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糖尿病性ケトアシドーシス

 糖尿病性ケトアシドーシスについておはなしします。

 

糖尿病の猫が「すごく具合が悪そう!」なとき、糖尿病性ケトアシドーシスになっていることがあります。犬より猫の方がケトアシドーシスを発生することが多いように思います。ケトアシドーシスは(ときにケトージスの状態だけということもあるかもしれませんが)油断はできません。とにかく、これは内科的エマージェンシー事態で、この病態をしっかり管理して身体を復活させないと帰らぬ猫になってしまいます。

 ケトアシ3
だるだるしていて、しんどそうです。
横たわったまま寝ています。

<症状は?>

すでに糖尿病だと診断されていると、日々健康を観察していただいているので、発見が早いかもしれません。しかし、中には糖尿病だということに気づかず、調子が悪くなって来院されたその日に「糖尿病」に「糖尿病性ケトアシドーシス」を併発していると知らされたというケースもあります。糖尿病は「多飲多尿」ではありますが、「多食」にもなっているため、「食事をもりもり食べて、すごく元気」であると勘違いされてしまうことも多々あります。

そんな「大食漢だねぇ~」「まるまる肥えてるね~」「病気知らずのからだだね~」などとまわりから評されていた猫が、ある日突然

  「食事を食べない」

  「水も飲まない」

  「元気がない」。

それに

  「寝てばかりいる」し

  「嘔吐する」。

なにせ

  「動かない」

というか、

  「横たわったまま」

で、

  「呼んでも何しても反応が少ない」、

  「かろうじてしっぽをぱたぱた動かすくらい」。

とにかく

  「死んじゃいそう」。

といった思いもよらない状態になります。

ほんとに急に、です。

IMGP9774.jpg
簡易血糖チェックはベッドサイドで重宝します。
正確な値よりも少し低めに出ます。
 

<すぐに糖尿病性ケトアシドーシスだと分かるの?>

治療をしている糖尿病の猫が治療経過中にこのような症状になると、わたしたちはすぐにピーン!と来ます。いつものように血液検査と尿検査を実施すると、特徴的な異常値が出るので分かります。

治療していない猫がこのような状態になって連れてこられたときは、予備的な情報が無いのですぐに予想はつきません。それでも身体の調子を調べるために最低限の基本的な検査を実施させていただきますから、同じように血液検査や尿検査を行うので、結果的には診断に結びつくことになります。

身体検査では「だらっと寝ている」「意識が遠い」ことに加え「脱水」がみられるのが普通です。そのようなわけで、

    臨床的な状態がすこぶる悪いこと

    血液検査で高血糖だと分かること

    尿検査でケトン体陽性だと分かること

    血液の電解質が甚だしく異常値に出ること

などから、診断にたどり着きます。

ケトアシ1
基本の点滴液は生理食塩液ですが、
電解質の補正のためにいくつかの薬を計算する必要が出てきます。
mmEqという単位です。
高校の物理の問題は間違えても、
これを間違えるわけにはいきません。
命がかかっています。

 <血液検査のこと>

採取した血液を高速で回転させると、重たいものが下に沈殿し、軽いものは上に、と2層の構造に分離することができます。下に沈んだ重たいものは血液内の細胞、すなわち血球です。赤血球が大半を占めるので赤黒く見えます。上に来るのは血液の液体成分で、血漿(けっしょう)とか血清(けっせい)とか言います。この液体成分を用いて生化学検査や電解質検査を実施します。

健康な猫では、上澄みは無色透明ですが、糖尿病性ケトアシドーシスでは多くの場合、黄ばんで濁っていて(固まってはいませんが)卵プリンのような色合いに見えるのが特徴的です。黄ばみは黄疸があることを、濁りは脂肪血症があることを意味します。たいていは総ビリルビン値(TBil)と中性脂肪(トリグリセリド:TG)が上昇しています。

ケトアシ2
点滴に色がつくと、強力な薬に早変わりして
よく効く気がするのは気のせいでしょうか。

 

<電解質の異常が死を招く>

ケトアシドーシスでは電解質(ナトリウムやカリウム、カルシウムやリン、クロール)のどれもが低下しています。低カリウム血症や低リン血症は生命維持にとって緊急事態です。

カリウムは筋肉の働きに関係していて、不足すると「脱力」や「けいれん」をおこします。心臓も心筋という筋肉で動いています。消化管もぜん動運動を起こしているのは筋肉です。不足すると「心臓は元気に動けません」し、「気持ちが悪く」なり「嘔吐」します。また「便秘」になったりもします。さらに悪化すると、足の筋肉がだらけ「身体が麻痺」したり、呼吸筋麻痺から「呼吸不全」になるとか、腸が動かず「腸閉塞」になるとか、いろいろ怖い状態が出てきます。

また、低リン血症があると、赤血球が壊され「溶血性貧血」や「黄疸」を進めてしまいます。

糖尿病性ケトアシドーシスはまさに死に直面している事態です。

 IMGP9773.jpg
安定したら猫ちゃん専用のインスリンの使用開始です。
とても細い針です。

<治療にはとても神経を使います>

まずは血管内に水分や電解質を補給するための点滴をつなげます。基本の生理食塩液に不足している電解質を加えます。点滴のスピードもはじめは速めに滴下します。インスリンも別のルートから少しずつ静脈内に入るようにします。数時間ごとに変化する体の様子をチェックし、血液検査や尿検査も行います。その都度、加える補正液を計算し直し、点滴のスピードなども細かく調整します。このような集中した治療は、低かった電解質が上昇し、尿中のケトン体が消え、血糖値も目標まで下がってくるときまで続けます。たいていはまるまる2日くらい経過した後です。「今夜はまとまって寝ても大丈夫かな」と思えるようになるのは、たいがい3日目の夜くらいです。その頃になると、猫は自分で水を飲んだり、少し食事をとったりできるようになっていますから、点滴のスピードもゆっくりで大丈夫になるし、補正のための薬も不要になるし、インスリンも普通の皮下注射に変わります。

点滴を卒業できる頃にはしっかり食事ができているわけですが、たいていは溶血のあとの貧血が残るため、これを元に戻すまでもう一踏ん張り頑張ろうね、となります。

 IMGP9771.jpg
太郎さん、しっかり首が持ち上げられるようになりました。

<糖尿病の合併症です>

ケトアシドーシスは糖尿病の一時的な状態悪化です。入院治療で危機的な状況を抜け出せても、糖尿病が治ったわけではありません。このあとも継続してインスリン治療が必要です。長い道のりになるわけですが、毎日の観察も定期的な検診のための通院もたいへん重要です。

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温度が入って暖かい診察台だとごろんと寝ころび、
のどをごろごろ鳴らします。
後ろ足もピーン。

<低血糖が怖い?>

規則正しく食事をしない、注射を打つ前に食べていないとインスリンを注射するのが怖い、というお話を聞きました。「低血糖の発作は死んでしまうけれど、高血糖状態は死ぬようなことがないから」と、ともすればインスリン注射を怖がり、インスリンの分量を半分にしたり、またときに注射をお休みしてしまうようです。

猫はだらだらと食べて寝て、遊んで、そしてまた食べて、寝てという自由な生活を送る動物で、規則的に食事を食べることはありません。けれど、だらだら食べるということは急激な血糖値の上昇はないわけです。元気で目標にしている分量を食べているのであれば、時間になったときにインスリン注射をしても大丈夫です。12時間ごとの注射もできれば理想ですけれど、プラスマイナス1~2時間のことであれば、さほど神経を使わなくても危険な事態にはなりません。

