うっ血性心不全というのは・ほか

 猫の心筋症についてのお話、2回目です。

 

<うっ血性心不全って何ですか?>
わたしたち獣医師は「うっ血性心不全」って言って軽く流します。ここから説明してると時間が足りないからかもしれません。でも「うっ血性心不全」というのは結構重篤な状態です。
心臓は身体を維持するために必要な量の血液を送り出しています。そして血液には全身の組織、細胞が必要としている酸素や様々な栄養素が溶け込んでいます。もし心臓に不具合があって十分な血液が送り届けられないということになると、ライフラインが寸断されて、供給が途絶えてしまった状況になります。血管以外の別ルートでの輸送はありませんからね。
うっ血性心不全は心疾患の末期的な状態で、心臓からうまく血液を拍出できません。送り出す手前のところで血液のうっ滞が発生します。左心系の手前は肺ですから肺水腫が発生して呼吸困難になります。治療に成功しないと、猫は呼吸不全または心停止により死亡することになります。

IMGP9107.jpg 

<来院の動機は?>

当院で「肥大型心筋症です」とお伝えすることになった猫たちは、どのような症状を出して来院されたのかというと、実は全く違う状況で来られています。大きく分けて4通りのパターンがあります。

多くは

    呼吸困難や頻呼吸によって連れてこられます。
このとき、

だらだらしている。動かない。(動きが悪いレベルのものもあります。)

食べない。(全く食べないわけではないレベルのものもあります。)

といった呼吸困難以外の症状も併せて言われます。

呼吸困難の程度は軽いものから、重篤で今にも死にそうなくらい苦しそうなものまであります。

②動脈血栓塞栓症()を併発している時には

腰が立たない。後ろ足が効かない。前足だけでいざるようにして動く。

という急な後肢麻痺で連れてこられます。

この場合、こうなる直前に「ギャン!」という悲鳴を聞いたと教えてくださる方があります。

③別件で来院、例えば手術や何かの為に検査を目的にして来られることもあります。そのときは

全く無症状

です。検査をしたら偶然心筋症を発見しましたというケースです。

④事前に臨床症状が全く見られないまま突然死が起こることが有り、

死亡した状態。

という場合があります。

事故に遭ったわけでもなく、全く何が起こったのかわからない、突然死を迎えたというものの何例かは心筋症だったのではないかな、と思うことがあります。亡くなってから死因を求めることはできませんが、「おそらく心筋症だったのではないでしょうか」ということがあります。

IMGP9109.jpg 

<身体検査してみたら>

①の状況で連れてこられた猫を観察すると呼吸が速いです。非常に苦しそうなこともあります。舌の色が紫になるほど酸素状態が悪化していることもあります。心雑音や心臓のギャロップ音(馬が駆けるときのリズムです)が聞かれることがあります。心拍が微弱ではっきりとらえられないようなこともあります。虚脱し脱力した状態のことが多いです。

②の動脈血栓閉塞症を併発しているときは、後ろ足に麻痺が確認されます。このとき足先が冷たかったり、太ももで脈を触れることができなかったりします。肉球の色が青白い、紫がかった色になっています。まさに血の気がひいた色合いです。直腸温が低下していることがあります。時間が立ってから連れてこられ、病状が進行したものでは足先が堅くミイラのようになっていることがあります。食事はできず、非常に痛そうにしています。

IMGP9108.jpg 

<検査が先か治療が先か>

猫の状態が悪いとき、酸素で呼吸を楽にさせながら最低限の検査を行うにとどめます。心筋症を診断し分類をするよりも、できるだけ早く生命の危機的状況を抜け出させることが大切だからです。胸部のレントゲン検査、心電図検査、血液検査、超音波検査など、診断のための検査、現在の状態を知るための検査はいろいろあり、どれもすぐに実施して情報を知りたいのですが、呼吸困難が重篤な場合は無理な姿勢をとらせず、かつ短時間で行える検査をするにとどめ、まずは酸素療法を行います。そしてわかったことから判断し、治療を優先します。猫の状態が落ち着いてから少しずつ、検査項目にも優先順位をつけて、ほんとに少しずつ欲張らずに検査を実施していきます。

IMGP9110.jpg 

<重症な猫の内科的な治療>

レントゲン検査から肺水腫や胸水などのうっ血性心不全の兆候が確認されたなら酸素療法の次に行うのはうっ血解除の治療です。何はともあれ利尿薬です。そして落ち着いて薬を飲めるようになったら血管拡張薬や強心薬などを使います。

併発症として動脈血栓塞栓症が確認されたなら急性心不全の治療に加え、血栓溶解の治療を行います。血栓溶解療法は時間との闘いです。できるだけ早く治療を開始することができれば血栓を溶かすことができますが、難しい場合もあります。それと同時に痛みに対する治療も行います。神経に血が通わなくなった状態(虚血性神経症といいます)は激しい痛みを伴います。痛みストレスは病状を悪化させます。

急性心不全の治療中または一旦落ち着いてからの治療の最中に、急な心房細動が発生することがあります。心房細動は心臓が動いているようで単に心筋がけいれんを起こしているような状態です。心臓から拍出される血液量はぐーっと減少します。治療中で心電図モニターが作動していてこの状態をいち早くキャッチすることができれば治療に持ち込めますが、治療しても心臓の動きが正常に戻るかどうかは心臓次第です。(おそらく突然死した猫は心房細動を起こしたのだろうと思います。)

IMGP9112.jpg 

<外科的な治療>

心臓に対して外科的な治療をとることはできませんが、塞栓した血栓を除去するために外科的な介入を行うことがあります。同時に急性心不全が発生していると麻酔に関して非常に高いリスクがあります。また血栓溶解療法を試みてからの手術には出血のリスクが伴います。

 

*動脈血栓塞栓症については後日お話しします。

 

今日のお話はここまでです。重い病気なので、内容が暗く、つらいものになってしまいました。

次回は肥大型心筋症に併発する動脈血栓塞栓症、安定期の内科治療についてお話しします。

 

 

スポンサーサイト

テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

プロフィール

ハート動物病院

Author:ハート動物病院
ハート動物病院です。
〒445-0062
愛知県西尾市丁田町杢左51-3
TEL/0563-57-4111
オフィシャルサイト:http://www.heart-ah.com/

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
ブログランキング
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード