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猫の鼻のぐずぐずが続いているとき

 猫の鼻のぐずぐずが続いているときに

猫はウィルスや細菌感染に伴って鼻がぐずぐずします。目も涙や目やにで開けにくそうになることが多いのですが、これらの症状は別の理由でも発生します。鼻に問題があった猫の26%は慢性鼻炎ですが、リンパ腫などの鼻腔にできる腫瘍の割合はそれよりも高く56%にも上ります。今日は鼻腔内にできる腫瘍のお話をします。

 

<こんな風に症状が進みます>

くしゃみや鼻づまり、涙目、目やにが出ます。多くの飼い主さんは「猫の鼻風邪」だと思うでしょう。または「時期的にアレルギーなのかしら」と思うかもしれません。動物病院でも「カリシウイルスやヘルペスウィルス、クラミジアなどの感染症」とお知らせしているかもしれません。
が、このような症状が長引きます。これは腫瘍細胞によって鼻腔が閉鎖され気道が通らないことによる症状です。
やがて顔つきが変わって来ます。でも、まだ初期だと
「怪我をしたのかもしれない、怪我の治りが悪い」と思われていることがあります。
が、変形の度合いが進んできます。これは腫瘍が増大して周囲組織を圧迫するために出てきている症状です。
変化のスピードがとても速いのに飼い主さんは驚かれるかもしれません。ここまで来ると、「風邪じゃない」「けがでもない」と猫に起こっていることが悪いことかもしれないと思い始めるでしょう。

初期から徐々に大きくなってくるときの症状をまとめてみました。

l  くしゃみ、逆くしゃみ、分泌物が飛び散る

l  鼻づまり、呼吸音が聞こえる、鼻が苦しそう

l  長く続く鼻水、鼻汁、膿性分泌物、鼻血

l  たくさんの涙、どろっとした目やに

l  目と目の間の鼻すじが盛り上がる、目と目の間が広くなる

l  顔に痛みがある(触れられるのを嫌う)

l  食欲不振(体重減少につながる)

l  驚いたような目、目頭から膜が出る、目が閉じない

l  顔の左右が不対称、顔の変形がある

l  口臭、顔が臭う?

l  発作、混乱

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<鼻腔にできる腫瘍>

 呼吸器系には多くの部分がありますが、上部気道の重要な部分は鼻と副鼻腔です。副鼻腔は頭蓋骨の骨の空洞です。ここは鼻とつながっていて鼻から吸い込んだ空気に湿気を含ませる仕事をしています。鼻と副鼻腔の内側は上皮と呼ばれる同じタイプの組織で覆われています。この組織は鱗状に細胞が重なり合った構造をしていて扁平上皮(へんぺいじょうひ)と呼ばれています。

鼻にできる腫瘍で一番多いのはリンパ腫です。リンパ腫はリンパ球(白血球の一種)の腫瘍です。リンパ組織は体中あらゆるところにありますが、鼻腔にできるリンパ腫は主に鼻に限局して発生しています。(猫のリンパ腫で鼻にできる割合は少ないです。)鼻の扁平上皮から成長する腫瘍は、扁平上皮がんです。たいてい鼻の両側に発生します。骨とその近くの組織に広がるのが一般的ですが、場合によっては脳に広がって発作を引き起こす可能性があります。 線維肉腫が発生することもあります。かなりまれです。鼻道と周囲の結合組織から発生する悪性腫瘍です。ゆっくりと進行していきますが、発見されたときにはかなり進行している場合が多いです。軟骨肉腫が発生することもあります。こちらもまれです。侵襲性で急速に広がる腫瘍です。

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 診断>

症状が発症するまでの猫の健康に関するプロフィール、症状が出てから診察日に至るまでの変化の過程をお伺いします。もしくはカルテに記載されたことを再確認します。

その他の病気と同じように、身体検査に続いて血液検査(血球数と生化学的検査、電解質の検査など)を行ないます。感染症の検査(猫白血病ウイルス、猫免疫不全ウイルス)の検査も行ないます。猫白血病ウイルスに感染しているとリンパ腫の発生リスクは60倍に、猫免疫不全ウイルスの感染があると7倍に、どちらにも感染があると77倍にもなります。これは診断の目安になりますし、治療や予後判断にも役立つ検査です。

猫の鼻汁の検査は、細菌や真菌の感染があるかどうかをみるのに有効です。クリプトコッカス症は鼻にできる腫瘍にそっくりの症状を出しますが治療が異なるので、鑑別します。(血液検査の併用もします)

猫の頭部と胸部のX線検査を行ないます。腫瘍が存在するかどうか、それが大きいかどうか、骨に浸潤しているかどうか、肺などほかの部分に広がっていないかを判断します。しかし画像診断としてX検査では不十分です。

鼻鏡は鼻の穴の中を覗く検査ツールですが、新生物のために鼻腔が狭くなり、出血のために視界が悪い場合は鼻の中を調べる道具として役に立ちません。(鼻腔内に寄生虫や異物が入り込んでいるのを発見することには威力を発揮します。)

生検(細胞の病理学的検査)は、腫瘤の正確なタイプを判断するための不可欠な検査です。細い針を使って腫瘍細胞を採材するよりもストロー状のものを使って腫瘍細胞の塊を採る方が多くの細胞を収集でき、検査を確定診断に導くことができます。鼻の奥にストローを入れられるのは、私たちがインフルエンザの検査を受けるときのように、猫にとっても不快なものです。この検査は鎮静処置下で行ないます。近くのリンパ節からもサンプルを採取します。腫瘍が転移してはいないかを確認するものです。

可能であれば猫の頭のコンピューター断層撮影(CT)または磁気共鳴(MRI)スキャンをお願いすることになります。腫瘍と猫の頭蓋骨の内部のより詳しい画像が得られます。腫瘍の成長の大きさ、広がり具合、身体のほかの部分に広がりがないかどうかを確認するにも役立ちます。腫瘍の進行度と最善の治療方法を判断するのに役立ちます。

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 治療>

一般に腫瘍の治療は手術、放射線療法と化学療法(抗がん剤)の組み合わせで治療されますが、猫の鼻腔を埋めた腫瘍が何であるかによって効果のある治療方法は異なります。例えばリンパ腫では手術が実用的ではなく、放射線または化学療法の組み合わせ、または化学療法だけで治療されます。他の腫瘍でも切除手術だけでは効果的ではなく、組み合わせた方が治療成績は良好です。放射線による治療は限られた動物病院でしか受けることはできませんし、手術も熟練した術者による手術が必要です。利用可能な治療法は相談して決定します。

そのほか、支持療法も加わります。感染が存在する場合は抗生物質が投与されます。食事が思うように摂取できない場合は栄養学的なサポートも必要です。目が閉じないような場合、角膜を保護するための点眼薬も必要になるでしょう。

場合によっては、終末期の痛みの管理が適応になる可能性があります。

 

 <生活と管理>

 鼻や副鼻腔に腫瘍ができた猫は、鼻粘膜が正常に機能しないため感染症が発生しやすくなっています。炎症を起こしやすく鼻水も出やすい状態です。治療の副作用にしても、腫瘍による結果であるにしても、好ましくない現象を軽減するために猫にできることは何でも行ないます。環境内の温度など、猫を快適にさせる工夫が必要です。

鼻腔の腫瘍を治療しない場合の生存期間は5か月未満とされています。(放射線療法を使用した場合のリンパ腫の平均生存期間は12年です。)腫瘍が脳やその他の場所に広がっていると予後はとても悪く、生存率もぐんと低くなります。
予後に関するデータをみると猫にとって最良の結果を確実にするためには積極的な治療が必要だということが読み取れます。

 今月はNational pet cancer awareness month 動物の腫瘍について知ってもらう月間です。「まさか猫の鼻に腫瘍ができるなんて。」驚かれたかもしれません。知らない方が普通です。でも、こんなこともあるのだと知っていたら、長引く鼻水に早く対処できるかもしれません。そんなわけで、そう多くはないけれど見ないこともない鼻腔腫瘍についてお話ししました。「涎が多いのも口腔内腫瘍かもしれない!」と思いついたあなた、賢いです。思い当たる節があれば動物病院へ、お願いします。
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ジャンル : ペット

肛門のう腺癌

 先週の続き。今日は悪い方の腫瘍のお話しです。
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<肛門のうアポクリン腺癌?>

肛門嚢腺癌(こうもんのうせんがん)といわれることもあります。犬の肛門周囲には肛門嚢(こうもんのう)の内に分泌物を出す役割をしている複数の腺組織があります。その中の一つがアポクリン腺です。アポクリン腺は汗腺(あせをつくる腺)として聞いたことがあるかもしれません。このエリアで一番頻繁に観察されるのが肛門嚢アポクリン腺癌で、腫瘍全体から見るとごくごくまれな腫瘍(わずか2%!)です。発生傾向ですが、以前は9歳から11歳くらいの中高年に多く、オスよりもメスに多いとされていました。たしかに女の子ばっかりだと思っていましたが、今の調査では性別による発生差はありません。発生の多い年齢層は今も変わっていません。報告の多い犬種はジャーマンシェパード、コッカスパニエル、ゴールデンレトリバーですが、これも日本の今の人気犬種とは異なっていますので、うちの子がこの犬種ではないからと言って安心できるわけでもありません。ボーダーコリーやダックスで経験があります。

とにかく悪性です。

どうして悪性なのかというと、①がんと正常組織の境目がはっきりしていないから、というのと、②簡単に近くのリンパ節に転移してしまうから(初めての診察のときに既に転移が見つかることも珍しくないのです)、というのと、③遠くの組織(肝臓や肺、骨!さらに心臓、腎臓、副腎、膵臓!)にも転移してしまうから、そして、④高カルシウム血症で全身に害を及ぼすことがかなりの高率でみられるからです。これは獣医さん泣かせの悪者腫瘍です。

