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猫の皮膚糸状菌症

人と動物に共通の感染症というと、どこか遠い話のような、「うちの子はきっと大丈夫だろうと思うよ」みたいなニュアンスで取られることが多いような気がします。ここのところ続けてズーノーシスのお話をしてきたことだし、この機会にもうひとつ、ふたつお話ししておこうと思います。

 

今日のお話、皮膚糸状菌症です。

たぶん、人と動物の共通感染症としては診察する機会が一番多い病気。だけど「皮膚病」として認識さ れていて、人にも感染する「共通感染症」としては、皮膚病を経験したことのある人にしか知られていないと思います。「人にうつる可能性がある猫や犬の皮膚病」があること、記憶にとどめておいてください。

 

<皮膚糸状菌というのは?>

皮膚糸状菌というのは「カビ」の仲間です。「真菌症」とも呼ばれています。身近な動物、犬や猫、ウサギやハムスターなどの齧歯類、鳥類やは虫類でも問題になっています。

「カビ」というと、お正月のお餅、鏡開きまで取っておこうと思ったら緑や黒やピンクのふわふわができていたとか、お風呂場のタイルの間が黒ずんでいるとか、いわゆる「目に見えるカビ」なのですが、犬や猫の皮膚にできた「皮膚糸状菌」は肉眼では確認することができません。

原因になる真菌は「マイクロスポーラム・キャニス」を中心として「アスペルギルス」や「トリコフィートン」などいろいろな種類があります。これらは環境中に見られることも多いです。

感染しているのだけれど普段は分からないような「不顕性感染」(ふけんせいかんせん、といいます)や、何らかの病気にかかったり、生活上のイベントが発生したりして免疫力が低下したときに発生する「日和見感染」(ひよりみかんせん、といいます)をとることも珍しくはありません。

普通は飼育している(または保護した)猫からの感染が最も問題になると思われますので、猫の皮膚糸状菌症を中心にお話しすることにします。

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<感染しやすいのは?>

次にあげるのは感染の機会が多い猫たちです。

  妊娠・出産・授乳で体力の低下した野良のお母さん猫

  幼弱な猫(そんなお母さん猫から生まれた子猫ちゃんたち、たいていは離乳から少し経ったころに)、

  毛足の長い品種の猫(ペルシャ系の)、

  栄養状況の悪い野良猫、

  猫白血病ウィルスや猫免疫不全ウィルスに感染していて免疫の状態が良くない猫、

  狭いところで過密に飼育されている猫

 

<どんな皮膚病なの?>

皮膚に感染した「真菌」は皮膚の下で増殖し「菌糸」を伸ばしていきます。皮膚はほぼ円形に炎症を起こし、周囲が赤い輪っか(円形から環状)になった脱毛になります。フケを伴って周囲に、または身体の離れた場所に広がっていきます。毛の抜けた部分の周囲はがさがさっとフケが出ていたりします。このあたりの毛を引っ張ると簡単に毛が抜けていきます。輪郭のしっかりした脱毛です。治ってくると悪かった部分の皮膚が薄黒く色素沈着してきます。

このような特徴はありますが、一般的ではない皮膚の様相(アレルギー性皮膚炎などに似た病変)を見せることもあります。

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<猫の皮膚真菌症の診断は?>

病変部から材料を取って顕微鏡の検査を行います。さらに培養検査です。

ウッド灯検査で反応が出るのは「マイクロスポーラム・キャニス」という真菌の中でも約50%の菌株で、反応の出ない菌種もあります。これはこの検査を信頼していると偽陰性になってしまうことを意味します。さらに皮膚に付いた石けんの一部や他の細菌に反応して光ることもあります。こちらは偽陽性になってしまいます。それで、顕微鏡検査と培養検査が重要になります。

顕微鏡検査は、脱毛周囲の毛を取って、角質を溶かす薬を着けてしばらくしてから観察します。院内で行います。

培養検査は、皮膚の一部を取って、真菌が増えやすい培地にそれを置き、温度や湿度を育ちやすい環境に設定して育つ様子を確認する検査です。発育していくのに2週間くらい時間がかかります。院内のラボで培養することもありますが、外注機関に依頼すると間違いがありません。

 

<猫の皮膚糸状菌症の治療は?>

培養検査の結果を待ってから治療するのでは、皮膚病が広がってしまいますから、特徴的な皮膚病変を観察したり、顕微鏡検査で確認した結果をもとに治療を始めます。

治療の大筋は2つあります。

    内服療法

全身性に抗真菌薬を内服してもらいます。真菌が確実に消失する前に皮膚の症状は消えてしまうので、「もうここいらで大丈夫だろう」と治療を中断してしまうと、またどこかしらに脱毛を見つけることもあります。それで、皮膚病変がなくなってからもしばらくは投薬を続けてもらいます。具体的には8週から12週です。教科書的には培養検査が2回続けて陰性結果に出るまで、というところです。

    外用療法

病変部の皮膚を薬用シャンプーで洗ったり、局所外用薬を塗ったりするのが外用療法です。

この治療に対する意見は獣医師により分かれています。積極的に病変部を治療し、感染源を鎮める方向へと持って行こうとするのが外用療法推進派の先生の意見です。しかし治療のやり方によっては感染を広めてしまう可能性があるとか、環境を汚染する可能性があるという理由でこの治療法に消極的な先生もいらっしゃいます。

