インターベリーαその後

 歯科ケアのおはなし、再びです。

 

遅くなりましたが、今日は1ヶ月間インターベリーαを使ってみてのご報告をします。

このお薬の特性については前にお話ししました。

適応は、若い犬で、そこそこ歯がきれいな、いえ、歯周にあまり問題の無い犬が対象になっています。けれど、歯周病を何とかする薬を欲しているのは歯周に問題が発生している中高齢の犬でしょう。歯肉炎のグレードが結構高くなっている犬でなんとかならないか、救世主になってはくれないのか、というところが飼い主さんの本音かもしれません。

そこで、かなり無謀な挑戦かもしれませんが、適応外にあたる犬で試してみましたので、報告しますね。

<試みの方法>

インターベリーαそのものの効果を知りたかったので、いくつかの決まりごとを作りました。

今回の調査の間はインターベリーαを週に2回歯茎に塗るだけで、ほかの歯と歯茎の健康のためのことは何も行わないことにしました。チューも与えませんでした。t/dも中止してみました。もちろん歯磨きも、口腔洗浄も行いませんでした。普通のドライフードを与え、食べさせっぱなしにしたわけです。歯のお手入れができないわんこに良くあるパターン、そのものをしてみたことになります。

試してみたのは10歳を過ぎた高齢の小型犬4頭です。3頭は歯周病のグレードが3で、残る1頭は歯周病のグレードが2でした。グレード2の犬は日常t/dを食べていましたが一般の小粒食にしました。

IMGP6717.jpg
こんな感じで塗りつけます。

IMGP6719.jpg 
別段嫌がる様子は見られません。


 <与えている時のかんじ>

はじめは口を開けることにこわばりがあった犬も、次第に抵抗なく塗布させるようになりました。口の中に指を入れても怒らず、普通に塗らせてくれました。甘いみたいで、投与中に何度もぺろりん、ぺろりん、と舌舐めずりしていました。

IMGP6725.jpg
処置が終わるとぺろりん、舐めまわします。
 

 

1カ月が終わって>

グレード3の犬たちには、ほとんど変化はありませんでした。

グレード2の犬は歯肉にやや赤みが差している感じがしました。少々炎症があるようにも見えました。

IMGP6459.jpg
投与前、左側の門歯と犬歯です。

IMGP6461.jpg
投与前、左側の臼歯です。

IMGP6462.jpg
投与前、右側の犬歯と臼歯。

IMGP6737.jpg 
投与後の左側。

IMGP6734.jpg
投与後の右側。

  

 <結果から考えられたこと>

やはり歯科ケアは「1日にしてならず」です。「週2回の手間で高齢犬の歯肉をきれいに保たせよう。そのあとの10か月は何もしないで済ませられたら素晴らしい。」というのは虫が良すぎるお話でした。

すでに歯周炎がひどくなっている場合はインターベリーαをにわかに付け焼刃のように使用しても十分な効果は得られないようです。

 

ではインターベリーαは高齢の犬にとって全く無意味であったか、といいますと、これは別の意味で効果がありました。インターベリーαが甘くてお気に入りになった様子で、口の中に指を入れることに抵抗を示さなくなったのでした。「お母さんの指=甘いもの=いいこと」という印象付けになったのです。歯磨きに向けての第一歩は口の中に指を入れても噛みつかないことですから、歯磨きのきっかけに成功したと言えるでしょう。 

<もうひとつの発見>

もうひとつの発見です。t/dはすごくいいフードだと再確認しました。t/dを食べていた犬は、ほぼ同年齢の他の犬に比べ、歯ぐきの状態がなかなか良いです。t/d以外の歯または歯肉の健康のための商品を使ったことはなくても、歯と歯茎の健康を心配して来院されるたいていの犬に比べ格段に若々しい歯肉をしています。そして、インターベリーαのようなお薬によらなくても十分きれいな歯と歯肉を維持することができていました。これは続けるべきです。それから、もし麻酔によって歯科スケーリングが済み、投薬等により元の歯肉の健康を取り戻すことに成功したのであれば、この後そのままの状態維持のために処方食t/dに変更した方がいいと思います。

01_img.jpg
 

<歯と歯茎のケア>

さて、歯科スケーリングを行っても歯磨きの習慣がなければ歯垢が付くし、付いた歯垢はやがて石灰化してすぐに硬い歯石に発展していきます。もちろん一番良いのは日々のブラシングですし、歯磨きができないまでも、少しずつ指に巻きつけたガーゼなどでこすることができればそれも良いかもしれません。

ただ、すでに歯肉の状態が悪くなり、痛みのためかどうしてもおうちでの口腔ケアをさせてくれない犬、しようと思うけれど興奮してしまい心臓が悪いとかで咳き込んでしまう犬の場合など、高齢の犬におうちで歯磨きを実施するのはとても困難な犬が多いのも事実です。それでその他に何か方法はないだろうか、というのが課題になってきます。

<こんな方法は?>

「ラクトフェリン」は人でその効果が認められています。歯肉の健康のほか、ダイエット系の効果も知られていて、人気があります。動物用には「森乳サンワールド」から「ラクトフェリDX」の名で出ています。使い方はインターベリーαに似ています。少量の微温湯で溶いて歯茎に塗ります。舐めさせる感じです。こちらは連日の投与で、休薬期間のない投与になります。写真はありませんが、歯石クリーニング後の歯肉の健康のために、(歯磨きをしなかったにもかかわらず)なかなかの状態を維持できていました。健康補助食品として考え経済的なことは無視でき、手間もかけられる飼い主さんにはとても良い方法だと思います。ただし中期の健康であって、長期にわたる歯肉の健康についてはこれだけでは不十分かと思われます。定期に歯科スケーリングをするのであれば良いかもしれません。

<さらに手間のかからない方法は?>

現在、歯科ケア外来で行っているのは、日常おうちでは何もしないけれど、病院に来た時に毎回歯磨きをする方法です。2週間ごとに来ていただいています。残念ながら、「小柄で多少暴れて怒ったりしても普通レベルの保定で口の中を触らせてくれる犬」に限られています。この方法ですと、食べカスが付いてきてもブラシで掻き取り、水で流すことができます。ここではこうされるものだ、という覚悟ができるせいか、徐々に慣れてくるようで、歯垢が歯石に変わる前に軽くスケーリングもできるので歯肉の状態は悪化しません。2週間ぐらいが限度のようで、これ以上間隔が開くとがっかりするくらい歯垢が付着してしまいます。犬の方の条件が付きますが、月に2回程度の頻度なら病院に連れて来る手間はなんとかなる、という飼い主さんには良いかもしれません。

IMGP6780.jpg  

<素晴らしい例>

歯科ケアは手間がかかります。やはり若いころからの習慣づけが一番です。これまでの診察の中で最も感心したのはお子さんの教育を兼ねてお母さんが犬の歯磨きを行い、お子さんも同じ時間に自分の歯を磨くという習慣をとったものでした。犬の歯磨きを目的にすると、面倒になるとさぼります。しかし犬の歯磨きをうまく利用すると、別の目的を果たすことができます。この犬の場合は、その後お子さんが成長してからも彼が歯ブラシを片手にすると、自分も歯磨きをしてもらうものだという感覚で、いっしょに洗面所に行ってお座りして待つようになったそうです。

こんな風にできるのは理想ですね。 

<まとめです>

もし若い犬で、これから頑張る!という覚悟があれば、導入として甘いインターベリーα塗布から始め、指サック磨きから歯ブラシへ進めていくのが良いでしょう。

中高齢の犬だったら、一度スケーリングをし、これまでの歯と歯茎の状態を一度リセットしてから始めると効果的だと思います。

そしてそれにt/d食を組み合わせたら最強でしょう。

歯茎に問題があるときの補助としてラクトフェリは有効です。手間が掛けられる飼い主さんでしたら、こちらも歯茎の状態が安定するまでの補助に加えてもらうと良いと思います。

どの方法も飼い主さんに手間をかけさせるものです。手間無くしてきれいな歯と健康な歯茎を手に入れる方法はありませんが、最低限の維持はしておきたいかなという場合は、定期的に病院でブラシングするのも悪くはありません。

 

 

長くなりました。このへんでご報告をおわります。

続いてのご報告はまた次の機会に行います。

スポンサーサイト

テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

プロフィール

ハート動物病院

Author:ハート動物病院
ハート動物病院です。
〒445-0062
愛知県西尾市丁田町杢左51-3
TEL/0563-57-4111
オフィシャルサイト:http://www.heart-ah.com/

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
ブログランキング
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード