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てんかん発作と新しい治療

 神経系の病気、てんかんの治療に関するお話しです。ちなみに10月はてんかんについて知ってもらう月間でした。ひと月遅れですが多くの方にこんな病気があることを知ってもらえるといいかな。(ハートニュースと同じ話題です。こちらの方が内容濃いです。)

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<特発性てんかん>

突然、全身性のけいれんが発生することがあります。けいれんは大脳で強い電気信号が出されて発生する発作で、てんかんでは発作が繰り返し発生します。比較的若い年齢、1歳から5歳ころに発生することが多いのは「特発性てんかん」で、事故や外傷などの心当たりも無く発生します。脳の中の変化は全身麻酔下での画像検査や脊髄の検査で調べますが、調べてみても脳内に何か特別な変化がみられないのが特徴です。一般の臨床ではこの検査を行えないことが多いです。初めての発症年齢や発生状況などから、おそらく「特発性てんかん」でしょうと仮診断します。主に遺伝的な要因によって発生するといわれていて、ビーグルやトイプードル、ミニチュアダックスフンド、ボストンテリア、ポメラニアンなどが好発する品種です。猫にも発生はあります。

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<症候性てんかん>

「特発性てんかん」のほかに、交通事故等で急性の脳損傷があったときや、人と同じような脳血管障害が発生したとき、脳に腫瘍ができたときにも、同じような意識障害や全身性のけいれんが発生することがあります。急性期を治療で乗り越え命を救うことができても、脳にダメージがあるため、神経学的な合併症を残すことになります。これは「症候性てんかん」です。事故などの心当たりがない高齢の犬や猫ではこちらを疑うことが多いです。

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<けいれんの種類>

全身の筋肉が突っ張る「強直発作」や、全身の筋肉がガタガタし倒れて走っているように見える「間代発作」、突っ張りからガタガタに移行していく「強直間代発作」があります。(立ち木のようにぼーっとしてしまう小発作もありますが、今回のお話しには入れていません。)これらのけいれんは数秒から数分間でおさまるはずですが、実際に目の前で発作が起こっている姿をみると、それよりも長く感じられると思います。

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<治療は>

特発性てんかんの場合は、発作の頻度や重症度から、治療するのにふさわしい状況かどうかを判断して、投薬を始めて貰います。

はじめての発作のときにはすぐに来院してくださいますが、飼い主さんの心配とは裏腹に来院時にはケロッとして何事も無かったかのような様子を見せてくれる犬(や猫)もいます。

二度三度と繰り返すうちに、発作にも慣れっこになってしまわれる飼い主さんもおられます。「この前の発作がいつ頃あったのか思い出せないくらいずーっと前」ということもあるでしょう。だいたいの目安ですが、3か月で2回以上の発生があると抗てんかん薬の服薬基準に達しています。抗てんかん薬は、脳の過剰な興奮を鎮めて発作が発生するのを防ぎます。発作が起こる頻度が上がってきたらお薬を始めてください。

いきなり「重積発作」という長時間続くけいれん状態が起こったような場合は、また別の怖さがあります。飼い主さんはびっくりして病院に飛んできてくれます。来院時にもけいれん発作が続いたままだったり、一度はおさまったのにまた繰り返しの発作がみられたりすることがあります。これは緊急的な状態です。すぐに発作を止める治療(即効性に効く薬を使います)を開始します。救急処置で発作が鎮まる傾向になってきたら、状態を見ながら抗てんかん薬(ふだん処方する持続時間の長い薬)を始めます。

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<難治性てんかん>

このように抗てんかん薬による治療を継続していても、そしてそれがとても適切な量で投薬忘れもないにも関わらず、発作を十分にコントロールできずに常に発作を繰り返してしまうことがあります。約30%の犬にこれがあるとされています。この子たちは「難治性てんかん」とか「薬剤抵抗性てんかん」といわれています。それでも抗てんかん薬(+アルファの薬)で、発作の重度や長く続くことは抑えられているはずです。

 

<新たな治療法・食事療法>

これまで「てんかん」の治療は内科的に薬を飲ませて貰うことだけしかありませんでしたが、このたび食事療法も新たな手段として取り入れられるようになりました。てんかんに大変効果のある療法食が発売されたのです。欧米では数年前から使われています。

商品はピュリナ社から発売されている「PURINA PRO PLAN VETERINARY DIETS」(ピュリナ・プロプラン・ベテリナリーダイエット)シリーズの「NEUROCARE」(ニューロケア)です。

ケトン食療法は人でも取り入れられている治療法です。エネルギーを産生する三つの栄養素である炭水化物、蛋白質、脂質は、エネルギー産生栄養素のバランスが取れていることが望ましいとして、人では摂取するのに好ましい栄養素比率のおおよその目安があります。ケトン食療法ではあえてその割合を大きく崩し、炭水化物を減らして身体にブドウ糖を枯渇させます。ブドウ糖はすぐに利用できる栄養素ですが、ブドウ糖が無いときに身体は別の解糖サイクルが周り、ケトン体を産生します。脳ではブドウ糖が無いときにケトン体を代りの栄養素として利用しますが、そのときに抗てんかん作用も示すことがわかっています。今回の療法食は、脂質のエネルギー利用割合が炭水化物+蛋白質に比べて非常に高くなるように設計され、またケトン体が発生しやすいような中鎖脂肪酸(MCT)オイルやオメガ3脂肪酸(DHA,EPA)を添加して作られたものです。

てんかんのお薬を減らすことはできませんが、発作の抑制に効果があり、これからの犬のてんかん治療に期待が持てそうです。(すでに欧米では大ヒットになっているそうです。)

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<トピックス・新治療>

人では既にスタンダードな治療になっている脳外科治療ですが、動物の世界でも始まっています。「小動物臨床におけるてんかん外科の導入」というテーマで研究助成を受け、研究が行なわれているそうです。

簡単に手が届くような治療ではありませんが、これからの獣医学の発展に無くてはならないことです。

また海外では、医療用マリファナで知られるカンナビジオールを難治性てんかんに臨床応用した試験が始まっているそうです。使用を合法とされる国においてはこんな研究も進んでいるのですね。

 

 <おわりに>

9月のFASAVA学会は長くお休みをいただきご不自由をおかけしました。今回は神経学関係のお部屋で、世界の第一級そして日本の第一級の治療のお話しを聴いてきました。当院では、これまで特発性てんかんに対する治療は抗てんかん薬による内科療法が100%でしたが、これからはこれに療法食も加えます。(世界の専門医たちの仕事からしたらほんの小さな変化ですが、一応進歩しています。)抗けいれん薬で治療をしているわんこに、この療法食が受け入れられますように。

 

なお、糖質制限ダイエットでもこの治療食と同じようにケトン体が発生します。ケトージスは「子供の自家中毒」とか「妊婦さんのつわり」のような状態です。(嘔吐ゲロゲロ状態。)また糖尿病を放置していて発生する「糖尿病性ケトアシドーシス」は「死んじゃうよ!」と叫びたくなるほどの病態です。みなさま、くれぐれも糖質制限ダイエットはやり過ぎないように、ご自身のお体を大切にお願いします。

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前庭疾患

 「頭が傾いている、ふらふらする、食欲がない、食べたけど吐いてしまった」などで連れてこられる犬を観察すると、目がぐるぐる回っていることがあります。歩く様子を見ると同じ方向に輪を描いて回っていることもありますが、支えないと足がもつれてしまったり、止めても止まらない、芋虫ごろごろのように(身体の軸に沿って)回転してしまうなど運動機関にも問題が発生しています。これらは「前庭系」と呼んでいる、身体を真っ直ぐにさせることに関係する器官に障害が発生したときにみられる特徴的な兆候です。このような症状を出している病気を総称して「前庭疾患」といっています。今日は前庭疾患についてお話しします。

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<からだが真っ直ぐに立っていること>

耳の仕事はもの音を聴くことのほか、からだのわずかな動き(傾き)を関知して体位を保つ(重力に対して垂直になるようにバランスを保つ)という平衡感覚の仕事も行っています。砂時計を反転させたときに上から砂がさらさらと降りてくるわけですが、傾いていると下の容器に真っ直ぐ入りません。このような砂の動きを身体の器官がキャッチして、身体を真っ直ぐにさせる神経伝達が起こります。この仕組みに関与しているのが前庭神経です。体操競技の選手がさまざまな技で身体をひねっていても、フィギュアスケートの選手たちがくるくる回転しても、その後身体を真っ直ぐに立てるのはこうした平衡とバランスの機能がからだに備わっているからです。

 

<前庭疾患にみられる神経学的な変化>

まず飼い主さんがはじめに気づくのは「ふらつき」です。平衡感覚がなんかオカシイというとき、おそらく荒波の中の船にいるような感覚ではないかと思います。真っ直ぐに立っているのか、傾いているのか、次々に状況が変わるので身体が対応できていない状態です。船酔いは「食欲不振」と「おう吐」をもたらします。前庭疾患も乗り物酔いのときと同じように「食欲不振」と「おう吐」を起こします。

病院で発見できるからだの変化として「姿勢の変化」があります。「首をかしげている」のは軽度です。傾きが大きくなると「身体の軸が傾いている」状態になります。そしてそこから「横になってしまう」、さらにそれが連続して「回転してしまう」などの変化もあります。

立っていられる場合は歩き方を観察します。犬は真っ直ぐ歩いているつもりかもしれませんが、大きく輪を描いて頭を傾けている方向に進み、さいごはまた元の位置に戻ってきます。旋回運動といっています。

「目の動き」にも注目です。「目玉があっち、こっちに向いている」ことや「目がぐるぐる回っている」ことなどが起こります。視線が合いません。

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<原因は何だろうか>

学問的には脳の問題(中枢性)か、または前庭部分の問題(末梢性)か、に分類していますが、臨床的に区分を付けるのは難しいことが多いです。髄膜脳炎や小脳部分の血管性の問題(小脳動脈の閉塞や出血など)、腫瘍などが中枢性の原因として知られています。MRICT、脳脊髄液の検査なども含め精査が必要です。これはおかしいぞ!という場合に高次病院を紹介することになるパターンです。末梢性の原因としては、内耳に発生した炎症が元で前庭症状が出る場合です。それから、きっとこれが一番多いのだろうと思いますが、高齢犬に発生するタイプで「特発性前庭疾患」です。「特発性」というのは「原因不明の」と同じ意味ですが、内耳の中のリンパ液に異常があるのではないかとか、前庭器官が酔っているのではないかとか、自己免疫性疾患から発症しているのではないかなど疑われています。

この病気を人でいうところの「メニエール病」みたいに目が回って気持ちが悪くなる病気です、と紹介することもありますが、人の病気と正しく相関する病名ではありません。人では「突発性難聴」でも急なめまいが起こるわけですが、犬ではすでに老犬性難聴になっていることも多く、前庭疾患を機に難聴が発生したかどうかを見極めることも難しいです。

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<実施する検査>

発生の経過は飼い主さんでなければ分からないことですが、ゆっくりと進行してきたのか急に発生したのかは診断を進めるのにヒントになります。

意識レベルの確認や、立っているときにみる神経学的な検査の反応が高次病院へ繋げた方が良いかどうかを見極めるポイントになります。

内耳の検査は特殊なため、外耳の検査を行うくらいしかできません。耳鏡で耳を覗いて観察することです。けれど必ずしも外耳炎を伴っているとも限らないので、外耳炎があれば炎症が中耳や内耳に及んでいるだろうと想像しますが、外耳の炎症が無かったといっても内耳が無事かどうかの判断は難しいです。