*当院は外用治療をお勧めしています。感染の広がりによっては(全身麻酔をかけて)被毛をバリカンで刈り取り、全身薬浴や局所の外用薬塗布をしやすくするのが最良の方法だと思います。はじめは感染を広げないようにするため、明らかな皮膚病変のある部位を適切に処置し、落ち着いてから全身薬浴に入るようにしています。まずは病院で処置の方法を見て、やり方を覚えていただき、それからご家庭に帰ってからもしっかり継続していただく方法を採択しています。初期は短い間隔で再診に来ていただき、処置方法について困ったことなどをお伺いする方法をとっています。

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<人はどんな風に感染してしまうの?>

動物が皮膚糸状菌に感染していることを知らないで動物に触れているうちに感染してしまうケース(直接的な菌の付着による)と、動物をグルーミングするときに使用したコームやブラシ、人が使用している敷物を動物が共有していているケース(菌が付着して間接的に感染する)があります。

 

<人の皮膚真菌症の特徴は?>

人は首や腕などの肌が露出しているところに発生することが多いです。赤みの強い円形の病変、少しでこぼこしたような病変です。境目ははっきりしています。はじめは一つかもしれませんが、赤い円が広がったり、別の所にもできます。また次々に家族の別の人に発生することもあります。痒みのあるただれや水ぶくれができることもあるようです。

猫に皮膚糸状菌症が認められた場合、疑いがもたれる場合は、皮膚科で診察を受けてください。

 

<環境に対する配慮について(人への感染を防ぐために)>

カビの胞子が飛んで、二次的に感染源になる可能性があります。環境中で「カビ」は長期に渡って生存できます。猫自身への再感染を防いだり、同居猫や人への感染を防ぐ意味でも環境をキレイにすることは大切です。

感染猫が、人が使うソファやベッドなどを共有することがないようにしましょう。できればケージ内で飼育すると安心です。外用療法を行う場合は、局所の洗浄や薬浴などで使ったタオルはしっかり分け、人の物とは分けて洗濯をします。これは猫が普段使っている敷物に対しても同様です。

皮膚糸状菌症なってしまった猫と接するとき、肌の露出がないものを着用し、頬ずりなどはしないようにしてください。猫を薬浴するときに、人の入浴と同時に行うのはいけません。猫の外用治療を済ませた後はしっかり手を洗ってください。あまり広範囲に広がっているのでなければ、ドライヤーは使わず、タオルドライを中心に乾燥させるようにし、環境中に菌が広がらないように配慮してください。

また、猫は家具や壁などに身体をすり寄せます。猫がよくスリスリする場所は、次亜塩素酸ナトリウムの0.05%0.5%に薄めた液で清拭してください。

一般に猫が治癒しても環境中には4ヶ月くらい菌が残る可能性があるといわれています。この期間を目安に消毒液を使って掃除してもらうと良いと思います。

真菌に汚染されたタオルや衣類などの洗濯について研究された論文の要約については過去にお話ししました。
http://heartah.blog34.fc2.com/blog-entry-967.html


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<必ず治る病気です!>

猫の皮膚病が人にうつるものであると分かると、猫に対する熱が冷めてしまわれる飼い主さんがいらっしゃるかもしれません。でも皮膚糸状菌症は必ず治る病気ですし、毛の抜けたところも時間経過により、発毛がはじまします。根気よく治療を続けましょう。

毎日の処置を猫がいやがったり、投薬にも苦労するかもしれません。病院ではたまの再診のときにしか猫を診ることもなく、ただ「がんばって!」しか言わないみたいで心苦しいです。もし「ちょっと、お手上げ!疲れちゃったよー!」という状況であれば、そんな飼い主さんに替わって頑張ります。投げ出したくなる前に、ぶちまけてください。

 

今日のお話はここまででおしまいです。季節の変わり目で、すっかり春になったかと思いきや風の冷たい日もあります。ここ2週間くらい、お腹を壊して来院するわんこが多かったです。どうぞお気を付けてお過ごしください。

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テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

Q熱

 インフルエンザに感染し、そのだるさから抜けきるまで結構かかりました。そのとき、ふと頭をよぎったのは「Q熱」です。Q熱はコクシエラ・バーネッティーを原因とする細菌感染症。人の感染症では初期インフルエンザに似た症状(発熱し、上部気道炎、気管支炎などの呼吸器症状)を出しますが、急性期を過ごした後に、post Q fever fatigue syndorome QFS)と呼ばれる慢性疲労症候群をもたらすことがあります。

今日も公衆衛生的な話題になりますが、人獣共通感染症であるQ熱についてお話しします。

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<Q熱とその原因菌>

Q熱とは、なんて奇怪な病名なのでしょう。まずこの病気のいわれについてご紹介したいと思います。

1935年、オーストラリア、クィーンズランド州ブリスベンで原因不明の熱病の集団発生が報告されました。原因不明だったことから、Q熱(Query fever : Q fever)と名付けられました。「Query」は疑問の意味です。後日、原因病原体は分離されました。同じ年、アメリカ、モンタナ州ハミルトンでダニから新しい病原微生物が分離されました。そしてのちにこの二つは同じものであることが分かり、二人の研究者、Cox博士とBurnet博士の名前からCoxiella burnetti コクシエラ・バーネッティーと命名されました。