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<飼い主さんにわかる症状は?>

肛門の周りが大きいことです。犬は不快な感じを示します。「お尻が腫れている」とか「お尻から出血する」、「擦って組織を壊してしまう(舐め壊すことも入ります)」のが来院理由上位3つです。お腹の中のリンパ節が腫れて、うんちの通り道が細くなり、「うんちが出にくい」ことが起こるかもしれません。先ほどお話しした高カルシウム血症になっていると、「お水をたくさん飲む」「オシッコがたくさん出る」「食欲がない」「寝ていることが多い」などの症状を出しますが、これらは年取ったな、などと思われてしまいそうな症状です。

 

<診断のための検査>

まずは外から見て、大きさを確認させて貰います。お尻から指を入れて、膨らんでいるところを直腸から触ってみる(直腸検査)も行なってみます。それからこれだけではわからないので、レントゲンの検査や超音波検査の画像から身体の中の様子も見ます。血液検査もスクリーニング検査として実施し、カルシウムの値に注目です。すべての腫瘍について言えることですが、細胞の塊から細胞を取り出して、腫瘍細胞を顕微鏡的に調べる検査は必須です。病理の先生にも意見を伺うことになります。

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<総合的な治療が必要です>

お尻周りにできた腫瘍組織(原発巣といいます)をいかに制御するか、つまり、しっかり取り切れそうか、または小さくするだけ(減容積といいます)になってしまうのかというのがひとつ。そしてもし転移している組織があるならば(実はまず100%は有るだろうという想定の中で考えるわけですが)これをどう制御していくのかというのがもう一つの問題です。

転移している組織も、うんちの通り道を閉鎖するほどに大きくなっているのであれば、なんとか無くすか小さくするかしてあげないと、「排便困難」の問題は解決されず、犬にとってのクオリティー高い生活が望めません。手術で取れそうか、術前に化学療法(抗がん剤です)で小さくしてからなら取れそうか、が最初の検討課題です。また取りこぼしが考えられる場合、はじめから放射線療法を加えた治療を行なう方が良いのかなども治療プランに加わります。さらに、術後に化学療法を行なう場合も、どの抗がん剤をどのように使っていくかについても、リンパ腫のように決まったプロトコールがないので、実にさまざまな治療が考えられます。

従来の化学療法剤のほかに、肥満細胞腫の治療に承認された抗血管新生薬による治療にも反応していることが知られています。こうした経口薬も治療のオプションに加えることが可能です。

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<支持療法も必要です>

腫瘍を積極的になんとかする根本療法に対して、不都合な症状を緩和させるための治療も考えなくてはいけません。高カルシウム血症に対する治療、食欲がなければ点滴も行います。排便困難に対する治療はQOLの高い生活をもたらすものです。便を軟らかくする薬や、繊維分を含む療法食なども含まれます。術後の疼痛緩和のための鎮痛薬なども支持療法に入ります。お尻周りの皮膚に軟膏などを塗ることもあります。これらは退院後、ご家族の人にお願いする処置になるでしょう。

 

<治療の先にあること>

一般に言われている生存期間中央値というのは、治療をしてからどれだけ生きていてくれたのかを全体でならしてみた数値です。どのような治療をするとどのくらい生きられそうなのか、これまでの報告から数値を抜き出してお知らせすることは可能です。けれど、発見されたステージ(どの大きさの腫瘍で、どこにどの程度の転移した塊があって、とか、そういう諸々のことです)もそれぞれ違うため、一概にどの治療を行なったときの余命があとどれくらいという数字を個別に当てはめることはできません。あと何ヶ月(ごめんなさい、何年とは書けません)という具体的な数字をお示しすることはできませんが、単位としては「年」ではなく「月」が妥当だな、と思っています。手術をして、放射線もあてて、化学療法を組み合わせた、最も積極的な治療を受けた犬で2年以上という数字が見つかりました。再発を遅らせる方法や、遠くの組織に転移するのを予防する方法は調べても見当たりませんでした。

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<まとめです>

肛門の近くにできる腫瘍には悪性の腫瘍があります。代表的なのは肛門嚢アポクリン腺癌です。(良性の腫瘍もあります。この腫瘍とは違うものです。未去勢のオス犬によく見られます。)

お尻に「何かある!」と発見することが多いかもしれません。が、「便秘みたい!」で、うんちの出にくさが目立つ症状のときは、お腹の中のリンパ節が腫れて直腸を圧迫していることが多いです。

たまたま血液検査をして、「高カルシウム血症」がみつかるとき、「まさかリンパ腫かアポクリン腺癌か?」と疑って腫瘍を見つけ出すこともあります。

腫瘍がわかったらレントゲン検査や超音波検査、細胞の検査を実施し、治療計画を立てます。

腫瘍は、基本は手術で切り取るものですが、この腫瘍は手強いのでいろいろな方法を組み合わせて挑まなくてはいけません。

早期に発見して小さいうちに対処することが重要だと思います。尻尾の陰に隠れてしまう肛門部を観察するのは十分意味のあることです。

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肛門周囲腺腫

先日の診察のことです。わんちゃんです。美容院で「お尻が膨らんでいるので病院で診て貰ってください」とコメントがあったということで来院されました。

結論から先にお話ししますと、それはめったに診られないくらい肛門腺がいーっぱい溜まって大きくなっていただけのことでした。けれどトリマーさんが気づいてくれることこと、それから無理はしないでベターな対処法についてお話ししてくれ私たちにバトンタッチしてくれたこと、これは大変価値のあることです。彼女(彼?)は肛門腺が溜まって大きくなっていること以外にも、肛門周りには重大な病気が隠れていることがあるのを知っているからこそできた対応なのでしょう。

今日はそんな怖い病気のことも知っておいて貰うことも大事だと思いまして、お話しを続けます。肛門の周りには「肛門周囲腺腫」という良性の腫瘍ができることもありますが、「肛門のうアポクリン腺癌」という悪い腫瘍が発生することもあります。そしてこれはできるだけ早期に見つけて小さなうちに対処することがこ大切です。
9月はがん征圧月間です。今週「肛門周囲腺腫」と来週「肛門嚢アポクリン腺癌」のお話をすることにします。
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  肛門周囲腺腫

<概要>

肛門周囲腺は、犬科の動物(コヨーテ、イヌ、キツネ、ジャッカル、オオカミなど)に特有の皮脂腺です。猫には肛門周囲の皮脂腺がないので、この種の腫瘍は猫では非常にまれ(発生しない)と考えられています。肛門周囲腺の機能は完全には理解されていませんが、フェロモンの産生や領土のマーキングなどにおいて役割を果たすと考えられています。

通常は肛門周囲に位置します。「通常は」というのは、あまり知られていないのですがこの腺がオス犬の包皮やメス犬の腹部乳房のあたりにも存在するし、そのほかに会陰、尻尾(背中側と裏側)、ふとももや後肢、腰の周辺などにも存在するからです。わき腹の皮膚にできた腫瘍を採取して病理の先生に診て貰うと、こんなところにできた腫瘤が「肛門周囲腺だった!」と驚くこともあります。

肛門周囲腺を構成する個々の上皮細胞は、顕微鏡で見たときに肝細胞(肝臓の細胞)と外観が似ているために、肝腺という別名で呼ばれることもあるようです。

肛門周囲腺腫は良性腫瘍です。肛門まわりにできる腫瘍のうち80%から90%くらいがこの腫瘍で、残りが肛門のうアポクリン腺がん、そのほかの腫瘍です。

年配の未去勢のオス犬に比較的よく発生が見られます。同時に睾丸の腫瘍も併発していることが多いという報告もあります。
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<原因は?>  

  肛門周囲腺腫の原因は不明です。アンドロゲン(男性ホルモン)の産生が腫瘍形成を刺激する可能性があります。エストロゲン(女性ホルモン)は、肛門周囲腺腫形成に抑制効果があります。

                                                            

<腫瘍の発達>

初期段階のものは、肛門周囲の皮下にくるんとした小さな飴玉が入っているかのような感触で触れることができます。「小さな結節」と表現しています。肛門周りの皮膚が厚くなっているように感じることも有るかもしれません。肛門周囲腺腫は成長がゆっくりで、痛みもありません。中には1年くらい前からあったと言われる患者さんもおられるくらいです。初期に犬には腫瘍に関連した症状はありません。肛門腺絞りをするときに美容室のトリマーさんが気づいてくれるのはラッキーです。

それから、大きさや直径が異なる粒が肛門周りで複数触れるようになります。いくつかの腫瘍が炎症を起こして感染するようになると血が出てきます。痒みがあり、犬にとって刺激性で、軽い痛みを引き起こすことがあります。「犬がお尻を気にして、しょっちゅう舐めている」というお話しが聴かれるのはこのくらいからです。肛門腺が溜まっているときに犬が「お尻でスケート」するような行動をとることがありますが、そのような動きをすることもあるでしょう。

小さなつぶつぶ同士がくっついて腫瘍が大きく発展してきたり、犬が気にして激しく舐めたり、どこかにこすりつけたりしてくると表面を覆っていた肛門の皮膚が崩れ、そこから出血したり、じくじくした汁が出るようになります。ここまで来ると無関心な飼い主さんでも犬の肛門に異常が起こっていることを認識するようになります。

さらに大きくなった場合、排便を妨げることになります。いきんで排便しにくい様子が見られます。直腸の粘膜が肛門からはみ出て赤いものが見えてくることもあります。排泄後に肛門周りの血が糞便に付着してあたかも「血まみれの便」が出たように見えることもあります。出血が多いとき、犬が盛んに舐めて、これを嘔吐することがあります。「血の嘔吐」にびっくりされる飼い主さんもおられるかもしれません。

