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レッツ・おうちシャンプー

 アトピー性皮膚炎の治療の失敗。バスタイムでシャンプー嫌いにさせてしまうことがあります。
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「うちではいやがってシャンプーをさせてくれない」といわれる飼い主さんもおられます。アトピー性皮膚炎の場合、悪化してきたときにはどれだけ頻回に洗うことができるかは治療の成績、つまり皮膚の治り具合に影響してきます。外注するにも、暑い時期には愛犬の美容院も混んでいて、希望する日に薬浴して貰えません。お風呂タイムのミステイクとその改善点についていくつかご紹介します。ぜひ、おうちで丁寧な薬浴に再挑戦してください。

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<1、  毛玉とコーミング>

洗おうと思ったら、即、シャンプー。愛犬を洗い場に連れて行く。実はこれ、間違いです。もし毛が絡んでいる状態でシャンプーすると、水に濡らし被毛をもみ洗いしている間に、皮膚の上でフェルト玉を作ることになってしまいます。

洗う前にブラシ(または櫛)をかけて、毛のほつれをときます。特に上毛と下毛の二重コートになっている犬種、柴犬やポメラニアンなどは念入りにグルーミングし、アンダーコート(ふわふわしている下毛)を抜いてください。

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<2、  湯温

湯温は熱すぎても冷たすぎてもいけません。

人肌よりやや低いくらいがちょうど良い温度です。腕の内側、肘から手首の間くらいの所で湯に触れて確認してください。ここで熱くもぬるくもないと感じる湯温であれば、犬も不快に思うことはありません。

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<3、  シャワーの水流>

シャワーから出るお湯の勢いが不足すると、濡らすにしてもすすぐにしてもまどろっこしい。そこで、水量を上げると急に勢いを増すことになります。が、水圧が激しすぎると音も大きくなるし、水しぶきも激しく散ることになり、シャワーを怖いと感じさせてしまいます。

大きな音を嫌う場合には、犬が入ることができるくらいの大きさのバケツなどを用意して貰い、あらかじめ半分くらい湯を張っておきます。そしてシャワーの先端はバケツの中に入れ、音が出ないようにしながら、犬を後ろ足から湯を張ったバケツ(バスタブ)にそっと浸していきます。このとき、犬を抱く手を犬から放さないようにしてください。人の手に包まれている方が、犬の安心感が高まります。

中型犬よりも大きい犬では浸すことができるくらいのバスタブを見つけることは難しいと思います。この場合は湯につけることはできませんので、大きな音を出さないようにだけ気を配ってください。バケツにシャワーヘッドを入れておくことは一緒ですが、身体にシャワーを当てるときに気をつけます。シャワーヘッドは皮膚に直接当てる方がしぶきは上がりません。また水の勢いを分散させるため、シャワーを持たない方の手の甲にシャワーヘッドを当て、両手で犬の身体を滑らせるようにして湯をかけます。このとき、両手をシャワーで使いますので、犬が動かないように保持したり、しゃがんだりこけたりしないように支えることができません。二人以上のペアで洗い、一人は犬が動かないようにしてあげてください。

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<4、  シャンプー選び>

皮膚炎があってもなくても、シャンプー剤を選びましょう。人用のシャンプーは不向きです。赤ちゃん用なら低刺激だろうと、乳幼児向けのものを選んでいらっしゃる飼い主さんもおられますが、間違いです。去年のものが残っているので、もったいないからそれを使う、ということもよくありません。

シャンプー剤は犬用のものを使います。もちろん古いものは使いません。洗い始める前に、シャンプー剤が十分あるかどうかを確認してください。またシャンプー選びに迷ったときにはご相談ください。今の愛犬の皮膚状態に合ったものをおすすめいたします。

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<5、  シャンプータイム>

そそくさと洗って、ささっとすすぎはじめる、手際の良いシャンプーをされていらっしゃる方が多いです。泡タイムが短くてはキレイになりません。また、十分に泡が立たないけれど、このくらいでいいや、とやめてしまうのもいけません。シャンプー剤の分量が少なすぎても泡立ちは悪いでしょう。また、シャンプー剤の濃度の高い原液を皮膚に直接垂らして洗い始めるのはデリケートな皮膚に障害を起しやすいです。

皮脂汚れがあり、被毛がべたついているときは、洗浄力強めのシャンプーで予洗いする必要があります。予洗いでも被毛に付着した皮脂が落ちると、薬用シャンプーの泡立ちが増します。予洗いの場合も、本洗いの場合も、別の容器に必要な分量を小分けにして少しの湯を足し、泡立ちネットやスポンジなどでしっかり泡を作ってから、犬の皮膚に泡を乗せ、洗い始めます。予洗いが済んだら本洗いです。病変のある部位があればそこを中心として最初に薬用シャンプーを使います。薬用シャンプーは、掌にとって裏返したときに泡がポトンと落ちないくらいの固さまでしっかりと泡立ててから用います。皮膚の気になるところ(ボツボツがあるとか、はげているとか、カサカサしているなどの部分)から先に洗い始めます。それから別の所を洗い、また気にしているところを新しい泡で包み込むようにして洗います。耳や頬、顎下、口のまわりなど頭の部分もきれいにします。顔まわりが苦手な犬には、頭頂部でスポンジを使って小さな泡を作り、そのまま頬や顎下までスポンジで洗い、泡が目に入らないようにします。足の裏、指と指の間、脇の下、内股、首の下お尻まわりも気になるところと交互に、繰り返し洗っていきます。このくらい念入りに洗うと、最低10分以上はかかることになります。耳に泡や湯が入っても気にしなくて大丈夫です。耳の中の毛が処理されていて耳道に問題がなければ、後でプルプルっと頭を振ったときに耳に入った水は出ていきます。目にシャンプーが入ると、後で気にして盛んに目をこするようになります。目に入ったらすぐに湯ですすいでください。

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<6、  すすぎ>

背中の方から湯を流すだけではすすぎ不足になります。毛が密になっている腰から太ももの部分、飾り毛でふわっとしている胸前から首、お腹側はすすぎ不足になりやすい部分です。シャンプー残りがあると、あとで皮膚が痒くなることがあります。

はじめに身体を濡らすときと同様に、すすぎでも湯温とシャワーの水の勢いが肝心です。身体にシャワーヘッドを当て、身体に沿わせるようにして、場合によっては両手を使ってシャワーを当てます。犬のお腹側に回したシャワーヘッドを上に向けるのは、慣れないと水の跳ね返りでおうちの人がびしょ濡れになることが容易に想像できますから勇気がいるかもしれませんが、脇の下からお腹、内股へのラインは皮膚が薄くアトピー病変の出やすいところなので、念入りにすすいで貰いたい部分です。シャワー嫌いの犬で、シャワーを当てることが難しい場合には、すすぎのバケツ浴は数回、犬をつけた湯が濁らなくなり、湯の中で泡が立たなくなるまで繰り返してください。湯の中で、被毛がふわふわと波打つように、地肌から流すようにします。

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<7、急いで乾燥>

すすぎが終わると、濡れた身体を乾かす必要があります。乾燥させるときに多い問題点は「ドライヤーが嫌いで逃げていく」というものです。基本的に強い風や騒音がきらい、というのがあります。さらに乾かすことに夢中になると、速く乾かそうとして温風の「強」にセットし、温風を一点に集中的に当て、しっかり押えるために逃げ場がなくなると局所だけが熱くなるため、犬はさらに嫌うことになります。

はじめはしっかりとタオルドライします。犬が身体をぷるぷるっと回して被毛の水分を飛ばしてくれるとき、床に数枚バスタオルを敷いておく必要があります。タオルドライは皮膚や被毛が「湿ってはいるけれど濡れてはいない」状態になるまで行ないます。こうしておいてからドライヤーに当てます。ドライヤーの風はお腹を冷やさないように、お腹の方から先に当てて乾かします。常に小刻みに揺らし、一点だけに風が集中しないようにしてください。今の季節なら、扇風機の風を利用することもできます。特に屋外の犬を洗った後、扇風機の大きな風のうねりは乾燥の手助けになります。

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<8、シャンプーの頻度>

「シャンプーしすぎるのは良くない」という話が出ると、一体どのあたりが「やり過ぎる」に相当するのかわからないようです。一般のシャンプー剤(被毛の汚れを落とすことを主目的としたもの)を使ってシャンプーしていると、皮脂を落としすぎてしまうので週に2回も洗ってしまうと被毛がパサついたり皮膚がカサついたりしてきます。皮脂は落としすぎると、皮膚バリアが壊れてしまうため、洗うことによって余計に痒くなってしまうということがおこります。それで「シャンプーしすぎるのは良くない」という結果になります。

アトピー性皮膚炎をもつ犬の症状発症の予防としての頻度ですが、シーズン中は2週間に1回のシャンプーを、そしてシーズンオフには1か月に1回の頻度でシャンプーするのをおすすめしています。(皮膚病のオンシーズンは春のお彼岸から秋のお彼岸ころで、秋から冬にかけてはオフシーズンととらえてください。)アトピー性皮膚炎ですでに症状を出している場合、1週間に2回くらいの頻度で洗うようお願いすることが多いです。そんなにもこまめに洗うのは難しいということもあるかと思いますが、症状が安定すれば、頻度もまた遠ざかりますので、ひどいときにはそれなりの頻度で洗っていただけると治りも良いです。

中には「ハイシーズンには3日も経つと脂漏の匂いが上がってくるし、皮膚のべたつきを感じるし、犬自身も痒がりはじめる」というお話を頂戴することがあります。しっかり観察していただくと、「うちのわんこのベストなシャンプー頻度」がわかってくるかもしれません。

 

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おうちシャンプーの出来具合でアトピー性皮膚炎の治療成績には大差がつきます。こまめな全身シャンプーの必要があっても病院で薬浴を行なうのには費用がかさんでしまいますから、せいぜい週に1回くらいの頻度にならざるを得ません。ぜひぜひわんこがいやがらないおうちシャンプーに挑戦して、痒くない皮膚をめざしていただきたいと思います。

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アトピー性皮膚炎の治療の失敗・その4

 アトピー性皮膚炎の治療の失敗例について、1回目は診察前の段階、2回目は診察と内服薬について、3回目に外用療法、いわゆるシャンプーによるスキンケアについてお話ししました。今回は4回目、栄養学的な側面、食事やおやつのことについてお話しします。

 

<7,食事制限?おやつだめ?>

 きちんと診察に来ていただいて、耳などのチェックも欠かさず行なっていて、確実にお薬を投与して貰い、シャンプー治療にも手抜かりが無いにもかかわらず、痒みが十分に改善されないような場合があります。こんなとき、食餌の変更に着手させていただくことがあります。
 
 アトピー性皮膚炎は食物アレルギーとは別の概念ではありますが、臨床的にこの二つをきっちり分けることができません。人、小児の方では「食物アレルギーはアトピー性皮膚炎の原因の一つになっている」という考えと「アトピー性皮膚炎であることが食物アレルギーの原因になっている」いう考えがあるくらい、お互いに作用し合っています。

 「背中側に病変は出ていない」し、「犬のアトピー性皮膚炎の要項にすべて当てはまっている」、教科書のモデルわんこになってもおかしくないくらいのアトピーわんこでも、食物アレルギーの治療である除去食に変えてみると、痒みが改善することがあります。

 アレルギーの理論は、アレルゲンの積み重ねでコップがいっぱいになったときに水がこぼれることが症状の発症に例えられています。(痒みの閾値理論です。)除去食に変更していただくのは痒みの閾値を下回る状態に導く管理を目的としているですが、これらの処方食には、皮膚の構造を作るアミノ酸が入っているし、必須脂肪酸やビタミンEなどが添加されているため、皮膚バリア機能を強化したり皮膚の炎症を軽減させるようにも働いてくれます。

 「お薬代、シャンプー代ときて今度は食事まで?」の声が聞こえてきそうですが、小麦がだめだったり、蕎麦が危険だったりする人と同じように、避けておきたいアレルゲンがあります。食事療法にもご協力いただけると治療の成功率はアップします。

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<除去食を与えているときの注意>

「除去食」は簡単に言ってしまうと「アレルギーを起こさない食事」で、新奇タンパクフードまたは加水分解フードがそれに相当します。この除去食をしばらく(3週間から6週間くらい)与え続け、皮膚の状態が安定するかどうかを確認します。(除去食試験といいます。)食事により改善がある場合、アトピー性皮膚炎に食物アレルギーが強く関与していることが考えられます。

 除去食を与えている間ですが、「食事は処方食だけど、おやつはなくしちゃぁかわいそうだから、今まで通りあげてます」という飼い主さんもおられてびっくりしちゃうのですが、おやつに対しても制限があります。むしろ、ここをしっかり守っていただかないと除去食試験を正しく判断することができませんので、同居犬猫の別の食事を食べてはいないか、家族の中の誰かがこっそりおやつを与えてはいないか、お薬やサプリメント、お薬投与時のごほうびや薬を包む製品の中にアレルゲンが関与したものがふくまれていないかどうかなども細かくピックアップしていただき、該当するものはすべて中止してください。お願いします。

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<除去食試験と食物負荷試験>

 除去食試験で安定が見られたあと、特定の食品由来のアレルゲンを同定するために食物負荷試験を行なうことがあります。食物再暴露試験ともいいます。食物アレルギーの時の検査です。
 方法は、安定した状況が得られたところで1品目ずつ食材を与えてアレルギー反応が出ないかどうかをチェックするものです。ご家庭で判断するのではなく、病院でさせていただきます。食物アレルギーを確実に診断治療することができるのは除去食試験と食物負荷試験の組み合わせですが、1品目ずつ2週間程度の期間をかけてチェックし、また除去食だけに戻して2週間くらいしてから別の食品が大丈夫かどうかを試していく方法になるため、時間がかかります。数か月とか、1年以上に及ぶこともあります。
 1品ずつ与えるのはハウスメイドの食材です。例えばチキンを食べても大丈夫かどうかを確認するのには、家で茹でたささみです。ささみの入ったフードとか、ササミでできたジャーキーではありません。

 「もう、この除去食に変えたら安定してきたから、ずっとこれを続けていくだけで、アレルゲンチェックはしなくてもいいかしら?」というご質問を受けることもあります。総合栄養食になっているのでこのままでも大丈夫です。けれどのちに、アレルギー関連とは別の疾患になって、そちらのために別の処方食に変えた方が良いようなときが来たときのことを考えると、何に対してアレルギー反応を起しているのかを知っておいた方が良いかもしれません。(現在、加水分解フードで腎臓病に対応している、というような処方食も出てきています。)

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 <もとのフードに戻してみた!>

 「除去食で安定が見られたからもとの食事に戻してみた」、というのは簡易方式ですが、再攻撃試験をやってみた、ということになります。たまに、自主的にこの試験を行なってくださる飼い主さんもおられます。

 「戻してみたいな、どうなるかな。」という考えが頭をかすめても、除去食は1~2か月ほど継続してみてください。その後、すっかり良くなったというところで、前のフードに戻して、もし症状が悪化してしまったらその食事(そのフードに含まれる何らかの原料)に対してはアレルギーがあると判断します。ですが、そのフードの中の何に対してアレルギー反応を起こしていたのかは読み取ることができません。このフードではいけなかった、という結果だけわかります。

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<アレルギーの血液検査・アレルゲン特異的IgE検査>

 以前紹介したことがあると思います。アレルゲン特異的IgE検査は、アトピー性皮膚炎の環境中のアレルゲンを調べるのに有用です。またどの食品がアレルゲンになっているのかを判別することができます。どんなアレルゲンに対して身体が反応しやすいのかをみる検査、という方が正しいかもしれません。低レベルでも反応が現れることに対して「正確性に欠ける」と評価する先生もおられるようですが、血液を解析するこの検査は信頼性が高いことに間違いありません。アレルゲンの原因を把握するには優れた検査だと思います。また時間をかけずにアレルゲンを知ることができるのは魅力的です。

 近頃ネットでは「毛を採取してアレルゲンを推測する検査」に人気があるようですが、こちらはこの検査とは全く異なるものですし、おすすめではありません。

 「除去食試験は食事変更だけで済むし、安定したからこのまま続けていく」と判断された場合には、特異的IgE検査を強くおすすめしてはいません。

 こちらの検査を実施した場合は、検査結果に基づいて、最良のフードをご呈示しますので、その中から選んでください。おやつも候補に上がります。ただし口にしても大丈夫だと科学的に報告が出たもの以外を与えるのはいけません。

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<減感作療法>

 人、小児の食物アレルギーには新しい対応がとられるようになってきているようです。これまで「アレルギーの原因となる食物を食べさせないのが最善の治療」とされてきたわけですが、「原因食物をごく少量から少しずつ毎日食べ続ける」取り組みです。もちろん医師の指導の下に行なわれるわけですが、先に「スキンケアの励行」をしてからの取り組みです。このようにして消化管からの免疫寛容が導かれて、これまでアレルゲンと感じ攻撃していた食物にアレルギー反応をしなくなるようです。

 この先、主流になるかもしれない
この方法は私たちが以前から行なってきた「減感作療法、舌下投与」に相当するものと思われます。減感作療法はアレルゲン特異的IgE検査を行なった後、治療に使用するサンプルを作ってもらい本格的な治療に入ります。
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<アトピー性皮膚炎の栄養学的治療>

 栄養学的にアトピー性皮膚炎の治療をする場合、皮膚バリア機能の改善としても、痒みの改善としても不飽和脂肪酸の補充(脂肪酸療法)があげられます。ω3脂肪酸(αリノレイン酸、EPA 、DHA)の投与です。

