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尿検査のおすすめ

 先日、全身麻酔をかけての処置を行なうのに、年齢の話が出ました。当院開業以来ずっとおつきあいのある患者さんです。麻酔処置には皆さん不安がつきものです。その猫の年齢は現在12歳で、不安がなく麻酔ができるという年齢でもありません。猫の平均寿命は1415歳ですから平均的な寿命までもう少しあります。もちろん希望される天寿はもっとずっと先のはずです。一代目のわんこは成犬になってからの診察でしたが、開業当初の当時は8歳というのはすでに高齢犬であり、10年も生きてくれたら長生きというお話をしていました。「今はね~、みんな長生きになったよね~」で話は終わり、麻酔前検査の結果も悪くなかったことから、猫さんの残りの人生をQOLの高いものにするため麻酔下での処置を行ないました。(無事終了しております。)

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オールシーズン、健康診断の季節です。
まめにチェックできるのは理想ですが。。。




<みんな長寿になってきた>

さて、犬と猫の平均寿命に関してのデータがありました。なんと当院開業頃の1990年では犬8.6歳、猫5.1歳でした。(そっかぁ。思ってた以上に猫の寿命は短かった!)それが昨年2017年になると、犬14.19歳、猫15.33歳です。猫は外出する猫と屋内飼育の猫で別々の数値も出ています。外出猫は13.83歳、屋内猫では16.25歳です。寿命はデータで見ても間違いなく伸びているのがわかります。そして犬8.6→14.19も立派なものですが、猫の5.1→16.25の伸びは驚異的です。

こんなにも寿命が延びた猫ですが、それでも飼っている方としてはもっと長生きして欲しいと願っています。残念ながら平均寿命がそこまで延びているのに、たどり着けずに亡くなってしまう猫もいます。(平均ですから、上回る猫がいれば下回る猫もいて当然のことではありますが。)

なんとか病気を早期に発見し、病気に対してどのように対応していけばいいのか、できるだけいつものスタイルを崩さずに家族とこのまま一緒にいる時間を長くすることはできないものか。治療に明け暮れる最期を病院で過ごすのではなく、病気はあるけれどもうまくケアしながらはたからの見た目は健康で、家族とおだやかに過ごす時間をのばすことはできないものか。これがみんなの幸せにつながるような気がします。

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特に尿検査は猫の腎臓病を
早期にキャッチすることができます。
 

<尿検査のおすすめ>

そこでご提案です。ずいぶん前からおすすめしていることではありますが、改めて「尿検査」のおすすめです。今回おすすめする尿検査は、定期健康診断で血液検査を受けてくださるよりももっと気軽に行なうものです。思いついたから、ちょうど猫がオシッコしているところに出くわしたから、フードやノミ駆除薬のお求めついでに、わんこの用事で来ることになったから、そんなラフなかんじで「お家でオシッコを採って尿検査を受けてみませんか」というおすすめです。もちろんわんこも大歓迎です。

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おしょうゆ差しが猫の命を救う、
なんてハイスケールなキャッチコピーなんでしょう!
当院の「お手軽に尿検査」とは
スケールが違います。(><)

<尿の検査>

尿の検査はいくつかあります。

    物理的性状のチェック。

色を見る、濁りを見る、においをかぐ、比重を調べる、の検査です。

    化学的性状のチェック。

これは尿検査用の試験紙で調べます。

    顕微鏡で観察。

遠心分離した尿の沈殿物を顕微鏡で観察します。

    このほかにも細かく調べたいものを外注検査に依頼することがあります。

「お気軽に尿検査」では、ラフな感じで採取した自然尿でもあまり結果に影響を受けることがないだろうと思われる①と②の検査だけにとどめ、まずは「調べてみること」に重点を置きたいと考えています。

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猫の慢性腎臓病は罹患率の高い病気です。
 

<尿検査でわかること>

    「におい」と「色」と「透明度」これが最初のチェックです。

キツい特異なにおいは細菌感染や糖尿病などを疑わせるものです。濃いオレンジ色は黄疸が出てきている印、肝臓や胆道の病気が疑われます。膀胱炎や腫瘍などで粘膜表面から出血があると赤い血の色をした尿になります。色味がない尿は尿を濃くする機能(腎臓など)が衰えてきているせいかもしれません。「透明度」が低いのは尿の中に蛋白や細胞などの成分が混じっているために混濁していることを現しています。炎症や腫瘍が示唆されます。

