市販フードと特別療法食

「 処方食は高いんだよね。」と一般食に変更される方もあるのですが、猫のストルバイト結石症はそんな飼い主さんの心を見透かしたように、猫を襲ってきます。

処方食、家計を圧迫するほどに高いのかなぁ。
今日はキャットフードと診療費用について、試算してみました。
単純に1Kgあたりいくらなのか、ということではなく、必要な栄養を摂取できる量を考えての試算です。
体重4.0Kgの去勢済みオス5歳、で考えてみます。巣通の去勢オスよりは少々スリムな体型で設定しました。
避妊去勢済みの体重4.0Kgの猫さんの場合、1日の必要エネルギーは198KCalです。

当院でおすすめしている某社のフード、処方食まではいかないけれど動物病院推奨品です。これは4Kg5880円のものですが1日に66g必要で、1カ月では1980g。値段にすると1カ月で2940円という計算になりました。
一方、ネットで調べた某製品、良く知られた国産メーカーのものを対象商品に選びました。やはり聞いたこともないメーカーだと栄養的に心配がありますので。味の違い、猫さんの好み、そのへんのことはこの際無視してあります。いわゆるグルメ品ではない、けれど信頼できる一般食、という基準で選んであります。で、これですが、某サイトで2.5Kg698円でした。これだと1日に57g食べれば同じだけのエネルギーが得られ、1カ月に必要な量は1710g。これは1カ月で480円の計算です。
片や2940円。これはー!6分の1ですね。勝負にならないくらいの価格差です。
これで、健康が維持できるのならば、それは素晴らしいこと。ぜひ差額分は猫さん預金して、万が一の時のために、回してやってくださいっ!


さて、たいていの飼い主さんって、食事のこととか病院に相談に来ることもなくネットでお買いものするなどして動物病院と疎遠になると、猫に好ましいこと、好ましくないこと、というのを忘れてしまいます。派手な広告に惑わされる、ということもあります。しっかりと名の知れた日本の有名メーカーさんはストルバイト結石に直結するようなフードをつくるわけがないのですが、なぜか一般食にするとストルバイト結石が出来てしまっている。ことがある。おかしいぞ、と思ってうかがってみると、次いで出てきたのが「にぼし」「かつおぶし」です。リン酸アンモニウムマグネシウム結石の成分であるものを高密度に含んだ食品、「にぼし」「かつおぶし」が毎度の食事に登場していることが多くあります。「えっ?だって、ペットのにぼし、カルシウムたっぷり、骨元気!身体にいいんでしょ。」という解釈です。「これを食事に振りかけるとぐーんと喜ぶし、美味しそうに食べるんですよ。」とにこにこ笑顔の飼い主さんもいたりします。つまり、「それ、良くないこと!」という正しい情報が届かないのです。


「ペットのためのにぼし」これを食事に混ぜたらどうなるでしょうか。これも試算に加えましょう。某サイトでは価格が500g798円となっていました。お安いのを探し出しました。2.5Kgフードを消費するのと同じように1.5カ月で1袋消費するとして再度計算を行います。
1カ月480円のフードににぼし代金532円をプラスします。合わせて1カ月1012円です。
こうすると処方食1カ月との差額は1928円になりました。
そうですね。それでも違いは大きいです。
ちなみにこちらの「にぼし」の栄養量は加算しません。ですから4Kgの体重は維持されず、増体傾向になっていきます。


さて、こうして家計費節約して、6カ月を経過したとしましょう。
というか、まぁ、6カ月もするとストルバイト結石が形成されますから、6カ月、にしてみました。(もっと短期間で出来上がってしまう猫さんもいます。)
ここまでで食費の差額は合計で11568円です。
肥満になったことでFLUTDのリスクも高まりました。そしてシーズンはちょうど冬。
頻尿、血尿、排尿痛、残尿感。いよいよ発症です。

このFLUTDの症状から、この猫さんの病気が尿石症なのかFICなのか、それともまさかの膀胱腫瘍?なんていうのを鑑別診断しなくてはいけません。最低限の尿検査と画像診断(超音波検査、X線検査)は必要になるでしょう。さらに症状を鎮めるお薬処方が入ります。とくに問題がないという場合、初診と1回か2回くらいの再診で治癒するでしょう。もちろんこの場合も結石溶解食を始めるべきなので、完全な処方食生活が待っています。万が一、細い尿道を結石が閉鎖させてしまったような場合は開通させるための処置が入るかもしれません。また、閉塞がうまく解除出来なければ外科的な介入も必要になるでしょう。新しい尿道口を設置する手術です。
最も簡単に収まった場合だと、6カ月の差額でおつりがくるかもしれませんが、閉塞してしまうと1回の診察だけで終わってしまいそうですし、手術になれば不足してしまうことは間違いありません。


処方食はある種の病気を治療すること、進行を遅らせること、好ましくない症状を緩和すること、予防すること、再発を防ぐことなどを目的にしてつくられている食事です。食事を工夫するだけで治療になっていたり、予防できるとしたら、嫌がる動物の投薬に苦労しなくてもいいし、何よりも猫さん自身が楽なわけだし、ちょくちょく病院に来てスタッフとも顔なじみになれるし、その間には新しい情報なども仕入れることができるし、結果的に病気になって浮かせたはずの食費が医療費に変わるくらいなら、処方食は動物に掛ける医療保険のようなものなのではないのかしら、と思ったのでした。


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テーマ : 動物病院
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