単頭種気道症候群

 鼻ペちゃわんこは根強い人気を持っています。パグが大好きな人は2代目さんもパグを選ばれることが多いし、フレンチブルドックやボストンテリアは、イングリッシュブルドックやボクサーは大きすぎて飼えないけれど、という方が2代目、3代目さんに選ぶ犬種です。こんな「単頭種」と呼ばれるわんこたちに弱点があります。

「鼻、鼻咽頭、気管」は「上部気道」といって、呼吸器の中でも最初に空気に触れる場所ですが、ここに解剖学的、形態学的な異常を伴うことが多く、問題が発生しやすくなっています。このあたりに発生した異常を総合的に「単頭種気道症候群」と呼んでいます。

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フレンチブルさん♡



<かわいらしい顔に潜んだ恐怖>

単頭種の犬たちは、他の犬種に比べると

①鼻が短い

②頭の骨が丸い

③目と目が離れている

ため、表情が豊かでかわいらしいのですが、不都合なことに

④鼻の穴が細くつぶれている

⑤鼻の中の空気の通り道も細い

⑥のどの奥が狭まっている

⑦気管が狭くなっている

などの特徴を持っているため、鼻から入った空気がのどを通って気管から気管支、肺へ送られるまでの間にちょっとした乱流が生まれます。それで「息をしているな」というのがはっきり分かる「音」を出すようになっています。

寝ているときの「いびき」のほか、ちょっと運動をしただけでも「ぜーぜー」言ったり、呼吸が苦しそうになったり、「咳」のような音を感じることもありますし、「げへっ、げはっ」というえづきのような状態を観察されることもあります。これがひどくなると、食べたものを吐いてしまうこともあります。さらに、一生懸命呼吸をしないと息が吸えないような状態に陥ることも有り、よだれが沢山出たり、舌の色が紫色になったり、そのまま倒れ込んだりしてしまうことさえあります。夏、呼吸回数が増え、体温が上昇して熱中症を繰り返してしまう犬もいますし、胸腔圧の関係からそのまま肺水腫に移行してしまう犬もいて、「単頭種気道症候群」はなかなか侮れない病気です。

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ボストンテリアさん♡



<詳細な名前が沢山>

この症候群にそれぞれ名前を当てはめていくと、

①外鼻孔狭窄(がいびこうきょうさく)

②軟口蓋過長症(なんこうがいかちょうしょう)

③喉頭虚脱(こうとうきょだつ)

④扁桃腫大(へんとうしゅだい)

⑤声門裂狭窄(せいもんれつきょうさく)

⑥気管虚脱(きかんきょだつ)

⑦気管低形成(きかんていけいせい)

など多数あります。

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イングリッシュブルさん♡



<内科的な治療>

体重の管理(肥満にさせないようにすること)、環境の管理(居住空間の温度が高すぎないように気をつけること、興奮させないようにすること)などで対応します。限界があることもあります。

お薬は虚脱系のコントロールのためのステロイド剤、興奮を制御するための鎮静剤、嘔吐をコントロールするための消化器系作用薬の3種類を用いることが多いです。緊急の場合は、酸素療法になります。

 

<呼吸器疾患なのに?>

「呼吸器疾患」と聞いたのに処方されたお薬が「消化器系に作用する薬」だと、意外に思われるかもしれません。呼吸器疾患ですが嘔吐のコントロールを行います。よだれが出てきてそれを飲み込もうとするとき、ゼロゼロしながら食道を流動物が行ったり来たりするとき、また胃の中に入っていた物がオエッとなってさらに戻ってくるとき、みんな「ノド」を通ることになります。のどの部分は食道と気管の分かれるところで、食べ物が通るときに閉じる蓋(ふた)に問題があるため、逆流や嘔吐などはすべてのどに障害を及ぼします。そのため、嘔吐などの消化器症状をコントロールするためのお薬を処方します。

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ペキちゃん♡
 

<外科的な治療>

軽い症状だからとそのままにしていて、呼吸困難が高じてくると二次的な変化をおこすことになります。症状が重度の場合や、徐々に悪化傾向にあるという場合は、外科的な治療が選択されるべきかもしれません。しかし、上記に示したようなさまざまな状態があるわけですが、手術できるものと手術できないものがありますし、手術法があるのだけれど推奨されている場合や推奨されない場合も有り、一概に「手術をしたら楽になれる」わけではありません。

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パグちゃん♡



<麻酔が心配>

単頭種に全身麻酔をかけるのは私たちも大変気を使います。

麻酔時には気管挿管といって、専用のチューブを気管に入れます。そのとき、気管と食道を隔てる膜が厚くなっていると、挿管しにくいというのが一つの理由です。挿管に手間取るのは危険です。

また、もっとリスクがあるのは手術が終わってチューブを外すときです。呼吸機能の回復と、覚醒時の状況に応じ、少しのタイミングのズレも許されない様な側面があるのです。温和な犬の場合は、覚醒してもチューブが入っていることを許可してくれるため、術後も十分に酸素を継続させてやることができますが、興奮症の犬の場合は、チューブの存在も嫌いますしマスクで酸素を流すのもいやがってしまうために酸素化が不十分になりがちです。もともと気管が狭いとか、のどに炎症を感じているとか手術で局所を刺激しているなどの理由も術後の呼吸困難に影響を与えることになります。

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かわいい看護婦さん。



<予防する>

「やっぱり手術は怖いわ」という方は多いと思います。私たちもできれば危険な手術は避けたいです。

とにかく、「ゼロゼロしていてどうにも呼吸がしっかりできない」という状況だけは避けなければいけません。適切な管理は緊急事態を予防することができます。内科的な治療薬よりも効果があります。

①体重コントロールで肥満にさせない。

②暑い時間帯の散歩はしない。

③室温や室内の湿度に配慮し、銀行にいるときくらいぐーんと冷え冷えにする。

ぜひこの3つを守って生活してください。

 

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