 マイクロバイオーム(生体内に住む微生物叢で、口腔内、腸内、皮膚常在菌などがあります)とアトピー性皮膚炎との間に密接な関連があるといわれています。特に腸内細菌との関係がいわれていて、プロバイオティクスの投与により改善が見られたり、痒みのステロイド薬の減薬に成功したという報告があります。

 過酸化脂質がアトピー性皮膚炎を悪化させることが指摘されています。そのため抗酸化薬(ビタミンEの補充など)も期待できそうです。

 肥満は皮膚の摩擦を起こしますので、もし肥満傾向にあるわんこの場合はぜひ減量に着手してください。

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<8,番外編>

 まさか、ノミ・マダニ予防薬の投与をお忘れということはありませんよね?時々、投与をされていなくて、こちらで薬浴した際にノミを見つけることがあります。アトピーさんはノミ一匹でも痒みが出ます。忘れないようにお願いします。

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<まとめ>

 「治らないアトピー性皮膚炎」の治療を成功に導く秘訣をまとめます。

  お薬が切れないうちに診察を受けに来てください

  おうちでの様子をしっかり観察し教えてください

  身体全体を見ていきましょう

  痒みを止めるのはプレドニゾロンだけではありません

  スキンケアはとっても重要です

  決め手のシャンプー剤を選びましょう

  食事やおやつにも気を使ってください

  ノミ・マダニのコントロールも忘れずに

 以上です。

 

 4週にわたってアトピー治療の失敗例についてお話ししました。「うちのわんこ」のためにできること、改善点はあったでしょうか。長期戦のアトピー性皮膚炎。治るどころか徐々に悪化していくのが特徴のアトピー性皮膚炎。今年の夏は暑さが長く続きそうです。スキンケアは気を抜けなそうです。これを読んでくださった飼い主さんのわんこが痒みのない日を過ごせますように。   合掌

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アトピー性皮膚炎が治らない・その3

 アトピー性皮膚炎の治療失敗例について、いくつかお話ししてきました。今日は外用療法についてお話しします。

 

<失敗5,そんなに面倒なシャンプーはできないわ

 外で元気に遊び回っている子供に「あせも」ができてカイカイになっているときや、お仕事に頑張ってくれているお父さんの靴で蒸れる足に「水虫」ができているとき、毎日のスキンケア、できたら1日のうちでも数回きれいに洗ってしっかり乾かすことを繰り返していく方が、飲み薬に頼るよりも効果が出るだろうと予想がつきます。犬の皮膚ケアも同じです。強い薬を使わなくても、適切なスキンケアで皮膚の状態をコントロールすることは可能です。けれど適切なスキンケア、薬浴療法にはいくつかのお約束ごとがあります。
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  適正な温度の湯を用意する

  入浴(湯につかる)や予洗いをする

  皮膚の状態に合った薬浴剤を使う

  シャンプー原液をそのまま皮膚に垂らさない

  十分な量のシャンプー剤を使う

  しっかり泡立ててから洗う

  ゴシゴシ洗わない

  悪い部分から洗い始める

  薬剤の浸透時間を考えてゆっくり洗う

  すすぎに手を抜かない

  吸水タオルを使う

  乾かすドライヤーの風の強さや温度に気をつかう

  ピンブラシの先は丸くなったものを使い激しくブラシングしない

  シャンプーの頻度ははじめ週に2回、良くなっても2週間に1……など

これだけたくさんの決まり事があると、おっくうになってしまうかもしれません。
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「市販のシャンプーじゃだめです、病院で処方されたものを適切な量を使い、頻度もそれなりに多くして、これだけのお約束ごとを守ってね」というのは「高価な薬用シャンプーを使う、それも大量に消費するように仕向けている」わけではありませんし、「自分じゃできないと判断して病院委託されるように仕向けている」わけでもありません。デリケートな皮膚を守るためには、正しいシャンプー方法(だって、これは治療なんですから!)が不可欠です。ご理解お願いします。

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<失敗6,市販品でも薬用って書いてあるわ

「病院で買う薬用シャンプーは高過ぎるわ、市販でも低刺激シャンプーって書いてあるのを見つけたの、これでいいでしょ。」と言われると、苦しいのですが、「今の皮膚の状態に合ったシャンプーと保湿剤」はアトピ-性皮膚炎の犬すべてに共通なわけではないので、それをよしとすることができません。

