犬の感染症

 犬の感染症についてお話しましょう。

 

世間では「ウエストナイルウィルス感染症」が騒がれていますね。

 このウィルスは蚊によって媒介され、人と動物に病気をおこします。ウエストナイルウィルスの自然の宿主は野鳥、カラス科の野鳥(カラスやアオカケス)と他のスズメ目の鳥(フィンチやウグイス類)で、これらが感染すると感染源の役目を果たします。感染した鳥から吸血した蚊が媒介し、他の動物や人に疾病を伝播するのです。

 犬や猫は感染に抵抗性を示すと考えられています。つまり感染してもウィルス血症を起こすだけで症状を出しません(不顕性感染)。

 単発の犬の感染例が報告されていました。老齢犬です。腎臓と脳、心筋を侵されていました。症状は、腎臓を悪くしたときの症状や脳炎、心臓病の症状を出すということです。そのほかに沈うつ(静かになること)や食欲不振なども見られるようです。

 心配な動物からヒトへの感染ですが、感染源はあくまでも野鳥ですから、家庭飼育動物が感染したとしても人の病気発生には関係しません。

愛犬を連れてダラスへご旅行の計画、ありますか?おうちの方の予防については厚生省の発表している記事をご覧になっていただきましょう。愛犬については蚊に刺されないようにすること、くらいしか防御方法は無いように思います。もちろん、一番安全なのは、ペットホテルに預けてお出かけになることかもしれません。


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米国ってのはすごい国だと思うのですが、テキサス州では1996年から年に1回、狂犬病生ワクチンを空中散布しているんですよ。ワクチンに魚油をまぶし魚肉に包んで散布するのです。この効果があり、2011年には犬での発生報告は無かったとのこと。野生動物にどのくらい浸透したかはまだ不明なんだそうで、こうしたウィルス保持動物がまだたくさんいるだろうと、今後もこのワクチン空中散布は続けられるそうです。
このニュースがある、ということは身近な国、アメリカでも狂犬病の発生があるということですので、そこのところ、しっかり記憶にとどめておいてください。


ちなみにこんなニュースもあります。こわいですね。
http://news.mynavi.jp/c_cobs/news/techinsight/2012/09/breaking-news4350107.html

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ところで、犬の感染症予防、ワクチン接種はお済でしょうか。当院は感染症モニタリングシステムCICADAに参加しています。20124月から7月までの情報がまとまったようですのでお知らせしますね。

ここ愛知県地域において、犬ジステンパーは「疾病発症報告あり」のオレンジサインが出ています。

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 またパルボウィルス感染症は「疾病増加傾向」を示すレッドサインが出ています。

 
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「犬ジステンパー」は犬ジステンパーウィルスの感染によって発病します。このウィルスは感染犬の鼻水、目やに、尿などに含まれます。症状は発熱、鼻水(鼻汁)、咳などの呼吸器症状または下痢を主とする消化器症状のどちらか、または両方で、元気、食欲がありません。結膜炎にともなう目やにも見られます。さらに進行すると神経症状である腰のふらつきや顔面筋のぴくぴく(チック)、全身性のけいれんがおこります。大変死亡率の高い病気です。

「犬パルボウィルス感染症」は激しい嘔吐と下痢を起こす腸炎を特徴とします。元気も食欲もなく、急激に衰弱していきます。子犬では心筋にウィルスが感染を起こし突然死を起こすこともあります。感染犬の便中に大量のウィルスが排泄され、これが感染源となります。伝染力、死亡率ともに高い伝染病です。

 
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ワクチン証明書を見直してください。もし、1年以内に接種していないようでしたら、追加接種で免疫を強化しておきましょう。混合ワクチンでは血球検査と6種類の生化学検査(肝臓や腎臓の機能を知ることができます)をサービスさせていただいています。この機会に健康検査もかねて、いかがでしょうか。


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カビと酵母菌

細菌に続いて「カビ」のおはなしをしようかと思います。

 

暑くてじめじめした日本の夏。食べ残しのパンなど、「しまった!しまい忘れた!」と気がつけばカビが生えています。お風呂場のタイル目地の間のカビもしぶといです。ちょっとお掃除を怠れば黒ずみが濃くなっています。食べ物ならずも、石鹸とかの飛び散りも自分の栄養にして増えていくのですからカビってすごいです。

