肝臓が悪いときに使われるお薬

肝臓病のお話。7回目は肝臓に問題があるときに使われるお薬についてです。

肝疾患で処方される薬、「どのような効果があるのかはっきりは分からないけれど『肝臓にいい』と聞いたから飲ませている」ということが多いかと思います。または「良く分からないからもらった薬が終わってそのままになったのだけど、続けた方がよかったの?」ということもあるかもしれません。わたしたちも日常診療の中で薬一つ一つの丁寧な説明ができないのが良くありませんね。

肝臓の薬は飲ませたからといって急に何かが変わるわけではないし、薬をやめたからといって何かが変わるわけでもないです。でも、こんな効果があると知ったら「続けて投薬します!」に変わると思います。

 

1、ウルソデオキシコール酸

最も頻繁に処方することが多いのがウルソデオキシコール酸です。これは人工的に合成された(非毒性で親水性の)胆汁酸です。漢方薬の「熊の胆」(くまのい)「熊胆」(ゆうたん)に含まれる有効成分です。古くからある肝臓薬で安全性が高く、副作用は極めてまれなお薬です。

胆汁の流れを良くします。胆汁の流れがよくなると、肝臓の炎症性産物が排泄されやすくなります。本来の毒性の高い胆汁酸が薄められるので、毒性の高い胆汁酸濃度が低下します。免疫系に働きかけて、免疫反応を軽減させる働きもあります。抗酸化作用もあります。

肝外胆管の閉塞を除くほとんどの肝臓の病気に処方しています。

内服薬と注射薬があります。

 

2、グリチルリチン

甘草(かんぞう)の根に含まれる薬効成分を人工的に作ったお薬です。その名の通り、甘いお薬です。

肝細胞が傷害されるのを抑制します。肝細胞が修復し増殖するのを促進させます。炎症を抑える作用、免疫を調節する作用もあります。

人で肝炎から肝臓がんを発症するのを減少させる作用が認められています。

内服薬と注射薬があります。経口投与では利用効率が悪いようなので、多めに処方しています。

 

3、トレピブトン

胆汁や膵液が十二指腸に排泄される出口を緩めて、消化液を排泄しやすくするお薬です。それによって胆汁の分泌が促進され、胆嚢や胆管の内部圧力が低下します。胆のうの痛みを和らげます。

 IMGP7887.jpg

4、S-アデノシルメチオニン(SAMe

肝細胞の天然の代謝産物です。グルタチオンの前駆物質になります。

酸化ストレスに対する防御に重要な役割を果たします。細胞の維持や修復などに関係する様々な化学反応を媒介し、活性酸素から身体をまもります。

従来はサプリメントの範疇にあったのですが、厚生労働省から医薬品成分に指定されました。それを受け共立製薬から発売されていたプロヘパゾンはプロヘパフォスに、ビルバック社から発売されていたノビフィットはリバフィットにそれぞれ名称が変わり、内容成分も変化しました。

残念ながら現在は海外からの個人輸入により入手するしかありません。

 

5、シリマリン

マリアアザミ(オオアザミ)の種から得られる成分です。肝臓の薬としてヨーロッパで古くから使われています。分類的にはハーブになるでしょうか。

酸化ストレスに対して防御的に働きます。活性酸素(フリーラジカル)を消去する働きを持つ酵素(スカベンジャー)です。

日本全薬から出ているヘパアクトの主成分になっているのがこのシリマリンです。

人体薬のヘパアクトはイソロイシン、ロイシン、バリンのアミノ酸で、動物薬のヘパアクトとは違います。

 IMGP7881.jpg

6、ビタミンE

抗酸化作用を持つ栄養素です。

 

7、ビタミンK

出血傾向にあるとき、止血を目的に使う脂溶性ビタミンです。

 

8、スピロノラクトン・トラセミド

腹水が認められるときに使う利尿薬です。

 

9、ラクツロース

肝臓の血管系異常や門脈圧亢進により肝性脳症があるとき、または肝性脳症が予想されるときに使う合成二糖類のお薬です。

甘いシロップです。

大腸の細菌によって発酵されて短鎖脂肪酸になります。ラクツロースが大腸内を酸性化しアンモニアの吸収が抑えられ、ほとんどのアンモニアは糞便中に排泄されるようになります。

 

10、スクラルファート・ラニチジン・オメプラゾール

胃粘膜のただれや潰瘍に対して用います。気持ちが悪いとか嘔吐しそうになるのを抑えます。

 

11、メトクロプラミド・マロピタント

嘔吐があるときに使う制吐剤です。

 

12、抗生物質、抗菌薬

細菌感染を抑えるために使います。

メトロニダゾール、アモキシシリン、セファレキシンなどのほかキノロン系の薬も使うことがあります。

エリスロマイシンは抗生物質ですが、胆のうの運動改善を目的にして使います。

 IMGP7879.jpg

13、鎮痛薬

非常に激しい痛みがあるとき、点滴内に入れて持続的に投与し続ける方法を使うことがあります。このときに使われるのはブトルファールというお薬です。

内服で用いるときはメロキシカムなどです。

 

14BCAABranched Chain Amino Acids:分岐鎖アミノ酸)

肝性脳症があるとき、または肝性脳症を発症する心配のある場合、食事に添加し、神経症状の発作が出るのを防ぎます。

大塚製薬のBCAAや、ベジタルサポートホエイがこのアミノ酸製剤です。

肝性脳症発症時の点滴製剤でもアミノ酸製剤を点滴します。

 

15、処方食

肝臓用の処方食としてL/Dや肝臓サポートなどがありますが、これらの処方食は「肝性脳症」「門脈体循環シャント」「腹水を伴う肝硬変」(これらは高アンモニア血症を伴う病気群です)と「銅蓄積性肝炎」の場合に限って有効です。もし、肝臓が悪い、肝臓用にいい処方食はないだろうか、ということでご自身の判断でインターネットからこれらを購入しているとしたらすぐにやめてください。低タンパク質なこれらの処方食は、他の肝障害の場合肝臓の修復を妨げる結果になり身体に良くありません。

「日常最もよく見られる肝臓の病気」としてあげた「高脂血症関連性肝疾患」=「空胞性肝障害」や「膵炎に伴う肝障害」、「胆管閉塞」のとき、また「肝疾患ではないけれど肝酵素が高い」=「反応性肝障害」の時におすすめしているのは低脂肪の処方食です。I/Dローファットや消化器サポート低脂肪などです。水溶性繊維と不溶性繊維がバランスよく配合されているベジタブルサポートファイバーを添加するのもおすすめです。

IMGP7891.jpg 

16、ペニシラミン

銅蓄積性肝炎や銅蓄積性肝炎のときに、銅のキレート剤(銅よりも強く結合し、銅をはねのける働きがある)として処方します。免疫調整機能や抗線維化作用もあります。

 

17、そのほか

・コルヒチン

痛風の発作を抑える薬として知られています。

コラーゲンの生成を減少させたり、分解を促進させる作用があります。慢性肝炎のとき肝臓の線維化を抑えるのを目的に使うことがあるかもしれません。

・グルタチオン

酸化障害から細胞を守る働きがあります。

・チオプロニン

抗酸化作用があります。

L-カルニチン

脂肪酸代謝に関係するビタミン様物質です。

・メチオニン

肝機能を高める効果があります。

 

 

以上、使用頻度の高いものから順にお話ししました。
獣医療ではいま、診療の標準化、治療の標準化がいわれていますが、肝臓のお薬もいろいろあり、心臓のお薬同様、先生によって使い勝手が違うので、似たようなお薬でも違うものを処方されている場合もあると思います。今回挙げたお薬は当院で使うものを当院の処方頻度からご紹介しました。
肝臓の病気ももっとたくさんありますがALTやALPなどの「肝酵素が高い」場合どのような病気が多いのか、これも当院での診察頻度の順にご紹介しました。

肝臓関係のお話はひとまずおしまいです。

スポンサーサイト

テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

プロフィール

ハート動物病院

Author:ハート動物病院
ハート動物病院です。
〒445-0062
愛知県西尾市丁田町杢左51-3
TEL/0563-57-4111
オフィシャルサイト:http://www.heart-ah.com/

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
ブログランキング
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード