FC2ブログ

慢性腎臓病に使われるお薬


連日の猛暑で、犬も猫も食欲減退。活動性も低下。元気なく動きが悪いこともあります。水の飲み方に変化はありませんか。もどすようなことはありませんか。「水?減っているかな?」「あれれ?嘔吐した?」どうでしょうか。こんな質問にも「しょうが無いよね、暑いもの」「たまには吐くよね、猫だもの」で済まされてしまうと、慢性疾患の早期発見も、急性悪化も見逃してしまいます。

今日のお話はハートニュース8月号とかぶります。慢性腎臓病のことです。何度も繰り返すお話しで、新しいことが盛り込まれていないかもしれませんが、わかっていらっしゃることでも、また思い出して貰うために、しつこくお話しします。

 

<診断された日が始まりの日>

猫の腎臓病はたとえ治療をしていても進行していく病気です。「慢性腎臓病」だと診断したとき、これはゴールではなくてこれからの長い道のりのスタートです。

 ひとことで「腎臓病」といっても、初期のもの、中間のもの、進行した後期の段階のものまでさまざまで、大筋の治療は同じであっても細かな個々の状態(高血圧があるとか貧血があるとかなど)によって、対応は違ってきます。こうした治療は犬でも同様です。

 1みず

<いろいろな治療がある>

腎臓病というと、「毎日皮下点滴をしなくてはいけない」というイメージを抱かれる患者さんがいらっしゃいます。以前に飼っていた猫がそういう治療だったから、もしくはお知り合いの方の猫がそのような治療を受けていたからです。けれど、病名は同じでも病期(病気のステージ)も病態も違うので、選択する治療法は異なります。慢性腎臓病のときに使う主な治療(治療薬)を挙げてみます。

1. 水分を補う

初期は自分自身で水を飲むことに任せます。欲しいときに水がない!という事態は避けるようにします。給水の方法はどんなものでもかまいません。「カルキ臭くない水」「動く水」が好きなようです。いろいろ気づかってあげてください。

2.   高血圧の管理をする

腎臓病だとわかったら血圧測定を行ないます。そこで、もし血圧が高く、標的臓器に障害を与えそうなレベルであったとしたら、高血圧をコントロールする薬を服用してもらいます。

3. 蛋白尿の管理をする

  腎臓病の発見では、血圧測定のほか、尿検査も行ないます。そこで尿タンパクが一定の数値を超えるほどになっていれば、蛋白尿を管理する薬も処方になります。蛋白尿はそれ自体が腎臓を悪化させるし、たくさん尿タンパクが漏れ出て、体蛋白が減少してしまう(ネフローゼ症候群)になるのを避けなければいけません。

2kouketuatu.jpg

4. リン吸着薬を使う

  病期が進んでいくと、リン制限食を食べていてもリンの腎臓からの排泄が滞りがちになります。そうなったら薬です。リン吸着薬は食べ物の中に含まれるリンを薬でとらえて体内に吸収させないようにし、糞便とともに体外に排泄させるようにするお薬です。薬のほかにサプリメントもあります。

5. アシドーシスの管理をする

  腎臓で窒素代謝物がうまく排泄されないと、身体の中に酸が溜まってきて、身体は酸性に傾いてしまいます。けだるい感じになり、生活の質を低下させます。身体を中性にもどすためアルカリ薬が必要になります。

6. 貧血の管理をする

  腎臓は赤血球を作るホルモンを産生していますが、腎臓病になるとこのホルモンが十分に作れなくなり、赤血球の数も減りますし、作れても寿命の短い赤血球になってしまいます。ホルモン補充の注射や、赤血球を作る材料でもある鉄剤を補って貧血を回避するようにします。

4リン 

7.
 嘔吐させない、食欲を出させる

  窒素代謝物の排泄が滞ってくると、気持ち悪くなって吐いたり、そうでなくても食欲が湧いてきません。窒素系の毒物を排泄させる治療だけでは追いつかないこともありますので、対症療法として嘔吐を止め食欲が出るお薬を使います。

8. 腎臓病用療法食を使う

  腎臓病のための食事は窒素系代謝物が最小量になるように設計されています。(必須アミノ酸が不足しないように配慮された良質な蛋白質で構成されています。)また低リン、低ナトリウムで、少量でも十分なカロリーが得られるように脂質はやや高めです。そのほか、不足しがちなビタミン類も補充されています。フードはドライタイプ、ウエットタイプがあります。また、胃瘻チューブを設置した動物のためのリキッドタイプもあります。

一般食に比べて長生きしたというデータが出ています。

7おうと

9. 活性炭製剤を使う

  「毒素の吸着薬」と言われているのが、活性炭製剤です。食事で生まれる窒素代謝産物を腸内で吸着し、体内に吸収されるのを防ぎます。毒素だけを吸着し、糞便として体外に排泄させる仕組みです。活性炭の表面の小さな穴に栄養素やお薬の成分は吸着しないようになっていますが、念のため一般の薬とは時間をずらして投与していただいています。

10. 抗菌薬を使う

  慢性腎臓病では尿路の細菌感染率が高く、膀胱から逆行性に腎臓まで細菌が上っていくと、さらに腎臓機能を悪化させてしまいます。それで定期的に尿検査を行ない、感染が見つかれば抗菌薬で細菌をやっつけます。

