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血液検査・リンの値が低い

 春の健康診断、血液検査の結果が続々と返ってきています。異常値の出る項目はトリグリセリド(中性脂肪)やコレステロール、そしてアルカリフォスファターゼ(ALP)が「トップ3」です。これらはだいたい肥満に絡んだ、胆泥症を疑わせる脂質異常症になります。

今回、無機リンの異常(低値)があるデータが数件返却されてきました。無機リンが高くなる「高リン血症」は腎機能の悪化とともに発生してきますが、低い方の異常、「低リン血症」です。リンの値が2.5mg/dl以下になったときに「低リン血症」と言っています。当院からの検査結果報告書には2.0mg/dlから5.3mg/dlあたりを標準値として表示してあると思います。低リン血症についてはあまり知られていないと思いますので、少しお話ししておきます。

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<血液検査でリンの値が低い結果が出てきた!>

「リンが低いって言われるけど、他は何も異常が無いし。そもそも元気だよ。餌が悪いの?どうしてこんなことになるのか見当も付かない。どうしたらいいのか不安だわ。どこが悪いの?」

そうですね。その通り、活力もあり、元気そのもののわんこに発生した低リン血症でした。

 

<リンって何?どんな仕事をしているの?>

リンは動物が生きていくのになくてはならないミネラルです。「生命にかかわる極めて重要な」役割をしています。身体の中にあるリンの約85%は骨や歯に存在しています。骨や歯を構成する成分になっているのです。そして残りは細胞の中の「RNA」や「DNA」、「アデノシン3リン酸(ATP)」「リン脂質」「リン酸化タンパク質」として存在しています。細胞の成長や分化に関わったり、エネルギーを産生して利用したり、細胞膜を構成したり、脂肪酸を輸送したり、アミノ酸とタンパク質の合成を行なったりしています。リンはあまり意識されないミネラルの一つではありますが、非常に重要な役割を担っています。

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<栄養素としてのリンとカルシウウム>

ミネラルにはお互いのミネラル同士の相互作用があります。1つのミネラルが別のミネラルの輸送や生物学的な効力を減少させるような拮抗作用や、2つのミネラルが互いを節約し合ったり代替えになったりして補完的に機能するような補助作用、2つのミネラルが協調して生物学的な機能を高める協力作用などです。

リンが作用し合うミネラルの相手としてカルシウムがあげられます。リンとカルシウムの相互作用により、骨や歯を硬く丈夫にさせたり、またはとんでもないところにカルシウムを沈着させたりというようなことをおこさせます。またこれらの作用にビタミンDが関与していることもご存知の通りで、太陽にあたることでビタミンDが活性化され骨は丈夫になります。しかし骨を丈夫にしようとカルシウムばかりをたくさん食事に加えるとリンとのバランスが壊れ、結局丈夫な骨を作ることができないばかりか、他の代謝機構にも影響を及ぼし逆効果になってしまうことがあります。これは子犬を育てるときに陥りやすい罠です。反対に骨なし肉だけの食餌を与えているとリンの含有量に対しカルシウムが非常に乏しいため、二次的に上皮小体機能亢進症を引き起こすし、骨がもろくなります。バランスが大切です。

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<体内でのリンの調節>

からだ全体のリンの調節は腸管と腎臓で行なわれています。リンは腸管で吸収され、腎臓から排泄されます。からだの中にあるうちは、PTHホルモン(パラソルモン)などにより内分泌的に調整されています。リンの含有量が少ない食事を与えると腸管でのリンの吸収率が最大になり、また腎臓から尿への排泄を最小限に食い止めるように働きます。

身体の中で血中にあるリンはわずか0.1%に過ぎません。そしてカルシウムほど厳密に調節されてもいません。血中無機リン濃度はさまざまな因子に影響されながらいわゆる基準範囲といわれている濃度に調整されています。濃度調整に関わっているのはまずPTHホルモン(パラソルモン)のほかビタミンD、カルシトニン(これもホルモンです)、線維芽細胞増殖因子(FGF23・腎臓病のところでお話ししたことがあります)など。そして「えっ?」と思われるかもしれませんが、意外なことにインスリンなんかも関係しています。