高血糖が続き、水不足から脱水が起こり、猫に発生しているストレスを知らないでいて糖尿病性ケトアシドーシスを発生させてしまうのは確実に死に通じる事態です。

日常の糖尿病猫の治療で心配なことがあったら、ご自身の判断で注射を中止するのではなく、ご相談ください。

 ケトアシ4
入院室、マイルームでは身体を伸ばして、
もっとくつろいでいます。
太郎さん、元気になりました。ヨカッタヨカッタ。

今日は猫の糖尿病に併発する「糖尿病性ケトアシドーシス」についてお話ししました。

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猫の糖尿病・2

 今日は猫の糖尿病についてのおはなし。

11月は糖尿病について知ってもらう月、とくに14日から20日は糖尿病週間です。

 

<猫の糖尿病>

糖尿病ではインスリンが足りなくなります。そのため高血糖の状態が続いて、それによって尿から糖が排泄されます。糖と一緒に水も出るので身体は乾き、水を欲します。体内は栄養素の代謝異常からさまざまな症状が出ます。

インスリンは膵臓の中にある膵島(ランゲルハンス島)で作られます。膵臓は腺組織が大半で(95%です)、ここで消化酵素が作られて、十二指腸に消化酵素を出しています。そのほかの部分が内分泌機能の(インスリンなどのホルモンをつくる)部分になります。

 IMGP9699.jpg
猫専用のインスリンできました。

<二つのタイプ>

猫は膵炎のために膵臓を痛めることが多く、消化酵素に関わる部分だけでなく、内分泌に関わる場所にもトラブルがおこります。膵炎に併発した糖尿病はわりと発生しやすいです。それから重症化しているのもこちらのタイプです。インスリン注射をしていても効きが悪いとか、調子いいなと思ってるとまた悪くなったりすることもあります。

肥満の猫で、食べるのにやせてきて、水をたくさん飲み、尿も多い、というのは膵炎に関係なく発生した糖尿病かもしれません。血液検査や尿検査でもグルコースが高いこと以外は極めて普通。ほかに病気を持たないシンプルタイプがこちらです。

 IMGP9698.jpg
オーナーさま向けの冊子があります。

<飲み薬で治せますか>

人の糖尿病の罹患率は今、11人に1人の割合で、糖尿病の患者さんは増加傾向にあるのだそうです。人では摂取エネルギー過多から来る糖尿病は「2型糖尿病」に分類され、このタイプはぜんぶの糖尿病患者さんの90%に相当するのだそうです。で、「猫が糖尿病」と聞くと「自分(または家族)と同じだよ~」という反応をしてくださる患者さんがいらっしゃいます。猫の糖尿病も膵炎の関与がないものは2型に相当しますから、病名だけでなく、分類型も同じになりますね。人の2型はインスリン非依存型のため、食事管理や運動療法で治療され、はじめからインスリン注射を行うのではないと伺いました。

さて、人での周知度の高い病気の場合、確定診断がつくと、ご理解が早いです。でも治療法も同じだと思われて「食事療法でいいですか」「飲み薬でお願いします」「インスリン注射はしたくないです」というご希望が出されます。猫の糖尿病は、膵炎に併発したやっかいなタイプでなくても、食事や運動(猫で運動療法は難しいのはご理解いただけるようです)、そして内服薬ではコントロールできません。インスリン注射が絶対必要です。

これは糖尿病だと判明したときに残っている膵島細胞の数や機能に人と猫とでは違いがあるからで猫は残りの細胞がわずかすぎて仕事をしていません。

猫では今インスリン注射をしていると、時間経過とともに残る細胞が再び機能しはじめて注射不要になる日が来るかもしれません。がんばってください。

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注射の方法など丁寧に解説されています。

<糖尿病のときの検査>

糖尿病の診断に必要な検査は血中のグルコース(GLU)と尿検査(GLUの検出)だけですが、猫はストレスに反応して血糖値がびゅん!っと上昇し、ある一定の濃度を超えるとたくさんのブドウ糖を腎臓が処理しきれなくて再吸収されないまま尿に排泄(尿糖が出る)されるので、複数回この2つが持続していることを確認して診断します。いつも緊張しストレスを抱えているときに検査をすると高血糖で尿糖陽性になります。確実にするためには「糖タンパク」を調べます。

