食物アレルギー・その2検査と治療

 食物アレルギーについて、続きです。治療に必要な検査と、治療についてお話します。

 

<治療のために必要な検査は?>

おすすめの検査は血液中の①アレルゲン特異的IgEを測定する検査と、②活性化T細胞を検出する検査です。2つの系統のアレルギーの仕組みが関与しているため、Ⅰ型過敏症のための検査とⅣ型過敏症のための検査が必要になるのです。IgEの検査はいつでも行うことができますが、活性化T細胞を検出する検査はステロイドのお薬を投与していると正確な結果が出ないので、全くの初診の(どこの病院でも治療をおこなわれていない)ときに検査をするのがおすすめです。ステロイド療法に入ってから検査をする場合はお薬を徐々に減らし完全になくし、しばらくたってから行うことになるため、犬にとって痒みが戻りつらい期間ができてしまう可能性があります。

 

皮膚に点々とアレルゲンを注射してその腫れ具合を見る検査や食物除去試験は当院では行っておりません。

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IgEの検査について詳しい資料を掲示しています。
 

<特別な治療がある?>

アレルゲンとなるものを摂取するから食物アレルギーになります。ですから原因となるアレルゲンを含まない適切な除去食を与えるのが最もよい治療になります。

この治療をおこなう必要があるからこそ、アレルギーの血液検査を強くおすすめしているというのもあります。アレルギー反応をおこす原材料になっている食物は何なのか知ることが治療の第一歩になるわけです。

 

IgEがアレルゲンとして認識するにはアレルゲンの分子量が絡んできます。これには10kDa以上の大きさが必要だと言われているので、肥満細胞を脱顆粒させヒスタミンを出さないようにするためにはアレルゲンの分子量が10kDa未満の食事にする必要があります。例えば大豆タンパクは34kDa、鶏卵(ニワトリ血清アルブミン)は69kDa、牛乳(αカゼイン)は23Daで、このままハウスメイドの食事を作ったとしてもアレルゲンとして認識されてしまいます。

たんぱく質は加熱したり放射線をあてたりすると構造が変化することが知られていますが、加水分解して分子量を小さくしアレルゲンとして認識されないように処理した食品を使ったアレルギーのための処方食が作られています。処方食を作っているメーカー各社(ヒルズ、ロイヤルカナン、ノバルティス、日本全薬)がそれぞれ違う原材料を単体で作っているので、血液検査の結果から、これらのうちのどれかを選択すると良いと思います。ドライフードと缶フードがあります。

 

アトピー性皮膚炎を併発している場合でも、この特別処方食による治療で食物由来のアレルゲンをなくし、純粋なアトピー性皮膚炎の治療だけで済むようにすると症状のコントロールがしやすくなります。

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食物アレルギーのわんこのおうちケアです。
10月いっぱい掲示する予定です。


 

食物アレルギーだけの場合、食事を変えるだけで症状は劇的に良くなります。まるで病気であったことが嘘のようです。治ったと思って普通食に戻して再び痒みを発症させてしまう方もあるくらいです。

 

しかしアトピー性皮膚炎を併発していたりして食事療法だけではうまくコントロールできない場合もあります。手っ取り早くステロイドの薬を選択することもありますが、できるだけ低用量で維持できるように計画しています。時にシクロスポリンに変更する場合もあります。長期的にこれらの薬で管理する場合、皮膚疥癬症や毛包虫症、皮膚真菌症などを発症してしまうことがありますので、処方された食事だけネットで買って与えるということをしないで、定期的なフォローアップ再診にいらしてください。

 

それから食物アレルギーの場合、どうしても腸管免疫システム(GALT)のことを考えないわけにはいきません。ここを健康にしておくために、慢性下痢のおはなしの11回目(http://heartah.blog34.fc2.com/?editor)でも触れましたが、プレバイオティクスやプロバイオティクスなどをサプリメントとして使うこともおすすめです。

 


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アトピー性皮膚炎についても掲示しています。

 

<おわりに>

食物アレルギーの治療の主幹は食事療法です。アレルゲンをなくした特殊な処方食による食事療法は厳密にやらないと成功しません。うまくいかない場合の例としては、治療中にアレルゲンとなるものを原料にした「おやつ」を与えたり、投薬にアレルゲンを含む食品を利用したり、アレルゲン原料で作られたおもちゃで遊ばせるなどがあります。どうしてもおやつをあげたくなってしまうし、口を開けて薬を飲ませることができなくて簡単に食べる何かに頼らなくてはならないし、ひとりでお留守番させるのにおもちゃがないとかわいそうだということがあるかもしれません。それでも目先の簡単でオイシイこととその後のツライこと、どちらが愛犬にとってQOLの高い生活が得られるのか、よく考えていただきたいと思います。

また、毎日見ているとほとんど変化が感じられないかも知れませんが、さらによく観察していただくと症状にも良い時悪い時の波があるのを感じられると思います。もし内緒で食べさせてしまった場合では特にその後の様子に変化が見られるはずです。「処方食しか食べていないのにこんな症状が出た」というのは「アレルゲンを摂取してしまって痒くなった」というのとは治療計画そのものの根底が違ってきます。もし、可愛さに負けてしまったということがありましたらぜひ正直に告白してください。食物アレルギーも生涯にわたる長い旅になります。愛犬とご家族さんと一緒に並走できたらと思います。

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食物アレルギーについて

 食物アレルギーについてお話します。

 

食物アレルギーについてはアトピー性皮膚炎のおはなしの8回目(http://heartah.blog34.fc2.com/blog-category-25.html)でも少しお話ししましたが、食物アレルギーはアトピー性皮膚炎によく似た症状が出るのでこの二つを区別するのは難しいです。またアトピー性皮膚炎と食物アレルギーの両方がある場合もあるので、なおさら区分けはできにくいのです。

アトピー性皮膚炎は吸入性のアレルゲンによって痒みを主とした皮膚炎をおこします。食物アレルギーはアレルゲンとなる食べ物を摂取して、アトピー性皮膚炎と同じような皮膚症状を表します。それ以外に嘔吐や軟便、下痢などの消化器系症状をあらわすのが違うところかもしれません。しかしアトピー性皮膚炎の犬でも胃腸炎をおこすことはあるので、やはり確実な鑑別はできないことになります。また実際に双方を併発していることも多いですから「きっとうちの子は両方あるに違いないわ」、というかんじで捉えてください。

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今月の院内掲示は食物アレルギーについてです!

<食物アレルギーのしくみは?>

私たちヒトはアレルゲンとなっているものを食べたらじきに蕁麻疹(じんましん)が出たり、下痢になったりするのですが、犬の場合は反応がすぐに出ません。それは遅れて反応が出るⅣ型過敏症が主に関与しているせいです。

食物アレルギーでは①即時型であるⅠ型過敏症だけが関わる場合と②遅延型であるⅣ型過敏症だけが関わる場合、③Ⅰ型Ⅳ型両方が関与する場合の3つがあります。食物アレルギーでは食物アレルゲンごとに①か②か③のタイプが異なるとも言われていて、近頃の報告ではⅣ型の関与するものが割合的には多かったという結果がありました。


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1ヶ月くらい掲示する予定です。

難しい話になりますが、Ⅰ型過敏症では免疫グロブリンのうちのIgEがその反応に関わっていて、皮膚や消化管組織にいる肥満細胞からヒスタミンを放出させるので、ヒスタミンによる炎症を引き起こさせます。ヒトの蕎麦によるアナフィラキシーショックはとても有名な話です。

一方、Ⅳ型過敏症はTリンパ球の関与したものです。アレルギー炎症を起こした部分に産生される物質を目指して特定の受容体をもつヘルパーT細胞が集まってきます。そしてそこで炎症反応を起こします。詳しい病態は未解明ですが、集まってくる速度、集まった細胞の数、それによって炎症の度合いが違ってくるのかもしれません。

慢性の腸炎では内視鏡の検査と、内視鏡下で採材した小さな組織の病理検査が行われますが、腸の組織にリンパ球が集まってきた様子を見つけることができます。

 

Ⅳ型は遅延型過敏症ですから、アレルゲンを食べてもすぐに反応が出ません。そのため、好ましくないものが何であるのかが分かりにくく、結果的にアレルゲンとなるものを食べ続けてしまうことになります。

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診療の待ち時間に掲示板もご覧ください。

<食物アレルギーではどんな症状が出るのか>

アトピー性皮膚炎だと、名前に「皮膚炎」がつくので皮膚病だという認識をもっていただけますが、食物アレルギーの場合は、蕁麻疹(じんましん)が出るようなことはあってもそのとき限りで、皮膚が痒くなるのは別の病気だと思われてしまうことがあります。また比較的若齢で初回発症することが多いため、常に皮膚のあちこちが赤く飼い主さんからは「こんなもんだろう」と思われていることも珍しくありません。また「病院に来てる時には興奮しているから赤いけれど、家ではそんなに赤くない」と言われる飼い主さんもたくさんいらっしゃいます。

 

外耳道、耳介部分、足の先端部(指先)、腕の内側、わきのした、後ろ足の内側やお腹の下の方はアトピー性皮膚炎、食物アレルギーともに病変の出やすい場所です。それに加え、目や口、肛門や陰部の周りは食物アレルギーで変化の出やすい場所です。赤く毛が薄く、皮膚が見えやすくなります。

生後1歳にならない頃からすでに痒みが始まっていたとか、季節に関係なくいつも痒がっているとかいうのは食物アレルギーによくあることです。

 

皮膚症状だけでなく消化器症状もあります。便がゆるいことが多いとか、排便回数が1日に3回くらい、またはそれ以上の日があったりします。たまに嘔吐することもあります。慢性的にゆるい便で、時々は下痢と言えるほどの水分量になってしまうこともあるのに、元気はあり、体重も維持されていて痩せ細ることはありません。

ときに合併症として膵炎や胆管炎を起こし、こんな時は元気はなくなってしまいます。

 

 

長くなりましたので、検査と治療については次回に回すことにします。

 

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