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熱中症になった時の対応

 もし熱中症になってしまったらどのようにしたらよいでしょうか。

熱中症がどのようなものなのか知らなければ、すでに熱中症になっているけれど対応ができないだろうと思います。まずは、熱中症の症状について知ってください。

 

<熱中症の症状>

軽いものから順に、こんな感じです。①だけだから大丈夫、ということはありません。そのまま②③へ進行していくこともあるし、突然⑦⑧が始まることもあります。怖いです。

    パンティング呼吸:ハァハァ呼吸のことです。小刻みな呼吸。口を開けて舌が見えます。さらに進むと舌をだらりとたらします。舌が口の横から出てくることもあります。安静にしているときの呼吸数は1分間に30回以内です。たいていは20回くらいです。(1分間に30回は心臓病のわんこで「連絡してね」とお願いするときの回数です。パンティング呼吸は回数を測定することに意味がありません。60回以上になっているはずなので、測定不能扱いです。)

    体が熱い:触ると皮膚の温度が高くなっています。わきの下やお腹、耳の内側など、被毛がなくて直接地肌に触れることができる部分の皮膚が熱くなっていることに気づけると思います。直腸で体温を測る場合、38.5℃前後が平熱です。

    よだれがいっぱい:そのままの呼吸が続くとよだれがいっぱい垂れてきます。糸を引いていることもあります。床面が水浸しになってくることさえあります。

    頻繁に休む:散歩中など、頻繁にしゃがみ込みます。少し動いてはすぐに立ち止まってへたり込んでしまいます。

    心拍数の増加:心臓のドキドキが速くなります。1分間に60回の心拍数くらいが普通です。

    白目が赤く充血:眼の白いところが赤くなって血管がやけに目立つのがわかります。乾いていると口の粘膜も赤く充血しています。

    おう吐や下痢:黒くてねばっこいうんちです。でれでれ~っと出る下痢です。息張るというよりも、そのまま出てきてしまう感じ。結構体調が悪くなってからの症状です。

    ぐったり・衰弱:起き上がれません。意識も薄らいできます。呼吸は努力呼吸に変わっているかもしれません。非常に危険な状態です。

    けいれん発作:無意識のまま、全身の筋肉がひきつった運動をします。けいれんです。このまま死んでしまうこともあります。

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パンティング呼吸を始めた段階で要注意。
すぐに冷えた部屋に移動させてください。

注意)熱中症は「体温調整機能がこわれてしまう病気」である一方、「水と電解質が不足してしまう病気」の側面を持っています。「激しい体温上昇」の陰で、「だるだるしている」という物静かな症状だけを出している場合があります。必ずしも屋外の炎天下に居た時に発症するだけではありません。屋内に居ても「隠れ熱中症」になっていることがあります。上記の症状だけで判断しないでください。 

<対処法>

    パンティング呼吸:このくらいなら冷えたところに移動させます。水を飲ませます。少し様子を見て呼吸が収まればそのまま静かにしておけば大丈夫かと思います。

    体が熱い:冷えた場所に移動させましょう。エアコンの温度設定が効く環境ならばは一番低く。冷やす部屋は締め切って、さらに冷房効率を上げるため、遮光カーテンなどあればカーテンで光を遮りましょう。扇風機も回転させます。冷たい水で濡らしたバスタオルを全身にかけます。首、わきの下、内またに、濡れたバスタオルの上から保冷剤や凍らせたペットボトルをあてがいます。もし、水を飲めるようであれば水を飲ませます。病院に行く支度をします。連絡を取ってください。この段階でしばらくしたら犬が安定するかもしれません。そこで冷やすのを中断したり、病院へ行くのを中止したりすると、しばらく経ってから熱のリバウンドが来ることがあります。熱中症は発熱性の疾患ですが、身体は水と電解質が欠乏した状態です。それを補うことができるのは動物病院での補液治療です。様子が戻ったからといえ、油断してはいけません。

    よだれがいっぱい:②に同じです。

    頻繁に休む:②に同じです。

    心拍数の増加:②に同じです。

    白目充血:②の状態で、(おそらく飲水ができないだろうと思います)、即病院に連絡を取り、急行してください。迷っていてはいけません。

    おう吐や下痢:そのほかの状態の積み重ねがないと、冷やそうと思わないかもしれません。⑥に同じです。危険信号点滅しています。ここでブレーキをかけないで病院へ急行してください。

    ぐったり:⑥に同じです。覚悟が必要です。離れた家族にも連絡を。

    けいれん発作:⑧に同じです。

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あかちゃんの絵ですが、わんこの冷やす位置も同じです。



注意)熱中症のときの応急手当として「冷水に浸す」方法がありますが、水から出すタイミングを図るのが難しいこと、濡れた身体で動物病院へ運搬するのも大変なことなどから、濡れたバスタオルで包み、身体の太い血管が体表面に近くを流れている部分である首、脇の下、内もものとこを保冷剤や氷などで冷やし、その状態のまま動物病院に運ぶ方法をおすすめしています。

それにしても「こうなってからどうしよう、こうしよう」と考えるより、やはり予防が大切です。犬だけではありません。ご家族のみな様もどうぞご自愛ください。

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お出かけのときの熱中症予防

 お出かけの時の熱中症対策についてお話しします。

 

<必ずしも一緒に遊びに行かなくてもいい>

最初に言っておきます。犬と一緒にバカンスを楽しまなくても、里帰りしなくても、こんな厳しい季節ですので、来月のお彼岸の時のお休みまで延長してもバチは当たりません。ペットホテルやペットシッターさんにお願いするという選択肢もあります。

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<行く場所を選ぼう>

もし遊びに行くのだったら涼しいところを候補地に選んでください。天気予報も調べましょう。今なら何度くらい?近づいて来たら週間予報をチェックです。雨がちで涼しくなるでしょうか。酷暑続きでしょうか。作戦変更もありです。まだ、間に合います。

 

<アウトドアライフに不向き?>

熱中症とは直接関係がないかもしれませんが、いわゆるキャンプとか犬も泊まれるコテージとか、いつもの状況と違うところになじめない犬がいます。車酔いの犬をドライブに誘うのもいけませんが、たいていのおうち大好きわんこは旅行が苦手です。

アウトドアライフには大きな音や人混みは付きものなので、音恐怖症があったり、人なれしていないと苦痛になると思います。怖がりさんは初めてのもの、初めてのことが苦手です。テントなども、家の庭で一度広げて、家族が入って見せるなどの予行演習が必要です。

「来い」のコマンドで帰ってくるようにしつけがされていないと、万が一リードが離れたときに苦労します。あらかじめの服従訓練を見直しておきましょう。

「慌てる」、「ストレスが重なる」、「体調不良になる」は、熱中症を引き起こしやすい誘因です。

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<健康状態の把握>

春の健康診断で気になっていたところは解決しているでしょうか。まさか1年以上チェックをしていないまま、ということはないでしょうか。いつも以上に細やかな観察をしておきましょう。

いつも服用しているお薬やサプリメントの残り分を数えて、不足分は早めに用意するようにします。アウトドアライフを楽しもうと思っている場合、ノミ・マダニ駆除薬も必要です。

行くまでに2週間以上あって、忘れてた!というようであれば、ワクチン接種を済ませてください。

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<事前準備>

準備は大切です。車中で必要なもの、行ってから必要なものをリストアップしてそろえてください。

愛犬の健康手帳的なもの(これまでの診察記録をつけてあれば、もしなくても検査結果表など)や保険証もその一つです。

保冷剤水を入れたペットボトルは今のうちに冷凍庫で場所を確保、凍らせておきましょう。

クレートのチェックとお掃除、クレート内から水分補給できる給水器のチェックもしておいてください。壊れてはいませんか。

ペットシーツマナーウェアは多めに支度します。汚れものを入れるゴミ袋も必要です。

・いざというときに愛犬をくるむバスタオルなども余分に支度しておきます。応急処置では、タオルを水に濡らすことがあります。濡れたものを入れる袋も必要になります。

・(熱中症予防に関係ないですし、忘れるはずはないと思いますが、食餌と食器首輪とリード、呼び戻しに使うおやつや時間つぶしに必要なお気に入りのおもちゃも選んでおいてください。)

・車で出かけるとき、愛犬は後部座席にシートまたはクレートで陣取ることになると思います。内エアコンの冷気はクレート内部まで届くかどうかを事前に調べておいてください。微妙な風向きを変更する必要があるかもしれません。

・意外なところですが、うちわも準備品に入れておいてください。たぶん、重宝すると思います。

・夜間ライトアップするのに都合の良いライトを支度しておいてください。暗闇で犬のことがわからなかった、ということがないようにするためです。

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<いざ出発です>

クーラーボックスは積み込んでくれたでしょうか。犬のクレート内にはタオルで巻いた保冷剤凍らせたペットボトルを入れてください。給水器にもを満たしてください。コンビニが近くにないというところでは、途中補充できそうなところで支度しておきます。冷やしタオルを入れておくのもいいです。

・犬のために支度しておいたもの(食器やリード、ペットシーツの類です)を忘れずに乗せてください。

・出発後は安全運転をお願いします。急ブレーキ、急ハンドルは犬にもストレスです。時々、クレート内の温度を確認し、意外と暑そうならうちわであおぎましょう。

こまめに休憩をとってください。犬も出して排泄などさせましょう。こうすると異変に気付きやすいです。

・日中は地面が熱いです。これはどこに行っても同じです。パットをやけどします。日が差すピークの時間帯は特に、日陰を選んで、日照りのところを歩かせないようにおねがいします。

・サービスエリア、パーキングエリアでも日陰があるところを選んでください。たいていのドッグランは日当たりが良好です。いつもそこで遊んでいると犬が習慣になっていて入りたがるかもしれませんが、パスした方がいいと思います。

・クレート内の給水器からは水を飲まなくても、屋外で水食器からならば水を飲めるかもしれません。トライしてください。

・くれぐれも、ここで、犬を、車内に、置き去りにして、家族だけで、出かけないように!「だって、ソフトクリームを買ってくるだけだよ?」それでも、だめです。誰かが車内に残っていて、エンジンはつけたままでお願いします。日当たりの良い場所に駐車していると、エアコンがついたままになっていても効きが悪いです。走行中とは条件が変わるようです。ご注意ください。

・とにかく、安全第一、犬を中心に考えて行動していただくと、家人には無理のないスケジュールになると思います。

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<ホテルまたは施設で>

翌日のため、保冷剤や水入りのペットボトルの再冷凍をお願いしてください。

遊ばせすぎない、はしゃがせすぎない、静かに休ませてください。ぐっすり眠ることは体調管理でとても大切です。

 
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<熱中症対策とはちがうこと、いくつか>

次のことは熱中症予防とは違いますが、総合的に犬の安全について思いつくことを書いておきます。

 

<川に行く?湖?>

犬は思わぬことをしてくれます。リードが長くなっていたり、知らないうちにほどけていたりすると川に飛び込んでいることがあります。慣れている犬はきっと泳ぐのが好きなのだろうと思います。もし水流が思った以上に速いとか、いつも行くところより水量があるという時、犬は溺れることがあります。泳ぐのが好きな犬なら余計に、犬用のライフジャケットを着せておいてください。まさか、ということも起こります。

 

<細菌感染の予防>

川や湖、雨水、石清水も含めて、大腸菌やサルモネラ、レプトスピラのことを考えると、犬が飲みそうだったら止めてください。家から用意してきた安全な水を飲ませてください。

 

<BBQする?>

やけどに注意です。近づけすぎないようにしてください。夢中になってしまうと犬のことを忘れがちですが、その間はひとりで遊べるものをうまく利用します。また食べてはいけない食べ物にも注意です。食べ残しにも注意です。食べられないもの、たとえば串やアルミホイルなどにも注意です。そして食べ残しをあさられないように、ごみはしっかり処分してください。

 

<サンプロテクション>

日当たりに出ている時間にもよりますが、皮膚が薄い犬、短毛の犬ではUVケアのため、ペット用サンスクリーン(日焼け止めクリーム)を塗ってもらうといいと思います。無香料タイプを選んでください。のちに発生する可能性のある皮膚がんのリスク軽減のためです。


それにしても、暑い日のことですから、犬の健康にも、ご家族みなさんの健康にも気を配り、無理のないように、お過ごしください。

 

 

 

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日常の熱中症予防

 連日の厳しい暑さです。お外の高齢わんこさん、「ハァハァ頑張りましたけど、もうどうにもなりません!」と、とうとう熱中症で運び込まれることになりました。おうちわんこも「だるいし、食べたくないし、なんだか熱っぽい!」ので来院されます。「かくれ熱中症」の症状です。

熱中症は予防が大事。

あまりひどい暑さなので、来週アップの予定でしたが、1週早めて「日常生活の中での熱中症予防」についてお話しします。それからお盆休みの近づく来週は「おでかけ中の熱中症予防」について、そして再来週は「もし熱中症になったときの対処法」についてお話しすることにします。

 

<日常生活での熱中症予防>

とにかく、予防が大切です。以下、予防方法について。

 

<1、  熱中症リスクが高い犬>

ハイリスクメンバーは、短頭種(パグやフレブル、ボストンテリアなど)のわんこ、高齢わんこ、肥満わんこ、心臓病や呼吸器疾患、糖尿病などの病気をもつわんこたちです。この子たちは、お外飼育をしてはいけません。基本、24時間エアコンを効かせた屋内に置くべきわんこです。暑い時期のお散歩もサボって構いません。「散歩って行かなくてもいいものなの?」「絶対に行かなくちゃいけないもんだと思ってた!」という方、命を落とすことに勝るお散歩の利点は何一つ見つかりません。何があっても家で留守番をさせましょう。

それから熱を吸収しやすい黒色や濃い茶色などの被毛を持つ犬は、白色の犬に比べ暑さを体毛の中に溜め込みやすいので、彼らは暑さに弱い犬として仲間入りさせてやりたいです。

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<2、  ハイリスクじゃなくても>

7月の連休明けから、猛暑日更新、熱帯夜更新、観測史上最高の気温など毎日耳にします。大概の年ならば屋外犬の飼育では「日陰に」とか「風通しを良く」など穏やかなことを言っていましたけれど、今年の夏は一言でいうと「酷暑」。常は外で夏の猛暑こえを頑張ってもらっていたわんこですが、気安くエアコンの屋内に誘ってやってください。何もギンギンに冷やす必要はないです。冷えたリビングのドアをちょろっと開け放ち、廊下あたりに扇風機を置き、冷風が犬のいる玄関先まで届くようにしてください。これで幸せに安眠できます。睡眠不足は病気のもとです。熱中症だけでなく、いろいろな病気予防になります。

また、高齢わんこが屋内に居て、エアコンを我慢させる必要など毛頭ありません。「エアコンは午後から」なんて、だれが決めたのでしょう。決めるのは習慣ではありません。外気温でもありません。わんこの体調。これだけです。調子が悪くなってからでは遅すぎます。今です。

エアコンも知らないうちにタイマーになっていた!故障しちゃった!停電になった!があります。油断しないでください。

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<3、  それでも外が好き>

どうしても屋内に入れることができないとき、日陰、風通しを考えた場所に移動させるほか、ミスト装置を設置してもらうと少し温度が変わるかもしれません。あとは、保冷剤や水を入れたペットボトルを凍らせたものなどをタオルでくるんで体の近くに寄せると体温上昇を防ぐことができます。でも、ほんの少しのこと。ほぼ気休め程度です。こんなにも暑いのですから。

一家の誰かが「犬なんか外で飼うもんだろう」と言っていても、説得してから準備するのでは遅すぎます。説得と同時進行で犬を屋内に入れられるよう、どこに置こうか算段しておき、その場の片付けも着々と進めておいてください。OKが出たら即、実行です。

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<4、  屋外タイム>

地面に素足で触れてみると、真夏の砂浜、海水浴の日の記憶が呼び戻されます。まともに歩けませんでした。そのくらい地面が熱くなっています。犬は靴を履いていません。また、地面からの距離が近いので照り返しの暑さをひしひし感じるはずです。屋外に出るのに「犬が裸足で歩けるくらいの地面の温度になるとき」を思うと、自然と「早朝」と「日暮れ後」という選択肢になります。そしてできるだけ日陰を歩くようにするのが愛情です。

暑くなると散歩する人間のほうがついつい早歩きになりますが、小型犬は人の歩く速さについていくには、早歩きというより駆け足の一歩手前くらいになっています。私たちの感覚からするとマラソンに近いかもしれません。自然と交差点ごとにしゃがみ込んでしまうことになります。すでに疲れています。サインを出しています。犬のスピードに合わせ、途中で休憩を入れながら散歩してください。そして帰宅したらすぐに冷所で休憩です!

