インフルエンザ

謹んで新春のおよろこびを申し上げます。

旧年中は格別のご厚情にあずかり

ありがとうございました。

輝かしい年頭に当たりご家族みなさまの

ご健康とご多幸をお祈り申し上げます。

本年もスタッフ一同頑張ってまいります。

どうぞよろしくお願いいたします。

平成29年 元旦

ハート動物病院
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で、酉年ですので、鳥の話題を。


うちの犬やうちの猫とはほど遠いように見えて実はそうでもないインフルエンザについてお話しします。

(カテゴリーを人獣共通伝染病にしましたけど、共通になるかもの未来形です)

 

<鳥インフルエンザはなぜ怖い?>

インフルエンザはインフルエンザウィルスに感染して発症する感染症です。日本では鳥に発症した鳥インフルエンザから感染した人は確認されていませんが、海外では、感染した鳥の排泄物や死体、臓器などとの濃厚な接触により感染した人もいます。感染した家禽の処理をしてくださる方々がきちんとした防護服で臨んでいますね。これは鳥から鳥への感染防御だけではありません。人への感染防御でもあります。

数年前、新型インフルエンザが流行しました。これは豚インフルエンザウィルスの変異から「人から人へ」の感染をおこす新型インフルエンザになりました。鳥インフルエンザが人に感染をおこすまでのルートには、ウィルスの突然変異がいくつか重なる必要がありますが、鳥インフルエンザはこれまでのインフルエンザとはタイプが異なるので、もし変異して前回のような新型インフルエンザになると、免疫を持つ人がいないため大流行する(パンデミックがおこる)ことが予想されます。とても怖いことなのです。

鳥インフルエンザと人
鳥から人への感染が成立するためにはウィルス変異が考えられています。

 

<インフルエンザウィルス>

インフルエンザウィルスはA型、B型、C型があります。その中でA型は宿主特異性(特定の動物にだけ感染する性質)が低く、多くの動物に感染し、呼吸器症状を引き起こします。

もともとはカモなどの水禽類が宿主で、そこから広まったと考えられています。

このA型インフルエンザウィルスはウィルス表面の糖タンパク(赤血球凝集素:Hとノイラミニダーゼ:N)の特徴からH(数字)N(数字)という風に表示されます。これがHNによるA型インフエルエンザウィルスの細分類になります。赤血球凝集素(H)は16種類、ノイラミニダーゼ(N)は9種類あるので、16×9通りの亜型が存在します。

a型インフルエンザの宿主
多くの哺乳動物に感染があります。

 

<犬にインフルエンザはない?>

実は犬にもインフルエンザウィルスの感染報告があります。初めは2004年アメリカ、フロリダ州の発生でした。ドッグレースのためのグレイハウンド22頭が感染し8頭が急死しました。身体からウィルスを分離するとすべてが馬インフルエンザウィルスに酷似したものだとわかりました。

日本のJRAの先生がこのウィルス株を使って研究した結果、馬から犬、犬から犬への感染が可能であることが分かりました。

これ以降、アメリカの各地のレース場で犬のインフルエンザが報告されています。突然の発熱、咳、呼吸が速くなる、出血性の鼻汁が出るなどし、死亡する犬も多数出ました。

そして今年7月にはCNNが取り上げるほど、犬インフルエンザは全米で大流行になっています。

http://www.cnn.co.jp/usa/35067035.html

すでに犬インフルエンザウィルス(CIV)として確立されているようです。

https://www.idexx.com/files/small-animal-health/products-and-services/reference-laboratories/idexx-introduces-h3n2-influenza-realpcr-test.pdf

かつてパルボウィルスが入ってきたときのように、ワクチンがない状況下で日本に犬インフルエンザウィルスが入ってくると怖いなと思います。


 <犬インフルエンザはどんな病気?>

軽症では軽い咳が10日から30日くらい続くくらいです。おそらく「ケンネルコフ」と間違えられて診断されるかもしれません。重症だと40℃を超える高熱、呼吸がつらそうなど肺炎の症状が出て、死亡率も5~8%くらいあります。人のインフルエンザに似ていますね。