 

栄養源を体内に取り込んでから消化酵素で分解するのがわたし達の栄養吸収方法ですが、カビはその順序が逆です。カビは酵素を外に出して分解してから栄養素を取り込むのです。

 

そしてこの酵素の能力は圧巻ですが、こうしたカビのすごい能力をわたし達の祖先はうまく利用してきました。

 

昨今、大ブレイクをおこした「塩麹・しおこうじ」ですが、この麹もアスペルギルス。カビの仲間です。米や麦、芋などのでんぷんを麹の力でブドウ糖に変えています。

わたし達の身体で、でんぷんをブドウ糖に変えるのはアミラーゼですね。麹もこのアミラーゼを大量に作り分泌する能力があるのです。

カマンベールチーズには白カビ、ブルーチーズには青カビが協力してくれています。でんぷんをブドウ糖に変えるだけでなく、蛋白質をアミノ酸に、核酸をヌクレオチドに分解する力も持っているのですね。

おそるべしカビの力。この力で食品に甘みやうまみ、風味や香りをつけてくれます。
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こうした人にとって有益なカビばかりではありません。有害なカビも存在します。

 

「皮膚糸状菌症」とか「皮膚真菌症」といわれる皮膚病はカビを原因としたものです。主にマイクロスポーラム・キャニスという菌で、アスペルギルスやトリコフィートンなども原因となることがあります。楕円形の脱毛とガサガサした分厚いかさぶた、周りの皮膚のリング状の赤みが特徴です。犬にも猫にもあります。

 

また「猫の副鼻腔炎」のなかに、とくに治りの悪いものにアスペルギルス症があります。いつも鼻がぐずぐずしていて、鼻梁部が膨らんでいたりします。目やにも出ます。

 

屋内のカビ、ことに浴室や台所、リビングルームや畳などに発生するカビがアレルギーの元になることもあります。カビの胞子はとても小さく、部屋の中を舞っています。気管支喘息などの呼吸器症状を出します。

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ところで、麹が変換したブドウ糖をアルコールに変えるのは酵母菌の仕事です。ワインや日本酒、焼酎とかでおなじみのことかと思います。この酵母菌に分類される菌にも悪者がいます。

 

酵母菌と言えばカンジダが有名です。口の周りや目の周りなどにガサつきの激しい皮膚炎をおこします。免疫のバランスが崩れたときに発症します。

 

また、犬でよくみられる真っ黒の耳垢を特徴とする外耳炎ですが、耳垢検査をするとマラセジア(マラセチア)という酵母菌を見つけ出すことができます。また足の裏、指の間など、濡れたあとうまく乾かせなかったような場所も好み、赤い皮膚炎をおこします。腹部や肛門周囲、陰部まわりにも発生します。「マラセジア性外耳炎」「マラセジア性皮膚炎」などと呼んでいますが、うまく検出できないこともあります。「脂漏症」と呼んでいる皮膚炎はこのマラセジア菌と関連があります。


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カビ菌も酵母菌もひろく自然界にいますけど、悪いことしますよね。そうそう。カビ毒は身体にとても悪いので、カビの生えたお餅とかジャムとか、カビの部分だけ取り除いて食べる、なんてことはしないでくださいね。カビの菌糸は透明で見えないので、もっともっと奥深く入り込んでいて、目に見えないだけです。カビ毒のアフラトキシンは肝臓障害を引き起こします。あなたが健康でいるから愛犬・愛猫を守ってくれていることもお忘れなく。

 

 

 

あらっ。活躍する良い菌の例が食べるものばかりになってしまいました!抗生物質のペニシリンとかも、真菌から発見されたものです。抗がん剤や、フィラリア予防の薬などにも活躍しています。というところで。今日はおしまいです。

 

ばいばいきーん!


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犬の病気が人に移りますか?

 今日は感染症のお話をしましょう。

というのも「犬の病気は人に移りますか?」というご質問があるからです。

 

一般にウイルスには宿主特異性という仕組みがあり、ある動物の細胞に入るときには特別な鍵を必要とするのですが、この鍵は決まった動物のかたちになっているため、別の種の動物では鍵穴が合わないために、細胞内に入ることができません。それで、犬から人、または猫から人、もちろん人から犬、猫から犬などの感染は起こらないのです。

 

しかし、ごく稀にピッキングが発生することがあるのです。ウイルスの待っている鍵があれもこれも合う。まるでマスターキーのような鍵をもったウイルスです。

そう。思い出されたかもしれませんね。鳥インフルエンザのようなことです。

でも、共通の鍵によって細胞内に入り込めた(感染を起こした)といってもすぐに病気を発症するわけではありません。ウイルスの遺伝子は、細胞内に入り込んだ後、細胞をハイジャックし、自分を複製、量産しなければいけないからです。そしてその時にも鍵が必要になるのです。

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ウイルスは常に変化を起こしています。鍵も簡単に造り変えていきます。

 

ところで、あなたの愛犬や愛猫は年に1度のワクチン接種を受けていますか。その混合ワクチンのなかにパルボウイルス感染症があるのはご存知でしょうか。犬や猫のパルボウイルス感染症は「汎白血球減少症」とか「猫ジステンパー」「犬パルボ腸炎」などと呼ばれています。発生は減りましたが、発症すると怖い病気です。パルボウイルスは常に増殖を繰り返している細胞群が大好きですから、腸の粘膜上皮や白血球が被害を被ります。それで粘膜がずるっと剥がれおちて激しい血様の下痢を起こしたり白血球減少を起こし、激しい感染では一両日中に死亡してしまうこともあるくらい怖い病気です。

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もともと犬にはパルボウイルスの感染症はありませんでした。古くはミンクの腸炎の原因ウイルスでしたが、これがネコ科の動物に感染をもたらしました。そしてさらに犬もパルボウイルスに感染することになりました。ウイルスが突然変異を起こして鍵のかたちが変わったのでしょう。

 

ミンクと猫、猫と犬があまりにも密接な関係を作っているとこのようなことが起こるのかもしれません。人と犬が密接になりすぎるきらいのある現代です。食事、睡眠などある程度距離をおくことも考え、清潔に暮らしたいものです。

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食中毒のこと

生レバーがこの週末で食べ納めになりますね。

さて、レバーというのは肝臓です。

肝臓の仕事を考えてみましょうか。
腸を食べ物が通過していきます。そのとき、大きなスーツケースに納められていた栄養素は、いろいろな消化液の作用を受け、小さな包みに小分けにされます。そうして小さくなった栄養素は小腸に広くめぐらされている血管(やリンパ管)を通ってひとつに集まり、門脈という大きな血管から肝臓に集まります。

この包みには栄養も入っていますが、その他の毒素も一緒にくっついてきてしまうことがあります。
肝臓が「解毒作用」をする臓器であることを聞いたことがあるでしょうか。そうです。ここで処理されるのです。(腸から肝臓までの間にはほかにもリンパ組織などがあるため、すべての仕事を肝臓でこなすわけではありません。)

肝臓の中でそれらが未処理の状態のとき、まだ、肝臓には菌がある、と思ってください。
それをそのまま生で、食するのはどうでしょうか。

周りを焼いて、「たたき」にすれば大丈夫、という問題ではありません。
外側から付着する菌とは違う種類のものだからです。

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食中毒のことを考えると、危険なのは生レバーだけではないことも確かです。
腸管出血型大腸菌による食中毒は生焼けのハンバーグやローストビーフで発生していることもあります。


また食中毒の原因は細菌だけでなく、ウイルスや寄生虫といったものも含まれます。

おいしいもの大好きでグルメなあなたにも危険が忍び寄っています。
充分、ご注意下さい。
なにせ、愛犬・愛猫はあなたに命を預けているのですから。
あなたの健康があってこそ、犬も猫も健康を守っていただけるというものです。
よろしくお願いしますね。



いくつか見るもののなかで、分かりやすいな、と思った花王のHPをご紹介しておきます。
ご参考にしてください。
http://www.kao.co.jp/pro/food_poisoning/basic/

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Author:ハート動物病院
ハート動物病院です。
〒445-0062
愛知県西尾市丁田町杢左51-3
TEL/0563-57-4111
オフィシャルサイト:http://www.heart-ah.com/

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