猫免疫不全ウィルス感染症

今日は猫免疫不全ウィルス感染症についてお話しします。ちょっと長いです。

 

<病原体は?>

猫免疫不全ウィルス感染症は猫免疫不全ウィルス(Feline Immunodeficiency virus : FIV)の感染により起こる病気です。猫エイズとも呼ばれています。有効な治療法のない怖い病気です。

猫免疫不全ウィルスはレトロウィルス科に属しています。このレトロウィルス科には猫白血病ウィルスも仲間として入っています。(もう少し細かい分類は違います)このウィルスは1986年にアメリカで初めて分離されました。

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<感染は?>

猫免疫不全ウィルスは主に猫同士のけんかによる咬まれ傷によって感染します。唾液中に含まれるウィルスが傷を介して移るのです。そのほか性行為によって、また母猫から子猫への感染も頻度は低いかもしれないけれど、あるでしょう。

2008年に鹿児島大学の遠藤先生たちが全国で行った調査によると、地域差はあるものの「最低週に1回外出する猫」1770頭のうち23.2%の猫が猫免疫不全ウィルスに対する抗体を持っていました。調べられた猫のうち、1175頭は「けがをしていたり、食欲がなかったり、やせていたり、鼻水を出したり、目やにが出たり、呼吸が苦しいなどの症状をもって病院に連れてこられた猫たちで、716頭はけんかによる咬まれ傷がありました。この調査からわかることは「自由に屋外に出て行ける猫は、屋内だけで過ごす猫の20倍以上の高い感染率になる」ということです。そして「オス猫はメス猫の2倍も感染している」こともわかりました。

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<5つの病期と症状>

猫免疫不全ウィルスに感染したときの症状は、感染後どのくらい経過したかによって異なります。

    感染してすぐは・・・

熱が出たりリンパ節が腫れたり、下痢になったりします。血液検査でも貧血や白血球減少などがみられるくらいです。これらは特別な症状ではないのでほかの病気と区別がつきません。感染して数週間から数ヶ月くらいこのような症状が出ます。それでもこうした症状が強く出てこない場合は、なんとなくだらだらしているくらいで知らないうちに過ぎてしまいます。この感染したてのころは抗体検査をしても検査に現れません。(感染後、抗体が陽性になるのは30日から60日くらい過ぎてからです。)

この時期を急性期と呼んでいます。

    そのあと・・・

症状はまったく無くなります。症状がないので病気のように見えません。体調も良いのでけんかもできますから、ウィルスをほかの猫に広めることができる怖い時期です。数ヶ月から数年続きます。

抗体検査をすると陽性に出ます。飼い主さんは猫の体調が良いので、血液検査をして病気を確認しようなどとは思わないでしょうし、まさか猫免疫不全ウィルスの感染を受けていようとは夢にも思っていないかもしれません。感染猫は猫免疫不全ウィルスを一生涯持ち続けます。

無症状キャリア期と呼んでいます。

    それから・・・

全身のリンパ節が腫れてきます。けれどほかの症状ははっきりわからないことが多いです。検査をすると抗体は陽性に出ます。

持続性リンパ節腫大期と呼んでいます。

    症状が出始めます・・・

その後、免疫異常による症状がじわっと出てきます。口内炎や歯肉炎、鼻風邪や下痢などです。注射や薬でコントロールも可能な時期です。なかなか治りが悪いこれらの病状に「もしや、エイズかも!」と心配になるのがこの頃です。検査でその心配が的中してしまうのがこの時期です。

エイズ関連症候群期と呼んでいます。

    いよいよです・・・

免疫不全による症状が出てきます。検診で血液検査を実施すると赤血球や白血球が減少し、貧血やそのほかの血球減少症を発症ししているのが判明します。カンジダ症や疥癬症、毛包虫症などの皮膚病にもなりますし、腫瘍を発症することもあります。脳炎で神経症状を出すことも有り、看病するのも辛くなってきます。

後天性免疫不全症候群期です。

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<簡易レトロウィルス検査>

猫が猫免疫不全ウィルスに感染していないかどうかはレトロウィルス検査の簡易キットを使い、病院内で調べることができます。猫白血病ウィルスも同時に調べることができます。

特にこの検査を実施した方が良い猫たちがいます。

    状態の良くない猫

病状が悪い猫、猫免疫不全ウィルス感染症に特徴的な症状をだしている猫(けんか傷があるとか、口内炎がある猫たち)、そのほか猫エイズ陽性の猫と接触したことがはっきりしている猫です。

このような猫ではためらうことなく、レトロウィルス検査をうけることを承諾してください。以前の検査で陰性であっても、その後の生活が感染を疑わせるものならば再度受けてください。

    多頭飼育で暮らす猫

多頭飼育ですべての猫の感染状況が明らかでない場合は、陰性猫と陽性猫を分けるために検査が必要です。感染猫が1頭混じっていると一緒に暮らす猫みんなが感染の危険にさらされてしまいます。

    新しく飼育する猫 

新たに猫を迎える場合は成猫でも子猫でも検査を実施しましょう。

    猫白血病ワクチンや猫免疫不全ウィルス感染症のワクチン前

初めてレトロウィルス感染症関連のワクチンをうけるときは事前に検査を受けてください。ワクチン接種をするとワクチン由来の抗体が陽性になるため、それまでに感染したことがあるのかどうかが判明つかなくなります。

    感染リスクのある猫

屋外に自由に出入りすることができる猫は、もしエイズワクチンを接種していないのであれば、定期的に検査を受けましょう。年に1回くらいが理想です。

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<子猫の検査と評価>

子猫の検査を実施したとき、陽性になることがあります。お母さん譲りの抗体なのか、自然感染して自分で作り上げた抗体なのか判断に困ります。30日くらい間を開けてもう一度検査を行います。これで陰性なら、お母さんからもらった抗体が消失した、感染はなかったと判断します。

 

<成猫の陽性結果>

ワクチン接種をしたことがある場合、陽性に出ます。けれどワクチンを接種したことがあるかどうかわからないとき、ワクチン由来の抗体なのか、感染による抗体なのか判断がつきません。このようなときは、病院での簡易検査ではなく、感染を確認することができる外部委託検査を実施します。

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<治療のこと>

ウィルスの感染数を減らし生存期間をのばす治療が望まれます。しかし猫インターフェロンも希望をかなえられるほどの効果は得られません。対象療法を行います。

 

<予防ができます>

幸い日本では猫免疫不全ウィルス感染症のワクチンがあります。もし屋外に自由に出るような飼育をするのであれば、必ずワクチン接種をしておいてください。

基礎免疫は3週から4週の間を開けて、3回接種します。子猫もおとな猫も同じです。その後追加免疫は1年に1回です。

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<猫エイズに感染しているとほかのワクチンはうてない?>

免疫不全状態の猫ならば、なおさらのこと、感染症の予防をしたいものです。猫の3種混合ワクチンは生ワクチンと不活化ワクチンの2つの種類があります。不活化ワクチンでしたら予防注射ができます。予防しましょう。

 

<おわりに>

12月1日は世界エイズデー、エイズの日です。
猫にも猫エイズと呼ばれる猫免疫不全ウィルス感染症があります。怖い病気ですが、ワクチン接種で予防ができます。
この機会にぜひ知ってください。

猫エイズで苦しむ猫がいなくなりますように。    合掌 
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猫ウィルス性鼻気管炎にかかったときの注意

 厳しい寒さが続いています。

この寒さで「くしゃみ、鼻水」などの風邪のような症状を示す猫さんが増えているかもしれませんね。

ウィルス性鼻気管炎の発症です。

ヘルペスウィルス感染症については前にお話ししました。

 http://heartah.blog34.fc2.com/?editor

今日は、かかってしまったらどんなことに注意したら良いのかについてお話ししようと思います。

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まずはおさらい。

「猫のインフルエンザ」とか「猫風邪」という、やさしい病名で説明してくださる先生もいらっしゃるでしょう。「ウィルス性鼻気管炎」というのが一般的な病名です。

原因は「カリシウィルス」や「ヘルペスウィルス」の感染です。

症状は「40℃前後の発熱、なみだ目、くしゃみ、鼻水、鼻汁、鼻つまり、よだれ」などです。鼻がつまったために「口を開けて呼吸をする」こともあります。高熱があると「食事が食べられなくなる」こともあります。またひどくすると肺炎を起こしますから、「呼吸が荒くなり」「元気が著しく低下する」ことになります。

 

治療は二次感染防止のための抗生物質、抗ウィルス・免疫強化を目的としたインターフェロン、そのほか症状に応じて補液やビタミン剤、抗炎症薬などの投与が主なものです。

しかし病院で治療するだけで病気がスッキリ治るものではありません。おうちでもケアが必要です。

そこでおうちの方に協力していただきたいことをあげておきます。 

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 1、外出させないでください。

 寒さは病気を悪化させます。「外出しないとストレスになる」とおっしゃる方もおられますが、出られない精神的なストレスよりも、出て行った場合の身体的ストレスの方が大きな問題になります。

2、暖かくしてあげてください。

 ウィルスは寒くて乾いた環境でさかんに増殖します。室内を暖かく、湿度のある状況にしてください。

3、同居の他の猫さんとは隔離してください。

 直接の接触だけでなく、くしゃみからの飛沫感染もあります。近距離にいる猫さんに病気がうつってしまいます。

4、工夫して食事を与えてください。

 鼻がつまると、においがしなくなり、食欲も低下します。体温程度に温まった水分の多い食事が一番食欲をそそるにおいを発します。こんな食事に近づけるよう用意してあげてください。お魚の水煮(アラ煮で結構です)などがおすすめです。パウチ食を湯煎であたためていただくのもありがたいです。ただパックを開けるのではなく、ひと手間かけてください。
 それでも自分から食べられないとか、食べる量が不十分だとかいう場合には処方食の給餌をしてください。流動食タイプになっていてポンプで口に入れることができます。

5、病気の子を看病した後は手を洗ってください。

 おうちの人の手を介して別の猫さんに病気をうつしてしまう可能性があります。眼やにやよだれで汚れた顔を拭いていただいたり、点眼処置をしていただいたりすると、眼やにやよだれの中のウィルスに触れることになります。市販の塩素系漂白剤を50倍に希釈した液を利用していただくと良いと思います。
 なお、猫さんのインフルエンザは人にも犬にも感染しませんのでご安心ください。

6、治ったらワクチン接種で次からの感染予防をしてください。

 一度感染しても生涯の免疫が得られるわけではありません。今後、同じ病気にかからないように定期的にワクチン接種をし、予防を心がけてください。

 

 <付記>
市販の塩素系漂白剤の成分は次亜塩素酸ナトリウムで、5%または6%のものが多く売られています。50倍希釈液は、キャップ2杯(10ml)の原液を500mlのペットボトルの水に加えると簡単に作ることができます。

<付記>
猫さんおひとりさま用のこたつを作ってもらうと、家の人が外出している昼間や寝静まった深夜に部屋のエアコンを切っても暖かく過ごすことができます。
ダンボール箱を横から出入りできるようにします。天井部分は閉じるかたちです。床部分にペットヒーターをおき、上にフリース素材の布を置きます。箱全体を毛布や夏掛けの薄い布団でくるんでください。出入り口は布が垂れますが、猫さんは布をくぐって出入りすることができます。


