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猫と海産物。食べていい?食べちゃダメ?

 「猫に〇〇を食べさせてはいけない」

この〇〇に入る食品名は?

猫といえば、そうそう、あれあれ。でも、それって与えてもいいもの?いけないもの?

今日は猫が大好きな海産物の「食べても大丈夫」から「絶対だめだめ」のお話をします。というのも、「そっか、やらかしちゃったか」の猫さんを診させていただいたからです。

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<食べてもいい?いけない?>

 「猫にかつおぶし」は大好物を目の前に置いたらすぐに食べられてしまうことから生まれた「油断できない状況」とか「危険な状況」を現すことわざです。そのくらい昔から猫はかつおぶし好きで通っています。栄養学的にはリンやマグネシウムなどのミネラル分が豊富なため、摂取しすぎるとストルバイト尿石のリスクが高まり、また慢性腎臓病の猫にとってもリン排泄が滞るため好ましくありません。飽きてきたドライフードに「匂い付け」するために、かつおぶしの入っていたジッパーつき袋と少量のかつおぶしを利用するのはおすすめしていますが、毎度の食事に振りかけるのは量が過ぎます。

 「猫ににぼし」ということわざはありませんが、煮干しはかつおぶしに並んで、猫に食べさせているご家庭が多い食品です。骨ごと食べる煮干しはカルシウムが豊富で骨が丈夫になりそうだと、「食べさせると良い食品」のように思われている節があります。煮干しもかつおぶし同様、リンやマグネシウムが多いので下部尿路疾患のリスクが高まります。また出汁を取る前の煮干しは塩分も強いです。あまりおすすめではありません。かつおぶしと同じように、ドライフードの「匂い付け」に袋を利用するくらいでちょうど良いと思います。下部尿路疾患を繰り返し再発させていた△△ちゃんは、煮干しのおやつをやめてからは尿路疾患になることがなくなりました。

 「マグロの刺身、カツオのたたき」は食卓に上るちょっとリッチなおかずです。これを好物にしている猫も、日常的に与えているご家庭も多いです。うらやましいですね。タンパク質が豊富で生でも食べられる食材はグルメ猫の舌を喜ばせると思います。これらはほんのたまに、少量を(1回の量はお刺身一切れの半分くらい)与えるのはいいですよね。

 「かまぼこ・ちくわ・カニかまぼこ」は加工食品の中で猫に人気ナンバーワンの食品です。けれど加工の段階でいろいろな調味料が加わっているために、猫には塩分が高すぎることが心配されます。もし与えるのなら、たまに、ごく少量(1回量は1本の1/5くらいまで)にしておいてください。やみつきになって、カニカマ以外の食品を食べなくなってしまった偏食の猫ちゃんも過去に診させていただいたことがあります。ごほうびは少量で。

 「しらす」も塩分の強い加工品です。この味は覚えさせない方がいいですね。

 「のり・わかめ」も与えない方がよい食品です。のりせんべいの海苔部分を剥がして猫に与えると大喜びしますよね。ですが、どうしても海産物はミネラル豊富なので、下部尿路疾患と腎臓関連の病気に不安がおこります。気まぐれに与えることはあるかもしれませんが、連日与えることはやめてください。また与えたとしてもほんの少し(海苔巻きあられを剥がす程度)にしてください。

 「生のイカ・タコ・エビ・カニ・貝類」は「だめ。絶対にだめ。」の部類に入ります。これらの食品にふくまれる成分が身体に悪いこと(中毒を起すことがあります)や寄生虫の問題があるためです。昔、おばあちゃんは「猫が酔っ払うからだめだ」と言っていました。これらを与えると猫がよろよろしてしまうことをおばあちゃんは知っていました。明治生まれのおばあちゃん、すごいです。

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<ホタテはだめなの?>

 猫用のウェットフードには貝類であるホタテがよく使われています。ホタテにはタウリンが豊富に含まれています。猫の心筋症はタウリン不足が原因とわかってからキャットフードにはタウリンが添加されるようになっているくらいです。タンパク質も豊富、亜鉛も豊富、葉酸やシアノコバラミンなどのビタミンも豊かです。うま味成分であるアスパラギン酸やグルタミン酸があるので、ホタテを原料にしてフードを作ったら怖いものなしの猫用グルメフードができあがるわけです。

 こんな理想的なホタテですが、生のホタテは「だめ。絶対にだめ。」の部類に入ります。それは生のホタテにはチアミナーゼが多く含まれているからです。チアミナーゼはチアミンを分解する酵素です。

 

 チアミンについてもう少し詳しくお話ししていきます。

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<チアミンって何?>

 チアミンはビタミンB11910年、鈴木梅太郎博士が、当時「はやり病」という認識だった「脚気」(かっけ)の治療に米ぬかの中の成分が有効であることを発見し、「オリザニン」と命名したビタミンです。

 哺乳動物はチアミンを体内で合成することができません。食餌からの摂取が必須です。成猫の最小栄養所要量は125/100㎉とされていて、この量は犬よりも多くなっています。チアミンはほとんどの市販のキャットフードには十分含まれているため不足することはありません。(チアミンは化学的には不安定なので、フードに使われるのはチアミン塩酸塩などの合成されたチアミン成分です。)

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<チアミン不足とチアミナーゼ>

 一般的な食餌をしていればチアミン不足になることはまれです。あるとすると、

    食事の質が急に悪くなった。

    必要な摂取量を食べられていない。

    消化吸収能力が低下している。

    利尿薬などの投与により尿中排泄が増加している。。。

というような場合です。まれには

    炭水化物に偏った食事をしている。

ようなこともあるかもしれませんが、そもそも猫なのであまり考えられません。

   しかし、チアミン分解酵素のチアミナーゼを多く含む食品を食べてしまうと、チアミン欠乏を起すことになります。

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<チアミナーゼを多く含む食品>

 チアミナーゼは、ホタテなどの貝類のほか、不飽和脂肪酸を多く含む青魚、甲殻類にも多く含まれています。(猫は食べないだとろうと思いますが、ゼンマイやワラビなどのシダ類にも含まれています。)

 猫が大好きな魚介類や甲殻類を与える場合は生で与えないことが重要です。必ず加熱調理してから与えてください。チアミナーゼは酵素なので、熱を加えると失活するためチアミン欠乏にはなりません。もちろん、加熱してあるからと言って過剰な摂取はいけません。

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<チアミンのはたらき>

 チアミンは炭水化物代謝、脂質代謝、アミノ酸代謝に関わっています。からだの中の生化学的な反応(細胞が活動するために必要なエネルギー産生をするTCAサイクルというのがあります)に関与していて、身体に欠かすことができません。脳へのエネルギー供給源は唯一、ブドウ糖だけなので、糖代謝に必須なチアミンは脳機能の改善にも働きかけています。神経伝達物質であるアセチルコリンの合成にも関与していているので、知覚刺激の伝達を助ける作用もあります。

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<チアミンの必要量が高まるとき>

 動物はライフステージによりチアミンの要求量が高まります。成長期や繁殖期は動物の組織が増えていくため、大量のビタミンが必要です。この時期はビタミンだけでなく、ミネラルやタンパク質も必要になります。また、加齢に伴い、代謝や生理的な変化があるのでビタミン要求量は高まります。

 そのほか、長期に食欲不振が続くときも相対的に不足しがちなので、ビタミン給与したい時です。糖尿病や慢性腎臓病のような尿量が増える病気の時は水溶性ビタミンであるチアミンは尿中への排泄が増加するため、必要量を補ってやりたいときです。

 さまざまな食品にチアミンは強化されています。またサプリメントにも補充されています。

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<チアミン欠乏症>

 チアミン欠乏は、数日という短い時期で現れます。

 初期には食欲不振やよだれが多くなるなどの症状があります。もし、成長期であれば成長は悪くなります。

 その後チアミンが補充されず欠乏が継続すると、頭部(頸のところ)が強くお腹側に曲がり混む姿勢をとるようになります。短いけいれん発作を起すこともあります。しっかり立っていることが難しく、運動機能に問題を起します。

 さらに進行していくと、身体の動きを自分でコントロールすることができない麻痺の状態になります。そのまま昏睡状態になり、ついには死に至ることもあります。

 ヒトで認められた「脚気」(かっけ)は主に足におこる「多発性神経炎」です。猫では足は前と後ろにあります。四肢がふにゃらけて歩けない状態がこれに相当します。

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<治療は?>

 チアミナーゼを多く含む食品は即刻中止します。ビタミン剤の注射は速く効きます。通常は24時間以内には効果は現れてきます。ビタミン剤を内服することも可能ですが、お薬のにおいが特殊なためにいやがることが多いです。食欲が出てくれば、病後回復食(処方食です。栄養要求量を満たす食事であれば特にこの限りではありません。)で徐々にビタミン必要量に追いつくことができ、症状はゆっくりと改善されてきます。

 早期にチアミン欠乏に気がついて、症状が進まないうちに治療をはじめるのがいいのですが、最も良いのは、チアミン欠乏にしないことです。

 

 

 今日はねこが大好きな海産物について「食べていい」「食べちゃだめ」のお話をしました。

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テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

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