トキソプラズマのお話し

 先日、新しく猫を飼育始めた患者さんに「トキソプラズマ症」が心配であるとのご相談をお受けしました。トキソプラズマ症はこれからお母さんになろうという年齢の方には特に関心の高い人獣共通伝染病です。今日は「トキソプラズマ症」についてお話しします。

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感染性を持つ成熟オーシストを
経口摂取すると感染します。
そのほかシストやタキゾイトのかたちの
ものからも感染します。





<トキソプラズマは寄生虫>

トキソプラズマは猫を終宿主とする寄生虫で、犬や鳥に寄生するコクシジウムと同じ原虫の仲間です。おなかの寄生虫としてよく知られている「回虫」や「鉤虫」は線虫類で、腸管のなか(食べ物の通り道である管腔の中)にいますが、原虫は腸粘膜の細胞の中にいます。腸管をちくわに例えると、線虫類はちくわの輪っかの真ん中、チーズやキュウリを通す部分に住んでいます。原虫はちくわがチーズに接触する部分の、ちくわの表面だけどちくわそのものの中に住んでいます。線虫はミミズのようなかたちで目でも確認できますが、原虫は顕微鏡でなければ確認することはできません。細胞の中に入ってしまうくらいですので、すごく小さいです。そして、成長の過程でかたちが変わります。うんちの中に排泄されるときは「オーシスト」と呼ばれる小さな楕円型をしています。10×12㎛の大きさです。体内に入って急速増殖するときは「タキゾイト」と呼ばれるまが玉みたいなかたちです。2×6㎛の大きさです。増殖を中止し、ひとまず落ち着いてなりを潜めるときは「シスト」と呼ばれ、比較的大きな球の中に沢山の分子を蓄えたくす玉のようなかたちです。「オーシスト」「タキゾイト」「シスト」はそれぞれ増殖段階のステージ名になります。

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猫の体内では腸管だけでなく
他の臓器にも分布していきます。
 

<猫のトキソプラズマ症>

猫にトキソプラズマが感染していると、どのような症状が現れるのでしょうか。

ほぼ、無症状のことが多いです。虫自体は非常に小さく、また増殖する場所がさまざまな場所であるため、寄生場所により、寄生された猫の様子も異なります。そして寄生場所がいろいろあるので、猫がトキソプラズマに感染しているかどうかの検査方法は糞便検査だけでなく、血液検査や組織検査に頼ることになります。

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豚肉にはトキソプラズマ感染性のものがあります。
見た目には分かりません。

 

<トキソプラズマはどこから感染するのか>

猫はトキソプラズマの「オーシスト」か「シスト」を含んだネズミ(の生肉)を食べるとトキソプラズマに感染します。傷や粘膜から「タキゾイト」が侵入してくることもあります。母さん猫から胎盤を介して感染することもあります。

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猫の腸内、腸絨毛の上皮細胞内で増えていきます。
細胞が破れ、糞便中に出てきます。




<猫のトキソプラズマ症いろいろなパターン>

①腸管

経口感染したトキソプラズマは猫の腸粘膜の細胞の中で増殖します。一度に大量感染すると、粘膜細胞も一時に壊れるため、下痢などの症状は重篤になります。でも子猫や猫免疫不全ウィルスに感染した猫以外は、無症状であることが多いです。

②全身

状態の悪化した猫では、発熱したり、リンパ節が腫れるなどの全身症状を出すこともあります。妊娠猫では流産をおこすこともあります。

③中枢神経(脳)

進行性の麻痺をおこすことがあります。

④眼

ぶどう膜炎の症状(眼が赤い、角膜が濁って白いなど)をおこします。繰り返されることもあります。

 

<猫のトキソプラズマ症の検査>

猫がトキソプラズマに感染しているかどうかは糞便検査と血液検査で調べます。

①糞便検査

トキソプラズマが沢山増えると、腸粘膜細胞を破ってオーシストが出てきます。このときは糞便検査で「オーシスト」を確認することができます。とても小さいため、数が少ない場合は見逃してしまうこともあります。また、他のコクシジウム類との鑑別はできません。

トキソプラズマが腸粘膜細胞を破っていないときは糞便検査でオーシストを見つけ出すことは出来ません。外部委託の糞便を利用した検査は、特異的な遺伝子検査によるものです。オーシストを見つけ出せなかった場合もトキソプラズマを見つけ出します。

②血液検査

血液検査も外部委託検査です。感染が認められた猫にはトキソプラズマ抗体ができています。血清中のトキソプラズマ抗体の量を調べます。

このほか

③組織検査

④マウスに接種する検査

がありますが、これらは実際的な臨床検査ではありません。

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始めて感染するのが妊娠時だと
胎盤を介して胎児に影響します。




<抗体検査についてもうちょっと>

ヒトの妊娠時のトキソプラズマ検査は抗体価と同時に特異的IgMIgGを測定すると、感染間もない感染なのか、過去の感染なのかを鑑別することができるそうです。(抗体価は感染があったかどうかをみるものですので、あるから心配、ないなら安心ということではありません。詳しい解釈については産科の先生にお尋ねください。)

猫の場合は、この特異的検査はできません。今の感染なのか、過去の感染なのかを判断するのは少し時間を空けてから(たいていは2週間から3週間)もう1回測定して、前回と今回の2つの価を比較する方法で調べていきます。抗体価に変化がなければ過去の感染で、抗体価が急上昇しているようなら今回の感染、今が急性感染期であることになります。

 

<ヒトのトキソプラズマ感染経路>

ヒトも経口感染でトキソプラズマに感染します。

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猫の糞便中に排泄されたオーシストは
成熟すると感染性となり、
土や砂の中でしばらく生きています。



①猫の糞から

猫の糞に混じっていた成熟オーシストを口にしてしまうと感染します。でも猫の糞を口にするというのはどのような状況でしょうか。ヒトは猫のウンチを食べることはありません。しかし家猫が感染していたとき、おうちの中の猫トイレで排泄した猫の便を片付けるときに、もしかしたら手に付着してしまうのかもしれません。昔から「危険ですよ」と言われてきたのは、公園の砂場です。公園の砂場に外猫が排泄した便があると、子どもが砂場遊びをするときに一緒に遊んでいたお母さんの手にトキソプラズマの成熟オーシストが付着することがあります。公園で砂場遊びをする機会は減っているかもしれませんが、猫は良く耕されてふわふわになっている土が大好きです。畑仕事をされるアグリお母さん、家庭菜園でも、ガーデニングでも条件は同じことになります。

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生肉を下処理するとき、
まな板や包丁にシストが付着します。
調理器具の洗浄が不完全だと感染します。




②不十分な加熱処理の豚肉から

「牛肉はレアで食べても良いが、豚肉はしっかり加熱調理して食べましょう」というのを聞いたことがあるでしょうか。豚はトキソプラズマの中間宿主になっていて(ヒトも中間宿主です)、お肉の間にトキソプラズマのシストがあるかもしれないからです。不十分な加熱による経口摂取は、獣肉加工品であるソーセージ(生のもの)の場合も関係してきますが、まな板の上で生の豚肉を下処理した後、まな板や包丁を十分に洗わず、生で食べる野菜を処理したときにも感染の心配が出てきます。むしろこのパターンが一番多いのではないかと言われてきました。今、人気のジビエ料理ですが、野生動物(シカなど)も感染の危険はあります。

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加熱不十分な豚肉とその加工品から
感染することがあります。







 <ヒトのトキソプラズマ感染>

ヒトがトキソプラズマに感染した場合、終宿主である猫の感染とは少し違ってきます。腸の血管内に侵入したトキソプラズマは増殖体であるタキゾイトのかたちで全身に運ばれ、あらゆる組織に入り込み、増殖していきます。特に薬や抗体が届きにくい場所である脳、筋肉、眼などでは、シストを形成して生き残ります。妊娠中であると、胎児にもタキゾイトは侵入します。流産を起こしたり、胎児の発育不全が起こります。

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妊婦さんへの感染の主だった経路は3つで
猫だけが犯人ではありません。
注意すれば感染を防ぐことが可能です。


 

<トキソプラズマからの感染を防ぐ>

ヒトの感染を防ぎましょうという内容です。

①飼い猫をクリーンに

家猫がネズミを捕食するのはトキソプラズマ感染の危険を持ちます。豚肉の入っていたトレーをいたずらしたネズミは豚肉からトキソプラズマ感染を受けているかもしれません。するとネズミの身体にトキソプラズマのシストがあるわけです。猫の捕食行動は止めさせることはできないかもしれませんが、もし見つけることがあれば摂食は止めさせてください。

②家猫からの感染防御

糞便中に排泄されるオーシストが感染能力を持つ「成熟オーシスト」になるまでには1~2日かかります。猫の排泄した便は速やかに、そしてビニール袋などを使ってお掃除してください。

③野猫からの感染防御

屋外で野猫が排泄をするかもしれない砂場や畑の土はビニールやゴム製の手袋をつけて扱うようにします。

④食肉からの感染防御

豚肉は十分に加熱調理するようにしてください。また調理器具の取り扱いにも注意してください。(平成17年から22年の出荷豚のうち抗体陽性であるものは平均して3.9%ほどあるそうです。)

 

<おわりに>

今日は人と動物の共通感染症であるトキソプラズマについてお話ししました。

飼い猫からの感染に不安があっては、猫さんを十分に愛することはできません。不安があるときは検査にお越しください。

 

猫を飼うと、「癒やされるぅ~」と思います。
猫がまだ子猫で、自由奔放に遊んでいると、それを見ているだけで私たちは癒やされ、元気になれます。
それから少し猫が年を重ねていくと、なかなか人の様子を読むのがうまくなります。「今日は疲れているみたいだな」、とか「やばい。怒ってるぞ」、というのが分かるようになるみたいです。知らんぷりしているようで、実はなかなかいいパートナーシップを取ってくれています。ありがたいです。こちらのメンタルな部分も含めて、理解してくれてそのような行動に出てくれるのです。そしてこの頃になると、私たちは猫に頼って、猫に甘えて生きていくようになってしまっているかもしれません。猫を相手にした語りかけが増えていきます。