 市販品のシャンプーは汚れ落としをメインに、においや泡立ちなどを考慮して作られておくことが多いです。シャンプー慣れしていないわんこに、これを用いてささっと洗っても汚れがスッキリ落ちます。泡立ちも良好なことが多いです。洗浄力が強いというのは刺激の強さは高めです。これらのシャンプーで週に何度も洗うと、保湿性に欠けるため皮膚がかさかさしてきてしまいます。アトピーわんこには不向きです。洗浄力は界面活性剤の種類を見るとわかるかと思います。高級アルコール系が強め、アミノ酸系が弱めです。
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 アトピーわんこの皮膚は細胞と細胞をつないでいるセラミドが減少していて細胞がむき出しになっているような構造になっています。皮膚自体はクッキングに使うラップ位の厚みで、その薄いラップに目に見えないくらいの細かな穴が開いていると考えて貰うと理解しやすいと思います。小さな穴からは外部から環境中のアレルギー因子が侵入してきます。またこの細かな穴を通して皮膚の潤い成分が逃げていきます。そのような中で皮膚のpHはアルカリ性になりやすく、これは皮膚に常在している細菌が増殖しやすくなっています。皮膚は身体の外と中を隔てている組織なのですが、アトピー性皮膚炎では構造異常があるためにバリア機能が作用しなくなっています。むき出しの身体に刺激を与えない、保湿成分が含まれているシャンプーを選択するのは必須のことです。

 もし常在菌の増殖があるのなら菌を殺したり減らしたりできるシャンプーを選びます。酵母菌の増殖ならば酵母菌を押えるシャンプーです。また、もし脂成分が積もっている状態ならばこれを溶かして取り除くシャンプーを選びます。著しく乾燥している状態ならば潤い重視のシャンプーを選びます。このように同じアトピー性皮膚炎であっても、選ぶシャンプーが違います。院内で薬浴を行なう場合は、部位によって別のシャンプーを組み合わせることがあります。また予洗いに洗浄力のあるシャンプーを使って皮脂を落として本洗いのシャンプーを使うということもあります。
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今回、代表的な薬用シャンプーの名称については記述しないことにしました。いろいろあり、混乱するといけないからです。

次回、食餌とおやつのお話です。

 

 

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アトピー性皮膚炎が治らない・その2

 アトピー性皮膚炎の治療を失敗に終わらせないために、よくある失敗例のお話をしています。2回目です。

前回は診察にいらしていただくことについておはなししました。今回は診察とお薬について、です。

 

<失敗2,足を舐めるのはクセだと思うわ

 アトピー性皮膚炎では、痒みの発生する部位に特徴があります。身体の背面はキレイで、内側に問題が起ることが多いです。脇の下や腕の曲がる内側、お腹や内股です。そして、足の裏、指と指の間も痒みの出る場所に挙げられます。「犬は汗をかかない」と言われていますが、犬の皮膚にも汗腺はあり、これらは汗をかきやすい所です。さらに皮膚が身体の中に入り込む境い目のところもカイカイが多く出ます。目の縁とか口まわり、耳道の入り口、陰部や肛門のまわりです。(皮膚粘膜移行部と言っています。)体液が出る場所の近くで、湿度が高くなっている部分です。アトピー性皮膚炎の発生ポイントは常に清潔にし、二次的に細菌やマラセチア(酵母菌)の繁殖が盛んになるのを防がなくてはいけません。

「眠くなると舐め始める」かもしれませんが、夢中になって遊んでいるときには痒みを忘れているけれども、いろいろなことに関心が無くなりはじめた寝る前のひとときに「痒みを覚える」のかもしれません。

 まずご家族の方に「犬の痒み」を知って貰えると、そこから治療への道筋ができるかな、っと思います。

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<失敗3,悪いのは皮膚だと思うわ

 悪いのは「皮膚」。だけど皮膚は体中に広がっていて、皮膚粘膜移行部と、粘膜部そのものに問題は起っています。結膜炎がその代表例です。また特に耳は必ず一緒に見て、耳垢汚れの有無や細菌やマラセチア感染についてチェックし、清潔にしていかなければいけません。皮膚科診察にいらしていただいているのに、ついでに耳も覗いたり、爪まわりのことや短頭犬では鼻じわの間をいじったりします。眼の方も見させていただいています。「皮膚はつながっている」ということで、決して不必要な処置をしているわけではないということをわかっていただきたいです。

 それから「皮膚は内部臓器の鏡」と言われることもあるくらい、内臓の変化を反映させていることもあります。アトピー性皮膚炎だと思っていると、実は別の重大な内臓疾患を見逃してしまっていることもあります。定期的な健康診断があればそのときの血液検査で別の病気の疑いをピックアップできるかもしれません。そうでないときは、皮膚疾患ですけれど念のための血液検査、特に内分泌系の検査のご承諾をさせていただくことがあります。特に異常が見つからなかった場合も「ほらね、皮膚だけが悪い」じゃなくて、「悪いところがなくて良かった」って言って貰えるとウレシイです。