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<悪性腫瘍との区別>

初期は外見上の特徴が異なるので、「これは肛門周囲腺腫。良性のものでしょう」と判断できますが、中には表面だけで無く、深度の深い腫瘍を持っている場合や結合して大きく肛門周囲全体に及ぶものなどありますので、腫瘍の塊を病理検査で調べることは、重要で、それはそのまま次の安心につながります。けれど二次感染や出血があり、また組織がぐちゅぐちゅした壊死組織の様相を示すほどになってしまうと、採取したサンプルの細胞が十分に取れなかったりするため、肛門嚢アポクリン腺癌と肛門周囲腺腫を細胞学的に区別することが難しくなってきます。

良性腫瘍であると言うことは、大きくなるスピードがゆっくりだとか、腫瘍と正常組織との境界がはっきりしているとか、局所だけで転移を起こさないなどの特徴を持つものですが、腫瘍が大きく育ってからではそれらがあやふやでわかりにくいことが多いです。

肛門のうアポクリン腺癌では、血液中のカルシウム値が高くなっていることが多く、また腰椎付近のリンパ節に転移が見られることがほとんどなので、血液検査やレントゲン検査、超音波検査でもこれら二つの腫瘍を区別する手立てにはなります。

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<治療の基本は手術>

未去勢オスであれば、腫瘍の外科的切除と同時に去勢手術を行なうのが最良の治療法の選択肢です。大きな腫瘍があるオス犬では、腫瘍を切除する前に去勢手術だけしておいて、腫瘍の大きさが小さくなるのを待ってから腫瘤切除をするという二段階を踏むことで、完全切除ができやすくなることもあります。

メス犬の場合、外科的切除が最適な治療法です。

大きな腫瘍よりも小さな腫瘍を除去する方が常に簡単です。特に腫瘍が外科的は閉鎖を問題とする領域(肛門周りはその代表的な場所です)に位置する場合は、完全切除が困難になるサイズまで成長させないうちに手術することがおすすめです。肛門周りをぐるっと360度取り囲むほどに腫瘍が大きくなってしまった場合(このときはすでに腫瘍の塊で肛門の穴がどこにあるのかさえ見分けがつかないくらいですが)、これでは手術で肛門括約筋の役目を失ってしまうことが有ります。術後の便失禁を回避することが困難かもしれません。すでに術前から排便障害が起こっているとは思いますが、便失禁は一緒に暮らす家族のQOLも損ねてしまいますから、早期に気づいて早期に手術に踏み切ることはとても大切です。

ホルモンと関連があるため、ホルモン療法を施すことによって、内科的な改善を期待されるかもしれません。しかしエストロゲンによる治療は再生不良性貧血を呼び込む可能性があるため、おすすめではありません。

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<手術の後は?>

完全な切除ができると予後は良好です。完全切除後の腫瘍の再発は非常にまれです。大きすぎて完全に切除ができなかった場合は再発する可能性があります。切除が完全にできたかどうかは病理の先生による顕微鏡検査を基準にします。 

一部の犬は、切除されなかった残りの非腫瘍性の肛門周囲腺から新たな肛門周囲腺腫を発症することがあります。小さな腫瘍で、一部分を切除した場合にはこのようなことが有るかもしれません。局所再発という錯覚を与えてしまうかもしれませんが、これは再発ではなく、新生のものと考えます。

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<予防ができます!>

  1. 去勢手術を行うと、予防できる病気がたくさん有ります。それが精巣腫瘍であり、肛門周囲腺腫であり、前立腺過形成(肥大)であり、会陰ヘルニアです。どれもが高齢になってから発症する病気のため、手術はハイリスクになります。去勢手術は性成熟完了前~直後である6か月からおそくても8か月頃までに行なうことをおすすめしています。若いうちの手術はリカバリーも速いです。(大型犬ではもう少し遅くても良いです)
  2. 去勢されたオス犬は一般にしつけしやすいです。未去勢のオス犬は、家のいたるところに強い臭いの尿をスプレーすることで自分のテリトリー印を付けます。さらに攻撃性の問題の多くは、早期の去勢手術によって回避することができます。
  3. 去勢手術が犬を肥満にさせることはありません。運動不足や過食があると、犬の体重は増えてしまいます。しっかり運動をし、食物摂取量を飼い主さんが監視していけば、健康的な適正体重を維持することが可能です。
  4. 去勢手術は費用対効果が非常に高いです。 去勢手術の費用は、腫瘍が発生してからそれを治療する費用よりはるかに少ないのです。コストパフォーマンスはワクチン並みの高さです。


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犬と猫の乳腺腫瘍

 乳がん月間の今月も、ほかの月と同じように初診で乳腺腫瘍を診察します。「こんなに大きくなるまでわかってやれなかった!」と半べそで連れてこられる患者さん、ここで初めて乳腺腫瘍を確認することになって驚かれる患者さん。まだまだ予防も早期診断もままなりません。治療を中心に行う高次病院とは違って、私たちは病気予防を中心にして犬や猫を護っていくのが本分と思う今日この頃、乳腺腫瘍も「予防できる病気」のひとつであることを伝えきれていないようでがっかりしています。