もう少しすると、これもあっという間で早いのですが、自分の年齢を超えてしまっています。「あれ?老けた?」と感じた頃から、「猫に語りかける」のを卒業して「猫の声を聞く」ようにしてもらえるとうれしいです。そこからは今まで以上に「猫を甘やかしてあげる」ようになってほしいです。

それから、「猫の声を聞いて欲しい」ので、あなたは元気でいてください。猫が高齢になってからはなおさらです。猫を飼育するやさしいあなたにはぜひ、ぜひ、いつも元気でいてもらいたいです。
そんなわけで、暑い日が続いておりますが、ご自愛ください。

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SFTS感染症

 先々週、お世話していた野良猫に噛まれた女性がSFTS感染により亡くなっていた、というショッキングなニュースが報道されました。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG24H7H_U7A720C1CR8000/

同日、獣医師会からも、SFTSウィルスに感染した猫の事例が発生しているとのお知らせも入ってきました。外来でもにわかにSFTS感染症についての話題が増えています。

 

SFTS

SFTSというのは「重症熱性血小板減少症候群」のことです。「severe fever with thrombocytopenia syndrome」の頭文字4つをとって 省略した名称です。

 

<マダニから感染>

SFTSは、SFTSウィルスを保有したマダニに咬まれて感染します。

マダニは家の中に発生するイエダニ、植物にいるハダニなどとは全く違うダニです。

 

<マダニのいるところ>

以前、マダニはシカやイノシシなどの野生動物が生息する山中に生息すると考えられていました。しかし民家の裏山でも見られますし、田畑のあぜ道や公園、川縁の草深いところでも見られます。

夏の暑さを避けるために犬小屋を裏の藪の方に移したという場合、すぐ裏からマダニは迫ってきています。また反射熱で熱いコンクリートの上よりも草むらなどを好んで歩く犬のために散歩コースを変更したという場合も、危険ゾーンを歩くことになっています。

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<ヒトの感染、動物の感染>

ヒトと同じように野生動物もSFTS感染マダニに咬まれるとSFTS感染をおこします。また犬も猫も感染の報告がみられています。

すべてのマダニがSFTSウィルスを持っているわけではありませんので、「マダニに咬まれた=SFTSに感染」というわけではありません。

 

SFTS発生地域>

20176月の資料では、近畿地方よりも西の地域で、SFTSを発症した患者さんが目立っています。しかし、患者さんの確認されている地域とは別に、患者さんの報告がなかった地域でも、SFTSウィルスを保有しているマダニを確認している地域は沢山有り、北海道でも検出されているほどです。

また、抗体を保有している(過去に感染したと思われる)イヌの調査も行われていますが(抗体保有率は0~15%n:1800)、患者さんの発生がなかった地域でも抗体を持つイヌがいたことがわかっています。

ちなみに愛知県では抗体保有マダニ、SFTSの患者さん、抗体陽性のイヌ、すべてが見られていませんが、お隣の県では見られているので安心してはいけません。

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診察室前の掲示板に
国立感染症研究所発行のマダニ対策パンフレットを
プリントアウトして掲示しました。



<マダニから私たちの身体を守る>

私たちがマダニから身を守るためには、不用意に藪や草むらに入らないことが大切です。もし、入るような場合は、登山のときに準じた装備で出かけるようにします。帽子、手袋(軍手)を着用し、首回りもタオルなどを巻いて露出しません。長袖の上着はズボンの中に入れ、長ズボンをはき、靴下のゴムはズボンの上で止めるようにします。靴もサンダルのような足先が開いたものを避け、長靴のような足元をしっかりと隠せる靴を履くようにします。

草刈りなどの作業を行う場合もこれに準じてください。

半袖、短パン、スリッパ履きで早朝、愛犬の散歩に出かけ、犬が草むらにずんずん入っていくのに、足元を朝露に濡らしながら付き合うというのは危険です。

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<虫よけ剤>

ヒト用に認可された虫除けのお薬があり、市販されています。有効成分は「ディート」または「イカリジン」です。「山に行くよ!」という方はこちらを目安にお買い求めください。「子どもにも使えそう。効果穏やかかも。」と思わせるかわいらしい商品から、濃度がもっと濃い成人向け商品などラインナップがあります。

ただ、薬を使用していれば完全に大丈夫というわけではなく、「ダニ回避の装備に補助的に使用する」というスタンスでお願いします。

 

<猫がSFTSに感染したとき>

もし、うちの犬やうちの猫がSFTSに感染していたら、どのような症状を出すのでしょうか。

SFTSの流行地で感染が確認された猫は、屋内飼育、外出自由の環境でした。はじめの症状は発熱、食欲不振だったそうです。

血液検査で、「血小板数の減少、白血球数の減少、血清クレアチンキナーゼ(CPK)の上昇」が見られたそうです。自分から十分に食べることができなかったため、入院措置となり、治療を開始し、2週間で回復、4週後には退院できたとのことです。

