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変形性関節症の治療・環境改善と愛犬の管理

愛犬にはいつまでも自立して歩いてもらうことを目標に、ロコモティブシンドロームの予防についておはなししています。変形性関節症はロコモティブシンドロームへの最も広い入り口です。変形性関節症には総合的な治療が効果的です。使われる治療薬やサプリメントについて紹介しました。

今日は生活環境の改善と運動療法について具体的にお話しを進めていきます。この二つは、関節症になる前の段階でも大変有用で、関節症そのものの予防にもなります。また、この治療がうまくいくと鎮痛薬を減量から休薬に持って行くことができます。

 

<5・生活環境の改善>

関節炎を起こしているときには生活改善が重要な役割を果たしています。

関節に繰り返し無理をさせ続けると関節は傷つき状態は改善しません。家庭内の生活環境を改造して、関節に問題を起こしている障害物に取り組んでください。犬の不快感は大幅に減少し、病期の進行は遅くなります。

    滑らない床にするためにカーペットを敷いてください。

    お気に入りの場所に無理せずたどり着けるようにするためのスロープを設置してください。スロープにもカーペット生地を貼り付け滑らないようにしてください。

    危険な段差を回避するために、階段の昇降部分に防護柵を設置してください。

    無理せずかがめるように食器を犬用のテーブルの上に置いてください。

    生活に必要な場所へのアクセスを楽にするため近くに集中させて(ワンルーム化)ください。

    車に乗せるとき、玄関への昇降口にもスロープを利用してください。板の上に滑りにくい加工(人工芝を貼り付けるなど)を施してください。

    犬が横になるベッドは、介護用マットレスを使用して体重負荷が全体に拡散するようにしてください。犬よりも大きい広さで、乗るときに負担がかからないような低いベッドにしてください。介護用マットレスは低反発で関節疾患を持つ犬に好適です。

    ほとんどの場合階段を上り下りさせることはやめてもらっていますが、どうしても階段を利用しないとリビングルームにいけない構造になっているご家庭では、犬を抱いて移動してください。中型犬~大型犬の場合は、階段の一段ずつに滑り止めのマットを敷いてください。

総合すると、犬が動きやすい環境作りをお願いします。

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生活改善はこんな風に。 

 <6・避けていただきたい生活>

    過度の運動は避けてください。運動量が増えると関節は悲鳴を上げることになります。ことに週末に「だいぶ良くなってきたぞ」と走らせるのはいけません。

    平らではない地面のところを散歩させることは避けてください。アップダウンのある道、表面がでこぼこしたところは関節に負担がかかります。表面が平らで平坦な道を選んでください。当日は喜んで散歩のお供をしても翌日うなだれてしまうことがあります。

    寒い環境に犬を置かないでください。冬季は常に暖かい場所に置いてあげてください。動物用の電気マットは大変有用です。

    散歩やシャンプーの後など、身体を濡れたままにしないでください。乾くときに体温を奪っていきます。雨の日の散歩の後は足を十分に乾かしてください。

    硬い床にそのまま寝かせないでください。ごつごつした関節部分に体重負荷がかかります。必ずマットレスの上で休めるようにしてあげてください。「犬がこちらを選ぶから」というのであれば、どうしたらマットレスへ誘導できるのかを考えてください。

    ネットに出回っている様々な商品に飛びつかないようにしてください。言葉巧みに購買を誘っている商品もありますが、獣医学的なエビデンスが全くないものもあります。気になるサプリメントや犬用のグッズについてはご購入前にご相談ください。必要なもの、あれば便利なものについてもお知らせします。選ぶのであれば効能が証明されているものをご購入いただきたいです。

 

<7・愛犬自体の管理>

    爪は短く切り、パットの間の毛もバリカンで刈りましょう。滑りにくく歩きやすいようにします。

    外出用に裏が硬質のゴムになっている犬用の靴があります。比喩統制を感じた場合にご紹介しています。

    屋内で過ごす犬用にゴム性の靴下があります。

    爪に付けるタイプの滑り止め用具もあります。

    手根関節や足根関節をヴェトラップなどで固定することにより歩行がうまくいくようになる犬もいます。サポーターのような役割をします。毎回サポーターを巻くのが大変な場合、義肢義足のメーカーさんから優れたものが開発されています。必要だと判断した場合にご紹介しています。既製品もありますがオーダーメイドですとさらに効果的です。
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リハビリの例。 