非常に小さい小型の細菌だったことから発見当時はリケッチアの仲間かと思われていましたが、現在はレジオネラ目の細菌に分類されています。

コクシエラ・バーネッティーは熱、消毒剤、乾燥に強く汚染された環境の中で長期間生存し、感染源になります。

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<感染源と感染経路>

コクシエラ・バーネッティーは自然界で多様な動物と環境に広く存在します。そして感染性がとても高くて、少量の細菌であっても感染するようです。人への感染は野鳥を含む野生動物、家畜とその製品、環境からと考えられていましたが、近年は犬や猫からの感染の報告が増えつつあるそうです。感染経路は菌を吸入すること(経気道感染)、菌に汚染されたものを口から入れてしまうこと(=意図せず食べてしまうことも含まれます:経口感染)、節足動物に咬まれて皮膚から菌が入ること(経皮感染)があります。

もう少し詳しい話になります。

最も多い感染経路は細菌を吸入する感染経路で、この場合感染源を特定することは困難だそうです。吸入感染は粉じん(飛び散っている細菌が風に運ばれてきたもの)がもとになるもの、野鳥由来、小型の野生動物由来があり、ここには伴侶動物由来も含まれてきます。コクシエラ・バーネッティーは妊娠動物の胎盤で増え、出産のときに排出されます。また乳汁や便や尿からも菌が排出されます。こうした感染動物の分泌物、排泄物から飛び散った細菌を人が吸入し、感染してしまうことになります。例えば牛などの家畜でいうと敷き藁などです。

過去の感染例から、汚染食品からの感染も強く疑われています。これは経口感染というルートです。海外(スペインやフランス)でのQ熱は肝炎型が多いそうです。牛、山羊、羊などの家畜と、彼らに由来する乳製品も(食品媒介性感染症になりますので)人への感染源として大変重要です。日本では「乳および乳製品の成分規格等に関する省令」にもとづいた加熱条件で生乳を殺菌したものが市場に出ていますが、加熱温度や加熱時間がこの菌をもとに作り出されたと知ると、コクシエラ・バーネッティーはそれほどに注意しなければならない細菌であることが分かると思います。

それから菌を保有しているマダニに咬まれて感染する経皮感染があります。日本に生息するいくつかのマダニ種からコクシエラ・バーネッティーは分離されています。やはりここでも伴侶動物のマダニ予防は重要であることが示唆されます。

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<日本での発生状況>

1980年代まで日本にはないといわれていました。しかしその後の調査で、感染を起こす菌が人(病気になった患者さん)、牛の生乳、流産を起こした牛の胎児、マダニ、犬、猫から分離されています。実際には報告されていない数が相当数あるのではないかと言われています。また近年の発生は増加傾向にあり伴侶動物との関係も心配されています。

過去、感染を起こしていたかもしれないことをあらわす「抗体」を持っているかどうかを調査した報告によると、獣医師で22%、獣医学生で35%、健康な成人で22%、呼吸器疾患を患った成人で15%、インフルエンザ様の病気になった小児で32%、定型的ではない肺炎になった小児で35%の抗体保有率であることがわかっています。

心配になる猫の方も調査をした報告がいくつかあります。それによると抗体を保有している猫の割合は、6%程度のものから14%、15%、16%、18%位で野良猫だけを対象にした調査では41%です。

抗体陽性率としては海外の調査と同程度ですが病気の発生は少ないというのが現状です。なぜ病気の発生が少ないのかは不明です。診断方法が普及していないから(発生しているけれど見つからない?)なのか、日本で分離された菌株の特殊性から(感染しても発症することが少ない?)なのか分かっていません。

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<人の症状・病気の型>

コクシエラ・バーネッティーに感染すると、半分の人は急性に発症し、半分の人は無症状にすごし、ごく一部の人は慢性経過をとるそうです。急性型は肺炎タイプが多く、発熱、頭痛、悪寒、倦怠感、筋肉痛など、インフルエンザや風邪に似た症状が出ます。

慢性型では心内膜炎が圧倒的に多く、あとは脈管炎、肝炎などです。症状は特異的ではないために診断に遅れが生じ、重症化する場合も多いそうです。

Post Q fever syndromeQFS)は慢性疲労症候群の症状を出します。QFSは慢性型Q熱の新しい病型で、QFSから慢性疲労症候群になった症例もあるそうです。急性のQ熱発症に続いて、慢性的な疲労、微熱、頭痛、関節痛などが数ヶ月続き、睡眠障害や集中力の欠如などの精神的な症状を伴って数年間継続します。「だるい」感じは本人にしか分からないため、客観的な判別ができません。周囲からの理解を得られず、「怠け者」や「ずる休み」といった評価を受け、「うつ病」や「適応障害」とみなされてしまうようです。こうして不登校になったり「詐欺」を疑われたりすることが過去に発生しました。

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<動物の症状>

動物では感染しても微熱が出るとか無症状のことが多く、こうしたことを「不顕性感染」と呼んでいます。(しかし尿中に菌は約70日間排泄されているということですから、知らないうちに感染してしまうのです。)

注目されている猫の感染例ですが、実験的に感染させた場合、発熱や食欲不振、元気がなくなるなどの症状が出るようです。また妊娠猫では流産が起こるようです。

 

<人の診断>

動物との接触頻度が高く、上記の症状が当てはまる方は、感染症の専門医を受診してください。細菌学的な検査や、抗体価の測定、遺伝子学的検査など診断に有効な検査があります。

 

<猫の診断>

私たちは動物では「Q熱」ではなく「コクシエラ症」として勉強してきました。病名が異なるだけで同じ細菌からの感染症です。一般的には猫で風邪様の症状が出たときでもコクシエラ症を疑うことはありません。Q熱の診断が可能な検査機関は限られているため、動物の診断は整っていないのが現状ですが、血清の抗体価測定や特異的遺伝子検査(血液その他の材料から検査をします)による診断が有用です。院内の検査では判断できません。

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<人の治療>

専門の機関で診断を受けたのち、治療も同じ病院で受けます。抗菌薬の内服のようですが、ことに慢性化した場合は長期間継続して抗菌薬療法を受けることが推奨されています。

 

<猫の治療>

猫の場合、確定診断もままならないのに、どのような治療ができるのか、というところではありますが、日常的に使用する抗菌薬がコクシエラ・バーネッティーに有効です。気道感染症のときによく処方しています。

 

<予防のこと>

積極的に予防する手立てはありません。ワクチンができると良いのですが、副作用の問題などがあり、実現されていません。(すでに免疫を持っている場合にワクチン接種すると重大な副作用が発生する危険があるそうです。)

動物を飼育するときの衛生管理は大切です。もし飼育動物が感染していても症状は見られないことを念頭に置いてください。また、もし飼育している、またはお外猫を面倒見ている方で、たまたま出産に立ち会うことになったとか、流産に気づいて動物病院へ連れて行くことになったときに、必ず手袋やマスクをして動物に触れることにし、悪露等の汚れた排泄物は丁寧に拭き取り、処分物はしっかり封をして捨てるようにしてください。(雑巾を洗ってまた使う、ということがないようにお願いします。)

またジビエはしっかり加工したものをいただくとか、生乳を食さないとか基本的なことも守ってください。

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<おわりに>

人と動物に共通する感染症は重要なのに注目されるのはたまのことです。感染症の先生方は動物に関連した感染症が徐々に増えてきていることを憂慮していることと思います。私たち獣医師にできることは、こうした感染症を忘れないでいること、また何かの機会に動物を飼育するご家族の方に知ってもらえるようにご紹介していくことだろうと思います。今日もどこかで感染症の調査や研究をしてくださっている先生方がおられることには、ほんと、感謝です。

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テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

エキノコックス・ふたたび

愛知県では2014年に阿久比町で捕獲された野犬からエキノコックス症を診断したという獣医師からの届け出を受け(当時も新聞紙上を賑わわせておりました)、その後も引き続き調査がされており、隣接する常滑市、半田市で採取された犬の糞便からも陽性例が検出されていました。

複数の感染例が確認されたことから多胞条虫が定着していると考えられています。

このたび遺伝子検査(PCR法)が導入され、精度の高い検査ができる体制になり、過去の検体を調べ直したところ、3検体でエキノコッカス陽性が判明しました。この調査は犬、キツネ、タヌキで実施されていますが、陽性反応を示したのはそれぞれ阿久比町、南知多町、知多市で捕獲された犬です。今回はこの件が報道されました。

 今週もまた、公衆衛生関連の、人と動物に共通した感染症である「エキノコックス症」についてお話することにします。

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<エキノコックスというのは?>

もともとは北海道のキタキツネにいる寄生虫です。犬やキツネが終宿主ですが、この寄生虫のライフサイクルの中で野ネズミが(豚などの家畜や人も!)中間宿主になります。

成虫の体長は2mmから5mmほどで、身体に数個の節(片節)があります。

中間宿主である人が感染した場合の病状は、終宿主である犬やキツネの病状よりもはるかに重症です。

 

<犬の感染>

自然界では寄生虫のいる野ネズミ(中間宿主)を食べて感染します。虫卵経由の感染はありません。

終宿主であるキツネや犬は、腸の中で虫が育ち、成虫になります。成虫が排泄する卵が糞便と一緒に出てきます。大量感染出ない限り、下痢などの症状は出ることがありません。

犬が感染した場合、犬が排泄する虫卵は人に感染を起こさせます。

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<人への感染>

エキノコックスに感染したキツネや犬の糞便中に虫の卵が排泄され、この虫卵に汚染された食物や水を偶発的に飲み込むと人が感染してしまいます。これには感染地域の野山に入り沢水を飲む、山菜採りを行い無意識に汚染された手指を口にしてしまう(野山から車に戻ってきて手を洗わないでおやつを食べる!)など考えられます。

人は中間宿主にあたり、犬やキツネのように腸内で成虫に育つことはありません。口から入った虫卵は腸の中でふ化して幼虫になり、その後肝臓や肺、脳などに移動して増殖します。袋状になって虫の集合体を形成する様なかたちです。すぐにそれによる症状を出すことはなく、数年から十数年くらい経過してから自覚症状が現れます。発見されるときは重篤な状態になっていることもあります。主な寄生先は肝臓なため、肝臓が腫れて大きくなるとか、お腹が痛むとか黄疸が出るなどの肝機能障害が現れます。診断には画像検査(超音波検査やCT検査など)と免疫血清学的な検査、手術で膨れた部位を切除した後に虫を検出することなどで、検査にしても治療にしてもたやすいことではありません。

犬に寄生した場合とは比べものにならないくらい重症ですし、まるきり別の病気といってもいいくらい性質が異なりますので、人に対しては十分な警戒と予防が大切です。

早期の診断は血清検査です。感染後すぐに抗体価が上がらないこともあるため数回の検査が必要になることもあります。保健所や医療機関でお尋ねください。

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<予防するには?>

野山に出かけたときに、

  沢水を飲まない。

  手をよく洗う。

  採取した山菜は生のまま食べない。

  靴についた泥はよく落とす。

などの対策が有効です。また

  犬を放し飼いにしない。

ことも大切です。

なお、北海道の人たちは決してキタキツネを触ることもないし、餌付けすることもありません。今、知多半島一帯も感染濃度は北海道ほどにはなっているとは思いませんが、一部地域(どこの当たりなのかはわかりません)では間違いなく感染元があると考えられます。野生動物(野犬も含めて、それが幼犬であったとしても)にむやみに触れないことは大切な予防法です。