発熱や食欲不振だと、特徴的な症状ではないのでわかりにくいかもしれません。また犬は無症候性(症状が全く現れない)のことが多いそうです。

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犬とマダニ感染についてのボードも
下げてあります。



<猫から感染?>

今回、感染していたとみられる猫と接触していたヒトの感染が発生しました。

http://www.asahi.com/articles/ASK7S5JJMK7SULBJ00C.html

感染猫に咬まれた結果、猫から感染したのかは不明です。猫は猫で、ヒトはヒトでそれぞれSFTS感染マダニに咬まれていたのかもしれません。しかし亡くなった方に「マダニに咬まれた跡がなかった」ため、「猫→ヒト」感染が疑われています。

これまで確認されている感染経路「マダニ→ヒト」ではなく、今回疑われるような「猫→ヒト」感染があるのであれば、SFTSウィルスは猫の唾液中にも排出されるということになります。感染や予防に対する解釈はより複雑になります。

感染経路がしっかり解明されるまでは「マダニだけでなく、感染が疑われる動物にも十分注意する」のが安全です。

 

<動物をマダニから守る>

犬や猫をマダニから守るのは比較的容易で、有効な駆除剤の使用が予防になります。肩甲骨間の背中の皮膚に滴下する外用薬は効果、安全性ともに満足いく薬です。ホームセンターやペットショップ等で類似商品を目にすることもあるかと思いますが、そちらは効きません。ぜひ動物病院で処方された物をお使いください。

背中に垂らすのは難しい(動物が動いてしまう、噛みついてくる、液剤との相性が悪く滴下すると脱毛してしまうなどの)場合は、経口投与する内服薬もあり、こちらもおすすめです。内服投与はチュアブルタイプのお薬で、自分から食べてくれるため、投与はお手軽です。

また、動物の健康状態についてはいつも以上に気を配ってください。もし、なにか変化があれば動物病院へご来院ください。

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<もし犬猫の皮膚にマダニを発見したら>

素手でマダニを取ろうとしてはいけません。マダニは皮膚にとりつくと、皮膚にしっかりと口を突き刺して長時間吸血を続けています。マダニを無理に取ろうとすると、マダニの身体だけが取れて、口だけが皮膚に残ることになります。この部分がのちに化膿することがあります。また、マダニの身体をつかんで取ろうとするときに、膨らんだマダニの身体に圧力をかけることになりますから、マダニの体内にあった血液をマダニの口を通して犬猫の体内に逆流させることになります。これが最も危険な理由です。

とにかくそのまま、動物病院へいらしてください。お車の中でマダニが落下すると困るので、必ずキャリーに入れてきてください。

 

<マダニに咬まれて発症する病気>

SFTS以外にもマダニに咬まれて発症する病気があります。ダニ媒介性脳炎、ライム病、ツツガムシ病、日本紅斑熱などです。ウィルス性疾患の他、リケッチアが原因になっています。

マダニには十分お気をつけて、お出かけください。

 

<マダニの活躍するとき>

夏が終われば安心できると思われるかもしれませんが、マダニは春と秋の産卵シーズンは夏より活発に活動します。気温が15℃を下回るまでは油断できません。夏が終わっても、引き続きご注意ください。

 

 <おわりに>
今日はSFTSの話題で、聞かれることのあったこと、聞かれそうなことについてお話ししました。
衝撃的なニュースだったため、「野良猫=マダニがいる=SFTSウィルスを持っている=人に対して危険」といった連想をされた方がおられたようです。油断してはいけませんが、普通の生活をしている中で、地域猫さんと密な接触をされることはないはずです。普通であれば直接被害を被ることはありません。どうか野猫のことを嫌いであっても、猫に危害を加えることのないよう、お願いいたします。
それからTNRを行われる活動をされる皆さんには、SFTSウィルスとは関係なく、咬まれたりする事故が起こらないよう、これからも安全第一で活動を継続してください。いつも猫さんのための活動をありがとうございます。

 

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インフルエンザ

謹んで新春のおよろこびを申し上げます。

旧年中は格別のご厚情にあずかり

ありがとうございました。

輝かしい年頭に当たりご家族みなさまの

ご健康とご多幸をお祈り申し上げます。

本年もスタッフ一同頑張ってまいります。

どうぞよろしくお願いいたします。

平成29年 元旦

ハート動物病院
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で、酉年ですので、鳥の話題を。


うちの犬やうちの猫とはほど遠いように見えて実はそうでもないインフルエンザについてお話しします。

(カテゴリーを人獣共通伝染病にしましたけど、共通になるかもの未来形です)

 

<鳥インフルエンザはなぜ怖い?>

インフルエンザはインフルエンザウィルスに感染して発症する感染症です。日本では鳥に発症した鳥インフルエンザから感染した人は確認されていませんが、海外では、感染した鳥の排泄物や死体、臓器などとの濃厚な接触により感染した人もいます。感染した家禽の処理をしてくださる方々がきちんとした防護服で臨んでいますね。これは鳥から鳥への感染防御だけではありません。人への感染防御でもあります。