11. 腸管に作用するサプリメントを使う

  窒素代謝物を栄養にする腸内細菌を増やし、尿毒症性毒素を食べて処理して貰います。腸内細菌が住みやすいようにプレバイオティクスのほかシンバイオティクスになっている製剤もあるし、リン吸着能を併せ持たせるように複数の物質を組み合わせたサプリメントもあります。

9クレメジン 

12.
 プロスタサイクリン製剤を使う

  比較的新しい薬です。血管内皮細胞保護作用、血管拡張作用、炎症性サイトカイン産生抑制作用、抗血小板作用を通して、腎臓を保護し、腎臓病が進行したり悪化したりするのを防ぎます。

13. ω3脂肪酸系のサプリメントを与える

  ω(オメガ)3脂肪酸には抗高脂血症作用や抗炎症作用、抗血小板凝集作用など一部プロスタサイクリン製剤の作用と共通する作用があります。

14. 電解質バランスを調整する

  電解質の中でも、とくにカリウムは心臓の動きに直接関わってくるミネラルです。高すぎても低すぎても不整脈を発生させ、心停止を起こさせます。低いときはサプリメントで補い、高いときは静脈内点滴で徐々に低下させます。

 12.jpg

<細かな治療はみんなそれぞれ>

思いつくままに並べました。もしかするとこれ以外の薬を使う(使っている)ことがあるかもしれません。このたくさんの治療(薬)が慢性腎臓病のときに、いつも、すべて使われるというものではありません。その時々で必要になるものを選んで使います。病期の進行によって、追加で薬が増えることもあるし、それまでは使っていた薬を使わなくなることもあります。また個体によっても違いますので、お隣さんの猫が同じ慢性腎臓病だったとしても、うちの猫ちゃんと違う薬を使っているということもあります。「フードくらいは一緒だろう」と思われるかもしれませんが、病期によっては、また治療の段階によってはおすすめしないこともあります。100頭の慢性腎臓病の猫が居れば100通りの治療があります

 

<やっぱり検診が大切>

飼い主さんがわかる変化は、食事の量や準備した水の減り具合、活動性などで、これらは腎臓病に特化した情報ではありません。猫の身体を知るために必要なのは定期検診です。(定期検診は健康診断と少し違います。)定期検診は病期が進行していないか、合併症を併発してはいないか、もう少し薬を増やして身体を補助した方が良くはないだろうかなど、いろいろ評価し次に備えるのに有効です。健康診断が広い範囲のチェックを行なうのに対し、検診は腎臓関連にターゲットを絞って行なうチェック体制ですので、的を絞って効率的に検査を行なうことができます。

近頃注目している検査に「シスタチンC」という項目があります。予後の判定にも利用できそうです。健康診断ではあまり出てこない、腎臓に特化した検査を行なうのも検診(健診と検診、ちがうのです)ならではです。

慢性腎臓病であっても、早期に発見でき、すぐに治療をはじめていれば、数年の単位で猫の生活の質を高いまま、生活していくことが可能で、予後は良好です。かつてはできなかった治療が今できるようになっていることを鑑みると、長生きすることは大切です。

「猫が嫌がる」とか、「検査は猫にとってストレスがかかる」とか、マイナス思考はやめ、定期的に病院に猫を連れてくることで、猫を慣れさせる方向に努力をしてみてはいかがでしょうか。

 

 

今日のお話はこれでおしまいです。


先日「皮下点滴だけおいくらですか」というお問い合わせがありました。返答に困ってしまいました。
二次病院で診断され日常の治療だけをご希望される場合は、
最近の検査データと次回診察日まで必要な治療内容等の診療情報提供書とともにご来院ください。担当の先生とタッグを組んで最良の治療体勢が取れるようにしたいと思います。専門医さんとチームを組んでの仕事、大歓迎です。

8月の掲示板は、慢性腎臓病について。「好んで食べてくれるフードがなかなか見つからない」こともあるかもしれません。腎臓病用療法食について陳列しておきます。さらに、「できることがいろいろあるのね」と思っていただけるように、治療薬やサプリメントなども一緒にご紹介してあります。待ち時間等にご覧ください。なお、治療に関するご質問もお気軽にどうぞ。

スポンサーサイト



テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

猫の慢性腎臓病

寒い寒いと屋内にいる時間が長く、外の様子を気にすることもなく過ごしておりましたが、自然というのは素晴らしいもので着々と春の準備が整ってきている様子です。小さな春の花が咲き始めていました。

例年、閑散期に当たる1月2月は、ご家族さま向けのパンフレットを新しく作る作業に費やしています。内容が古くなってきたので改訂する必要があるのに日々忙しくて更新できなくて古いままお渡ししていたようなものとか、質問が多いから言葉で話す以外に持ち帰り用冊子を新しく作っておく必要があるものとか、そのようなこといろいろです。

 IMGP0900.jpg
こちらは慢性腎臓病にかかってしまった猫ちゃんの
ご家族さま向けにお渡しする予定の冊子です。

今年は猫の腎臓病のパンフレットを作り替えました。たいていの病気は文字中心の病気説明パンフレットA4用紙1枚でほぼ十分なのですが、慢性腎臓病ってどうしてこんなにお話しすることが多いのでしょう。これまでの説明用紙(A4用紙2枚分)をさらに短くすることはできませんでした。済みません。よ、よ、4枚。。。これはまた折を見て、簡易バージョンを作る必要があるレベルです。(><)
 
それから、このブログでは角度を変えて、こっちからあっちからとお話しする機会が多くて、重なった内容も多いのですが、挿絵も探し出しまして、もっと読みやすいように「猫の腎臓病」ファイルを作りました。待合室読本です。ここには新しい腎臓病パンフレットや、企業さんからいただいている資料なども挟んであります。

IMGP0903.jpg
ファイルです。
気になったらお手にとって開いてくださいね。

IMGP0902.jpg
ブログの文章に加筆、わかりにくいかなというところも
絵やブラフ、図など入れわかりやすくしたつもりです。
 
おりしも、3月は腎臓病月間。腎臓病について知っていただきたい一ヶ月です。それにちょうど春のお彼岸週間は2年に1度あるIRISの学会week。いわば腎臓週間です。

10歳を超えた猫の3頭に1頭は慢性腎臓病という検査結果が出る時代。症状が出るのは病期がそこそこ進んでしまったとき。それまでは症状をあらわさないのが腎臓病です。来月からは犬の検診が増え、猫さんは待合室でもリラックスしにくくなることが予想されます。健康診断はいつでも受けられますが、わんこの来院数が少ない今月中は貓さん向けに特におすすめです。ご来院、お待ちしております。
IMGP0901.jpg
慢性腎臓病にかかってしまったご家族だけでなく、
高齢猫を飼育されていらっしゃる方には、あらかじめ
読んでいただけるとうれしい内容です。

 
3月掲示版用のポスターです。
IMGP0893.jpg
腎臓は背中の方にあります。左右二つです。


IMGP0894.jpg
年をとるだけで腎臓病になる?
そういうこともあります。

IMGP0896.jpg
腎臓病の初期症状は?
実は分からないことが多いのです。

IMGP0895.jpg
腎臓のお仕事は?
いろいろな仕事をしています。

IMGP0897.jpg
愛猫の腎臓は元気でしょうか?
病院でできる検査がいろいろあります。

IMGP0898.jpg
腎臓病の治療といったら?
足し算的に治療は増えていきます。

IMGP0899.jpg
元気に暮らしていけるように、補助します。
腎臓を守り、残る力を生かしていきます。




今シーズンはインフルエンザが大流行していましたね。かくいう私も「鬼のかく乱」とでもいうような状態で、体調を崩してしまいました。たまに体調を崩すと、調子の悪い犬や猫の気持ちが分かります。ウィルス性鼻気管炎でもなかなか食事を始められない猫が居ますが、体温計では測りきらないような微熱のために「お口が苦い」「何を食べてもおいしくない」のかもしれないなぁと改めて思いました。回復期には消化器系に作用する薬で食欲をそそり、食べ始めても胃がつっかえることがないように補助してやることも必要なのかもしれません。まだまだ巷のインフルエンザは収束を見せていないようです。皆さま、どうぞお体には十分ご自愛いただきますように。

続きを読む

テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

慢性腎臓病とFGF-23

 前回、慢性腎臓病の猫ではリンのコントロールが重要なことをお話ししました。リンのコントロールをしないと、腎性二次性上皮小体機能亢進症を発症してしまうし、腎性二次性上皮小体機能亢進症は身体にいろいろ悪さをしてしまうから、というのがその理由です。

上皮小体ホルモン(PTH)は骨のミネラル代謝に関係するホルモンで、慢性腎臓病ではIRISの分類でいうステージ3ころから上昇を始めます。PTHの検査は日常的に実施するようなことはありません。もっぱら血漿中のリンとカルシウムの値を調べています。これらの結果からミネラル代謝異常を知ることになるのです。

高窒素血症でも言えることですが、はじめは身体が異常を知ります。それでそこを補うように身体が反応します。代償作用です。検査で分かる数値は、代償作用ではもう頑張りが効かなくなってきてからの上昇です。

腎臓のGFRの低下を高窒素血症となるBUNCREの上昇で知るよりも早くSDMAで知るように、ミネラル代謝異常も血漿リン値が上昇するよりも早く異常を知らせてくれる指標が望まれます。

 

ところで、リンの代謝に深く関わっている物質で、FGF-23というのがあります。今日はFGF-23についておはなしします。

 IMGP0010.jpg

FGF-23というのは>

FGF-23Fibroblast Growth Factor 23の略で、線維芽細胞増殖性因子、骨の細胞から分泌されるペプチドホルモンです。血漿中のFGF-23は腎臓からのリン排泄を促します。(リンを体外に出すように働きかけます。)それからビタミンD活性を抑え、上皮小体ホルモンの分泌や合成を制御しています。これはカルシウムとリンのバランスを取るための仕組みの一つです。骨からカルシウムが溶け出さないようにすること、正常な骨を造るためにはFGF-23が正常に分泌されることが必要のようです。

FGF-23は腎機能低下に伴って上昇しますが、それは血漿リン濃度が上昇する前の、早期の慢性腎臓病の段階から認められています。(高リン血症になるのは、腎機能低下がかなり進行してからのことです。)

 

 IMGP0017.jpg

<猫のFGF-23に関する研究>

猫のFGF-23に関する研究はElliott先生たちのグループが行っています。2013年と2015年にその研究の発表がされています。「FGF-23の濃度が高い猫は病気の進行も早いし寿命も短かったこと」や「著しい上昇は死亡リスクの増加と関連があったこと」がわかりました。カルシウムとリンのバランスが崩れることは死亡率に重要な役割を果たしています。また「リン制限の食事療法を始めるとリン濃度と同様FGF-23濃度も下がること」や、「猫の基準的数値は人のそれに比べてはるかに高いこと」も分かっています。(ヒトでは8.254.3pg/ml、猫では56700pg/mlだそうです。)

 

 IMGP0008.jpg

FGF-23は臨床にどのように応用できるのか>

FGF-23が慢性腎臓病の早期段階で上昇することやリン制限食で低下すること、腎臓病の進行によって上昇することから、

①早期発見のマーカー

②病気進行のマーカー

③予後判定のマーカー

としての使用が期待されます。

そして血漿リン値が高まる前に、その指標がいくつになったらリンコントロールを始めたら良いのかが具体的に分かるとなると、将来的に

④リン制限のためのエビデンスのある数値

ができるかもしれません。するとその指標の検査をこまめに実施することになり、もっとリンコントロールの重要性は知れ渡るのかもしれません。

 

残念ながら、現段階ではヒトのFGF-23も保険適応外なくらいなので、「うちの猫ちゃん」の数値を調べたり、結果から何かを推測していく、これをもとに治療の方針が変わる、とかいうことはまだ先のことです。そのうちには実用化に向けた芳しいお話しができる日が来ることを信じています。

 IMGP0009.jpg

FGF-23のそのほかの働き>

ヒトではFGF-23が①心不全、②鉄の代謝と造血にも関与があるということがわかってきているようです。

ネズミの実験で、FGF-23が心臓の筋肉細胞にあるFGF受容体を介して直接的に心臓肥大を起こすことが実証されました。これまではリンの値が高くなっていることそのものが心臓病を引き起こすリスクになっていると考えられていましたが、この実験結果から、腎臓病でリン値が上昇することによってFGF-23が増加したことが心臓病のリスクを高めるのではないかというように考えが変わってきました。

Elliott先生によると、FGF-23が猫の心臓に対しても危険因子になっているのかどうかは、まだ不明だそうです。

 

それからご存じのように慢性腎臓病では腎性貧血が発生してきます。貧血を判断する検査項目の一つにPCVがあります。Elliott先生は、PCVは生存期間と優位に関連するとおっしゃっています。PCVが低下すると血液の酸素運搬能の低下から、悪くなっている腎臓が低酸素状態になる可能性があるそうです。PCVのわずかな変化が慢性腎臓病を悪化させ、低酸素により生存期間を短くさせる可能性があります。

腎性貧血の原因は腎臓から分泌される造血ホルモンであるエリスロポエチンの不足からというのが一般的な答えですが、鉄が不足しているとエリスロポエチンを注射で補っても貧血は改善されにくいです。また鉄は身体の中にあってもその分布から、うまく利用されず貧血改善に反映されてこないこともあります。猫のFGF-23の研究がさらに進むと、ヒトと同様の結果が証明されるかもしれません。今は貧血を鉄とエリスロポエチン軸だけで考えていますが、貧血改善にはリンの安定も必要だという答えが出るのかもしれないと思います。

 IMGP0011.jpg

今春、猫の腎臓病のために新しいお薬も発売になりました。ベラプロストナトリウムというお薬で、これまでも人体薬として肺高血圧症に貢献してきたお薬です。血流を良くする作用があります。血の巡りが良くなることで、慢性炎症を抑え、組織が回復するのを助けるわけです。今後、処方することが増えていくと思います。猫の腎臓病の未来に明かりがまたひとつ灯りました。

というところで、今日のお話はここまでです。

猫の慢性腎臓病、未来のお話しが中心になりました。

テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

腎臓病と高リン血症のこと

 慢性腎臓病と分かったら、血液中のリン(P)やカルシウム(Ca)の値に注目します。リンやカルシウムはともに骨の主要な構成成分です。これらのミネラルが骨を強く硬くしています。

腎臓と骨。ちょっと関係がなさそうに思える二つの組織ですが、リンとカルシウムを介して密接なつながりがあります。今日はリンと腎臓のお話をします。

IMGP9989.jpg
ヒルズさんからの腎臓疾患用療法食です。
はじめに猫用のものを紹介していきます。
Elliott先生の研究のもとになっているのはこちらの療法食です。

IMGP9992.jpg
こちらの療法食も世界的なシェアが大きい食事です。

IMGP9993.jpg
セレクション。
ロイヤルカナンさんは2種類のラインナップ。

<骨と腎臓の関係>

骨を強くするためには「カルシウムの多い食品を摂ること、できれば腸での吸収の好いものがいいですね。それから日光浴もしなければいけない。」という話も聞いたことがあるかと思います。「日本人は1日に必要なカルシウム量を十分摂れていないから、健康になるためにはカルシウム強化牛乳を飲んでみましょう、おやつには小魚やナッツを食べましょう。」と、カルシウムは身体に良い食べ物として信じられています。絶対的な信頼度でこれを犬や猫に応用されている方もいらっしゃいますよね。事実その通り、骨を強くするためにはカルシウムは必要です。