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<失敗4,プレドニゾロン大好き

 診察にいらしていただいても「痒みの薬だけ貰えればいいです」というケースがありました。アトピー性皮膚炎のお薬の中で中心的な役割を担っているステロイドのお薬、プレドニゾロンは大人気です。「安くて、よく効く、早く効く」の3拍子そろったいい薬です。けれど長期に使用していると身体に悪い面が出てきます。そのため、ある程度使用してからは減量していく必要が出てきます。中にはすでに別の病気を抱えているためにステロイドのお薬が使えない場合もあります。ステロイドを避けてコントロールする別の方法はこまめな外用療法ですが、シャンプーというと「水が嫌いだからできない。」と治療にブレーキをかけてしまう飼い主さんもおられ、「痒みの薬を出してくれたらそれでいい。」というお叱りを受けることもありました。犬のためと思ってさらにお願いすると「痒いのに痒みの薬じゃなくてシャンプー?それも高い薬浴剤?」とさらにお怒りを受ける治療になってしまいました。また、別のお薬での痒み低減を図ることもありましたが、どうしても「痒みの薬、プレドニゾロンだけ」を希望される飼い主さんもおられます。獣医学的にみると慎重に使いたいプレドニゾロンですが、痒みを止めてやりたいと強く思われる飼い主さんには絶大な人気があります。

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  その人気のステロイドの代替薬として過去には免疫抑制剤が筆頭に上がりました。ステロイドに比べ「大して効かない、飲ませにくい、おまけに値段が高く付く」という汚名をいただくこともありました。投薬技術に長けたオーナーさんと服薬が素直なわんこのコンビネーションですとうまくいく薬ですが、投薬に苦慮する場合は、薬が飲ませられないわけですから単に「人気の無い薬」で済ませられません。断念せざるを得ませんでした。今はさらに別のお薬があります。JAK(ヤーヌスキナーゼ)阻害薬です。投薬が難しいことはありません。効果の発現までも早く、飲ませたその日から効果を感じられることと思います。残念なことにステロイドのお薬に比べると高価です。

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 初期はプレドニゾロンで痒みを抑えますが、治療期間が長くなると脱ステロイドを目指して高価なお薬を提案することになります。またステロイドの軽減のためには適切な外用療法(スキンケア)は欠かせません。ご理解をいただけると有り難いです。でも、どのお薬とも相性というのがあるみたいで、試してはみたもののステロイド以外の薬ではどうも痒みがうまくコントロールできないというわんこもあります。この場合は最小量のステロイドでコントロールすることになります。しかし痒みを100%抑えることは難しいです。(そもそも痒み0%は限りなく難しいです。)わんこの身体にやさしい薬を使っていきます。ご協力ください。

 

今日のお話はここまでです。


各地で豪雨が続きました。雨脚は遠のいたでしょうか。お近くの川の水位はいかがでしょうか。何事もないことをお祈りいたします。

 

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アトピー性皮膚炎が治らない!その1

 換毛期を過ぎ、皮膚のトラブルを抱えたわんこさんが増える季節になりました。今日からはアトピー性皮膚炎のわんこのお話、それも「治らない!」というわんこたちのお話です。

 

<治療の目標>

アトピー性皮膚炎は管理が長期戦です。皮膚病のなり始めは「夏の間が大変。」だったのに、いつの間にか、「春のお彼岸過ぎるともう痒み反応が出始め、秋のお彼岸が過ぎるまでは手を抜けない。」ような状態に変化します。そして「もう一年中痒みと戦っている感じ。かろうじて冬の間はまだまし。」なんてことになっています。アトピー性皮膚炎は「なかなか治らない」のではないのです。「徐々にひどくなる」のがアトピー性皮膚炎の特徴なのです。そして「治す」ことは目標ではありません。アトピーのわんこの皮膚は普通のわんこの皮膚とはちょっと違う構造で生まれてきてしまっているため、「治ることが無い」のです。アトピー性皮膚炎は「上手に管理する」ことが大切です。状態が安定していることを「寛解」と言っています。常にこの「寛解」の状態に持ち込んでおくことが治療の目標です。