数年前、新型インフルエンザが流行しました。これは豚インフルエンザウィルスの変異から「人から人へ」の感染をおこす新型インフルエンザになりました。鳥インフルエンザが人に感染をおこすまでのルートには、ウィルスの突然変異がいくつか重なる必要がありますが、鳥インフルエンザはこれまでのインフルエンザとはタイプが異なるので、もし変異して前回のような新型インフルエンザになると、免疫を持つ人がいないため大流行する(パンデミックがおこる)ことが予想されます。とても怖いことなのです。

鳥インフルエンザと人
鳥から人への感染が成立するためにはウィルス変異が考えられています。

 

<インフルエンザウィルス>

インフルエンザウィルスはA型、B型、C型があります。その中でA型は宿主特異性(特定の動物にだけ感染する性質)が低く、多くの動物に感染し、呼吸器症状を引き起こします。

もともとはカモなどの水禽類が宿主で、そこから広まったと考えられています。

このA型インフルエンザウィルスはウィルス表面の糖タンパク(赤血球凝集素:Hとノイラミニダーゼ:N)の特徴からH(数字)N(数字)という風に表示されます。これがHNによるA型インフエルエンザウィルスの細分類になります。赤血球凝集素(H)は16種類、ノイラミニダーゼ(N)は9種類あるので、16×9通りの亜型が存在します。

a型インフルエンザの宿主
多くの哺乳動物に感染があります。

 

<犬にインフルエンザはない?>

実は犬にもインフルエンザウィルスの感染報告があります。初めは2004年アメリカ、フロリダ州の発生でした。ドッグレースのためのグレイハウンド22頭が感染し8頭が急死しました。身体からウィルスを分離するとすべてが馬インフルエンザウィルスに酷似したものだとわかりました。

日本のJRAの先生がこのウィルス株を使って研究した結果、馬から犬、犬から犬への感染が可能であることが分かりました。

これ以降、アメリカの各地のレース場で犬のインフルエンザが報告されています。突然の発熱、咳、呼吸が速くなる、出血性の鼻汁が出るなどし、死亡する犬も多数出ました。

そして今年7月にはCNNが取り上げるほど、犬インフルエンザは全米で大流行になっています。

http://www.cnn.co.jp/usa/35067035.html

すでに犬インフルエンザウィルス(CIV)として確立されているようです。

https://www.idexx.com/files/small-animal-health/products-and-services/reference-laboratories/idexx-introduces-h3n2-influenza-realpcr-test.pdf

かつてパルボウィルスが入ってきたときのように、ワクチンがない状況下で日本に犬インフルエンザウィルスが入ってくると怖いなと思います。


 <犬インフルエンザはどんな病気?>

軽症では軽い咳が10日から30日くらい続くくらいです。おそらく「ケンネルコフ」と間違えられて診断されるかもしれません。重症だと40℃を超える高熱、呼吸がつらそうなど肺炎の症状が出て、死亡率も5~8%くらいあります。人のインフルエンザに似ていますね。

診断については、検査機関でウィルス検査によりH3N8H1N1H3N2の型の確定診断が出来ます。この検査ではそのほかのボルデテラやマイコプラズマといった細菌類、パラインフルエンザウィルス、犬肺炎ウィルスなどのウィルスも同時に検査が可能です。(日本の検査機関でできます。)

治療は多くのウィルス感染症と同じように栄養療法や補液、混合感染に対する抗菌薬療法が中心になります。

予防できるワクチンはありません。

 犬 発熱

<猫のインフルエンザは?>

猫のインフルエンザというと、H5N1ウィルスによる鳥インフルエンザが流行しているタイで猫科の大型動物であるトラの感染が有名です。2003年タイの動物園でトラとヒョウが、翌2004年にはトラの動物園で高病原性鳥インフルエンザウィルスの感染が計147頭のトラで認められました。鳥からトラのほかトラからトラへの感染もあったようです。また同じ年、動物園動物ではない2歳の飼い猫がH5N1ウィルスに感染して死亡しています。これらの事例では亡くなった鳥類の死骸を食べていたということです。猫でみられた状態は高熱と沈うつ、あえぎ呼吸にけいれんと運動失調で、発症からわずか2日で死に至りました。

最近(201612月)、米国の検査機関であるIDEXXは、ニューヨークの猫のシェルターで鳥インフルエンザウィルスの感染がみられたと報告しています。

http://blog.idexx.com/pulse/bird-flu-cats-nyc

ニューヨーク市保健局の先生のお話しでは、まれなタイプの鶏インフルエンザで、ねこから人への感染が成立する最初の例になるのではないかということです。

http://www.techtimes.com/articles/189525/20161226/new-york-veterinarian-catches-rare-bird-flu-from-sick-cat.htm


 総じて、H5N1鳥インフルエンザウィルスは猫に感染しやすいのではないか(感受性が高いという表現をしています)と考えられているようです

猫 高熱



日本での発症は?>

犬のインフルエンザ、猫のインフルエンザ、ともにありません。

 

<鳥インフルエンザからの予防策は?>

日本の家畜や家禽は一般の市民生活とは離れて飼育されているため、密な接触になることはまずないでしょう。屋内外を自由に遊べる猫がたまたま鳥インフルエンザの発生地域に暮らしていたとして、野猫は野鳥との接触があるかもしれませんが、家猫が過度な接触をするというのは考えにくいと思います。しかしお住まいの地域にそのような事例が出ているのであれば、しばらく屋外に出すことは控えてください。また養鶏場で自由に鶏舎に出入り出来るような環境で飼育されている猫では、鶏舎へ立ち入れないようにしてください。

タイの例では(ドイツのルーゲン島の場合もそうでしたが)、感染した鳥を猫が食べて感染しています。しかし一般には鳥インフルエンザは感染した鶏肉や鶏卵を食べて感染することはありません。濃厚感染地域でみられた感染は、食べた肉から消化管を経由して感染したのではなく、食べる時に気道を経由してウィルスが体内に入ったのではないかと言われています。

このほか、ご自身の身体を守るため、野外で亡くなっている鳥類を発見した場合はむやみに素手で触らないようにしてください。野鳥はさまざまな原因で死亡します。すぐに鳥インフルエンザを疑う必要はありません。
また飼い鳥が亡くなったとしても、鳥インフルエンザを強く疑う必要はありません。
ご自身への感染も感染した鳥との密接な接触がない限り普通には起こりません。
原因が分からず、多頭飼育している鳥が次々に亡くなっていく場合については下記の場所に連絡してください。

西三河県民事務所 環境保全課 0564-23-1211
(こちらは、西尾市のほか岡崎市・碧南市・刈谷市・安城市・知立市・高浜市・幸田町を担当する係です)


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<さいごに>

人の季節性インフルエンザから犬への感染が疑われる、という報告がありました。これまで「人の風邪は犬にはうつらないです」とお伝えしてきていましたので、一応、そのような例があったということをお知らせしておきます。そしてこれからは「ご家族の方が風邪を引いたら、わんことは距離を置いてください」というお話しをすることになります。

 

    

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人と動物の共通感染症

 動物と人との距離が縮まってきています。「人と動物の共通感染症」のうち、伴侶動物に関するものをご紹介します。

「人と動物の共通感染症」については私たち人を守るために、伴侶動物を飼育する方に知っておいて欲しい病気です。濃厚な接触はときに人を危険に陥れます。

特に今日ご紹介する病気3つは人が動物に噛まれたり、爪で引っ掻かれたり、密な接触をしたりして感染する病気です。

 

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<猫ひっかき病>

猫ひっかき病の病原体は「Bartonella henselae : バルトネラヘンセラ」という細菌です。猫の赤血球のなかに存在している菌です。

ノミが媒介して感染する病気です。名前は「ひっかき病」となっていますが、猫にひっかかれなくても接触するだけでも感染しますし、猫に噛まれることもそうですが、猫ノミに噛まれて感染することもあります。猫にいるノミはこの病気に関してたいへん重要な位置にいます。この夏、そして今でも、猫ノミが住居の中で大繁殖をおこし、人にも被害があったご家庭が数件ありました。ぜひ知っていただいてしっかり予防していただきたいと思います。

 

猫から人への感染は次のように起こります。

①感染猫の血を吸ったノミは体内に菌を持ち、次の猫に移動します。

②ノミ糞の中に前の猫から感染した菌が入っています。猫は身繕いしながら菌を口にします。次の猫への感染の成立です。

③この猫が人に接触します。人の身体を舐めたりひっかいたりしたときに菌は猫から人に感染します。

④この猫に付いていた猫ノミが人の足を刺し、そこから細菌が侵入します。これでも人は感染します。

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噛まれて⇒感染

という単純な感染経路に比べると、途中に媒介者のある感染は少しだけ複雑になります。

そこで、へたくそですが、図にしました。

 ヘモバルトネラ

感染した猫は無症状のまま過ごします。

それに比べ、人の方は症状を発現します。免疫学的に健康な人が感染した場合、初めは受けた傷のところが小さく赤く腫れる程度ですが、1~2週間もするとリンパ節が腫れてきます。手や腕が感染場所であった場合(ここが一番多いのですが)、脇の下のリンパ節がげんこつのように腫れます。そのほか発熱し、身体がだるくなったりもします。免疫の弱い人が感染すると細菌性血管腫が現れます。皮膚がんのようなかんじです。

感染猫を特定するのは難しいです。感染猫の血中に菌は存在(1年以上続きます)しますが、猫に症状が現れないことに加え、菌そのものが血液中に出現したり消えたりを繰り返すから採血のタイミングもあるのです。さらに、検査そのものにも、培養させるときに赤血球を溶血させる必要があるとか、培養に時間がかかる(培地では発育が遅い)とか、一般の細菌を検出するのに比べ困難な点が多いからです。

 

<ヘモバルトネラの予防>

飼い猫に寄生するノミをしっかり予防し、運悪くノミにたかってしまった場合でも、速やかに駆除薬を使い、ノミを落としましょう。ノミの成虫はたった5%にすぎず、のこり95%は卵や幼虫、さなぎの形で飼育環境に存在すると言われています。大量に感染してしまった場合は、屋内環境も合わせて掃除したり殺虫したりしないといけません。夏ひどい感染にあった場合は、冬期のオフシーズン中も継続して予防薬を投与することをおすすめします。

