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猫の歯の吸収病巣

 118日は「いい歯の日」。犬の歯科ケアについてはお話ししていますが、猫の「歯」についてお話しすることがありませんでした。今日は猫に発生する歯の病気のことをお話しします。

 

<猫の口の中の病気>

猫の口の中の病気としては、「歯肉炎」が一番多いです。歯石と関連する歯肉炎が主です。それからウィルス感染と関連していそうな、または関連が見られない「口内炎」です。のどの奥の方と左右の頬の部分が真っ赤にただれてほんとに痛々しいやつです。その次あたりに「歯が折れた」とか「歯がない」「歯石」などの「歯」に限定されたことでの来院が多く、そのまた次あたりが「新生物」になるかと思います。新生物と言っているのは診察の段階ではまだ「腫瘍」か「歯肉の過形成」かどちらかわからないからです。

猫が口の中をそのまま見せてくれることはまれで、おうちの方もはっきりとわかっていない状況で診察に来られます。犬では「なんかくさい。口が臭い。」という来院理由のほかに「歯が汚い」を認識されていることが多いですが、猫の場合は口の中を確認されてこられることは少ないです。

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<こんな症状で来院されます>

「よだれが多い」

「食べにくそう」

「食べが悪くなった」

「やわらかいのはいいけどドライは食べない」

「ウェットフードを食べない。ドライを丸呑みする」

「口の中がおかしい」

「魚の骨でも刺さっているのか?」

「口のどこかが痛いみたい」

「水を飲んでびっくりしている」(これは痛みによるものです)

など。いずれにしても口の中に違和感を感じているようです。

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<最近多いかも。猫の歯の病気>

あらら、こまりましたね。と口を開けて見せてくれる猫さんが半分ちょっと多めくらいでしょうか。それでも一瞬のうちに判断しなくてはいけないくらいの速さで判断です。歯茎が赤い!歯肉が下がってる!(歯は歯肉に隠れて見えない)歯石がついてる!そして、「ごめん、大きく口を開けたら痛かったね。」となり、猫さんには嫌われる原因を作ってしまいました。ほとんどこの観察スピードでは「歯肉炎です」にしか診断がつきません。

猫にも歯石は付くし、それに伴う歯肉炎があって、これから生きていくだろうと思われる年数のことや現在の生活の質(食べにくい、食べるのに痛そうなど)のことを考ええると、「麻酔かけて一回きれいな状態に戻しましょう!」ということになります。ここで残りの年数を気にするのは、「麻酔までかけて得られる利益はどんなものなんだ?」という自問でもあります。(ですので、あまりに高齢になっていると、麻酔下での歯科ケアを勧めるのに悩みます。)

けれど麻酔をかけてしっかり口腔内を調べることができると、見えてくるものがあります。無麻酔の下では抵抗があってほんの一瞬しか見えなかったけれど、麻酔があればじっくり観察できますから。それに歯科器具で歯肉をツンツンしても猫が怒ってすっ飛びあがるなんてこともありません。で、発見するのが「歯の吸収病巣」(tooth resorption)です。そしてこの頃の猫の歯で、なんかこれが多いのです。

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<歯の吸収病巣?>

「歯の吸収病巣」です。これが診断名です。

昔はこんなわけのわからない名前じゃなくて「う蝕」(虫歯)と紹介していました。そのあと、これって「う蝕」ではないぞ。歯がそのまま溶けてるし。あの治療をしたのに進行しているし。ということで、「う蝕」は使わなくなりました。

そのあとは「ネックリージョン」(neck lesion)なんて言っていた時もあります。歯の頚部に病変が生じていたからこんな名前になったのかもしれませんが、日本名でいうことがなくて、そのまま「ネックリージョンです」と紹介していました。なんか不親切な病院です。すみません。

で、今は「吸収病巣」と呼ぶようになっていますけど、この先も変わるかもしれません。なんかしっくりしない名前だから。(正確には虫歯じゃないけど虫歯の方がわかりやすいかも。虫歯だって虫が食ったわけじゃないのに虫歯だよ?と思っているのは私だけかもしれませんけど。)

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<どんな病変なのか>

初期段階のものは、見た目まさしく「虫歯」様。歯の表面、エナメル質に穴が開いて凹みができています。人の虫がが臼歯の噛み合わせの部分であるのに対し、猫の臼歯はとがっていて穴は歯の側面にできています。歯にできる病巣ですから、穴と言ってもごく小さなものです。ただ、「正しくは虫歯と違います」と言っているのは、人の虫歯が酸によって表面が溶けてしまっているのに対し、猫の歯の吸収病巣では「破歯細胞」によって起こっていることです。

