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BEGダイエットのこと・つづき

BEGダイエットのこと、つづきです。
前回、今人気のBEGフードについてお話ししました。そのまま読んでいると愛犬や愛猫のためにこれ以上のフードはないと思わせる魅惑のワードに満ちています。でもたいていの獣医師はそれをとても不安に思っています。既に信者になってしまっている飼い主さんもいらっしゃると思います。しかしフード企業側の情報しか得られないのでは消費者として正しい判断を下せそうにありません。今日はBEGダイエットについて不安に感じていることをお伝えします。
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 <BEGダイエットは本当に理想のフードでしょうか>

BEGダイエットは「健康」を求める人のトレンドをよく反映していると思います。時代に求められているのでしょう。ロハスな食事を現代人の生活の中で選べるかどうかは別として、このような食事を私たちが毎日食べると健康になれそうです。だからそれを犬や猫に当てはめたいのかもしれません。

しかし、いくつもの点で理屈に合わないことがあります。

①グレインフリーフードにも炭水化物は含まれています
前回のお話になりますが、グレインフリーフードの解説のところで「穀類」の後にカッコで(炭水化物)としてみましたが、違和感はなかったでしょう。「穀類=炭水化物」と思っておられる飼い主さんは多いです。ですがグレインフリーフードは炭水化物を含まないわけではありません。穀類を原料にしていなくても、豆類や芋類が入っていますので、そちらからの炭水化物が入ります。そもそもドライフードは炭水化物が無いと形成できない仕組みになっています。(ほんとうに炭水化物を避けるためにはウエットフードを選ぶしかありません。)

②炭水化物は犬の身体にも猫の身体にも必要な栄養素です
それから、炭水化物が犬や猫の身体に不要であるということはありません。利用できないということもありません。炭水化物はペットの食事のエネルギー源として重要な役割を果たしています。また犬も猫も身体には炭水化物を効率よく消化し吸収できる仕組みを持っています。そして消化吸収されない不溶性線維は便を形成し腸内細菌に栄養を与える役割を持っていますから「不要」ではありません。

③高タンパク低炭水化物に見えるテクニック
該当するフードの炭水化物表示にはテクニックがあります。明らかに一般のドライフードに比べると炭水化物%が低くなっているとお考えでしょう。しかしこれらのフードでは乾物ベースではなく供給されたときの栄養%をそのまま表示しているものがあるのです。これを乾物ベースにおきかえるには計算する必要があります。

④添加しないと得られない微量な栄養素もあります
炭水化物と脂肪、蛋白質のバランスが整っていない食事をすることは栄養の不均衡を招きます。手作り食の場合には不足しがちなミネラル類やビタミン類を必ずサプリメントで補うようにお願いしています。どうしても単一な材料で作っていくことになるので微量な調整が難しいからです。「これだけで栄養が足りる」とし、「添加物不使用」となると調整が難しいように思います。エキゾチック肉の中には栄養組成が明らかになっていないものもあるでしょう。人が食べるものだからこそ、家畜の肉は部位別でも調べられているのでわかりますが、私たちが食することがない肉を「牛」や「豚」「鶏」に準じて栄養計算しても大幅に異なってくると思います。ブティックフードの中には
AAFCO(米国飼料管理協会)の基準やWSAVA(世界小動物獣医協会)のガイドラインを満たすための検査を受けていないものもあります。「基準の審査を通っています」という証明がAAFCOのマークです。細かいことはわからなくても、このマークさえあれば消費者はこのフードが一定レベルのものをクリアしていると考えてよい安心のマークで、これがないと重要な栄養素が欠けている可能性もあります。

⑤食物アレルギーがありますか?
穀物のどれかに対する食事性アレルギー(食物過敏症)があると(例えば小麦や大麦など)、それを排除したフードにすると慢性的な皮膚炎や嘔吐、下痢などが改善する可能性はあります。牛肉やチキンに対するアレルギーがある場合も新奇蛋白質としてエキゾチックフードを使うことにも意味はあるかもしれません。けれどこれらのフードを選んで貰った犬猫の健康を損ねている犯人は小麦やチキンで間違いないのでしょうか。また、アトピー性皮膚炎の犬にそれは有効でしょうか。アレルギー関連の皮膚炎や胃腸炎を専門とする獣医師たちが提案している標準的な食事療法とはかけ離れています。

⑥消化性と粒の大きさに関連は?
それから消化性と粒の大きさには関連がありません。キブルがほどける(形になっているフードがぐちゃぐちゃになる)までの時間に関連する要素はたくさん有ります。腸から吸収されて血中に入れば、特定疾患でない限りは全身くまなく栄養素は巡ります。

⑦総合栄養食なら当たり前のこと
そして「これだけで栄養が事足りる」のは総合栄養食であれば当然のことです。

⑧フレッシュですか?
あるフードは受注生産ということで海外発注品でした。これでは「新鮮」にはなりません。どのフードもできたてを袋詰めすると思います。作られて間がないフードを選ぶなら国産フードになるでしょう。生産から輸送までのラインは工場見学などで質問するといいかもしれません。

さまざまな疑問点が湧いてきてしまいました。BEGフードはどうも過大評価されているようにしか思えません。

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<心配なことが発生しました>

これらフードに対して心配を向ける先生はいても、意見を述べてくれる先生は少数だったかもしれません。
2018年6月、タフツ大学の心臓病専門医であるリサ・フリーマン先生は、拡張型心筋症になりやすい定型的な品種でもないのに、ゴールデンレトリバーの拡張型心筋症が高率にみられることを発表しました。遺伝的に発症しやすいとされている犬種はドーベルマン、ボクサー、グレートデンです。(日本ではこれら大型の犬はあまり飼育されていません。)発症した犬たちがBEGフードを食べていることと関連があるのではないかということも述べていらっしゃいました。それらの食事をしている犬たちは総じて血中のタウリンの値が低く出ていました。それで
当初はタウリン欠乏が心筋症を発症させることを疑っていました。病気の犬たちには心筋症の治療のほか、食事の変更とタウリンの補給を行ないました。すると症状も改善し、うっ血性心不全も解決しました。すべての犬がタウリンを欠くわけではなかったそうですが、発症した多くの犬はBEGフードとの関連がありました。
「A broken heart:Risk in heart disease in boutique or grain free diets and exotic ingredients」
https://vetnutrition.tufts.edu/2018/06/a-broken-heart-risk-of-heart-disease-in-boutique-or-grain-free-diets-and-exotic-ingredients/

彼らの発表ののち、多くの獣医師たちも拡張型心筋症に罹患した犬の情報をFDAに提出しました。

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<拡張型心筋症というのは>
拡張型心筋症は心筋の拡張と収縮の不具合から心臓のポンプ機能が低下する病気です。最終的に全身に血液を送るという心臓の仕事に支障を来すことになり、心不全と死亡をもたらします。
拡張型心筋症の症状は次のようなことです。
・食欲不振
・歯肉が青白い
・心拍数が多い
・咳をする
・呼吸が苦しそう
・脱力~失神

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<調査は今も継続中です>
報告を受け、米国食品医薬品局(FDA)は食事と犬の心臓病との関連性について勧告するとともに調査を始めました。

また、米国獣医協会(JAVMA)も2018年12月には「犬の食事関連拡張型心筋症:私たちが知っていることは何か」として公表しています。
(Diet-associated dilated cardiomyopathy in dogs: what do we know?)
https://avmajournals.avma.org/doi/pdf/10.2460/javma.253.11.1390


さて、本年2019年6月、米国食品医薬品局(FDA)は2月に続いて3回目の調査結果を公式発表しました。
「特定の食事と犬の拡張型心筋症の潜在的な関連性に関するFDAの調査」です。
FDA Investigation into Potential Link between Certain Diets and Canine Dilated Cardiomyopathy | FDA
https://www.fda.gov/animal-veterinary/news-events/fda-investigation-potential-link-between-certain-diets-and-canine-dilated-cardiomyopathy

今回の報告は、2014年1月1日から本年4月末日まで、拡張型心筋症と診断された犬560頭と少数の猫(猫は肥大型心筋症の方が圧倒的に多いのでこの調査では少数です)に関する詳細なデータの公表です。ドッグフードのブランド名も公表されています。最も報告件数の多かったA社は日本でも購入可能なブランドでした。

今回の調査結果で、拡張型心筋症の原因はグレインフリーフードと確定したわけではありません。タウリンを補給することで改善された犬たちもいますが、タウリンの欠乏が明らかにされたわけではなく、タウリン以外のことが原因となっている可能性は十分考えられます。
FDAは今も調査中です。より多くの情報が明らかになるまで注意は継続していかなければいけません。

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<わたしたち獣医師がおすすめするブランド>

私たちが推薦するブランドは

ヒルズhttps://www.hills.co.jp/prescription-diet

ロイヤルカナンhttps://www.royalcanin.com/jp

ピュリナhttps://nestle.jp/brand/purina/vets/owner/

MSD https://www.msd-animal-health.jp/products/companion-animals/index.aspx

   https://www.msd-animal-health.jp/binaries/specific_cat_leaf_tcm48-213341.pdf

です。

日本のブランドでは

日清ペットフードhttps://jp-dietics.jp/

日本農産https://drs.nosan.co.jp/shop/default.aspx

です。

パッケージの甘い言葉を鵜呑みにするのではなくて、愛犬愛猫の栄養基準を満たした食事かどうかをしっかり見定め、本当に安全な食事をお買い求めいただきたいと思います。犬と猫の健康管理は食事から。そして食事由来の病気から愛犬愛猫を守ってあげられるのはフードを選ぶ飼い主さんしかいません。

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BEGダイエットを知っていますか

 ちょっと気になるおしゃれなペットフードの中には、誇大なメッセージで誤解を生じさせるような表示のフード、また困った問題が発生しているフードなどがあります。数年前から米国の獣医師たちが警鐘を鳴らしている「BEGダイエット」がそれです。日本にもその波が押し寄せてきています。今日は日頃不安に思っている食事のことをおはなしします。
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 BEG ダイエットというのは>

Boutique diet=ブティックダイエット

Exotic diet=エキゾティックダイエット

Grain free diet=グレインフリーダイエット

の頭文字をとって、BEGダイエットと呼ばれています。BEGダイエットと自家製の手作り食は最近、意識の高い飼育者を中心に人気を集めています。

ブティックダイエットというのは小規模なメーカーが作っているペットフードです。ブティックというとお洋服を想像しますね。小さいけれど好みのお洋服や雑貨などを扱っているおしゃれなお店です。製造されているものをペットフードに置き換えてみてください。なんとなくブティックダイエットの理解が進んだでしょうか。

エキゾティックダイエットは野生の動物を蛋白源としたフードです。エキゾティックな成分には、カンガルー、アヒル、バッファロー、シカなどの肉類が入ります。そのほか亜麻仁、クランベリーやりんごなどの果物が入ったものもあります。

グレインフリーダイエットは穀物を含まないフードのことです。グレインフリーフードではエンドウ豆、レンズ豆などの豆類やじゃがいもなどの芋類が穀類の代用とする成分になっていることが多いです。グルテンフリーという言葉を聞いたことがありますか。小麦に含まれるグルテンは蛋白質で、これが食物アレルギーになることがあります。グルテンのない食品は食物アレルギーがあるヒトの食品として出回っています。

これらBEGフードは主に食物アレルギーなどの特定疾患の健康管理のために作られているものが多いように見受けられますが、BEGフードを購入している飼い主さんたちは「健康」「ヘルシー」などを目的として「安心感」を求めて選んでいることが多いように思います。

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 <魅惑の言葉に満ちています>

これらのフードには共通した特徴があります。それは「動物を愛している人が喜ばないはずがない言葉」にあふれている点です。

・プレミアム
・ナチュラル
・ヘルシー
・オーガニック
・ヒューマングレード
・ダイエットでデトックス

これらはグリーンやオレンジ、赤のつやつやした新鮮素材の映像を豊かに想像させてくれます。「私たちが食べなくてはいけない食事もこういうものよ」と思わせるプラスイメージのワードです。そして

・上等な品質
・最高級の素材
・上質な素材
・良質の素材
・贅沢に
・十分すぎるほど

などのワードからは絶対的な質の良さと信頼を寄せるにふさわしいフードであることを強調しています。

・合成保存料無使用
・人工香料無使用
・着色料無使用
・添加物不使用
・酸化防止剤不使用

の表示のあとには、もちろん

・安全
・安心

と続きます。ここでたいていの動物思いの飼い主さんは「私が探し求めていたフードはまさにこれ。」と思い始めるでしょう。たしかにこれらの言葉にはそれだけの威力があります。さらにそこから

・からだのうつくしさ
・歯がきれい
・涙やけに配慮
・皮膚と被毛の健康
・被毛のつや、肌のうるおい
・毛並みがよい
・体臭が無い
・消化吸収が良い

と効能を発展させています。これで「日頃の悩みまで解消できてしまう理想のフード。」という位置づけに変わるでしょう。その食事だけで歯、皮膚、被毛、眼などの日常ケアは要らなくなるのです。「なんてすばらしい。」と思うでしょう。さらに続きます。

・できたて
・新鮮

これで購入への意思はかなり強まってるでしょう。でも、まだ続きます。

・発がん性リスクがない

これはペットフードに記されているものでははじめて見るかもしれません。「あれ?記載の無いフードは発がん性リスクがあることを隠しているのだろうか。今まで食べさせていたフードにはこんなことは無かった。」こうして従来のフードに不信感を抱かせてしまうわけです。

・小粒で消化に良い
・速く吸収されると栄養が身体全体にゆきわたる

というのもあります。粒の大きさと消化の関係を考えたことがあるでしょうか。小さいと消化がいい。聞いたことがないかもしれません。でもここまででこれらのフードの信頼は揺るぎないものになっていますからそのまま信じてしまうでしょう。「そうなんだ。知らなかった。小粒を選ぼう。」こうして小粒神話ができあがり、小粒信者が増えていきます。

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 <グレインフリーフード>

グレインフリー食を選ばれた理由で多いのは「猫は肉食で、自然の食事にはほとんど穀類(炭水化物)はなかった。猫の食事に穀類(炭水化物)は要らない。蛋白質が豊富にあれば猫本来の食事になる。」というものです。飼い主さんたち、企業の語り口をそのまま伝えてくださいます。ドッグフードについてもキャットフードを選ばれた飼い主さんと似たような感じです。そもそも猫は……が「犬がオオカミだった頃……」になります。



これらのフードには不安なところがあります。が、とても長くなってしまいましたので次回に続けます。

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シニアケア

 年齢を重ねた犬たちへ、飼い主さんができること、してもらいたいこと

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人で言うとこのくらいの年齢。
ならばどんなケアが必要になってくるのでしょうか。

<犬と人の年齢換算表><猫と人の年齢換算表>

犬がどのくらい年を重ねたかについては、以前「犬の1年は人の7年に相当する」などと大ざっぱに言っていた頃がありました。「7年ルール」と言われています。手入れの行き届いた中型犬は、飼い主のおよそ1/7の寿命であることから来ています。でもこれは犬の年齢を人に例えたときの正確な計算ではありません。今、当院で採用している犬の年齢の例えはカンザス州立大学老齢学専門医たちが発表した犬と人の年齢換算表に基づいています。これによると犬は体重により、年齢の換算が異なることがわかります。小さい犬は大きい犬よりも平均して間違いなく長生きです。猫はインターナショナルキャットケアによるものです。

この換算表は、犬も人と同じように老化がすすみ、どのライフステージでどんなケアをすれば良いかをわかりやすくしています。「今、私たちで言うとどのくらいの年齢?」と、ただ見比べて「ふ~ん」で終わらせてはいけません。「このくらいになったのならば、こんなことをしてあげないと」と、次なる道しるべに使ってください。

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食器を台に乗せて食事ができるようにすると
関節の痛んだシニア、ハイシニアの動物には楽ちんです。
介護用の食器は寝ているときに飼い主さんが食器を持っていくとき
与えやすいフォルムになっています。

<年齢に応じた栄養条件>

犬の食事の必要条件は加齢に伴って変化します。子犬が成犬になったらドッグフードの種類を変えるのと同じように、シニア犬、ハイシニア犬になるときにもライフステージにあったフードを選びます。

子犬は成長する身体に見合ったより多くのカロリーと脂肪を必要とします。そして、大人になると、炭水化物、脂肪、蛋白質の正しい組み合わせが必要で、シニアになると炭水化物は少々少なめでも要求量を満たすことができるようになります。活動性が低下するためです。

高齢の犬は関節と脳の健康に焦点を当てたダイエットフード(もう、ダイエットが痩せるための食事を意味する言葉だと信じている飼い主さんはいらっしゃらないと思いますが、念のため、言い換えておきます。総合栄養食のことをいいます)がもっともおすすめです。高齢だから栄養は少しでも良いので「ライトカロリー」を選んでいらっしゃる飼い主さんは、「アクティブではない成犬」と「高齢犬」を一緒にしています。ぜひ「シニア向け」フードに変更してあげてください。

またすでに病気を発症している場合は、それぞれの病気に合わせた療法食がおすすめです。

くれぐれも、食事を選ぶときに勝手な思い込みで選択することがないようにお願いします。数年前から米国で流行りだしたブティックフード、エキゾチックフード、グレインフリーフード(合わせてBEGダイエットと呼んでいます)ですが、あまりにも誤解が多く、ペットフードメーカーの上手なコマーシャルベースに惑わされてしまっている飼い主さんをお見受けします。遺伝的に発生しないはずの犬種で数多く発生している心筋症のことも調査段階です。どうぞ、本当に安心して与えられる良い商品かどうかを多方面から調べて、大事な愛犬に(愛猫に)与えるにふさわしいものをチョイスしてください。(このBEGダイエットについては後日もう少し詳しいお話しをしようと思っています。)