<8・理学療法>

疼痛緩和の基礎的な治療に物理的なリハビリテーションを組み合わせると、さらに痛みを抑え、筋肉の健康を改善するのに役立ちます。リハビリテーションにより、鎮痛薬を減量することができます。

リハビリテーションは、急速に成長している専門分野です。変形性関節症でのリハビリテーションの目的は、機能を回復させること、運動性を改善すること、痛みを和らげることです。できるだけ家庭で続けられる運動療法であることが望まれます。私たちのリハビリテーションと同じで、上手な理学療法士さんの指導の下で実施すると身体は楽になりどんどん動けるようになって楽しいものです。ご家族にもぜひプロ的なテクニックを習得していただきたいと思います。

<9・家庭でできるリハビリテーション>

    痛みの出ている部分を温めてマッサージします。血流を良くし、リンパ潅流も良くします。身体の末端部分から心臓に近いところへ「うっ滞している血液を戻そう」というイメージで実施してもらうのがコツです。

    関節の曲げ伸ばしをします。無理なく骨を動かすと他動的でも筋肉は伸び縮みしますので運動になります。

    非常に痛みが強くて動けない場合を除いて、平らなところであれば散歩に出てください。痛かった場合も、痛みを管理しゆったりとした歩行運動(リーシュウォークといいます)は再開して行きます。1回の散歩時間は短く、1日に数回動くことをお願いしています。可能であれば総合運動時間が30分から1時間くらいになるようにしていただきたいです。

    マットのようなふわふわしたところを歩かせるのは負荷運動になります。これにより筋肉強化ができます。

    「座れ」「立て」を繰り返し行なうのは、私たちの行なうスクワットのような運動になります。後肢の筋力が付きます。

    バスタオルを丸めて、そこをまたいで歩かせる障害物越えは足を高く上げることになり、関節とバランス感覚の療法に有効です。バスタオルを丸める太さにより障害物の高さを調整することができます。

    道具を使ったリハビリで広く使われるものは、バランスボールです。バランスボールに上半身を預けて下半身を動かすのは後肢の筋力アップになります。

    もし家庭で眠っているランニングマシーンがあるのなら、これを使ってトレッドミルができます。ゆっくりとしたスピードで始めてください。

    さらに大がかりになりますが、水中ウオーキング(水中トレッドミルといいます)はとても良好な全身運動です。小さい犬なら夏場限定で深めのホームプールで運動させることができるかもしれません。活動の後はしっかり毛を乾かし寒くならないようにしてください。

基本的に理学療法は「卒業」できることはありません。いつまでも筋肉が衰えないように続けていただきたい運動です。どの方法も、関節症の痛みと症状の様子を見ながらいきなりハードな運動にならないよう注意が必要です。

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以前、待合室に展示した生活改善例。 

10・定期検診>

定期検診は重要です。体重管理ができているかどうか、細くなったお尻周りに筋肉が戻ってきているかどうかなどチェックします。サプリメントをうまく利用しつつ、消炎鎮痛薬を減量(最小量で痛みを取るように)したり、休薬する日を設けつつ痛みをコントロールしていくようにします。

 

11・そのほかの治療>

鍼治療は有効であるという報告があります。当院では行なっていません。

関節内注射は高度獣医療を提供している一部の病院で可能な治療法です。ヒアルロン酸をはじめ、自己調整血清や骨髄吸引濃縮液、培養骨髄由来幹細胞(再生医療になります)などの注入が考えられます。再生医療は新しい分野の治療法です。まだ初期段階の治療で、一部の病院でしか受けられない特殊な治療です。

犬と猫の痛みを制御するための抗神経成長因子モノクローナル抗体の開発がZoetis社から進められています。邦人の先生も参加している研究です。商品化される日が待ち遠しいところです。

 一旦、ロコモの話題から離れます。ロコモ予防体操、猫の関節症については今後お話ししていく予定です。


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変形性関節症・具体的な治療

「どうして関節症の治療が必要なのか」という点について繰り返します。「痛いから」これを取り除いて愛犬の生活の質を向上させるのは第一義的なことなのですが、この治療は介護する側のご家族の生活の質を悪化させないためでもあります。犬にはいつまでも自立していてもらい、介護いらずの健康寿命を延ばすことが目標です。