小さな穴の状態のものから、それが深くなって歯が折れてしまったもの、歯茎に埋まっている歯根が骨に変わってきているものなど、目に見える変化からX線検査で確認するものまであります。

 

<原因は何?>

原因は不明です。咬み方(歯にかかる力の入り具合)?、免疫学的な異常があるから?、栄養的なバランス異常?、歯周に発生した炎症から?などいろいろなことが考えられています。

 

<麻酔中どのような治療をするのか>

基本は抜歯。とはいえ、スケーリングで請け負ったお仕事。見つけ次第、何本でも抜きまくるのは気が引けます。抜かなきゃいけなそうなものは抜き、削り取ってギザギザ突起を無くす作業までにとどめるものもあります。抜いた後や、平らにした部分は表面を歯肉で覆って細い糸で縫い合わせておきます。

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<そのあとのケア>

すべて抜歯してしまうと完全治癒、ということになります。

でも全部の歯を抜いてしまっているわけではないので残る歯も同じようになってしまうかもしれない。かといって原因がはっきりわかっているわけではないので、何かをするにしても効果はわからない。

それでも、もしできるのであれば、歯磨きです。「歯の吸収病巣」ができている猫には歯石ができないという証明はないし、歯肉の炎症から来ているのか?とも考えられているとすれば、歯肉炎予防、歯磨きはやっておいても無駄にはなりません。どこまで猫さんが協力的になってくれるのかはまた別の問題ですが。

 

 

というところで今回のおはなしはおしまいです。

「歯が痛いの、やだぁ~。」は人も猫も共通です。

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猫と海産物。食べていい?食べちゃダメ?

 「猫に〇〇を食べさせてはいけない」

この〇〇に入る食品名は?

猫といえば、そうそう、あれあれ。でも、それって与えてもいいもの?いけないもの?

今日は猫が大好きな海産物の「食べても大丈夫」から「絶対だめだめ」のお話をします。というのも、「そっか、やらかしちゃったか」の猫さんを診させていただいたからです。

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<食べてもいい?いけない?>

 「猫にかつおぶし」は大好物を目の前に置いたらすぐに食べられてしまうことから生まれた「油断できない状況」とか「危険な状況」を現すことわざです。そのくらい昔から猫はかつおぶし好きで通っています。栄養学的にはリンやマグネシウムなどのミネラル分が豊富なため、摂取しすぎるとストルバイト尿石のリスクが高まり、また慢性腎臓病の猫にとってもリン排泄が滞るため好ましくありません。飽きてきたドライフードに「匂い付け」するために、かつおぶしの入っていたジッパーつき袋と少量のかつおぶしを利用するのはおすすめしていますが、毎度の食事に振りかけるのは量が過ぎます。

 「猫ににぼし」ということわざはありませんが、煮干しはかつおぶしに並んで、猫に食べさせているご家庭が多い食品です。骨ごと食べる煮干しはカルシウムが豊富で骨が丈夫になりそうだと、「食べさせると良い食品」のように思われている節があります。煮干しもかつおぶし同様、リンやマグネシウムが多いので下部尿路疾患のリスクが高まります。また出汁を取る前の煮干しは塩分も強いです。あまりおすすめではありません。かつおぶしと同じように、ドライフードの「匂い付け」に袋を利用するくらいでちょうど良いと思います。下部尿路疾患を繰り返し再発させていた△△ちゃんは、煮干しのおやつをやめてからは尿路疾患になることがなくなりました。

 「マグロの刺身、カツオのたたき」は食卓に上るちょっとリッチなおかずです。これを好物にしている猫も、日常的に与えているご家庭も多いです。うらやましいですね。タンパク質が豊富で生でも食べられる食材はグルメ猫の舌を喜ばせると思います。これらはほんのたまに、少量を(1回の量はお刺身一切れの半分くらい)与えるのはいいですよね。

 「かまぼこ・ちくわ・カニかまぼこ」は加工食品の中で猫に人気ナンバーワンの食品です。けれど加工の段階でいろいろな調味料が加わっているために、猫には塩分が高すぎることが心配されます。もし与えるのなら、たまに、ごく少量(1回量は1本の1/5くらいまで)にしておいてください。やみつきになって、カニカマ以外の食品を食べなくなってしまった偏食の猫ちゃんも過去に診させていただいたことがあります。ごほうびは少量で。

 「しらす」も塩分の強い加工品です。この味は覚えさせない方がいいですね。

 「のり・わかめ」も与えない方がよい食品です。のりせんべいの海苔部分を剥がして猫に与えると大喜びしますよね。ですが、どうしても海産物はミネラル豊富なので、下部尿路疾患と腎臓関連の病気に不安がおこります。気まぐれに与えることはあるかもしれませんが、連日与えることはやめてください。また与えたとしてもほんの少し(海苔巻きあられを剥がす程度)にしてください。

 「生のイカ・タコ・エビ・カニ・貝類」は「だめ。絶対にだめ。」の部類に入ります。これらの食品にふくまれる成分が身体に悪いこと(中毒を起すことがあります)や寄生虫の問題があるためです。昔、おばあちゃんは「猫が酔っ払うからだめだ」と言っていました。これらを与えると猫がよろよろしてしまうことをおばあちゃんは知っていました。明治生まれのおばあちゃん、すごいです。

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<ホタテはだめなの?>

 猫用のウェットフードには貝類であるホタテがよく使われています。ホタテにはタウリンが豊富に含まれています。猫の心筋症はタウリン不足が原因とわかってからキャットフードにはタウリンが添加されるようになっているくらいです。タンパク質も豊富、亜鉛も豊富、葉酸やシアノコバラミンなどのビタミンも豊かです。うま味成分であるアスパラギン酸やグルタミン酸があるので、ホタテを原料にしてフードを作ったら怖いものなしの猫用グルメフードができあがるわけです。

 こんな理想的なホタテですが、生のホタテは「だめ。絶対にだめ。」の部類に入ります。それは生のホタテにはチアミナーゼが多く含まれているからです。チアミナーゼはチアミンを分解する酵素です。

 

 チアミンについてもう少し詳しくお話ししていきます。

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<チアミンって何?>

 チアミンはビタミンB11910年、鈴木梅太郎博士が、当時「はやり病」という認識だった「脚気」(かっけ)の治療に米ぬかの中の成分が有効であることを発見し、「オリザニン」と命名したビタミンです。

 哺乳動物はチアミンを体内で合成することができません。食餌からの摂取が必須です。成猫の最小栄養所要量は125/100㎉とされていて、この量は犬よりも多くなっています。チアミンはほとんどの市販のキャットフードには十分含まれているため不足することはありません。(チアミンは化学的には不安定なので、フードに使われるのはチアミン塩酸塩などの合成されたチアミン成分です。)

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<チアミン不足とチアミナーゼ>

 一般的な食餌をしていればチアミン不足になることはまれです。あるとすると、

    食事の質が急に悪くなった。

    必要な摂取量を食べられていない。

    消化吸収能力が低下している。

    利尿薬などの投与により尿中排泄が増加している。。。

というような場合です。まれには

    炭水化物に偏った食事をしている。

ようなこともあるかもしれませんが、そもそも猫なのであまり考えられません。

   しかし、チアミン分解酵素のチアミナーゼを多く含む食品を食べてしまうと、チアミン欠乏を起すことになります。

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<チアミナーゼを多く含む食品>

 チアミナーゼは、ホタテなどの貝類のほか、不飽和脂肪酸を多く含む青魚、甲殻類にも多く含まれています。(猫は食べないだとろうと思いますが、ゼンマイやワラビなどのシダ類にも含まれています。)

 猫が大好きな魚介類や甲殻類を与える場合は生で与えないことが重要です。必ず加熱調理してから与えてください。チアミナーゼは酵素なので、熱を加えると失活するためチアミン欠乏にはなりません。もちろん、加熱してあるからと言って過剰な摂取はいけません。

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<チアミンのはたらき>

 チアミンは炭水化物代謝、脂質代謝、アミノ酸代謝に関わっています。からだの中の生化学的な反応(細胞が活動するために必要なエネルギー産生をするTCAサイクルというのがあります)に関与していて、身体に欠かすことができません。脳へのエネルギー供給源は唯一、ブドウ糖だけなので、糖代謝に必須なチアミンは脳機能の改善にも働きかけています。神経伝達物質であるアセチルコリンの合成にも関与していているので、知覚刺激の伝達を助ける作用もあります。

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<チアミンの必要量が高まるとき>

 動物はライフステージによりチアミンの要求量が高まります。成長期や繁殖期は動物の組織が増えていくため、大量のビタミンが必要です。この時期はビタミンだけでなく、ミネラルやタンパク質も必要になります。また、加齢に伴い、代謝や生理的な変化があるのでビタミン要求量は高まります。

 そのほか、長期に食欲不振が続くときも相対的に不足しがちなので、ビタミン給与したい時です。糖尿病や慢性腎臓病のような尿量が増える病気の時は水溶性ビタミンであるチアミンは尿中への排泄が増加するため、必要量を補ってやりたいときです。

 さまざまな食品にチアミンは強化されています。またサプリメントにも補充されています。

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<チアミン欠乏症>

 チアミン欠乏は、数日という短い時期で現れます。

 初期には食欲不振やよだれが多くなるなどの症状があります。もし、成長期であれば成長は悪くなります。

 その後チアミンが補充されず欠乏が継続すると、頭部(頸のところ)が強くお腹側に曲がり混む姿勢をとるようになります。短いけいれん発作を起すこともあります。しっかり立っていることが難しく、運動機能に問題を起します。

 さらに進行していくと、身体の動きを自分でコントロールすることができない麻痺の状態になります。そのまま昏睡状態になり、ついには死に至ることもあります。

 ヒトで認められた「脚気」(かっけ)は主に足におこる「多発性神経炎」です。猫では足は前と後ろにあります。四肢がふにゃらけて歩けない状態がこれに相当します。

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<治療は?>

 チアミナーゼを多く含む食品は即刻中止します。ビタミン剤の注射は速く効きます。通常は24時間以内には効果は現れてきます。ビタミン剤を内服することも可能ですが、お薬のにおいが特殊なためにいやがることが多いです。食欲が出てくれば、病後回復食(処方食です。栄養要求量を満たす食事であれば特にこの限りではありません。)で徐々にビタミン必要量に追いつくことができ、症状はゆっくりと改善されてきます。

 早期にチアミン欠乏に気がついて、症状が進まないうちに治療をはじめるのがいいのですが、最も良いのは、チアミン欠乏にしないことです。

 

 

 今日はねこが大好きな海産物について「食べていい」「食べちゃだめ」のお話をしました。

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熱中症になった時の対応

 もし熱中症になってしまったらどのようにしたらよいでしょうか。

熱中症がどのようなものなのか知らなければ、すでに熱中症になっているけれど対応ができないだろうと思います。まずは、熱中症の症状について知ってください。

 

<熱中症の症状>

軽いものから順に、こんな感じです。①だけだから大丈夫、ということはありません。そのまま②③へ進行していくこともあるし、突然⑦⑧が始まることもあります。怖いです。

    パンティング呼吸:ハァハァ呼吸のことです。小刻みな呼吸。口を開けて舌が見えます。さらに進むと舌をだらりとたらします。舌が口の横から出てくることもあります。安静にしているときの呼吸数は1分間に30回以内です。たいていは20回くらいです。(1分間に30回は心臓病のわんこで「連絡してね」とお願いするときの回数です。パンティング呼吸は回数を測定することに意味がありません。60回以上になっているはずなので、測定不能扱いです。)

    体が熱い:触ると皮膚の温度が高くなっています。わきの下やお腹、耳の内側など、被毛がなくて直接地肌に触れることができる部分の皮膚が熱くなっていることに気づけると思います。直腸で体温を測る場合、38.5℃前後が平熱です。

    よだれがいっぱい:そのままの呼吸が続くとよだれがいっぱい垂れてきます。糸を引いていることもあります。床面が水浸しになってくることさえあります。

    頻繁に休む:散歩中など、頻繁にしゃがみ込みます。少し動いてはすぐに立ち止まってへたり込んでしまいます。

    心拍数の増加:心臓のドキドキが速くなります。1分間に60回の心拍数くらいが普通です。

    白目が赤く充血:眼の白いところが赤くなって血管がやけに目立つのがわかります。乾いていると口の粘膜も赤く充血しています。

    おう吐や下痢:黒くてねばっこいうんちです。でれでれ~っと出る下痢です。息張るというよりも、そのまま出てきてしまう感じ。結構体調が悪くなってからの症状です。

    ぐったり・衰弱:起き上がれません。意識も薄らいできます。呼吸は努力呼吸に変わっているかもしれません。非常に危険な状態です。

    けいれん発作:無意識のまま、全身の筋肉がひきつった運動をします。けいれんです。このまま死んでしまうこともあります。

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パンティング呼吸を始めた段階で要注意。
すぐに冷えた部屋に移動させてください。