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1か月遅れになりますが、院内の掲示板は
乳腺腫瘍をテーマにしました。

<もう一度、乳腺腫瘍のこと:犬>

犬の乳腺腫瘍はメス犬に発生する腫瘍の中で一番多い腫瘍です。報告されている腫瘍の50%を乳腺腫瘍が占めています。そしてそのうちの半分(50%)が悪性の腫瘍で、そのまた半分(50%)が転移します。これが「505050ルール」と言われるやつです。乳腺腫瘍が発生する年齢は平均で8歳くらい。ただ、診療にいらっしゃる年齢はもっとずっと後で、13歳から14歳で発見されることもよくあることです。(気づいたときには大きくて、そう、何年越しなんだろうか、というのもみられます。)「これが乳腺腫瘍ってやつだったのか」、としこりには気づいていたけれどそのままにしていたケースもあるくらいです。

日本で人気犬種であるトイプードル、ダックスフンド、マルチーズ、ヨーキーなどのほか、イングリッシュスプリンガースパニエルやコッカスパニエルは好発品種です。品種によって発生率に偏りがあるというのは、腫瘍を発現させる遺伝子や抑制させる遺伝子の関係があるのだろうと思われます。

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避妊手術が遅れ予防ができなかった子たち、
早期発見に努めましょう。
乳腺腫瘍モデルの枕を作りました。
しっかり触って感触を確かめてください。

<私たちはどうして避妊手術をせかしてしまうのか>

まだあどけない赤ちゃん犬のときに、ワクチンのお話の延長線で避妊手術のお話をしています。性ホルモン刺激は乳腺腫瘍発生の危険性を増加させるので手術時期と乳腺腫瘍発生とは深いかかわりがあるからです。

2歳よりも前の段階で卵巣子宮摘出手術(いわゆる避妊手術です)を行うと、乳腺腫瘍発生の危険性を大きく減少させます。未避妊のメス犬に発生を100としたとき、最初の発情以前に手術を行ったときはわずか0.51回目の発情後(かつ2回目の発情前)に行った場合は8という発生です。残念ながら2回目の発情以降で手術を行った場合については乳腺腫瘍発生を抑制させると思われる数字ではありませんでした。

生存期間(長生きできるのかどうか)の調査も行われていて、①2歳以前の手術、②2歳過ぎの手術、③手術をしない、の3つのグループで比較すると2歳前に手術が行われた①のグループは有意に生存期間が長くなっています。そういう意味からも避妊手術のタイミングはとても大事です。

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猫ちゃんの乳腺腫瘍は
残念ながら悪性のことが多いです。

<猫のデータは?>

猫の乳腺腫瘍は、造血系の腫瘍(白血病やリンパ腫)、皮膚の腫瘍に次いで3番目に多い腫瘍です。犬の乳腺腫瘍に比べ悪性のことが多いです。犬では良性腫瘍と悪性腫瘍との割合は11ですが、猫の場合は80%が悪性です。(日本だけのデータでは75%という報告があります。)

 

<猫も避妊手術をしておいた方がいい>

猫でも犬と同じように避妊手術が乳腺腫瘍の抑制になるというデータが出ています。未避妊のメス猫は避妊手術を済ませたメス猫に比べ、7倍も発生の危険度が高いというものです。なりやすさを数値で表すと、未避妊のメス猫の発生を100としたとき、6か月齢よりも前に卵巣子宮摘出術を受けたメス猫では9で、6か月から1年の間に手術を受けたメス猫では14という具合です。2歳以上で避妊手術をした場合では未避妊の場合と比べ、乳腺腫瘍のなりやすさに違いは見られませんでした。

経口避妊薬として使われることがあるお薬(合成プロジェステロン)には乳腺腫瘍発生と強いかかわりを持つものがあります。つまり、このお薬を使用すると乳腺腫瘍になりやすいのです。猫の乳腺腫瘍にも犬と同様、性ホルモンの受容体があるしるしです。ですから経口薬で発情をコントロールするよりも外科的な方法できっちり避妊を行う方が乳腺腫瘍発生に対しては危険度が低下します。

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治療の主体は外科手術です。
手術方法はいろいろ。

<乳腺腫瘍の治療は原則手術>

乳腺腫瘍の治療の中心は外科手術です。大きさやできている部位、数などにより、手術の方法は異なります。

一つならそこだけ切除する(部分切除)だけで済むかもしれませんし、二つの乳頭にまたがって二つ以上あるとか、二つの乳頭の真ん中あたりにできている場合は乳腺を2つか3つつなげて切除(領域乳腺切除)する必要が出てきます。犬の乳頭は左右5対あり、乳腺は頭寄りの3つと、尻尾寄りの2つがつながっているため、このひとくくりをまとめて切除するのです。複数の腫瘍ができているとき、片側の乳腺組織を頭の方から尻尾の方まで全部切除(片側乳腺全切除)することになります。これは根治的切除ともいわれ、まだ発生していない乳腺での再発の危険性を減少させることができます。さらに、右側にも左側にもできているときは段階的な両側乳腺切除が行われます。先に右または左の切除をしたら、創が治ったと思われる1か月くらい後に残るほうの乳腺を切除するという2段階(またはそれ以上)にわたる大掛かりな手術です。どんな腫瘍でも同様ですが、明らかな腫瘍がある部分よりも外側を切り取り線にします。肉眼的に正常だと判断できる部分まで含めて左右の乳腺を大きく切り取ると、残った皮膚を縫合したときに腹壁の皮膚が強く緊張して腹腔への圧力が増加します。犬は不快に感じるし、創口が開いてしまうリスクが高まるので、一度に手術をすることを避け段階的な手術を行います。手術範囲の大小(全層にわたって切り取るか一つだけ取るか)によって、その後の生存期間が変わることはありませんが、腫瘍から切り取り線までが不十分だと切り取り線上に残っていたかもしれない腫瘍細胞から再発が見られます。猫の場合は犬よりもより大きい範囲の手術を行うことになります。それは悪性であることの方が多いからです。

なかなか手術の決心がつかないからと手術を延ばしてしまうのはいけません。そのままにしていると腫瘍は徐々に増大し、腫瘍の大きさはその後の経過に大きく影響するからです。腫瘍径が1cm未満なら予後は良好ですが、大きくなるにつれ生存期間は短くなります。発見したらできるだけ早く心を決め手術への段取りを組むことにしてください。

未避妊の場合、同時に卵巣子宮摘出術を行うかどうかの判断もしなくてはいけません。これにより乳腺腫瘍の再発を防止するとか生存期間を延長させるといった明らかな証明はありません。しかしすでに子宮の病気を持っているときは実施するべきと考えます。また性ホルモンの影響によりこれから子宮の病気に発展するのを防止することがあることも考慮に入れ、しっかり検討してください。

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予防は早期の避妊手術です。

<手術以外の治療法はない?>

気が付いたときは犬が高齢のこともあり、なんとか手術以外の方法で対処したいと思われるようです。しかし残念ながら、犬の乳腺腫瘍に対して、抗がん剤による治療、ホルモン療法、放射線療法のどれもが、手術による治療以上には効果はありません。

猫の乳腺腫瘍は、悪性であることが多いため、術後の補助療法として(手術に併用するかたちです)、また、どうにも手術をすることができなかった場合の唯一の治療法として、抗がん剤による治療をチャレンジすることがあります。生存期間は延長されるようですが、腫瘍が消失することが目的地点にはなれません。腫瘍が増大してきたり、ほかの病気が発生してきたなどの理由で治療を中止することになることがほとんどです。

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過去の乳腺腫瘍に関するブログ文章など
印刷して一緒に置いておきます。
詳しいことはこちらをどうぞ。

<おわりに>

高齢になってから発生することが多いのが腫瘍です。なかなか手術に踏み切れないし、ましてや子宮の病気も同時に見つかったとなると(まれに膣の腫瘍を併発することもあります)なおさら決断が鈍ることでしょう。けれど、今の決断がのちの安定生活の礎になることは間違いありません。

なお、手術の前には肝臓や腎臓、心臓や肺など麻酔にかかわる機能を調べるためいくつかの検査を行います。また転移が見られた場合は予後が大きく変わるため、転移の有無を確認する検査も行います。術後1か月余りで亡くなってしまったという話を耳にすることもありますが、お隣のわんことうちのわんこでは病状が大きく異なるかもしれません。マイナス情報ばかりを信じ込むのも良くありません。

また、犬や猫でも免疫療法的なものに走ると、せっかくの残りの一生を棒に振ることになります。

 

何よりも大切なのは、早期に避妊手術を行うことだということをもう一度付け加えておきます。

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猫の日光皮膚炎、扁平上皮がん

 扁平上皮がんに進行してしまった?!

猫の日光皮膚炎はそのままにしておくと、扁平上皮がんへと進んでしまうことがあります。今日は前回の続きです。

扁平上皮がんはまわりに浸潤して急速に増殖する特徴をもつ悪性腫瘍です。時間の経過とともに大きくなり、あまりに大きくなってしまうと、治癒させられなくなります。そのかわり腫瘍が大きくなる前に診断されれば、効果的に治療させることができます。

 

<症状>

局所の皮膚の潰瘍は、数か月にわたって治らない傷のような様相で、実際にそのように思われて来院されることが多いです。かさぶたができては取れて出血を繰り返すとか、耳の縁がギャザーのようになってきたというようなことです。耳の先端が一般的ですがそのほかに鼻(ときに鼻腔内)、眼瞼(めぶち)、唇で、ここは毛に覆われていない部分です。

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目や耳を気にして掻くことがあります。



<診断>

皮膚がんの段階で病院に来院された場合の診断手順についてお話しします。

まずはこれまでの経過を伺います。それから身体検査です。腫瘍化したところは視診が中心です。近くのリンパ節を触診して、腫れていないかどうかを確認します。基本的なラボ検査として血球系の検査と血液の生化学的検査をしますが、これは体内の諸器官が正常に機能しているかどうかを確認するものです。この腫瘍は悪性で早期に転移するため、胸部や腹部のX線検査を通して肺や肝臓などにも目を向ける必要があります。初診の段階ですべて行なうこともあるし、途中までのこともあります。

中心的な検査は細胞の検査です。腫瘍そのものに針を刺し細胞を観察します。ここにできた腫瘍がどんな種類の腫瘍なのかを判断する最善の方法で、生検と呼ばれています。扁平上皮がんのできやすい部位に別の腫瘍細胞、たとえば血管肉腫やリンパ腫などを見つけることがあります。腫瘍の種類が違う場合、異なる治療プランを立てることになります。腫れたリンパ節があれば、ここにも針を刺して細胞を観察しますが、リンパ組織で腫瘍細胞が見つかることは転移を意味しています。確実性を求めるため、病理の専門医にも材料を回して確認を仰ぎます。

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耳の先端部分にも気を配ってください。



<治療>

腫瘍の大きさ(広がり)と腫瘍の数によっても変わりますが、基本は腫瘍が発生している部位とその周辺を広く切除する手術です。手術で腫瘍とそれを取り囲む広い組織が除去されることは、腫瘍周辺に広がっていたかもしれない(目で見たのではわからないくらいの)小さい細胞塊まで確実に除去することになります。場合によっては、外科手術中に多くの組織が除去され、切除した部位を覆う皮膚が不足するようなことがあります。このようなときは、近くの皮膚まで切開を伸ばし、反転させて腫瘍があったところを覆い隠す皮膚弁を使います。また近隣の組織から回転させるのも難しい場合は、体の別の領域から皮膚を採取し腫瘍が存在していた領域をかぶせる皮膚移植と呼ばれる技法を使うことになります。さらに広範囲に腫瘍が増大しているときは、より深刻な除去をしなければいけない状況です。例えばつま先にある腫瘍は罹患したつま先の切断を必要とするように、鼻の腫瘍は鼻の(部分的かもしれませんが)除去が必要になってきます。腫瘍が耳に見つかった場合、耳の一部が除去されます。こうしたタイプの外科手術は、美容的に異なる外観になってしまいますが、その点を除いて術後はうまく回復します。ただ、一部、どうしても腫瘍が完全に除去しきれなかったということも起こります。このようなとき手術後に化学療法を推奨する場合があります。時には手術が実用的でないと判断して、化学療法のみを治療手段とすることがあるかもしれません。この場合の化学療法は、腫瘍が早く成長するのを防ぎ、猫をより快適にするために役立ちます。完治を目的にした治療ではないことをご承知ください。

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たとえ耳を無くすことになっても、初期段階ならば命までは失いません。



<生活と管理>

猫はどうしても痛みを感じるはずです。術後は鎮痛剤を与えて不快感を最小限に抑えるようにします。鎮痛薬は注意深く使用します。予防可能な医療事故の1つに、投薬過多というのがあります。痛そうだったからと日に何度も鎮痛薬を与えてはいけません。指示には注意深く従ってください。

退院後は猫の活動を制限し、静かな場所に置いてやってください。ケージ・レストといって、しばらくケージ内で過ごさせるやり方が最も向いていると思われます。もう動き回っても大丈夫、というポイントは、それが何日後になるのかはそれぞれによって違ってくるとは思いますが、再診日に猫と術後の傷を確認してお伝えします。回復期には食事と水の摂取量を監視することが重要です。猫が食べる気分にならない場合は、完全に回復するために必要な栄養を得るため、栄養チューブを使用する必要が出てくるかもしれません。とにかく頭まわりの出来事はとても痛いので、なかなか食欲が湧いてこないものです。それから猫があまり動かなくても済むように、トイレ箱を猫が寝ている場所に近づけて置くとか、箱の深さを浅いものに変えるなどしてトイレへの出入りを簡単にしてやってください。傷跡を保護するカラーの管理ももちろん大切です。局所の塗り薬をお願いすることになったときも、内服薬と同じように指示に従ってください。

回復後も、定期的な検診スケジュールを設定します。再発が起こりやすいため、新しい腫瘍が発生していないかどうかを確認し、また肺や肝臓に転移はないかどうかを確認するために胸部や腹部のX線写真を撮影します。

 

<おわりに>

ただの「日焼け」であったはずの日光皮膚炎はそのままにしていると、とても深刻な皮膚がんへと進行してしまい、しまいには命を奪いかねないような状況になってしまいます。

今年の夏は特別に暑く、そして紫外線量もたくさんでした。秋になり暑さは一段落つきましたが、皮膚への影響が現れてくるのは今からです。もし、今このブログを読んでいただいている時点で「うちの猫、耳が変だ!」と思われることがありましたら、急いで病院へお越しください。また今の時点では何ともなかった場合も、この後引き続き、耳の先端部分の観察をお願いします。

9月は「がん征圧月間」でしたので腫瘍のお話を3ついたしました。

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