そして変形性関節症は飼い主さんの認識が最も重要です。「動物が関節症のために痛がっている」ことをまずわかってもらうことから始まります。

変形性関節症の治療は総合的に組み合わせたマルチモーダルな治療法が最も効果的な治療です。体重管理、生活環境の改善、運動療法は重要な治療の要となるものです。サプリメントや疼痛管理の薬は病院からの処方を与えれば良いだけですが、これだけではいけません。どれか一つ二つを治療法として選択するのではなく、すべてを実践していただくと治療がうまく進みます。

変形性関節症の総合治療、具体的な方法についてお話ししていきます。

  

<1・痛みの管理>

さて、関節に異常を示す行動を犬が示し始めたときにはすでに痛みがあります。治療の中心はまさしく、その痛みを和らげることです。

非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)が現在の関節症による痛みのコントロールの主流になっています。投薬により痛みは徐々に引いていきます。たいていは14日の投与で明らかな鎮痛効果を実感できると思います。(14日で終了という意味ではありません。)NSAIDsには消化器系に対する副作用(嘔吐や食欲不振、下痢など)もあるため、痛みを鎮めることができる最小用量にしたり、時々休薬する日を設けたり、肝臓や腎臓のチェックのための血液検査を織り込んだりして、安全で効果のある方法を取りながら継続投与していきます。お薬がなくても十分痛みが緩和され、その他の治療でコントロールが可能になることもあります。消化管粘膜を保護する薬を同時に投与する必要がある場合もあります。「痛み止めと胃薬」の組み合わせについては私たちの方が良く経験する投薬セットですが、それと同じです。

(変形性脊椎症などの神経にも関わる疾患では発生したフリーラジカル(活性酸素)が二次的に損傷を起こさせるため、鎮痛薬のほかにビタミンB製剤を処方しています。)

症状は見られないけれども、たまたまX線検査で撮影した部分に異常な関節も一緒に映し出されていたため、関節症が発覚したというとき、どこかで痛みのサインを見逃している可能性も有り、この時も治療の開始をおすすめします。

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こちらの閲覧用ファイルは
高齢犬の生活を援助する内容で過去のものですが
今回も出しておきました。
 

<2・体重管理>

栄養は犬の変形性関節症を予防し、管理するための重要な一手段です。

体重過多は関節や関節軟骨に過剰な力がかかり、変形性関節症を引き起こす原因にもなり、また悪化させる一要因にもなります。脂肪組織そのものも炎症を誘発します。体重管理は非常に重要です。過体重であれば体重を減らしましょう。このとき、やみくもに減量すれば良いわけではなく、筋肉量を減らさずに脂肪だけを落とすのがポイントです。若いときのように「動いて痩せる」ことができませんから「食事で痩せる」ことになります。処方食で空腹感なく必要な栄養素をきっちりと摂取しながらカロリー制限していきます。関節のための特別な処方食もあります。自己流を試すのではなくぜひ処方食に頼った減量法を実施してください。さらに燃焼系のサプリメントを同時に使うこともできます。

過体重ではない場合も、関節症の痛みのために不活動になると体重増加につながる可能性があります。ボディコンディションスコア(BCS)やマッスルコンディションスコア(MCS)を病院で確認し、維持できるようにすることが大切です。

太りすぎから肥満の犬と変形性関節症の関係については研究があり、同じ食事を与えられた犬の長期研究では、25%少ない量を与えられた犬は最適体重を維持していて、変形性関節症の発症リスクが低く、臨床徴候の発症も遅く、重症度も低いという結果が出ています。また別の研究では、肥満から体重減少した犬では、体重が6%以上軽減されると運動性の改善が見られることが示されています。「ふつう」から「やや細め」に該当するBCS4/95/9)が関節症のための適切な体重になります。

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今回作ったファイルはこちらです。
ブログと同じ内容で、もっとも詳しく
書いています。
 