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<血中のリンが減るのは?>

    腸管からの吸収量が減少する

腸管由来ということはすなわち食餌由来です。具合が悪くて長いこと食べられなかった、飢餓状態になっている、腸の病気でリンを吸収することができなくなっている、ビタミンD不足で吸収できてない、腎臓病のための低リン食をずっと食べているまたはリン吸着薬を服用しているなどが考えられます。

    腎臓からの排泄が高まっている

上皮小体機能亢進症という病気にかかっている(この場合はカルシウムの値が高くなっています)、悪性の腫瘍があるために高カルシウム血症になっていてPTHがすごく働いている、特殊な腎臓の病気(ファンコーニ症候群)のために腎臓でリンの再吸収ができない、おしっこが大量に出る一部の病気(クッシング症候群)などが考えられます。

    細胞中へ移動している(トランスロケーション)

体内にリンはあるのだけれど、血液中から細胞の方に移動している場合があります。糖尿病によるケトアシドーシスの状態のときにインスリン治療を開始するとリンは動いていきます。アシドーシスが改善され身体は酸性から少々のアルカリ性に傾きかかっている状態です。同じように代謝性アシドーシス等のために重炭酸ナトリウムで治療しているとやはり身体は酸性からアルカリ性になり、それに伴ってリンが細胞内に移動しています。ほぼ治療に関連した状況のときです。

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<身体がアルカリ性になる状況>

実は治療をしているわけでもなく、からだの自然な状況で先ほどの③の状態、身体がアルカリ性に傾いているときがあります。興奮して呼吸がハァハァというパンティング呼吸になっているときです。過呼吸の状況のとき、私たちは「呼吸性アルカローシス」がおこっているな、と感じます。とても酸素化がよく、採血した血も赤々としてきれいな血の状態です。

 

<低リン血症を起こした原因は?>

さて、リンの値が高いとき、低いとき、相互に関係するミネラルであるカルシウムの値がどうなっているのかも見ていきます。血清無機リンだけが低く、カルシウムの値は高くも低くもなっていない場合があります。体調に異変もありません。他のデータにも何にも異常は見られません。

こういうとき、たいていの場合は採血時に「ハァハァ」のパンティング呼吸をしていたことが多いです。過換気の状態では病気でなくてもリンの値は低くなります。

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<ということは、低リン血症の原因は?>

まずは採血のときにどういう状態だったかを思い出してください。もし、ものすごく興奮状態にあったのであれば、過呼吸!これが原因になっていたと考えられます。そして、できれば病院の一番空いている時間帯に予約をするかまたは静かな時間帯を狙って来院して、もう一度血液検査を受け直します。次の検査のときも呼吸がハァハァしていたらまた同じ結果になってしまうかもしれませんから、それだけ注意して再検査を受けてもらうことにします。

 

<本当にリンが低い場合の症状>

もし、本当に病的な低リン血症があるとき、血管内で赤血球が溶血し、貧血になっています。ヘモグロビン尿といって、おしっこの色が赤茶色(コーヒーや薄口醤油の色)になってきます。またぐったりした虚脱の症状、静かで活動性がない沈うつな状態、または振戦という小刻みな震えなどが見られます。

おそらく、こんな症状は出していないと思います。

 今日は元気なわんこがびっくりさせてくれた異常値、低リン血症についてお話ししました。
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<おねがい>

急な気温上昇がある日も出てきました。高齢になった中型から大型のわんこを散歩させるときは、必ず携帯電話かスマホをもって出てください。もし、途中で何かのトラブルになったとき、ひとりでは犬を抱いて帰宅することもできません。誰か家人に応援が頼めるようにして出かけてください。また小型犬で、心臓が弱ってきている高齢犬も同じです。冬の間は酸素要求量も低かったために散歩をしても何も異常がでることもなく過ごされていたかもしれませんが、これからの季節は気温上昇に伴って心臓に負担が増してきます。「運動はやめてね」というアドバイスを無視して「大丈夫だろう」とお散歩に出かけられていることもあるだろうと思います。もし何かアクシデントが起こったときにすぐに対応できるように、連絡できるツールを持ってお出かけください。でもゲーム等に夢中になって愛犬の動きに無関心にならないようにしてください。


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