血液検査は他の病気を併発していないかどうかを確認することも含め実施します。クレアチンホスホキナーゼ(CPK)は筋肉に大量に存在する酵素ですが、神経の損傷があるときにも高い値になるため注目する項目です。自己免疫疾患が特発性前庭疾患の原因の一つとして疑われていることもあり、C反応性タンパク質(CRP)の値にも注目します。さらに甲状腺機能低下症が前庭疾患の原因のこともあるため、内分泌学的な検査(T4)も行います。

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<支持療法と対症療法>

はっきりとした原因がつかめれば、原因に対処した治療を行いますが、大方は原因の特定はできないので、特効薬はありません。それでも「食べられない」「おう吐してしまう」といった問題に対しては輸液で脱水しないようにする支持療法や、吐き気を抑える注射をするなどの対症療法を行います。一般に静脈を経由して点滴を行うわけですが、ぐるぐる回転がひどいときは点滴の管もぐるぐる巻きにしてしまうことがあり、皮下補液に切り替えざるを得なくなります。乗り物酔いに似た前庭疾患は、おう吐をコントロールするのに酔い止めの薬も併用します。内耳の炎症が細菌感染からおこることがあり、抗菌薬を使用します。自己免疫性の病気が疑われる場合はステロイドの薬です。甲状腺機能低下症が確認されれば甲状腺ホルモンの薬です。あまりにもぐるぐる回転が著しく静かにできないからという理由で、鎮静関連の薬を使用する先生もおられます。当院ではトランキライザーは使用していません。

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<治りますか?>

たいていは数日で目の回転が抑えられます。しっかり止まるまでには至らないにせよ、回転スピードが遅くなるとかの変化は見られます。そして1週間から10日くらいの経過で食事もとれるくらいに回復し、2週間から3週間もすると以前と同じ生活をすることができるようになります。しかしひどく「芋虫ごろごろ」状態になってしまった場合の回復にはもっと日数が必要です。ひと月近い経過になる場合もあります。根気強い治療の継続が必要です。

それでも首の傾きは残ってしまうことがあります。特発性前庭疾患で治療後に追跡調査を行うことができた49頭のうち26頭で2か月後にも首の傾きが残っていたという報告があります。半分くらいの犬で完全な元通りにならないということになります。



寒い時期の方が前庭疾患の発生が多いように思います。頭をかしげてよたよたしているときは早めにお越しください。

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認知機能障害・2

 認知機能障害についてのお話し、続きです。

治療が可能なのかどうか、もしできるとしたらどんな治療法があるのか、という点をお話しします。

 

<治療が可能でしょうか>

愛犬が認知能力を失うのを見るのは悲しく、ときには邪魔になると感じてしまう飼い主さんもいるかもしれません。(大丈夫。あなただけのことではありません。)けれど失った機能を改善し、生活の質を向上させるためにできることがあります。早期に気づくことができれば、早期に介入することができ、症状の進行はより穏やかになります。「プロセスを止めることはできないけれど、1つの問題から3つの問題に移行しないように処理を遅くすることは可能」なわけです。

高齢動物ができるだけ長い間脳の機能を維持し、認知機能低下の発症と進行を遅らせるのを助けるためにできることはたくさんあります。

 

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<環境エンリッチメント>

「環境エンリッチメント」というのは動物の健康のために飼育環境に変化を与えること、飼育動物に刺激を与え動物の望ましい行動を引き出すことなどをいいます。本来の環境ではないところで飼育されている動物園動物などに、動物の福祉の観点から使われることが多いです。

この範疇に入る生活改善的要素の濃い治療法については、遊びや適度な刺激で脳を活性化できるようにすること、十分な休息が取れるようにすること、排泄問題の解決に結びつくことの3つを提案したいと思います。

①おもちゃ

知育玩具と呼ばれる犬のおもちゃの中には、食べ物のパズルのようなものがあり、脳を刺激します。工夫しないと食べられないおもちゃを食事に利用すると、脳は活動的な状態に保たれるようです。

猫の場合も同じで、とにかく屋内環境を豊かにする創造的な方法を考えてください。

②屋外遊び

定期的に屋外で遊ぶことも犬の脳を刺激し、学習や記憶能力を向上させることができます。年齢や体調に適した定期的な運動は、高齢動物の身体と心を活発に保てます。もし心臓病や関節疾患などで運動の制限を受けていないのであれば、リードをつけて、他の犬や人と交流する機会が得られる公園に連れて行ってください。身体的、精神的に活発な状態に保つことによって、劣化を遅らせることができます。

③安眠できる部屋

静かで暗く快適温度の部屋が必要です。暑いのは人でも寝苦しく、夜間に覚醒します。

④快適なベッド

ふわふわすぎる布団は足腰が弱ってきた犬が立ち上がるのに無理があります。ある程度の固さが残る体重分散型のマットレスが高齢犬用に開発されています。病院でもご紹介しています。

⑤エンドレスサークル

行ったり来たり、ぐるぐる回る運動を延々と続ける場合、タンスやソファの隙間に入って出られなくなり鳴き出す場合などに有効なのは、円形のサークルです。そのまま疲れて動きを止めて眠っても良いように、床には滑りにくいマットを敷いたり、その上をペットシーツで敷き詰めたりします。