<3・必須脂肪酸>

変形性関節症では関節部に炎症が起こっているため、抗炎症作用のあるサプリメントが薦められます。栄養成分としての具体的なものはオメガ3脂肪酸です。リノレイン酸に代表されるn-6脂肪酸由来のエイコサノイドは血管作用性と炎症誘発性といった作用があります。代謝されてプロスタグランジンなどの炎症を発症させる物質を産生するのです。一方リノール酸に代表されるオメガ3脂肪酸の代謝では組織の炎症は解消されます。

オメガ3脂肪酸と関節疾患の関係は、実験的に作られた関節障害も含めて多数ありますが、報告された研究はどれも効果があり有益という結果です。

腎泌尿器と栄養学の博士であるDr.バージェスはこのサプリメントが「しばしば過少投与されている」と言っています。体重1kgあたりEPADHAの合計は最大175mgが推奨用量で、最初から高用量で与えると下痢をすることがあるため、60~90mgからスタートし徐々に増量するのが好ましいとのことです。

市販されているものは多数あり、一目で良質なものであるかどうかを判断するのは困難です。信頼できるサプリメントをご紹介しています。

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要点をまとめた掲示板です。 

<4・軟骨構成成分>

関節症の時に使うサプリメントとしては、軟骨保護作用の得られるものもおすすめです。軟骨の損傷はあっても、まだ線維軟骨が発達する前段階であるものであればことに有用です。軟骨関節とヒアルロン酸の合成にプラスの効果があります。また、変形性関節症にかかりやすい犬に予防的に使用した場合も有益な効果が得られています。よく知られているのはグルコサミンとコンドロイチン硫酸です。どちらも栄養補助食品の位置づけです。多硫酸化グルコサミノグリカンは米国食品医薬品局(FDA)の承認もある薬剤です。グリコサミノグリカンは関節軟骨の主要成分で、グルコサミンはその前駆体(代謝されてグリコサミノグリカンになる)です。グルコサミンの補充は軟骨の再構築に役立つ可能性があります。残念ながらこれらの成分と関節症に関する研究では、臨床的な有益性の証拠は弱いという結論が出ています。人の整形外科学会の関節炎の診療ガイドラインでもこれら2つの軟骨保護目的使用は推奨されていません。ただし、症状の緩和目的としての使用には一定の理解が得られているそうです。

近年、緑イ貝はグリコサミノグリカンの豊富な供給源として注目の食品です。関節軟骨の補修効果というよりは抗炎症効果によるものと考えられています。臨床的な改善に対する決定的な関係が報告されているわけではありません。

カルトロフェンベットは注射タイプのポリ硫酸化グリコサミノグリカン製剤です。関節の滑液のレベルをあげて、軟骨がすり減らないようにして、関節軟骨を健康に保つのに役立ちます。高齢犬と、変形性関節症の初期段階で来院した場合に最も有効です。軟骨は失われると再生されないため、永久に失われたままになってしまいます。失われる前に補う治療法です。この注射は関節の手術を受けた犬にも有効です。1週間間隔で4回、その後半年に1回の割合で注射していきます。

 

    

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犬の痛みチェック・総合的な治療

 歩けなくなってから介護するのではなく、いつまでも歩いてもらうこと、すなわち健康寿命を延ばすことを目標にお話ししています。ロコモティブシンドロームの入り口になる変形性関節症は、意外と知られていない「かくれ関節症」が多いお話をしました。今回は「それって、関節症の痛みのサインだったんだ!」という、まずは気づいていただくところからお話しを始めます。

 

<犬の痛みチェックシート>

「かくれ関節症」が多いということは、犬は気づいてもらっていない痛みをじっと我慢して暮らしているということになります。それはいけません。どうか犬の痛みに気づいてあげてください。まずは気づいてもらうことから始まります。

「犬の慢性疼痛」に関しては、「動物のいたみ研究会」が作っているチェックシートがあります。当てはまるものはありませんか。

1)散歩に行きたがらなくなった。散歩に行っても走らなくなり、ゆっくりと歩くようになった。

2)階段や段差の上り下りを嫌がるようになったり、その際の動作がゆっくりになった。

3)家の中や外であまり動かなくなった。

4)ソファー、イス、ベッドなどの高いところへの上り下りをしなくなった。

5)立ち上がるのが辛そうに見える。

6)元気がなくなったように見える。

7)飼い主やほかの犬と、またはおもちゃなどで遊びたがらなくなった。

8)尻尾を下げていることが多くなった。

9)足を引きずったり、ケンケンしながら歩く。または足を全く着地せずに挙げながら歩く。

10)     寝ている時間が長くなった。または短くなった。

いかがでしょうか。「この中であてはまるものが〇つ以上あったら関節症です」じゃなくて、「一つでも当てはまるものがあれば関節症の疑い有り」です。

このほかのわかりやすい症状に、次のようなものもあります。

・歩き方がぎこちない。ロボットみたい。飛び跳ねるようなぴょんぴょん歩きをする。

・寝ていて立ち上がるときに時間がかかる。よっこらしょ!というかんじ。

・関節部分が腫れている。関節を触ると骨張った部分が大きくなっているように感じる。

・自分から動いて遊ぶことをしない。ボールを追いかけない。

・同じ姿勢をずっとしていない。落ち着きがない。

・排便や排尿の姿勢が変わった。片足をあげることができない。排泄中によろける。

・手足の同じ部分を舐め続けている。

・しばらく立っていると後ろ足が小刻みに震える。

・触られるのを嫌う。手を出すと不機嫌になって威嚇してくる。

このような変化が認められた場合は慢性の痛みで苦しんでいる可能性があります。ぜひとも診察にいらしてください。

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こんな症状はありませんか。


 
<運動器疾患の診察は?>

「うちの子、関節症かも」ということで来院された場合、ご家庭でどんな生活をしていて、これまでとどのような変化があるのかということをお伺いします。思い当たる節や気になることなどのメモを持ってきてくださると診察当日の言い忘れや伝えそびれがないため多くの情報をもらうことができるので私達にはわかりやすいです。うまく言葉にすることができない行動もありますが、そのようなときにも気になる動きを動画に撮って来てくださるとさらにわかりやすく、ありがたいです。

診察室内または外の駐車場で歩く姿勢(可能ならば走ったりもしてもらいます)、立っているときの姿勢、座っているときの姿勢などを見せてもらいます。診察台の上では筋肉や関節部分を触らせてもらいます。筋肉量の衰えはないのか、太ももは右と左で差がないか、関節を動かしたときにごりごりする音が伝わってこないか、十分な角度まで関節を動かすことができるのかなどをチェックしていきます。

ここで大きな異常が見つかるとX線検査です。

関節症の診察は問診と身体検査が中心になります。その他の病気や投薬に際して必要になる場合は血液検査を実施します。


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お手にとって見やすい
閲覧用も作りました。
掲示板の下に下げておきます。
 

<関節症の治療>

「変形性関節症」が確認されたら治療を開始します。治療の目的は痛みを抑え、関節機能を維持する(進行を抑える)ことです。筋力を高め、関節の動く範囲をできるだけ広げ、今の生活の質を改善しつつ、将来的な関節の(今以上の)変性を防ぐことが望まれます。すり減った関節軟骨を増やすとか、変形した関節を元に戻すといった原因に直結する治療法は現在のところないので、痛みを緩和する治療と代替療法を組み合わせた複合的な治療を行ないます。(マルチモーダルアプローチといいます。)

ボート競技のエイトを想像してもらうといいと思いますが、オールの一つ一つが治療法になります。すべてが噛み合わさってうまくいくとボートが正しい方向に向かって移動していきます。同じように、それぞれの治療が連携すると関節症の治療も思い通りの目的に向かって成功します。オールは一つだけだとがんばって漕いでもなかなか前には進まないことをご想像ください。

主な治療法は次の通りです。

    痛みの管理~消炎鎮痛薬NSAIDsほかの薬剤

    体重管理~栄養学的なカロリー管理

    必須脂肪酸~サプリメント

    関節構成成分~サプリメント

    環境改善~家の改造

    リハビリテーション~運動療法

病院ではお薬を処方したり、おすすめのサプリメントを紹介したり、おすすめのリハビリテーションをお示ししたりするくらいです。投薬をはじめ、ほとんどの治療はご家庭で行なっていただくことになります。是非とも愛情を持って、飽きずに、諦めずに行なってください。



続きは来週に。

 


