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尿検査のおすすめ

 先日、全身麻酔をかけての処置を行なうのに、年齢の話が出ました。当院開業以来ずっとおつきあいのある患者さんです。麻酔処置には皆さん不安がつきものです。その猫の年齢は現在12歳で、不安がなく麻酔ができるという年齢でもありません。猫の平均寿命は1415歳ですから平均的な寿命までもう少しあります。もちろん希望される天寿はもっとずっと先のはずです。一代目のわんこは成犬になってからの診察でしたが、開業当初の当時は8歳というのはすでに高齢犬であり、10年も生きてくれたら長生きというお話をしていました。「今はね~、みんな長生きになったよね~」で話は終わり、麻酔前検査の結果も悪くなかったことから、猫さんの残りの人生をQOLの高いものにするため麻酔下での処置を行ないました。(無事終了しております。)

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オールシーズン、健康診断の季節です。
まめにチェックできるのは理想ですが。。。




<みんな長寿になってきた>

さて、犬と猫の平均寿命に関してのデータがありました。なんと当院開業頃の1990年では犬8.6歳、猫5.1歳でした。(そっかぁ。思ってた以上に猫の寿命は短かった!)それが昨年2017年になると、犬14.19歳、猫15.33歳です。猫は外出する猫と屋内飼育の猫で別々の数値も出ています。外出猫は13.83歳、屋内猫では16.25歳です。寿命はデータで見ても間違いなく伸びているのがわかります。そして犬8.6→14.19も立派なものですが、猫の5.1→16.25の伸びは驚異的です。

こんなにも寿命が延びた猫ですが、それでも飼っている方としてはもっと長生きして欲しいと願っています。残念ながら平均寿命がそこまで延びているのに、たどり着けずに亡くなってしまう猫もいます。(平均ですから、上回る猫がいれば下回る猫もいて当然のことではありますが。)

なんとか病気を早期に発見し、病気に対してどのように対応していけばいいのか、できるだけいつものスタイルを崩さずに家族とこのまま一緒にいる時間を長くすることはできないものか。治療に明け暮れる最期を病院で過ごすのではなく、病気はあるけれどもうまくケアしながらはたからの見た目は健康で、家族とおだやかに過ごす時間をのばすことはできないものか。これがみんなの幸せにつながるような気がします。

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特に尿検査は猫の腎臓病を
早期にキャッチすることができます。
 

<尿検査のおすすめ>

そこでご提案です。ずいぶん前からおすすめしていることではありますが、改めて「尿検査」のおすすめです。今回おすすめする尿検査は、定期健康診断で血液検査を受けてくださるよりももっと気軽に行なうものです。思いついたから、ちょうど猫がオシッコしているところに出くわしたから、フードやノミ駆除薬のお求めついでに、わんこの用事で来ることになったから、そんなラフなかんじで「お家でオシッコを採って尿検査を受けてみませんか」というおすすめです。もちろんわんこも大歓迎です。

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おしょうゆ差しが猫の命を救う、
なんてハイスケールなキャッチコピーなんでしょう!
当院の「お手軽に尿検査」とは
スケールが違います。(><)

<尿の検査>

尿の検査はいくつかあります。

    物理的性状のチェック。

色を見る、濁りを見る、においをかぐ、比重を調べる、の検査です。

    化学的性状のチェック。

これは尿検査用の試験紙で調べます。

    顕微鏡で観察。

遠心分離した尿の沈殿物を顕微鏡で観察します。

    このほかにも細かく調べたいものを外注検査に依頼することがあります。

「お気軽に尿検査」では、ラフな感じで採取した自然尿でもあまり結果に影響を受けることがないだろうと思われる①と②の検査だけにとどめ、まずは「調べてみること」に重点を置きたいと考えています。

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猫の慢性腎臓病は罹患率の高い病気です。
 

<尿検査でわかること>

    「におい」と「色」と「透明度」これが最初のチェックです。

キツい特異なにおいは細菌感染や糖尿病などを疑わせるものです。濃いオレンジ色は黄疸が出てきている印、肝臓や胆道の病気が疑われます。膀胱炎や腫瘍などで粘膜表面から出血があると赤い血の色をした尿になります。色味がない尿は尿を濃くする機能(腎臓など)が衰えてきているせいかもしれません。「透明度」が低いのは尿の中に蛋白や細胞などの成分が混じっているために混濁していることを現しています。炎症や腫瘍が示唆されます。

 さらに「比重」を調べると数値的に出てきますから、腎臓の尿濃縮機能をもうちょっと詳しく知ることができます。       

    「尿試験紙」でのチェックです。

「尿試験紙」は「ウロペーパー」と呼ぶこともあります。化学的な性状を見ていきます。「pH」は尿の酸性度アルカリ度を見ます。これは食事による影響が強く、尿結石のできやすさを示唆します。「尿タンパク」は腎機能異常があるときや炎症や腫瘍で細胞成分が出現しているときに高くなります。「潜血反応」は肉眼的は血尿が見られない(尿が赤くなっていない)場合も出血を機敏にキャッチします。赤血球崩壊や筋肉の損傷があるときにも反応します。「ビリルビン」は黄疸や溶血で陽性に反応します。「グルコース」は血糖値が上昇している糖尿病の時のほか、腎臓の異常があるときに再吸収できなかった尿糖が反応し陽性になります。そのほか重度の糖尿病で糖代謝が損なわれたときに出てくる物質である「ケトン体」を検出することもできます。また動物には意義のない検査項目も含まれている試験紙がありますが、それは一緒に結果が出てきても判断の参考にはしません。

    さらに尿を顕微鏡で調べる検査を行なうこともありますが、今回おすすめする検査はここまでは考えていません。

    「お気軽に尿検査」でとても心配な結果が出た場合、追加検査のためにご来院を促すことがあります。詳しい尿検査のための尿は採ってきてもらう尿ではなく、病院で新たに採取する尿、可能であれば膀胱穿刺によって得られた尿で行ないたいと思います。

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見本のトイレを待合室に展示して置きました。

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花王さんのコンセプトは1週間取り替えなくても大丈夫な、ですが、
これについての解説はいらしていただいたときにお話しします。




<具体的な尿の採取方法>

尿を持ってきていただくとなると、おうちの方が尿を採取しなければなりません。これで「お手軽な尿検査」になるの?というお叱りを受けそうです。なぜなら猫が排尿しているところに、清潔な紙コップなどで尿を受けようとしても、それは「お手軽」どころか困難極まることだからです。猫砂の代わりに手芸用のビーズをトイレに入れて、いつものペットシーツを裏返しにするかまたはペットシーツを敷かずにそのままトレイで尿を受け止めるという方法があります。これまでだと、このやり方での採取をお願いしていました。けれど「尿検査」のために手芸用ビーズを購入し、採取できたらビーズを洗って次の機会にまたそれを使うというのは手間とお金がかかるので、ちょっと申し訳ない感じがします。
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こんなのです。手芸用ビーズ。

今回、猫の腎臓病用のお薬を作っている会社ベーリンガーさんと、トイレメーカーの花王さんとのご協力もあり、計画していたよりも早く「お手軽に尿検査」を実施することができました。花王さんが開発してくださった猫砂(とトイレ)ならうまく尿を透過させる(猫砂が尿を吸収しない・尿によって砂が固まらない)ため、トレイに尿を受け止めることができます。トレイに料理用のラップを敷いたり、ペットシーツを裏返しにしたり、そもそも何も敷かなくてもトレイから簡単に尿採取できそうです。これならビーズを買わなくてもいいです。似た形状のトイレを使っているのであれば猫砂をその製品に変更するだけでも大丈夫かもしれません。でも、企画の「尿採取用きんぎょ」にはトイレがお安く購入できるチケットも入っていますから、この際チケットを利用してトイレを新品にするのもありです。複数の猫が同一のトイレを使用する場合は、時間を見計らってうまく採取してください。
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こんな手順で採っていただきます。
説明の図ポスターです。

「どうしてもオシッコが取れない!」という場合は、いつものように、膀胱に尿が溜まっている時間帯で病院に来てください。こちらで尿道に管を通して、または膀胱に針を刺して尿採取することにします。これだと「お気軽に~」のコンセプトではなくなってしまうかもしれませんが、高齢になっている猫さんには少なくとも半年ごとの尿検査をおすすめしたいです。そこまで高齢になっていない猫さんたちには、これまで通りですが「無理なくキャリーに入って貰う」ための「リビングにキャリー!」「キャリーにおもちゃ!」の練習を積んでいただけるといいかと思います。(キャリートレーニングをご存じないとき、いらしたときにご説明いたします。すごく大事ですので口頭でお話ししたいです。)

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食欲があることは健康の印にはなりません。
よく食べることが症状である病気もあります。

<特に尿検査を受けて欲しい猫たち>

青年期から成猫期(中年期にかけても)の猫では泌尿器症候群の心配があります。尿pH(や、結晶を見つける顕微鏡検査)で尿石症を発見することができるかもしれません。尿道閉塞症は発見が遅れたら命に関わります。また発見が早く対処が優れていたとしても腎臓に爪痕を残します。予防できるに越したことはありません。多頭飼育や家の外に野良猫がいっぱい集まってくる家に住んでいる猫の場合、ストレスが高いため尿石症や特発性膀胱炎を起しやすくなっています。おやつが大好きでいっぱい貰ってしまう猫は尿石症になりやすい傾向にあります。こんな猫たちは特に尿検査がおすすめです。

成猫期に入る頃、徐々に障害が始まるタイプの先天性の腎臓病をピックアップすることができるかもしれません。ペルシャ猫は遺伝的に多発性嚢胞腎を持つ傾向がある猫ですが、短毛の日本猫にも発生があります。水の飲み方が多いかも!と心配される猫にもお気軽尿検査はおすすめです。

中年期から熟年期では、いわゆる猫の慢性腎臓病や糖尿病を早期に知ることができます。この年齢のすべての猫にはぜひ尿検査を受けていただきたいです。早期に発見し、早期に対処で健康寿命を延ばすことが可能です。

太っている猫、太っていたけど痩せてきた猫たちはどの年齢層であっても糖尿病が懸念されます。この子たちももちろん、お手軽尿検査を受けてください。

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不適切な場所で排尿をしてしまう猫さんのうち
半分くらいはトイレの改善で症状が消失します。
適切なトイレとトイレの環境は非常に重要です。

<おまけ・尿検査の標準値>

尿検査の標準値を記しておきます。

    物理的性状

・色:黄色(淡い黄色から暗目の黄色)

・透明度:透明

・におい:軽いにおい(アンモニア臭はほぼありません)

・比重:1.035以上

    (ほんとに健康だ!と思う猫は1.0401.050くらいあります)

    (1.060くらいまでなら脱水もないでしょう)

② 化学的性状

  ・pH:弱酸性6.5前後

  ・尿タンパク:-

  ・潜血:-

  ・ビリルビン:-

  ・ブドウ糖:-

  ・ケトン体:-

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採尿用「きんぎょ」たくさんあります。
ご自由にお持ち帰りいただき、
尿を入れて持ってきてください!




<おわりに>

初診時で慢性腎臓病(IRISのCKDステージ4)であった猫さん、集中治療によって著しい高窒素血症が低下し一度は食事が食べられるまでに回復しました。けれど長くは続きません。まだ年齢の若い猫さんでした。ドナーさんが見つかれば腎移植が適応だったのかもしれません。

同じ頃、歯科処置のための麻酔前検査で腎機能に不安が見つかり、エコー検査から多発性嚢胞腎を発見した猫さんがいました。先ほどの猫さんよりは年齢の高い猫さんです。まだ結構腎実質が残っていました。腎ケアの開始です。うまくケアしていけば、まだしばらくいつもの生活を続けていくことが可能です。

ハイシニアの猫さんだと腎臓病で寿命が終わることに納得できても、まだそこまで年齢が行っていない猫さんだと無念な気持ちが高まります。早期に知っていれば、しんどい思いをする期間が短くて済むのかもしれない。そういう気持ちから猫さんの「お手軽尿検査」を企画しました。実にタイムリーに花王さん、ベーリンガーさんの「尿検査」企画と重なり実現が早まりました。感謝です!この機会にぜひ、多くの猫さんに「お手軽尿検査」を受けていただけますよう願っています。


夜は大変冷えてきました。お風邪など召されていませんか。今週は喉の調子が悪くて、飴をなめながら診療させていただきました。おやつが手放せない人みたいでした。診療中に失礼いたしました。

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Author:ハート動物病院
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オフィシャルサイト:http://www.heart-ah.com/

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