猫が感じる住み心地の良い家・その2

猫さんにとって住み心地の良い家に変えてもらうと、ストレス性の病気の治癒が進みますし、また再発がありません。好ましくない行動を制御できるという意味からも人と猫さんとが共存できる理想の部屋になります。猫さんが住みよい環境に変えていただきたい理由はそのためです。

 

さて、「にゃんにゃんパラダイス」なお部屋は、一言でいうと屋外の環境を屋内で似せて作ることです。最近は動物園の動物のために展示エリアは様々な工夫が施されています。猫さんも同じことです。猫さんは快適に過ごせ、わくわくするものがいっぱいあるお部屋が大好きです。

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具体的には以下の方な方法がおすすめです。

 

1、スクラッチングOKな場所があること。

 やはり猫さんにとって、「ここは私の居場所」をマーキングすることができる場所があることはすてきな環境です。代替えの場所もないのに「ソファのコーナーで爪とぎをしてはいけない」「この柱でカリカリしてもらっては困る」とカバーをかけられたり、猫の嫌いなにおいのスプレーをかけられたのでは残念極まりないでしょう。猫の爪とぎ行動は正しい本能的な行動です。マーキングのほかにも、層状に生えてくる爪をきれいにしたり、ストレッチになったり、と猫さんにはとても有意義な行動になります。

市販の物を利用してもいいですし、カーペット素材の物を板に張り付けたり、ダンボールを細長く切って断面を提供するというハンドメイドのものでも良いと思います。出来れば床の上に置くのではなく、床面に垂直に立て懸けて固定してもらうと、猫さんの好みにより近くなると思います。

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2、登って楽しめる場所があること。

 猫さん専用のジャングルジムのような場所です。天井の梁があって、そこを猫さんが歩ける、そのような三次元の空間です。キャットタワーをそのまま利用してもらうのも良いですが、部屋にあるものでも結構です。猫さんが段々飛びして上の方に登れ、中間点、頂点などにくつろげる広さの場所を作っていただけると良いです。飛び台は滑らないもので、また高台はぐっすり寝込んだ猫さんが寝がえりをうっても落ちてこない工夫があるとうれしいと思います。

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3、ハンティングできる要素があること。

 何かを狙ってジャンプしたり、物陰から襲うことができたり、ふらふら歩いていて獲物を見つけたり。そんな狩りの楽しみを屋内で作りだしてもらうと、猫さんの生活にわくわくが増えます。

飼い主さんが積極的に遊びに関与していただくことがいいのは言うまでもありません。置きっぱなしのおもちゃにはあまり魅力がないからです。狙う、飛び出す、仕留める、の動作を猫さんは楽しんで実行してくれます。お目目をくりくりさせ、お尻をもじもじさせて素早く走り寄る小さなハンターの姿は見ているこちらも楽しませてくれます。どんなおもちゃでも良いのですが、レーザーポインターで遊ぶ場合だけは、最後の「仕留める」部分が欠如してしまうので、ここで遊びを終えよう、というタイミングで小さなぬいぐるみを光の位置に投げて狩り遊びを完結させてあげてください。懸命に追いかける遊びでは猫さんも疲れますから、途中、休憩をはさみながら気長に遊んであげてください。

飼い主さんが留守の間でも猫さんが楽しめるようにするには、室内に置く物干しセットなどにおもちゃをぶら下げる方法があります。ただし夢中になって遊んだときに物干し台が倒れてきてしまわないように工夫が必要です。

おもちゃはいくつか用意しておき、飽きないうちに取り換えるのが良い方法です。猫さんによっては好みが偏る場合もあるかもしれませんが、ショップで買ってくるもののほか、ハンドメイドでカサカサ音の出る袋を丸めたものでも十分遊べますから、いろいろ試してください。

物陰から狙う、という意味では猫さんが隠れることのできる箱や大きめの買い物袋、またそれに布を被せるなどして、これらを部屋に置いておくだけでも遊びのバラエティを広げることができます。

そのほか、食事の与え方でもハンティング要素を取り入れることができます。少量ずつ小分けにした餌を物陰に潜ませておき、日替わりで場所を変えるというやり方です。これは比較的簡単に実施できるかと思います。

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4、長居をしたくなるトイレがあること。

 狭い、汚い、誰かが使った跡が残っているトイレだと使う気になれません。またそこに行くのに苦痛がない、というのも大事な要素です。複数飼育のおうちでは、気の合わない猫さんがトイレの近くに陣取っていると近づくことができません。もともと野天の広々したところで恥ずかしくもなくお尻を下ろす猫さんですから、狭いところよりは広々したところで用を足すのが好きなのです。

一般にはピクニックシートの上にプラスチック製の押入れ収納ケースを置くのが理想とされています。市販の猫ちゃんトイレは小さすぎ、また屋根付きのトイレはにおいがこもるためおすすめではありません。猫砂は好みがあるようですが、大粒よりは小粒の物の方を好む猫さんが多いようです。

トイレの数は飼育している猫さんの頭数プラス1個、というのがお願いしたいトイレの数です。諸事情があり、難しい場合もあると思いますが、できるだけ理想形に近づけていただけると猫さんに喜ばれるはずです。

快適なトイレだとしっかり砂を掻き、体勢を整えたりなどして、トイレタイムが長くなります。排泄後に逃げ出すようにトイレから立ち去ることがありません。私たちに置き換えてみても同様で、気持ちの良いトイレではすべての動作がゆっくりになるような気がします。ホテルのトイレもゴージャスだと点数を上げたくなりますね。トイレは快適な生活の中でも大切な要素になるでしょう。

 

猫さんにとって住み心地のよいおうち、少しでも近づけていただけると嬉しいです。 
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猫が感じる住み心地のよい家

 猫さんのストレスと暮らしの関係についてお話します。

 

どうして猫の暮らし方についてお話をするのか。猫さんは生活パターンによってストレスを受けやすく、それによってさまざまな問題行動をおこすからです。猫さんはとても敏感な動物です。まさかと思うようなことや飼い主さんの見ていない間の事件も、猫さんのメンタルに関与しています。

特発性膀胱炎(FIC)という泌尿器の病気があります。下部尿路疾患のうち、細菌によるものでもなく、尿路結石によるものでもない、腫瘍でもない、それでも頻尿や血尿、不適切な排泄をおこす病気、これが特発性膀胱炎ですが、これもストレスからくる病気です。特発性膀胱炎の症状は7日程度で治りますが、原因となるストレスを除いてやらない限りは必ず再発します。

またアトピー性の皮膚炎との鑑別がつきにくい舐性皮膚炎ですが、舐める行為を始めた原因は痒かったからではなく、ストレスがあったからなのかもしれません。舐めることによって気持ちが落ち着くので皮膚が赤くただれてもまだ繰り返すのです。リストカットの猫さんバージョンでもあるでしょう。

私たちも心配事や嫌なことが続き、これを回避できない状況になると、胃炎や十二指腸炎をおこします。猫さんの身づくろいと毛球症、嘔吐について、ストレスと関連があると感じている飼い主さんもいらっしゃるかもしれません。

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現在の猫さんの飼育は従来のスタイルから大きく変化してきました。従来は開け放たれた家に飼われ、自由に外出をし、排泄は屋外のふんわりと耕された柔らかな土ですませ、屋根の上や木に登ってあたりを観察し、鳥や鼠、トカゲなどの小動物の狩り遊びをし、地域の猫とは適度な距離感をもちコミュニケーションをする。いわゆる田舎の農家のスタイルでした。今もこのスタイルで飼育されている猫さんも居ます。自分の飼育している猫と比べ、猫としての幸せ度が高いと感じますし、また、このような環境の中で飼育されている猫さんをうらやましく思います。この飼育方法で問題なのは、排泄物の様子が分からないので尿の問題があったり下痢をしていても気づきにくいこと、ハンティング遊びでとらえた獲物を食べて寄生虫をもらってしまうこと、他猫とのコミュニケーションの取り方によっては大げんかになり、傷を作ったりその傷が化膿したりすること、過剰な接触からウィルス性の伝染病に感染してしまうことなどです。また徐々に交通量の多い地域が増え始めると交通事故などの外傷も心配事に入るでしょう。知らない畑に撒かれた農薬による中毒なども行動範囲が広い猫さんには問題になると思います。このような環境で飼育されている猫さんたちにとって去勢手術や避妊手術は、好ましくない妊娠を防ぐ目的以外にも、過剰なコミュニケーションを避け、遠出を防ぐので困った事象をコントロールする方法として好都合です。

若い飼育者の方にはこんな飼い方は信じられないかもしれません。ただ、これが日本で長い間とられてきた猫さんの飼い方で、猫さんの本能的な欲求がしっかり満たされた、人と猫との同居のスタイルでした。

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現在の飼育スタイルはといいますと、まず、100%屋内飼育スタイルになりました。屋外に出ると心配なことが山ほどありますが、それらから猫を守ることができるようになりました。交通事故問題は全くありません。排泄も管理されているので異常点があればすぐにわかります。嘔吐なども見つけやすいでしょう。寄生虫の心配はノミをコントロールすることでほぼパーフェクトに予防できます。ふらふらと家出をして帰ってこなくなった、などということも無くなりました。同居の猫さんがいて、よほど折り合いが悪くない限りは大きなケンカ傷を作ることもありません。単独飼育ならば、接触感染によるウィルス感染(猫白血病ウィルスや猫免疫不全ウィルスなど)の心配もなくなりました。室内の観葉植物や花瓶の花も毒性の無いものを選べば、植物由来の中毒からもフリーです。去勢手術や避妊手術はスプレー行為をなくすためによい方法になっています。

 

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しかし、このように管理された生活から失われたものがあります。自由な遊びです。ハンティングすることはできなくなっているし、爪とぎは自由に好きなところで行うわけにはいかなくなりました。猫さんは長いこと自由にしてきた歴史がありますから、猫さんには猫さんのDNAに刻まれた本能的な行動があります。それは「うちの猫ちゃんは生まれたときからおうちの中だけだから大丈夫」というものではないのです。

また、トイレも大きく変化しています。広々した野天、開けさらされたところでの排泄が好みのわけですが、狭いところで排泄するように強いられることになりました。トイレ掃除をこまめにしてもらえないと、排泄臭がこもってしまいます。科学的な消臭剤によっては猫さんの嫌いなにおいが残ることになり、そこで排泄しなければならないのは猫さんにとって不本意でしょう。

 

 

猫さんが本来起こしたいと思っている行動そのものを今の家の中でどのように再現させてやれるか、これが猫さんのストレス管理に大きく関わってきます。屋内飼育だけれども、屋外の状況に近づけた生活を提供してやること、これが猫さんのストレスを減らす飼い方になります。

 

次回は「猫さんにとっての住み心地のよい家」についてお話します。

 

 

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猫の常同行動

猫のストレス行動、3つ目は病的なまでに繰り返し同じ行動をすること(「常同行動」と呼ぶもの)です。これには、ひっきりなしに皮膚を舐め続け毛が抜けて肌がつるつるになるまであらわになってしまうことや、洋服(毛布)などをちゅうちゅう吸うこと、布やゴム類などを食べてしまうことなどが代表的なものです。心因性脱毛症(Psychogenic alopecia)、毛織物吸い(Wool sucking)、織物摂食行動(Fabric eating)といわれるものです。

 

好発品種としてはシャム猫、アジア系の品種と、その雑種に多いとされていますが、ウールサッキングでは幼少時に親猫から離された経験のある個体でよく見られますし、このほかの種類の猫で発生が少ないわけではありません。

平均年齢は2448ヶ月齢。若い猫に発生が集中しています。ストレスや葛藤、欲求不満のある飼育環境下で生じることが多いです。飼い主が意識してみることにより、行動がさらにエスカレートすることもあります。

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治療ですが、まずはノミアレルギーのような痒みを伴う皮膚疾患ではないかどうかを確かめる必要があります。医学的な問題であればまず、それを治療します。

またストレスや葛藤、欲求不満のがどこにあるのかを調べ、それを取り除くようにします。

飼育環境を改善します。猫のFive Freedoms 5種類のいやなことから開放させるように考えます。

Five Freedoms

 ①飢えと渇きからの自由

 ②不快環境からの自由

 ③痛み、怪我、病気からの自由

 ④生来的行動をとる自由

 ⑤恐怖と絶望からの自由

こうした環境系改善に加え、薬物療法も効果があります。セロトニンを増やす薬が有効です。ただし常同行動は治すことができますが、常同障害は治ることはありません。薬でそうした行動をコントロールしていくことになります。

 

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ある調査によると、飼い主さんが「困った」と感じる猫の行動のうちトップは猫の爪とぎ行動で、次いで隠れてでてこない、尿スプレー、同居猫との不仲でした。また原因は何故だと思いますか、という問いかけについて、猫の性格:31%、分からない:25%で、ストレスだろうと思っている飼い主さんは21%しかいませんでした。

この事実からしても、猫のこころを理解してもらえていない、というのが現実のようです。猫の問題行動の70%は2歳未満で発症しています。

 

もし、若い猫で、激しい爪とぎ行為や決められたトイレ以外の場所での排泄、攻撃的な行動、食べられないものを食べてしまう、皮膚を舐めてばかりいる、などの行動が見られたときは、「ストレスかもしれない」と思い出してもらえないでしょうか。そしてできるだけ早い段階で動物病院に相談に来ていただけたらと思います。

 

猫の問題行動に関するお話は今回で終了です。 

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猫の尿マーキングと不適切な排泄

 今回は「尿マーキング」と「不適切な排泄」のちがいについてご理解いただくことにしましょう。そしてそのあとに治療法についてお話します。

 

「尿マーキング」は縄張りの誇示を目的にしています。また、ストレスがあるときのストレス置き換え行動でもあります。去勢していないオス猫に見られますが、発情時のメス猫でも尿マーキングを行います。少量のオシッコを1日に数十回も排泄します。「目立つところ」に排泄するのがポイントです。多頭飼育されているお宅でよく見られます。たくさん飼育されている中で暮らすのは猫にもストレスがかかるのです。10頭以上飼育していれば必ず誰かが尿マーキングをする、といわれています。テリトリー誇示のために行う行為ですので、自分のニオイが薄れてくれば必ず同じところにマーキングするので、毎度毎度、繰り返されることになります。

 

一方、「不適切な排泄」はこれとは異なります。原因は「トイレがいやだ」「トイレに行きづらい」といった物理的な問題と、医学的理由からも発生します。もちろんストレスが関係した精神的な問題でも不適切な排泄をすることになります。尿マーキングと違うのは1回の量が大量である点です。猫は自分の手足が濡れるのを嫌うため、どちらかというと吸収の良い場所(布団とか洗濯物のタオルの上など)に排泄するのも尿マーキングと異なる点です。

 

一体どちらなんだろう、と悩むことも多いわけですが、下部尿路(膀胱や尿道)の疾患と、この「こころの病気」である問題行動との区別もしなくてはいけないので、勝手に決めてしまうのではなく、よく猫さんの行動を観察していただいて、猫さんの行動と自分の考えとは分けて、詳しく聞かせていただけると問題解決の早道になります。

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さて、尿マーキングの治療です。

原因は不安にあるわけですから、この不安要素となることを除いてやればいいわけです。何がそうさせるのか、これは日ごろの猫さんの周りのことをしっかり観察していただき、そういう目で猫を見てあげないといけません。

マーキングした部分はとにかくきれいに掃除しなければなりません。少しでも臭いが残っていれば「上書きしたい」気持ちをそそります。酵素入りの洗剤でしっかり洗い、ハイターうすめ液でさらに仕上げをします。簡単にシュッシュと消臭剤をかけただけでは対応していることになりません。

マーキングする場所への立ちいり禁止。これも大事なことです。なんとかしてここへのアクセスを阻止しましょう。

マーキング場所であえて食事をとらせるのもひとつの手です。清潔好きの猫は食事する場所と排泄する場所を同じにするのは好みません。

 

動物病院で協力できることは、避妊手術や去勢手術の実施です。オス猫の90%、メス猫の95%はこの手術によって尿マーキングは治るといわれています。マーキング暦が長いと治癒率は下がります。早ければ早いほうが効果はあります。

内科的な治療もあります。猫のこころが安心する薬があるのです。抗不安薬その他のお薬は特殊ですので、しっかり診察をさせていただいて処方します。また、猫さんのこころがほっとするサプリメントもあります。こちらはご希望によりいくらでも処方が可能です。

ちょっと面白いものではフェロモン療法があります。これにはスプレーのものや、コンセントで部屋に取り付けておく蚊取り液剤のような徐放性のものがあります。この臭いは私たちや犬には感じることができない、種特異性のものですが、「ここは自分の臭い付けをしたところだぞ」と猫に思わせる効果があります。病院の猫専用診察室にも常時つけてあります。不安と緊張の強い猫では、キャリーにスプレーしたガーゼを入れてあげることもあります。成る程、という効果はありますよ。

 

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不適切な排泄の治療です。

もし医学的な問題によるものであれば、そちらの治療が必要です。身体のほうに問題があるのに、こころの治療をしても治りませんので、どちらの原因で起こっていることなのかは診察をしてから決めることです。

そして、もし、身体の病気が否定されたのであれば、こちらの治療が必要になるわけですが、まずはトイレ環境の改善なのです。これは下部尿路疾患の猫にもしつこく、お願いしたいことです。トイレの見直し、というのは、前回お話したようなトイレ環境を作っていただくということです。そして、マーキングのときと同じように、粗相してしまう場所へ行けないようにしなくてはいけませんし、そうでなければその場所で給餌するようにします。洗濯物を取り込んだらすぐにたたんでしまうことや、コタツ布団を用がないときには上げておくことは粗相の防御になります。

不適切な排泄にも薬物療法が有効です。尿マーキングのときと同じような抗不安薬を使います。

 

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ここで、特発性膀胱炎のことを再度お話しておきます。

猫特発性膀胱炎Feline Idiopathic Cystitis (FIC) は、「すべての医学的な原因(感染症、結石・尿道栓、その他)が排除されたにも関わらず、血尿、頻尿や排尿障害などの症候がみられる疾患」として定義されています。比較的若い猫さんから成猫さんによく見られます。発症する猫の平均年齢は3.5歳です。超音波検査をすると膀胱壁が厚くなっているのが特徴です。前にもおはなししましたように、この病気はストレスと密接に関係しています。たいていは1週間もすると治ってしまいますが、再発することも多いのです。

 

特発性膀胱炎の治療です。

ストレス下にあるために発生するのですから、再発性であろうとまったくの初発であろうと、やはりトイレを含めた環境全体の改善をしなくてはいけません。基本のトイレについては前回お話しました。環境についてはケースバイケースですので、トイレ以外の環境改善については特記しません。薬物療法としては残尿感のための薬、非ステロイド性消炎鎮痛薬、抗不安薬などを使います。フェロモン療法ですが、猫の脳に対し、ストレスを軽減させることはあってもこの病態を治すことは出来ないので、補助的に有効、ということにしておきます。

 

 

猫のストレスと排尿の問題については前のものも参考になさってください。
4回連続でもっとくわしくおはなししました。

http://heartah.blog34.fc2.com/?editor 

今日のお話はここまでです。

次回は猫のストレス行動の3つ目のパターン、常同行動についてです。

 

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猫の一般的な排泄行為

 猫に発生する問題行動のうち、最も認識率が高いのは排泄問題です。猫はとても綺麗好きですから、もともとトイレトレーニングをさせるのは難しいことでもなく、すぐに排泄していい場所(トイレ)を覚えます。決められた場所ではないところに、いつもと違う様相で排泄するのを発見することは、飼い主さんにとって難しいことではないからです。そして、これはニオイの元にもなるし、大変「困った出来事」としてくださるので猫の「問題行動」として発展し、動物病院にも連れてきてもらえます。

余談ですが、先日「爪除去手術」の依頼を受けました。家のあちこちで激しく「爪とぎ」をするので爪を切ってもらいたい、ということです。猫の爪除去手術はその昔、アメリカでは一般的になっていました。しかし今では「動物虐待」に当たる行為として認識されています。猫が爪とぎをすることの意味、頻度が増してくることの原因、そこに眼を向け、問題行動としてとらえ、猫の「こころの治療」をしなければ解決はしません。残念ながら依頼の飼い主さんに「つめとぎ問題」を「こころの問題」として認識していただけませんでした。おそらく「爪除去手術」を引き受けてくださる動物病院をハンティングしていることでしょう。悲しいことです。

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話を元に戻します。排泄問題。これは不安に原因することが多い行動です。猫のストレスを抑えることがとても大切です。

 

 ところで、猫の正常な排尿行動とはどんなものでしょうか。これがわかっていないと基準から逸脱した行動なのか、普通の行動なのか分かりません。そこで、生理的な行動を記しておきます。

①一度決めた排尿場所は続けて使います。

②排尿姿勢はオスもメスも大方一緒です。

③前足で小さな穴を掘り、その中に尿が入るようにしゃがみ、排尿します。

④わずかにお尻を浮かせ、尻尾を緊張させます。とても真面目な顔つきになります。

⑤尿は一気にジャーっと出します。一点を凝視しています。

⑥排尿した後は前足で砂をかぶせます。砂の周りの床や壁も掻いたりします。

⑦排尿回数は1日に2~3回がふつうです。

⑧人用の水洗トイレ(和式でも洋式でも)で用を足すことを覚える猫さんもいますが、水は流せません。

 

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続けて、猫のトイレについてお話します。理想的なトイレではありません。必ずこうしていただかないと猫が気分よく排尿することができない、という、きっちり守っていただきたいトイレです。

①トイレの数は猫の頭数プラス1個。1頭の猫を飼っていて、2階建てのお住まいならば、1階と2階にそれぞれひとつずつです。

②入りやすい高さで、広さは猫が回転できるくらいのもの。身体の長さの0.81.5倍が必要です。

③行きやすいところにおいてください。いじめっこがいつも陣取っている場所を通らなければトイレに行けない、というようではいけません。

④トイレの場所も静かであることが必要です。急に洗濯機が回転を始め大きな音が出るとか、姿見やの前にあって自分の姿が映るとか(猫は他の猫だと思って興奮してしまいます)、窓際でよその猫が見えるとか、いうことは避けてください。洗面所を猫さんのトイレ場所にしているご家庭がありますが、これは好ましくありません。

⑤好みの猫砂を選び、深さは2.5cmくらい敷き詰めます。

⑥毎日必ずトイレ掃除をします。網の下に落ちペットシーツで受けた尿の臭いがあがらないうちにペットシーツを交換します。まだぬれていない部分があるからと、そのままにはしません。ウンチも見つけ次第片付けます。固まる砂の場合は1日2回塊を掬い取るようにします。

⑦月に1回、トイレを洗浄します。食器用洗剤とスポンジで洗い、ハイター液をかけて、日光に干し、乾かします。

⑧プラスチックトイレは1年から2年を限度に買い換えます。

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猫の気に入るトイレづくりというのもなかなか大変です。けれど、これが基本で、トイレに関する問題が勃発した時に、基本に戻すだけでも、排泄問題が解決した、というようなことはあります。

私たちもオシッコをしたくなったとき、少しくらい汚くても、ニオイがきつくても、場合によっては公園のトイレとかで虫が出現していても、ぎりぎりならばガマンします。けれど、これが自宅のトイレだったらどうでしょう。毎日、数回使うトイレです。掃除をしてきれいにしますし、窓や換気で臭い対策もするでしょう。使いやすいものにリフォームするかもしれません。猫は「いやだ」と思ったら別のところで排泄するしか方法はないのです。快適なトイレを提供してあげるのも飼い主さんの使命ですね。

 

問題行動の改善についてお話しする前に、普通の排泄と基本のトイレについてお話したところで、今回は終了です。

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ハート動物病院

Author:ハート動物病院
ハート動物病院です。
〒445-0062
愛知県西尾市丁田町杢左51-3
TEL/0563-57-4111
オフィシャルサイト:http://www.heart-ah.com/

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