク質(心筋トロポニン)があります。心臓細胞に無理がかかっているのかや傷害を受けているのかを血液の検査で数値を出し、その値から心臓病や心不全の様子を把握することができます。

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わんこが歳をとったこと、以外と気づきにくいものです。

<心臓検査に先だって>

心臓の検査といえば、まず聴診。心雑音が聞こえたり、咳や運動不耐症(*)などの臨床症状があればレントゲンや超音波などの画像検査。脈が乱れていれば心電図。という評価方法が一般的です。これらの検査は心臓の機能をみるうえでとても大事です。ですが、レントゲン検査は結構高価です。そして吸気や呼気によって胸郭の膨らみが変わりますし、心臓の方も拡張期と収縮期で大きさに変わりが出ます。それでレントゲンに写った心臓と胸郭の割合を数値で出すのに違いを生じることがあります。また超音波検査は時間がかかります。犬がじっと静かにしていてくれないとうまくポジショニングがとれなくて、詳しく見ようにも時間だけが経ってしまうし、循環器を専門にしている先生のように逆流圧などの測定ができなくてテクニカルエラーも出てしまいがちです。心電図検査は犬が震えていると、その小刻みな震動をとらえてしまいきれいな波形が得られず評価に戸惑うこともあります。

最初のとっかかりを得たいと思うとこのバイオマーカーは血液を採るだけで良いので簡単で実用的です。異常値が出たら次の判断を行えば良いかと思います。

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わんこの死因、第2位は心臓病です。
 

<ナトリウム利尿ペプチド>

これまで心臓の役割は「血液を全身に送り出すポンプ作用」として知られていました。ですが、心臓の研究が進むにつれて、心筋の細胞の中に特殊な顆粒があり、心筋が伸びるときにこの顆粒から血中にホルモンが分泌されることが分かってきました。血管を広げる作用やナトリウムを介してオシッコを出させる作用があることが知られていて、このホルモンの作用によって身体を巡る血液の量が保たれ、血圧も調整されているのです。

心房筋から出されるホルモンは心房性ナトリウム利尿ペプチド(Atrial Natriuretic Peptide : ANP)です。また心室筋から出されるホルモンには脳性ナトリウム利尿ペプチド(Brain Natriuretic Peptide : BNP)があります。どちらのホルモンも分泌されるときにANPNT-proANPBNPNT-proBNPが放出されますが、検査に使われるのはANPのほうはANPが、BNPの方はNT-proBNPが用いられています。

ANPは人用の測定キットが犬猫でも利用可能です。アミノ酸配列が似ているためらしいです。NT-proBNPは犬専用の抗体を用いて測定されます。

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心臓は徐々に悪くなっていきます。

ANPが評価すること>

犬に多い心臓病である僧帽弁閉鎖不全症では、僧帽弁の逆流があるので心臓から全身へしっかり血液を送り出すことができません。血液が心臓内にうっ滞しています。心臓内に多量の血液が充満している状態を「容量負荷がかかっている」と呼んでいます。左心室から大動脈へスムーズに血液が流れず、左心房に血液が逆戻りした病態が進んでいくと、左心房には高い圧がかかることになり、次第に左心房は拡張していきます。左心房圧が高まると肺動脈にも同じように圧力がかかるようになります。

胸部レントゲンによる心臓の検査は、こうして拡張した部分が心臓の陰影で膨らんでいるのを確認します。心臓超音波検査は僧帽弁の逆流している様子をリアルタイムに見たり、左心房のサイズを測定したり、流速の波形からどのくらい圧がかかっているのかを知ります。

ANPは左心房や肺動脈の圧が上昇すると、同じように上昇します。それも重症度と一致して上昇します。おおよその目安として、診断基準値(これ以上高いと心臓病の心配があります。これ以下なら大丈夫でしょう、とする数値)は25pg/mlです。そして、100pg/mlを越えるような数値が出れば重篤な心不全の兆候である肺水腫になってしまうリスクが高いということもわかっています。そして治療により心臓の負荷が抑えられていると、数値は低下してきます。つまり、うっ血の兆候を知ることもできるし、病態によって上下するので、治療効果もこれによって判断することができる検査です。

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まずは健康診断受けてみませんか。
 

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心臓検査は画像検査まで含めたものが理想ですが、
とりあえずバイオマーカーで心臓の傷害レベルを見ておく、
ANP検査の結果から画像検査をするという順でも
悪くはありません。




<結果から>

僧帽弁閉鎖不全症は、重症度をグレード分けされています。そのグレードにANPの数値を当てはめるとすると、①25 pg/ml未満のものは心臓病の心配は無いでしょう、

25 pg/mlから50 pg/mlの間くらいのものは血液の滞りがきわめて少なく軽症でしょう、

50 pg/mlを越えているものは血液うっ滞が中等度にあると思われるし、

100 pg/mlを越えたものでは重度な心不全である肺水腫になる可能性がかなり高いので十分な注意が必要です、

とお伝えすることになると思います。

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元気いっぱいそうに見えても、
実は心臓病が始まっているかも。

<おわりに>

健康診断では特別なことは行わずできるだけ簡単に、できれば低価格で、確実に悪いところを見つけ出すことを目的にしています。今回、検査機関さんとのタイアップで心臓病特別健診をワクチン時検査に加えることができました。心臓病は心配だったけれど、心臓病の検査はいろいろあって時間がかかるし、費用も心配だったし、と躊躇されていた飼い主さんにはすごくいいんじゃないかなと思います。この機会にぜひご利用ください。 

テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

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