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BEGダイエットのこと・つづき

BEGダイエットのこと、つづきです。
前回、今人気のBEGフードについてお話ししました。そのまま読んでいると愛犬や愛猫のためにこれ以上のフードはないと思わせる魅惑のワードに満ちています。でもたいていの獣医師はそれをとても不安に思っています。既に信者になってしまっている飼い主さんもいらっしゃると思います。しかしフード企業側の情報しか得られないのでは消費者として正しい判断を下せそうにありません。今日はBEGダイエットについて不安に感じていることをお伝えします。
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 <BEGダイエットは本当に理想のフードでしょうか>

BEGダイエットは「健康」を求める人のトレンドをよく反映していると思います。時代に求められているのでしょう。ロハスな食事を現代人の生活の中で選べるかどうかは別として、このような食事を私たちが毎日食べると健康になれそうです。だからそれを犬や猫に当てはめたいのかもしれません。

しかし、いくつもの点で理屈に合わないことがあります。

①グレインフリーフードにも炭水化物は含まれています
前回のお話になりますが、グレインフリーフードの解説のところで「穀類」の後にカッコで(炭水化物)としてみましたが、違和感はなかったでしょう。「穀類=炭水化物」と思っておられる飼い主さんは多いです。ですがグレインフリーフードは炭水化物を含まないわけではありません。穀類を原料にしていなくても、豆類や芋類が入っていますので、そちらからの炭水化物が入ります。そもそもドライフードは炭水化物が無いと形成できない仕組みになっています。(ほんとうに炭水化物を避けるためにはウエットフードを選ぶしかありません。)

②炭水化物は犬の身体にも猫の身体にも必要な栄養素です
それから、炭水化物が犬や猫の身体に不要であるということはありません。利用できないということもありません。炭水化物はペットの食事のエネルギー源として重要な役割を果たしています。また犬も猫も身体には炭水化物を効率よく消化し吸収できる仕組みを持っています。そして消化吸収されない不溶性線維は便を形成し腸内細菌に栄養を与える役割を持っていますから「不要」ではありません。

③高タンパク低炭水化物に見えるテクニック
該当するフードの炭水化物表示にはテクニックがあります。明らかに一般のドライフードに比べると炭水化物%が低くなっているとお考えでしょう。しかしこれらのフードでは乾物ベースではなく供給されたときの栄養%をそのまま表示しているものがあるのです。これを乾物ベースにおきかえるには計算する必要があります。

④添加しないと得られない微量な栄養素もあります
炭水化物と脂肪、蛋白質のバランスが整っていない食事をすることは栄養の不均衡を招きます。手作り食の場合には不足しがちなミネラル類やビタミン類を必ずサプリメントで補うようにお願いしています。どうしても単一な材料で作っていくことになるので微量な調整が難しいからです。「これだけで栄養が足りる」とし、「添加物不使用」となると調整が難しいように思います。エキゾチック肉の中には栄養組成が明らかになっていないものもあるでしょう。人が食べるものだからこそ、家畜の肉は部位別でも調べられているのでわかりますが、私たちが食することがない肉を「牛」や「豚」「鶏」に準じて栄養計算しても大幅に異なってくると思います。ブティックフードの中には
AAFCO(米国飼料管理協会)の基準やWSAVA(世界小動物獣医協会)のガイドラインを満たすための検査を受けていないものもあります。「基準の審査を通っています」という証明がAAFCOのマークです。細かいことはわからなくても、このマークさえあれば消費者はこのフードが一定レベルのものをクリアしていると考えてよい安心のマークで、これがないと重要な栄養素が欠けている可能性もあります。

⑤食物アレルギーがありますか?
穀物のどれかに対する食事性アレルギー(食物過敏症)があると(例えば小麦や大麦など)、それを排除したフードにすると慢性的な皮膚炎や嘔吐、下痢などが改善する可能性はあります。牛肉やチキンに対するアレルギーがある場合も新奇蛋白質としてエキゾチックフードを使うことにも意味はあるかもしれません。けれどこれらのフードを選んで貰った犬猫の健康を損ねている犯人は小麦やチキンで間違いないのでしょうか。また、アトピー性皮膚炎の犬にそれは有効でしょうか。アレルギー関連の皮膚炎や胃腸炎を専門とする獣医師たちが提案している標準的な食事療法とはかけ離れています。

⑥消化性と粒の大きさに関連は?
それから消化性と粒の大きさには関連がありません。キブルがほどける(形になっているフードがぐちゃぐちゃになる)までの時間に関連する要素はたくさん有ります。腸から吸収されて血中に入れば、特定疾患でない限りは全身くまなく栄養素は巡ります。

⑦総合栄養食なら当たり前のこと
そして「これだけで栄養が事足りる」のは総合栄養食であれば当然のことです。

⑧フレッシュですか?
あるフードは受注生産ということで海外発注品でした。これでは「新鮮」にはなりません。どのフードもできたてを袋詰めすると思います。作られて間がないフードを選ぶなら国産フードになるでしょう。生産から輸送までのラインは工場見学などで質問するといいかもしれません。