それから、身体の状態を知るためにそのほかの検査も必須です。血球検査や肝臓や腎臓、膵臓、血中の脂肪や電解質などを確認する検査です。膵炎があるときや肝臓に問題があるときは肝酵素(ALTAST)が上昇します。高脂血症(TG上昇)がみられることもあります。食事がうまくできず脱水などを起こしているときには高窒素血症(BUNCRE高値)があります。電解質(NaKCl)に異常値がみられるのはケトアシドーシスを予感させます。

これらの検査は定期のフォローアップ検診で来院していただいた折にも実施します。病気が安定しているかどうかによって、検診の頻度や細かな検査を実施する頻度も変わります。

 IMGP9700.jpg
薬の取り扱いについても解説しています。

<糖たんぱくというのは?>

検査に用いられる糖タンパクには「糖化ヘモグロビン」(HbA1c)と「糖化アルブミン」(GA)があります。以前は「フルクトサミン」というのもありました。

糖に結合するタンパク質に寿命があり、ヘモグロビンは半減期がおよそ120日、アルブミンはおよそ20日です。この違いから、糖化ヘモグロビンは最近1ヶ月くらいの、糖化アルブミンは最近23週間の高血糖状態を知ることができます。高血糖になっている時間帯が長いと高くなります。

現在の糖尿病マーカーの主流になっている2つの検査項目のうち、猫で主に利用されるのは糖化アルブミン(グリコアルブミン:GA)です。全部のアルブミンのうち、糖と結合したアルブミンが占める割合を示しています。糖化アルブミンの猫の基準値は6.716.1%ですが、糖尿病では30%まで行かないことを目指しています。院外の検査ですので、当日結果をお知らせすることはできません。

糖とタンパクが結合したものが糖化たんぱくです。お料理の得意な方だと、お肉のタンパクに砂糖やみりんなどを表面で結合させ、おいしそうな焼き色をつける「メイラード反応」をご存じかと思います。それから病気で入院しているときに、上下の部屋に分かれた大きな点滴バッグを開通させて点滴を受けたことがある方がいらっしゃるかもしれません。糖とアミノ酸が別々の袋に入っています。はじめから合わさっていると褐色になってしまい、効果が得られません。それで別々の袋に入れ、点滴を開始するときに合わせます。こうした色のついたのが糖化たんぱくです。余談でした。

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困ったときの対処方法も分かりますよ。

<合併症は白内障?>

猫は犬ほど白内障を発生させることは無いようです。むしろ神経症のために後ろの足を引きずりながら歩くようなことがおこります。

人のように糖尿病性腎症をおこすことはないようですが、糖尿病を発生している猫は比較的高齢であることが多く、いわゆる高齢猫の慢性腎臓病を発症することはあります。長期の観察の中で、ある程度の高血糖があると「多飲多尿」の状態に慣れすぎていて、腎臓が悪くなっていることに気づかれにくいことがあります。定期検診で腎臓の検査を含めたいのはこのような理由からでもあります。

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さらに毎日の健康日誌もできています。

 IMGP9704.jpg
健康観察日誌の中はこんなかんじです。

前回はうまくコントロールができない猫の糖尿病のことをお話ししましたけれど、

http://heartah.blog34.fc2.com/blog-entry-823.html 

7月にお話ししたように、

http://heartah.blog34.fc2.com/blog-entry-923.html 

猫のための専用のインスリンが開発されて、たいへん具合が良いです。


こちらのインスリンは結晶になっています。白く混濁しています。インスリン同士をつなぎ合わせている鎖が時間で少しずつほぐれ、バラバラになったときに仕事をする仕組みです。だから作用時間が長持ちなのです。薬を乱暴に扱うと、注射をする前に瓶の中でつなぎ合わせている鎖が切れてしまうことになります。注射前に勢いよくシャカシャカ振ったりしないように、やさしく転倒混和してください。また、小さいお薬なのでつい冷蔵庫のドアポケットに入れてしまいがちですが、ここに入れると冷蔵庫の開け閉めのたびに薬が揺すられてしまいます。保存するときは冷蔵室の方に平らのままで、頻繁に出し入れする物の前には置かないようにお願いします。

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針付き注射筒、専用のシリンジがあります。
目盛りが細かくなっているので微量のインスリンを吸いやすいです。
また正確に計りとれます。
医療廃棄物として処分しやすい専用の廃棄物容器も
付いています。
手前がインスリンです。


高齢猫の体重減少のお話

http://heartah.blog34.fc2.com/blog-category-104.html 

でもお伝えしましたけれど、高齢猫の病気というと、腎臓病は認知度が高いのですが、糖尿病や甲状腺機能亢進症もコントロールが可能な病気ですし、関節症も気づいてケアしてあげると生活の質が向上します。また腫瘍も小さいうちの発見を目指し早期に対処したい病気です。

糖尿病では内科的なエマージェンシー事態が起こることがあります。糖尿病性ケトアシドーシスといいます。これについては後日お話しします。 

 

今日のお話はここでおしまいです。

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副腎皮質機能低下症・3

 副腎皮質機能低下症のお話の3回目、今日でおしまいにしたいと思います。

安定期に入ってからの治療と継続についてお話します。

 

<維持期の治療>

晴れて点滴から脱却できるのは、自分で起き上がって水を飲んだり、食事をとったりできるようになってからです。

こうなったらあとはお薬を飲んでいただきます。

 

この薬は長期の管理に必要な薬です。投薬している間に病気が治って薬が不要になることはありません。

 

①ミネラルコルチコイドの補給をします。

 酢酸フルドロコルチゾン、商品名フロリネフを使います。

 このお薬にはグルココルチコイド作用もあります。

 12回の内服投与です。

 大変高価なお薬です。が、代用できる他の薬はありません。

②グルココルチコイドの補給をします。

 ヒドロコーチゾンです。プレドニゾロンを使うこともあります。

 フロリネフのグルココルチコイド作用では不足するときに併用します。

 安価なお薬です。

 こちらだけで維持したくなるかもしれませんが、ミネラルコルチコイド作用がないのでだめなのです。

 フロリネフだけで大丈夫な場合でも、ストレスが予想される状況になることが分かっている場合、ショック状態にならないよう予防策としてこの薬を常備しておくと安心です。

 

海外ではミネラルコルチコイドの注射薬があります。ピバル酸デソキシコルチコステロン(DOCP)です。約25日効果が続くとされています。25日に1回病院に来てもらって注射をするという、とても楽で良さそうだなぁ~という治療法ですが、おすすめはしません。微妙に必要量が変わってくるかもしれないミネラルコルチコイドの補充量をこまめに変化させることができるのは毎日の投薬しかないからです。

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<治療がうまくいっているかどうか>

モニタリングが必要です。

飼い主さんに日常チェックしていただきたい項目があります。一つは薬の量が少なすぎるかもしれない時にあらわれる症状で、投与前の症状の再来になります。

①食欲がなくなる。

②飲水量が減ってくる。

③無気力で元気がない。運動ができない。震える。

④嘔吐や下痢。

 

もうひとつは薬の量が多すぎるかもしれない時にあらわれる症状で、クッシング症候群に似た症状を現わします。

①水をたくさん飲む、尿量が増える。

②たくさん食べる。

③はぁはぁ、パンティング呼吸をする。

 

病院でおこなうモニタリングは、体重のチェックや臨床症状の変化、そして血液検査です。とくにナトリウムやカリウムについてはしっかりみていきますが、検査の値そのものに従って薬の量を調整するというよりは身体のコンディションをしっかりみることに重きをおきたいと思います。