そして、腸でカルシウムの吸収を高め骨へのカルシウム定着を促す仕事をするのは活性型ビタミンD(カルシトリオール)で、これも強い骨の形成に欠かせません。腎臓はこの活性型ビタミンDの生成に関わっています。ビタミンD(脂溶性ビタミンです)は食事から摂取し、紫外線を皮膚に浴びると体内で合成され、肝臓や腎臓の働きを経て、この活性型ビタミンDに変換されます。ビタミンDが十分活性化されないと、体内で必要なカルシウムが不足するため、骨からカルシウムを溶かして出すことになります。つまり腎臓の機能が低下すると、ビタミンDの活性化が低下してしまうため、「骨がもろくなって」いきます。

そしてカルシウムとともに骨の構成成分となっているのがリンです。リンは骨を強くするほか、エネルギーの運搬をしたり、細胞膜の成分になったりと、やはり身体に欠かすことのできないミネラルです。リンは食事とともに体内に入り、一部腸から吸収され、残りは便と一緒に体外に排出されます。健康なときは吸収されたリンと同じ量のリンが腎臓から 尿中へ排泄されますが、腎機能が低下してくると吸収したリンを排出することができなくなります。腎臓の機能が低下すると、リンは体内でたまって「高リン血症」をおこします。
IMGP9991.jpg
日清製粉さんからの療法食です。


 IMGP9990.jpg
サニメドシリーズはオランダ産です。
いろんなメーカーさんから腎臓病食が出ているので
一つ二つで食べなかったからといって
あきらめないで、いろいろトライしてください。

<異所性石灰化>

高リン血症が進むとリンとカルシウムが結合して、骨以外の組織にくっついてしまうことがあります。「異所性石灰化」といいます。たとえば関節が石灰化を起こすと関節炎になります。腎臓に石灰沈着をおこすと、それは腎臓そのものを悪くすることになります。腎臓が悪くなるとリンがたまり、リンがたまると腎臓を悪くします。そいう悪循環です。

IMGP9998.jpg
ヒルズさんの犬用の腎臓疾患用療法食。
お試しできることを知っていただくために
サンプル袋を写真に撮りました。
猫用でもサンプルはご用意があります。
IMGP9997.jpg 
ロイヤルカナンさんの腎疾患用療法食です。
IMGP9996.jpg
猫用と同様、犬の療法食も2種類用意してくれました。

<腎性二次性上皮小体機能亢進症>

腎臓の機能が低下すると、血清リン値が上昇するとともに、活性型ビタミンDの産生が低下して血清カルシウム濃度が低下します。この二つの状況から、上皮小体ホルモン(パラソルモン:PTH)が過剰に分泌されることになります。PTHはリンを排出させる働きがあります。初めのうちはリン排泄の良好な代償作用になるのですが、進行するとリンの排出が滞ってリンがたまってきます。体内の組織のリン過剰がやがて高リン血症をもたらすことになります。それからPTHは骨に作用して、骨からカルシウムとリンを流出させます。その結果骨はもろくなります。これが腎性二次性上皮小体機能亢進症です。

腎臓病をもつ猫の2/3は高リン血症を発生しているといわれています。高リン血症は腎性二次性上皮小体機能亢進症の原因になります。腎性二次性上皮小体機能亢進症は慢性腎臓病をもつ猫の臨床症状の一つでもあるし、慢性腎臓病を進行させる要因でもあります。それから猫の生存期間を縮めてしまうし、猫の具合そのものも悪くさせてしまう、悪いことだらけの病気です。

 IMGP9999.jpg
ドクターズの療法食は、あの「ヨード卵光」で
みなさんご存じの日本農産さんが作ってくれています。
もちろん、国産が強みなんです。

<高リン血症の発生>

高リン血症は慢性腎臓病がだいぶ進行してから発生します。その段階ではすでに身体の中で、大きな問題が発生しています。腎臓病が悪化した犬や猫はみな高窒素血症(BUNCreが高い値になっている)を発生していて、食欲の低下や時折の嘔吐などを示しますが、高リン血症があっても特徴的な臨床症状を出しません。検査をしないと分からないのです。しかし高リン血症なら腎性二次性上皮小体機能亢進症ですといえますが、リンの値が正常範囲内に入っていても腎性二次性上皮小体機能亢進症ではないとはいえないと言われています。

 IMGP9994.jpg
猫用のウェット食。
缶詰やアルミパック、パウチがあります。
液体のものは経鼻カテーテルなどにも使えますが、
味も悪くなく、そのままお口からの投与OKです。

