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猫免疫不全ウィルス感染症の検査

 今日は世界エイズデー。ネコのエイズとして知られるネコ免疫不全ウィルス(FIV)感染症について、特に検査の解釈のことを中心にお話しします。

 

<ネコエイズは怖い病気?>

ネコ免疫不全ウイルス(FIV)に感染すると、ウィルスが免疫系を攻撃し、他の多くの感染に対して防御が甘くなります。FIVに感染した猫は何年も健康そうに見えるかもしれませんが、最終的にはこの免疫不全に苦しみます。ですが、ネコ白血病ウイルスやコロナウィルスなどに感染していない限り、通常の寿命を生きていくことが示唆されています。

 

<感染経路>

感染リスクの高い猫は外出をするオス猫です。FIVの主な感染経路は咬傷によるものです。ほかの猫に好意的で攻撃性の少ない接触、つまりグルーミングや食器の共有などは、ウイルスを広めるルートではないようです。同居猫がけんかをしない安定した家庭にいる猫は、FIV感染のリスクはほとんどありません。まれに、胎児が産道を通過するとき、または新生児子猫が感染した母乳を飲むときに、感染した母猫から子猫に感染が伝染します。性的接触は、FIVを広める経路ではありません。

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<症状は?>

感染の初期段階で、ウイルスは近くのリンパ節に運ばれ白血球の中で増殖します。その後ウイルスは全身の他のリンパ節に広がり、一時的なリンパ節の腫脹を引き起こします。このときにたいていは発熱しますが、この段階では気付かれずに過ぎてしまう可能性があります。もしくは咬まれたことによる細菌感染からの発熱だと思われて終わることもあるでしょう。

感染した猫はほぼ健康な状態で、時折不都合な事象が繰り返されたりして、徐々に悪化していきます。悪い徴候は感染後何年も現れないのが普通です。病状が悪くなって来院され検査を受けてはじめて、陽性結果を知り驚かれる患者さんも多いです。

免疫不全兆候は全身のどこにでも現れ、そのため症状は様々です。毛並みが悪い、食欲不振、発熱を繰り返す、歯肉炎や口内炎がある、目がおかしい(ぶどう膜炎)、慢性の皮膚炎がある、上部気道感染が慢性や再発性におこる、持続性の下痢がある、膀胱炎を繰り返すなどです。そのほかあまり知られていませんが、発作や行動上の変化などの神経学的な症状も出る可能性があるし、血液学的な問題(貧血など)を起こすこともあります。自然妊娠ののち流産を起こすメス猫もいます。腫瘍になりやすい傾向もあります。 

<ウィルス検査>
FIVは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査などの手法を使用して検出できます。病院で行なわれるスクリーニング検査は抗体を用いたELISA法です。血液中にFIVウイルスに対する抗体が存在するかどうかを濾紙に発色させて陽性かどうかを見ていきます。

PCR検査は、ウイルス遺伝子を検出する検査です。PCR検査は猫が作り出したFIV抗体の検出ではなく、ウイルスのDNAを検出することによって、血中にFIVウイルスが存在することを確認する検査です。ELISA法は感染症の理想的なスクリーニング検査ですが、特定の状況がある場合(移行抗体があるかもしれない子猫の感染の確認や、FIVワクチンを接種したことがある猫の感染の判定など)には、PCRの検査が理論的に優れています。PCR検査はELISA法で判定が困難な場合に外注で依頼している検査です。日常的には行なっていません。

検査の必要性ですが、ご自身の猫の健康を維持すること、ほかの猫への感染拡大を防ぐことが2大目的です。

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<こんな猫におすすめ>

  一度も検査を受けたことが無い猫。

  病気になっている猫。(過去に実施され感染が無いことを確認してあっても、その後の感染を除外することはできません。)

  新しい猫を養子として迎え入れるとき。(先住猫が居る場合一緒にできるかどうかをみるために。)

  感染しているかもしれない猫との接触が考えられるとき。(自由外出で目が届かない場合に。毎年の検査が理想です。)

  FIVワクチンの接種を検討しているとき。(どちら由来の陽性なのかをはっきりさせます。)

 

<陽性結果がでたとき>

猫は感染を完全になくすことはほとんどないため、検査結果が陽性に出る(抗体が存在する)ことは基本的にFIVに感染していることを示しています。

ただし、偽陽性の結果が生じる可能性はあります。猫の生い立ちや臨床症状などから鑑みて検査結果と合致しないような場合は、PCR検査を使用して結果を再確認することをお推めしています。

6か月未満の子猫では解釈が異なります。感染している母猫は、授乳中の子猫にFIV抗体を移します。そのため、感染した母親から生まれた子猫は、出生後数ヶ月間、陽性の検査結果を示すことがあります。でもこの子猫が実際に感染していることにはならないかもしれません。それで感染状態を明らかにするために、FIV陽性という結果が出た6か月未満の子猫は、少なくとも6か月になるまで60日間隔で再検査する必要があります。もしくは母猫からの移行抗体の影響を全く受けなくなる6か月齢まで待ってから検査をするということもできます。子猫の時に陽性だったのに数年経ってから検査したら陰性になったというのは、感染が免疫力によって陰転したのではなく、子猫の時に親からもらった移行抗体をキャッチした可能性があります。

検査結果を正確に解釈するために、猫のFIVワクチン接種履歴を知ることは不可欠です。FIVワクチンは、ワクチン接種された猫にFIVウイルスに対する抗体を産生させますが、FIVウイルスに対する抗体は、FIVの自然感染に反応して猫が産生した抗体と区別することが困難な場合があります。この場合は一般的なELISA法は有用ではありません。今は「差別的ELISA」と呼んでいる新しいテストができました。この検査ではFIV、ワクチン接種後に産生される抗体とFIV感染後に産生される抗体を区別できるとされています。それでも正確に知りたい場合はPCR検査を受けることをおすすめします。

大切なことを言っておきます。陽性結果は「死の宣告」を示すものではないことをご理解ください。最初にお話ししたように、FIVの感染があっても複数のウィルス感染が無ければ寿命を全うできることもできるくらいです。前向きに捉えてください。

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<陰性結果がでたとき>

陰性の検査結果は、猫の体がFIVに対する抗体を産生していないことを示しています。ほとんどの場合、これは猫が感染していないことを示唆しています。

ただし、通常検出可能なレベルの抗体が血流に現れるには、感染後812週間かかります。そのため、この期間に検査を実施すると、偽陰性の結果が生じる可能性があります。したがって、FIVに感染している猫または未知の猫の咬傷などによる未知のFIV状態の猫と接触した猫は、検査を受けたときに陰性であっても、最新の暴露(感染したかもしれない事件が起こった日)から最低60日後に再検査する必要があります。これにより、猫の体がウイルスに対する抗体を開発する時間ができます。

ごくまれに、FIV感染の後期にある猫は、免疫系が非常に損なわれているため検出可能なレベルの抗体を産生しなくなり、FIV抗体検査で陰性となる場合があります。

 

<治療と管理>
残念ながら、現在、FIVに対する決定的な治療法はありません。何らかの症状を出したときに、ひとつひとつ、その病態に対する処置を行ないます。例えば口内炎なら口内炎の治療です。猫の寿命を予測することは不可能ですが、FIVに感染した猫でも適切に管理すれば、表面上は通常の生活を送ることができます。もしFIVに感染した猫が感染の結果として1つまたは複数の病気を発症した場合や、持続性の発熱と体重減少が存在する場合、一般的な予後はあまり良好ではありません。

FIVに感染した猫には去勢手術(避妊手術)を行ない、屋内だけで飼育し、近隣の他の猫がFIV感染しないよう、FIVの拡大を防いでください。栄養的にバランスの取れた食事を与え、生の肉や卵、低温殺菌されていない乳製品などの調理食品は食品媒介細菌や寄生虫感染症のリスクがあるため避けてください。そしてストレスのない生活を提供するようお願いします。

FIVに感染した猫は、少なくとも半年に1回くらいの割合で診察にいらしてください。歯肉、目、リンパ節に特に注意を払いながら、身体検査を行います。身体検査のほか血球数、血清生化学検査、や尿検査を実施します。これは健康な猫が受ける検診項目と同じです。多くの場合、体重減少は悪化の最初の兆候になります。ご家庭では食欲と体重減少に注意を払ってください。FIVに感染した猫の健康と行動の観察は、感染していない猫よりも重要です。猫の健康上の変化を気にかけ、おかしいと感じるところがあれば、検診予定日が来ていなくても診察にいらしてください。

一部の抗ウイルス療法は、口内炎(口腔の炎症)を伴うFIV感染猫に有用で、環境に放出されるウイルスの量を減らすことが示されています。体内のウィルス量を測定することはできませんが、少なくとも口内炎の症状緩和になるように思います。FIVの効果的な治療の開発は、まだ研究の途上にあります。

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<予防、新しい猫の同居に際して>
FIVのワクチンが開発されていますが、ウイルスのすべての株に対する有効性はまだ決定されていません。ですから、FIVの感染を防御するのに大切なことは、感染している猫と接触しないようにすることです。うちのかわいい猫ちゃんを保護する唯一の確実な方法は、ウイルスへの暴露を防ぐことです。猫に噛まれることは、感染が伝染する主な手段であるため、猫を屋内に入れ、噛む可能性のある感染した猫から遠ざけてください。屋内飼育猫が感染する可能性を減らすには、感染していない猫だけを家に持ち込み、感染していない猫だけを飼うことが理想的です。場合によっては、家庭内で感染してしまった猫と感染していない猫を分けて飼育することになるかもしれません。子猫の新規導入の時は、検査しても正しい結果が反映されない期間のことを考慮して、しばらくは先住猫と別に飼育することをおすすめします。

残念ながら、FIVに感染した猫の多くは、他の猫と何年も一緒に生活してきてから診断されます。そのような場合、家庭内の他のすべての猫を検査する必要があります。FIVは主に咬傷によって伝染するため、安定した社会構造を持つ家庭(つまり屋内猫同士は仲良しさんであるとき)は、感染した猫から感染していない猫への伝染は、外に出てけんかをしてくる猫に比べ少ないです。

FIVに感染した猫が家庭内にいる場合は、新規の猫に感染の機会を与える可能性があります。また、新しい猫の導入がストレスとなり、日和見感染的に新たな病気を発症する可能性もあります。できれば新たな猫を家に持ち込むのは避けたほうがいいでしょう。

なおFIVはほとんどの環境で数時間以上は存続しません。しかし、前にFIV陽性猫が住んでいた環境(今は猫が居ない)に、改めて猫を導入する場合はFIVや他の感染症の伝播を最小限に抑えるために、消毒を行なってから迎え入れてください。食器や水食器、寝具、猫用トイレやおもちゃは洗浄し消毒をするか、または新しいものに交換してください。家庭用漂白剤の希釈溶液は、優れた消毒剤です。新しい猫や子猫は、家に入る前に他の感染因子に対する適切な予防接種(混合ワクチン)を受ける必要があることも念頭に置いてください。

FIV感染から保護するためのワクチンはありますが、猫のコアワクチンとは見なされていません。推奨される接種方法は、2回~3回のコアワクチン(3種混合ワクチン)が済んでから、初年に1か月間隔で3回、その後も1年に1回の追加接種をしていく方法です。勝手な思い込みで数年に1度接種をしてみたところで予防にはなり得ません。またワクチン接種された猫が確実にワクチンで保護されるわけではないため、ワクチン接種された猫であっても、曝露を防ぐ(感染猫との接触を避ける)ことが重要です。

 

<ヒトの健康への懸念>
FIVHIV(ヒト免疫不全ウイルス)に似ていて、人間のAIDS(後天性免疫不全症候群)に似た病気を引き起こしますが、ネコだけに感染するウイルスです。FIVがヒトに感染したり、病気を引き起こしたりするという証拠はありません。

 

 猫のウィルスチェックは、子猫を飼い始めたときにすぐ実施したいと思うかもしれません。けれど偽陰性や偽陽性の出やすい時期があることを考え、早期に実施した場合は後日再検査の必要性が出ることもご承知置きください。

猫の世界からFIVを無くすことができるのは、陽性になった猫を外に出さない、感染の輪を広げないことにあります。陽性判定の出た猫では、「だって外に出たがるんだもの~外じゃないとトイレができないし~」の気持ちもわかりますが、去勢手術により出たい気持ちにブレーキがかかります。ぜひ出さない方向に重きを置いた対処法にご協力ください。

師走に入りました。ご多忙とは思いますが、ご自身のおからだも大切になさってください。

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猫免疫不全ウィルス感染症

今日は猫免疫不全ウィルス感染症についてお話しします。ちょっと長いです。

 

<病原体は?>

猫免疫不全ウィルス感染症は猫免疫不全ウィルス(Feline Immunodeficiency virus : FIV)の感染により起こる病気です。猫エイズとも呼ばれています。有効な治療法のない怖い病気です。

猫免疫不全ウィルスはレトロウィルス科に属しています。このレトロウィルス科には猫白血病ウィルスも仲間として入っています。(もう少し細かい分類は違います)このウィルスは1986年にアメリカで初めて分離されました。

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<感染は?>

猫免疫不全ウィルスは主に猫同士のけんかによる咬まれ傷によって感染します。唾液中に含まれるウィルスが傷を介して移るのです。そのほか性行為によって、また母猫から子猫への感染も頻度は低いかもしれないけれど、あるでしょう。

2008年に鹿児島大学の遠藤先生たちが全国で行った調査によると、地域差はあるものの「最低週に1回外出する猫」1770頭のうち23.2%の猫が猫免疫不全ウィルスに対する抗体を持っていました。調べられた猫のうち、1175頭は「けがをしていたり、食欲がなかったり、やせていたり、鼻水を出したり、目やにが出たり、呼吸が苦しいなどの症状をもって病院に連れてこられた猫たちで、716頭はけんかによる咬まれ傷がありました。この調査からわかることは「自由に屋外に出て行ける猫は、屋内だけで過ごす猫の20倍以上の高い感染率になる」ということです。そして「オス猫はメス猫の2倍も感染している」こともわかりました。

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<5つの病期と症状>

猫免疫不全ウィルスに感染したときの症状は、感染後どのくらい経過したかによって異なります。

    感染してすぐは・・・

熱が出たりリンパ節が腫れたり、下痢になったりします。血液検査でも貧血や白血球減少などがみられるくらいです。これらは特別な症状ではないのでほかの病気と区別がつきません。感染して数週間から数ヶ月くらいこのような症状が出ます。それでもこうした症状が強く出てこない場合は、なんとなくだらだらしているくらいで知らないうちに過ぎてしまいます。この感染したてのころは抗体検査をしても検査に現れません。(感染後、抗体が陽性になるのは30日から60日くらい過ぎてからです。)

この時期を急性期と呼んでいます。

    そのあと・・・

症状はまったく無くなります。症状がないので病気のように見えません。体調も良いのでけんかもできますから、ウィルスをほかの猫に広めることができる怖い時期です。数ヶ月から数年続きます。

抗体検査をすると陽性に出ます。飼い主さんは猫の体調が良いので、血液検査をして病気を確認しようなどとは思わないでしょうし、まさか猫免疫不全ウィルスの感染を受けていようとは夢にも思っていないかもしれません。感染猫は猫免疫不全ウィルスを一生涯持ち続けます。

無症状キャリア期と呼んでいます。

    それから・・・

全身のリンパ節が腫れてきます。けれどほかの症状ははっきりわからないことが多いです。検査をすると抗体は陽性に出ます。

持続性リンパ節腫大期と呼んでいます。

    症状が出始めます・・・

その後、免疫異常による症状がじわっと出てきます。口内炎や歯肉炎、鼻風邪や下痢などです。注射や薬でコントロールも可能な時期です。なかなか治りが悪いこれらの病状に「もしや、エイズかも!」と心配になるのがこの頃です。検査でその心配が的中してしまうのがこの時期です。

エイズ関連症候群期と呼んでいます。

    いよいよです・・・

免疫不全による症状が出てきます。検診で血液検査を実施すると赤血球や白血球が減少し、貧血やそのほかの血球減少症を発症ししているのが判明します。カンジダ症や疥癬症、毛包虫症などの皮膚病にもなりますし、腫瘍を発症することもあります。脳炎で神経症状を出すことも有り、看病するのも辛くなってきます。

後天性免疫不全症候群期です。

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<簡易レトロウィルス検査>

猫が猫免疫不全ウィルスに感染していないかどうかはレトロウィルス検査の簡易キットを使い、病院内で調べることができます。猫白血病ウィルスも同時に調べることができます。

特にこの検査を実施した方が良い猫たちがいます。

    状態の良くない猫

病状が悪い猫、猫免疫不全ウィルス感染症に特徴的な症状をだしている猫(けんか傷があるとか、口内炎がある猫たち)、そのほか猫エイズ陽性の猫と接触したことがはっきりしている猫です。

このような猫ではためらうことなく、レトロウィルス検査をうけることを承諾してください。以前の検査で陰性であっても、その後の生活が感染を疑わせるものならば再度受けてください。

    多頭飼育で暮らす猫

多頭飼育ですべての猫の感染状況が明らかでない場合は、陰性猫と陽性猫を分けるために検査が必要です。感染猫が1頭混じっていると一緒に暮らす猫みんなが感染の危険にさらされてしまいます。

    新しく飼育する猫 

新たに猫を迎える場合は成猫でも子猫でも検査を実施しましょう。

    猫白血病ワクチンや猫免疫不全ウィルス感染症のワクチン前

初めてレトロウィルス感染症関連のワクチンをうけるときは事前に検査を受けてください。ワクチン接種をするとワクチン由来の抗体が陽性になるため、それまでに感染したことがあるのかどうかが判明つかなくなります。

    感染リスクのある猫

屋外に自由に出入りすることができる猫は、もしエイズワクチンを接種していないのであれば、定期的に検査を受けましょう。年に1回くらいが理想です。

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<子猫の検査と評価>

子猫の検査を実施したとき、陽性になることがあります。お母さん譲りの抗体なのか、自然感染して自分で作り上げた抗体なのか判断に困ります。30日くらい間を開けてもう一度検査を行います。これで陰性なら、お母さんからもらった抗体が消失した、感染はなかったと判断します。

 

<成猫の陽性結果>

ワクチン接種をしたことがある場合、陽性に出ます。けれどワクチンを接種したことがあるかどうかわからないとき、ワクチン由来の抗体なのか、感染による抗体なのか判断がつきません。このようなときは、病院での簡易検査ではなく、感染を確認することができる外部委託検査を実施します。

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<治療のこと>

ウィルスの感染数を減らし生存期間をのばす治療が望まれます。しかし猫インターフェロンも希望をかなえられるほどの効果は得られません。対象療法を行います。

 

<予防ができます>

幸い日本では猫免疫不全ウィルス感染症のワクチンがあります。もし屋外に自由に出るような飼育をするのであれば、必ずワクチン接種をしておいてください。

基礎免疫は3週から4週の間を開けて、3回接種します。子猫もおとな猫も同じです。その後追加免疫は1年に1回です。

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<猫エイズに感染しているとほかのワクチンはうてない?>

免疫不全状態の猫ならば、なおさらのこと、感染症の予防をしたいものです。猫の3種混合ワクチンは生ワクチンと不活化ワクチンの2つの種類があります。不活化ワクチンでしたら予防注射ができます。予防しましょう。

 

<おわりに>

12月1日は世界エイズデー、エイズの日です。
猫にも猫エイズと呼ばれる猫免疫不全ウィルス感染症があります。怖い病気ですが、ワクチン接種で予防ができます。
この機会にぜひ知ってください。

猫エイズで苦しむ猫がいなくなりますように。    合掌 

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猫ウィルス性鼻気管炎にかかったときの注意

 厳しい寒さが続いています。

この寒さで「くしゃみ、鼻水」などの風邪のような症状を示す猫さんが増えているかもしれませんね。

ウィルス性鼻気管炎の発症です。

ヘルペスウィルス感染症については前にお話ししました。

 http://heartah.blog34.fc2.com/?editor

今日は、かかってしまったらどんなことに注意したら良いのかについてお話ししようと思います。

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まずはおさらい。

「猫のインフルエンザ」とか「猫風邪」という、やさしい病名で説明してくださる先生もいらっしゃるでしょう。「ウィルス性鼻気管炎」というのが一般的な病名です。

原因は「カリシウィルス」や「ヘルペスウィルス」の感染です。

症状は「40℃前後の発熱、なみだ目、くしゃみ、鼻水、鼻汁、鼻つまり、よだれ」などです。鼻がつまったために「口を開けて呼吸をする」こともあります。高熱があると「食事が食べられなくなる」こともあります。またひどくすると肺炎を起こしますから、「呼吸が荒くなり」「元気が著しく低下する」ことになります。

 

治療は二次感染防止のための抗生物質、抗ウィルス・免疫強化を目的としたインターフェロン、そのほか症状に応じて補液やビタミン剤、抗炎症薬などの投与が主なものです。

しかし病院で治療するだけで病気がスッキリ治るものではありません。おうちでもケアが必要です。

そこでおうちの方に協力していただきたいことをあげておきます。 

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 1、外出させないでください。

 寒さは病気を悪化させます。「外出しないとストレスになる」とおっしゃる方もおられますが、出られない精神的なストレスよりも、出て行った場合の身体的ストレスの方が大きな問題になります。

2、暖かくしてあげてください。

 ウィルスは寒くて乾いた環境でさかんに増殖します。室内を暖かく、湿度のある状況にしてください。

3、同居の他の猫さんとは隔離してください。

 直接の接触だけでなく、くしゃみからの飛沫感染もあります。近距離にいる猫さんに病気がうつってしまいます。

4、工夫して食事を与えてください。

 鼻がつまると、においがしなくなり、食欲も低下します。体温程度に温まった水分の多い食事が一番食欲をそそるにおいを発します。こんな食事に近づけるよう用意してあげてください。お魚の水煮(アラ煮で結構です)などがおすすめです。パウチ食を湯煎であたためていただくのもありがたいです。ただパックを開けるのではなく、ひと手間かけてください。
 それでも自分から食べられないとか、食べる量が不十分だとかいう場合には処方食の給餌をしてください。流動食タイプになっていてポンプで口に入れることができます。

5、病気の子を看病した後は手を洗ってください。

 おうちの人の手を介して別の猫さんに病気をうつしてしまう可能性があります。眼やにやよだれで汚れた顔を拭いていただいたり、点眼処置をしていただいたりすると、眼やにやよだれの中のウィルスに触れることになります。市販の塩素系漂白剤を50倍に希釈した液を利用していただくと良いと思います。
 なお、猫さんのインフルエンザは人にも犬にも感染しませんのでご安心ください。

6、治ったらワクチン接種で次からの感染予防をしてください。

 一度感染しても生涯の免疫が得られるわけではありません。今後、同じ病気にかからないように定期的にワクチン接種をし、予防を心がけてください。

 

 <付記>
市販の塩素系漂白剤の成分は次亜塩素酸ナトリウムで、5%または6%のものが多く売られています。50倍希釈液は、キャップ2杯(10ml)の原液を500mlのペットボトルの水に加えると簡単に作ることができます。

<付記>
猫さんおひとりさま用のこたつを作ってもらうと、家の人が外出している昼間や寝静まった深夜に部屋のエアコンを切っても暖かく過ごすことができます。
ダンボール箱を横から出入りできるようにします。天井部分は閉じるかたちです。床部分にペットヒーターをおき、上にフリース素材の布を置きます。箱全体を毛布や夏掛けの薄い布団でくるんでください。出入り口は布が垂れますが、猫さんは布をくぐって出入りすることができます。


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猫伝染性腹膜炎

 猫コロナウィルスによる病気、猫伝染性腹膜炎(FIP)は病気のタイプとしてドライ型とウェット型の2つの型があります。これは臨床徴候からの分類です。

ドライ型は食欲がない、無関心で元気がない、発熱する、体重が減ってくるなど、特異的な臨床徴候がありません。腹腔臓器や眼、中枢神経系の漿膜表面に肉芽腫が作られると、黄疸になったり、眼が濁ったり、神経学的な機能不全の症状をみることがあります。

ウェット型は全身性の血管炎による胸水や腹水が発生するので、全身性の症状に加えて、呼吸困難やお腹周りの拡張が見られます。

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典型的な症状を抱えることがないため、診断は難しくなります。身体検査の後、血液検査や眼科検査、超音波検査、X線検査を実施します。貯留した液体があるからと言って、猫伝染性腹膜炎であるとは限りませんので、胸腔や腹腔から採取した液体を用いて、さらに詳しい検査を実施します。液体の分析は外部委託検査で、ある程度時間がかかります。ウィルス学的な検査や、病理組織学的な検査です。診断のために大変重要な検査です。

液体貯留のないドライ型では診断の手がかりとなるものがないため、1ヶ月くらい保存療法を実施し、いよいよ病気が進行してきて、やっと診断の糸口が見つかった、というようなことも現実にはよくあることです。決め手になる診断に辿り着けないまま、病気が進行してしまう、というかんじです。

 

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ウィルス検査で陽性という結果が出たとしても、これは猫コロナウィルス(FCoV)に暴露されたことを示すもので、これは必ずしも猫伝染性腹膜炎ウィルス(FIPV)にかかっていることを示すものではありません。また、陰性という結果がでたとしても罹患していないとも言い切れません。大量の抗原が抗体に結合したために、検査段階で遊離した抗体が残っていない場合もあるからです。ウィルス学的検査も特異度、感度ともに100%ではないことも知っておいてください。

診断はウィルス検査の結果も含めて、総合的に行っていきます。

 

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では、診断が付いたら、どんな治療があるのでしょうか。

実は厳密に評価された薬はほとんどありません。一般的に治療は支持療法と対症療法です。輸液をしたり、滲出液を抜いたり、栄養学的な補助をしたり、といったようなことです。

ウィルスが炎症性のサイトカインを出すと血管炎や滲出液を増加させるため、抗炎症剤を使います。従来、この治療法が主軸になっています。また、疾患が進行していくと免疫機能が落ち、二次感染症を生じる可能性が高くなるため、感染を防ぐ目的で抗生物質を使います。免疫調整剤や抗ウィルス薬が有益であるという証明は今のところありません。インターフェロンを用いて有効であったという報告もありますが、科学的な証明はなく、高価な治療ですが確実ではないのが実情です。

 

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総合的にいうと、猫伝染性腹膜炎(FIP)は例外なく進行性で、しかも死に至る病気です。予後は要注意。猫のQOLを充分考えた上で、その場しのぎの治療を繰り返すだけという治療が、病気に苦しむ猫にふさわしい治療方法であるのかどうか、じっくり話し合う必要があると思います。

 

とてもこわい猫伝染性腹膜炎(FIP)のお話は今回で終了です。


追加

なんと、これを書いた5日後に新しい研究発表がありました!
http://news.cornell.edu/stories/2013/06/discovery-offers-hope-against-deadly-cat-virus

悪さをしないコロナウィルスとFIPウィルスとの間には遺伝子的な違いがあることを突き止めたようです。診断とワクチン開発に新たな光ですね。1日も早く確実な診断と完全な治療、ワクチン予防が確立されますように。

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猫コロナウィルス感染症

 コロナウィルスが世間を騒がせていますね。

犬にも猫にもコロナウィルス感染症はあります。今日は猫のコロナウィルス感染症についてお話しましょう。

 

猫コロナウィルス(FCoV)は糞便から経口感染します。多頭飼育の家庭では特に問題になります。互いのグルーミングや食器やトイレの共有でもウィルスは伝播されます。コロナ、というのは「太陽コロナ」からきている名称です。
コロナウィルス 

ウィルスの外側をエンベロープという膜が巻いていて、その膜に太陽コロナのような(子供が描くお日さまの外周に出た幾本かの放射状の線、あれです)突起がでています。この膜は熱や光、消毒薬に弱いので、適切に消毒を行うと直ぐに死滅させることができます。
コロナV

 

 

猫コロナウィルス(FCoVFeline Corona virus)には2つの型があります。ひとつは犬コロナウィルス(伝染性胃腸炎をおこす)とも関連のある「猫腸コロナウィルス」(FECV)です。もうひとつは野外で最も一般的なもので、猫伝染性腹膜炎(FIPFeline Infectious Peritonitis)を発症させる「猫伝染性腹膜炎ウィルス」(FIPV)です。

 

猫腸コロナウィルス(FECV)は感染したとしても、あまり大きな問題は起こしません。軽い全身症状と一過性で伝染力のない(その子の感染だけで終わってしまう、うつる心配の要らない)下痢を主症状とした胃腸炎程度です。非病原性といえるでしょう。とただ、外見上は健康であってもウィルスを体内に宿してしまい、ウィルスを体外に出し続けます。こうした猫はウィルスを他の猫に撒き散らすため、ウィルスの運び屋、という意味で「キャリア」と呼ばれています。ウィルス排泄を中断することがあっても、自身の体調により潜在的に持っていたウィルスが再活性化し、やはり排泄は続けられます。猫を多頭飼育している家庭や繁殖場内では、慢性的なキャリアが感染を続けるため、その結果、飼育されている猫のほとんどが感染猫になってしまいます。

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 一方、猫伝染性腹膜炎ウィルス(FIPV)はとんでもなく悪者です。猫伝染性腹膜炎(FIP)というのは獣医療においては昔から最も管理が困難な病気です。診断が難しくなかなか確定診断に至らないのと、治療がほぼ不可能なのとのダブルパンチです。このことは飼い主さんに、経済的な負担や精神的な苦労などをかけてしまい、悪性腫瘍やそのほかの難病と同じかそれ以上に大きな問題になると思います。

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猫の伝染性腹膜炎発症に関しては現在2つの理論があります。猫伝染性腹膜炎ウィルス株は猫の体内になった猫腸コロナウィルス株の突然変異によって生じたものであると言う説と、もともとFECV株とFIPV株があり、FIPV株に感染した猫が猫伝染性腹膜炎を発症するのだという説です。

 

猫伝染性腹膜炎について、もうすこしお話をしようと思います。続きは次回。病気のタイプと臨床徴候、検査と治療、予後についてです。

 

 

 

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ハート動物病院

Author:ハート動物病院
ハート動物病院です。
〒445-0062
愛知県西尾市丁田町杢左51-3
TEL/0563-57-4111
オフィシャルサイト:http://www.heart-ah.com/

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