注意)熱中症は「体温調整機能がこわれてしまう病気」である一方、「水と電解質が不足してしまう病気」の側面を持っています。「激しい体温上昇」の陰で、「だるだるしている」という物静かな症状だけを出している場合があります。必ずしも屋外の炎天下に居た時に発症するだけではありません。屋内に居ても「隠れ熱中症」になっていることがあります。上記の症状だけで判断しないでください。 

<対処法>

    パンティング呼吸:このくらいなら冷えたところに移動させます。水を飲ませます。少し様子を見て呼吸が収まればそのまま静かにしておけば大丈夫かと思います。

    体が熱い:冷えた場所に移動させましょう。エアコンの温度設定が効く環境ならばは一番低く。冷やす部屋は締め切って、さらに冷房効率を上げるため、遮光カーテンなどあればカーテンで光を遮りましょう。扇風機も回転させます。冷たい水で濡らしたバスタオルを全身にかけます。首、わきの下、内またに、濡れたバスタオルの上から保冷剤や凍らせたペットボトルをあてがいます。もし、水を飲めるようであれば水を飲ませます。病院に行く支度をします。連絡を取ってください。この段階でしばらくしたら犬が安定するかもしれません。そこで冷やすのを中断したり、病院へ行くのを中止したりすると、しばらく経ってから熱のリバウンドが来ることがあります。熱中症は発熱性の疾患ですが、身体は水と電解質が欠乏した状態です。それを補うことができるのは動物病院での補液治療です。様子が戻ったからといえ、油断してはいけません。

    よだれがいっぱい:②に同じです。

    頻繁に休む:②に同じです。

    心拍数の増加:②に同じです。

    白目充血:②の状態で、(おそらく飲水ができないだろうと思います)、即病院に連絡を取り、急行してください。迷っていてはいけません。

    おう吐や下痢:そのほかの状態の積み重ねがないと、冷やそうと思わないかもしれません。⑥に同じです。危険信号点滅しています。ここでブレーキをかけないで病院へ急行してください。

    ぐったり:⑥に同じです。覚悟が必要です。離れた家族にも連絡を。

    けいれん発作:⑧に同じです。

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あかちゃんの絵ですが、わんこの冷やす位置も同じです。



注意)熱中症のときの応急手当として「冷水に浸す」方法がありますが、水から出すタイミングを図るのが難しいこと、濡れた身体で動物病院へ運搬するのも大変なことなどから、濡れたバスタオルで包み、身体の太い血管が体表面に近くを流れている部分である首、脇の下、内もものとこを保冷剤や氷などで冷やし、その状態のまま動物病院に運ぶ方法をおすすめしています。

それにしても「こうなってからどうしよう、こうしよう」と考えるより、やはり予防が大切です。犬だけではありません。ご家族のみな様もどうぞご自愛ください。

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お出かけのときの熱中症予防

 お出かけの時の熱中症対策についてお話しします。

 

<必ずしも一緒に遊びに行かなくてもいい>

最初に言っておきます。犬と一緒にバカンスを楽しまなくても、里帰りしなくても、こんな厳しい季節ですので、来月のお彼岸の時のお休みまで延長してもバチは当たりません。ペットホテルやペットシッターさんにお願いするという選択肢もあります。

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<行く場所を選ぼう>

もし遊びに行くのだったら涼しいところを候補地に選んでください。天気予報も調べましょう。今なら何度くらい?近づいて来たら週間予報をチェックです。雨がちで涼しくなるでしょうか。酷暑続きでしょうか。作戦変更もありです。まだ、間に合います。

 

<アウトドアライフに不向き?>

熱中症とは直接関係がないかもしれませんが、いわゆるキャンプとか犬も泊まれるコテージとか、いつもの状況と違うところになじめない犬がいます。車酔いの犬をドライブに誘うのもいけませんが、たいていのおうち大好きわんこは旅行が苦手です。