クールバンダナとか、ポケット付きのハーネスが売られています。お散歩のときに小さな保冷剤を包み込んで首に巻くことができます。大々的な研究がされているわけではないのでエビデンスはないですが、おそらく何もつけないで歩くよりは涼しいだろうと思います。

途中休憩を考えているときは携帯用の水食器とペットボトルの水が必須です。

それから近くをくるっと回ってくるだけの散歩でも、携帯電話やスマホは持って出かけてください。万が一の時、家族と連絡を取り合って車で迎えに来てもらったり、動物病院に連絡してすぐに駆け付けることができます。

繰り返しますが、連れ出して日差しにあてない方がベターという場合があります。散歩は命懸けで行くものではありません。

 

<5、  トリミング>

「全身バリカンがけしたら涼しくなるよね?」という冷却目的のトリミングですが、実は間違いです。カットには冷却効果は期待できません。被毛は日焼けから体を守る作用もあるので、短くすると皮膚疾患を薬浴するのに都合がよいですが、涼しくするのが目的だとするとおすすめではありません。被毛が二層構造になっているわんこの場合であれば、アンダーコートをしっかりグルーミングして取り除くことの方が重要です。毎日のグルーミングが大切なのです。

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<6、  飲水>

「のどが渇いてからでは遅すぎる」というのは人の熱中症対策ですが、犬も同じです。常に少しずつでも水分補給ができていることが大切です。ガブガブ飲んでいるのはすでに水分喪失が結構ある印です。がぶ飲みは消化液を薄めてしまうし、胃の働きを弱めてしまいます。おう吐や下痢にもなりかねません。「いっぱいのんでいるから大丈夫」は「すでにいっぱい飲まなきゃならない状態まで加熱している」というとらえ方をしてください。正しい認識が犬を救います。

おかしければ冷所で安静です。屋内です。エアコンです。扇風機です。

 

<7、  健康診断・検診>

「歳をとってきたのは知っているけど、まさかこんなに悪くなっていたとは」はがっかりする認識です。「大丈夫?乗り切れる?」を心配してください。「事前に知っていれば気を付けることもできたかもしれない」のなら、やっぱりあらかじめ体調チェックをしておくのが良さそうです。それにしても「元気そうだから年齢による変化を侮っていた」というのが一番多いです。いたわってあげましょう。





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脱水と熱中症・熱中症予防

「脱水」が「水」だけが不足しているのではなくて「電解質」も不足している状態なのだというのは、もうお分かり頂いていると思います。

脱水するとからだはどのようになるのか、そこからどうして「熱中症」につながるのかお話しします。

 

 <脱水すると血液の量が減ります>

血管の中をめぐる水分の減少は血圧の低下につながります。すると肝臓や消化器系組織(胃腸など)をめぐる血液量が減ります。必要な栄養素を吸収する力に欠けるだけでなく、食欲不振になります。脳に行く血液量が減ると考えることをしたくなくなります。腎臓をめぐる血液が減ると老廃物の排泄が滞ります。同時に電解質も減りバランスが崩れると神経や筋肉に影響が出てきます。やる気が起こらない脱力につながります。

これらをそのまま自分のからだに置き換えると、「食欲がなくて、なんだか疲れたような感じ」です。「夏バテ」かしら、と思う症状に似ています。

 

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<脱水と症状>

「脱水していますね」、と私たちがお伝えするとき、動物の体にどのような変化があるかというと、

・粘膜が乾燥している

・皮膚をつまんで離すときにテント状になって残る

・目がくぼんで眼窩にすきまができる

・体重が減っている

・脈が早い、脈が弱い

などです。

清書では5%脱水の時はこんな風で、6~8%の時はこんな風、10~12%ではこんなところまで、というように大まかな区分ですが症状を分けており、体重の10%が失われるほどの重度脱水ではショック状態になりますが、軽度の脱水では見た目には分からないくらいのものです。

実際に「脱水」していますよ、と診断した犬の飼い主さんが、こんな症状が出ているので病院にきましたという「主訴」では

・食欲不振

・嘔吐

・下痢

・元気消失

・弱っている

というもので、「脱水」だからこんな症状が出る、といった特徴的な症状はありません。

 

このようなものですから飼い主さんからみてはっきり「脱水」と見てとれる症状がないだけでなく、ごく軽度の脱水では症状が表れにくいということもあるのではないかと思います。これを「かくれ脱水」と言うことにしています。からだの中の水はとても大切で、多くの重要な仕事をしているので、傍目には分かりにくくても不足しているとからだは不調に陥るのです。そしてこの「かくれ脱水」こそが「夏バテ」であって、「脱水症と熱中症の始まり」だと思うのです。

 

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<かくれ脱水はすでに始まっている>

「具合が悪いです」といって犬が連れてこられる時、ほんとうは犬のからだの中で調子が悪いのが始まってすでに2~3日は経過しているのかもしれないと思います。

暑さの始まりのころは消化器症状を訴えてくる患者さんが多いと以前お話ししましたが、気温の上昇などで不感蒸泄が増えると、食欲も減退し、体液が減少します。軽い脱水です。それから消化管への血流が減少するので消化や吸収がうまくいかなくなり、嘔吐や下痢などの症状を出すことになります。この結果、水分の喪失に拍車がかかり、電解質も失い「脱水症」になってしまいます。

暑さの始まりのころは晴れた日中は暑いですが、夜は涼しいので寝苦しいこともありません。このような気候だと、日中仕事で家を留守にしている飼い主さんには、犬の昼間の様子が分かりにくいだろうと思います。食欲不振や嘔吐、下痢になってはじめて身体の不調に気づくのではないかと思います。

屋外で土の上に居る犬の場合では、飲んだ水を嘔吐していても浸みこみ乾燥してしまい吐物の跡が残らなければ夕方帰宅された飼い主さんは気づくことができません。嘔吐では「水分」と「電解質」を喪失しているわけですが、その後犬が水を飲んで、なんとかからだに収まったとしても、補われるのは「水分」だけで「電解質」は補われませんから、専門的にいうところの「低調性脱水」を起こしていることになります。

 

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<熱中症を起こしやすい犬>

体温上昇と脱水を起こしやすいのが熱中症のリスクの高い犬です。

1回目のお話で熱射病になりやすい犬についてお話ししました。同じことになりますが再度載せておきます。

熱射病は効果的な呼吸ができない犬に多く発生します。

ブルドックやパグ、ペキニーズなどの短頭犬種が起こしやすいのはご存知かと思いますが、そのほか、肥満犬や黒い被毛の犬、年齢的には幼犬や老齢犬で危険は高いです。呼吸器(気管や肺)、心臓に病気を持っている犬、高熱になる病気や全身性の発作を起こす病気を持っている犬、過去に熱射病の病歴がある犬でもリスクが高いです。

このほか体毛が冬向き(寒冷地が産地になっている犬種)の犬もリスクは高くなります。アンダーコートが密でグルーミング不足になっていると冬の毛布を身にまとったままの状態で夏を迎えることになるので、体温を体内にこもらせやすいのです。シベリアンハスキーやチャウチャウは珍しい犬種になってきましたが、柴犬も彼らと同様、アンダーコートがみっちり生えているのでハイリスクになります。

人と同じように高齢の犬も起こしやすくなっています。腎機能をはじめ様々なからだを維持するための機能が衰えているので体調を崩しやすいためです。また筋肉は水分を多く含む場所ですが、筋肉量が低下している老犬は常の水分保持量があまりありません。心臓病の犬では、溜まりやすくなった水分を排泄しやすくする薬(利尿薬)を処方されている犬がいるかもしれません。これらは尿量が増えるので体液を失い易くなっています。腎機能の低下が傍からは明らかになっていない時(代償期)も高リスクです。

幼齢の犬も脱水を起こしやすく注意が必要です。成犬に比べ体液量が多いのですが、不感蒸泄が多く、腎機能が未発達です。脱水症に対する予備能力も低く、気付くのが遅れると命取りになりかねません。

しかし、どの年齢層のどのような犬種のいぬでも、飼育環境が屋外だろうが屋内だろうが熱中症に罹患します。うちの犬はハイリスクにリストアップされていないから大丈夫、ということはありません。

 

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<脱水を守るために体熱が上昇する>

今回、脱水症を中心にお話ししていますが、「高熱」にやられるのが「熱射病」で、「水不足」にやられるのが「熱中症」みたいな感じになっています。

ちがいますよね。「熱中症」は「高熱と脱水」両方でおかしくなります。

面白くも無かった3回目の「水」のお話に戻ります。水は体温調整の仕事もしています。からだじゅうをめぐる体液は深部の熱い熱を、血液が体表面を通過するときに血管を太くして外に逃がそうとします。皮膚の表面に温度の上がった血液を集めているかんじです。それでも体温と外気温の温度差がほとんどないとここからの熱の放散はできなくなります。

パンティング呼吸でも体内の熱を放散しています。しかし湿った呼吸や涎、不感蒸泄の増加で徐々に水分が減り、脱水になります。一定以上の体液が奪われるとからだはそれ以上の体液喪失にブレーキをかけます。そのため、初めは有効に働いていた体熱放散システムも水分保持のためにやむなく停止してしまいます。それでひとたび脱水のレベルが高くなるとあとは「汗もかいていないのにからだがぐんぐん熱くなっていく」ことになるのです。そして「熱中症」はそのまま重症化していきます。

 

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<初期の熱中症を見逃さない>

長くなりました。熱中症の実態、お分かりいただけましたでしょうか。

結局、「熱中症」は「夏バテ」とも言える「軽い脱水症」から始まります。

熱中症の予防というと、

①熱い車内に放置しない

②暑い時間帯の散歩を避ける

③屋外犬は日陰で風通しの良いところに犬舎を動かす

など、犬の環境に重点を置いた注意事項ばかりが紹介されていると思います。

「かくれ脱水」が「熱中症の始まり」という観点に着目すると、生体そのものの状態から予防できることは何か、と考えられます。すると、初期の小さなサインを見逃さず、脱水を補正していくことが予防になることが分かります。

①なんだか機嫌が悪いみたい

②なんとなく元気がないみたい

③食事が進まない、全量食べるのに時間がかかる

くらいの段階で、動物病院の門をたたき、早めに対処するのが熱中症を重症化させない秘訣だと思います。

 

 

長くなりました。

今回で熱中症のお話はおしまいです。

どうぞ、くれぐれも重度の熱中症を起こさないで健やかに夏を超すことができますように。

 

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体液について

熱中症についてのお話、3回目です。


「熱中症」は「体液の不足」と「体温上昇」が原因で発生するトラブルであるとお伝えしました。前回までは主に「体温上昇」に視点を置いたお話しをしてきました。熱中症は「高体温症」だけでなく、脱水症とも密接な関連があります。今回からは「体液」に視点を置いたお話しをしていきます。

「脱水があります」というと、「あんなにお水を飲んでいたのに脱水になるの?」というご質問を受けることがあります。脱水は単純な「水」ではなく、からだを構成する「体液」が不足するものですから、「水分」だけでなく体液を構成する「電解質」が不足しても脱水になります。


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<体液というのは>

人と同じように健康な成犬もからだの60%(体重比)は水でできています。年齢や性別、栄養状態により少し変動があり、若齢動物では70%から80%にも上りますが、老齢動物では50%から55%です。

この水は「水分」と「電解質」からできていて「体液」と呼ばれています。

①細胞の中、

②細胞と細胞の間(組織間)、

③血管の中(血液成分として)に、

およそ
831の比率で入っています。

60×1/831)=5。からだの約5%が血液の中の水分になっています。

細胞の中の水分(①)は細胞内液(Intracellular fluid:ICF)、

細胞と細胞の間や血管の中の水分(②+③)は細胞外液(
Extracellular fluid:ECF)と

呼ばれています。細胞内液と細胞外液では、中に含まれる溶質の濃度が大きく異なります。

 

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<電解質というのは>

電解質というのはナトリウム(Na)やカリウム(K)、クロール(Cl)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)などで、イオンになって体液に溶け込んでいます。

細胞内液(①)には高濃度のナトリウム、カルシウムとごくわずかなカリウム、そのほか重炭酸塩、リン酸塩、たんぱく質などが含まれています。

 細胞外液(②+③)ではカリウム、リン酸塩、マグネシウムが主要な電解質になっています。

血液検査では血管内の血漿(③)中に含まれる(細胞外液の)電解質を調べています。

電解質は陽イオンと陰イオンがありますが、細胞膜を通して細胞の中に特定の物質が入り込んだり出ていったりしてその細胞が活躍するので、大切なのです。心筋の活動をおこしているのもイオンの働きです。

 

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<体液は平衡に保たれています>

飲水ができる状態の健康動物では体液の平衡が保たれています。つまり、入ってくる水の量と出ていく水の量のバランスがとれています。

からだにとっての主要な水の供給源は飲み水と摂取する食物に含まれている水分ですが、そのほかに代謝からも水が産生されています。(1Kcalの熱量が産生されるとき0.1gの水ができます。)

電解質のバランス(電解質の一部が増加したり減少したりすること)も、酸塩基バランス(からだが酸性になったりアルカリ性になったりすること)も均衡がとれています。おもに腎臓がそのような仕事をになっています。

 

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<脱水がおこるとき>

脱水している時、これは①水分摂取量が減少しているか、②水分喪失が増加しているかが原因です。その他に③腹水などのように水分が本来の場所以外のところに入っていき(サードスペースへの喪失といいます)機能的に利用できなくなっていることもあります。

①水分摂取量が減るのは、何か基礎疾患があって食欲や飲水欲が低下している(もしくは廃絶している)ときや、飲みたいなと思ったのに水が近くになくて飲めなかったようなときに起こります。

②水は尿、糞便、唾液、呼吸、汗、じくじくしている傷口などから体外へ失われていきます。尿路からたくさん水分が出ていく病気の代表的なものは腎疾患や糖尿病、クッシング症候群などで、これらの病気をもつ場合は脱水へのリスクが高いということになります。体外に水分が失われていくもう一つの重要な経路は消化管です。健康であれば糞便中に排泄される水分はごくわずかですが、嘔吐や下痢をした場合は、水分喪失を考えなくてはならないほどの(有意な)量の水分が失われてしまいます。(また嘔吐や下痢になっている時は水分の摂取量も減少しています。)

少々詳しいお話しになりますが、胃からの嘔吐がある場合失われるのは水分だけでなく、HClNaKもあり、十二指腸からの逆流もある場合は、HClNaKのほかHCO3も喪失するので、脱水だけでなくからだが酸性に傾く「代謝性アシドーシス」も起こしやすくなっています。

 

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<夏の時期に多い脱水>

なんとなく食欲がない、食事の摂取量が減っている、時間はかかるけれど、まぁなんとかいつもの量は食べられたかなぁ、というような場合は①の水分摂取量の低下につながります。

気温が高いと知らず知らずのうちに唾液や呼吸、汗などで水分が失われていく「不感蒸泄」も盛んになります。意識しないうちに失われていく水分、これが②にあたります。

普段は入る水と出ていく水のバランスは取れていますが、気温の高いところに長時間居たり、暑いときに激しい運動をしたり、体調を崩して嘔吐や下痢になったりすると失われる水分が増えます。摂取水分量がこれに見合う量にならないと水分のバランスが崩れ脱水になります。

 

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<体液は働き者>

体液はその中に栄養素や老廃物、酸素を溶かし、全身をくまなく回っていき、必要なものを必要なところに届け、不要なものを排泄できるところに届けています。そのあいだに体温調節も行っていますし、電解質や酸アルカリなど、体の内部の環境が一定に保たれるようにしています。「ホメオスタシス」(恒常性)です。

水の物理的な特徴と、それによる利点を挙げてみます。驚くほどの機能を持っていることが分かります。

①溶媒能が大きい(多くの物質を溶かすことができる)

②電媒係数が高い(多くの電解質のイオン化やその反応を発生しやすい)

③表面張力が高い(小さな隙間から入り込み細胞の奥まで届くことができる)

④比熱が大きい(体温が下がりにくく保持しやすい)

⑤熱伝導率が大きい(局所だけが高温になるのを防ぐことができる)

⑥気化潜熱が大きい(不感蒸泄によって熱を放散するのに都合がいい)

⑦融解潜熱が大きい(凍結からからだを守っている)

⑧短波長光線の透過性がある(紫外線を良く通してビタミンDを産生するのに適している)

 

まさかの物理学を持ち込みました。

からだの中の水がとても大切なものであること、有益な仕事をしているということをお伝えしたかったのです。今日のお話はつまらなかったですね。次回は脱水についてお話ししていこうと思います。

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