診断については、検査機関でウィルス検査によりH3N8H1N1H3N2の型の確定診断が出来ます。この検査ではそのほかのボルデテラやマイコプラズマといった細菌類、パラインフルエンザウィルス、犬肺炎ウィルスなどのウィルスも同時に検査が可能です。(日本の検査機関でできます。)

治療は多くのウィルス感染症と同じように栄養療法や補液、混合感染に対する抗菌薬療法が中心になります。

予防できるワクチンはありません。

 犬 発熱

<猫のインフルエンザは?>

猫のインフルエンザというと、H5N1ウィルスによる鳥インフルエンザが流行しているタイで猫科の大型動物であるトラの感染が有名です。2003年タイの動物園でトラとヒョウが、翌2004年にはトラの動物園で高病原性鳥インフルエンザウィルスの感染が計147頭のトラで認められました。鳥からトラのほかトラからトラへの感染もあったようです。また同じ年、動物園動物ではない2歳の飼い猫がH5N1ウィルスに感染して死亡しています。これらの事例では亡くなった鳥類の死骸を食べていたということです。猫でみられた状態は高熱と沈うつ、あえぎ呼吸にけいれんと運動失調で、発症からわずか2日で死に至りました。

最近(201612月)、米国の検査機関であるIDEXXは、ニューヨークの猫のシェルターで鳥インフルエンザウィルスの感染がみられたと報告しています。

http://blog.idexx.com/pulse/bird-flu-cats-nyc

ニューヨーク市保健局の先生のお話しでは、まれなタイプの鶏インフルエンザで、ねこから人への感染が成立する最初の例になるのではないかということです。

http://www.techtimes.com/articles/189525/20161226/new-york-veterinarian-catches-rare-bird-flu-from-sick-cat.htm


 総じて、H5N1鳥インフルエンザウィルスは猫に感染しやすいのではないか(感受性が高いという表現をしています)と考えられているようです

猫 高熱



日本での発症は?>

犬のインフルエンザ、猫のインフルエンザ、ともにありません。

 

<鳥インフルエンザからの予防策は?>

日本の家畜や家禽は一般の市民生活とは離れて飼育されているため、密な接触になることはまずないでしょう。屋内外を自由に遊べる猫がたまたま鳥インフルエンザの発生地域に暮らしていたとして、野猫は野鳥との接触があるかもしれませんが、家猫が過度な接触をするというのは考えにくいと思います。しかしお住まいの地域にそのような事例が出ているのであれば、しばらく屋外に出すことは控えてください。また養鶏場で自由に鶏舎に出入り出来るような環境で飼育されている猫では、鶏舎へ立ち入れないようにしてください。

タイの例では(ドイツのルーゲン島の場合もそうでしたが)、感染した鳥を猫が食べて感染しています。しかし一般には鳥インフルエンザは感染した鶏肉や鶏卵を食べて感染することはありません。濃厚感染地域でみられた感染は、食べた肉から消化管を経由して感染したのではなく、食べる時に気道を経由してウィルスが体内に入ったのではないかと言われています。

このほか、ご自身の身体を守るため、野外で亡くなっている鳥類を発見した場合はむやみに素手で触らないようにしてください。野鳥はさまざまな原因で死亡します。すぐに鳥インフルエンザを疑う必要はありません。
また飼い鳥が亡くなったとしても、鳥インフルエンザを強く疑う必要はありません。
ご自身への感染も感染した鳥との密接な接触がない限り普通には起こりません。
原因が分からず、多頭飼育している鳥が次々に亡くなっていく場合については下記の場所に連絡してください。

西三河県民事務所 環境保全課 0564-23-1211
(こちらは、西尾市のほか岡崎市・碧南市・刈谷市・安城市・知立市・高浜市・幸田町を担当する係です)


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<さいごに>

人の季節性インフルエンザから犬への感染が疑われる、という報告がありました。これまで「人の風邪は犬にはうつらないです」とお伝えしてきていましたので、一応、そのような例があったということをお知らせしておきます。そしてこれからは「ご家族の方が風邪を引いたら、わんことは距離を置いてください」というお話しをすることになります。

 

    
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人と動物の共通感染症

 動物と人との距離が縮まってきています。「人と動物の共通感染症」のうち、伴侶動物に関するものをご紹介します。

「人と動物の共通感染症」については私たち人を守るために、伴侶動物を飼育する方に知っておいて欲しい病気です。濃厚な接触はときに人を危険に陥れます。

特に今日ご紹介する病気3つは人が動物に噛まれたり、爪で引っ掻かれたり、密な接触をしたりして感染する病気です。

 

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<猫ひっかき病>

猫ひっかき病の病原体は「Bartonella henselae : バルトネラヘンセラ」という細菌です。猫の赤血球のなかに存在している菌です。

ノミが媒介して感染する病気です。名前は「ひっかき病」となっていますが、猫にひっかかれなくても接触するだけでも感染しますし、猫に噛まれることもそうですが、猫ノミに噛まれて感染することもあります。猫にいるノミはこの病気に関してたいへん重要な位置にいます。この夏、そして今でも、猫ノミが住居の中で大繁殖をおこし、人にも被害があったご家庭が数件ありました。ぜひ知っていただいてしっかり予防していただきたいと思います。

 

猫から人への感染は次のように起こります。

①感染猫の血を吸ったノミは体内に菌を持ち、次の猫に移動します。

②ノミ糞の中に前の猫から感染した菌が入っています。猫は身繕いしながら菌を口にします。次の猫への感染の成立です。

③この猫が人に接触します。人の身体を舐めたりひっかいたりしたときに菌は猫から人に感染します。

④この猫に付いていた猫ノミが人の足を刺し、そこから細菌が侵入します。これでも人は感染します。

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噛まれて⇒感染

という単純な感染経路に比べると、途中に媒介者のある感染は少しだけ複雑になります。

そこで、へたくそですが、図にしました。

 ヘモバルトネラ

感染した猫は無症状のまま過ごします。

それに比べ、人の方は症状を発現します。免疫学的に健康な人が感染した場合、初めは受けた傷のところが小さく赤く腫れる程度ですが、1~2週間もするとリンパ節が腫れてきます。手や腕が感染場所であった場合(ここが一番多いのですが)、脇の下のリンパ節がげんこつのように腫れます。そのほか発熱し、身体がだるくなったりもします。免疫の弱い人が感染すると細菌性血管腫が現れます。皮膚がんのようなかんじです。

感染猫を特定するのは難しいです。感染猫の血中に菌は存在(1年以上続きます)しますが、猫に症状が現れないことに加え、菌そのものが血液中に出現したり消えたりを繰り返すから採血のタイミングもあるのです。さらに、検査そのものにも、培養させるときに赤血球を溶血させる必要があるとか、培養に時間がかかる(培地では発育が遅い)とか、一般の細菌を検出するのに比べ困難な点が多いからです。

 

<ヘモバルトネラの予防>

飼い猫に寄生するノミをしっかり予防し、運悪くノミにたかってしまった場合でも、速やかに駆除薬を使い、ノミを落としましょう。ノミの成虫はたった5%にすぎず、のこり95%は卵や幼虫、さなぎの形で飼育環境に存在すると言われています。大量に感染してしまった場合は、屋内環境も合わせて掃除したり殺虫したりしないといけません。夏ひどい感染にあった場合は、冬期のオフシーズン中も継続して予防薬を投与することをおすすめします。

のみ取り櫛ですくのが楽しいなんて言ってないでくださいね。

それからノミに感染しているかもしれない地域猫に接触し、うっかり感染しないよう注意してください。

 

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<パスツレラ症>

パスツレラは「Pasteurella multocida : パスツレラ・ムルトシダ」という細菌です。猫の100%近く、犬では15~75%の割合で口腔内にこの菌を持っています。常在菌です。

猫や犬に噛まれて感染することが最も多いわけですが、そのほかにも非外傷性感染というのがあり、犬猫の口腔内の細菌が人の気道に入ってしまい、気管支炎や肺炎などを発症することがあります。

人は噛まれてすぐに痛みと腫れのある炎症を起こします。発熱することもあります。

 

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<カプノサイトファーガ感染症>

カプノサイトファーガは「Capnocytophaga canimorsus : カプノサイトファーガ・カニモルサス」という細菌です。これも犬猫の口腔内に常在している菌です。犬で74%、猫で57%という保菌率です。

犬や猫に噛まれたり、引っかかれたり、濃厚に接触することで感染します。

犬や猫は無症状ですが、人は感染すると発熱し、だるかったりおなかが痛くなったり、吐き気が出たりします。菌が全身に回ることもあります。だるい、熱っぽい、節々が痛い、頭痛がする、発熱が繰り返されるなどは風邪のせいかしらとも思われる症状になるわけですが、有効な抗菌薬と効果の無い抗菌薬があるため、「ひょっとして!」と動物との接触歴が頭をかすめた場合は、病院でもその旨伝え、治療してもらってください。

 

<パスツレラやカプノサイトファーガの予防>

噛まれたり引っかかれたりして感染する病気の場合、動物との接触に注意が必要です。

噛まれないようにするのが最も賢明なのですが、運悪く「噛まれた!」という場合は、以前も書きましたが、
http://heartah.blog34.fc2.com/blog-entry-772.html
何があってもすぐに治療に走ってください。有効な抗菌薬が存在します。


それから

「動物とキスをするのはいけない、

 顔を舐めさせてはいけない、

 口移しで食べ物を与えてはいけない、

 同じ箸を使って食べ物を与えてはいけない」

など、昔から言われていることですが、おばあちゃんの教えは間違ったことを言っていません。こうした濃厚感染は犬猫の口腔内常在細菌からの感染をおこしやすくします。おばあちゃんの教えの通り、素直に従いましょう。

そして動物を触ったらしっかり手洗いしてください。

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<このほかにも>

人と動物に共通する感染症はあります。有名なところでは、

<ブルセラ症>
流産などを起こす病気です。

<エキノコックス症>
おなかの虫由来の病気です。

<皮膚真菌症>
人と動物に共通の皮膚病もあります。

機会があったら次の折りにお話しすることにします。

今日のお話はここまでです。

 

寒くなると、動物との密度が深まるように思います。年末年始のお休みで遠く離れていたご家族が戻ってきて、動物も大喜びかもしれません。水を差すようで申し訳ありませんが、怖い病気もあります。節度ある飼育をお願いします。

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マダニ予防は続けて

今月3日、日本紅斑熱についての記事がありました。さほど大々的に取り上げられたものではありませんが、人と動物に共通する感染症でしたのでご紹介します。ダニ媒介性疾患については昨年SFTS(重症熱性血小板減少症)についてお話ししましたが、今回のニュースでとりあげられた日本紅斑熱については初めてのお話になります。

 

<こちらのニュースです>

「 マダニにかまれて感染する「日本紅斑熱」を発症した広島県の男性が死亡しました。今年に入って全国で4人目の死者です。
 広島県の発表によりますと、死亡したのは尾道市内の80代の男性です。
 「日本紅斑熱」はマダニにかまれることによって感染する病気で、頭痛や悪寒を伴って急激に高熱が出た後、やや遅れて全身に発疹が出ます。
 男性は8月末ごろ畑付近で感染したと推定され、1日に救急搬送され、2日に死亡しました。
 これで、今年に入って全国で105人の感染と、4人の死亡が確認されたことになります。
 マダニは秋にかけて活動が盛んで、かまれないよう皮膚の露出の少ない格好をするなどの注意が必要です。」

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マダニは秋にも活発に活動しています。
 

 

<日本紅斑熱も怖い病気です>

さて、「日本紅斑熱」はマダニ媒介性疾患で、病原体「リケッチア・ジャポニカ」を保有するマダニに咬まれて感染する人の病気です。リケッチアによる感染症は「つつがむし症」と同じです。頭痛、発熱、倦怠感、発疹などが主症状で表れ、ダニの刺咬後に発症します。

本年2月に岡山県で平成26年度日本獣医師会獣医学術学会年次大会が開催されました。この大会の市民公開シンポジウムで、ダニ媒介性疾患であるSFTS(重症熱性血小板減少症)と日本紅斑熱について講演がありました。6人の演者の先生方、それぞれ違った方面で活躍されていらっしゃる先生方なんですが、普段うかがうことができない貴重なお話をうかがうことができました。

 

ダニの発生数はもちろんですが、野生の鹿の発生頭数にも影響を受けるそうです。近年、日本紅斑熱は増加傾向にあり、昨年の発生数は非常に多く過去最多であったということです。

ダニ媒介性疾患の発生は地域性があります。演者の一人である馬原文彦先生のスライドからの写しになりますが、人の発症で報告のあった地域を色分けした地図です。ピンク色の県は累積発症数が50例未満、赤色の県は50例以上の地域です。三重県、千葉県を除いた赤色の県ではSFTS(重症熱性血小板減少症)の発症も認められています。

 

愛知県もピンク色になっています。愛知県内の山間部、里山地区のマダニが日本紅斑熱の病原体を保有しているかどうか、日本鹿等の野生動物のリケッチアの抗体価がどのくらいなのか分からないのですが、心配になるところです。

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日本紅斑熱の発症を示したものです。
 

 

<マダニのこと>

マダニは、ダニ類の中でも比較的大型で、成長や産卵のために脊椎動物の血液を栄養としています。成長過程で孵化した幼ダニが寄生して吸血、落下して脱皮、若ダニになって寄生して吸血、落下して脱皮、成ダニになって寄生し吸血、そして産卵というサイクルを繰り返します。成ダニが吸血した後は大きいもので3cmくらいになります(ブドウのデラウェアくらいの大きさです)が、卵からかえったばかりの幼ダニ(秋に大量発生します)は1mmくらいの小ささでクモの子と間違えるくらいのものです。

マダニは山地だけでなく、公園や河川敷、草の生い茂る散歩道などにも潜んでいます。ひゅっと伸びた草の葉の先に固まって待ち伏せしています。通りかかった動物の気配を察知して飛び移り寄生、吸血します。成ダニの寄生と吸血は1週間から長いと1カ月も続きますが、幼ダニの吸血はわずか3日程度と短いため、吸血されたことに気がつかないこともあります。

 

ダニに寄生されたことはグルーミングを通して知ることができます。5月から7月、8月ころは若ダニや成ダニを見つけることが多いのですが、秋になるとダニ寄生を主訴に来院してくる愛犬数は減少します。それは幼ダニによるものが多数で発見されにくくなるためかもしれません。しかし、日本紅斑熱の患者発生数が秋に多数認められることからすると、幼ダニが病原体を運んでいるとも考えられますから、秋になってもダニに対する注意は引き続き必要です。

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マダニの生活環を示したものです。

 

<マダニを取ろうとしないで>

もしマダニを発見しても、決して素手で引っ張って取り除こうとはしないでください。マダニは寄生し、吸血するときに、動物の皮膚に噛みつくわけですが、初めにセメントのような物質を唾液腺から出して動物の皮膚に固着するのです。この口の部分は簡単に外れません。取ったつもりになっていても、セメント質部分が皮膚に残ってしまうことがほとんどです。もし病原体を保有しているマダニだった場合は、体が弾けるときに病原体が飛び散り、指に付着することになります。ダニ感染を受けた動物はそのまま動物病院にお連れください。また、もし飼い主さんがマダニの感染を受けた場合は、できるだけ早く、マダニはつまみとらないでお近くの病院で処置を受けてください。

 

 
<メーカーからのパンフレットを載せておきます>
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マダニによる害があります。