話が少し逸れました。

さて、犬は機能を維持するために脳を使う必要があります。知育玩具を使うとおやつ(フード)が飛び出してくるものを使うと脳の老化徴候を改善することも知られています。どのような食事を食べるかと同じように、どのようにして食べるのかも脳の活性化に役立ちます。積極的に新しいトレーニングを加えて脳へ活性化刺激を与えてください。学習したことを忘れないように繰り返し訓練することが大切です。(子犬の頃を思い出してください。)

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代表的なサプリメント4系統です。
関節サポート系、抗酸化系、腸内環境系、脳代謝サポート系。
どれも一部分になります。

<サプリメントがおすすめ>

ハイシニアになる前、まだシニア期の犬たちは脳もしっかりしているし、ちゃんと散歩にも出かけられます。私たちのことを考えてみてください。シニアの退職時期は年々高まってきています。ただ働く当人たちにお伺いすると「現役の頃ほどハードには働けない、短縮時間で働いている」とおっしゃっています。端から見ると「引退するのはもったいない」と思うくらいしっかりされておられますが、ご自身の体調は端からはわかりにくいものです。犬でも同じことが言えます。傍目にはわからないけれど、当人(犬)は不都合な感覚を感じているのだろうと想像してあげてください。そしてこういう感覚を快方に向けてくれるのがサプリメントです。

関節の健康をサポートするのにはグルコサミンやコンドロイチンなどのサプリメントがおすすめです。抗酸化成分を含むサプリメントは酸化(身体がさびてくること)による細胞のダメージを抑えてくれます。身体の各所すべてに有効で、病気の進行を遅くする効果があります。また脳もそうした組織の一つですからこれにより認知機能障害の予防になります。DHAEPAなどのオメガ3脂肪酸が有名ですが、ビタミンE、ビタミンC、ベータカロチン、カロチノイド、フラボノイド、セレンなどが抗酸化作用を持ちます。脳細胞の代謝を助ける物質としてLカルニチンやαリポ酸もあります。昼夜逆転や夜鳴き向けに知られているのは、脳のリラックス効果があるとされているテアニンやLトリプトファン、GABAです。これらは単体で、またミックスされた形でのサプリメントがあります。腸内環境を整え総合的に身体を健康にするシンバイオティクスもおすすめです。

サプリメントはすべての犬や猫に有効ということではありませんが、比較的どの個体にも有効であると感じています。しかし効果判定までは1か月から2か月くらい服用するくらいのこころのゆとりを持ってください。獣医療で使う西洋医学のお薬は「分」の単位で効いてくるものもありますが、たいていのサプリメントの効果判定は「月」単位(速いと「週」単位)の時間を必要とします。

年齢が高まり心臓病や腎臓病などの慢性疾患のステージが上がると、否応なく薬の種類を増やさざるを得ませんが、そうでないうちにサプリメントを併用すると薬を増やさなくてはならなくなる期間が延長されるかもしれません。また薬のお世話になっていない段階では、サプリメント投与がこれからの投薬の練習になるに違いありません。

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おすすめするマットレスです。
断面にご注目ください。

<1日の大半を寝て過ごすことになるのだから>

犬が老化してくるとそれなりの変化が現れます。その一つが「寝ている時間が増える」というものです。子犬の頃からクレートトレーニングをおすすめしていますが、犬が自分だけの寝る場所と確保できることは良いことです。クレートには快適な寝場所を確保してやりたいです。シニア用の整形外科専門医がおすすめする犬用ベッド(マットレス)は動けなくなって寝たきりになったときに購入を考えるものではなく、寝たきりになるまでの時間を延ばすために先行投資しておくものです。

当院でおすすめしているマットがあります。この断面を見ると、有名アスリートさんたちが快眠のために海外にも持ち出す某メーカーのマットレスと同じ構造をしています。高齢犬が尿を漏らしたときに洗いやすい構造と思われがちですが、実は睡眠時に身体がしっかり休める構造になっているのです。このような構造でつくられたマットレスは傷んだ関節に配慮し痛みを和らげ、睡眠の質を良くしますが、脳の老化スピードも弱め、健康寿命も延ばすことに貢献しています。

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段差があるところはステップの高さを調節したり
スロープにしたりしてください。
滑り止めのカーペットなども必要です。
明度を変えることもポイントになります。

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足元灯は夜間、電灯を消してもセンサーで反応して
点灯し、足元を照らしてくれます。
歩行補助具は家庭でも手作りができます。

<老化に配慮した家の工夫>

また、私たちが思う「バリアフリー設計の家」を犬に応用することも必要です。これまで階段を上り下りしていた犬にはステップの高さを低くすることやスロープを付けてなだらかな斜面にすることで関節への負担が減少します。(いよいよのときは、階段前にゲートを付けて、落下防止策をとってください。)

