アトピー性皮膚炎が治らない・その3

 アトピー性皮膚炎の治療失敗例について、いくつかお話ししてきました。今日は外用療法についてお話しします。

 

<失敗5,そんなに面倒なシャンプーはできないわ

 外で元気に遊び回っている子供に「あせも」ができてカイカイになっているときや、お仕事に頑張ってくれているお父さんの靴で蒸れる足に「水虫」ができているとき、毎日のスキンケア、できたら1日のうちでも数回きれいに洗ってしっかり乾かすことを繰り返していく方が、飲み薬に頼るよりも効果が出るだろうと予想がつきます。犬の皮膚ケアも同じです。強い薬を使わなくても、適切なスキンケアで皮膚の状態をコントロールすることは可能です。けれど適切なスキンケア、薬浴療法にはいくつかのお約束ごとがあります。
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  適正な温度の湯を用意する

  入浴(湯につかる)や予洗いをする

  皮膚の状態に合った薬浴剤を使う

  シャンプー原液をそのまま皮膚に垂らさない

  十分な量のシャンプー剤を使う

  しっかり泡立ててから洗う

  ゴシゴシ洗わない

  悪い部分から洗い始める

  薬剤の浸透時間を考えてゆっくり洗う

  すすぎに手を抜かない

  吸水タオルを使う

  乾かすドライヤーの風の強さや温度に気をつかう

  ピンブラシの先は丸くなったものを使い激しくブラシングしない

  シャンプーの頻度ははじめ週に2回、良くなっても2週間に1……など

これだけたくさんの決まり事があると、おっくうになってしまうかもしれません。
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「市販のシャンプーじゃだめです、病院で処方されたものを適切な量を使い、頻度もそれなりに多くして、これだけのお約束ごとを守ってね」というのは「高価な薬用シャンプーを使う、それも大量に消費するように仕向けている」わけではありませんし、「自分じゃできないと判断して病院委託されるように仕向けている」わけでもありません。デリケートな皮膚を守るためには、正しいシャンプー方法(だって、これは治療なんですから!)が不可欠です。ご理解お願いします。

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<失敗6,市販品でも薬用って書いてあるわ

「病院で買う薬用シャンプーは高過ぎるわ、市販でも低刺激シャンプーって書いてあるのを見つけたの、これでいいでしょ。」と言われると、苦しいのですが、「今の皮膚の状態に合ったシャンプーと保湿剤」はアトピ-性皮膚炎の犬すべてに共通なわけではないので、それをよしとすることができません。

 市販品のシャンプーは汚れ落としをメインに、においや泡立ちなどを考慮して作られておくことが多いです。シャンプー慣れしていないわんこに、これを用いてささっと洗っても汚れがスッキリ落ちます。泡立ちも良好なことが多いです。洗浄力が強いというのは刺激の強さは高めです。これらのシャンプーで週に何度も洗うと、保湿性に欠けるため皮膚がかさかさしてきてしまいます。アトピーわんこには不向きです。洗浄力は界面活性剤の種類を見るとわかるかと思います。高級アルコール系が強め、アミノ酸系が弱めです。
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 アトピーわんこの皮膚は細胞と細胞をつないでいるセラミドが減少していて細胞がむき出しになっているような構造になっています。皮膚自体はクッキングに使うラップ位の厚みで、その薄いラップに目に見えないくらいの細かな穴が開いていると考えて貰うと理解しやすいと思います。小さな穴からは外部から環境中のアレルギー因子が侵入してきます。またこの細かな穴を通して皮膚の潤い成分が逃げていきます。そのような中で皮膚のpHはアルカリ性になりやすく、これは皮膚に常在している細菌が増殖しやすくなっています。皮膚は身体の外と中を隔てている組織なのですが、アトピー性皮膚炎では構造異常があるためにバリア機能が作用しなくなっています。むき出しの身体に刺激を与えない、保湿成分が含まれているシャンプーを選択するのは必須のことです。

 もし常在菌の増殖があるのなら菌を殺したり減らしたりできるシャンプーを選びます。酵母菌の増殖ならば酵母菌を押えるシャンプーです。また、もし脂成分が積もっている状態ならばこれを溶かして取り除くシャンプーを選びます。著しく乾燥している状態ならば潤い重視のシャンプーを選びます。このように同じアトピー性皮膚炎であっても、選ぶシャンプーが違います。院内で薬浴を行なう場合は、部位によって別のシャンプーを組み合わせることがあります。また予洗いに洗浄力のあるシャンプーを使って皮脂を落として本洗いのシャンプーを使うということもあります。
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今回、代表的な薬用シャンプーの名称については記述しないことにしました。いろいろあり、混乱するといけないからです。

次回、食餌とおやつのお話です。

 

 

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アトピー性皮膚炎が治らない・その2

 アトピー性皮膚炎の治療を失敗に終わらせないために、よくある失敗例のお話をしています。2回目です。

前回は診察にいらしていただくことについておはなししました。今回は診察とお薬について、です。

 

<失敗2,足を舐めるのはクセだと思うわ

 アトピー性皮膚炎では、痒みの発生する部位に特徴があります。身体の背面はキレイで、内側に問題が起ることが多いです。脇の下や腕の曲がる内側、お腹や内股です。そして、足の裏、指と指の間も痒みの出る場所に挙げられます。「犬は汗をかかない」と言われていますが、犬の皮膚にも汗腺はあり、これらは汗をかきやすい所です。さらに皮膚が身体の中に入り込む境い目のところもカイカイが多く出ます。目の縁とか口まわり、耳道の入り口、陰部や肛門のまわりです。(皮膚粘膜移行部と言っています。)体液が出る場所の近くで、湿度が高くなっている部分です。アトピー性皮膚炎の発生ポイントは常に清潔にし、二次的に細菌やマラセチア(酵母菌)の繁殖が盛んになるのを防がなくてはいけません。

「眠くなると舐め始める」かもしれませんが、夢中になって遊んでいるときには痒みを忘れているけれども、いろいろなことに関心が無くなりはじめた寝る前のひとときに「痒みを覚える」のかもしれません。

 まずご家族の方に「犬の痒み」を知って貰えると、そこから治療への道筋ができるかな、っと思います。

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<失敗3,悪いのは皮膚だと思うわ

 悪いのは「皮膚」。だけど皮膚は体中に広がっていて、皮膚粘膜移行部と、粘膜部そのものに問題は起っています。結膜炎がその代表例です。また特に耳は必ず一緒に見て、耳垢汚れの有無や細菌やマラセチア感染についてチェックし、清潔にしていかなければいけません。皮膚科診察にいらしていただいているのに、ついでに耳も覗いたり、爪まわりのことや短頭犬では鼻じわの間をいじったりします。眼の方も見させていただいています。「皮膚はつながっている」ということで、決して不必要な処置をしているわけではないということをわかっていただきたいです。

 それから「皮膚は内部臓器の鏡」と言われることもあるくらい、内臓の変化を反映させていることもあります。アトピー性皮膚炎だと思っていると、実は別の重大な内臓疾患を見逃してしまっていることもあります。定期的な健康診断があればそのときの血液検査で別の病気の疑いをピックアップできるかもしれません。そうでないときは、皮膚疾患ですけれど念のための血液検査、特に内分泌系の検査のご承諾をさせていただくことがあります。特に異常が見つからなかった場合も「ほらね、皮膚だけが悪い」じゃなくて、「悪いところがなくて良かった」って言って貰えるとウレシイです。

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<失敗4,プレドニゾロン大好き

 診察にいらしていただいても「痒みの薬だけ貰えればいいです」というケースがありました。アトピー性皮膚炎のお薬の中で中心的な役割を担っているステロイドのお薬、プレドニゾロンは大人気です。「安くて、よく効く、早く効く」の3拍子そろったいい薬です。けれど長期に使用していると身体に悪い面が出てきます。そのため、ある程度使用してからは減量していく必要が出てきます。中にはすでに別の病気を抱えているためにステロイドのお薬が使えない場合もあります。ステロイドを避けてコントロールする別の方法はこまめな外用療法ですが、シャンプーというと「水が嫌いだからできない。」と治療にブレーキをかけてしまう飼い主さんもおられ、「痒みの薬を出してくれたらそれでいい。」というお叱りを受けることもありました。犬のためと思ってさらにお願いすると「痒いのに痒みの薬じゃなくてシャンプー?それも高い薬浴剤?」とさらにお怒りを受ける治療になってしまいました。また、別のお薬での痒み低減を図ることもありましたが、どうしても「痒みの薬、プレドニゾロンだけ」を希望される飼い主さんもおられます。獣医学的にみると慎重に使いたいプレドニゾロンですが、痒みを止めてやりたいと強く思われる飼い主さんには絶大な人気があります。

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  その人気のステロイドの代替薬として過去には免疫抑制剤が筆頭に上がりました。ステロイドに比べ「大して効かない、飲ませにくい、おまけに値段が高く付く」という汚名をいただくこともありました。投薬技術に長けたオーナーさんと服薬が素直なわんこのコンビネーションですとうまくいく薬ですが、投薬に苦慮する場合は、薬が飲ませられないわけですから単に「人気の無い薬」で済ませられません。断念せざるを得ませんでした。今はさらに別のお薬があります。JAK(ヤーヌスキナーゼ)阻害薬です。投薬が難しいことはありません。効果の発現までも早く、飲ませたその日から効果を感じられることと思います。残念なことにステロイドのお薬に比べると高価です。

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 初期はプレドニゾロンで痒みを抑えますが、治療期間が長くなると脱ステロイドを目指して高価なお薬を提案することになります。またステロイドの軽減のためには適切な外用療法(スキンケア)は欠かせません。ご理解をいただけると有り難いです。でも、どのお薬とも相性というのがあるみたいで、試してはみたもののステロイド以外の薬ではどうも痒みがうまくコントロールできないというわんこもあります。この場合は最小量のステロイドでコントロールすることになります。しかし痒みを100%抑えることは難しいです。(そもそも痒み0%は限りなく難しいです。)わんこの身体にやさしい薬を使っていきます。ご協力ください。

 

今日のお話はここまでです。


各地で豪雨が続きました。雨脚は遠のいたでしょうか。お近くの川の水位はいかがでしょうか。何事もないことをお祈りいたします。

 

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アトピー性皮膚炎が治らない!その1

 換毛期を過ぎ、皮膚のトラブルを抱えたわんこさんが増える季節になりました。今日からはアトピー性皮膚炎のわんこのお話、それも「治らない!」というわんこたちのお話です。

 

<治療の目標>

アトピー性皮膚炎は管理が長期戦です。皮膚病のなり始めは「夏の間が大変。」だったのに、いつの間にか、「春のお彼岸過ぎるともう痒み反応が出始め、秋のお彼岸が過ぎるまでは手を抜けない。」ような状態に変化します。そして「もう一年中痒みと戦っている感じ。かろうじて冬の間はまだまし。」なんてことになっています。アトピー性皮膚炎は「なかなか治らない」のではないのです。「徐々にひどくなる」のがアトピー性皮膚炎の特徴なのです。そして「治す」ことは目標ではありません。アトピーのわんこの皮膚は普通のわんこの皮膚とはちょっと違う構造で生まれてきてしまっているため、「治ることが無い」のです。アトピー性皮膚炎は「上手に管理する」ことが大切です。状態が安定していることを「寛解」と言っています。常にこの「寛解」の状態に持ち込んでおくことが治療の目標です。

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<治療がうまくいかない>

「治らない」といわれることが多いのは次のようなケースです。例を挙げます。

  薬だけもらいに来れば、診察しなくてもいいですよね。

  足を舐めるのはこの子のクセみたい。

  悪いのは皮膚です。

  プレドニゾロンがよく効きます。これだけでいいです。

  シャンプーをするときの注意が細かすぎる。

  シャンプーは市販のものを使うから大丈夫。

  おやつあげてもいいよね。

それぞれについて説明していきます。

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<どうしてなかなか治らないの?>

 ひとことで言うと「それはアトピー体質だから」です。以下、説明していきます。

 アトピー性皮膚炎はアトピーとか脂漏症(あぶら症)になりやすい体質のもとに、皮膚環境の変化があって、皮膚バリアが壊れたときにトラブルが発生します。ですから繰り返し皮膚が悪くなるとき(治らないと思われているとき)は、その前に皮膚の環境に変化が起っています。

 皮膚環境の変化には

  気温や湿度が上昇してきた(季節性の問題)

  被毛が厚く密で空気の通りが悪い(アンダーコートが抜け切れていないなど)

  脂性の分泌物が多い(汗をかくことなど)

  皮膚が擦れる(肥満などで襞の多い部分がすれています)

  皮膚以外に痛いところがある(炎症が起っている)ので舐めている

  問題行動としての舐める行為がある

  首輪などのサイズが合わないためこすれる

  着せた服の材質が合わない

  外用薬を塗ったことが刺激になっている

  肌に合わないシャンプーだった、またはすすぎが不十分だった

などが挙げられます。実にさまざまな理由で皮膚環境は変化します。

これらの皮膚刺激は自身の皮膚バリアを壊すことになります。

そして皮膚は徐々に変化していきます。

  皮膚が厚くしわしわしていて、触ると硬くなってくる

  皮膚の上にカサカサしたフケが浮き上がってくる

  皮膚がべたべたしている

  皮膚がじっとりしている

などです。

 皮膚バリアの壊れた皮膚では皮膚の常在菌が繁殖してきて、

  細菌性皮膚炎(膿皮症と言うこともあります)

  マラセチア性皮膚炎

を発症してきます。

  まとめますと、繰り返し皮膚が悪くなるのは、

「アトピー体質だから」「皮膚の環境の変化にデリケートに反応しやすく」「皮膚バリアが壊れやすいため」「常在菌が繁茂しやすい」

 というわけです。

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<失敗1,診察しなくてもいいですよね

 診察にいらっしゃらず、おうちの方だけがいらして「薬だけください」というケースです。

 いらしていただかないと皮膚の状態がわからないですし、そもそも診察になっていないので、困ったなぁ~になります。中には「何年か前にもこうなったことがあったよね、あれと同じだからさぁ、あんときの薬欲しいぞ。」なんてこともあります。これ、無理です。やっぱり来ていただかないと、お薬を何にしようか、どのくらいの分量にしようか、見てないものに対するお薬処方は考えられません。

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<薬だけでもいい?>

 診察では皮膚にどんな変化がおこっているのか、しわしわなのか、カサカサなのか、べたべたなのか、じっとりなのかを見ています。また細菌やマラセチアなどの繁殖が起っていないのかどうかも確認しています。

 毎日わんこを見ているおうちの方からすると、変わっていないように見えても皮膚の状態に変化があります。

実は「アトピー性皮膚炎」という診断をしてからも「細菌性皮膚炎」「マラセチア性皮膚炎」「脂漏症」「ドライスキン」など、その時々の皮膚の状態で皮膚病を現すことがあるのですが、「あれっ!?うちの子はアトピー性皮膚炎じゃなかったんですか?」と驚かれることもあります。サブタイトルとでもいいましょうか、そのときに生じた併発症があると、それに対しても皮膚病の名前が付きます。併発症がある場合は、アトピー性皮膚炎の基本の治療に併発症の治療も必要になってきます。むしろ、皮膚の状態が安定しているのかそうでないのかを再診で見させていただいていますが、この「安定」というのは「併発症が無い」のを確認していると言ってもいいくらいです。

 「薬だけもらえないの?」「う~ん。だめなんですぅ。」の理由は「皮膚が変化していくから」です。安定期に入っていると再診予定日までを長くとるようにしていますが、初診または悪化したときからしばらくの間は、再診予定日までの日数は短く設定しています。変化の予測をつけられないからです。わんこを連れてこられるのは大変かもしれませんし、お薬だけで済むのなら手っ取り早くて楽ちんでしょうけれど、この方法ですと治療の失敗につながります。

「どうせ変わらない」んじゃなく、「すこしでもいい状態」を目指して、診察にいらしていただきたいと思います。

 

今日のお話はここまでです。

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アレルゲン特異的IgE検査・結果を生かす

アレルゲン特異的IgE検査を行った後、どのように治療に生かしていったらよいのでしょうか。


 IgE検査の結果から治療に結びつくこと>

検査を行って、アレルゲンが明らかになり、この結果をどう生かしたらよいのでしょうか。

例えばアレルゲンが環境因子であるときにはこれらを避ける生活に変更します。じゅうたんやカーペットの材料にアレルギーを示していれば、床材を変えます。ぬいぐるみのパンヤ(中綿)に反応していればぬいぐるみと遊ばせません。取り上げましょう。コットンに反応を示している時はシャンプー後のタオルドライに木綿のタオルは使いません。洗車後の拭き取りによく使われる化学繊維タオルで拭くようにします。

植物の場合、屋外で飛ぶ花粉にどう対処しても難しいと思われるかもしれませんが、散歩から帰宅したときに清拭するなどすれば付着した花粉量を減らすこともできます。また交差反応といって、特定の植物に対して果物や野菜なども同じように反応することから、代表的な交差反応を示す果物などは避けなければいけないことが分かります。

これらはほんの数例ですが、以上のような対策を立てることが可能になります。

詳しくは個々の結果に応じた対処方法を、結果用紙とともに個別にお話しさせていただきます。

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<原因療法へ>

さらに、この結果から個体オリジナルの治療薬をオーダーメイドすることができます。むしろ、このために検査はあるのだ、というのが学術的かもしれません。「アレルゲン特異的免疫療法」(Allergen-specific Immuno Therapy : ASIT)です。

お腹の皮膚を剃って少量ずつの抗原を注射し、体の反応を見る「皮内反応試験」を実施し、それに基づいて薬液を調合し、今度はそれを「皮下注射」していく治療があります。「減感作療法」といわれる方法ですが、これがアトピー性皮膚炎の治療におけるゴールドスタンダードです。以前から、そして今でもこれが本筋です。

けれど「毛を剃って皮内反応検査をするのはいやだな」というのがありました。確かに、毛を剃ったり、(ちょうどツベルクリン反応が幾列にも起こっているかのような)陽性反応の赤い腫れをみるのは痛々しいです。こういう場合、別の選択肢になるのがアレルゲン特異的IgE検査です。こちらは血液を採取し、その血清から調べる方法ですので、動物の体には跡が残ることも無いのです。

検査の結果は皮内反応同様に信頼のおけるものが出てきます。

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<減感作療法へ>

少々難しい話になります。どのような仕組みで減感作療法を行うと痒みがなくなるのかについてです。

特異的IgE抗体は肥満細胞の表面に付着していて、体外から抗原が侵入してくるとこのIgE抗体に結合し、アレルギー反応が始まります。肥満細胞から痒みを引き起こす化学物質の入った顆粒が飛び出し、炎症をおこすのです。ところが皮内注射をしているうちにIgG抗体ができ、アレルゲンが侵入してくると、IgGが抗原よりも先にIgE抗体に結合してしまうため、抗原反応が起こらなくなります。それでアトピーの反応を根本的になくすことができるのが「減感作療法」です。

現段階ではアトピー性皮膚炎は完治できる病気ではありません。特効薬もありません。今私たちが行っている治療はアトピーの犬たちが少しでも快適に過ごせるようにしてやること、つまり痒みからの解放で、対症療法になります。アトピー反応を起こらなくする「減感作療法」は唯一の原因療法になります。

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<具体的方法と効果>

「減感作療法」は検査結果に基づいて作られた個別のアレルゲンを薄めて作られた薬液を投与するものです。

皮下投与は注射です。はじめは1日おきに、その後は1週間おきとか、徐々に間隔を広げていきます。

家庭で注射を行うのが難しい、という場合、別の選択肢として舌下投与もあります。これなら治療ができそうだ、と思っていただけるかもしれません。舌下投与の場合は毎日2回の投与が必要ですが、効果は皮下注射と同じくらいです。

「皮下免疫療法」(Subctaneous Immuno Therapy : SCIT)に対し、「舌下免疫療法」(Sub Lingual Immuno Therapy : SLIT)とよばれています。

いずれも即効反応があるわけではなく、この免疫療法で痒みが消失するまでには早くて3か月、おそらく1年くらいはかかると思われます。この間はいつもの抗炎症治療やそのほかの治療(細菌感染が起これば抗菌療法を行うなど)も必要になります。