さまざまな疑問点が湧いてきてしまいました。BEGフードはどうも過大評価されているようにしか思えません。

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<心配なことが発生しました>

これらフードに対して心配を向ける先生はいても、意見を述べてくれる先生は少数だったかもしれません。
2018年6月、タフツ大学の心臓病専門医であるリサ・フリーマン先生は、拡張型心筋症になりやすい定型的な品種でもないのに、ゴールデンレトリバーの拡張型心筋症が高率にみられることを発表しました。遺伝的に発症しやすいとされている犬種はドーベルマン、ボクサー、グレートデンです。(日本ではこれら大型の犬はあまり飼育されていません。)発症した犬たちがBEGフードを食べていることと関連があるのではないかということも述べていらっしゃいました。それらの食事をしている犬たちは総じて血中のタウリンの値が低く出ていました。それで
当初はタウリン欠乏が心筋症を発症させることを疑っていました。病気の犬たちには心筋症の治療のほか、食事の変更とタウリンの補給を行ないました。すると症状も改善し、うっ血性心不全も解決しました。すべての犬がタウリンを欠くわけではなかったそうですが、発症した多くの犬はBEGフードとの関連がありました。
「A broken heart:Risk in heart disease in boutique or grain free diets and exotic ingredients」
https://vetnutrition.tufts.edu/2018/06/a-broken-heart-risk-of-heart-disease-in-boutique-or-grain-free-diets-and-exotic-ingredients/

彼らの発表ののち、多くの獣医師たちも拡張型心筋症に罹患した犬の情報をFDAに提出しました。

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<拡張型心筋症というのは>
拡張型心筋症は心筋の拡張と収縮の不具合から心臓のポンプ機能が低下する病気です。最終的に全身に血液を送るという心臓の仕事に支障を来すことになり、心不全と死亡をもたらします。
拡張型心筋症の症状は次のようなことです。
・食欲不振
・歯肉が青白い
・心拍数が多い
・咳をする
・呼吸が苦しそう
・脱力~失神

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<調査は今も継続中です>
報告を受け、米国食品医薬品局(FDA)は食事と犬の心臓病との関連性について勧告するとともに調査を始めました。

また、米国獣医協会(JAVMA)も2018年12月には「犬の食事関連拡張型心筋症:私たちが知っていることは何か」として公表しています。
(Diet-associated dilated cardiomyopathy in dogs: what do we know?)
https://avmajournals.avma.org/doi/pdf/10.2460/javma.253.11.1390


さて、本年2019年6月、米国食品医薬品局(FDA)は2月に続いて3回目の調査結果を公式発表しました。
「特定の食事と犬の拡張型心筋症の潜在的な関連性に関するFDAの調査」です。
FDA Investigation into Potential Link between Certain Diets and Canine Dilated Cardiomyopathy | FDA
https://www.fda.gov/animal-veterinary/news-events/fda-investigation-potential-link-between-certain-diets-and-canine-dilated-cardiomyopathy

今回の報告は、2014年1月1日から本年4月末日まで、拡張型心筋症と診断された犬560頭と少数の猫(猫は肥大型心筋症の方が圧倒的に多いのでこの調査では少数です)に関する詳細なデータの公表です。ドッグフードのブランド名も公表されています。最も報告件数の多かったA社は日本でも購入可能なブランドでした。

今回の調査結果で、拡張型心筋症の原因はグレインフリーフードと確定したわけではありません。タウリンを補給することで改善された犬たちもいますが、タウリンの欠乏が明らかにされたわけではなく、タウリン以外のことが原因となっている可能性は十分考えられます。
FDAは今も調査中です。より多くの情報が明らかになるまで注意は継続していかなければいけません。

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<わたしたち獣医師がおすすめするブランド>

私たちが推薦するブランドは

ヒルズhttps://www.hills.co.jp/prescription-diet

ロイヤルカナンhttps://www.royalcanin.com/jp

ピュリナhttps://nestle.jp/brand/purina/vets/owner/

MSD https://www.msd-animal-health.jp/products/companion-animals/index.aspx

   https://www.msd-animal-health.jp/binaries/specific_cat_leaf_tcm48-213341.pdf

です。

日本のブランドでは

日清ペットフードhttps://jp-dietics.jp/

日本農産https://drs.nosan.co.jp/shop/default.aspx

です。

パッケージの甘い言葉を鵜呑みにするのではなくて、愛犬愛猫の栄養基準を満たした食事かどうかをしっかり見定め、本当に安全な食事をお買い求めいただきたいと思います。犬と猫の健康管理は食事から。そして食事由来の病気から愛犬愛猫を守ってあげられるのはフードを選ぶ飼い主さんしかいません。

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テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

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