認知症の犬の治療

認知症の治療のお話、今回は治療についてです。

日常生活を送ることができるレベルだと認知症予備軍になるかと思います。認知症治療は介護が必要になってからよりは、予備軍のうちに治療を開始し、脳を活性化させ、症状の進行を遅らせるのが良いと思います。

 

 

1、環境改善

高齢犬は歩幅が狭く、つまづきやすくなっています。関節症などの影響からジャンプもできません。このような動きの問題が出てきたら段差をなくしてスロープにします。いわゆるバリアフリーです。また床材を滑りにくいものに変えるなどの対応をします。

高齢犬では目が見えない(見えにくい)ことや新しいことに馴染みにくいことなどから、長年の記憶にあるままの部屋の配置にしておきます。部屋の模様替えはせず、歩行スペースに荷物など障害物を置かないようにします。トイレが遠いときは徐々に近づけるようにします。いつもの場所にないとまごついてしまい、トイレの失敗につながります。また使いなれた犬用のベッドですが、クッションのことも毛布を折りたたんで使っていることもあるかもしれませんね、こうした犬用の寝床が汚れてたからといきなり新しいものに交換するとうまく寝られないことがあります。古いものと新しいものと並行して使うなど様子を見ながら変更してください。また寝る場所、つまり寝床をどこに置くのかということですが、急に離れたところに設置換えすると寝ていい場所が分からなくなってしまう場合があります。トイレ同様、場所移動したいときは少しずつ変えていきます。

直径の短い円運動(旋回運動といいます)になり、歩くことを止められないレベルになってくると、周囲を丸く囲ったサークルが必要になります。このエンドレスケージは自家製でお作りいただくか、小型犬であれば子供用のビニールプールでも代用ができます。この頃には排泄もコントロールが効かなくなっていることが多く、ペットシーツをずれないように敷きつめる必要が出てくるかもしれません。

寝ている時間が増え、じょく創(寝ダコ)が心配になってからは、低反発マットやウオーターベッドなどを使用します。

全く動けなくなってからは体位を頻繁に変える必要が出てきます。こうなってからは体位交換のたびに積極的に四肢を動かしてやります。犬からすると受動的ではありますが、こうしたリハビリを受けることで関節が固定し動かなくなってしまうのを予防することができます。

寝たきりになると排泄の管理も必要です。オムツ交換をまめに行います。汚れやすい被毛は短くし、皮膚に尿ヤケができないように常に清潔にしておく必要が出てきます。

食事も口元まで運びます。水も同様です。食事の途中でも眠りに入ってしまうことがあります。食べることも疲れるのです。できるだけ起こし、食べるのを促します。食事はこれまでのようなドライフードからウエットタイプのものにするか、またはドライをふやかして与えます。嗜好性も変化してきますが、食べるままに任せていろいろな食材を与えると便秘や下痢になり管理が大変になりますから、節度を持って与えてください。

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併発する病気があればこれも治療します。

 

 2、生活改善

日中はできるだけ運動をさせます。若いころの散歩は朝夕でそれなりの時間を費やしエネルギーを発散させるような形態をお願いしていたわけですが、高齢期の散歩は短くてもよいので何回も外に連れ出し、日光を浴び、外の気配を感じるようにすることが大切です。適度な運動は筋力を維持させ、立てなくなるのを遅らせることができます。

日光浴はメラトニンの関係から日中のサイクルを整え、昼夜逆転になるのを予防することができるため重要です。ビタミンDを活性化するため骨粗しょう症を予防することもできます。

これまで屋外でトイレをする習慣になっていた犬では、屋内にペットシーツを敷いた犬用トイレを置いても、それが何のためのものなのか理解できません。そろそろ怪しいかも、という時に導入するのであれば再学習が可能なこともありますが、認知症が始まってからはそれができません。ヒトでも高齢期になるとトイレが近くなりますが、犬も同じです。屋内で失敗されると困るのでしたら、日に何度でもトイレを促す、つまり屋外に連れ出すしか有りません。ここで面倒だからとオムツをしてしまうと、まだ元気のある犬では狂ったようにオムツ外しにかかります。深夜にオムツの中の高分子ポリマーが散らかってしまうか、誤って食べてしまうかの惨事になるかもしれません。またおとなしくオムツを受け入れても動きが悪くなるため、寝たきり生活に近づく結果にもなりかねません。安易に走ると認知症を進めてしまう結果になります。