だいたい1/3のグループはすぐに良い結果が出てきます。また1/3のグループもハイシーズンを除いてはこれまで使っていた薬を手放すことができるくらいには反応します。残る1/3のグループには全く反応が起こらない、というのがおおよそのデータです。

それでも1か年は治療をあきらめずに継続します。また1年が経過した後も、フォローアップやその時々に応じた治療が(それまでの頻度に比べると間が開くかもしれませんが)必要で、全く病院に来なくても大丈夫ということにはならなそうです。

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<夢のような治療方法ではないけれど>

唯一の原因療法ですが、「これではこれまでの通院回数や治療法とあまり変わりはなさそう」と思われたかもしれません。

今の段階では動物の不快な思いを改善し、生活の質を高めるのにひたすら「ステロイド療法」を行っています。手っ取り早くて、安くて、効果があるのだから、ついステロイドに手が延びてしまうし、なかなか縁が切れないのです。けれどステロイドのお薬は上手に使いこなさないと副作用があります。ですから、ステロイド以外で効くものがあれば、素晴らしいことだし、またそれを使うことで少しでもステロイドの量を軽減させることができるのならば使う価値があるわけです。

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CADのガイドライン>

現在、犬アトピー性皮膚炎(CAD)の治療のためのガイドラインでは、薬浴と局所に使用するステロイド療法が推奨されており、(個人的にはコルタバンススプレーがお気に入りです)全身的な経口投与は必要な時に追加する方針です。

また「アトピー性皮膚炎を悪化させる因子を探求し、可能な限り回避、除外させる」という治療法はIgE検査とそれによって分かったアレルゲンの回避のことです。これまでに確認された悪化因子にはフード、ノミ、環境中のアレルゲン、ブドウ球菌などの細菌、マラセチアがありますが、これらすべてをこの検査で調べることが可能です。

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<痒みを引き起こす様々な反応>

犬アトピー性皮膚炎の病態生理学的メカニズム、というと難しいですが、どのようなものがどのように作用して痒みが引き起こされているのか、多くの研究者たちによって調べられており、これまで知られていないことも分かるようになってきました。

犬アトピー性皮膚炎の原因はIgEの関与すること、という定義がありますが、発症には様々な要因が関わっています。遺伝子の問題はもちろん、皮膚のバリア機能の低下も大きな要因の一つです。皮膚バリア機能が低下していると抗原は皮膚の小さな穴から容易に体内に侵入してきます。また痒み反応には、アレルゲンを捉えた肥満細胞のほか、血液中の白血球(抗酸球や単球、リンパ球)も関与しています。これらは細胞同士の情報交換信号である「サイトカイン」をたくさん放出し、炎症反応を促します。これらのサイトカインの中には神経細胞を刺激するものもあります。単にアレルゲンが侵入したことだけでなく、温度が高まったとかいうちょっとした変化に、掻き行動が加わり、痒みの連鎖反応を引き起こしてしまうのです。お風呂上がりの痒み、冬季に外から屋内に入ったときの痒みなど、それを無意識に掻き始めて、さらに痒みが激しくなるのがこの痒みのサイクルで、「ヤーヌスキナーゼ経路を介した神経刺激」です。

ヤーヌスキナーゼ(Janus KinaseJAK)シグナル伝達経路をブロックするヤーヌスキナーゼ阻害薬は抗リウマチ薬として2013年に人体薬で承認が得られています(トファシチニブクエン酸塩)。海外ではすでにこのJAK阻害薬をアトピーの犬の治療に使われています。日本でもZ社さんが承認を取得されています。(商品名:APOQUEL・アポキル錠)(薬品名:オクラシチニブ)近いうちにご紹介できる日が来ると思います。

 

アトピー性皮膚炎とIgE検査のすすめ、今回でお話はおしまいです。

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アレルゲン特異的IgE検査

 暑さ寒さも彼岸まで、っていいますね。

暑さが遠のき、空にも植物にも秋の気配が感じられるようになりました。多くのアトピー性皮膚炎の犬たちも、春の彼岸から秋の彼岸ころまでが痒みの強くなる季節で、お彼岸を過ぎるとすーっと痒さが遠のいていくようです。締めくくりの秋に悪化する子たちにはキク科植物とイネ科植物、夏に繁殖したダニの死骸がつらさを引き起こさせることが多いようです。

 

さて、アトピー性皮膚炎と診断した犬たちに(猫も同じですが)、次のステップに進むため、アレルギーの検査をおすすめしています。今日はこのアレルギー検査についてお話をしようと思います。

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今月の掲示板はアトピー性皮膚炎の検査のご紹介です。
 

 

<診断があって検査が付随する>

おおよそ検査というものは診断の道筋をつけるために行われるものですが、この検査は先に診断があって、そのあとの検査になります。

痒みを伴う皮膚炎には

①細菌や寄生虫の感染に伴った皮膚炎

②アトピー性皮膚炎(犬アトピー性皮膚炎:Canine atopic dermatitis:CAD

③食物有害反応(Adverse food reactions : AFR

があります。

食物有害反応は、別の動物が食べても害のない食物(や添加物)をその動物が食べたときに、嘔吐や下痢をする、便の回数が多くなる、皮疹(じんましんのような)が出るなどの困った症状を出すもので、免疫が関係しているもの、いないものがあります。免疫と関係がないものは食物不耐症と呼ばれますが、免疫と関連があるものは過敏症と呼ばれます。食物不耐症では皮膚の痒み反応は起こりません。「食物過敏症」は従来「食物アレルギー」と呼ばれていたものと同じ、と考えていただいて結構です。

アトピー性皮膚炎と食物有害反応の皮膚炎は臨床症状がそっくりで見分けはつきません。また食物有害反応があるとアトピー性皮膚炎を悪化させる可能性があるといわれていますが、病態は解明されていないため今はまだ分からない段階です。 

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アレルゲン特異的IgE検査



<アトピー性皮膚炎の診断>

国際的に支持されている犬アトピー性皮膚炎の診断基準があります。2010年、Dr.Favrot が発表し、The International Task Force on Canine Atopic DermatitsITFCAD:犬アトピー性皮膚炎国際調査委員会と訳すといいのでしょうか。International Committee on Allergic Diseases of Animals : ICADA のホームページに関連する報告がまとめられています。)によって新たに支持されました。臨床症状から判断するものです。これは1000頭以上の統計データを解析して評価されたもので信頼度は高いのですが、それでも100%ではありません。以下の8項目のうち5項目を満たせばアトピー性皮膚炎である感度は85%、特異度は79%。6項目を満たせば感度は58%ですが、特異度は89%です。感度、特異度はそれぞれ、アトピー性皮膚炎と診断するのに見落としをしない確率、他の病気なのにアトピーと診断してしまうことがない確率、と置き換えることができるでしょうか。

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アトピー性皮膚炎と食物有害反応での免疫の仕組みの違いです。
 



診断手引きの
8項目ですが、原著をやさしい言葉に変えました。

1、はじめて発症したのは3歳未満のとき。

2、多くは室内ですごしている。

3、グルココルチコイド(お薬です)を投与すると痒みが減少する。

4、皮膚に病変が見つからないけれど痒みがあって診察に行ったのが始まり。

5、前足に皮膚病変がある。

6、耳に皮膚病変がある。

7、耳の辺縁はおかしくない。

8、体の背中の方はおかしくない。

少々分かりづらいですね。


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検査の具体的な進め方です。
 

 

<典型的なアトピー性皮膚炎は?>

アトピー性皮膚炎の診断基準に基づかなくても、「こんな感じがアトピー性皮膚炎ですよ」っていうと「そうそう、それそれ、当てはまるわ!」ということになると思います。挙げてみます。

1、皮膚に痒みがある。

2、皮膚にぽつぽつ、ぷっくりの膨らみ、赤い紋々がある。がさがさがついている。

3、慢性でずっと続いている。または良くなったと思うとまたぶり返す。

4、はじめて発症したのが3歳にならないとき。

これらはすべて当てはまっているとアトピー性皮膚炎です。


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結果はこのように返ってきます。



それから皮膚炎の起こる場所です。
ちょっと細かくなります。

1、目の周り。口の周り。

 ここは毛の密度が低くて皮膚が赤くなっているのが分かりやすい部分です。さらに顔全体を床でこすったり後ろ足で掻くため、頬の毛もまばらになり地肌が見えたりします。また明らかな脱毛になっているのもわかるかもしれません。

2、耳介の皮膚と外耳道。

 耳介の皮膚は赤く、ぽつぽつを認めることもあります。特に外耳炎は繰り返して発症します。耳垢は茶褐色でねっとりしていませんか。黒色でしょうか。染めて検査するとマラセチア(酵母菌)や細菌を発見することがあります。

3、前足:わきの下、ひじの内側。

  後ろ足:お腹側の太ももの付け根、かかと近くの内側部分。

 左右両方の内側の病変が中央方向に広がって、胸やお腹のところでつながっていることもあります。赤いポツポツや斑ができたりします。

4、足先:甲の部分。

 毛が薄くまばらになります。地肌が見えたりします。

5、足の先:指の間、足裏パットとパットの間。

 赤くなります。さらに舐めて毛が抜け、つるつるしてきます。じっとり濡れたようになっていることもあります。慢性化すると黒ずんできます。

6、後ろの脚:太ももの内側、太ももの外側、太ももの後ろの方。

 ボツボツや赤い斑が出ることが多いです。

7、お腹。

 毛が薄く抜けやすいところです。赤いポツポツや斑がよく出ます。

8、陰部の周辺、肛門の周り。

 赤くなりやすいところです。毛が抜けて皮膚があらわになっていることもあります。この部分は舐めやすい部分で、慢性的に舐めていると皮膚が黒く厚くなり、表面に粉をふいたようなものが付着することもあります。

9、わき腹。

 後ろ足で掻くことができる左右のわき腹は慢性化すると黒ずんだ皮膚が象の皮膚のように厚くなってきます。


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アトピー性皮膚炎についての冊子も掲示板近くに下げておきました。
 



<食物有害反応は?>

アトピー性皮膚炎と食物有害反応の過敏症とは見分けがつきません。本当にそっくりさんです。でも、もし次のようなことがあったら、かなり食物有害反応を疑うことになります。

1、発症したのが1歳前。

離乳食開始と同時に起こってきている場合もあるくらいです。

2、季節を問わず1年中痒みがある。

 アトピー性皮膚炎でもひどくなると年間を通じて痒みがあるといわれています。

3、ウンチがゆるい。13回くらいの排便回数がある。

 これはアトピー性皮膚炎ではみられることのないものです。

 

このような犬で、

1、耳。

2、足の先。

3、太ももの付け根の内側からお腹にかけて。

4、肛門周囲。

5、わきの下。

に痒みの中心がある場合は食物有害反応も併発している可能性は濃厚です。

 

さらに、強く痒みを抑えることができるはずの「グルココルチコイド」を使っても、なんだか切れが悪い。薬を飲んでいるのに痒みをうまく抑えられない。ということがあれば、ますます疑いは濃くなります。

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こちらはIgE検査のパンフレットです。
 



<アレルゲン特異的IgE検査>

このような痒みと皮膚や耳の病変が何から起こっているのかを調べたいとき、アトピー性皮膚炎であれば「アレルゲン特異的IgE検査」が有効です。

当院で採用しているのは「スペクトラムジャパン社のSPOT TEST」です。92種類のアレルゲンを一度に検査します。

この検査でも食物についての項目はありますが、食事性のアレルギーにはIgEが関与するものとリンパ球が関与するものがあるため、食物有害反応が疑われる場合はさらに「リンパ球反応検査」を実施して避けるべきアレルゲンを明らかにしていく方が有益です。


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今月のハートニュースはスクリーニングの血液検査と血液を材料にしたそのほかのおもな検査についてです。

窓際の方にかけてあるのは昨年1年分のバックナンバーです。
 

今月の掲示板はIgE検査についてです。お時間がありましたら、来院の折りにご覧になってください。

次回は検査結果をどのように生かしていくのかについておはなしします。

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Author:ハート動物病院
ハート動物病院です。
〒445-0062
愛知県西尾市丁田町杢左51-3
TEL/0563-57-4111
オフィシャルサイト:http://www.heart-ah.com/

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