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猫の鼻のぐずぐずが続いているとき

 猫の鼻のぐずぐずが続いているときに

猫はウィルスや細菌感染に伴って鼻がぐずぐずします。目も涙や目やにで開けにくそうになることが多いのですが、これらの症状は別の理由でも発生します。鼻に問題があった猫の26%は慢性鼻炎ですが、リンパ腫などの鼻腔にできる腫瘍の割合はそれよりも高く56%にも上ります。今日は鼻腔内にできる腫瘍のお話をします。

 

<こんな風に症状が進みます>

くしゃみや鼻づまり、涙目、目やにが出ます。多くの飼い主さんは「猫の鼻風邪」だと思うでしょう。または「時期的にアレルギーなのかしら」と思うかもしれません。動物病院でも「カリシウイルスやヘルペスウィルス、クラミジアなどの感染症」とお知らせしているかもしれません。
が、このような症状が長引きます。これは腫瘍細胞によって鼻腔が閉鎖され気道が通らないことによる症状です。
やがて顔つきが変わって来ます。でも、まだ初期だと
「怪我をしたのかもしれない、怪我の治りが悪い」と思われていることがあります。
が、変形の度合いが進んできます。これは腫瘍が増大して周囲組織を圧迫するために出てきている症状です。
変化のスピードがとても速いのに飼い主さんは驚かれるかもしれません。ここまで来ると、「風邪じゃない」「けがでもない」と猫に起こっていることが悪いことかもしれないと思い始めるでしょう。

初期から徐々に大きくなってくるときの症状をまとめてみました。

l  くしゃみ、逆くしゃみ、分泌物が飛び散る

l  鼻づまり、呼吸音が聞こえる、鼻が苦しそう

l  長く続く鼻水、鼻汁、膿性分泌物、鼻血

l  たくさんの涙、どろっとした目やに

l  目と目の間の鼻すじが盛り上がる、目と目の間が広くなる

l  顔に痛みがある(触れられるのを嫌う)

l  食欲不振(体重減少につながる)

l  驚いたような目、目頭から膜が出る、目が閉じない

l  顔の左右が不対称、顔の変形がある

l  口臭、顔が臭う?

l  発作、混乱

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<鼻腔にできる腫瘍>

 呼吸器系には多くの部分がありますが、上部気道の重要な部分は鼻と副鼻腔です。副鼻腔は頭蓋骨の骨の空洞です。ここは鼻とつながっていて鼻から吸い込んだ空気に湿気を含ませる仕事をしています。鼻と副鼻腔の内側は上皮と呼ばれる同じタイプの組織で覆われています。この組織は鱗状に細胞が重なり合った構造をしていて扁平上皮(へんぺいじょうひ)と呼ばれています。

鼻にできる腫瘍で一番多いのはリンパ腫です。リンパ腫はリンパ球(白血球の一種)の腫瘍です。リンパ組織は体中あらゆるところにありますが、鼻腔にできるリンパ腫は主に鼻に限局して発生しています。(猫のリンパ腫で鼻にできる割合は少ないです。)鼻の扁平上皮から成長する腫瘍は、扁平上皮がんです。たいてい鼻の両側に発生します。骨とその近くの組織に広がるのが一般的ですが、場合によっては脳に広がって発作を引き起こす可能性があります。 線維肉腫が発生することもあります。かなりまれです。鼻道と周囲の結合組織から発生する悪性腫瘍です。ゆっくりと進行していきますが、発見されたときにはかなり進行している場合が多いです。軟骨肉腫が発生することもあります。こちらもまれです。侵襲性で急速に広がる腫瘍です。

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 診断>

症状が発症するまでの猫の健康に関するプロフィール、症状が出てから診察日に至るまでの変化の過程をお伺いします。もしくはカルテに記載されたことを再確認します。

その他の病気と同じように、身体検査に続いて血液検査(血球数と生化学的検査、電解質の検査など)を行ないます。感染症の検査(猫白血病ウイルス、猫免疫不全ウイルス)の検査も行ないます。猫白血病ウイルスに感染しているとリンパ腫の発生リスクは60倍に、猫免疫不全ウイルスの感染があると7倍に、どちらにも感染があると77倍にもなります。これは診断の目安になりますし、治療や予後判断にも役立つ検査です。

猫の鼻汁の検査は、細菌や真菌の感染があるかどうかをみるのに有効です。クリプトコッカス症は鼻にできる腫瘍にそっくりの症状を出しますが治療が異なるので、鑑別します。(血液検査の併用もします)

猫の頭部と胸部のX線検査を行ないます。腫瘍が存在するかどうか、それが大きいかどうか、骨に浸潤しているかどうか、肺などほかの部分に広がっていないかを判断します。しかし画像診断としてX検査では不十分です。

鼻鏡は鼻の穴の中を覗く検査ツールですが、新生物のために鼻腔が狭くなり、出血のために視界が悪い場合は鼻の中を調べる道具として役に立ちません。(鼻腔内に寄生虫や異物が入り込んでいるのを発見することには威力を発揮します。)

生検(細胞の病理学的検査)は、腫瘤の正確なタイプを判断するための不可欠な検査です。細い針を使って腫瘍細胞を採材するよりもストロー状のものを使って腫瘍細胞の塊を採る方が多くの細胞を収集でき、検査を確定診断に導くことができます。鼻の奥にストローを入れられるのは、私たちがインフルエンザの検査を受けるときのように、猫にとっても不快なものです。この検査は鎮静処置下で行ないます。近くのリンパ節からもサンプルを採取します。腫瘍が転移してはいないかを確認するものです。

可能であれば猫の頭のコンピューター断層撮影(CT)または磁気共鳴(MRI)スキャンをお願いすることになります。腫瘍と猫の頭蓋骨の内部のより詳しい画像が得られます。腫瘍の成長の大きさ、広がり具合、身体のほかの部分に広がりがないかどうかを確認するにも役立ちます。腫瘍の進行度と最善の治療方法を判断するのに役立ちます。

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 治療>

一般に腫瘍の治療は手術、放射線療法と化学療法(抗がん剤)の組み合わせで治療されますが、猫の鼻腔を埋めた腫瘍が何であるかによって効果のある治療方法は異なります。例えばリンパ腫では手術が実用的ではなく、放射線または化学療法の組み合わせ、または化学療法だけで治療されます。他の腫瘍でも切除手術だけでは効果的ではなく、組み合わせた方が治療成績は良好です。放射線による治療は限られた動物病院でしか受けることはできませんし、手術も熟練した術者による手術が必要です。利用可能な治療法は相談して決定します。

そのほか、支持療法も加わります。感染が存在する場合は抗生物質が投与されます。食事が思うように摂取できない場合は栄養学的なサポートも必要です。目が閉じないような場合、角膜を保護するための点眼薬も必要になるでしょう。

場合によっては、終末期の痛みの管理が適応になる可能性があります。

 

 <生活と管理>

 鼻や副鼻腔に腫瘍ができた猫は、鼻粘膜が正常に機能しないため感染症が発生しやすくなっています。炎症を起こしやすく鼻水も出やすい状態です。治療の副作用にしても、腫瘍による結果であるにしても、好ましくない現象を軽減するために猫にできることは何でも行ないます。環境内の温度など、猫を快適にさせる工夫が必要です。

鼻腔の腫瘍を治療しない場合の生存期間は5か月未満とされています。(放射線療法を使用した場合のリンパ腫の平均生存期間は12年です。)腫瘍が脳やその他の場所に広がっていると予後はとても悪く、生存率もぐんと低くなります。
予後に関するデータをみると猫にとって最良の結果を確実にするためには積極的な治療が必要だということが読み取れます。

 今月はNational pet cancer awareness month 動物の腫瘍について知ってもらう月間です。「まさか猫の鼻に腫瘍ができるなんて。」驚かれたかもしれません。知らない方が普通です。でも、こんなこともあるのだと知っていたら、長引く鼻水に早く対処できるかもしれません。そんなわけで、そう多くはないけれど見ないこともない鼻腔腫瘍についてお話ししました。「涎が多いのも口腔内腫瘍かもしれない!」と思いついたあなた、賢いです。思い当たる節があれば動物病院へ、お願いします。
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テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

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