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視力の低下した犬の生活のヒント

 失明したとき、犬はそれまでと違う行動を取るようになります。ただ、年齢や身体の状態、これまでされてきた訓練(学習した内容)、もし同居の動物がいればその動物との関わり、また家族との関係などさまざまな要因によっていろいろな反応が出てきます。攻撃的になったり沈うつになったり、中にはあんまり変わらないという犬もいるかもしれません。

まずは失明によって起こされる行動の変化と注意点をお話しします。それから失明した犬でもそのまま日常生活を送ることができるようにするためのお手伝いや訓練のことをお伝えします。何でもかんでも手を焼き世話をすることができれば良いかもしれませんが、もしお世話する人が留守になったら犬が困ります。犬には失明してからも自立した生活を送ってもらいたいです。

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<失明によって起こされる行動の変化と注意点>

1、攻撃行動

窮地に立たされたとき、「攻撃する」かまたは「逃げ出す」というのはよく知られたことです。犬は恐怖から「攻撃行動」を起こします。もしそれまでも「ビビリ」な犬であれば、見えない恐怖からうなったり、咬もうとしたりするかもしれません。いきなり犬に触って咬まれるというのは良くあることです。

注意:このときに叱ってしまうと状況は悪化してしまいます。こうすると攻撃性が増加してしまいます。決してご家族の方は噛んできた犬に対し叩いたり叱ったりしないでください。逆に「仕方ないよね、かわいそうなことになったのだから」と甘やかし、抱きしめたりおやつを与えるのも良くありません。攻撃行動に対しご褒美をもらえるわけですから攻撃行動を助長させることになります。必ず声がけしてから触るようにしましょう。びっくりさせないことが大切です。

2、沈うつ

中には置かれた状況に困惑してしまう犬もいます。どうしたらよいのか分からないのです。動きが緩慢になり、頭や尻尾を下げ、じっと静かになってしまいます。遊びもせず、日中寝ていることが多くなります。部屋の中で立ち尽くしているとかもあります。不安を感じています。

注意:飼い主さんが失明に対し落ち込んでいると犬にもそれが伝わります。悲しみの感情は犬には見せないようにお願いします。マッサージは心を落ち着かせることができます。1日に何度でも構いません。やさしく声掛けしながら体を触ってあげてください。

3、依存

自分から何かをするのをためらってしまう犬もいます。部屋を動き回りません。ご家族が時間になるとトイレに連れて行ってくれたり、ベッドルームに運んでくれたりして、手助けがくるのを待つだけになってしまいます。

注意:愛犬のためにいろいろとしてやりたくなりますが、甘やかしているとますます受け身になり、何もしなくなります。トレーニングを始め、新しい環境に対する自分の行動に対して自信を持たせてやりたいです。

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<生活に加えたいヒントいろいろ>

失明してもほとんど飼い主さんに気づかれない場合もあります。それまでの生活の繰り返しから、頭の中に家の中の構図を描けているのです。メンタルマップといいます。

全く見えなくなる前のぼんやりと見えているくらいの段階から補助してやると、完全失明の後にメンタルマップを描きやすくするための訓練もほとんど不要になるはずです。

目的は危険を最小限にすることで、危険回避が中心になります。その中で犬の生活上の楽しみや家族に依存しすぎない自立した生活にするための工夫が入ります。これまでと同じことを犬に要求することはできません。トイレの介助、食事の手助けなどいろいろありますが、できるだけ自立してやってもらうための「見守り・プラス・アルファ」で、人でいうところの「支援」になると思います。まだ「介護」にならない段階です。

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 1、特別な場所

安全な場所の提供をお願いします。昼間過ごす場所、夜寝るときに過ごす場所、それぞれが必要です。ベッドやケージを用意してください。できれば家族が最も多く時間を過ごす場所が理想的です。できるだけ孤独を感じないようにしてやってください。もしソファの上が定位置であったとしたら、落下トラブルを防ぐため、ソファの下に犬のベッドをおろしてください。またはソファに上りやすいようにスロープを設置してやってください。

屋外飼育であった場合、安全な屋内に移動させてやると犬は不安が減ります。

2、照明は明るく

犬が出入りする場所は明るい照明をつけたままにしておいてください。廊下にも常夜灯がともっているとそこを通って別のところに行く場合に案内になるはずです。

3、コントラストのエッジライン

視力低下とともに似たようなトーンの色合いを区別することができなくなってきます。視力が健常である私たちでも階段の縁にカラーの目印が付いていると安心して段を降りることができます。犬の視力が低下してきているけれどまだ完全に見えないわけではないという段階で目印をつけてやってください。ここから先は危険だという意味も含めて、玄関からたたきに降りるところ、角ばった壁のでっぱり部分などに、床や壁とはできるだけ色合いが違うものを張って目印にしてもらいたいです。ソファの座る部分の縁もそうです。私たちからすると膝の後ろが当たる部分ですが、からだ全体が乗る小型犬にとっては広いスペースの一部分が欠けたところがソファの縁になります。薄い色が多い調度品の中で、濃い色がついたビニールテープは重宝します。ビニールテープにはにおいもありますから嗅覚での覚えにもなると思います。また足裏で感じる期間があれば、完全な失明をした後でも、カラーテープを頼りにすることもできます。ビニールテープは短い周期で新しいものに交換してください。触れた感覚よりも嗅覚を頼っている場合のほうが多いと思われますので、ビニールテープのにおいが薄らぐ前に新しくしてもらいたいです。

4、遮へい

犬がこれより先に行くのは危険なことが多いと思われるところには柵をして、行けないようにしてください。階段の降り口や登り口、玄関につながる廊下へのドア口、キッチンへの侵入口など、見ていられないときに行ってしまってはいけない部分は「通せんぼ」してください。

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5、場所のにおい

例えば洗面所や脱衣室に犬のトイレがある場合、洗濯用洗剤やお風呂で使うシャンプーのにおいを頼りにトイレに行けるかもしれません。犬にとっての重要な場所にこのようなにおいと関連付けた指標をつけておきます。香りのアロマは犬に好ましくないものもありますので、お手軽ですがご注意ください。バニラエッセンスやメイプルの香りなどのキッチン用品も活用してください。これらは特に犬のフードボウルや水食器の位置を知らせるのに役立つかもしれません。

6、カーペット

目的のところへ誘導するのに細くしたカーペットも有効です。パッチワークのようにつなげるカーペットも活用すると便利です。家の中には特に犬にとって重要な場所があります。トイレ、ベッドルーム、食事の場所などです。ここへの移動がスムーズにいくように、ほかの床とは違う感触で、しかも目立つ色合いのカーペットを用意すると良いです。滑り止めのため、カーペットの下に特別なマットを敷くとか、縁をテープで止めるなど工夫も必要になると思います。DIYのホームセンターまたは通販で見つけることができると思います。

7、食器を置くところ

カーペット通路の先に、少し広めの別素材のカーペットを敷きます。犬の足4本が全部乗るくらいの広さがほしいです。ここが食事をする場所であることを足裏の触感で学べます。食器は専用の置き台を利用してください。普通の平台の上に食器を置くのでは食事中に食器が動いてしまいますので、専用の台を用意できない場合は、食器が動かないような工夫が必要です。食器がすっぽりとはまるようにダンボールの上面を円形にくりぬいてもらい、さらにそのダンボール箱をテープで台に固定するなど、専用の食器台を購入しなくても工作で代用品は作れます。

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8、音で知らせる

もし同居の犬や猫がいるのであれば、それぞれに違う音がする鈴をつけるのも別の動物が近づいてきた合図になります。お母さんを大好きな犬であれば、お母さんのエプロンポケットに鈴を忍ばせておくとお母さんの音がするのは近くにお母さんがいる印となり、犬は安心できます。猫の首輪のようなものをお母さんの足首につけてくれるのもうれしい工夫です。

9、家具の配置

基本的に、家具の配置を変えないことは古くから言われていることです。新しい家具が配置されるとこれまでのメンタルマップを脳内で新しく描きなおさなければいけないことになるからです。ただ、ちょうど犬が目的地に行こうとするライン上に家具が配置されていた場合は、それを別のところに移動させるほうが良い場合もあります。部屋の中央にあったベッドを壁際に押し付けるとか、動きやすいところを広く取ってソファに乗るための踏み台に乗りやすくさせるなど、犬にとって最善の方法を考えてやるとよいと思います。

10、家具の縁

リビングルームに置かれるテーブルの中にはガラステーブルのように縁がとがったものもあります。リビングのテーブルはやや低めで、屋内を動く小型犬の頭の高さに等しい場合があります。犬の顔を守るためにはガラスの縁などはやわらかな材質のものでカバーする必要があります。同じように尖った家具の足などはないか、チェックしてください。ここをカバーするのにはキルトの布がおすすめです。ちょっとそぐわないかも知れませんが、パイプ用断熱材のようなチューブ状の発砲スチロール材もよいですし、梱包材のぷちぷちも役立つと思います。工夫してもらえるとありがたいです。

11、新しい訓練

「マテ」はこの際、強化したい号令です。犬が何かしようとするとき、危険だと判断されたときは一時停止させることができます。また正しい位置になったときに「ジャンプ」とか「オッケー」の言葉かけと一緒にソファや床をトントンさせるなど、犬が安心して行動に移せるような練習を繰り返すことができると、声掛けのない場所で飛び乗る、または飛び降りるのをやめさせることもできます。

12、新居

全く新しいメンタルマップを描く必要が出てくるのが新居への引っ越しです。足裏の感触と嗅覚による案内を中心に転居前から匂いと生活の要所の関連付けを行っていきます。これには大変根気がいると思います。

13、家の庭

屋内と同じような要領で家の庭のメンタルマップを描けるようになると犬は屋外も楽しめます。低木の木をよけるとか、石組みを操作するのは難しそうではありますけれど。

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完全な失明になり、日常動作が思うようにならなくなるとご家族の手助けの度合いが大幅に増加します。たいていは高齢犬ですので、失明だけでなく聴覚の低下や運動麻痺なども徐々に入ってくるかもしれません。さらに認知機能障害も出てくるとすべての世話が「支援」から「介護」になりご家族の疲労が高まります。少しの工夫とお部屋の造作で愛犬の自立を助けることができます。早期のうちはできるだけ犬に「自分のこと」をしてもらえたらと思い、視力が弱くなってきたころからの行動を支えるヒントをお話ししました。

 

目が見えなくなる病気「白内障」に続いた「目」関連のお話は今回でいったん終了します。

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テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

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