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投与しやすい形になりました。



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同様のお薬ですが、効果が3カ月持続します。



<予防しましょう>

9月は幼ダニの発生個体数が一年のうちで最も多くなる時期です。それは春から夏にかけて吸血した雌成ダニが産んだ卵から幼ダニが孵化するためです。

暑い季節が過ぎ、再び行楽シーズンがやってきました。山に入る機会もあるかと思います。日本紅斑熱に関してはワクチンもありません。ダニに咬まれないようにすることが一番の予防策になります。

どこが汚染地域なのか、もし情報を得ることができるようでしたら汚染地域への立ち入りはしない方が賢明です。ご家族の方は長袖の服に長ズボンのいでたちで皮膚の露出を少なくしダニ付着を防いでください。愛犬を連れて山に入る場合、愛犬には事前にノミ・マダニ駆除薬(予防薬)を使用して出かけてください。予防薬には滴下剤のほか、チュアブルタイプ(愛犬が喜んで食べる味付けを施してある)の内服薬、さらに3ヵ月間効果が持続するお薬も出ています。

詳しくは病院スタッフまで、またご心配なことがありましたら遠慮せずお声掛けください。

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従来型のスポットタイプのお薬です。背中に滴下します。

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1カ月に1回
ご褒美のように与えるお薬です。

 
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同様の効果が3か月続きます

追記

昨年知多半島で見つかったエキノコッカスについての継続検査の結果ですが、平成266月から278月(先月)までの報告で、捕獲犬で糞便中に虫卵が陽性に出たものはなかったようです。お知らせしておきます。
http://www.pref.aichi.jp/eiseiken/5f/Echinococcus1.html

  

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デング熱ほか・動物由来感染症のこと

 西アフリカ諸国で、エボラ出血熱が近年にないレベルで流行しているのが報道されています。そんな中で国内でもデング熱の感染が認められ、動物由来感染症に対しての関心がすすんでいます。

今日は動物由来感染症についてお話します。

 

 

動物由来感染症は感染力や発症した時の重篤度により、5つに分類されています。

エボラ出血熱はその中でも最も危険度の高い一類感染症に入っています。エボラウィルスによる感染で発症する急性の熱性疾患です。必ずしも出血性の臨床兆候を示すわけではないのだそうで、「エボラウィルス病」と呼ばれることもあるそうです。自然界の宿主(ウィルスが感染する動物)はオオコウモリではないかと考えられています。ゴリラやチンパンジーの生息する地域で発症が見られることから、このウィルスはヒトだけでなくこれらの動物にも感染するようです。感染経路は感染した動物の体液との接触感染といわれています。

 

一方、デング熱は重篤度分類からするとSARSや腸管出血性大腸菌感染症よりもレベルの低い四類感染症に分類されています。エボラ出血熱の報道の後での国内の発症ということで、この2つを混同しておられる方もあり、心配が大きくなっているようです。こちらもウィルス感染による病気で、デングウィルスは日本脳炎と同じフラビウィルスに属するウィルスです。蚊(ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ)を媒介して感染し、感染した人に直接ふれても感染することはありません。デング熱ウィルスの生活環ですが、森林型生活圏では、サル⇒蚊⇒サルになっていて、都市型生活圏では唯一ヒトだけが対象になっています。つまり、ヒト⇒蚊⇒ヒト、という生活環です。デングウィルスはアジアの熱帯地域のサルに寄生して進化してきたと考えられているそうです。森林から都市へと住む世界を拡大させたのかもしれません。

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犬や猫はデング熱の感染は大丈夫なのか、というご質問を受けました。

私見ですが、犬や猫は宿主に該当しないので、おそらく感染しても不顕性感染であり発症することはないのではないかと思われます。ただ、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)感染の例のように(後述)犬が感染の中間的な存在となってしまう可能性は否定できません。蚊の飛翔範囲はあまり広くないようですが、風には飛ばされるので、今話題となっている地域だけでなく、その周辺へのお散歩も避けた方が賢明だろうと思います。

 

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先日、静岡で開催された中部地区獣医師大会に出席しました。

今回は犬や猫の病気についての発表ではなく、感染症についての特別講演を拝聴してきました。

 

堤可厚先生は感染症界で有名な先生で、故シュバイツァ博士に師事した医師でもあり獣医師でもある先生です。

多くのウィルス性感染症についての知見を伺いましたが、印象深かったのはコウモリとの関連です。マールブルグ熱、エボラ出血熱、ヘンドラウィルス病、ニパウィルス病、SARS(重症急性呼吸器症候群)、狂犬病の自然宿主は疑い段階のものもありますが、どれもコウモリと関連が深いそうです。また新しい感染症のMERS(中東呼吸器症候群)はコロナウィルスによる感染症ですが、ラクダが自然界の宿主になっており、こちらもコウモリの関与が示唆されているそうです。洞窟の中にコウモリを見に行くツアーがあったり、所によってはコウモリを食する文化圏があるようですが、非常に危険なので止めた方が良いとおっしゃっておられました。渡航に際しては現地の感染症などの情報をしっかり入手し、予防できるものはしっかり対策をとってから出かけるのが安全なようです。

 

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また静岡大学の大橋典男先生の特別講演では、日本国内に潜在する新興感染症の「アナプラズマ症」についてお伺いすることができました。今年春ころ、西日本各地でマダニを媒介した病気、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)のことが報道されました。アナプラズマ症もマダニを介在して感染する病気です。アナプラズマはリケッチア目アナプラズマ科の偏性寄生性細菌でウィルスではありません。自然界では野生哺乳動物⇒マダニ⇒野生哺乳動物、という生活環を送っています。

蚊にさされるのも危険ですが、マダニにも気をつけたいです。

 

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おまけのお話になりますが、827NHK総合「ニュースウォッチ9」でSFTS(重症熱性血小板減少症候群)感染と犬について放送されました。犬についていたマダニを手で潰してSFTSウィルスに感染し発症した例があったようです。愛媛の方でした。犬に付着するマダニすべてにこのウィルスが感染しているわけではありませんが、動物に付着したマダニは手でとるのではなく、ノミ・マダニ駆除の滴下剤で駆除するのが安全ですし、効果的です。家族の健康のためにも、犬猫にきちんとノミ・マダニ予防を行ってください。また、犬が感染源となってヒトに媒介するわけではないので、ダニが付着していたからといって犬を過剰に嫌わないようにお願いします。

 

 

ダニ媒介性の感染症はまだあります。ダニの一種であるツツガムシによって媒介されるリケッチアの感染で発症するつつがむし病です。このリケッチアもアナプラズマと同様の偏性細胞寄生細菌です。感染は今から上昇し、11月に最大のピークを迎えます。風土病としてつつがむし病の発生がある地域ではこちらに対する注意も必要です。

 
ちなみに、DFTSもつつがむし病も四類感染症に分類されています。

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しのぎやすい季節になりました。秋には連休も数回あり、紅葉狩りに山中に入る機会があるかもしれません。おしゃれなパンツではなく、足首まで隠れる長丈のズボン、長袖の上着を着用し、頭部には帽子をかぶり身体を保護したうえでお出かけになられることをおすすめいたします。

 

 

今日は感染症についてお話し、また心臓病のお話が延びてしまいました。また次回にします。

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エキノコックスのこと

 201448日、愛知県は、阿久比町で捕獲された犬の糞からエキノコックスの卵が見つかったと発表しました。

さて、エキノコックスとはどんな寄生虫なのでしょうか。今日はエキノコックスについてお話します。

 

捕獲された犬に寄生虫がいるくらいで県は大々的な発表はしませんし、新聞も取り上げたりはしません。これを報道するというのは、エキノコックスが普通の寄生虫ではないことをあらわしています。エキノコックスは人獣共通感染症で、しかも人に対する危険度が高い感染症です。病原体は感染する対象をある一定の動物に限定することが多いのですが、中にはヒトとヒト以外の脊椎動物の両方に感染したり寄生したりする病原体があります。このような病原体によって生じる感染症を人獣共通感染症といいます。ズーノーシスと呼んだりもします。感染症によっては私たちも死に至る危険性があるくらい怖いものがあります。