また薬については、高い薬でもあるので、必要最小限を保つようにしていきたいと思います。

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<寿命は短くなるのでしょうか>

適切なホルモン補充療法を行い、クリーゼを繰り返さないようにすれば予後は決して悪くなく、寿命をまっとうすることのできる病気です。

生涯にわたって、お薬とお付き合いする必要があります。

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<おわりに>

今まで飲ませなくても大丈夫だったんだし、高い薬というのは怖い作用があるのかもしれないから、先生は12回と指示してくれたけど、2日に1回くらい飲ませるだけでも行けるんじゃないか。あんまりたくさん飲ませるといけないんじゃないか。そう思ってしまわれる方がおられます。この薬は元気な犬では身体から作られ、自然に全身を流れているホルモンです。正しく使用していれば危険なものではありません。指示どおりに飲んでいただかないと、アジソンクリーゼをおこす危険があります。アジソンクリーゼに陥らないように維持していくことが大切です。

それから、投薬することに積極的な飼い主さんでも、なんとか少しでも安価な薬を手に入れたい、ということで個人輸入をお考えの方もいらっしゃるかと思いますが、マークのつくほどのお薬です。絶対におすすめしません。薬の値段の差に負けて、いつでも相談ができ愛犬の身体を理解してくれる主治医を喪失してしまうのはあまりにも浅はかなことだと思います。副腎機能不全は死に至る危険のある病態ですし、過剰投与による副作用についてもしっかり把握していただいたうえで、賢明な判断をされることを切に望みます。

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副腎皮質機能低下症・2

犬の副腎皮質機能低下症のおはなしの2回目です。

どのように診断が導かれていくのか、検査について、それから急性期の治療についてお話します。

 

<診断に向けて>

副腎皮質機能低下症は「とんだ食わせ物!」というあだ名の付いている病気です。決め手の無い症状で悪い、良いを繰り返し、診断がつかないまでも対症療法を行うとなんとなく治ってしまうという「身をくらます」術にたけている病気だからです。ぐずぐずしていたのに、なんとなく治ってしまった。だけどまた、あの時と同じような症状が今日も。腸炎?膵炎?心臓循環器系の不具合?疲れやすい肝臓性?心理的なさびしがり屋さん?いろいろと悩ませてくれます。

 

血液検査や腹部のレントゲン検査、尿検査などを行います。

血球の検査では貧血がみられ、白血球のバランスも通常と異なってきます。

血液生化学検査では低血糖や高窒素血症、低コレステロールや低アルブミン血症などが出てきます。

電解質はとても特徴的なパターン、低ナトリウム、高カリウムを示します。

血液の電解質異常が飛びぬけて異常値が出た場合は副腎皮質機能低下症を疑い、次の検査に進みます。

電解質異常が認められない非定型アジソンの場合は、それまでの病歴や臨床症状から疑いをもつことになります。

IMGP6781.jpg 

 

ACTH刺激試験>

クッシング症候群のときにも行う検査です。この検査が確定診断につながります。

正常な状態ならばACTHの注射をするとコルチゾールの分泌が増えます。

副腎皮質機能低下症の場合は、ACTHの注射をする前も後も、コルチゾールの値が検出できるかどうかくらい低い値です。なにせコルチゾールを分泌する場所が壊れているのですからACTHに刺激されようがされまいが、このホルモンが作られようがありません。

同時にアルドステロンも検査にかけますが、こちらも注射前、後ともに低い値で出てきます。

 

残念なことに、外部の検査機関に委託して行う検査のため、すぐに結果が出るわけではありません。治療の進行に伴い、もしや、と思って行った治療がうまく反応しているから、きっとそうだろうなぁ、と思っている頃に結果が返ってきて、「あぁ、やっぱりそうだった。」となるわけです。

 

 

副腎皮質機能低下症を疑う犬がショック状態で来院した時はびっくりして、えっさか、わんさか検査や治療を進めていきます。とても落ち着いた雰囲気ではないことが多いです。それはこの「アジソンクリーゼ」(hypoadrenal crisis)と私たちが呼んでいるショック状態が死に直面しているからです

 IMGP6812.jpg

 

<急性期の治療>

そんなショック状態で来院されたときは集中的な治療が必要です。

治療は

①輸液で脱水を改善すること。

②循環血液量を増やしてショック状態から脱却させること。

③電解質や酸塩基平衡を正しいバランスにもどすこと。

④欠乏状態にあるホルモンを補充すること。

を目的に行います。

 

①②③の目的を達成させるのは点滴です。

 高くなっているKを含まず、Naを含む輸液剤を選びます。

 常に低Naの状態が続いている身体に、高い濃度のNaを含んだ輸液剤を急激に入れると脳に障害をおこしてしまう危険があるのでいくつかの輸液剤を混合して調整することが多いです。

 低血糖がひどい時にはブドウ糖を入れます。

 アシドーシスの状態が進んでいる時には身体をアルカリ性に傾ける作用のある薬を入れます。

④のためにグルココルチコイドを注入します。

 合成副腎皮質ホルモンの中で、静脈内に注入できるものがあります。これを使います。

 ACTH刺激試験の途中にある場合はデキサメサゾンを、検査後はヒドロコルチゾンを使います。

検査の値に影響されないようにするためです。

そしてあとは尿量などをモニターしながら反応を待ちます。

IMGP6813.jpg 

こんな状況なので、「お命、お預かりします」ということで入院治療になります。ほんとうに、ここの状態をクリアーしないと次がありません。ひたすら、「がんばって!治療に反応してよ!」と祈りながら治療をすすめています。

 

ここまでひどいショック様でない場合でも循環血液量が少なく脱水気味で高窒素血症を示しているようなときはアジソンクリーゼを予防する目的で同様の治療を行います。自力で水を飲み食事を食べられるのかどうかにより内服治療で済むのか、点滴治療を進めなければいけないのかが決まります。

 

 

今日のお話はここまでです。

次回は急性期を乗り越え、安定してからどのような治療を行うのかについてお話します。

 

    

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副腎皮質機能低下症

 内分泌疾患のお話が続いていますが、実は同じ時期に内分泌疾患の初診さんが続いたのです。

クッシング症候群のナナちゃん、甲状腺機能亢進症のチャコちゃんのお話を続けてきました。

今日はもうひとりの患者さん、リリーちゃんです。彼女は副腎皮質機能低下症でした。

 

今日は副腎皮質機能低下症についてお話します。

 

 

<リリーちゃん>

リリーちゃんは3歳の女の子。きれいにテディベアカットされている細身体型のトイプードルさんです。

「食べないんです。なんか、ぶるぶる震えるんです。1回もどしてました。ウンチはいいウンチが出てるんだけど、なんかお腹が痛いのかな、おかしいんです。」

って連れてこられました。

触診してもお腹を硬くすることはないし、体温測定しても高くもないし。一般身体検査では問題になるところが見つかりません。何でしょう?膵臓の具合でも悪いのかしら?胆のう炎なんてことがあるかしら?未避妊だから子宮蓄膿症にでもなっちゃったのかな?

血液検査をさせてもらうことにしました。少々の高窒素血症がありました。ですが電解質が異常値です。それもびっくりするくらいの。

あれれ?腎臓関連かしら?

尿検査もさせてもらいました。尿比重が低く、薄いおしっこが出ていることが分かりました。

チチーちゃん、ホルモン関連の検査をさせていただくことにし、同時に点滴治療も始めました。

 IMGP6783.jpg

 

<はじめに>

副腎は腎臓の近くにある小さな臓器です。副腎の機能は皮質機能と髄質機能に分かれています。副腎皮質の機能は生命維持に欠かすことができないもので、ここからは糖質コルチコイド(グルココルチコイド)と鉱質コルチコイド(ミネラルコルチコイド)、あとは生殖にあまり大きく影響しない性ホルモンが分泌されています。副腎皮質は3層構造でできていますがグルココルチコイドが分泌される層とアルドステロンとも呼ばれるミネラルコルチコイドが分泌される層は違う場所です。

グルココルチコイドの分泌は視床下部(CRH)→下垂体(ACTH)→副腎皮質という経路のホルモン支配により制御を受けています。

アルドステロンの分泌は腎臓内にある傍糸宮体装置(ぼうしきゅうたいそうち)から出るレニンの刺激から始まるレニン・アンギオテンシン・アルドステロン系(RAA系)によって制御されています。

 

副腎皮質機能低下症は1855年にDr. Thomas  Addisonによって初めて人の病気として報告されました。この病気がアジソン病といわれるのはここから来ています。

「副腎皮質機能低下症=アジソン病」という風に思われていることがあるようですが、副腎皮質機能低下症にはグルココルチコイドとミネラルコルチコイドの両方が不足するアジソン病のほか、片方の分泌能が残っている別の病態があり、これらは非定型アジソン(グルココルチコイドだけが不足する)、選択的低アルドステロン症(ミネラルコルチコイドだけが不足する)と呼ばれています。また、ほとんどは副腎皮質の障害により発生した原発性ですが、下垂体からのACTH欠乏による二次性や医原性(投与した薬の影響による)に発生する場合もあります。

非定型アジソンの場合はやがてミネラルコルチコイドも欠乏してくるといわれています。

原発性の副腎皮質機能低下症の原因は免疫介在性の破壊です。それで壊される層がどこなのかによって不足してくるホルモンに違いが出てきます。

 IMGP6782.jpg

 

<この病気の傾向>

この病気に罹った犬に共通点があるかどうかを調べたものがあります。

若齢から中年の犬に多く発症していました。80%以上が7歳以下で平均年齢は5歳という報告があります。

メス犬に多い傾向もありました。70%がメス犬だったという報告があります。

日本での好発品種はトイプードル、パピヨンなどです。

 

 

<過去の病歴があります>

ある日突然ぐったりしてショック状態で連れてこられることがほとんどなのですが、たいていは前の日に興奮するなどしたエピソードを持っています。嬉しくてはしゃいだ、ということのほかストレスのかかる事件があったなども入ります。

よくよく伺っていくうちに、これまでの間に調子が悪くなったり、また良くなったりということを繰り返してきていたことが分かります。そうこうしながら、悪くなったときのレベルがひどくなってきているようです。

この病気を発症する犬たちに共通しているのは太っていないこと。

痩せてスマートな犬たちです。

 

過去に調子が悪くなったときの症状ですが

①食欲がなかった。

②嘔吐してた。

③下痢をした。

④なんとなく力がなかった。元気がなかった。

⑤お腹を痛そうにしてた。

⑥ぶるぶる震えていた。

⑦ぐったりしていた。    などです。

 

IMGP6786.jpg 

<来院時にはこんな症状がみられます>

①おとなしい。とても静か。不安そう。

ぐったりしている時もあります。

②筋力がなくなっています。

ふるえがあるときがあります。

③脱水しています。

④脈が弱く、またスローです。

⑤下痢。血便になっていることがあります。

⑥お腹を痛そうにしています。

⑦ショック状態になっていることもあります。

低体温のときがあります。



それで、とてもびっくりして、検査と同時に治療の準備も始めていきます。




 今日のお話はここまでです。

次回は診断に向けての検査についてお話していきます。

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ハート動物病院

Author:ハート動物病院
ハート動物病院です。
〒445-0062
愛知県西尾市丁田町杢左51-3
TEL/0563-57-4111
オフィシャルサイト:http://www.heart-ah.com/

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