ご旅行で北海道に出かけられた際は(ほんとにすぐ近くまでキタキツネが寄って来るし、かわいらしさのあまり触れたくなると思いますが、また子連れだとなおさらなのですが)、絶対に餌を与えないでください。

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<犬の駆虫について>

エキノコックスは条虫の仲間です。条虫に効く駆虫薬で退治することができます。23日もあれば完全な駆虫が完了します。毎月のフィラリア予防薬の中に条虫の駆除薬が含まれているものもあります。予防的な投与です。こうすることによって、飼い主への感染の危険性を排除することができるというわけです。

該当する野山に入っていったとか野ネズミを咥えていたなどが確認されたときも予防的な駆除薬の投与ができます。野ネズミを食べてから便の中に虫卵が排泄されるまでは26日以上かかるとされていますから、心配な出来事があってから20日までの間に薬を投与すれば、虫卵は全く排泄されません。

もし、エキノコックスに感染していた場合は、駆虫後の糞便中に虫卵が排泄されるため、糞便の適切な処理が必要です。

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<排泄された虫卵の生存>

感染源となる虫卵が糞便中に排泄されてからどのくらい生きているのでしょうか。エキノコックスの虫卵はさまざまな化学物質に対して抵抗性(消毒をしてもなかなか死なない)がありますが、高温には弱いそうです。北海道立衛生研究所によると、705分、100では1分以内に死滅するそうです。普通20℃25日、10℃90日、4℃128日から256日生存し、最も長い生存期間の記録は室温で730日間、実験室内の水中(4℃)では16ヶ月しても生存しているそうです。北の地で長く生きて行かれるのはそうした特性もあるのでしょうね。

 

<疑わしい犬の排便後消毒>

そのようなわけで、虫卵は熱に弱いので、次の感染に繋げないための犬の糞便処理は、焼却するか、または熱湯で消毒するのが効果的です。処理する糞便を扱うときも手袋を着用、マスクもしてください。

次亜塩素酸ナトリウムでは原液から1/2希釈の高濃度液で卵を殺す効果があるそうです。こちらはちょっと実現が難しい気もします。

野山から帰宅した後の(もしかしたらエキノコックスの虫卵が付着しているかもしれない)泥のついた靴や車のフットシートは熱湯をかけるのが良さそうです。作業していて衣類に付着したかもしれない、というときも熱湯にしばらく浸漬させてから洗濯するのが良さそうです。



*「流行地の飼い主のためのQ&A」を待合室に掲示しておきます。 

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テーマ : 動物病院
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コリネバクテリウム・ウルセランス菌の感染

ちょっと前になりますが、お電話で猫のワクチンに関するお問い合わせがありました。

赤ちゃん検診で保健師さんから「飼育している猫にも3種混合ワクチンを接種して、赤ちゃんに病気がうつらないようにするように」言われたとのこと。「猫に3種混合ワクチンをしておかないと赤ちゃんを病気から守ることができないのか」、というご心配でした。 

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<その答えは?>

結論から言います。猫の3種混合ワクチンで防ぐことのできる病気は、ワクチン接種をしなかったからといって猫から赤ちゃんに感染する心配はありません。(が、猫を守るために猫にワクチン接種はしてください!)

さて、人には3種混合ワクチンがあります。猫にも3種混合ワクチンがあります。人と猫、名前は同じ3種混合ワクチンですが、予防できる病気の内容は違います。人の3種混合ワクチンは「ジフテリア、百日咳、破傷風」のワクチン。猫のは「汎白血球減少症、ウィルス性鼻気管炎、カリシウィルス感染症」の3つを予防するワクチンです。きっと保健師さんは猫の3種混合ワクチンも同じ名前なので、同じ病気を予防するものと思われたのでしょう。

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<コリネバクテリウム・ウルセランス>

2016年のことですが、コリネバクテリウム・ウルセランス菌(以下、ウルセランス菌と省略してお話しします)の感染により、お亡くなりになった方がいらっしゃいました。その調査が進められ、世話をしていた野良猫からの感染が疑われました。(猫から同菌が分離されています。)これが本年1月に大きなニュースとして取り上げられていました。ウルセランス菌はジフテリア菌と同じ仲間です。きっと保健師さんはこのウルセランス菌による感染はジフテリアを含むワクチン接種で猫を守ることができるのだと思われたのでしょう。小児の感染事例も2014年に報告がありますから。(国内初)

ウルセランス菌はジフテリア菌と同じ仲間なのです。そして同じように呼吸器系の症状を出します。ウルセランス菌に感染すると気道粘膜に「偽膜」を作ってしまい(どろどろしたタンのつながったような厚い膜が気道表面を覆ってしまうような感じです。しかも剥がそうとすると粘膜は出血してしまいます。)、それによって呼吸ができなくなってしまうのです。ジフテリア菌とウルセランス菌は同族ではあるものの別の菌なのですが、こうした現象を起こしてしまうのでジフテリアと同じように怖い菌です。ジフテリア菌はジフテリア毒素を出し、心筋の麻痺や呼吸困難を起こすこと、感染性が強いことから、感染症としてのランクが高い「2類感染症」に分類されています。日本と同じように発生のある諸外国、例えば英国やフランスではウルセランス菌もジフテリアと同じ扱いとしているようです。そのくらいウルセランス菌による感染症は怖い病気です。(しかしとても珍しいことのようです。)

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<動物から感染する?>

実は家畜ではウルセランス菌は常在菌の一つで、牛の乳房炎の原因になることがあります。(そのため生乳を飲んだ人が牛の乳から感染を起こすことがあります。)海外においては牛のほか、犬や猫などの動物が人の感染に関係することが確認されています。日本でも2008年の報告ですが、大阪の調査で、犬からウルセランスが分離されています。近年では家畜よりも犬や猫などの動物からの感染の報告が増えているようです。国内で報告のあった(公表されている)事例(2001年から201711月までのもの)でも、そのほとんどが犬や猫の飼育をしていたことが分かりました。

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<感染した人の症状は?>

はじめは「風邪を引いたのかな?」という症状から、のちに「のどが痛い」、「咳が出る」になり、「呼吸が苦しい」へと進むようです。
バクテリオファージ、ちょっと聞き慣れない名前ですが、細菌に寄生するウィルスです。このバクテリオファージがウルセランス菌に感染を起こすと、ジフテリアによく似た毒素を作り出すウルセランス菌になります。ジフテリア様毒素を産生するウルセランス菌に感染するとジフテリアそっくりの症状を出すそうです。

 

<犬や猫の症状は?>

感染動物の症状は無症状のほか、人と同じ、風邪に似た呼吸器症状をとるそうです。くしゃみや咳、鼻水、目やに、元気がないなどです。皮膚や粘膜に異常が見られることもあるそうです。

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<うちの猫の診断は?検査は?>

このような症状を出した猫が来院されたとき、私たちはウルセランス菌の感染を疑うことはありません。ワクチン歴や外出歴、そして臨床症状などから総合的に判断して、ほとんどは「ウィルス性鼻気管炎(ヘルペスウィルスの感染)やカリシウィルス感染症」を疑うでしょう。鼻水から菌を分離しようなどと思ったりもしません。もし長引く鼻水があっても疑うのは鼻腔内の腫瘍性疾患で、だから材料を採取することはしますが、細菌の検査ではなく細胞の検査をします。院内で採取物の一部を顕微鏡で観察し、詳しくは病理の先生に細胞を見て貰うのです。ここでは細胞を観察することに注目しますし、細菌は細胞に比べて非常に小さいので細菌が多量にあれば「おかしいな」と思うかもしれませんが、非常に強くウルセランス菌を疑うことはありません。まれに酵母様真菌による感染(クリプトコッカス症)を疑って採取物を院内で染色して観察することがあるかもしれませんが、これもやはり大きさに大きな違いがあります。

一般的に、猫の上部気道炎の症状だけでウルセランス菌を疑うことはないので、この菌を検出するための検査に走ることはないのです。もしご家族の方がウルセランス菌に感染した、もしくは疑いが濃いとき、飼育する動物の検査を行うことになると思います。この場合、材料を採取するのは「動物病院の獣医さん」ではなくて、公的機関の獣医師かもしれません。採取した材料を細菌培養に提出し、目的菌をウルセランス菌に絞って、この菌が発育できる特殊な培地(菌を増やすための環境)を用いて培養を行います。これはジフテリア菌も育つ培地ですが、培養して同じような様子が出るので鑑別は別の方法になります。

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<では悪化してしまうの?>

ウルセランス菌は抗菌薬による治療が可能です。私たちはふつう、呼吸器系の感染症があると「マクロライド系の抗菌薬」を主に使うのですが、これがウルセランス菌にも有効です。ウルセランス菌を対象として研究していらっしゃる先生には、発見の機会を提供することができず申し訳ないのですが、「もし、猫の病気が疑った病気ではなくウルセランス菌によるものだったとしても、他疾患のために利用した薬がウルセランス菌も殺している」状況です。

 

<猫からの感染を防ぐことはできる?>

屋内の猫に上部気道炎を疑う症状が出た場合は、他の猫への感染を防ぐために隔離をお願いします。(菌の蔓延を防ぐこともできます。)また、病気が早く治るように暖かい環境で過ごしやすくしてやりましょう。一般の病気では猫から人へ感染を起こすことはありませんが、投薬や排泄物の処理の際にはマスクと手袋をして貰うと安心です。外で過ごしている地域猫(野良猫)でこのような症状をしているのを多く見受けられるかもしれません。もし「外猫がひもじくてかわいそうだ」と思って餌やりをすることがあるとしたら、その猫を世話するときには必ず手袋やマスクを着用し、手袋を外した後もしっかり手洗いしてください。
日常生活を送る中で、一緒に暮らす動物に必要以上に神経質になることはありませんが、動物と口移しでものを食べさせるなどの密接な関わりは避け、ふれあった後は手洗いすることを習慣にしてください。日頃のふつうの衛生管理がそのまま感染リスクを軽くすることになります。

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<人へのウルセランス菌予防>

ジフテリアトキソイドを含むワクチンが有効だそうです。詳しくはかかりつけ医師や感染症に詳しい医師にご相談ください。

 

今日は前回に引き続き、公衆衛生としての人獣共通感染症、ウルセランス菌の感染症についてお話ししました。

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テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