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<治療がうまくいかない>

「治らない」といわれることが多いのは次のようなケースです。例を挙げます。

  薬だけもらいに来れば、診察しなくてもいいですよね。

  足を舐めるのはこの子のクセみたい。

  悪いのは皮膚です。

  プレドニゾロンがよく効きます。これだけでいいです。

  シャンプーをするときの注意が細かすぎる。

  シャンプーは市販のものを使うから大丈夫。

  おやつあげてもいいよね。

それぞれについて説明していきます。

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<どうしてなかなか治らないの?>

 ひとことで言うと「それはアトピー体質だから」です。以下、説明していきます。

 アトピー性皮膚炎はアトピーとか脂漏症(あぶら症)になりやすい体質のもとに、皮膚環境の変化があって、皮膚バリアが壊れたときにトラブルが発生します。ですから繰り返し皮膚が悪くなるとき(治らないと思われているとき)は、その前に皮膚の環境に変化が起っています。

 皮膚環境の変化には

  気温や湿度が上昇してきた(季節性の問題)

  被毛が厚く密で空気の通りが悪い(アンダーコートが抜け切れていないなど)

  脂性の分泌物が多い(汗をかくことなど)

  皮膚が擦れる(肥満などで襞の多い部分がすれています)

  皮膚以外に痛いところがある(炎症が起っている)ので舐めている

  問題行動としての舐める行為がある

  首輪などのサイズが合わないためこすれる

  着せた服の材質が合わない

  外用薬を塗ったことが刺激になっている

  肌に合わないシャンプーだった、またはすすぎが不十分だった

などが挙げられます。実にさまざまな理由で皮膚環境は変化します。

これらの皮膚刺激は自身の皮膚バリアを壊すことになります。

そして皮膚は徐々に変化していきます。

  皮膚が厚くしわしわしていて、触ると硬くなってくる

  皮膚の上にカサカサしたフケが浮き上がってくる

  皮膚がべたべたしている

  皮膚がじっとりしている

などです。

 皮膚バリアの壊れた皮膚では皮膚の常在菌が繁殖してきて、

  細菌性皮膚炎(膿皮症と言うこともあります)

  マラセチア性皮膚炎

を発症してきます。

  まとめますと、繰り返し皮膚が悪くなるのは、

「アトピー体質だから」「皮膚の環境の変化にデリケートに反応しやすく」「皮膚バリアが壊れやすいため」「常在菌が繁茂しやすい」

 というわけです。

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<失敗1,診察しなくてもいいですよね

 診察にいらっしゃらず、おうちの方だけがいらして「薬だけください」というケースです。

 いらしていただかないと皮膚の状態がわからないですし、そもそも診察になっていないので、困ったなぁ~になります。中には「何年か前にもこうなったことがあったよね、あれと同じだからさぁ、あんときの薬欲しいぞ。」なんてこともあります。これ、無理です。やっぱり来ていただかないと、お薬を何にしようか、どのくらいの分量にしようか、見てないものに対するお薬処方は考えられません。

 IMG_3791.jpg

<薬だけでもいい?>

 診察では皮膚にどんな変化がおこっているのか、しわしわなのか、カサカサなのか、べたべたなのか、じっとりなのかを見ています。また細菌やマラセチアなどの繁殖が起っていないのかどうかも確認しています。

 毎日わんこを見ているおうちの方からすると、変わっていないように見えても皮膚の状態に変化があります。

実は「アトピー性皮膚炎」という診断をしてからも「細菌性皮膚炎」「マラセチア性皮膚炎」「脂漏症」「ドライスキン」など、その時々の皮膚の状態で皮膚病を現すことがあるのですが、「あれっ!?うちの子はアトピー性皮膚炎じゃなかったんですか?」と驚かれることもあります。サブタイトルとでもいいましょうか、そのときに生じた併発症があると、それに対しても皮膚病の名前が付きます。併発症がある場合は、アトピー性皮膚炎の基本の治療に併発症の治療も必要になってきます。むしろ、皮膚の状態が安定しているのかそうでないのかを再診で見させていただいていますが、この「安定」というのは「併発症が無い」のを確認していると言ってもいいくらいです。

 「薬だけもらえないの?」「う~ん。だめなんですぅ。」の理由は「皮膚が変化していくから」です。安定期に入っていると再診予定日までを長くとるようにしていますが、初診または悪化したときからしばらくの間は、再診予定日までの日数は短く設定しています。変化の予測をつけられないからです。わんこを連れてこられるのは大変かもしれませんし、お薬だけで済むのなら手っ取り早くて楽ちんでしょうけれど、この方法ですと治療の失敗につながります。

「どうせ変わらない」んじゃなく、「すこしでもいい状態」を目指して、診察にいらしていただきたいと思います。

 

今日のお話はここまでです。

テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

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