<高リン血症を避ける方が良い理由>

高リン血症があると

     上皮小体ホルモンの排出が高まります。

     腎性二次性上皮小体機能亢進症をおこします。

     活性型ビタミンD(カルシトリオール)が低下します。

     骨からカルシウムやリンが溶けて骨がもろくなります。

     骨以外のところに石灰沈着をおこします。

     猫の具合を悪くします。

     結局、猫の生存期間を縮めてしまいます。

リンを制御すると、

     腎臓病の猫は調子が良くなります。

     生存期間が長くなります。

     腎臓病の進行も遅くなります。

「高リン血症でなくても腎性二次性上皮小体機能亢進症になっているかもしれない」ということは、高リン血症を起こしていなくても腎臓病であるのがわかっていたらリンのコントロールをしていった方が猫にとって有益だ、ということですね。

 IMGP9995.jpg
犬用の缶詰、アルミパックとリキッドです。
液剤はハイカロリーです。
食欲不振時でも嘔吐さえコントロールできれば
最低限度の栄養を確保できます。

<高リン血症の治療>

リンのコントロールは食事療法と薬物療法で行います。

腎臓のための特別療法食は、すでにリンが制限されているので、一般食から腎臓病食に切り替えるだけで、第一段階のリン制限はクリアされます。リンはタンパク質が豊富な食品に含まれているので、タンパク制限をすると、同時にリンの過剰摂取を防ぐことができます。

このときにおやつや副食としてリンの多い食品を与えないように注意することも必要です。リンが多く含まれていて、猫に与えがちだけれど、それにはふさわしくない食品をあげておきます。肉類、魚類、小魚、桜エビ、牛乳、チーズ、ヨーグルト、するめ、アサリ、ナッツ、ハム、ソーセージ、かまぼこなどです。

リンを制限した食事で生存期間が延長することが分かっています。2000年のElliott先生たちの研究によると、一般食だと264日、リン制限食の場合だと633日という驚くほど生存日数が違う結果が出ています。

血清リン値は食事を変更してすぐに低下していくわけではありません。気長に治療していきます。6週から8週くらい開けてモニタリングします。目標達成まで数ヶ月かかる場合もあります。

なかなか下がらない場合は、「療法食+薬」だったり、別の種類の薬を2つ組み合わせ「療法食+薬+薬」にして対応します。それからどうしても療法食への切り替えがうまくいかなかった猫では「薬」だけで下げるようにします。

 

<経口リン吸着薬>

経口リン吸着薬は消化管内で食事に含まれるリンと結合して、腸内にとどまりそのまま便とともに排泄されます。結果として体内に吸収されるリンが減少することになります。

リンの吸着薬には、水酸化アルミニウム製剤、炭酸カルシウム、炭酸ランタン、クエン酸第二鉄、リン酸結合性ポリマー(塩酸セベラマー、ビキサロマー)などがありますが、安価なもの、高価なもの、それぞれの利点欠点もさまざまです。これらはすべて人体薬です。各先生で得意な薬、処方慣れしている薬があるかと思います。

動物薬として出ているものがあります。これらは、すべてサプリメント扱いです。

     レンジアレン
IMGP9937.jpg
鉄剤を主にしているので貧血を伴う腎臓病猫さんには
こちらはおすすめです。
旧ノバルティス社から出ています。

塩化第二鉄や炭酸ナトリウムを主成分にしています。

個包装で、1日に1~4袋を食事と一緒に食べさせます。

     カリナール1
IMGP9938.jpg
低カリウムになりがちな猫の腎臓病に
おすすめです。
リンに続いてカルシウムも高値になってしまった
動物では別のものをおすすめします。

  バイエル社から出ています。

炭酸カルシウム、グルコン酸乳酸カルシウム、クエン酸カリウム、キトサンなどが成分です。

1日に備え付けのスプーンで1~2杯を食事に混ぜて与えます。

     イパキチン
IMGP9940.jpg
ベトキノール社から出ていたIPAKITINEですが、
日本でも昨年から入手可能になっていました。
キトサンが硫化物も吸着するようです。
高カルシウム血症の動物には
おすすめではありません。

  日本全薬社から出ています。

炭酸カルシウム、キトサンなどが主成分です。

 

④海外の水酸化アルミニウム製剤(動物用)

*Alu-capR :3M社から。

⑤同、炭酸カルシウム製剤(動物用)

*pronefraR :Virbac社から。

*Easypill Kidney Support CatR :VetExchange社から。

*IpakitineR :Vetoquinol社から。

<おわりに>
リンのコントロールで長生きできます。
今日はリンの少ない腎臓疾患用特別療法食の代表的なものと、リンの吸着薬として扱われるサプリメントをご紹介しました。

他にもあります。
とにかく、いろいろあります。

動物病院の先生がおすすめしてくださるもの、いろいろ試してみてください。
一つだけで「食べなかった」とあきらめてしまうのはもったいないです。
「療法食+薬」だからリンが下がるみたいで、「一般食+薬」ではあまりリンは下がらない感があります。

それから、高窒素血症が高くなっているとき、例えば初診から間が無く「今から補液治療で高窒素血症をコントロールしましょう」というときにはまだ始めないでください。先生から療法食の紹介が無いのは「今は悪気や嘔吐をコントロールしたいとき」だからです。こういうときに無理に療法食を与えると、療法食のことが大嫌いになってしまいます。BUNやCREの値が下がってきて、気分も良くなり、これまでの食事ものどを通るようになってから、食事変更をしていきたいです。
それから、第4期になるとこれもやっぱり食欲が湧きません。ここからは栄養補給を主目的にして、無理なく好きなものを食べてもらいたいと思います。 

 

次回、リン代謝に関与するペプチドホルモンについてお話しします。

テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

腎臓機能のバイオマーカーSDMA

 犬の10頭に1頭が、猫の3頭に1頭が腎臓病になるといわれている現在、腎臓病を早期に発見し早いうちから腎臓を守っていくことは、動物の健康寿命を延ばし、QOLの高い生涯を提供することができます。

今日は腎臓のバイオマーカーとして、今年から積極的におすすめする検査項目、SDMAについてお話しします。

 

<腎バイオマーカー>

バイオマーカーというのは、病気があるのか無いのかということや、病気があるという場合その病気の程度を、血液中のタンパク質などの物質の濃度として知ることができる検査項目です。

腎臓の機能は大きく二つの系統から調べることができます。腎臓を構成しているネフロンの構造からこうなります。

一つ目は

①糸球体濾過率(GFR)で、身体の中で不要になった老廃物を漉しとる「糸球体」の力を調べるものです。

もう一つは

②尿濃縮能で、尿が漉されてからも再利用できるものをもう一度身体の中に戻す仕事をする「尿細管」部分の力を調べるものです。

一般によく知られている腎機能をみる検査項目は血中尿素窒素(BUN)と血清クレアチニン(CRE)値です。これらは二つとも糸球体の機能をみています。一方、尿細管の機能をみるのは尿比重(USG)になります。

初めて聞く検査項目かもしれませんが、腎バイオマーカーとして腎臓病の早期発見に用いられる検査にシスタチンCとSDMAがあります。これらは二つとも糸球体の機能をみる検査です。

IMGP9946.jpg
症状を出す前の健康診断で病気を早く発見していくことが大切です。

 <求められる検査>

腎臓の機能を調べるとき、糸球体濾過率(GFR)は絶対的信頼のおける検査です。しかし検査が煩雑で大変なため、犬や猫では簡単に調べることができません。人では年齢や性別、血清クレアチニン(CRE)値からGFRを求める計算式もできていますが、犬猫にはそれもありません。そこでGFRに代わる何か適切な検査がどうしても欲しいところです。

腎バイオマーカーには、

     できるだけGFRとぴったり重なり合うような検査結果が出るようなもの(正確性)、

     簡素な検査で調べられるもの(利便性)、

     誰もが無理なく受けられるもの(経済性)、

     他の因子に影響を受けないもの(単独性)

が求められます。そして、

     早期に病気を発見できること

は健康診断などのスクリーニング検査では大変重要なことです。

 

 IMGP9947.jpg
腎臓病は隠れて進行していきます。

<これまでの腎機能検査の経過>

もともとは臨床症状が出て初めて来院され、検査をして病気を知り、治療を始めていました。臨床症状がはっきり分かるのは尿毒症のような状況になってからです。がんばっても良い結果が出ることはありませんでした。「腎臓を悪くするとそれはおしまいを意味する」と思われていました。こんな時代もありました。(今でも情報を広くお届けすることができず、猫や犬に腎臓病があることを知らないで来られた患者さんもいて、ずいぶんと病状が進行してしまっていることもあります。それはそれで仕方がないので、この時点から頑張って治療をスタートさせます。昔に比べると治療も進歩してきましたから、まだ頑張れることが沢山あります。)

それから、それではあまりに悲しいので「腎臓が悪くなる前に知りましょうよ」ということで、定期の健康診断で血液検査を受けてもらうことになりました。BUNCreの数値から腎臓が悪くなっているのを発見しました。けれどこれらの数値が上昇し始めるのは、腎臓の機能が約75%失われた段階です。見つかったときには残りが1/4という寂しい結果です。それでは遅すぎると誰でも思います。

それで、今度は「定期健康診断の血液検査に加え尿検査や血圧測定なども実施出来ると良いよね」ということになりました。まだBUNCreがあまり高くなっていないうちに腎臓の機能の低下を知り、早いうちから腎臓を守りましょう、ということになりました。尿比重はクレアチニン値の上昇が始まるより少し前に低下し、腎臓病をより早期に発見することができます。しかし様々な要因によって飲水量が増えると当然のこととして尿比重も下がりますし、糸球体の機能(老廃物を漉しとる力)というより、尿細管の機能(尿を濃くする力)をみるためのものですからGFRとの相関がぴったり合うものではありません。また猫から尿を採ることはそう簡単ではありません。病院で採尿しようにも、連れてこられる前にトイレを済ませた後で膀胱に尿がたまっていないこともあります。

こうなると、やはり血液検査で腎臓の変化を知ることが出来るのはとても便利なことです。今回ご紹介するSDMAは血液検査で調べることができます。そして何より、今までよりももっと早期に腎臓病を発見できることができます。

SDMAの値を調べるのは院内のラボでは出来ませんが、昨年からIDEXXさんで、今年からは富士フィルム・モノリスさんでも検査を実施してくださいます。信頼できる外注検査機関です。

 

腎臓は30万とか40万個ある腎臓内のネフロンそれぞれの働きで成り立っていて、個々のネフロンが少しずつ働けなくなってやがては全部のネフロンが働かなくなってしまうものですから、働けるネフロンが減少してきたら、残るネフロンには無理をさせず、ぼちぼちでいいのでなが~く仕事をしてもらうのが、腎臓を長生きさせる秘訣になります。臨床症状を出していない、一見健康なときから腎ケアをし、腎臓寿命を延ばしていくことが大切なことになります。

これまでは血中尿素窒素(BUN)や血清クレアチニン(CRE)濃度を中心に腎臓を評価してきました。これからもこの2つの検査項目は腎臓をみるのに外すことができない項目であることに変わりはありません。SDMAに関しては、それらに加えて腎臓機能を知る強いメンバーが登場したということです。

IMGP9948.jpg
まだ腎臓の機能を残しているうちに異常を発見します。

SDMAというのは>

さて、腎機能評価項目、SDMASymmetric dimethlarginine(対称性ジメチルアルギニン)の略です。前述の通り、血液検査で数値を知ることができます。SDMAはクレアチニンとの相関も高く、腎臓の機能を表すことができます。腎機能が約40%失われた段階で上昇を始めるので、早期診断に役立ちます。これまでの検査に比べ、どのくらい早く腎機能の低下を知ることができるのかといいますと、2015年のACVIM Forumで報告された内容からすると、血漿クレアチニン値が上昇する(2.0mg/dlよりも高値になる)前、犬では平均11か月、猫では平均17か月くらい前に、血漿SDMAは異常値としている数値を超えたということです。

この検査は身体の筋肉量に影響されないため、筋肉量の少ない小型犬や高齢の動物、痩せている動物でもそのまま腎機能を見ることが可能です。

ただし血液が溶血していたり、黄疸があったり、高脂血症がある場合はそれらの影響を受けるので、それらが無い場合に数値を判断します。

動物の腎臓病を気にする飼い主さんには、もちろん私たちにとっても、うれしい検査項目です。

 IMGP9984.jpg
猫さんは慢性腎臓病を発症することが多いです。
でも腎臓病は猫ちゃんだけの病気ではありません。
わんこも要注意!

<もうすこしSDMAのこと>

SDMAが身体でどのような役割のある物質なのかはよく分かっていません。「対称性」という頭が付くくらいですから、非対称性のジメチルアルギニンもあります。Asymmetric dimethlarginine ADMA)です。どちらもタンパク質がメチル化してできたものです。ADMAはさらに分解され、別の物質になります。腎臓からの排泄は20%くらいです。(SDMAは分解されること無く90%以上がそのまま尿中に排泄されるので、腎臓機能の指標になります。)

ADMAは人で心血管系の病気の発生と関連があることが分かっています。高血圧や血管内皮の障害にも関与しているようです。もしかすると犬や猫のSDMAも心血管系疾患の発生に関与しているのかもしれません。

 IMGP9982.jpg
早く治療を始めれば、病気の進行を遅らせることができます。

SDMAIRISCKDステージ>

ここまでなら腎臓は大丈夫、これ以上だと心配というラインを引くところのSDMAの数値は14㎍/㎗です。

クレアチニン値が参考範囲(犬ではCre1.4mg/dl、猫では1.6mg/dl)に入っていてもSDMAが続いて(1回だけで無く複数回の検査で)14㎍/㎗を超えていればIRISCKDステージ1に入ることになります。ステージ1では、尿検査や血圧測定などが実施され、それぞれに異常が見られたら治療を開始することになります。高窒素血症になる前の最も早期の段階で腎臓の危険信号を発見できて、ラッキーな犬猫たちがこのグループになります。

さらにIRISのステージ2、ステージ3とSDMAの数値とを見合わせて、従来の結果からはステージ2(または3)と評価されていても、その上の段階、ステージ3(または4)の範囲に入ることになる場合もあります。早々に次の段階の推奨される治療に入っていくことになります。今回は早期発見の意義としてのSDMAの紹介のため、具体的な数値は割愛します。

腎機能低下が進行するとSDMAの値はそれに伴って高くなっていきます。そのため、SDMAは早期発見の指標となるだけでなく、慢性腎臓病の進行具合を見たり予後を考えたりする参考にもなります。

 IMGP9983.jpg
症状に気づいてからでは遅い!
気づく前の検査が重要です。

<まとめです>

SDMAは糸球体濾過率(GFR)と相関して数値が上昇します。これはクレアチニン(CRE)とほぼ同じです。ですが、クレアチニン(CRE)よりも少し有用です。それは患者の筋肉量に影響を受けることがないからです。それからクレアチニン(CRE)濃度が上昇するよりも早くSDMAが上昇するので、このバイオマーカーを使うと、慢性腎臓病を早期に診断することができます。SDMAは腎臓の悪化具合を示すバロメーターにもなります。腎機能の悪化に伴ってSDMAの数値も上昇するので、病気の進行の指標にもなりますが、予後の判断をする材料にもなります。

テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

プロフィール

ハート動物病院

Author:ハート動物病院
ハート動物病院です。
〒445-0062
愛知県西尾市丁田町杢左51-3
TEL/0563-57-4111
オフィシャルサイト:http://www.heart-ah.com/

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
ブログランキング
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード