- 2014-07-27 :
- 肝臓・胆嚢の病気
世界肝炎デー、ウィルス性肝炎
さて、犬にもこのウィルス性の肝炎があるのはご存知でしょうか。今日はこの犬のウィルス性肝炎についてお話します。
感染の原因ウィルスはアデノウィルスです。アデノウィルスには1型と2型がありますが、2型はイヌ伝染性喉頭気管炎(こうとうきかんえん)ウィルスで、肝炎を発症させるのは1型の方です。
肝炎ウィルスに感染していると病気を発症していなくても体内にウィルスを保持していて、尿や唾液からウィルスを排泄しています。このウィルスを舐めると感染してしまいます。直接舐めるだけでなく、ウィルスの混じった唾液や尿の付着した食器などを舐めても感染します。ウィルスが口から入ってくるので「経口感染」です。
口から入ったウィルスは、初めリンパ節に、それから血液中に入り、全身に運ばれます。特に肝細胞に大きなダメージを与えるために急性の肝炎をおこします。
症状は命にかかわるものから無症状で済んでしまうものまで、いろいろです。
突然発症し、高い熱を出し、おう吐、下痢(血便)、激しい腹痛を示し、ぐったりと脱力し、あれよあれよの間に死んでしまうタイプのものが一番ひどいものです。
高熱を出し、元気がなくなり、鼻水や涙を出すタイプのものは、嘔吐、下痢、食欲不振(まったく食欲が無くなるものもあります)等の肝臓の症状を出し、2~3週間の経過で快方に向かいます。治りかけの時期に急に目が青白く濁ってきます。肝炎に特徴的な「ブルーアイ」です。
軽度の発熱で、ちょっと元気がなく、食欲も落ちているかな、程度の軽症ですむタイプもあります。
全く症状を示さず、感染したのも分からないで過ごしてしまうものもあります。これは「不顕性感染」(ふけんせいかんせん)といわれるものです。
ウィルスに有効な特効薬は無いため、肝臓の炎症を鎮めるための対症療法が主なものです。
伝染力が強いので、複数飼育している場合は、感染の広まりに注意しなければいけません。病気にかかった個体は隔離して、他の犬にうつらないようにします。特に繁殖や子犬の飼育をしている場合は要注意です。病気が治った後もウィルスは主に腎臓にとどまっているので尿中にウィルスを排泄します。症状がおさまった後も健康な犬との接触は避けるべきです。
こんなに怖くて厄介なウィルス病ですが、実はほとんどのみなさんは愛犬をこの病気から守ってくださっています。ふだんあんまり気にしていないかもしれませんが、愛犬の混合ワクチンには、この伝染性肝炎も入っています。ジステンパーなどの病気と一緒に予防出来ているんですね。ちょっと怖い話を先にしてしまったので、ドキドキさせてしまいました。でも、こんなに怖い病気ですので、ぜひ今年もしっかりワクチン接種で予防してください。
なお、猫にはこのウィルス感染による肝炎はありませんが、白血病ウィルスや免疫不全ウィルスはあちこちの組織を侵しますので、お外に出かけていく猫さんはワクチンで予防していただけると嬉しいです。
ちなみに、今月6日はルイパスツールの誕生を記念して作られた「ワクチンの日」でした。
今日のお話は単発で続きはありません。