⑥トイレに誘う

ある程度の時間が来たら、排泄場所に連れて行きます。屋外のこともあるでしょうし、屋内のペットトイレのこともあるでしょう。

⑦トイレ環境

トイレ場所に行くまでが困難になってきている場合は、あらためて近いところ、利用しやすいところにトイレを近づける方法で改善されることがあります。

⑧おむつ

排泄のための再訓練は困難なことが多く、管理できなくなってくるとおむつをかけることが普通になっているようですが、意識的な随意排泄ができる段階では、狭いエリアでのペットシーツ敷き詰め生活をおすすめします。どうしてもおむつは身体的な拘束がかかり、歩行しにくくなるからです。運動は脳の血行を促進するため認知機能を維持させることができます。歩行しやすいかたちを取らせてやりたいです。

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<行動学的エンリッチメント>

行動学的な言葉で「行動修正療法」というのがあります。行動療法とも呼ばれます。これは問題行動を望ましい行動に変える、改善プログラムのようなものです。

昼間、積極的に活動させると、夜間の睡眠時間を増やすことができます。脳に刺激を与えるところがポイントです。

①運動

規則的な運動や散歩、そこまで行かなくても、人でいったら「体操」程度の軽い運動などで筋肉を動かすことは血行を改善させ、脳の血液循環を良くします。とにかく身体を動かすことです。必ずしも屋外に散歩に出るということではありません。屋内で追いかけっこしたり、さらに高齢になっているときにはマッサージするだけでも良いです。ハイドロセラピーや温熱療法などのお金をかける治療もありますが、家庭でもできることは身体的な運動です。

②遊び

おもちゃを使った遊び、ことに初めてのおもちゃで考えさせるおもちゃを与えるのは脳に効果があります。またご褒美を使ったトレーニングも脳に刺激を与えます。子犬の頃学習したことを忘れないようにする繰り返し学習も効果的です。

③社会的関わり

人や他の犬と関わるのも相互反応に変化がもたらされます。積極的にコミュニケーションさせてください。

④新しいもの

何でも「はじめて!」の経験は脳を刺激します。新しいおもちゃ、はじめて食べるもの、はじめて通る道、はじめて行く所には新たな刺激が沢山あります。小さい子どもの「はじめて」の経験は、脳が疲れてその晩はよく眠るわけですが、それを老犬にも応用してみます。

⑤屋外の空気

散歩や連れ出し(犬が歩かず人がだっこや乳母車で出かける散歩)には視覚的な刺激や聴覚、嗅覚などの刺激もあり、太陽光を当てることができます。

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<サプリメント>

はじめに犬や猫が服用している薬を見直します。高齢動物は、若い動物とは違った代謝になります。犬や猫が何らかの薬を何年も飲んでいると、年を取るにつれて効果が異なってくる可能性があります。あらためて薬を処方し直します。

サプリメントを紹介します。

SAMeS-アデノシルメチオニン)

脳機能の衰えを止めたり改善したりするのに安全で効果的です。もしこれまでにも投与していたのであれば引き続き与えてください。

②中鎖脂肪酸(MCT-オイル)

脳のエネルギー代謝を改善し、高齢のペットに脳損傷をもたらすアミロイドタンパク質の蓄積を減少させることが示されています。 ココナッツオイルがMCTの豊富な供給源です。

DHAEPA

神経細胞膜を安定化させます。セロトニン作用を強め、認知力や記憶力、活動性の向上が期待されます。セロトニンには体内時計の調整作用、覚醒作用、抗不安作用などがあります。

④フォスファチジルセリン

細胞膜を形成するリン脂質(レシチン)の一種です。脳内の情報伝達や脳細胞の活性化に効果があります。

⑤α-カソゼピン

GABA様作用です。不安反応を抑制します。攻撃性のある場合、静穏になる作用を期待して使います。このサプリメントだけを使うことはありません。

⑥抗酸化剤(フラボノイド、αトコフェノール、L-カルニチン、ビタミンCなど)

フリーラジカルによる損傷を防ぐものです。年齢関連の認知障害を抑制することができます。

⑦合成メラトニン

メラトニンの補充をします。睡眠と覚醒のサイクルを正常化するのを期待して使われます。

高齢の犬は夜間に睡眠障害を起こすことがあります。昼夜通して眠りがちですが、一晩中目を覚まし、徘徊したり、夜鳴きを起こしたりします。心配や不快を感じています。そのため、神経細胞を活性化させる物質の他、落ち着かせる効果を持つもの、抗酸化作用があるもの、睡眠に関係するメラトニンなどがあります。脳に良いとされるサプリメントは多数出回っています。それぞれに犬の認知

機能の減退を遅らせるのに役立つだろうと思いますが、薬局やネットで探し出して購入する前にご相談いただけると良いかと思います。

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<最適な食事>

犬の環境を豊かにする努力に加え、認知症予防に配慮した食事を組み合わせることは、認知力向上のための最大のチャンスを提供すると言われています。

犬も猫も、年齢に応じて、最適な食事があります。それは良好な健康と活力の基礎になります。特定の犬用療法食は、認知機能障害を緩和するために配合されています。これは細胞の健康を促進し強化するもので、たいてい抗酸化物質と認知症の健康管理に重要なオメガ3脂肪酸が含まれています。また一般食でも、シニア動物用の食事にはオメガ3必須脂肪が含まれているものがあります。

動物の身体は、代謝、成長および治癒の過程を促進するために理想的なバランスがとれたエネルギー源を必要としています。高齢の動物に適した食事は、生き生きとした動物の健康の源になります。

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<定期検診>

高齢になってからは、年に2回の検査を受けると良いと思います。そうすれば、認知機能障害の問題点を早く知ることができ、またそれに対する治療をはじめることができるからです。身体的な問題の発見と同じくらい、認知機能障害の早期発見は大切です。

環境のこと、行動修正のこと、食事やサプリメントのことなどの推奨事項をお話ししてきましたが、これらのどれも、認知機能低下がかなり進んだ段階では、非常に役立つものではありません。できるだけ早期に問題を診断し治療を開始することが非常に重要です。

家にいるときに気づいた問題や観察点で疑問に思うこと、質問したいことなどをメモしておいて、病院にお越しください。診察室に入るとつい忘れてしまうのが常ですものね。

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<まとめ>

そのほかにも健康への配慮が必要です。

高齢動物は健康的なサイズに保たせましょう。太りすぎの犬や猫は、年を取るにつれて病気のリスクがかなり高くなります。

さらに動物の歯の健康を維持するのも大切です。

認知機能障害のときに使われるお薬もいくつかあります。向精神薬に分類されるお薬です。進行を抑制する薬や不都合な症状に対する対症療法の薬があります。介護されるご家族の精神的な健康も大切です。どうにもこうにも困って、愛犬のことをキライになってしまいそうになる前に、ぜひご相談にお越しください。

認知機能障害は治癒できない進行性の病気ですが、早期の診断と介入は脳の衰えを遅らせ、老化したペットに良質の生活を提供することができます。

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時間には限りがありますね。



 

<おわりに>

918日は敬老の日ですね。愛犬にも愛猫にも、ずっと元気で長生きして貰いたいです。

日野原先生がおっしゃるには「いのちは時間」ということです。大切な家族と過ごす時間、そのものの積み重ねこそが「いのち」なのかもしれません。「命が大切」ということは「一緒に過ごす時間そのものが大切」なのですよね。たくさんの楽しい思い出を作っていきたいです。残りがあと少しになってしまったときに慌てないようにするためにも。

10歳の子ども向けに書かれた本、また幼稚園生にもわかるように書かれた絵本も待合室に置いておきます。子どもだけが読むなんてもったいないです。大人でも涙するくらいに読める本です。お時間のあるときにお手に取ってみてはいかがでしょうか。

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認知機能障害・1

 今日は、動物の認知機能障害についておはなしします。

 

<認知機能障害>

残念なことに、人と同様、犬や猫も、認知機能障害症候群として知られる脳疾患を発症します。けれど人と違って、脳機能が衰えているという徴候は、状態が進むまで気づかれません。それで病気の進行を遅らせるために環境を整えてもらったり、薬の投与をしてもらっていることはほとんどありません。

愛犬がおもちゃで遊ばなくなったり、家族が帰宅したときに玄関にお迎えに行かなくなったり、毎日の散歩ルートを忘れてしまったりした場合、犬の認知機能障害(Cognitive dysfunction syndrome : CDS)、または犬の認知機能低下症になっている可能性があります。

犬の認知機能障害は、脳機能の低下です。 研究によると、認知機能障害の徴候は、

12歳で発生率が増加し、

1214歳の犬で15%くらいが、

14~16歳の犬で30%くらいが、

16歳以上の犬では60%くらいが発生している

ことが示唆されています。これは少なくとも1つ以上の症状を出しているということです。年齢とともに認知機能障害のリスクが高まります。

猫の場合、2011年に猫の認知機能低下について発表した研究で、11歳から14歳までのすべての猫の3分の1が加齢関連の認知低下を起こしていると推定しています。 15歳以上の猫の場合、この数字は50%に増加します。

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認知機能障害のことを掲示板に貼りました。
敬老の日がある9月はずっとこのままの予定です。

 

<脳内に変化が起こる>

愛犬・愛猫の脳機能の低下には物理的な原因があります

認知機能障害は行動学的な問題として提示されますが、根本的な原因は物理的なもので、年齢に関連した脳内の変化の結果です。犬と猫の脳は同様に老化し、神経細胞の変性や喪失、脳血管の硬化、β-アミロイド斑の発生などを起こしています。また神経伝達物質も減少しています。

β-アミロイド斑は、人のアルツハイマー病患者にも見られるものです。Nicholas Dodman先生によると、「正常な老化」というものが存在するそうです。 認知機能のいくつかは年齢と共に減少していくのですが、アルツハイマー病に見られるタイプの認知機能障害は正常ではないそうです。つまり、老化という自然現象ではなくて、ひとつの病気であるという解釈です。β-アミロイド斑は脳の前頭葉に蓄積され、それは最終的に脳の他の領域に広がります。前頭葉は記憶や学習、感覚情報を制御するところで、ここが侵されると記憶をなくしたり、方向を失い、空間認識を欠いたり、運動機能に問題を起こします。それから視力や聴覚、学習した行動にも影響が出てきます。

犬の認知機能障害は多くの点でヒトのアルツハイマー病に類似していますが、人のアルツハイマー病とまったく同じではありません。また今のところ、犬ではアルツハイマー病という分類はありません。現段階では認知機能障害そのものを犬では分類できていません。

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<まずは飼い主さんの認識から>

ほとんどの犬は、品種に関係なく、年齢を重ねるにつれて何らかの形の認知機能障害を経験します。ご家族の多くは、私たち獣医師が「行動学的に問題があるな」と考えるものを、認知機能障害のひとつの症状とは思っていなくて、「歳のせいだよね」と軽く流しています。まずは病院でいつもの様子を話していただくといいと思います。

近頃の「ボールを追いかけなくなった」という行動が、「関節炎を患っていて痛いから動かない」のか、「もうボールに興味がない」のか、または「ボールに気を払えない状態になっている」のか、というような身体の問題と脳の問題を区別し、改善できることがらであれば積極的にトライしていくことが大切かと思います。

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<診断と検査>

認知機能障害のいくつかの症状は、変形性関節症、糖尿病、腫瘍、高血圧症、甲状腺機能低下症、心臓病、腎臓病、それから聴覚および視力喪失などの他の年齢関連症状と重なります。さらに、分離不安症や痛みにより引き起こされた攻撃性行動、家庭での不十分なしつけの結果などの行動学的な問題も含まれてきます。これらの病気による症状ではないことを区別するため、お話しをていねいにうかがう必要があります。そして犬の症状に応じて、X線、血液検査 、尿検査 、また他の診断検査を行います。

でも、こうすることにはハードルがあります。高齢の動物はたいてい複数の病気を持っていて、それらの健康状態を管理しなければならないという現実があるのです。そのため行動学的な問題はどうしても後回しになってしまいます。飼い主さんが犬や猫の行動上に変化があると気付いたとしても、そのことを話し合うために新たな診察日を作ることは有りません。いつもの診察日にはいつもの病気に関する経過やその他のことについて話し合っていて、典型的な症状が訪れたときに「そういえば、、、」とお話しをいただいたとき、それは実はずいぶん前から起こっていたことだったということがあります。それは遅すぎるという印象を持つことが多いです。

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<認知機能障害の診断アンケート>

認知機能障害に関するアンケートがあります。チェックリスト、ですね。(アンケートは古すぎですか?)これが日常的に行われると、「遅かった!」という問題の改善に繋がるだろうと思います。

以前からご紹介しているのは、今は亡き内野先生が研究していらしたときの100点法の痴呆症の診断基準です。先生が研究していらしたときはまだ「認知症」とか「認知機能障害」という言葉ではなく「痴呆症」という名称が用いられていたため、「痴呆症の診断基準」になっています。(今後、内野先生の方式を改訂することにでもなったら名称が「認知機能障害の診断基準」に変更になるのかもしれません。)

当院でワクチンのDMに挟まれた「健康に関するチェックリスト」の一部にも行動に関する欄がありますが、国際的に用いられるようになってきているのがDISHAのチェックリストです。DISHAのチェックリストはもっと認知機能障害に結びつけやすいチェックリストです。15歳を越えた動物にはこちらへの記入もお願いすると良いのかもしれません。今後検討しますね。

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DISHA

DISHAの頭字語は認知機能障害に関連する顕著な兆候や変化を特徴付けることができるとされ、他の病気との鑑別診断にも用いられています。DISHAという用語は、

Disorientation:環境における見当識障害

Interaction: 人や他の動物への相互反応の変化

Sleep-wake cycles : 睡眠サイクルの乱れ

House soiling: 不適切な場所での排泄

Activity: 活動レベルの変化

などの症状を指します。

DISHAのチェックリストは、認知機能障害の指標として考えられていて、DISHAに該当する行動変化が増加すると認知機能障害の疑いが強くなります。 より多くの兆候と頻度が出るほど、問題の重要性が増しますが、 それぞれの兆候や症状が特定の段階を意味するものではありません。

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DISHAのチェックリスト>

犬の認知機能障害を示す可能性のある症状は次のとおりです。

D:見当識障害

飼い主さんが気づくかもしれない最も一般的なことの1つは、いつもの環境にいるときでも混乱してしまうということです。たとえば犬が部屋の外に出て行くとき、間違ったドアに向かって行くとか、ドア前でもドアの開かない方の側(蝶番の付いているところ)に行ってしまうようなことです。それから空間認識ができていないこともあります。ソファーの後ろをさまよって、自分がどこにいるか、出る方法がわからなくなってしまいます。また就寝時に自分のベッドで丸くなっていなくて、「居ないじゃない?!」と探してみると別の部屋で壁を見つめてぼーっとしていることがあるかもしれません。このようなことが見当識障害です。

I:相互反応の変化

犬の認知機能障害は、人や他の動物との相互作用に影響を与える可能性があります。ご近所で人気のあった社交的な犬も、気味の悪い行動をとったり、他の動物や子供たちのまわりをうろついたりします。大好きだったぬいぐるみやおもちゃを噛んでしまうかもしれません。それから家族が好きだった活動をしなくなることがあります。それぞれの家族のところに行ってはおねだりをするとか、おてんたらをすることがなくなります。(あ、おてんたらは方言だったようです。おべんちゃらです。あら?これも方言ですか?見え見えのゴマスリとか、お世辞みたいなかんじの言葉です。)玄関のチャイムが鳴ったときに訪問者に挨拶しに行かなくなるとか、チャイム音に無関心になったり、宅配便の人に吠えなくなるかもしれません。散歩に行くためのリードを見せても喜ばなくなったりします。自分の好きなクッキーが自分のものであることを認識できなくなることもあります。

S : 睡眠サイクルの変化

睡眠パターンの変化または生活リズムの混乱は、認知機能障害に関連する症状のひとつです。むしろ、これこそ認知機能障害として家族を困らせてしまう症状かもしれません。健全に眠るのが当たり前になっている犬は、今夜も健全に寝ることができます。多くの犬が通常のスケジュールを逆転させるので、昼間の活動が夜間の活動になります。この昼夜逆転現象は、ご家族に不満と疲れをもたらしてしまいます。

H : 不適切な場所での排泄(粗相)

犬の排尿または排便も認知機能障害を知ることができる一般的な方法です。この場合は、犬が自発的な排泄能力を無くしてしまったのか、排泄を知らせる能力が残っている可能性があるのか見極めるのが大切になります。検査をして膀胱感染、腎臓疾患、糖尿病などが存在しなければ通常は認知的な変化ということになります。

A : 活動性のレベルの変化

認知機能障害のある犬は、探索する欲求が減少し、その環境内にいる人や、そこにある物や音に対する反応が減少することがあります。 彼らが好きなおもちゃを取るため、「キュー」という音を出しても反応しなくなるかもしれません。 また集中力が弱く、刺激に対する反応も低下します。食べ物や水を見つけるのに困っている犬もいます。こうしたことは視力や聴覚に問題がなければ、認知機能障害を表しています。不安行動や同じことを何度も繰り返す反復運動をすることもあります。頭部の動き(ゆらゆら揺れているようなこと)、足の震え、サークル内を一定方向に歩き続けるなどの反復的な動きを示すことがあります。それまで静かだった犬が、過度に吠えるとか、何も起こっていない時に吠えるなども変化のひとつです。

 

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長くなりました。今日はここまでにして、次回は治療のことをお話ししようと思います。

テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

認知症の犬の治療

認知症の治療のお話、今回は治療についてです。

日常生活を送ることができるレベルだと認知症予備軍になるかと思います。認知症治療は介護が必要になってからよりは、予備軍のうちに治療を開始し、脳を活性化させ、症状の進行を遅らせるのが良いと思います。

 

 

1、環境改善

高齢犬は歩幅が狭く、つまづきやすくなっています。関節症などの影響からジャンプもできません。このような動きの問題が出てきたら段差をなくしてスロープにします。いわゆるバリアフリーです。また床材を滑りにくいものに変えるなどの対応をします。

高齢犬では目が見えない(見えにくい)ことや新しいことに馴染みにくいことなどから、長年の記憶にあるままの部屋の配置にしておきます。部屋の模様替えはせず、歩行スペースに荷物など障害物を置かないようにします。トイレが遠いときは徐々に近づけるようにします。いつもの場所にないとまごついてしまい、トイレの失敗につながります。また使いなれた犬用のベッドですが、クッションのことも毛布を折りたたんで使っていることもあるかもしれませんね、こうした犬用の寝床が汚れてたからといきなり新しいものに交換するとうまく寝られないことがあります。古いものと新しいものと並行して使うなど様子を見ながら変更してください。また寝る場所、つまり寝床をどこに置くのかということですが、急に離れたところに設置換えすると寝ていい場所が分からなくなってしまう場合があります。トイレ同様、場所移動したいときは少しずつ変えていきます。

直径の短い円運動(旋回運動といいます)になり、歩くことを止められないレベルになってくると、周囲を丸く囲ったサークルが必要になります。このエンドレスケージは自家製でお作りいただくか、小型犬であれば子供用のビニールプールでも代用ができます。この頃には排泄もコントロールが効かなくなっていることが多く、ペットシーツをずれないように敷きつめる必要が出てくるかもしれません。

寝ている時間が増え、じょく創(寝ダコ)が心配になってからは、低反発マットやウオーターベッドなどを使用します。

全く動けなくなってからは体位を頻繁に変える必要が出てきます。こうなってからは体位交換のたびに積極的に四肢を動かしてやります。犬からすると受動的ではありますが、こうしたリハビリを受けることで関節が固定し動かなくなってしまうのを予防することができます。

寝たきりになると排泄の管理も必要です。オムツ交換をまめに行います。汚れやすい被毛は短くし、皮膚に尿ヤケができないように常に清潔にしておく必要が出てきます。

食事も口元まで運びます。水も同様です。食事の途中でも眠りに入ってしまうことがあります。食べることも疲れるのです。できるだけ起こし、食べるのを促します。食事はこれまでのようなドライフードからウエットタイプのものにするか、またはドライをふやかして与えます。嗜好性も変化してきますが、食べるままに任せていろいろな食材を与えると便秘や下痢になり管理が大変になりますから、節度を持って与えてください。

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併発する病気があればこれも治療します。

 

 2、生活改善

日中はできるだけ運動をさせます。若いころの散歩は朝夕でそれなりの時間を費やしエネルギーを発散させるような形態をお願いしていたわけですが、高齢期の散歩は短くてもよいので何回も外に連れ出し、日光を浴び、外の気配を感じるようにすることが大切です。適度な運動は筋力を維持させ、立てなくなるのを遅らせることができます。

日光浴はメラトニンの関係から日中のサイクルを整え、昼夜逆転になるのを予防することができるため重要です。ビタミンDを活性化するため骨粗しょう症を予防することもできます。

これまで屋外でトイレをする習慣になっていた犬では、屋内にペットシーツを敷いた犬用トイレを置いても、それが何のためのものなのか理解できません。そろそろ怪しいかも、という時に導入するのであれば再学習が可能なこともありますが、認知症が始まってからはそれができません。ヒトでも高齢期になるとトイレが近くなりますが、犬も同じです。屋内で失敗されると困るのでしたら、日に何度でもトイレを促す、つまり屋外に連れ出すしか有りません。ここで面倒だからとオムツをしてしまうと、まだ元気のある犬では狂ったようにオムツ外しにかかります。深夜にオムツの中の高分子ポリマーが散らかってしまうか、誤って食べてしまうかの惨事になるかもしれません。またおとなしくオムツを受け入れても動きが悪くなるため、寝たきり生活に近づく結果にもなりかねません。安易に走ると認知症を進めてしまう結果になります。

脳を刺激する遊びも取り入れます。これまでできていた命令をしつこく繰り返します。赤ちゃんのときのトレーニングを復習し直すわけです。「お手」「おかわり」のほか、特別な芸事ができていたのでしたら、それをさせます。できたらごほうびをやります。消化の悪いジャーキーは避け、いつも食べている高齢犬用のドライフードを与えます。それでは味気ないと思われるのでしたら、別の銘柄の高齢犬用フードでも真新しくて良いかもしれません。耳の聞こえも悪くなっていますから命令も大きくてはっきりした声を出してあげます。クリッカーを使うのも良いでしょう。

一緒にいられない時間帯でも知育玩具を用いて脳に刺激を与えることができます。コングが有名ですが、他にもショップでいろいろ売られています。小さいサイズのペットボトルの横に穴を開け、転がすとフードが出てくるようにしたものでも代用は可能です。

介護生活の初期は、犬の方も適度に動きがあり、思わぬハプニングが起こりやすいので飼い主さんを疲れさせる結果になります。つい感情的になって犬を叱りたくなることがあるでしょう。でも叱っても何の意味もありません。犬もそうしたくて失敗しているわけではないのですから、根気よくお世話をするしかありません。ひとりで抱え込まず、家族が分担できるように協力し合ってください。またショートステイなど、病院を利用するのも良い方法です。飼い主さんも心身のリフレッシュが大切です。また「ここをこうするともっと楽です」というヒントの具体例は私たちも個別に対応すると出しやすいです。

 

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認知症の治療は多方面からの総合治療です。

 

3、食事療法

認知症は脳に病理学的な変化が生じて発症するものなので、活性酸素が働かないようにする、抗酸化作用のある物質を多く含んだ食事を与えると進行を抑えることができます。

ビタミンEやビタミンC、βカロチン、セレニウムは抗酸化作用のある物質で、酸化による脳細胞のダメージを抑えます。

またLカルニチンやαリポ酸は脳細胞の代謝を助け組織へのダメージを抑制します。

DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)、ARA(アラキドン酸)などのω3脂肪酸は神経細胞膜を保護します。

フラボノイドやカロチノイド、ポリフェノールは抗酸化、抗炎症作用があります。

脳を活性化させることを目的にした処方食、ヒルズのプリスクリプションダイエットシリーズb/dは残念ながらなくなってしまいましたが、同系列のサイエンスダイエットプロシリーズの中の「健康ガード脳」は上記のような脳に良い物質が配合されたフードです。

これらの物質をいつものフードのほかにサプリメントとして摂取しても同様の効果が得られます。動物用のサプリメントは効能を「脳」に主眼を置いておらず、「骨関節」や「皮膚」「被毛」「健康」などを前面に出しているものもありますが、抗酸化作用は全身に良い影響を与える物質なので、お気に入りのサプリメントがあればそのまま継続していただくのが良いと思います。ただ複数を与える必要があるので、大変かもしれません。

認知症に特化したサプリメントとして、メイベットDC(明治製菓)やセサミン(サントリー)、ペットヘルス(共立製薬)などがあります。当院ではアンチノール(ベッツペッツ)もおすすめしています。

食事にしても、サプリメントにしても、即効性ではありません。1か月もしくは2か月といった月単位で様子が変わってくると思います。諦めず気長に様子を見てください。

 

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脳の変性を抑えるのに適した栄養素があります。
食事またはサプリメントのかたちで摂取すると良い効果が得られます。

 

4、薬物療法

行動学的側面からの治療法のほか、お薬で認知症の進行を遅らせる方法もあります。薬というと、対症療法の薬を望まれる方が多いです。ほとんどは「夜鳴きをすぐに沈めて眠れるようにしてほしい」というものです。ここで紹介するのは鎮静や催眠を促すお薬ではありません。

ヒトでモノアミンオキシダーゼ阻害薬としてパーキンソン病の治療薬に用いられている薬はドーパミン濃度を高め神経を保護する作用のほか、フリーラジカルスカベンジャーとしての作用もあります。塩酸セレギリン(エフピー錠)です。

またヒトでアルツハイマー型とレビー小体型の認知症で使われている薬も脳内のアセチルコリンを増やし、認知症の症状を軽減させます。塩酸ドネペジル(アリセプト)は犬での研究もあるお薬です。

 

多くの方が、「歩けなくなるのは困る」とがんばって犬を立たせ、動かすようにしてくださっています。これは結果的にリハビリになっているのですが、いよいよ「寝たきり」に近づき、「昼夜逆転」や「夜鳴き」が始まった頃にお手上げになって、今のつらい症状を1回の薬でなんとかしてほしい、と訴えてこられます。中にはいきなり「安楽死」を望まれるほど切羽詰まった事情の方もおられます。「強く言われると犬の脳には好ましくない抗精神薬の処方をせざるを得ない」のが我々仲間内のぶっちゃけた話ですが、もう一度脳を活性化させたいというのが真の気持ちです。

今の現状は

①飼い主さんの「認知症」という診断

②飼い主さんの自己流の介護

③症状悪化(グレードの亢進)

④ヘルプを求める

のサイクルになっています。

他の病気だったらこんなことはないはずです。

①症状が出て

②病院で診断を受けて

③治療があり

④それでも進行性の病気では末期がやってくる。

というのが普通です。むしろ今は

①定期検査をして

②早期のうちに病気をキャッチし

③うまくコントロールしながら

④長く穏やかな日を過ごす。

方が主流になっているほどです。

 

「高齢になったらこれも普通、こんな変化はしょうがない」なのではなくて、「歳はとったけれどこういうことは何とかならないものか、何を工夫すれば暮らしが楽になるのか」と前向きに関わっていただきたいと思うのです。よたよた歩くこと、目が見えなくなること、耳の聞こえが悪くなること、眠りが浅くなること、それぞれの経過の中で介助できることを探していただきたいと思います。

 

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5、介護の先にあるもの

寝たきりになった老犬も、いつかは終わりのときを迎えます。心臓病や腎臓病などの病気が悪化したり、食事の途中に与えていたものを吐いたのがきっかけで誤嚥性肺炎を起こしたり、食べる分量が減ってきて低栄養から衰弱して眠るように亡くなることもあります。

しかし、飼い主さんが先に疲れてへとへとになってしまうことも考えられます。家庭内の事情などいろいろなことを考慮し、あらかじめ「家族みんなで見送る特別の日」のことを考えておく必要があるかもしれません。 

高齢期の愛犬のことで困ったことがありましたら、家族だけで抱え込まず、ぜひご相談ください。

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Author:ハート動物病院
ハート動物病院です。
〒445-0062
愛知県西尾市丁田町杢左51-3
TEL/0563-57-4111
オフィシャルサイト:http://www.heart-ah.com/

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