トキソプラズマのお話し

 先日、新しく猫を飼育始めた患者さんに「トキソプラズマ症」が心配であるとのご相談をお受けしました。トキソプラズマ症はこれからお母さんになろうという年齢の方には特に関心の高い人獣共通伝染病です。今日は「トキソプラズマ症」についてお話しします。

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感染性を持つ成熟オーシストを
経口摂取すると感染します。
そのほかシストやタキゾイトのかたちの
ものからも感染します。





<トキソプラズマは寄生虫>

トキソプラズマは猫を終宿主とする寄生虫で、犬や鳥に寄生するコクシジウムと同じ原虫の仲間です。おなかの寄生虫としてよく知られている「回虫」や「鉤虫」は線虫類で、腸管のなか(食べ物の通り道である管腔の中)にいますが、原虫は腸粘膜の細胞の中にいます。腸管をちくわに例えると、線虫類はちくわの輪っかの真ん中、チーズやキュウリを通す部分に住んでいます。原虫はちくわがチーズに接触する部分の、ちくわの表面だけどちくわそのものの中に住んでいます。線虫はミミズのようなかたちで目でも確認できますが、原虫は顕微鏡でなければ確認することはできません。細胞の中に入ってしまうくらいですので、すごく小さいです。そして、成長の過程でかたちが変わります。うんちの中に排泄されるときは「オーシスト」と呼ばれる小さな楕円型をしています。10×12㎛の大きさです。体内に入って急速増殖するときは「タキゾイト」と呼ばれるまが玉みたいなかたちです。2×6㎛の大きさです。増殖を中止し、ひとまず落ち着いてなりを潜めるときは「シスト」と呼ばれ、比較的大きな球の中に沢山の分子を蓄えたくす玉のようなかたちです。「オーシスト」「タキゾイト」「シスト」はそれぞれ増殖段階のステージ名になります。

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猫の体内では腸管だけでなく
他の臓器にも分布していきます。
 

<猫のトキソプラズマ症>

猫にトキソプラズマが感染していると、どのような症状が現れるのでしょうか。

ほぼ、無症状のことが多いです。虫自体は非常に小さく、また増殖する場所がさまざまな場所であるため、寄生場所により、寄生された猫の様子も異なります。そして寄生場所がいろいろあるので、猫がトキソプラズマに感染しているかどうかの検査方法は糞便検査だけでなく、血液検査や組織検査に頼ることになります。

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豚肉にはトキソプラズマ感染性のものがあります。
見た目には分かりません。

 

<トキソプラズマはどこから感染するのか>

猫はトキソプラズマの「オーシスト」か「シスト」を含んだネズミ(の生肉)を食べるとトキソプラズマに感染します。傷や粘膜から「タキゾイト」が侵入してくることもあります。母さん猫から胎盤を介して感染することもあります。

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猫の腸内、腸絨毛の上皮細胞内で増えていきます。
細胞が破れ、糞便中に出てきます。




<猫のトキソプラズマ症いろいろなパターン>

①腸管

経口感染したトキソプラズマは猫の腸粘膜の細胞の中で増殖します。一度に大量感染すると、粘膜細胞も一時に壊れるため、下痢などの症状は重篤になります。でも子猫や猫免疫不全ウィルスに感染した猫以外は、無症状であることが多いです。

②全身

状態の悪化した猫では、発熱したり、リンパ節が腫れるなどの全身症状を出すこともあります。妊娠猫では流産をおこすこともあります。

③中枢神経(脳)

進行性の麻痺をおこすことがあります。

④眼

ぶどう膜炎の症状(眼が赤い、角膜が濁って白いなど)をおこします。繰り返されることもあります。

 

<猫のトキソプラズマ症の検査>

猫がトキソプラズマに感染しているかどうかは糞便検査と血液検査で調べます。

①糞便検査

トキソプラズマが沢山増えると、腸粘膜細胞を破ってオーシストが出てきます。このときは糞便検査で「オーシスト」を確認することができます。とても小さいため、数が少ない場合は見逃してしまうこともあります。また、他のコクシジウム類との鑑別はできません。

トキソプラズマが腸粘膜細胞を破っていないときは糞便検査でオーシストを見つけ出すことは出来ません。外部委託の糞便を利用した検査は、特異的な遺伝子検査によるものです。オーシストを見つけ出せなかった場合もトキソプラズマを見つけ出します。

②血液検査

血液検査も外部委託検査です。感染が認められた猫にはトキソプラズマ抗体ができています。血清中のトキソプラズマ抗体の量を調べます。

このほか

③組織検査

④マウスに接種する検査

がありますが、これらは実際的な臨床検査ではありません。

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始めて感染するのが妊娠時だと
胎盤を介して胎児に影響します。




<抗体検査についてもうちょっと>

ヒトの妊娠時のトキソプラズマ検査は抗体価と同時に特異的IgMIgGを測定すると、感染間もない感染なのか、過去の感染なのかを鑑別することができるそうです。(抗体価は感染があったかどうかをみるものですので、あるから心配、ないなら安心ということではありません。詳しい解釈については産科の先生にお尋ねください。)

猫の場合は、この特異的検査はできません。今の感染なのか、過去の感染なのかを判断するのは少し時間を空けてから(たいていは2週間から3週間)もう1回測定して、前回と今回の2つの価を比較する方法で調べていきます。抗体価に変化がなければ過去の感染で、抗体価が急上昇しているようなら今回の感染、今が急性感染期であることになります。

 

<ヒトのトキソプラズマ感染経路>

ヒトも経口感染でトキソプラズマに感染します。

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猫の糞便中に排泄されたオーシストは
成熟すると感染性となり、
土や砂の中でしばらく生きています。