 

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犬のロコモティブシンドローム・関節の構造


いつまでも元気で歩けるように、

犬のロコモティブシンドロームについてお話しします。冷え込みが強くなると痛みを伴う運動器の病気で犬猫の来院が増えてきます。今日は犬のロコモティブシンドロームについてお話しします。

初回はロコモティブシンドロームの解説と関節の構造について。

 

<ロコモティブシンドローム?>

「ロコモティブシンドローム」という言葉をご存知でしょうか。これは日本整形外科学会によって2007年に提唱された人の方の概念です。別名「運動器症候群」で、略して「ロコモ」と呼ばれることもあります。運動器というのは、身体を動かすために関わる組織全体のことで、骨、筋肉、関節、靱帯(じんたい)、腱(けん)、神経などから構成されています。ロコモティブシンドロームは運動器の障害や衰えによって歩行困難から要介護になるリスクが高まる状態を言います。

人でロコモティブシンドロームの原因疾患というと、運動器の病気と加齢による運動器の機能不全の2系統があげられています。人のロコモの原因となる主な運動器疾患は変形性関節症、椎間板ヘルニア、骨折や骨粗鬆症、関節リウマチ、脊椎症です。専門家たちは私たちが長生きすれば、生涯に何らかのかたちの変性性関節症を患うことがあると言います。

 

<犬もロコモティブシンドローム>

犬に多いのは変形性関節症、変形性脊椎症、椎間板ヘルニアで、人と似ています。犬の変形性関節症の罹患率は高く、成犬の5頭に1頭は症状を経験しているという見解が示されています。また加齢により筋力が低下し、持久力やバランス能力が低下するのも人と同じです。犬も人と同じようにロコモティブシンドロームがあると整形の専門医たちは言っています。そしてこわいのは、犬は人よりもずっと早く老化するため、多くの場合、変形性関節症が人よりも早く進行することです。飼い主さんが愛犬に症状があることに気がつかないでいるうちに変形性関節症は管理が困難になるまで進行してしまうかもしれません。治療と管理には早期診断が不可欠です。歩けなくなってから介護するのではなく、いつまでも歩いてもらうこと、すなわち健康寿命を延ばすことが人と同様に大切なことです。まずはロコモティブシンドロームにならないようにしましょう。その一つが変形性関節症について知っていただくことです。

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人用にはいろいろなロコモ関連商品が出ていますね。
  

<関節の構造>

ここでちょっと、関節と関節軟骨の仕組みについてお話ししておきます。これがわかっている方が理解が進むと思います。

身体を支えるのは骨です。そして骨は家に例えると柱に相当します。家はテントのように曲げて収納することはできませんが、身体の方の骨は関節があるので伸ばしたり曲げたり動かすことができます。折りたたみ式の家のようです。関節は骨と骨をつなぐジョイントですが、なめらかに関節が動くための仕組みがあります。骨の末端は関節軟骨になっています。関節軟骨はなめらかで硬い骨同士が直接ぶつかり合わないようになっています。関節軟骨は骨のクッションです。それから骨と骨は筋肉の最終点の靱帯(じんたい)でぐらぐらしないように固定されています。関節は関節包(かんせつほう)という強力で丈夫な膜で袋状に包まれています。そして関節包の内側は滑膜(かつまく)で、ここからぬめっとした液体(ムチン様成分=ヒアルロン酸です)が分泌されます。これが関節液です。関節液は粘性が強い液体です。関節液は滑膜から出て、また滑膜に吸収されて常に新しいものに変わっています。

関節液はエンジンオイルに例えられることが多いです。それは潤滑の役目を担っているからです。それだけではありませんけれどね。

 

<関節軟骨の構造>

関節内の関節軟骨は、へちまをゼリーで固めたような構造、とでも言いましょうか、コラーゲン線維の網目構造のまわりに軟骨基質が詰まっている状態です。コラーゲン線維がへちまのスジで、軟骨基質がゼリーです。ゼリーというと柔らかに感じるかもしれませんが、軟骨基質は中に水分をたくさん含む高分子化合物です(プロテオグリカン複合体)。ここに軟骨細胞が点在しています。

