アレルゲン特異的IgE検査・結果を生かす

アレルゲン特異的IgE検査を行った後、どのように治療に生かしていったらよいのでしょうか。


 IgE検査の結果から治療に結びつくこと>

検査を行って、アレルゲンが明らかになり、この結果をどう生かしたらよいのでしょうか。

例えばアレルゲンが環境因子であるときにはこれらを避ける生活に変更します。じゅうたんやカーペットの材料にアレルギーを示していれば、床材を変えます。ぬいぐるみのパンヤ(中綿)に反応していればぬいぐるみと遊ばせません。取り上げましょう。コットンに反応を示している時はシャンプー後のタオルドライに木綿のタオルは使いません。洗車後の拭き取りによく使われる化学繊維タオルで拭くようにします。

植物の場合、屋外で飛ぶ花粉にどう対処しても難しいと思われるかもしれませんが、散歩から帰宅したときに清拭するなどすれば付着した花粉量を減らすこともできます。また交差反応といって、特定の植物に対して果物や野菜なども同じように反応することから、代表的な交差反応を示す果物などは避けなければいけないことが分かります。

これらはほんの数例ですが、以上のような対策を立てることが可能になります。

詳しくは個々の結果に応じた対処方法を、結果用紙とともに個別にお話しさせていただきます。

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<原因療法へ>

さらに、この結果から個体オリジナルの治療薬をオーダーメイドすることができます。むしろ、このために検査はあるのだ、というのが学術的かもしれません。「アレルゲン特異的免疫療法」(Allergen-specific Immuno Therapy : ASIT)です。

お腹の皮膚を剃って少量ずつの抗原を注射し、体の反応を見る「皮内反応試験」を実施し、それに基づいて薬液を調合し、今度はそれを「皮下注射」していく治療があります。「減感作療法」といわれる方法ですが、これがアトピー性皮膚炎の治療におけるゴールドスタンダードです。以前から、そして今でもこれが本筋です。

けれど「毛を剃って皮内反応検査をするのはいやだな」というのがありました。確かに、毛を剃ったり、(ちょうどツベルクリン反応が幾列にも起こっているかのような)陽性反応の赤い腫れをみるのは痛々しいです。こういう場合、別の選択肢になるのがアレルゲン特異的IgE検査です。こちらは血液を採取し、その血清から調べる方法ですので、動物の体には跡が残ることも無いのです。

検査の結果は皮内反応同様に信頼のおけるものが出てきます。

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<減感作療法へ>

少々難しい話になります。どのような仕組みで減感作療法を行うと痒みがなくなるのかについてです。

特異的IgE抗体は肥満細胞の表面に付着していて、体外から抗原が侵入してくるとこのIgE抗体に結合し、アレルギー反応が始まります。肥満細胞から痒みを引き起こす化学物質の入った顆粒が飛び出し、炎症をおこすのです。ところが皮内注射をしているうちにIgG抗体ができ、アレルゲンが侵入してくると、IgGが抗原よりも先にIgE抗体に結合してしまうため、抗原反応が起こらなくなります。それでアトピーの反応を根本的になくすことができるのが「減感作療法」です。

現段階ではアトピー性皮膚炎は完治できる病気ではありません。特効薬もありません。今私たちが行っている治療はアトピーの犬たちが少しでも快適に過ごせるようにしてやること、つまり痒みからの解放で、対症療法になります。アトピー反応を起こらなくする「減感作療法」は唯一の原因療法になります。

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<具体的方法と効果>

「減感作療法」は検査結果に基づいて作られた個別のアレルゲンを薄めて作られた薬液を投与するものです。

皮下投与は注射です。はじめは1日おきに、その後は1週間おきとか、徐々に間隔を広げていきます。

家庭で注射を行うのが難しい、という場合、別の選択肢として舌下投与もあります。これなら治療ができそうだ、と思っていただけるかもしれません。舌下投与の場合は毎日2回の投与が必要ですが、効果は皮下注射と同じくらいです。

「皮下免疫療法」(Subctaneous Immuno Therapy : SCIT)に対し、「舌下免疫療法」(Sub Lingual Immuno Therapy : SLIT)とよばれています。

いずれも即効反応があるわけではなく、この免疫療法で痒みが消失するまでには早くて3か月、おそらく1年くらいはかかると思われます。この間はいつもの抗炎症治療やそのほかの治療(細菌感染が起これば抗菌療法を行うなど)も必要になります。

だいたい1/3のグループはすぐに良い結果が出てきます。また1/3のグループもハイシーズンを除いてはこれまで使っていた薬を手放すことができるくらいには反応します。残る1/3のグループには全く反応が起こらない、というのがおおよそのデータです。

それでも1か年は治療をあきらめずに継続します。また1年が経過した後も、フォローアップやその時々に応じた治療が(それまでの頻度に比べると間が開くかもしれませんが)必要で、全く病院に来なくても大丈夫ということにはならなそうです。

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<夢のような治療方法ではないけれど>

唯一の原因療法ですが、「これではこれまでの通院回数や治療法とあまり変わりはなさそう」と思われたかもしれません。

今の段階では動物の不快な思いを改善し、生活の質を高めるのにひたすら「ステロイド療法」を行っています。手っ取り早くて、安くて、効果があるのだから、ついステロイドに手が延びてしまうし、なかなか縁が切れないのです。けれどステロイドのお薬は上手に使いこなさないと副作用があります。ですから、ステロイド以外で効くものがあれば、素晴らしいことだし、またそれを使うことで少しでもステロイドの量を軽減させることができるのならば使う価値があるわけです。

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CADのガイドライン>

現在、犬アトピー性皮膚炎(CAD)の治療のためのガイドラインでは、薬浴と局所に使用するステロイド療法が推奨されており、(個人的にはコルタバンススプレーがお気に入りです)全身的な経口投与は必要な時に追加する方針です。

また「アトピー性皮膚炎を悪化させる因子を探求し、可能な限り回避、除外させる」という治療法はIgE検査とそれによって分かったアレルゲンの回避のことです。これまでに確認された悪化因子にはフード、ノミ、環境中のアレルゲン、ブドウ球菌などの細菌、マラセチアがありますが、これらすべてをこの検査で調べることが可能です。

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<痒みを引き起こす様々な反応>

犬アトピー性皮膚炎の病態生理学的メカニズム、というと難しいですが、どのようなものがどのように作用して痒みが引き起こされているのか、多くの研究者たちによって調べられており、これまで知られていないことも分かるようになってきました。

犬アトピー性皮膚炎の原因はIgEの関与すること、という定義がありますが、発症には様々な要因が関わっています。遺伝子の問題はもちろん、皮膚のバリア機能の低下も大きな要因の一つです。皮膚バリア機能が低下していると抗原は皮膚の小さな穴から容易に体内に侵入してきます。また痒み反応には、アレルゲンを捉えた肥満細胞のほか、血液中の白血球(抗酸球や単球、リンパ球)も関与しています。これらは細胞同士の情報交換信号である「サイトカイン」をたくさん放出し、炎症反応を促します。これらのサイトカインの中には神経細胞を刺激するものもあります。単にアレルゲンが侵入したことだけでなく、温度が高まったとかいうちょっとした変化に、掻き行動が加わり、痒みの連鎖反応を引き起こしてしまうのです。お風呂上がりの痒み、冬季に外から屋内に入ったときの痒みなど、それを無意識に掻き始めて、さらに痒みが激しくなるのがこの痒みのサイクルで、「ヤーヌスキナーゼ経路を介した神経刺激」です。

ヤーヌスキナーゼ(Janus KinaseJAK)シグナル伝達経路をブロックするヤーヌスキナーゼ阻害薬は抗リウマチ薬として2013年に人体薬で承認が得られています(トファシチニブクエン酸塩)。海外ではすでにこのJAK阻害薬をアトピーの犬の治療に使われています。日本でもZ社さんが承認を取得されています。(商品名:APOQUEL・アポキル錠)(薬品名:オクラシチニブ)近いうちにご紹介できる日が来ると思います。

 

アトピー性皮膚炎とIgE検査のすすめ、今回でお話はおしまいです。

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テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

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