 さらに「比重」を調べると数値的に出てきますから、腎臓の尿濃縮機能をもうちょっと詳しく知ることができます。       

    「尿試験紙」でのチェックです。

「尿試験紙」は「ウロペーパー」と呼ぶこともあります。化学的な性状を見ていきます。「pH」は尿の酸性度アルカリ度を見ます。これは食事による影響が強く、尿結石のできやすさを示唆します。「尿タンパク」は腎機能異常があるときや炎症や腫瘍で細胞成分が出現しているときに高くなります。「潜血反応」は肉眼的は血尿が見られない(尿が赤くなっていない)場合も出血を機敏にキャッチします。赤血球崩壊や筋肉の損傷があるときにも反応します。「ビリルビン」は黄疸や溶血で陽性に反応します。「グルコース」は血糖値が上昇している糖尿病の時のほか、腎臓の異常があるときに再吸収できなかった尿糖が反応し陽性になります。そのほか重度の糖尿病で糖代謝が損なわれたときに出てくる物質である「ケトン体」を検出することもできます。また動物には意義のない検査項目も含まれている試験紙がありますが、それは一緒に結果が出てきても判断の参考にはしません。

    さらに尿を顕微鏡で調べる検査を行なうこともありますが、今回おすすめする検査はここまでは考えていません。

    「お気軽に尿検査」でとても心配な結果が出た場合、追加検査のためにご来院を促すことがあります。詳しい尿検査のための尿は採ってきてもらう尿ではなく、病院で新たに採取する尿、可能であれば膀胱穿刺によって得られた尿で行ないたいと思います。

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見本のトイレを待合室に展示して置きました。

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花王さんのコンセプトは1週間取り替えなくても大丈夫な、ですが、
これについての解説はいらしていただいたときにお話しします。




<具体的な尿の採取方法>

尿を持ってきていただくとなると、おうちの方が尿を採取しなければなりません。これで「お手軽な尿検査」になるの?というお叱りを受けそうです。なぜなら猫が排尿しているところに、清潔な紙コップなどで尿を受けようとしても、それは「お手軽」どころか困難極まることだからです。猫砂の代わりに手芸用のビーズをトイレに入れて、いつものペットシーツを裏返しにするかまたはペットシーツを敷かずにそのままトレイで尿を受け止めるという方法があります。これまでだと、このやり方での採取をお願いしていました。けれど「尿検査」のために手芸用ビーズを購入し、採取できたらビーズを洗って次の機会にまたそれを使うというのは手間とお金がかかるので、ちょっと申し訳ない感じがします。
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こんなのです。手芸用ビーズ。

今回、猫の腎臓病用のお薬を作っている会社ベーリンガーさんと、トイレメーカーの花王さんとのご協力もあり、計画していたよりも早く「お手軽に尿検査」を実施することができました。花王さんが開発してくださった猫砂(とトイレ)ならうまく尿を透過させる(猫砂が尿を吸収しない・尿によって砂が固まらない)ため、トレイに尿を受け止めることができます。トレイに料理用のラップを敷いたり、ペットシーツを裏返しにしたり、そもそも何も敷かなくてもトレイから簡単に尿採取できそうです。これならビーズを買わなくてもいいです。似た形状のトイレを使っているのであれば猫砂をその製品に変更するだけでも大丈夫かもしれません。でも、企画の「尿採取用きんぎょ」にはトイレがお安く購入できるチケットも入っていますから、この際チケットを利用してトイレを新品にするのもありです。複数の猫が同一のトイレを使用する場合は、時間を見計らってうまく採取してください。
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こんな手順で採っていただきます。
説明の図ポスターです。

「どうしてもオシッコが取れない!」という場合は、いつものように、膀胱に尿が溜まっている時間帯で病院に来てください。こちらで尿道に管を通して、または膀胱に針を刺して尿採取することにします。これだと「お気軽に~」のコンセプトではなくなってしまうかもしれませんが、高齢になっている猫さんには少なくとも半年ごとの尿検査をおすすめしたいです。そこまで高齢になっていない猫さんたちには、これまで通りですが「無理なくキャリーに入って貰う」ための「リビングにキャリー!」「キャリーにおもちゃ!」の練習を積んでいただけるといいかと思います。(キャリートレーニングをご存じないとき、いらしたときにご説明いたします。すごく大事ですので口頭でお話ししたいです。)

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食欲があることは健康の印にはなりません。
よく食べることが症状である病気もあります。

<特に尿検査を受けて欲しい猫たち>

青年期から成猫期(中年期にかけても)の猫では泌尿器症候群の心配があります。尿pH(や、結晶を見つける顕微鏡検査)で尿石症を発見することができるかもしれません。尿道閉塞症は発見が遅れたら命に関わります。また発見が早く対処が優れていたとしても腎臓に爪痕を残します。予防できるに越したことはありません。多頭飼育や家の外に野良猫がいっぱい集まってくる家に住んでいる猫の場合、ストレスが高いため尿石症や特発性膀胱炎を起しやすくなっています。おやつが大好きでいっぱい貰ってしまう猫は尿石症になりやすい傾向にあります。こんな猫たちは特に尿検査がおすすめです。

成猫期に入る頃、徐々に障害が始まるタイプの先天性の腎臓病をピックアップすることができるかもしれません。ペルシャ猫は遺伝的に多発性嚢胞腎を持つ傾向がある猫ですが、短毛の日本猫にも発生があります。水の飲み方が多いかも!と心配される猫にもお気軽尿検査はおすすめです。

中年期から熟年期では、いわゆる猫の慢性腎臓病や糖尿病を早期に知ることができます。この年齢のすべての猫にはぜひ尿検査を受けていただきたいです。早期に発見し、早期に対処で健康寿命を延ばすことが可能です。

太っている猫、太っていたけど痩せてきた猫たちはどの年齢層であっても糖尿病が懸念されます。この子たちももちろん、お手軽尿検査を受けてください。

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不適切な場所で排尿をしてしまう猫さんのうち
半分くらいはトイレの改善で症状が消失します。
適切なトイレとトイレの環境は非常に重要です。

<おまけ・尿検査の標準値>

尿検査の標準値を記しておきます。

    物理的性状

・色:黄色(淡い黄色から暗目の黄色)

・透明度:透明

・におい:軽いにおい(アンモニア臭はほぼありません)

・比重:1.035以上

    (ほんとに健康だ!と思う猫は1.0401.050くらいあります)

    (1.060くらいまでなら脱水もないでしょう)

② 化学的性状

  ・pH:弱酸性6.5前後

  ・尿タンパク:-

  ・潜血:-

  ・ビリルビン:-

  ・ブドウ糖:-

  ・ケトン体:-

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採尿用「きんぎょ」たくさんあります。
ご自由にお持ち帰りいただき、
尿を入れて持ってきてください!




<おわりに>

初診時で慢性腎臓病(IRISのCKDステージ4)であった猫さん、集中治療によって著しい高窒素血症が低下し一度は食事が食べられるまでに回復しました。けれど長くは続きません。まだ年齢の若い猫さんでした。ドナーさんが見つかれば腎移植が適応だったのかもしれません。

同じ頃、歯科処置のための麻酔前検査で腎機能に不安が見つかり、エコー検査から多発性嚢胞腎を発見した猫さんがいました。先ほどの猫さんよりは年齢の高い猫さんです。まだ結構腎実質が残っていました。腎ケアの開始です。うまくケアしていけば、まだしばらくいつもの生活を続けていくことが可能です。

ハイシニアの猫さんだと腎臓病で寿命が終わることに納得できても、まだそこまで年齢が行っていない猫さんだと無念な気持ちが高まります。早期に知っていれば、しんどい思いをする期間が短くて済むのかもしれない。そういう気持ちから猫さんの「お手軽尿検査」を企画しました。実にタイムリーに花王さん、ベーリンガーさんの「尿検査」企画と重なり実現が早まりました。感謝です!この機会にぜひ、多くの猫さんに「お手軽尿検査」を受けていただけますよう願っています。


夜は大変冷えてきました。お風邪など召されていませんか。今週は喉の調子が悪くて、飴をなめながら診療させていただきました。おやつが手放せない人みたいでした。診療中に失礼いたしました。

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血液検査・カリウムの値が高い

 血液検査結果・カリウムが高いときの判断について

 この前、「元気でなんともないのにリンが低い」ことについてお話ししました。今日は、「元気でなんともないのにカリウムが高い」のお話です。

 <カリウムの役割>

カリウムもリンと同じように、生態の機能を維持するためになくてはならない大切なミネラルの一つです。

細胞の中のカリウムは神経や筋肉の興奮と、興奮の情報を伝える役割をしています。カリウムの濃度が異常を示すと、知覚異常や意識障害、脱力、麻痺といった、とても怖いことが起ります。心臓の筋肉(心筋)も刺激が伝わって収縮し、拍動しますが、カリウムの異常が進むと、重篤な不整脈が発生し、心停止するなど致命的な結果を招くことになります。

 

<カリウムの摂取と排泄>

カリウムは食物中にあるものが腸から吸収され、90%以上が尿中に排泄されます。

カリウムの出し入れの調節をしているのは副腎から分泌されるホルモン(アルドステロン)です。

血中のカリウムは尿中に排泄すべきかどうかを厳重にコントロールされています。腎臓が正常に機能していると不要なカリウムは体外に排泄されます。

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<カリウム異常はどこが悪い?>

血液検査でカリウムの値を調べると、主に腎臓と副腎の機能を知ることができます。たとえば副腎皮質機能低下症。また、尿路結石症などで完全に尿路が閉塞され、急性の腎障害があるときにもカリウムが高くなります。

そのほか腫瘍細胞が急に崩れていったとき、体調が著しく悪く身体が酸性に傾いたときなどでもカリウムは高くなります。またインスリンが不足していてカリウムが細胞内に取り込まれないときにも血中のカリウムの値は高くなります。

 

<病気の診断>

身体のどこかに異常があってカリウムの値が高くなるとき、それぞれに他の検査項目に異常を見ることが多いです。

先ほどの例でいきますと、副腎皮質機能低下症ではカリウムが高いけれど、そのほかのナトリウムやクロールなどの電解質は低くなります。腎臓の機能異常があれば高窒素血症が現れます。細胞が破壊されればほかの細胞内にある酵素の上昇も見られますし、インスリンが不足する事態というのは高血糖の状態が見られます。

カリウム値だけでなく総合的に判断します。

 

<服用している薬によっても影響を受ける>

心臓の病気、腎臓の病気などで処方しているお薬によっても血清カリウム濃度が高くなることがあります。

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<偽の高カリウム血症>

病的にカリウムが高い場合、他の項目に異常が見られるはず。「健康そのもの、元気いっぱい」で、「他の項目には異常が無い」、それなのに「カリウム値だけが高い」ことがあります。

実は採血や採血してから検査をするまでの課程に問題があって、カリウムの値が高くなってしまうことがあります。偽の高カリウム血症です。

 

<カリウムの体内分布>

カリウムは身体の中で98%が細胞の中にあります。体液の中のカリウムはわずか2%で、そのうちの98%は血中の赤血球の中に存在します。ということは。。。

 

<病気以外でカリウムが高くなってしまう原因>

    血中の赤血球にカリウムがたくさん存在していると言うことは、赤血球が壊れると高カリウム血症になると言うことです。溶血は偽の高カリウム血症の原因になります。

  駆血帯(くけつたい・血管を浮き立たせるために腕に巻くゴム製のものです)をしてから、血管を探し出すまでに時間がかかってしまい、しばらく腕を圧迫した状態が続いていると、細胞内からカリウムが血液中に流れ出てきて、偽の高カリウム血症の原因になります。また、針を刺してから十分な血液量が採取できないために、くるぶしあたりを「こきこきこき」と握ったり伸ばしたりを繰り返して(クレンチングとかハンドグリップとかいいます)いても筋肉細胞からカリウムが流出してしまいます。なお、採血をしている間、駆血帯はそのままで解放していません。採血時間が長くなっています。高齢の犬、血管が細い犬、圧力の低い犬、体格の割に血液量が必要になった場合にこんなことが起りやすいです。「えっ!こんな所から血を採るんですか!」と驚かれることが多い頸静脈からの採血ですが、ここの血管は太く、駆血によるタイムロスが少ないため偽の高カリウム血症は発生しにくいです。

    血小板や白血球が異常に高いとき、凝固する過程でカリウムが流れ出して、偽の高カリウム血症を起すことがあります。

    採血をしてからそのままの状態で血液を置いておくと血球内からカリウムが漏れ出してしまうことがあります。30分では遠心分離して血球と血漿を分けることにしていますが、ときに「しまった!回し忘れた!」ということが起っているのかもしれません。すみません。

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<偽の高カリウム血症は心配なし>

偽の高カリウム血症は病気ではなく、採血と採血後の検体の取り扱いの問題です。全く心配はありません。

 

 

今日のお話はここまでです。

暑く湿度の高い日が続きます。ノミやマダニなど繁殖スピードが高まり、被害も瞬く間に広がってしまうことが予想されます。外部寄生虫の駆除薬はホームセンター等で市販されている商品では十分な効果が得られません。動物病院で処方したものをお使いください。

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高脂血症・2

 健康診断の血液検査で、「高脂血症がある」といわれたとき、についてお話ししています。2回目です。

 

<再検査・追加検査>

健康診断で高脂血症が認められた場合、12時間以上絶食にしてもらい、再度検査をします。前回と同じ項目です。

「リポ蛋白電気泳動」という脂質代謝異常を調べる検査を実施することもできます。外部の検査機関に委託しています。ただ、この検査の意義については意見が分かれています。

カイロミクロン検査をしてみることがあります。といっても、検体を一昼夜そのままにしておくだけです。乳びになっていた血清が生クリームのような上澄みの層と、透明な血清の層とに分かれるかそのままなのかを見ていきます。これで陽性結果が出ると高カイロミクロン代謝障害が疑われますし、陰性であった場合はVLDLの停留がある可能性があります。

ただ、これらの検査と(もしくはこのような検査はさしおいて)必要だと思われるのは、高脂血症を引き起こすさまざまな基礎疾患に対する検査、例えば内分泌学的な検査や、(ネフローゼ症候群が疑われるときは)尿検査です。

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 <高脂血症改善のための食餌療法>

「自分の皿から摂取した以外に身体に脂肪が入ってくることはない」という名言を前回お伝えしました。食餌中の脂肪の量と種類は高脂血症に関係します。二次性の病気の疑いがなければ、まずは食餌療法で様子を見ることにします。低脂肪高繊維食が高脂血症のときにおすすめする食事です。

脂肪含有量が乾物量で12%未満の食餌が推奨されます。また食物繊維、とくに可溶性繊維に富む食餌も推奨されています。食物繊維は腸管内でコレステロールに結合して、吸収を減少させることが知られています。また胆汁酸と結合して消化管からの排泄を増加させます。こちらは乾物量として10%以上あることが推奨されています。

もう一つ重要なことがあります。どんなに「これっぽっち」であっても、おやつは禁止です。

(注意)二次性の高脂血症の場合、原因となっている一次疾患の治療を同時にしないといけません。

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<フォローアップの再診>

食餌療法で様子を見てから1ヶ月くらいしたらフォローアップのために再診にいらしてください。もちろん、食後12時間以上経過してからお越しいただきます。体重やボディコンディションスコアなどをチェックし、再度血液検査を行ないます。

高脂血症のための食事をとったからと言っても体重が減ることはないかもしれませんが、血液検査の結果にはしっかり反映されるはずです。そしておやつの結果も、(たとえ少しであっても!)反映されてしまいます。

高脂血症の結果として急性膵炎を発症させてしまわないかどうか、というのも心配事なので、一緒に調べていきます。

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<治療目標に届かないときもある>

頑張っているのにも関わらず、治療目標に届かないことがあります。そうしたら内科的な薬物療法にはいります。

いくつか有効なお薬があります。

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<高脂血症はそのままにしておいてもいい?>

高脂血症は肥満の証明になる検査、肥満の程度のバロメーター。そんな風に思ってらっしゃる方も多いです。それで「痩せさせられないからしょうが無い」になっておしまいになっていることもあります。ちょっと寂しいです。

高脂血症により隠れた病気を探す一つの目安になっていますから、怪しいと思われる病気があれば追加検査で明らかにし、そちらの治療が進むと高脂血症は改善させることもできます。また愛犬の様子も明るく快活に変わってきます。

それから高脂血症自体に二次的に膵炎を発症させるリスクがあるので、改善に向けてアクションを起こして欲しいです。特別な処方食や生活習慣の改善、ときには内服薬の投与によって治療が可能です。

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<予防することはできたの?>

そうなのです。お気づきの通り、適正な食生活により、高脂血症を予防できることは言うまでもありません。でも、脂質代謝異常や肥満などは遺伝子によるところもあり、同じように注意していても高脂血症になる犬とならない犬が出るわけです。

<いっしょに頑張りましょう>
食餌療法ですが、がんばったちゃんには必ず結果が出ています。今度こそ、減量大作戦。動物病院の方法にチャレンジしてみませんか?一般の食餌を使って量を減らす、ライトフードをさがす、運動を増やすなど、これまで多くの方がやってきた方法ですが、うまくいっていません。おすすめしたい処方食は科学的に研究され作られています。遺伝子学的に高脂血症になりやすい体質だった系統の犬にも、2ヶ月ほど継続して食餌を食べて貰っているうちに、体質まで改善されてくるという結果が出ています。これらの処方食は少々値が張りますが、本気で取り組むのにふさわしい強い味方になってくれます。あなたとあなたの犬のために応援しているのは、当院のスタッフだけでなく、処方食メーカーの動物栄養学に詳しいスタッフたち、もちろん研究所の人たちも!また、これまでに減量に成功した飼い主さんも、です。

 

2回にわたり、高脂血症のこと、お話ししました。これでおしまいです。

 

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高脂血症

 犬の健康診断、血液検査で異常値が出た!というときの解釈について。

今日は一番よくある「高脂血症」のことについてお話しします。

高脂血症は中性脂肪(トリグリセリド:TG)やコレステロール(TCHO)が増加した状態です。「脂質代謝異常症」と呼ぶこともあります。総コレステロール値が300mg/dl、トリグリセリド(中性脂肪・TG)値が150mg/dlあたりが大体の目安で、これを超えた場合が高脂血症になります。細かな数値は検査機関や検査機器によって異なります。(300150は覚えやすい数値なのでこのように書きました。)

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<高脂血症は良くないこと?仕方が無いこと?>

高脂血症があると血液の上澄み部分(血漿とか血清といっています)が白く濁ってきます。血液生化学検査はこの血漿(または血清)を使います。濁っていると他の検査の検査をするのに正確性を欠くことになります。(偽の値を示してしまいます。)これは検査上で困ることです。

でも犬自体の健康上もよろしくないことがあります。例えば急性膵炎を起すリスクになることです。また高脂血症となって表現されている病気があります。高脂血症の陰に隠れた病気といってもいいと思います。高脂血症に関連した病気は内分泌疾患が多いです。

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<脂肪はどこから?>

「自分の皿から摂取した以外に身体に脂肪が入ってくることはない」という名言があります。脂肪はどこかで発生したものではなく、摂取した食餌に由来するものです。けれど摂取分が過剰であることのほかに、分解が遅れていても高脂血症になります。分解が遅れているのは代謝機能に何らかの問題があるせいです。
食べたせいじゃないのかもしれない!というところがミソですね。

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<リポ蛋白というのは?>

血液は水性ですが、腸管から吸収する食餌由来の脂肪は油性です。この油性の物質をそのままのかたちで水性の血液の流れに乗せて運ぶのには不向きで、運びやすいかたちになっている方が都合いいです。血液中で脂質は、外側を親水性の膜でくるんだような形状になっています。これをリポ蛋白と呼んでいて、大きさや密度によって「カイロミクロン」、「VLDL」「LDL」「HDL」に分かれています。

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<カイロミクロンと高脂血症>

食事を食べた後、栄養素は小腸を通過しながら3060分後には脂質はカイロミクロンになって吸収されます。カイロミクロンは、トリグリセリドとコレステロールの両方を含み、食物から脂肪を消化する間に形成される脂質です。通常、カイロミクロンが吸収されると血清トリグリセリドは310時間の間増加し、その後もとの値に戻ります。ただ、中には食事後12時間以上もの間、コレステロール値やトリグリセリド値が高いままの状態になっている犬がいます。

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 <乳びと溶血>

血液中の透明な部分である血清は、トリグリセリドの濃度が高くなると混濁してきます。血清は乳白色で不透明になり、私たちはこれを「乳び」と呼んでいます。正常な場合は食後でも血清の混濁は見られません。

脂質は赤血球の膜にも影響していて、採血後に試験管内で溶血を起させることがあります。本来は無色透明であるはずの血清が、溶血により赤く色づいてしまいます。臨床検査をするにあたってさらに不正確な値を出させることになります。どの程度の高脂血症があると溶血するのかは不明です。高脂血症がどの検査項目に影響し、どのくらいの脂血症でその項目が何割くらい上昇する(または低下する)ということも分かっていません。アルカリフォスファターゼ(ALP)は影響を受けやすい検査項目です。(一緒に上昇していることがよくあります。)

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<高脂血症は無症状?>

高脂血症による症状はあまり感じられません。

犬では時々嘔吐することや下痢になること、お腹を痛そうにしたり、お腹に違和感があるような感じになったり、一過性の食欲不振になったりし、場合によってそれが数時間から数日続くこともあるようです。これはほとんど急性膵炎で見られる症状ですが、膵炎を疑って血液検査を始め超音波検査やX線検査などを実施しても膵炎とみられる検査結果は得られないことから「偽性膵炎」と呼ぶことを提唱している先生もいらっしゃいます。

ヒトで言われているアテローム性動脈硬化症ですが、犬では聞かれません。

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<高脂血症の3つのタイプ>

高脂血症には3つのタイプがあります。

    食後性で高い場合

トリグリセリドはペットフードに含まれる脂質の主成分です。食餌を摂取すれば血中のトリグリセリドは上昇し、一過性の脂血症になります。脂質の代謝障害によるものではなく生理的な反応です。でも!著しい高脂血症は食後であろうと異常です。

    家族性の問題がある場合

犬種特異的に高トリグリセリド血症になる品種があります。リポ蛋白の代謝異常に遺伝が関与していると言われています。ミニチュアシュナウザーとシェルティーに発現することが多いです。

    二次的に高脂血症になっている場合

二次的に高脂血症を起させる病気も知られています。正常なリポ蛋白の代謝に変化を起させる病気です。糖尿病や甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症、膵炎、胆汁のうっ滞を伴う胆管の病気です。そのはかネフローゼ症候群のような腎疾患も高脂血症の原因になります。

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お話が長くなりそうです。次回に繋げようと思います。

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血液検査・リンの値が低い

 春の健康診断、血液検査の結果が続々と返ってきています。異常値の出る項目はトリグリセリド(中性脂肪)やコレステロール、そしてアルカリフォスファターゼ(ALP)が「トップ3」です。これらはだいたい肥満に絡んだ、胆泥症を疑わせる脂質異常症になります。

今回、無機リンの異常(低値)があるデータが数件返却されてきました。無機リンが高くなる「高リン血症」は腎機能の悪化とともに発生してきますが、低い方の異常、「低リン血症」です。リンの値が2.5mg/dl以下になったときに「低リン血症」と言っています。当院からの検査結果報告書には2.0mg/dlから5.3mg/dlあたりを標準値として表示してあると思います。低リン血症についてはあまり知られていないと思いますので、少しお話ししておきます。

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<血液検査でリンの値が低い結果が出てきた!>

「リンが低いって言われるけど、他は何も異常が無いし。そもそも元気だよ。餌が悪いの?どうしてこんなことになるのか見当も付かない。どうしたらいいのか不安だわ。どこが悪いの?」

そうですね。その通り、活力もあり、元気そのもののわんこに発生した低リン血症でした。

 

<リンって何?どんな仕事をしているの?>

リンは動物が生きていくのになくてはならないミネラルです。「生命にかかわる極めて重要な」役割をしています。身体の中にあるリンの約85%は骨や歯に存在しています。骨や歯を構成する成分になっているのです。そして残りは細胞の中の「RNA」や「DNA」、「アデノシン3リン酸(ATP)」「リン脂質」「リン酸化タンパク質」として存在しています。細胞の成長や分化に関わったり、エネルギーを産生して利用したり、細胞膜を構成したり、脂肪酸を輸送したり、アミノ酸とタンパク質の合成を行なったりしています。リンはあまり意識されないミネラルの一つではありますが、非常に重要な役割を担っています。

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<栄養素としてのリンとカルシウウム>

ミネラルにはお互いのミネラル同士の相互作用があります。1つのミネラルが別のミネラルの輸送や生物学的な効力を減少させるような拮抗作用や、2つのミネラルが互いを節約し合ったり代替えになったりして補完的に機能するような補助作用、2つのミネラルが協調して生物学的な機能を高める協力作用などです。

リンが作用し合うミネラルの相手としてカルシウムがあげられます。リンとカルシウムの相互作用により、骨や歯を硬く丈夫にさせたり、またはとんでもないところにカルシウムを沈着させたりというようなことをおこさせます。またこれらの作用にビタミンDが関与していることもご存知の通りで、太陽にあたることでビタミンDが活性化され骨は丈夫になります。しかし骨を丈夫にしようとカルシウムばかりをたくさん食事に加えるとリンとのバランスが壊れ、結局丈夫な骨を作ることができないばかりか、他の代謝機構にも影響を及ぼし逆効果になってしまうことがあります。これは子犬を育てるときに陥りやすい罠です。反対に骨なし肉だけの食餌を与えているとリンの含有量に対しカルシウムが非常に乏しいため、二次的に上皮小体機能亢進症を引き起こすし、骨がもろくなります。バランスが大切です。

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<体内でのリンの調節>

からだ全体のリンの調節は腸管と腎臓で行なわれています。リンは腸管で吸収され、腎臓から排泄されます。からだの中にあるうちは、PTHホルモン(パラソルモン)などにより内分泌的に調整されています。リンの含有量が少ない食事を与えると腸管でのリンの吸収率が最大になり、また腎臓から尿への排泄を最小限に食い止めるように働きます。

身体の中で血中にあるリンはわずか0.1%に過ぎません。そしてカルシウムほど厳密に調節されてもいません。血中無機リン濃度はさまざまな因子に影響されながらいわゆる基準範囲といわれている濃度に調整されています。濃度調整に関わっているのはまずPTHホルモン(パラソルモン)のほかビタミンD、カルシトニン(これもホルモンです)、線維芽細胞増殖因子(FGF23・腎臓病のところでお話ししたことがあります)など。そして「えっ?」と思われるかもしれませんが、意外なことにインスリンなんかも関係しています。

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<血中のリンが減るのは?>

    腸管からの吸収量が減少する

腸管由来ということはすなわち食餌由来です。具合が悪くて長いこと食べられなかった、飢餓状態になっている、腸の病気でリンを吸収することができなくなっている、ビタミンD不足で吸収できてない、腎臓病のための低リン食をずっと食べているまたはリン吸着薬を服用しているなどが考えられます。

    腎臓からの排泄が高まっている

上皮小体機能亢進症という病気にかかっている(この場合はカルシウムの値が高くなっています)、悪性の腫瘍があるために高カルシウム血症になっていてPTHがすごく働いている、特殊な腎臓の病気(ファンコーニ症候群)のために腎臓でリンの再吸収ができない、おしっこが大量に出る一部の病気(クッシング症候群)などが考えられます。

    細胞中へ移動している(トランスロケーション)

体内にリンはあるのだけれど、血液中から細胞の方に移動している場合があります。糖尿病によるケトアシドーシスの状態のときにインスリン治療を開始するとリンは動いていきます。アシドーシスが改善され身体は酸性から少々のアルカリ性に傾きかかっている状態です。同じように代謝性アシドーシス等のために重炭酸ナトリウムで治療しているとやはり身体は酸性からアルカリ性になり、それに伴ってリンが細胞内に移動しています。ほぼ治療に関連した状況のときです。

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<身体がアルカリ性になる状況>

実は治療をしているわけでもなく、からだの自然な状況で先ほどの③の状態、身体がアルカリ性に傾いているときがあります。興奮して呼吸がハァハァというパンティング呼吸になっているときです。過呼吸の状況のとき、私たちは「呼吸性アルカローシス」がおこっているな、と感じます。とても酸素化がよく、採血した血も赤々としてきれいな血の状態です。

 

<低リン血症を起こした原因は?>

さて、リンの値が高いとき、低いとき、相互に関係するミネラルであるカルシウムの値がどうなっているのかも見ていきます。血清無機リンだけが低く、カルシウムの値は高くも低くもなっていない場合があります。体調に異変もありません。他のデータにも何にも異常は見られません。

こういうとき、たいていの場合は採血時に「ハァハァ」のパンティング呼吸をしていたことが多いです。過換気の状態では病気でなくてもリンの値は低くなります。

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<ということは、低リン血症の原因は?>

まずは採血のときにどういう状態だったかを思い出してください。もし、ものすごく興奮状態にあったのであれば、過呼吸!これが原因になっていたと考えられます。そして、できれば病院の一番空いている時間帯に予約をするかまたは静かな時間帯を狙って来院して、もう一度血液検査を受け直します。次の検査のときも呼吸がハァハァしていたらまた同じ結果になってしまうかもしれませんから、それだけ注意して再検査を受けてもらうことにします。

 

<本当にリンが低い場合の症状>

もし、本当に病的な低リン血症があるとき、血管内で赤血球が溶血し、貧血になっています。ヘモグロビン尿といって、おしっこの色が赤茶色(コーヒーや薄口醤油の色)になってきます。またぐったりした虚脱の症状、静かで活動性がない沈うつな状態、または振戦という小刻みな震えなどが見られます。

おそらく、こんな症状は出していないと思います。

 今日は元気なわんこがびっくりさせてくれた異常値、低リン血症についてお話ししました。
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<おねがい>

急な気温上昇がある日も出てきました。高齢になった中型から大型のわんこを散歩させるときは、必ず携帯電話かスマホをもって出てください。もし、途中で何かのトラブルになったとき、ひとりでは犬を抱いて帰宅することもできません。誰か家人に応援が頼めるようにして出かけてください。また小型犬で、心臓が弱ってきている高齢犬も同じです。冬の間は酸素要求量も低かったために散歩をしても何も異常がでることもなく過ごされていたかもしれませんが、これからの季節は気温上昇に伴って心臓に負担が増してきます。「運動はやめてね」というアドバイスを無視して「大丈夫だろう」とお散歩に出かけられていることもあるだろうと思います。もし何かアクシデントが起こったときにすぐに対応できるように、連絡できるツールを持ってお出かけください。でもゲーム等に夢中になって愛犬の動きに無関心にならないようにしてください。


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