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犬と猫、そして人に共通する感染症を人に対する危険度によって分類した表です。このほかエキゾチックアニマルや鳥、爬虫類などのペットが宿主になる感染症なども加えるともっとたくさんの人獣共通感染症がありますが、ここではイヌとネコだけに関係する感染症をのせています。

 

宿主

人に対する危険性が高い

人に対する危険性は要注意

エキノコックス症

ブルセラ症

犬糸状虫症(フィラリア症)

 

トキソプラズマ症

犬及び猫

狂犬病

Q

レプトスピラ症

エルシニア症

カンピロバクター症

サルモネラ症

猫ひっかき病

パスツレラ症

皮膚糸状菌症

イヌ・ネコ回虫症

うりざね条虫症

疥癬(カイセン)

 

ヒトにとって危険性が高いのは表の左の欄の4つで、動物にとって危険性が高い感染症は太字で表した4つです。エキノコックスは動物に対してよりも人に対して危険性の高い感染症、ということになります。

ヒトのエキノコックス症は感染から数年~数十年過ぎるまで自覚症状が現れません。はじめは上腹部の違和感、不快感に始まり、肝障害をおこします。治療は外科的に肝臓のしこりを切除することです。

イヌの場合、腸内寄生虫による下痢が起こります。治療は駆虫薬の投与です。

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ヒトとイヌでこのように危険度が違うのはなぜでしょうか。

それはこの寄生虫のライフサイクルにあります。

エキノコックスはそのほとんどが北海道で観察される寄生虫なのですが、自然界でエキノコックスの成虫はキツネの腸内に寄生しています。エキノコックス成虫が産んだ卵はキツネの糞便と一緒に草むらに排泄されます。野ネズミが木の芽などを食べるとき、エキノコックスの卵も口にします。エキノコックスはネズミの体内で生育しますが、幼虫のままでそれ以上は成長しません。この幼虫は肝臓の中でしこりをつくります。別のキツネがエキノコックスを持った野ネズミを食べ、そのキツネに感染が起こります。

エキノコックスの幼虫が寄生する野ネズミは中間宿主で、成虫が寄生するキツネは終宿主です。終宿主に寄生するところは腸ですが、中間宿主の寄生場所は肝臓です。腸に寄生される場合、駆虫薬を投与すると寄生虫は無くなりますが、肝臓に寄生された場合、閉鎖された場所ですから駆虫薬を投与しても虫を出すことができません。

さて、ヒトは野ネズミと同じ中間宿主になるので、幼虫は肝臓に寄生します。一方イヌはキツネ同様、終宿主なので腸に成虫が寄生します。治療法が異なるのもこのためで、ここがヒトとイヌとで危険度が異なる理由です。

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今回、捕獲した犬からエキノコックスの虫卵が発見されましたが、これはこの犬が自由に過ごしていた場所にエキノコックスの卵がばらまかれ、この地域が感染土壌になったことを示しています。この犬が北海道にいたことがある犬なのかどうかも分かっていません。愛知県はこれまでエキノコックス感染者は過去3人ほどの報告はありますが、エキノコックスの感染動物を確認したことはありませんでした。汚染はどこまで広がっているのでしょうか。今後、この地域だけでなく他の地域でも定期的な検査と汚染状況の報告が望まれるところです。

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さて、私たち、ヒトの方が感染に対し深刻であるとお話ししました。どうやって感染から身を守ることができるでしょうか。

私たちは汚染された地域に山菜採りに入り、ここの沢の水をそのまま飲用すると虫卵を口にしてしまう可能性があります。山菜は十分に加熱し食すること、沢の水をそのまま飲まないこと、また土に触った手はしっかり洗うことなどが予防対策になります。

 

この連休は山菜摘みに行くのにちょうどいいシーズンですが、こんな病気もあります。知多半島、阿久比あたりの山間部へ行楽される方もいらっしゃるかもしれません。もちろんそれ以外の場所でも同じことですが、手洗い、加熱などの注意を思い出してください。

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