①猫の糞から

猫の糞に混じっていた成熟オーシストを口にしてしまうと感染します。でも猫の糞を口にするというのはどのような状況でしょうか。ヒトは猫のウンチを食べることはありません。しかし家猫が感染していたとき、おうちの中の猫トイレで排泄した猫の便を片付けるときに、もしかしたら手に付着してしまうのかもしれません。昔から「危険ですよ」と言われてきたのは、公園の砂場です。公園の砂場に外猫が排泄した便があると、子どもが砂場遊びをするときに一緒に遊んでいたお母さんの手にトキソプラズマの成熟オーシストが付着することがあります。公園で砂場遊びをする機会は減っているかもしれませんが、猫は良く耕されてふわふわになっている土が大好きです。畑仕事をされるアグリお母さん、家庭菜園でも、ガーデニングでも条件は同じことになります。

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生肉を下処理するとき、
まな板や包丁にシストが付着します。
調理器具の洗浄が不完全だと感染します。




②不十分な加熱処理の豚肉から

「牛肉はレアで食べても良いが、豚肉はしっかり加熱調理して食べましょう」というのを聞いたことがあるでしょうか。豚はトキソプラズマの中間宿主になっていて(ヒトも中間宿主です)、お肉の間にトキソプラズマのシストがあるかもしれないからです。不十分な加熱による経口摂取は、獣肉加工品であるソーセージ(生のもの)の場合も関係してきますが、まな板の上で生の豚肉を下処理した後、まな板や包丁を十分に洗わず、生で食べる野菜を処理したときにも感染の心配が出てきます。むしろこのパターンが一番多いのではないかと言われてきました。今、人気のジビエ料理ですが、野生動物(シカなど)も感染の危険はあります。

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加熱不十分な豚肉とその加工品から
感染することがあります。







 <ヒトのトキソプラズマ感染>

ヒトがトキソプラズマに感染した場合、終宿主である猫の感染とは少し違ってきます。腸の血管内に侵入したトキソプラズマは増殖体であるタキゾイトのかたちで全身に運ばれ、あらゆる組織に入り込み、増殖していきます。特に薬や抗体が届きにくい場所である脳、筋肉、眼などでは、シストを形成して生き残ります。妊娠中であると、胎児にもタキゾイトは侵入します。流産を起こしたり、胎児の発育不全が起こります。

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妊婦さんへの感染の主だった経路は3つで
猫だけが犯人ではありません。
注意すれば感染を防ぐことが可能です。


 

<トキソプラズマからの感染を防ぐ>

ヒトの感染を防ぎましょうという内容です。

①飼い猫をクリーンに

家猫がネズミを捕食するのはトキソプラズマ感染の危険を持ちます。豚肉の入っていたトレーをいたずらしたネズミは豚肉からトキソプラズマ感染を受けているかもしれません。するとネズミの身体にトキソプラズマのシストがあるわけです。猫の捕食行動は止めさせることはできないかもしれませんが、もし見つけることがあれば摂食は止めさせてください。

②家猫からの感染防御

糞便中に排泄されるオーシストが感染能力を持つ「成熟オーシスト」になるまでには1~2日かかります。猫の排泄した便は速やかに、そしてビニール袋などを使ってお掃除してください。

③野猫からの感染防御

屋外で野猫が排泄をするかもしれない砂場や畑の土はビニールやゴム製の手袋をつけて扱うようにします。

④食肉からの感染防御

豚肉は十分に加熱調理するようにしてください。また調理器具の取り扱いにも注意してください。(平成17年から22年の出荷豚のうち抗体陽性であるものは平均して3.9%ほどあるそうです。)

 

<おわりに>

今日は人と動物の共通感染症であるトキソプラズマについてお話ししました。

飼い猫からの感染に不安があっては、猫さんを十分に愛することはできません。不安があるときは検査にお越しください。

 

猫を飼うと、「癒やされるぅ~」と思います。
猫がまだ子猫で、自由奔放に遊んでいると、それを見ているだけで私たちは癒やされ、元気になれます。
それから少し猫が年を重ねていくと、なかなか人の様子を読むのがうまくなります。「今日は疲れているみたいだな」、とか「やばい。怒ってるぞ」、というのが分かるようになるみたいです。知らんぷりしているようで、実はなかなかいいパートナーシップを取ってくれています。ありがたいです。こちらのメンタルな部分も含めて、理解してくれてそのような行動に出てくれるのです。そしてこの頃になると、私たちは猫に頼って、猫に甘えて生きていくようになってしまっているかもしれません。猫を相手にした語りかけが増えていきます。

もう少しすると、これもあっという間で早いのですが、自分の年齢を超えてしまっています。「あれ?老けた?」と感じた頃から、「猫に語りかける」のを卒業して「猫の声を聞く」ようにしてもらえるとうれしいです。そこからは今まで以上に「猫を甘やかしてあげる」ようになってほしいです。

それから、「猫の声を聞いて欲しい」ので、あなたは元気でいてください。猫が高齢になってからはなおさらです。猫を飼育するやさしいあなたにはぜひ、ぜひ、いつも元気でいてもらいたいです。
そんなわけで、暑い日が続いておりますが、ご自愛ください。

テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

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Author:ハート動物病院
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〒445-0062
愛知県西尾市丁田町杢左51-3
TEL/0563-57-4111
オフィシャルサイト:http://www.heart-ah.com/

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