のみ取り櫛ですくのが楽しいなんて言ってないでくださいね。

それからノミに感染しているかもしれない地域猫に接触し、うっかり感染しないよう注意してください。

 

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<パスツレラ症>

パスツレラは「Pasteurella multocida : パスツレラ・ムルトシダ」という細菌です。猫の100%近く、犬では15~75%の割合で口腔内にこの菌を持っています。常在菌です。

猫や犬に噛まれて感染することが最も多いわけですが、そのほかにも非外傷性感染というのがあり、犬猫の口腔内の細菌が人の気道に入ってしまい、気管支炎や肺炎などを発症することがあります。

人は噛まれてすぐに痛みと腫れのある炎症を起こします。発熱することもあります。

 

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<カプノサイトファーガ感染症>

カプノサイトファーガは「Capnocytophaga canimorsus : カプノサイトファーガ・カニモルサス」という細菌です。これも犬猫の口腔内に常在している菌です。犬で74%、猫で57%という保菌率です。

犬や猫に噛まれたり、引っかかれたり、濃厚に接触することで感染します。

犬や猫は無症状ですが、人は感染すると発熱し、だるかったりおなかが痛くなったり、吐き気が出たりします。菌が全身に回ることもあります。だるい、熱っぽい、節々が痛い、頭痛がする、発熱が繰り返されるなどは風邪のせいかしらとも思われる症状になるわけですが、有効な抗菌薬と効果の無い抗菌薬があるため、「ひょっとして!」と動物との接触歴が頭をかすめた場合は、病院でもその旨伝え、治療してもらってください。

 

<パスツレラやカプノサイトファーガの予防>

噛まれたり引っかかれたりして感染する病気の場合、動物との接触に注意が必要です。

噛まれないようにするのが最も賢明なのですが、運悪く「噛まれた!」という場合は、以前も書きましたが、
http://heartah.blog34.fc2.com/blog-entry-772.html
何があってもすぐに治療に走ってください。有効な抗菌薬が存在します。


それから

「動物とキスをするのはいけない、

 顔を舐めさせてはいけない、

 口移しで食べ物を与えてはいけない、

 同じ箸を使って食べ物を与えてはいけない」

など、昔から言われていることですが、おばあちゃんの教えは間違ったことを言っていません。こうした濃厚感染は犬猫の口腔内常在細菌からの感染をおこしやすくします。おばあちゃんの教えの通り、素直に従いましょう。

そして動物を触ったらしっかり手洗いしてください。

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<このほかにも>

人と動物に共通する感染症はあります。有名なところでは、

<ブルセラ症>
流産などを起こす病気です。

<エキノコックス症>
おなかの虫由来の病気です。

<皮膚真菌症>
人と動物に共通の皮膚病もあります。

機会があったら次の折りにお話しすることにします。

今日のお話はここまでです。

 

寒くなると、動物との密度が深まるように思います。年末年始のお休みで遠く離れていたご家族が戻ってきて、動物も大喜びかもしれません。水を差すようで申し訳ありませんが、怖い病気もあります。節度ある飼育をお願いします。

テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

マダニ予防は続けて

今月3日、日本紅斑熱についての記事がありました。さほど大々的に取り上げられたものではありませんが、人と動物に共通する感染症でしたのでご紹介します。ダニ媒介性疾患については昨年SFTS(重症熱性血小板減少症)についてお話ししましたが、今回のニュースでとりあげられた日本紅斑熱については初めてのお話になります。

 

<こちらのニュースです>

「 マダニにかまれて感染する「日本紅斑熱」を発症した広島県の男性が死亡しました。今年に入って全国で4人目の死者です。
 広島県の発表によりますと、死亡したのは尾道市内の80代の男性です。
 「日本紅斑熱」はマダニにかまれることによって感染する病気で、頭痛や悪寒を伴って急激に高熱が出た後、やや遅れて全身に発疹が出ます。
 男性は8月末ごろ畑付近で感染したと推定され、1日に救急搬送され、2日に死亡しました。
 これで、今年に入って全国で105人の感染と、4人の死亡が確認されたことになります。
 マダニは秋にかけて活動が盛んで、かまれないよう皮膚の露出の少ない格好をするなどの注意が必要です。」

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マダニは秋にも活発に活動しています。
 

 

<日本紅斑熱も怖い病気です>

さて、「日本紅斑熱」はマダニ媒介性疾患で、病原体「リケッチア・ジャポニカ」を保有するマダニに咬まれて感染する人の病気です。リケッチアによる感染症は「つつがむし症」と同じです。頭痛、発熱、倦怠感、発疹などが主症状で表れ、ダニの刺咬後に発症します。

本年2月に岡山県で平成26年度日本獣医師会獣医学術学会年次大会が開催されました。この大会の市民公開シンポジウムで、ダニ媒介性疾患であるSFTS(重症熱性血小板減少症)と日本紅斑熱について講演がありました。6人の演者の先生方、それぞれ違った方面で活躍されていらっしゃる先生方なんですが、普段うかがうことができない貴重なお話をうかがうことができました。

 

ダニの発生数はもちろんですが、野生の鹿の発生頭数にも影響を受けるそうです。近年、日本紅斑熱は増加傾向にあり、昨年の発生数は非常に多く過去最多であったということです。

ダニ媒介性疾患の発生は地域性があります。演者の一人である馬原文彦先生のスライドからの写しになりますが、人の発症で報告のあった地域を色分けした地図です。ピンク色の県は累積発症数が50例未満、赤色の県は50例以上の地域です。三重県、千葉県を除いた赤色の県ではSFTS(重症熱性血小板減少症)の発症も認められています。

 

愛知県もピンク色になっています。愛知県内の山間部、里山地区のマダニが日本紅斑熱の病原体を保有しているかどうか、日本鹿等の野生動物のリケッチアの抗体価がどのくらいなのか分からないのですが、心配になるところです。

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日本紅斑熱の発症を示したものです。
 

 

<マダニのこと>

マダニは、ダニ類の中でも比較的大型で、成長や産卵のために脊椎動物の血液を栄養としています。成長過程で孵化した幼ダニが寄生して吸血、落下して脱皮、若ダニになって寄生して吸血、落下して脱皮、成ダニになって寄生し吸血、そして産卵というサイクルを繰り返します。成ダニが吸血した後は大きいもので3cmくらいになります(ブドウのデラウェアくらいの大きさです)が、卵からかえったばかりの幼ダニ(秋に大量発生します)は1mmくらいの小ささでクモの子と間違えるくらいのものです。

マダニは山地だけでなく、公園や河川敷、草の生い茂る散歩道などにも潜んでいます。ひゅっと伸びた草の葉の先に固まって待ち伏せしています。通りかかった動物の気配を察知して飛び移り寄生、吸血します。成ダニの寄生と吸血は1週間から長いと1カ月も続きますが、幼ダニの吸血はわずか3日程度と短いため、吸血されたことに気がつかないこともあります。

 

ダニに寄生されたことはグルーミングを通して知ることができます。5月から7月、8月ころは若ダニや成ダニを見つけることが多いのですが、秋になるとダニ寄生を主訴に来院してくる愛犬数は減少します。それは幼ダニによるものが多数で発見されにくくなるためかもしれません。しかし、日本紅斑熱の患者発生数が秋に多数認められることからすると、幼ダニが病原体を運んでいるとも考えられますから、秋になってもダニに対する注意は引き続き必要です。

 IMGP7523.jpg
マダニの生活環を示したものです。

 

<マダニを取ろうとしないで>

もしマダニを発見しても、決して素手で引っ張って取り除こうとはしないでください。マダニは寄生し、吸血するときに、動物の皮膚に噛みつくわけですが、初めにセメントのような物質を唾液腺から出して動物の皮膚に固着するのです。この口の部分は簡単に外れません。取ったつもりになっていても、セメント質部分が皮膚に残ってしまうことがほとんどです。もし病原体を保有しているマダニだった場合は、体が弾けるときに病原体が飛び散り、指に付着することになります。ダニ感染を受けた動物はそのまま動物病院にお連れください。また、もし飼い主さんがマダニの感染を受けた場合は、できるだけ早く、マダニはつまみとらないでお近くの病院で処置を受けてください。

 

 
<メーカーからのパンフレットを載せておきます>
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マダニによる害があります。



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投与しやすい形になりました。



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同様のお薬ですが、効果が3カ月持続します。



<予防しましょう>

9月は幼ダニの発生個体数が一年のうちで最も多くなる時期です。それは春から夏にかけて吸血した雌成ダニが産んだ卵から幼ダニが孵化するためです。

暑い季節が過ぎ、再び行楽シーズンがやってきました。山に入る機会もあるかと思います。日本紅斑熱に関してはワクチンもありません。ダニに咬まれないようにすることが一番の予防策になります。

どこが汚染地域なのか、もし情報を得ることができるようでしたら汚染地域への立ち入りはしない方が賢明です。ご家族の方は長袖の服に長ズボンのいでたちで皮膚の露出を少なくしダニ付着を防いでください。愛犬を連れて山に入る場合、愛犬には事前にノミ・マダニ駆除薬(予防薬)を使用して出かけてください。予防薬には滴下剤のほか、チュアブルタイプ(愛犬が喜んで食べる味付けを施してある)の内服薬、さらに3ヵ月間効果が持続するお薬も出ています。

詳しくは病院スタッフまで、またご心配なことがありましたら遠慮せずお声掛けください。

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従来型のスポットタイプのお薬です。背中に滴下します。

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1カ月に1回
ご褒美のように与えるお薬です。

 
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同様の効果が3か月続きます

追記

昨年知多半島で見つかったエキノコッカスについての継続検査の結果ですが、平成266月から278月(先月)までの報告で、捕獲犬で糞便中に虫卵が陽性に出たものはなかったようです。お知らせしておきます。
http://www.pref.aichi.jp/eiseiken/5f/Echinococcus1.html

  

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