アウトドアライフには大きな音や人混みは付きものなので、音恐怖症があったり、人なれしていないと苦痛になると思います。怖がりさんは初めてのもの、初めてのことが苦手です。テントなども、家の庭で一度広げて、家族が入って見せるなどの予行演習が必要です。

「来い」のコマンドで帰ってくるようにしつけがされていないと、万が一リードが離れたときに苦労します。あらかじめの服従訓練を見直しておきましょう。

「慌てる」、「ストレスが重なる」、「体調不良になる」は、熱中症を引き起こしやすい誘因です。

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<健康状態の把握>

春の健康診断で気になっていたところは解決しているでしょうか。まさか1年以上チェックをしていないまま、ということはないでしょうか。いつも以上に細やかな観察をしておきましょう。

いつも服用しているお薬やサプリメントの残り分を数えて、不足分は早めに用意するようにします。アウトドアライフを楽しもうと思っている場合、ノミ・マダニ駆除薬も必要です。

行くまでに2週間以上あって、忘れてた!というようであれば、ワクチン接種を済ませてください。

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<事前準備>

準備は大切です。車中で必要なもの、行ってから必要なものをリストアップしてそろえてください。

愛犬の健康手帳的なもの(これまでの診察記録をつけてあれば、もしなくても検査結果表など)や保険証もその一つです。

保冷剤水を入れたペットボトルは今のうちに冷凍庫で場所を確保、凍らせておきましょう。

クレートのチェックとお掃除、クレート内から水分補給できる給水器のチェックもしておいてください。壊れてはいませんか。

ペットシーツマナーウェアは多めに支度します。汚れものを入れるゴミ袋も必要です。

・いざというときに愛犬をくるむバスタオルなども余分に支度しておきます。応急処置では、タオルを水に濡らすことがあります。濡れたものを入れる袋も必要になります。

・(熱中症予防に関係ないですし、忘れるはずはないと思いますが、食餌と食器首輪とリード、呼び戻しに使うおやつや時間つぶしに必要なお気に入りのおもちゃも選んでおいてください。)

・車で出かけるとき、愛犬は後部座席にシートまたはクレートで陣取ることになると思います。内エアコンの冷気はクレート内部まで届くかどうかを事前に調べておいてください。微妙な風向きを変更する必要があるかもしれません。

・意外なところですが、うちわも準備品に入れておいてください。たぶん、重宝すると思います。

・夜間ライトアップするのに都合の良いライトを支度しておいてください。暗闇で犬のことがわからなかった、ということがないようにするためです。

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<いざ出発です>

クーラーボックスは積み込んでくれたでしょうか。犬のクレート内にはタオルで巻いた保冷剤凍らせたペットボトルを入れてください。給水器にもを満たしてください。コンビニが近くにないというところでは、途中補充できそうなところで支度しておきます。冷やしタオルを入れておくのもいいです。

・犬のために支度しておいたもの(食器やリード、ペットシーツの類です)を忘れずに乗せてください。

・出発後は安全運転をお願いします。急ブレーキ、急ハンドルは犬にもストレスです。時々、クレート内の温度を確認し、意外と暑そうならうちわであおぎましょう。

こまめに休憩をとってください。犬も出して排泄などさせましょう。こうすると異変に気付きやすいです。

・日中は地面が熱いです。これはどこに行っても同じです。パットをやけどします。日が差すピークの時間帯は特に、日陰を選んで、日照りのところを歩かせないようにおねがいします。

・サービスエリア、パーキングエリアでも日陰があるところを選んでください。たいていのドッグランは日当たりが良好です。いつもそこで遊んでいると犬が習慣になっていて入りたがるかもしれませんが、パスした方がいいと思います。

・クレート内の給水器からは水を飲まなくても、屋外で水食器からならば水を飲めるかもしれません。トライしてください。

・くれぐれも、ここで、犬を、車内に、置き去りにして、家族だけで、出かけないように!「だって、ソフトクリームを買ってくるだけだよ?」それでも、だめです。誰かが車内に残っていて、エンジンはつけたままでお願いします。日当たりの良い場所に駐車していると、エアコンがついたままになっていても効きが悪いです。走行中とは条件が変わるようです。ご注意ください。

・とにかく、安全第一、犬を中心に考えて行動していただくと、家人には無理のないスケジュールになると思います。

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<ホテルまたは施設で>

翌日のため、保冷剤や水入りのペットボトルの再冷凍をお願いしてください。

遊ばせすぎない、はしゃがせすぎない、静かに休ませてください。ぐっすり眠ることは体調管理でとても大切です。

 
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<熱中症対策とはちがうこと、いくつか>

次のことは熱中症予防とは違いますが、総合的に犬の安全について思いつくことを書いておきます。

 

<川に行く?湖?>

犬は思わぬことをしてくれます。リードが長くなっていたり、知らないうちにほどけていたりすると川に飛び込んでいることがあります。慣れている犬はきっと泳ぐのが好きなのだろうと思います。もし水流が思った以上に速いとか、いつも行くところより水量があるという時、犬は溺れることがあります。泳ぐのが好きな犬なら余計に、犬用のライフジャケットを着せておいてください。まさか、ということも起こります。

 

<細菌感染の予防>

川や湖、雨水、石清水も含めて、大腸菌やサルモネラ、レプトスピラのことを考えると、犬が飲みそうだったら止めてください。家から用意してきた安全な水を飲ませてください。

 

<BBQする?>

やけどに注意です。近づけすぎないようにしてください。夢中になってしまうと犬のことを忘れがちですが、その間はひとりで遊べるものをうまく利用します。また食べてはいけない食べ物にも注意です。食べ残しにも注意です。食べられないもの、たとえば串やアルミホイルなどにも注意です。そして食べ残しをあさられないように、ごみはしっかり処分してください。

 

<サンプロテクション>

日当たりに出ている時間にもよりますが、皮膚が薄い犬、短毛の犬ではUVケアのため、ペット用サンスクリーン(日焼け止めクリーム)を塗ってもらうといいと思います。無香料タイプを選んでください。のちに発生する可能性のある皮膚がんのリスク軽減のためです。


それにしても、暑い日のことですから、犬の健康にも、ご家族みなさんの健康にも気を配り、無理のないように、お過ごしください。

 

 

 

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日常の熱中症予防

 連日の厳しい暑さです。お外の高齢わんこさん、「ハァハァ頑張りましたけど、もうどうにもなりません!」と、とうとう熱中症で運び込まれることになりました。おうちわんこも「だるいし、食べたくないし、なんだか熱っぽい!」ので来院されます。「かくれ熱中症」の症状です。

熱中症は予防が大事。

あまりひどい暑さなので、来週アップの予定でしたが、1週早めて「日常生活の中での熱中症予防」についてお話しします。それからお盆休みの近づく来週は「おでかけ中の熱中症予防」について、そして再来週は「もし熱中症になったときの対処法」についてお話しすることにします。

 

<日常生活での熱中症予防>

とにかく、予防が大切です。以下、予防方法について。

 

<1、  熱中症リスクが高い犬>

ハイリスクメンバーは、短頭種(パグやフレブル、ボストンテリアなど)のわんこ、高齢わんこ、肥満わんこ、心臓病や呼吸器疾患、糖尿病などの病気をもつわんこたちです。この子たちは、お外飼育をしてはいけません。基本、24時間エアコンを効かせた屋内に置くべきわんこです。暑い時期のお散歩もサボって構いません。「散歩って行かなくてもいいものなの?」「絶対に行かなくちゃいけないもんだと思ってた!」という方、命を落とすことに勝るお散歩の利点は何一つ見つかりません。何があっても家で留守番をさせましょう。

それから熱を吸収しやすい黒色や濃い茶色などの被毛を持つ犬は、白色の犬に比べ暑さを体毛の中に溜め込みやすいので、彼らは暑さに弱い犬として仲間入りさせてやりたいです。

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<2、  ハイリスクじゃなくても>

7月の連休明けから、猛暑日更新、熱帯夜更新、観測史上最高の気温など毎日耳にします。大概の年ならば屋外犬の飼育では「日陰に」とか「風通しを良く」など穏やかなことを言っていましたけれど、今年の夏は一言でいうと「酷暑」。常は外で夏の猛暑こえを頑張ってもらっていたわんこですが、気安くエアコンの屋内に誘ってやってください。何もギンギンに冷やす必要はないです。冷えたリビングのドアをちょろっと開け放ち、廊下あたりに扇風機を置き、冷風が犬のいる玄関先まで届くようにしてください。これで幸せに安眠できます。睡眠不足は病気のもとです。熱中症だけでなく、いろいろな病気予防になります。