関節軟骨(ゼリーで固まったへちま)が関節液(ぷるん、ねっとりの液体)を保持しています。衝撃を受けると関節軟骨は関節液をしみ出させるので衝撃を吸収できるようになっています。ゼリーから水分が出たり入ったりするのを想像してみてください。軟骨組織には血管や神経は通っていません。ですからほんの少しの衝撃で出血したり神経が傷ついて痛みが走るというようなことは起こりません。軟骨組織は血液ではなく、関節液から栄養をもらっています。

ゼリーに例えましたが、この軟骨基質を構成するのがあのヒアルロン酸です。グルコサミン、コンドロイチンもプロテオグリカン複合体の構成成分になります。 
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今月は犬と猫の関節症について掲示しています。
 

<関節の老化>

関節軟骨は荷重を受けると軟骨の表面が互いに密着しすれてきます。軟骨組織がすり減っても関節軟骨にある軟骨細胞が軟骨基質を作ってほんの少しですが組織修復します。

けれど老化すると、修復のスピードがすり減りのスピードに追いつきません。関節を使いすぎて痛んだときには、少し安静にして関節を休ませてあげる必要があります。その一方で、修復には軟骨細胞が元気に働く必要があります。軟骨細胞に栄養を届けるのは関節液です。そして関節液の栄養を軟骨細胞に染み渡らせるのには少しの運動が欠かせません。ある程度関節を動かしてあげないと滑膜からあたらしい関節液が分泌されないのです。骨折してギプスで固定されたあと関節を動かさなかったらうまく関節が曲げられなくなったという話を聞いたことがあるでしょう。休ませてばかりいてはいけないのです。関節を健康的に維持するためには無理のない程度で静かに動かす必要があります。

<犬の変形性関節症>

変形性関節症は、関節軟骨の変性や破壊が起こった結果、骨や軟骨に正常とは異なるトゲトゲしい構造ができて、関節を包む滑膜に炎症が生じる病気です。単純に「関節炎」と説明することも多いのですが、「関節炎」の原因は変形性関節症以外にもあります。変形性関節症は加齢によって発症してくる関節疾患の代表的なものです。

滑膜に炎症が起こると痛み物質が出てきます。徐々に炎症は重症化していきます。そして飼い主さんが異変に気づいて来院してくれるわけですが、実はX線検査に異常が認められるときには最終段階になっています。関節炎がひどくなると痛みのために動くことを嫌い、筋肉を動かさなくなるので筋肉が細く萎えてきます。また長時間同じ姿勢を取っていると関節は硬くなり固まってきてしまいます。こうして「動けない」「立てない」犬になってしまいます。

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これって年のせいじゃなかったんですね、
って気づいてください。
そして治療のために
是非来院してください。 

<かくれ関節症>

胸やお腹のレントゲン撮影をしていると背骨の骨が一緒に撮影されます。このときに偶然脊椎の異常を見つけることがあります。「ここ、痛い場所ですよ」とお知らせするのですが「特に何もおかしなことはありません」と言われることがあります。知られていない炎症が進んだ結果が「かくれ関節症」になります。

日本大学動物病院での調査報告ですが、10歳を超えた犬のX線写真を調べ直したら12歳以上の犬の45%以上に変形性関節症または変形性脊椎症が見られたそうです。大型犬では74%に、小型犬でも34%の割合で異常が発見されました。さらに変形性関節症の見られた犬のうち、何らかの関節症関連の症状に飼い主さんが気づいていた割合は約半数だけ、変形性脊椎症に関してはたったの7.6%の飼い主さんしか気づいていなかったそうです。

初期の段階でX線撮影しても「ここ!」という目立った異変が見つけられることはまれです。ですからX線での異常があるにもかかわらず知られていなかったというのは、「かくれ関節症」が多いことを物語っていると思います。

   

続きは次回に。

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猫の骨関節症・治療

猫の骨関節症のおはなしの2回目、治療についてです。

 

治療により猫はQOLが向上します。ぜひ骨関節症にご理解いただき、治療をしていただきたいと思います。治療の内容ですが、薬だけでなく、さまざまな方面からのアプローチがあります。

 

1.生活環境の改善

 これはご家族にご協力いただく内容です。これを一番最初に持ってきているのは、そのくらい重要だからです。安易に「お薬でなんとか」と思わないで、実践してください。

①寝る場所が高いところにあるなら低い場所に下ろす。

②日中よく行く場所(トイレや食餌の場所、給水器のあるところ)へのアクセスの途中に休憩できる座布団などを置く。

③トイレや食餌の食器、給水器を近くに寄せる。

④トイレを浅いものに変更する。

⑤猫が乗ってもよろけないような細かな砂を選ぶ。(固まる砂が好ましいです。)

⑥ベッドや窓辺がお気に入りならそこへ行けるようスロープを設置する。(傾斜角度は30度未満に。)

⑦ベッドパットは柔らかなものにし、局所暖房器具を使用する。

⑧グルーミングや爪切りを家族が肩代わりする。(もしくは病院で行います。)

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猫の骨関節症は地味ですが多発する病気でした。

 

2.鎮痛療法

疼痛緩和は効果的です。いわゆるNSAIDsが好ましく、チュアブル(喜んで食べることができる錠剤)とシロップの2剤を選択することができます。猫への飲ませやすさを考えて処方します。高齢猫では腎機能の低下がつきものですが、最近の研究ではメーカーが推奨している投与量よりも少ない量で有効な鎮痛効果があることも知られており、腎疾患を持っていても安全性は高くなっています。鎮痛薬の副反応としては消化器症状が主になっていて、嘔吐や食欲不振など飼い主さんにも分かりやすいです。ほとんどの猫は痛みから解放されて活動性が上昇します。

 グルココルチコイドは経済的な面で飼い主さんにやさしい薬ですが、コラーゲンやそのほかのマトリクスを低下させてしまうため結果的に軟骨に障害を与えることになります。骨関節疾患では使用しません。

 

3.軟骨保護のサプリメント

 軟骨の分解を減速させたり、軟骨の修復を促進させたりする目的で関節のサプリメントを使用します。コンドロイチンやグルコサミンは相乗効果があるため両方を含むものが適切です。コンドロイチンは軟骨関節に存在するグリコサミノグリカンで、グルコサミンはグリコサミノグリカン産生の前駆体です。滑膜細胞によるヒアルロン酸産生も行っています。

 最近当院でおすすめしているサプリメントのひとつにモエギガイ抽出オイルがあります(商品名:アンチノール)。脂肪酸製剤は多くのメーカーから出ていますが、この製品は抗炎症作用が大変強く、使用してみて効果発現までの期間が他社のものに比べ大変短いです。つまり速く良く効く感じがします。

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日常の注意点です。
 

4.体重管理

 肥満は猫の骨関節症発生の原因として確定しているものではありません。しかし、罹患している関節への過剰な体重負荷は骨関節症を悪化させるものであることが認められています。適正な体重に持っていくことは長期管理を行う上で大切です。

 

5.理学療法(リハビリテーション)

 猫が動きたがらないとき、家族が体を触るのを嫌がらなければ、マッサージをして肢の曲げ伸ばしをするのは良いことです。犬のようにバランスボールや水中ウォークなどができないため、猫のリハビリは受け身で関節を動かすことが主体になります。

 針治療は縮まった筋肉に関連した疼痛をやわらげる効果があることも知られています。残念ながら当院では針治療は行えませんが、お近くで行っている病院があればお願いすると良いかもしれません。有効という報告があります。

 

6.食餌療法

 犬のJ/Dのような関節のための処方食は日本では発売されていません。ざんねんですね。Hill’sJ/DやロイヤルカナンのMobilityにはアルファリノール酸やエイコサペンタ酸、ドコサヘキサエン酸などの脂肪酸が添加されています。また抗酸化物質や軟骨合成を促進させる物質やグルコサミン、コンドロイチンなども含まれています。つまり、いつもの食事に上記サプリメントを摂取すると処方食を食べているのと同じことになります。そうした意味からもサプリメントを飲ませるのは有効な治療法です。

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さまざまな角度から総合的に治療できます。
今月いっぱい、猫の骨関節症の掲示板を続ける予定です。

猫の骨関節症のお話、これでおしまいです。

犬と猫とでは現れる症状は違いますが、病態や有効な治療などは共通している部分もあります。犬の骨関節症でも触れた部分があります。参考になさってください。

 
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