脳を刺激する遊びも取り入れます。これまでできていた命令をしつこく繰り返します。赤ちゃんのときのトレーニングを復習し直すわけです。「お手」「おかわり」のほか、特別な芸事ができていたのでしたら、それをさせます。できたらごほうびをやります。消化の悪いジャーキーは避け、いつも食べている高齢犬用のドライフードを与えます。それでは味気ないと思われるのでしたら、別の銘柄の高齢犬用フードでも真新しくて良いかもしれません。耳の聞こえも悪くなっていますから命令も大きくてはっきりした声を出してあげます。クリッカーを使うのも良いでしょう。

一緒にいられない時間帯でも知育玩具を用いて脳に刺激を与えることができます。コングが有名ですが、他にもショップでいろいろ売られています。小さいサイズのペットボトルの横に穴を開け、転がすとフードが出てくるようにしたものでも代用は可能です。

介護生活の初期は、犬の方も適度に動きがあり、思わぬハプニングが起こりやすいので飼い主さんを疲れさせる結果になります。つい感情的になって犬を叱りたくなることがあるでしょう。でも叱っても何の意味もありません。犬もそうしたくて失敗しているわけではないのですから、根気よくお世話をするしかありません。ひとりで抱え込まず、家族が分担できるように協力し合ってください。またショートステイなど、病院を利用するのも良い方法です。飼い主さんも心身のリフレッシュが大切です。また「ここをこうするともっと楽です」というヒントの具体例は私たちも個別に対応すると出しやすいです。

 

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認知症の治療は多方面からの総合治療です。

 

3、食事療法

認知症は脳に病理学的な変化が生じて発症するものなので、活性酸素が働かないようにする、抗酸化作用のある物質を多く含んだ食事を与えると進行を抑えることができます。

ビタミンEやビタミンC、βカロチン、セレニウムは抗酸化作用のある物質で、酸化による脳細胞のダメージを抑えます。

またLカルニチンやαリポ酸は脳細胞の代謝を助け組織へのダメージを抑制します。

DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)、ARA(アラキドン酸)などのω3脂肪酸は神経細胞膜を保護します。

フラボノイドやカロチノイド、ポリフェノールは抗酸化、抗炎症作用があります。

脳を活性化させることを目的にした処方食、ヒルズのプリスクリプションダイエットシリーズb/dは残念ながらなくなってしまいましたが、同系列のサイエンスダイエットプロシリーズの中の「健康ガード脳」は上記のような脳に良い物質が配合されたフードです。

これらの物質をいつものフードのほかにサプリメントとして摂取しても同様の効果が得られます。動物用のサプリメントは効能を「脳」に主眼を置いておらず、「骨関節」や「皮膚」「被毛」「健康」などを前面に出しているものもありますが、抗酸化作用は全身に良い影響を与える物質なので、お気に入りのサプリメントがあればそのまま継続していただくのが良いと思います。ただ複数を与える必要があるので、大変かもしれません。

認知症に特化したサプリメントとして、メイベットDC(明治製菓)やセサミン(サントリー)、ペットヘルス(共立製薬)などがあります。当院ではアンチノール(ベッツペッツ)もおすすめしています。

食事にしても、サプリメントにしても、即効性ではありません。1か月もしくは2か月といった月単位で様子が変わってくると思います。諦めず気長に様子を見てください。

 

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脳の変性を抑えるのに適した栄養素があります。
食事またはサプリメントのかたちで摂取すると良い効果が得られます。

 

4、薬物療法

行動学的側面からの治療法のほか、お薬で認知症の進行を遅らせる方法もあります。薬というと、対症療法の薬を望まれる方が多いです。ほとんどは「夜鳴きをすぐに沈めて眠れるようにしてほしい」というものです。ここで紹介するのは鎮静や催眠を促すお薬ではありません。

ヒトでモノアミンオキシダーゼ阻害薬としてパーキンソン病の治療薬に用いられている薬はドーパミン濃度を高め神経を保護する作用のほか、フリーラジカルスカベンジャーとしての作用もあります。塩酸セレギリン(エフピー錠)です。

