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猫の巨大結腸症・2

猫の巨大結腸症の続きです。
治療について詳しく書きました。



<巨大結腸症の内科的治療法>

通常、最初に内科的治療を試みます。(内科的な治療で効果が得られなかった場合、または内科的治療を施しながらも進行してしまった場合に手術が適応されます。)

内科的管理には、5つの要素があります。

1.適切な水分を補給し、水分を維持する
脱水症状の緩和のために水分補給をします。排便困難になって食欲や飲水欲の低下した猫には必須の治療です。

2.蓄積している糞を取り除く、継続的に除去する
薬物投与の前に蓄積してしまった便の排除も不可欠です。

3.食物繊維の多い食事にする、この食事を続ける
食物繊維が多い処方食を与えることや便軟化剤、結腸運動促進薬などの薬の使用は、困った状態がリセットされた後に適応される内科治療です。これらは根本的な原因を修正するものではありませんが、猫が便秘にならないように糞便を通過させる方法です。

4.便軟化剤を試す、身体に合った薬剤と薬量で維持する
便を軟らかくする薬が便軟化剤です。第一選択にしているラクツロースは昔からある薬で、投与量により便の固さが変わります。飼い主さんが希望する便の固さに調整するよう投与量を加減することができます。浸透圧によって腸に水を引き込む消化できない糖です。味や口当たりのために猫が好まない場合もあります(甘いのでたいていの犬は大喜びで舐めてくれます)。猫の好みに合わないときはポリエチレングリコールを選択します。腎臓を悪くする不凍液の成分であるエチレングリコールとは化学構造が違います。これには風味が無いため食事に混ぜて与えることも可能です。こちらも腸管から吸収されず水と結合しやすい物質で、この特性により便を軟らかくさせます。飲水量が足りないと脱水症になる可能性がありますので注意深く投与する必要があります。

5.結腸運動促進薬を使う
結腸の筋肉を刺激し、腸管運動を促進させる薬(モサプリドなど)も排便状況の改善を目的に使用します。ネコの結腸運動に有効であることが示されている新しい運動促進薬も海外では出ていますが、日本では未だ発売で残念ながらその効果を体験することができません。ミソプロストールは、NSAIDsによる胃の粘膜損傷の発生率を低下させることが示されているお薬ですが、猫の結腸平滑筋の収縮を刺激することが明らかになりました。今後使ってみたいと思います。メトクロプラミドとドンペリドンは、末梢運動促進効果と中枢性制吐効果を持つお薬です。これらの薬剤は胃の運動性を向上させますが、結腸通過時間にはほとんど影響を与えず、便秘や巨大結腸の治療には不向きのようです。
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<進行していく>
軽度または中程度の場合(おそらく病気の初期段階に当たると思われます)は、処方食+便軟化剤+腸管運動促進薬の治療を常に、そして定期的な便排泄処置、時折水分補液という内科的な治療で維持することが可能です。
事態が進むにつれて、便の排泄処置(腹部触診により蓄積された糞便を手動で押し出す用手排便、浣腸や摘便なども含めます)の頻度が増します。重度に便が蓄積された状況では、便を排出するための処置がとられるとき、脱水や電解質の乱れを修正するために静脈内輸液療法を行ない、時に入院になる場合もあります。結腸内の糞便量が大きく硬すぎる場合は全身麻酔が必要になることもあります。浣腸処置により嘔吐を起こすこともあるため、気管挿管が必要になります。浣腸剤には温水や温めた生理食塩水などを使用します。

注意)浣腸処置は動物病院で行ないます。家庭で市販の浣腸剤を使って浣腸を試みるのは危険なため、行なわないでください。浣腸剤によっては重篤な電解質異常を起こしてしまうことがあります。

宿糞量をためないうちに排泄させていけると、内科的なコントロールで数か月から数年は状態の維持が成功していきます。残念ながら、結腸から便を除去する方法の必要性は徐々に頻繁になります。最終的に病気が進行する猫は内科療法には反応しなくなります。その結果、結腸は再び大きく弛緩し、固い糞の塊を内包し便を押し出す力が無いただの袋状の組織になります。

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<巨大結腸症の外科的治療>
内科的アプローチが効力を無くしてしまった場合は手術を検討する必要があります。これは結腸の機能していない部分を除去する大手術ですが、多くの猫は良好な反応を示します。結腸の大部分(ほぼ90%から95%)を切除する結腸全摘出術は、食事管理を含めた内科的管理に反応しない(しなくなった)巨大結腸症の外科的管理に最適な治療法と考えられています。

骨盤骨折などこの病気の元になってしまった原因がある場合は、それに応じた外科処置も必要になります。

術後13日間は輸液で水分補給します。痩せている猫ではハイカロリー輸液を選択することもあります。周術期中(手術後しばらくの間)は、必要に応じて適切な鎮痛薬を使用します。手術を受けた猫が術後食欲不振になることは珍しくありません。が、たいていは一時的に過ぎず、術後の体調の回復と共に食欲も出てきます。手術後72時間くらい経過すると食事を摂ることも可能です。低脂肪の下痢になりにくい食事を選択します。

<結腸が無くなっても大丈夫?>
結腸の主な役割は糞便から過剰な水分を除去することなので、結腸全摘出術を受けた猫は、手術直後はかなり軟便になります。それも1日に数回排便が発生する可能性があります。これが最も一般的な術後の問題です。けれど肛門括約筋はそのままであるため、猫は腸のコントロールを失っているわけではありません。ほとんどの猫は、この段階を経て1か月程度で許容できる軟度の便を形成し始めます。そして2か月くらいでは通常かまたは通常に近い状態の便に戻ります。3か月後には平均して2日に3回くらいの排便を行います。糞便のコントロールの喪失があってもそれは必ず戻ります。 


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しばらく待合室の猫コーナーの
ところに下げておきます。
お手にとって閲覧ができます。
 

<まとめ>
猫の特発性巨大結腸症は、結腸機能障害を特徴とする比較的よくある疾患です。一般的な臨床徴候には、排便障害、食欲不振、体重減少、ときどき嘔吐が含まれ、身体検査では結腸内腔内の非常に硬い糞便物質が触診ですぐに明らかになります。特発性巨大結腸症の診断をする前には、さまざまな検査を実施して素因となる問題を除外する必要があります。食事の変更と下剤、腸の運動促進剤の投与による内科的治療が成功する可能性があります。ただし、薬物療法に反応しなくなった猫には結腸全摘術を考慮しなくてはいけません。

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テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

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