また、高齢わんこが屋内に居て、エアコンを我慢させる必要など毛頭ありません。「エアコンは午後から」なんて、だれが決めたのでしょう。決めるのは習慣ではありません。外気温でもありません。わんこの体調。これだけです。調子が悪くなってからでは遅すぎます。今です。

エアコンも知らないうちにタイマーになっていた!故障しちゃった!停電になった!があります。油断しないでください。

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<3、  それでも外が好き>

どうしても屋内に入れることができないとき、日陰、風通しを考えた場所に移動させるほか、ミスト装置を設置してもらうと少し温度が変わるかもしれません。あとは、保冷剤や水を入れたペットボトルを凍らせたものなどをタオルでくるんで体の近くに寄せると体温上昇を防ぐことができます。でも、ほんの少しのこと。ほぼ気休め程度です。こんなにも暑いのですから。

一家の誰かが「犬なんか外で飼うもんだろう」と言っていても、説得してから準備するのでは遅すぎます。説得と同時進行で犬を屋内に入れられるよう、どこに置こうか算段しておき、その場の片付けも着々と進めておいてください。OKが出たら即、実行です。

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<4、  屋外タイム>

地面に素足で触れてみると、真夏の砂浜、海水浴の日の記憶が呼び戻されます。まともに歩けませんでした。そのくらい地面が熱くなっています。犬は靴を履いていません。また、地面からの距離が近いので照り返しの暑さをひしひし感じるはずです。屋外に出るのに「犬が裸足で歩けるくらいの地面の温度になるとき」を思うと、自然と「早朝」と「日暮れ後」という選択肢になります。そしてできるだけ日陰を歩くようにするのが愛情です。

暑くなると散歩する人間のほうがついつい早歩きになりますが、小型犬は人の歩く速さについていくには、早歩きというより駆け足の一歩手前くらいになっています。私たちの感覚からするとマラソンに近いかもしれません。自然と交差点ごとにしゃがみ込んでしまうことになります。すでに疲れています。サインを出しています。犬のスピードに合わせ、途中で休憩を入れながら散歩してください。そして帰宅したらすぐに冷所で休憩です!

クールバンダナとか、ポケット付きのハーネスが売られています。お散歩のときに小さな保冷剤を包み込んで首に巻くことができます。大々的な研究がされているわけではないのでエビデンスはないですが、おそらく何もつけないで歩くよりは涼しいだろうと思います。

途中休憩を考えているときは携帯用の水食器とペットボトルの水が必須です。

それから近くをくるっと回ってくるだけの散歩でも、携帯電話やスマホは持って出かけてください。万が一の時、家族と連絡を取り合って車で迎えに来てもらったり、動物病院に連絡してすぐに駆け付けることができます。

繰り返しますが、連れ出して日差しにあてない方がベターという場合があります。散歩は命懸けで行くものではありません。

 

<5、  トリミング>

「全身バリカンがけしたら涼しくなるよね?」という冷却目的のトリミングですが、実は間違いです。カットには冷却効果は期待できません。被毛は日焼けから体を守る作用もあるので、短くすると皮膚疾患を薬浴するのに都合がよいですが、涼しくするのが目的だとするとおすすめではありません。被毛が二層構造になっているわんこの場合であれば、アンダーコートをしっかりグルーミングして取り除くことの方が重要です。毎日のグルーミングが大切なのです。

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<6、  飲水>

「のどが渇いてからでは遅すぎる」というのは人の熱中症対策ですが、犬も同じです。常に少しずつでも水分補給ができていることが大切です。ガブガブ飲んでいるのはすでに水分喪失が結構ある印です。がぶ飲みは消化液を薄めてしまうし、胃の働きを弱めてしまいます。おう吐や下痢にもなりかねません。「いっぱいのんでいるから大丈夫」は「すでにいっぱい飲まなきゃならない状態まで加熱している」というとらえ方をしてください。正しい認識が犬を救います。

おかしければ冷所で安静です。屋内です。エアコンです。扇風機です。

 

<7、  健康診断・検診>

「歳をとってきたのは知っているけど、まさかこんなに悪くなっていたとは」はがっかりする認識です。「大丈夫?乗り切れる?」を心配してください。「事前に知っていれば気を付けることもできたかもしれない」のなら、やっぱりあらかじめ体調チェックをしておくのが良さそうです。それにしても「元気そうだから年齢による変化を侮っていた」というのが一番多いです。いたわってあげましょう。





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ジャンル : ペット

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