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猫伝染性腹膜炎

 猫コロナウィルスによる病気、猫伝染性腹膜炎(FIP)は病気のタイプとしてドライ型とウェット型の2つの型があります。これは臨床徴候からの分類です。

ドライ型は食欲がない、無関心で元気がない、発熱する、体重が減ってくるなど、特異的な臨床徴候がありません。腹腔臓器や眼、中枢神経系の漿膜表面に肉芽腫が作られると、黄疸になったり、眼が濁ったり、神経学的な機能不全の症状をみることがあります。

ウェット型は全身性の血管炎による胸水や腹水が発生するので、全身性の症状に加えて、呼吸困難やお腹周りの拡張が見られます。

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典型的な症状を抱えることがないため、診断は難しくなります。身体検査の後、血液検査や眼科検査、超音波検査、X線検査を実施します。貯留した液体があるからと言って、猫伝染性腹膜炎であるとは限りませんので、胸腔や腹腔から採取した液体を用いて、さらに詳しい検査を実施します。液体の分析は外部委託検査で、ある程度時間がかかります。ウィルス学的な検査や、病理組織学的な検査です。診断のために大変重要な検査です。

液体貯留のないドライ型では診断の手がかりとなるものがないため、1ヶ月くらい保存療法を実施し、いよいよ病気が進行してきて、やっと診断の糸口が見つかった、というようなことも現実にはよくあることです。決め手になる診断に辿り着けないまま、病気が進行してしまう、というかんじです。

 

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ウィルス検査で陽性という結果が出たとしても、これは猫コロナウィルス(FCoV)に暴露されたことを示すもので、これは必ずしも猫伝染性腹膜炎ウィルス(FIPV)にかかっていることを示すものではありません。また、陰性という結果がでたとしても罹患していないとも言い切れません。大量の抗原が抗体に結合したために、検査段階で遊離した抗体が残っていない場合もあるからです。ウィルス学的検査も特異度、感度ともに100%ではないことも知っておいてください。

診断はウィルス検査の結果も含めて、総合的に行っていきます。

 

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では、診断が付いたら、どんな治療があるのでしょうか。

実は厳密に評価された薬はほとんどありません。一般的に治療は支持療法と対症療法です。輸液をしたり、滲出液を抜いたり、栄養学的な補助をしたり、といったようなことです。

ウィルスが炎症性のサイトカインを出すと血管炎や滲出液を増加させるため、抗炎症剤を使います。従来、この治療法が主軸になっています。また、疾患が進行していくと免疫機能が落ち、二次感染症を生じる可能性が高くなるため、感染を防ぐ目的で抗生物質を使います。免疫調整剤や抗ウィルス薬が有益であるという証明は今のところありません。インターフェロンを用いて有効であったという報告もありますが、科学的な証明はなく、高価な治療ですが確実ではないのが実情です。

 

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総合的にいうと、猫伝染性腹膜炎(FIP)は例外なく進行性で、しかも死に至る病気です。予後は要注意。猫のQOLを充分考えた上で、その場しのぎの治療を繰り返すだけという治療が、病気に苦しむ猫にふさわしい治療方法であるのかどうか、じっくり話し合う必要があると思います。

 

とてもこわい猫伝染性腹膜炎(FIP)のお話は今回で終了です。


追加

なんと、これを書いた5日後に新しい研究発表がありました!
http://news.cornell.edu/stories/2013/06/discovery-offers-hope-against-deadly-cat-virus

悪さをしないコロナウィルスとFIPウィルスとの間には遺伝子的な違いがあることを突き止めたようです。診断とワクチン開発に新たな光ですね。1日も早く確実な診断と完全な治療、ワクチン予防が確立されますように。

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猫コロナウィルス感染症

 コロナウィルスが世間を騒がせていますね。

犬にも猫にもコロナウィルス感染症はあります。今日は猫のコロナウィルス感染症についてお話しましょう。

 

猫コロナウィルス(FCoV)は糞便から経口感染します。多頭飼育の家庭では特に問題になります。互いのグルーミングや食器やトイレの共有でもウィルスは伝播されます。コロナ、というのは「太陽コロナ」からきている名称です。
コロナウィルス 

ウィルスの外側をエンベロープという膜が巻いていて、その膜に太陽コロナのような(子供が描くお日さまの外周に出た幾本かの放射状の線、あれです)突起がでています。この膜は熱や光、消毒薬に弱いので、適切に消毒を行うと直ぐに死滅させることができます。
コロナV

 

 

猫コロナウィルス(FCoVFeline Corona virus)には2つの型があります。ひとつは犬コロナウィルス(伝染性胃腸炎をおこす)とも関連のある「猫腸コロナウィルス」(FECV)です。もうひとつは野外で最も一般的なもので、猫伝染性腹膜炎(FIPFeline Infectious Peritonitis)を発症させる「猫伝染性腹膜炎ウィルス」(FIPV)です。

 

猫腸コロナウィルス(FECV)は感染したとしても、あまり大きな問題は起こしません。軽い全身症状と一過性で伝染力のない(その子の感染だけで終わってしまう、うつる心配の要らない)下痢を主症状とした胃腸炎程度です。非病原性といえるでしょう。とただ、外見上は健康であってもウィルスを体内に宿してしまい、ウィルスを体外に出し続けます。こうした猫はウィルスを他の猫に撒き散らすため、ウィルスの運び屋、という意味で「キャリア」と呼ばれています。ウィルス排泄を中断することがあっても、自身の体調により潜在的に持っていたウィルスが再活性化し、やはり排泄は続けられます。猫を多頭飼育している家庭や繁殖場内では、慢性的なキャリアが感染を続けるため、その結果、飼育されている猫のほとんどが感染猫になってしまいます。

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 一方、猫伝染性腹膜炎ウィルス(FIPV)はとんでもなく悪者です。猫伝染性腹膜炎(FIP)というのは獣医療においては昔から最も管理が困難な病気です。診断が難しくなかなか確定診断に至らないのと、治療がほぼ不可能なのとのダブルパンチです。このことは飼い主さんに、経済的な負担や精神的な苦労などをかけてしまい、悪性腫瘍やそのほかの難病と同じかそれ以上に大きな問題になると思います。

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猫の伝染性腹膜炎発症に関しては現在2つの理論があります。猫伝染性腹膜炎ウィルス株は猫の体内になった猫腸コロナウィルス株の突然変異によって生じたものであると言う説と、もともとFECV株とFIPV株があり、FIPV株に感染した猫が猫伝染性腹膜炎を発症するのだという説です。

 

猫伝染性腹膜炎について、もうすこしお話をしようと思います。続きは次回。病気のタイプと臨床徴候、検査と治療、予後についてです。

 

 

 

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猫ヘルペスウィルス感染症

 しばらく犬関係の病気のお話が続いたので、今日は猫ちゃんの病気のお話をしましょう。

 今日、お話しする予定にしているのは猫ヘルペスウィルス感染症です。

 

 「ヘルペス:herpes」の語源は、熱病疱疹「herpes  febrilis」の皮膚病変を表すギリシャ語のherpes(這う)に由来するのだそうです。這うように皮膚や粘膜に水泡を形成していく感染症、になるわけです。なるほど、たしかに猫の鼻腔、口腔粘膜のびらん病変はそんな感じに広がっていきます。

って、そんなことから始まっても、面白いことはありませんね。

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さて。

猫ヘルペスウィルス感染症は猫ヘルペスウィルス1型(Feline herpesvirus-1FHV-1)によって引き起こされます。猫カリシウィルス(Feline calicivirus:FCV)とともに、猫ウィルス性鼻気管炎(Feline viral rhinotracheitis:FVR)の原因になっています。

FHV-1FCVが合わさってこの病気を引き起こす、のではなく、どちらかのウィルスの感染によってこの病気にかかるのです。ウィルス学的にはこの2つのウィルスは違いが大きいのですが、発症させた病状はとても似ていて、臨床の現場ではこの2つのウィルスのどちらが猫ウィルス性鼻気管炎(FVR)の原因となっているのか、鑑別することは困難なのです。ウィルス学的にPCRなどの検査を実施すれば特定することは可能です。が、臨床的に原因を突き止めたからといって大きな意義はないので、そのような検査は日常は行いません。

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猫ウィルス性鼻気管炎(FVR)はなかなか発生率の高い病気です。感染猫の鼻汁やくしゃみなどには大量のウィルスが含まれていて、これを介して別の猫に感染します。感染した後は、鼻、口腔などの粘膜や目の結膜でウィルスが増え、その後咽頭や気管といった上部気道へと感染を広めていきます。

 

典型的な症状は発熱、元気消失、食欲不振、くしゃみ、よだれ、鼻水、鼻汁、結膜の充血や浮腫です。病状が比較的重く、鼻の粘膜が腫れて鼻の穴が狭くなり、口を開けて息する(開口呼吸)ようになります。舌や口腔粘膜のただれやえぐれ(潰瘍)が見れることもあります。激しい鼻炎のため嗅覚が低下し、舌や口腔粘膜の潰瘍もあると、食欲をなくし、また食べ物が口腔内にはいっても疼痛があり、やはり食事をいやがります。ヘルペスウィルスは体内深部の体温では増殖しにくいとされているため、肺炎は起こりにくいようですが、子猫では全身感染で症状が重篤になり、残念な結果になることもあります。

 

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猫ヘルペスウィルス(FHV-1)は年齢を問わず感染します。そしてFVRに感染し、回復した猫の80%以上が三叉神経などの神経節にウィルスを潜伏させていて、生涯に渡ってウィルスを保持する(キャリアーになる)ことになります。そしてストレスなどが加わり免疫抑制状態になるとウィルスは再び活性化し、症状を発症することになります。

一度かかったら免疫ができるから次は罹らない、ということはないのです。体調を崩したらまた発症してしまう。それが猫ヘルペスウィルス感染の特徴です。

また猫ウィルス性鼻気管炎は胎盤感染をしない、といわれていますが、妊娠、出産、授乳(育児)等は母猫にとってストレス状況です。このときにウィルスが再活性すると、親譲りの免疫が少ない子猫は、親から排泄されるウィルスから感染し、発生することがあります。

交配して子猫が欲しい、と思っているのであればこの病気をしっかりコントロールしておかないと、せっかく妊娠し、五体満足な子猫を出産しても、授乳している間に子猫が感染を受けてきちんと育て上げることができなくなってしまうので注意が必要です。

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で、どのような注意なのか、というと、それはなんといってもワクチンです。定期的なワクチン接種で免疫を高めておくこととストレスの少ない生活をさせることが大切なのです。ワクチンは猫ヘルペスウィルス(FHV-1)と猫カリシウィルス(FCV)に猫汎白血球減少症ウィルス(Feline Panleukopenia Virus:FPLV)を加えた猫3種混合ワクチンと、これにさらに猫白血病ウィルス(Feline Leukemia Virus:FeLV)や猫クラミジア(Chlamydophila felis)を加えた5種混合ワクチンがあります。

 

万が一、感染してしまったときの消毒方法について記しておきます。専門的な話になりますが、このウィルスはエンベロープというウィルス外側の膜を持っているために、この膜を壊すことで案外活性を失いやすい構造になっています。各種の消毒薬、強酸、強アルカリ、熱水(8010分)でも壊れます。一般に私たちが使う70%イソプロピルアルコール、次亜塩素酸ナトリウムで充分有効です。

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猫のウィルス病は怖いものが沢山あります。追々お話していくことにします。

今日のお話はここまでです。

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プロフィール

ハート動物病院

Author:ハート動物病院
ハート動物病院です。
〒445-0062
愛知県西尾市丁田町杢左51-3
TEL/0563-57-4111
オフィシャルサイト:http://www.heart-ah.com/

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