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腸内細菌のこと・つづき

蛋白漏出性腸症の治療のために腸内細菌を整えることは、過剰になっている免疫系に対しステロイド療法に頼らずにブレーキをかけることになります。もう少し、お話しを続けます。 



<腸内細菌が作り出す物質>

活性化された腸内細菌が作り出す産物をポストバイオティクスといいます。「post:あとに、biosis:生物」なるほど、わかりやすい言葉です。しかしポストバイオティクスはバイオジュニックスとかバイオジェニックスといわれることの方が多いです。バイオジェニックスとして酪酸や酢酸、プロピオン酸などの短鎖脂肪酸やポリフェノールなどが知られています。今後研究が進むとさらにいろいろな成分がわかってくると思います。

ビフィズス菌やラクトバチルス菌などから作られたバイオジュニックスは商品化されていて、こうした製品からはこれまでのプロバイオティクスなどで得られていた有益な効果、便の質の改善、規則的で健康的な便の維持や免疫に良い作用なども同様に得られています。

 DSC_2241.jpg
新しいフードです。
名前がそのまま腸内バイオーム。
急性下痢にも効果有りです。

<バイオジェニックス>

腸内細菌の機能的最終産物が生体のどこにどのように作用するのかということも徐々にわかってきています。酪酸は粘膜細胞に栄養を与えますので、傷ついた腸粘膜上皮の再生作用が得られます。またポリフェノールからは抗炎症、抗酸化作用が得られます。そのほか、機能的物質は血管、膵臓、脳、末梢神経、脂肪細胞など多くの組織にも影響を与えることから、糖尿病やメタボリックシンドローム、アルツハイマー病などの治療の一つの面として期待されています。

 

<腸内細菌と免疫>

免疫というのは、外から侵入した細菌やウイルスなどを撃退し、病気を発生させないようにする自己防衛システムです。がん細胞の発生に備えて常に監視も行なっており、新生のがん細胞への攻撃も行なっています。

ときに自分自身を異物と誤解して攻撃をしてしまうこともあります。この誤爆ともいえる事態は自己免疫性疾患で見られます。またアレルギーは病原性を示していない花粉や食品などに対して過度に攻撃してしまうわけですが、こちらは過剰防衛に当たります。炎症性疾患では必要以上に兵士が現場に駆り出されて集まっている状態とも言えます。これらの病気はすべて免疫の異常から発生する病気です。

身体には免疫応答にブレーキをかける細胞が存在しています。制御性T細胞(Treg)です。この細胞がしっかり働いてくれると、免疫系の病気、アレルギー性の病気、炎症性疾患などを抑制してくれます。(過剰に働き過ぎるとがん細胞の成長に荷担してしまうという悪い結果にもなります。)

免疫応答に異常のある病気ではこの免疫にブレーキをかける細胞Tregが減少していることがわかっています。炎症性腸疾患のある患者さん(人)、慢性腸症になっている犬では減少しています。

腸内細菌が産生した短鎖脂肪酸は大腸のTregを増やすことに関係しています。過剰な免疫にブレーキをかけるTregが増えることで、正しい免疫応答ができるようになります。

 DSC_2242.jpg
猫用もあります。
下痢だけでなく排便困難な猫ちゃんにも効果有りです。
猫ではフードのほかにサプリメントでシンバイオティクスを
加えることが難しいのでフードに入っていると好都合です。



<期待される病気>

腸内細菌の話題ですが、犬の慢性腸症、ことに炎症性腸疾患に対して期待されるため、蛋白漏出性腸症の続きとしてお話しを続けてきましたが、その他にもミニチュアダックスの大腸にできるポリープ、膵外分泌不全症の治療に期待が持てそうです。さらに、肥満、糖尿病、胆肝系(胆汁酸の組成変化による肝疾患)、加齢、認知障害、感情機能に関する問題(これまで抗うつ薬を使用してきた攻撃性などの行動学的な困った案件)にもぜひ使いたい治療です。

腸内細菌のバランスを整えて腸の健康をもたらすことがからだのために大切であると言われています。「善玉菌を増やしこれを維持すること」は昔から健康に良いこととされてきました。今も変わりがありません。バランスの取れた腸内細菌叢を維持することは健康のために必要です。が、腸内細菌の作り出す世界と可能性はまだ無限にあります。

腸内細菌が作る最終産物は腸に限らず全身の各所(脳や膵臓、脂肪組織そのほか)に効果があることがわかってきました。これまでざっくりと「免疫力が強くなる」といわれてきたことの実態もわかってきました。病気により腸内細菌の中で増える菌群と減少する菌群が明らかになり、病気が治癒するとその細菌群も健康な動物と同じ組成になっていくというようなこともわかってきました。腸内細菌の安定化は「腸の健康のため」だけにとどまらず、身体全体に良い効果をもたらしていることがわかります。病気を管理し治癒に導くために、腸内細菌の構成比を整えることが大切なようです。腸内細菌は補助的でも有効に働いてくれそうです。

 

テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

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