飼い主さんと「ベッドで一緒に寝ています」という声も聞かれますが、小型犬が関節に問題を抱えるようになると、人が腰掛ける高さにジャンプして昇るのがキツくなってきます。大型犬でさえ、よじ登るような感じです。寝室のベッドの足元にシニア犬専用の快適な寝場所を作り、まだ認知機能障害になっていない段階で、そこを寝場所として使うトレーニングを始めるべきだと思います。

また視力が弱まってきた犬は明るいところではうまく歩けても暗くなるとアイビジョンが低下します。部屋の中で、トイレに向かう道筋に沿って、色の異なるカーペットを敷いてやりましょう。床全体に敷くカーペットは滑り止めの役割をしていますが、道しるべになるように明度が大きく違うものを選ぶと効果的です。また、暗くなった部屋で動きに反応して明かりがともる足元灯を準備してください。

床面に直接置かれた食器から食事をとるより、少し高めの台に食器を乗せてそこから食べる方が関節に負担が少なくなります。これは和式の座卓で正座して食べるよりも、椅子のある食卓で食べる方が辛くないことは私たちが十分承知していますよね。

家具ではありませんが、散歩のときに首輪から胴輪に変えていただいたり、背中にハンドルの付いたハーネスを選んで貰うと歩行の補助ができます。また滑り止めのためにゴムのついた靴下や靴を履かせるのも有効です。

 

さて、明日は敬老の日。今年もたくさんのシニアわんこ、シニアにゃんこで待合室の壁にご長寿亀さんができあがりました。ご来院の際に「うちの子のカード」が見つかったら、スタッフまでご連絡ください。

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ペットメモリアルデー

 今日はWorld Pet Memorial Day です。忘れられない動物たちのことをしっかり思い出してあげましょう。

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<トラちゃんのこと>

私の忘れられない猫さんのひとり、トラちゃんのことをおはなしします。
トラはひとり暮らしのおじいちゃんに飼育されていた猫です。赤トラ白ぶちのとても体格の良い猫さんでした。今みたいに屋内飼育なんてことはなく、日中のほとんどを屋外で過ごす猫でした。
1年に2回か3回来院されていました。1回はワクチンです。そしてもう1回~2回は咬まれた傷のために。当時はまだ猫免疫不全ウィルスの猫も市内にあまりなく、怪我をして帰ってきてもウィルス性の病気を心配する必要はありませんでした。ばい菌が身体に入ってお熱が出さないようにする治療、傷を消毒したり、ときには膿のために腫れ上がったところを排膿させるといった、洗浄したり傷周りをきれいにしたりの抗菌療法で十分でした。2週間効果が持続する抗菌薬の注射もありませんでしたから、家で薬を投与してもらいました。今思うと、薬の匂いがぷんぷんするトラは元気で快復力もあったし、ちょっとの傷ではへこたれず食欲も旺盛でしたので、重症化することもなく、すぐに治ってくれていました。

おじいちゃんもお歳を召され、しばらくお顔を拝見しない年がつづいたある日、「前から調子が悪かったけど、おらも病院通いで、こいつを連れて来れんじゃった」といっていらっしゃいました。おじいちゃんも痩せてしまっていましたが、トラも痩せ以前に比べると一回りも二回りも小さく変化していました。検査すると、血糖値が高く、尿には糖のほかケトン体も検出され、身体は酸性化しているのがわかりました。「糖尿病」を未治療のままにしていると「糖尿病性ケトアシドーシス」という病状になります。猫にはとても辛い状態です。緊急の治療で血糖値を下げ、点滴で酸性に傾いた身体を元に戻し、一命は取り留めました。が、問題はそのあと。おじいちゃんではインスリン注射は難しいし、誰かお手伝いしてくれる同居の家族もいません。食事をコントロールするだけしかできませんでした。そんな細々した管理でも数年は悪化することなく経過でき、おじいちゃんが入院で留守にするときは、トラも病院で加療するなどしていましたが、標準的な治療には至りませんでした。おじいちゃんの連れはトラしかいなかったので、トラを病院の子として引き取って治療していくのはおじいちゃんからトラを引き離すことになってしまうのでできませんでした。いろいろ心残りのあるトラちゃんでした。