またヒトでアルツハイマー型とレビー小体型の認知症で使われている薬も脳内のアセチルコリンを増やし、認知症の症状を軽減させます。塩酸ドネペジル(アリセプト)は犬での研究もあるお薬です。

 

多くの方が、「歩けなくなるのは困る」とがんばって犬を立たせ、動かすようにしてくださっています。これは結果的にリハビリになっているのですが、いよいよ「寝たきり」に近づき、「昼夜逆転」や「夜鳴き」が始まった頃にお手上げになって、今のつらい症状を1回の薬でなんとかしてほしい、と訴えてこられます。中にはいきなり「安楽死」を望まれるほど切羽詰まった事情の方もおられます。「強く言われると犬の脳には好ましくない抗精神薬の処方をせざるを得ない」のが我々仲間内のぶっちゃけた話ですが、もう一度脳を活性化させたいというのが真の気持ちです。

今の現状は

①飼い主さんの「認知症」という診断

②飼い主さんの自己流の介護

③症状悪化(グレードの亢進)

④ヘルプを求める

のサイクルになっています。

他の病気だったらこんなことはないはずです。

①症状が出て

②病院で診断を受けて

③治療があり

④それでも進行性の病気では末期がやってくる。

というのが普通です。むしろ今は

①定期検査をして

②早期のうちに病気をキャッチし

③うまくコントロールしながら

④長く穏やかな日を過ごす。

方が主流になっているほどです。

 

「高齢になったらこれも普通、こんな変化はしょうがない」なのではなくて、「歳はとったけれどこういうことは何とかならないものか、何を工夫すれば暮らしが楽になるのか」と前向きに関わっていただきたいと思うのです。よたよた歩くこと、目が見えなくなること、耳の聞こえが悪くなること、眠りが浅くなること、それぞれの経過の中で介助できることを探していただきたいと思います。

 

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5、介護の先にあるもの

寝たきりになった老犬も、いつかは終わりのときを迎えます。心臓病や腎臓病などの病気が悪化したり、食事の途中に与えていたものを吐いたのがきっかけで誤嚥性肺炎を起こしたり、食べる分量が減ってきて低栄養から衰弱して眠るように亡くなることもあります。

しかし、飼い主さんが先に疲れてへとへとになってしまうことも考えられます。家庭内の事情などいろいろなことを考慮し、あらかじめ「家族みんなで見送る特別の日」のことを考えておく必要があるかもしれません。 

高齢期の愛犬のことで困ったことがありましたら、家族だけで抱え込まず、ぜひご相談ください。
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老齢期を迎えた犬の対処法

老年期を迎えた犬のおはなし

 

年齢を重ねると、体のいろいろなところに老化の変化が現れます。肉体の機能的な衰えはある日突然始まるわけではありません。けれど私たちの目に変化を感じる瞬間が訪れます。被毛に白い毛が混じって来て犬も白髪になるのね、と思うのもあるでしょう。



<目に見える変化> 
目の衰えは黒目が白く濁ってくる白内障(や核硬化症)が代表的なものです。視力が低下し、用心になり、動きが遅くなり、ものにぶつかりやすくなります。

耳の衰えは聴力の悪化が挙げられます。飼い主さんの呼びかけに対する反応が鈍くなったり、大きな声で吠えるようになったりします。

視覚や聴覚が衰えると臆病になり、飼い主さんへの依存度が高まります。また恐怖から攻撃的になることもあります。

歯や歯肉も悪くなってきます。歯石が厚く付いてきて、歯周病になります。歯肉が上がり、歯が降りてきます。歯がぐらつき、痛みのために食事をするのが遅くなったり食べにくそうに口をもごもご動かすようになったりします。口腔環境の悪化は口臭を招きます。

足腰が弱ってきたのはよくわかると思います。筋肉量が低下し、運動能力が低下します。立っていても後ろ足が小刻みに震えます。歩くのが遅くなり、走らなくなります。歩幅もせまくなり、ロボットのようなぎこちない歩き方になります。寝ていて立ち上がるのに時間がかかり、散歩を嫌うようになります。骨関節症、脊椎症などになっています。

 
<目に見えない変化>
以上のような比較的分かりやすい(目に見える)変化のほかに、内臓諸器官の機能低下や体温調整能力の低下も起こります。

胃腸の機能低下は嘔吐や下痢、便秘、そして食欲の低下や体重減少を引き起こします。

腎臓の機能低下は多飲や多尿が初期症状です。尿を濃くする機能がなくなるため、薄いおしっこを出すことになります。窒素代謝物の排泄が滞り、尿毒症になると嘔吐や食欲廃絶を起こします。

心肺機能低下で運動不耐症が起こります。呼吸が浅く速くなります。少し動いただけでも疲れやすく、動くことを嫌います。咳が出ることもあります。

寒さや暑さに対する耐性が衰えてきます。夏バテしやすく、冬の寒さをこらえきれません。

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3月の掲示板は犬の認知症について取り上げています。


 

<脳の変化> 

そして何より、脳の機能の低下が起こります。認知機能不全症候群、いわゆる認知症です。家の近所で迷子になる見当識障害、家族と遊ばなくなる社会交流の低下、昼夜逆転などの睡眠サイクルの変化、トイレサインを失う不適切な排泄、さまざまな活動性の低下などがみられます。

前置きが長くなりました。今回から2回ほど高齢犬に発症する認知機能障害についてお話していきます。

 

<認知症というのは>
かつては「痴呆症」と言われていた「認知症」、どちらも英名ではDementia、同じです。1995年、内野先生が犬の痴呆症を「高齢化に伴って、いったん学習によって獲得した行動および運動機能の著しい低下がはじまり、飼育困難となった状態」と定義し、診断基準を作成されました。先生がお亡くなりになった現在もこの基準から評価することが多いですが、今はこの状態をヒトにならって「痴呆症」から「認知症」とか「認知機能不全症候群」(Cognitive dysfunction syndromeCDS)と呼ぶようになりました。

 ヒトでは認知症はいくつかのカテゴリーに分類されています。動物でも脳の病理学的検査を行うと、ヒトのアルツハイマー型認知症に特徴的なアミロイド沈着や、そのほかの変化が見られることが分かっています。このような変性が発生するのは酸化ストレスにより産生される活性酸素などが原因とされています。

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いろいろな症状が出ますが、治療で軽減することができます。
 

<発生しやすい犬>
1995年の内野先生の研究では、犬で11歳ころから発症があり、年齢が増すごとに罹患率は高くなり、13歳で急増し、15歳でピークを迎えています。思った以上に早い年齢で認知症は始まっています。

どの品種にも認められる疾患ですが、国内では柴犬の発生が群を抜いて多く認められます。2002年、高齢で異常行動を起こしやすい犬種についてヒルズが調査した結果によると約半数の51.0%が柴犬で、それに続くのが柴犬の雑種、雑種、日本犬、日本犬の雑種でここまでを総合すると全体の79.7%が日本犬の系統で占められることになりました。海外の報告では特定の品種に好発が見られないことから、これ以外の犬種の発症はあまり差がないかもしれません。

 
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内野式痴呆症の判定基準です。
30点以下は生理的な老化。
31~49点は予備軍。
50点以上は痴呆症。





<診断の手順>
常に観察している飼い主さんからの報告により、臨床症状から判断するのが始まりです。臨床症状から判定する基準があり、内野式のほかDISHAの行動変化のカテゴリー表記やRofinaらによる質問票があります。点数加算式で、標準的な高齢犬、認知症の予備軍、認知症と判断することができます。

さらに神経学的な検査や血液検査、そのほかの検査を行って、認知症以外の病気から認知症の症状になっていることはないかどうかを確かめます。

例えば頭を傾け、一方方向にだけぐるぐる回るような動きがある場合、認知症による旋回運動なのか、前庭疾患によるものなのかを見極める必要があります。このような病気に

①骨関節症

②椎間板ヘルニアや脊椎症

③歯の病気

④甲状腺機能低下症

⑤心臓病

⑥腫瘍

⑦膀胱炎

などがあります。

これらの病気を適切に治療すると今の症状が解決される場合もあるので、早く見つけて治療に入ります。もちろん、病気はひとつということはなく、複数の病気が重なっている場合も、認知症を併発している場合もあります。

 

<進行を抑える治療があります>
認知症は脳の変性によって起こる病態ですから、これに対して決定的な治療は有りません。しかし他の慢性の病気のように、病気の進行をできるだけ遅くさせ、飼い主さんご家族と犬のQOLを維持、向上させることを目的にいくつかの治療があります。

環境改善や生活改善などによる行動学的修正のほか、サプリメントも含めた食事療法、脳のための薬物療法があります。

 

これらの治療については次回お話しします。

 

 

    

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痴呆症のこと・その3最終回

痴呆症について・その3。最終回です。



<排泄のこと>

年をとってくると、膀胱にオシッコをためておくことも若い頃のようにはいかなくなると思います。つまり、トイレ間隔は短くなるのが普通だと思って下さい。肝臓や腎臓が悪くなると、その代償として多飲多尿になることがあります。また心臓病のために服用する薬の中には利尿作用のあるものもあります。年とともに膀胱も大きくは膨らまなくなるし、ホルモン的または神経的問題から失禁を起こす犬もあります。足腰が不自由になればさっと立ち上がって排泄できるところまですぐに行けなくなるでしょう。


屋内で排泄することのできるトイレ(ペットシーツ)を寝ているところの近くに用意してやったり、部屋にいくつも用意するなどの工夫が必要だと思います。いよいよサークルの中に、ということであればサークル内にペットシーツを敷き詰めることになります。

オムツをすると管理するほうはらくちんかもしれませんが、動きが悪くなることで、関節を固定しやすく、動きを妨げる結果になります。いよいよ動けなくなった、というところまでは、また犬自身が排泄しよう、という意識がしっかりあるうちは、オムツの使用は我慢してもらったほうがいいと思います。


いよいよオムツのお世話になった場合でも、こまめにオムツ交換をして下さい。おむつかぶれの皮膚は不快です。睡眠の質を低下させますから、夜啼きの原因にもなります。また膀胱への神経異常が見つかった場合は、人為的介入で膀胱をカラッポにすることが必要で、そうしないと膀胱炎を起こすため、それによっても睡眠の質を悪化させます。

 




<病気のこと>

痴呆を発症する犬の中には歯科疾患にかかっている犬も数多く見受けられます。咀嚼(そしゃく:ものを噛むこと)行動と痴呆との関係は無縁ではないように思います。歯石から歯肉炎や歯槽膿漏、歯槽骨炎などを発症すると痛いので、睡眠の質は悪くなると思います。一度歯科診察を受け、悪いようでしたら、適切な処置を受けたほうがよいと思います。


やけに静かで寝てばかりいる、とか、寒そうに身体を丸めて寝ている、などは甲状腺機能低下症の症状でもあります。脱毛や被毛がこわばっているなどの皮膚科症状があってもなくても、定期で受ける血液検査のコレステロール値が高くなくても、数回にわたりホルモン値の検査を受けたほうがいいかもしれません。(1回ではわからないこともあるので)ホルモン剤投与で元気になってくれたら、それもいいことです。


高齢になると、複数の疾患を持つことになると思います。心臓、腎臓、高血圧関連では、動きが鈍くなるのも当たり前ですし、関節疾患があれば痛いので動きたがらないでしょう。これらの疾病の管理もできていないと、痴呆による症状を悪化させることになります。基礎疾患についてもきちんと診察してもらい、薬で動きをカバーできるようであれば補助したいですよね。




 

<まとめ>

ざっとこんなところでしょうか。

①散歩をさせること、
②質の良い眠りを提供できるようにすること、
③栄養、ことに
DHAEPAなどのサプリ、
④まめに排泄のチェックをしてやること、
⑤他疾患をチェックすること     などは、
どれも重要なことだと思います。

これ以上の具体的な方法は、個別で違うことをする必要があるかもしれません。


困っていたら、どうぞ一人で抱え込まないで、ご相談にいらしてください。また、どうにも介護に疲れてしまった、出かける用事があるのに出られない、お友達に旅行に誘われたけどあきらめて悲しい気分、なんていうときには、介護入院を引き受けております。病院をうまくご利用下さい。介護するあなたのこころが折れてしまったら、わんこは生きていけなくなります。元気に復活したら、また始めていただけたらよいのです。時には息抜きも必要です。お気軽にお声掛け下さい。

最後まで読んでくれてありがとう。

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痴呆のこと・その2

痴呆症その2。続きです。



<寝室のこと>

よいコンディションで居るために、睡眠環境の管理は欠かせません。それまで屋外で過ごしてきた犬にとっても、ある程度の年齢が来て、痴呆が入るほどになったら、屋内で温度管理をしていただきたいと思います。


ベッドはやわらかいものが良い、と思われるかもしれません。確かに硬いところよりも良いのですが、おすすめは特殊なマットです。寝ダコができないように、帝人ファイバー株式会社が、愛犬を研究して出来上がった製品です。私達もそうですが、質の良い睡眠は脳に良い影響を与えます。

「タフィーマット」または「ホームナース」という名称で、通販で購入が可能です。


痴呆が進行し、ぐるぐると旋回運動を行ったり、部屋の隅に入り込んで後戻りできなくなったりしてくると、愛犬のために一般の部屋を開放して提供するのは難しくなってきます。また何もない部屋を一部屋そっくり、犬のためだけに使うというのは、日本の住宅事情からしたら無理なことです。それで、通気性は悪くなるのですが、お風呂マット3枚~4枚程度を立てかけて繋いで柔らかな壁を作ってもらいます。囲いのようなもの、サークルです。エンドレスケージといいます。この中をうろうろしながら、最後は疲れて眠ってしまう、というものです。


また愛犬によって、眠りにつきやすいからだの姿勢があるようです。いつも右を下にして寝る、とかそういったものです。この姿勢を覚え、バスタオルなどで抱き枕のようなものを作ってもらい、身体を支えるようにあてがってもらい、動きを止めて、そうした体勢を作り上げて寝付くまで待っていてもらうのも良いかもしれません。根気のある飼い主さんでないと、できないことかもしれませんが。


冬は湯たんぽやヒートマットで局所を暖めてもらうのも必要なことです。掛け布団が必要な犬もいると思います。適時対応してもらえばありがたいです。

温度には敏感になってもらい、夏冬エアコンを適温にしていただくことは言うまでもありません。

寝ていたかと思ったら、すぐに起きてないている、ということがあるかもしれません。どこか痛いとか、排泄したいとか、姿勢が好ましくないとか、いろいろ事情があるのだと思います。それらを観察し、思い当たることがあればそれらを排除してみて下さい。


 

<食事のこと>

老犬になってくると必要なエネルギー量(カロリー)は減ってきます。また高血圧や、心臓病、腎臓病等の問題から塩分(Na)は少なく、蛋白質も必須アミノ酸がきちんと入っていて必要以上は蛋白質の含まれないもの、ビラミン類が豊富なものが推奨されます。一般の老犬用フードを用いてもらうか、もしくは動物病院で病気別の管理食を処方してもらうと良いと思います。言わずもがなですが、ジャーキーを主にしたような、人でいえばジャンクフードを主食にしていたり、肉類などに偏った食事では脳の健康は維持できません。


老犬用のサプリメントがいろいろ出ています。痴呆の進行を抑えるため脳に良い物質となると、おすすめはDHAEPAです。また抗酸化物質や消化を良くする酵素、関節によいとされるコンドロイチンやグルコサミン、ヒアルロン酸、 コラーゲンなども高齢の犬には向いています。


生活のリズムを整えるためにも、食事は定時に与えることをおすすめします。痴呆になるまでは12回の食事が一般的で、たいていの方はそのように食事を与えてきていることだろうと思います。痴呆が進んで、何度も鳴いてせがむようになると2回ではうまくいきません。時間的な余裕があるのであれば3回とか4回に増やしてもらうといいと思います。子犬の時期に戻ったような管理方法になります。


食事の量は現在の体重を維持できる量、ということになります。運動量により掛ける係数が変わってきます。与える食事(総合栄養になっているドライフードまたは缶フード)から栄養計算ができますので、個々の犬の適量は栄養士のいる動物病院で相談してもらえばよいと思います。

欲しがるからといって、それに任せて与えていては、老犬は消化酵素も減少していますから下痢をすることになってしまいます。これでは管理するのに不都合です。自分で自分の首を絞めるような行為はやめておいたほうが得策です。