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<飼い主さんと伴侶動物>

飼い主さんが病気だと、どうしてか飼育されている動物にも異変が起こることがあります。飼い主さんの低迷している気を動物が吸収してくれるのでしょうか。長くこんな仕事をしているとそういうケースが多々あります。
入院中に病態が悪化したのでご自宅にお電話して面会に来て貰うことになったけれど、なかなかご家族がいらっしゃらないことがありました。この時、おばあちゃまも具合を悪くされて入院していたとかで、どうも病院を間違って大慌てでおばあちゃんのご面会に行かれていたのでした。おばあちゃまもわんこも、二人そろって元気になって退院できて、それからは「あのときは・・・」の笑い話になりました。でもこんな事例ばかりではありません。

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<みんなが元気なのが一番だけれど>

お一人で犬や猫を飼育されているとき、またほかのご家族がいそがしくてあまり動物のお世話に関わっていないようなとき、中心になって動物の飼育をしてくださるご家族さんにご病気があると動物の管理が大変なことがあります。飼い主さんが入院している間、犬猫のお薬を与えるのにお預かりすることがあります。動物の日常の一コマを見せてもらえるし、動物とも仲良しになれるし、闘病中のご家族さまには申し訳ないのですが、私たちは楽しく過ごさせてもらっています。安心してご静養いただければと思います。いざというとき誰かにSOSが出せるようになっているといいですね。
親戚の方が飼い主さんと連絡が取れなくなって、お家に行ったときに飼い主さんがお亡くなりになっていた事がありました。犬の薬袋から当院と連絡を取っていただけ、親戚の方にはわんこの現在の病気のことをお知らせすることができました。そして今後の犬のことを話し合ううちに、そのまま養子として迎え入れていただけることになりました。ありがたいことです。

「家で猫を飼っています」という車に貼るシールがあるそうです。万が一交通事故に遭ったときに、ご自宅に猫がいることを知らせてくれるものだそうです。みんな元気なのが一番だけど、まさかのときのヘルプ体勢があると動物には安心です。
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<悲しみを乗り越えて>

「ペット」から「伴侶動物」や「コンパニオンアニマル」といわれるようになって久しいです。動物たちはしっかり家族の一員としての立場を確立しました。それだけ身近で密な関係になってしまったから、動物が突然具合が悪くなったときや、病気が重篤だと知ったとき、そして速すぎる死が来るかもしれないことを知ったとき、私たちはうまく受け入れられません。どうしたら「治る」のか「元通りになる」のか奔放します。けれどそれを受け入れていくこともまた、愛する動物から課されています。「おどろきの日」が来ても動物と一緒に頑張れる、決してエゴにならない、動物目線で考えられるようにならなくてはい
けないと思います。そしていよいよ「お別れの日」が来ても悲しむだけの毎日を過ごすことなく、乗り越えることができたらいいと思います。

小さな家族が虹の橋へ向け旅立っていったばかりの方もいらっしゃると思います。お仕事をしていなかったら毎日泣いているでしょう。あれを見てもこれを見ても、至る所に一緒に暮らしてきた思い出があるのですから。わびしくて、虚しくて、寂しくて。けれどまぶたを閉じていてはもったいないです。目をしっかりと開けて見ていかないと、ほかにもある素晴らしい人生のシャッターチャンスを見逃してしまうかもしれません。残ったものを大事にしてみてはどうでしょうか。一緒に過ごしてきた彼らは飼い主さんが長く悲しんでいてくれることを望んではいないはずです。笑顔で思い出して、
元気で暮らしていることを報告することがいい供養になるような気がします。
待合室にはいくつかのスピリチュアルな本もご用意があります。貸し出しも可能です。辛い気持ちに答えが見いだせる一節を見つけられるかもしれません。

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もう一頭の新しい猫を家族に迎える

 新しい猫を家族に迎えるのはいろいろお支度が要るものですが、今の生活にとても満足している先居猫がいるところに新しい猫が来る場合は、それがちょっと複雑になります。既に家にいる猫と(人間の家族とも)うまく暮らしていくためには調整期間が必要です。性急に一緒にさせてしまって感染症をうつしてしまったり、仲良くなる機会を逃してしまったりするケースも見受けられます。猫同士が仲良く暮らすことは私たちにとってもストレスがないし、複数の猫がまったりした姿を見るのはとてもこころが穏やかになります。
新しい家族が増えるという変化にあまり影響を受けない猫もいますが、たいていの猫は変化を好みません。時間と忍耐だけでは、みんなにストレスがかかってしまいます。ふたりをうまく仲良しに仕立て上げるにはコツがあります。猫の行動学をもとに計画をたてて、新しい家族をスムーズに迎えられるようにしましょう。以下はそのためのヒント、アドバイスです。

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  1週間前:新しい猫の香りを紹介

猫は非常に「香りを重視」しています。導入プロセス全体を通して、「ニオイ」を意識していくことが大切です。実際に新しい猫を家に連れてくる前に、「新しい猫の香り」だけを家に持ち込みます。新猫が使っていた毛布、クッション、またはおもちゃが最適です。新しい猫が到着する12週間前(または可能になり次第)に家に持ち帰り、先住猫が匂いのするグッズとやり取りできるようにします。ちょっと面倒に思えるこのアプローチは、大きな変化の前に先住猫を楽にすることができます。

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  前日/当日:新しい猫用のエリアを作る

ゆっくりとした導入に合わせて、新しい猫が家にいる最初の週にくつろぐ部屋または小さなスペースを決めます。2匹の猫がお互いに声を聞き、匂いを嗅ぐことができれば良いのですが、最初の段階はお互いに見えない状態でOKです。自分占有のエリアができると、新しい猫は自分の領土のホームベースを持っているように感じることができます。また先住猫は、テリトリーを侵されたという屈辱感を感じることがありません。新入り猫が快適で、フード、水、トイレ(できれば2つ)、爪とぎ、居心地の良いくつろぎ場所、寝る場所(箱や屋根付き寝台など)を含むすべての必需品があることを確認してください。
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  2日後:香りとスペースを交換

新入り猫が家に来て1日か2日経ったら、それぞれの猫と別の猫の香りを交換します。2つの方法があります。1つは、それぞれの猫の頬にタオルを擦り付け、もう一方の猫にこのタオルを与えるやり方です。猫は暇のあるときに別の猫のフェロモンがついたアイテムを確認することができます。別の方法は、各猫が他の猫のエリアに入って様子を伺うようにすることです。まだ実際に相互に対話したり、お互いを見させたりはしません。新しい猫を別の部屋に置き、空になった新猫の部屋に先住猫を案内します。また反対に、新しい猫をまだ探検し切れていない家の残りのエリアに数時間探索させます。これは毎日繰り返すことができます。
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  5日めから:「お互いを見たときに良いことがある」を開始

5日後(各猫の許容度に応じて)、他の猫の香りと存在を一致させていきます。2頭を隔てるドアの前で、各ネコとおもちゃで遊んだり、おいしいおやつを与えたりします。ドアの近くで眠るための居心地の良い場所をセットアップするのも良い方法です。ドア近くで餌を与えることもできます。相手の猫が見えたら、遊んでもらえたり、食事をもらえたりなどの「良いことが起こる」を猫の記憶(良い記憶)に入れていきます。まだこれをするのには抵抗がある場合、ドアから数十センチ離れたところから始めて、日々移動し徐々に近くしていきます。
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  1週間後:猫がお互いに見えるようにする

ここまでのことが順調に進んでいれば、最終的に互いの猫と面会(見る、目視させるだけです)させることができます。とにかく、ここまでが最短で7日です。ゆっくりと行うことが重要です。半透明から透明のドア、ベビーゲート(またはペットゲート)を使用することをお勧めします(多くの場合、高いジャンプ能力を備えているため、子猫以外は飛び越えてしまうこともあります)。もし、一方または両方の猫が非常に攻撃的になっていると思われる場合は、短時間だけで済ませてください。遊んだり、餌を食べたりすることで互いの隔壁になっているドア近くに寄ってきていること、またドア近くで眠らせたりすることで、お互いに前向きな関係を築き始めることができています。
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   10日後:顔をつつき合わせて会わせる

すべてが順調に進んでいる場合は10日めあたりで、互いの猫を対面させるという最終段階に進みます。この段階では、彼らが走り回って仲良くなっていることまでを期待しないでください。彼らはお互いに威嚇しあったり、お互いを無視したり、片方に脅迫されてもう一方の猫が隠れたりすることもあると思います。初めは1日に数時間だけ面会させます。次に半日くらいに長くし、それから1日の大半、そして最後に一日中ずっとというようにゆっくりと進めます。初めのうちは一緒にさせるのは家族が見ているときだけにしてください。そしてしっかり様子を観察してください。
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  それから

時間が経つにつれて、新入り猫は現状を受け入れて家の中を走り回るようになります。ふたりは仲良くなっていても、ときには小さないざこざを起こすこともあります。家族が留守のときだけ意地悪になる猫もいます。フード、水、トイレ、寝具はずっと別々に保管し続けてください。それぞれが別の猫が近くにいても快適に感じるようになるまでには、数ヶ月(ときには1年)かかる場合もあります。けれど、猫が自分のスペースがあると感じていれば、何かあっても猫の緊張を和らげるのに役立ちます。猫の個性が完全に一致すると、新しい猫は良い友達になります。

テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

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