本日はここまで。さらに明日に続きます。明日で最終回です。

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犬の痴呆症の管理・その1

痴呆のこと、お話します。異例の平日UP。3日連続でおはなしします。定例日曜更新のシリーズ「肝酵素」はいつも通り日曜日の朝にUPします。



<はじめに>

昼夜逆転、夜啼き、徘徊、異常食欲、旋回運動などは痴呆症でよくみられる症状です。どの症状も飼い主さんを困らせ、こうしたことが長く続いたり、飼い主さんの睡眠が妨げられるほどになってくると、介護する人を疲労困憊へと導いてしまいます。飼い主さんが疲れないで、無理なく老犬介護を続けるためにはどうしたらよいか。これが最終的には、介護してもらう愛犬をいい状態で生活させるうえで、大切な問題なのではないかと思います。

 

さて、人には「特別養護老人ホーム」とか「デイサービス」そのほか、介護が必要な方のための施設もありますが、動物にはそれがありません。どうしても家庭介護になります。また、専門のスタッフといっても、老犬介護に秀でた動物看護師がすべての動物病院にいるわけでもありません。どこに相談したら良いのかさえ分からないのも実情でしょう。個人で「どうしたら良いものか」悩んでおられる飼い主さんも多いのかもしれません。

 

かくいう私も、介護について専門的に学んだわけではありません。獣医学の分野では、まだおぼろげながらの学問です。それで、経験からのアドバイスになるかもしれません。もっと良い方法をご存知の先生も居られるでしょうが、私なりの考えを思いつくままにまとめてみました。

 

症状により対処法が違う、ということは無いように思います。すべての根幹が「痴呆」であり、そこから派生した問題だからです。そして、今は発生していなくてもいずれは出てくるかも知れない問題でもあるでしょう。すべてをひっくるめてお話しすることにします。


 

<散歩のこと>

さて、同居する飼い主さんが夜ぐっすり眠るためには、愛犬を昼間動かせ、疲れさせて、夜は寝かせる方法をとるのが一番なのではないかと思います。そこで、おすすめするのは散歩です。散歩というと、排泄を主目的においてらっしゃる飼い主さんが多く、「うちの子はもう、ほとんど歩けないし、オシッコも屋内に作ったペットシーツでできちゃうし、散歩は要らない」、と考えていらっしゃる方もおられます。散歩の目的は幼犬期であれば社会化が、成犬期であれば運動が、その目的の大半を占めると思いますが、どの期にあっても気分転換も大きな目的になっています。太陽の光を浴びて歩くこと、これは私達にもとても大切なことです。メラトニン分泌をさかんにすると、体内リズムがうまくできます。そして足の裏の刺激は血行を良くさせますから、脳にまで血が良く巡ります。


1回の散歩で沢山歩くことはできません。もし可能であるのならば1日に数回、短い時間でも良いので、静かで平らなところをゆっくりと歩かせると良いと思います。

もし、もう歩けなくなってしまった犬なのであれば「カート」に乗せて外の空気を吸わせ、太陽を浴びさせ、外の音を聞かせる、そんな風でもいいと思います。外の雰囲気、外界の刺激を感じてもらえば。

老犬になればどの子も心臓は大なり小なり悪くなってくると思います。僧帽弁閉鎖不全症はほとんどの老犬がなってしまうでしょう。たぶんあなたの犬に特別に降りかかった災難ではありません。肺水腫の既往歴がなければ、運動禁忌ということもありません。無理のないように軽い散歩を行って下さい。


適度な運動は関節疾患の犬でも関節が固定してしまうのを防ぐことができます。運動によって筋肉が維持されるのです。骨、関節、筋肉、神経で運動ができることを忘れてはいけません。動かなくなると筋肉は萎え細くなります。そうしたら動きたくても動くことはできなくなります。関節症があっても無理のない程度の散歩はお願いしたいと思います。

とにかく、人と同じではないかと思うのです。「自分の好きなときに、自分の好きなところへ歩いていけること。」これは痴呆を遅らせる手立てになるだろうと。

そんなわけで、お散歩はとても大切で、ぜひとも実施していただきたい、介護の一歩です。

写真も何もなくて、文ばかり長くてごめんなさい。明日に続きます。

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ハート動物病院

Author:ハート動物病院
ハート動物病院です。
〒445-0062
愛知県西尾市丁田町杢左51-3
TEL/0563-57-4111
オフィシャルサイト:http://www.heart-ah.com/

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