猫のストレス行動について

 猫のストレスのことについて、お話しします。年末のお話の続きになります。

 

私たちはストレスが生じるとよく分かります。お金の心配や健康問題、人間関係の問題など私たちのストレスの原因はたくさんあります。そしてストレスが頭痛や胃痛、高血圧などの健康問題を引き起こすことも知っています。

猫もストレスを感じ、それは猫の健康に有害な問題を起こします。猫の特発性膀胱炎(FIC)をご存知でしょうか。猫の下部尿路疾患のことは知っていらっしゃるかと思います。「下部尿路疾患=尿路結石症=尿路閉塞症」のように思われている節がありますが、特発性膀胱炎は下部尿路疾患の一つではあるけれど、尿石症とは違う病気で、ストレスを原因とする膀胱炎です。近年は下部尿路疾患では尿石症よりも特発性膀胱炎の方が発症件数は多いです。増えてきています。

 

ストレスとは

猫が野生的に暮らしているとき、ストレスは主に生命を脅かす状況にさらされたときに発生します。猫の副腎は心拍数を高め、血圧を上げ、血糖を生成するようにホルモンを分泌して脅威に対応します。副腎皮質ホルモンは猫に危険な状況と戦うか、もしくは素早く逃げるかの準備をさせます。このような状況ではストレスホルモンは生命維持に不可欠なホルモンです。けれど長期的にストレスが続いたとき、このホルモンは身体に有害に働きます。

 

猫のストレスの原因はいろいろ

かわいらしい猫を見ていると、「猫がストレスを感じている」なんて考えられないかもしれませんが、現代の屋内飼育されている猫には慢性的なストレスを引き起こす多くの状況があります。

·         退屈(家族のいない環境で長時間留守番させられています)

·         テリトリー不安(窓際まで屋外の猫が迫ってきています)

·         自宅の他の動物との衝突(同居猫との不仲があるかもしれません)

·         雷雨、花火、音楽などの大きな騒音(家族が楽しんで見ているTVも嫌いかもしれません)

·         いつもの生活の変化

·         家族が(人や動物どちらも)増えること

·         ノミの寄生

·         病気の状態

·         移動(乗り物に乗ること)

·         リフォームや部屋の模様替え

·         食事や食器、水の置かれ方、敷物が変わること

·         動物病院や美容院へ行くこと

これらは多くの猫でストレスを引き起こすことが知られている一般的なものです。このほかのことがストレス源になることもあります。しかしこれらがあったからといって、すぐ翌日に具合が悪くなるようなことはありません。

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猫にストレスがあるときにみられる行動

猫に長時間のストレスがかかると、身体的な病気になってしまうことのほか、困った行動を引き起こすことがあります。よく知られているのは尿の排泄に関わる問題です。尿マーキングに似た「不適切な排泄行為」がそれです。これは特発性膀胱炎とは異なるものです。また、そのほかに皮膚を舐める行為さかんに爪とぎを行うこと布(ウールなど)をちゅうちゅう吸う行為(ときにはそれを食べてしまう)自分の尻尾を追い回す行為(ときにはかじって尻尾を血だらけにしてしまう)背中の皮膚をぴくぴく波打たせる行動など、ちょっと特異な行動をとることがあります。家具の後ろに隠れて出てこないこともあります。皮膚を舐める行為については「心因性皮膚炎」として、過剰な爪とぎは「不適切な爪とぎ」として、背中の皮膚をぴくぴくさせることは「知覚過敏症候群」として、来週以降一つずつお話ししていきます。

·         過度の自己グルーミングは、毛が禿げるほど執拗に繰り返されます。二次的に皮膚に赤い病変ができることも多く見受けられます。(はっきりとした脱毛が分からないまでも「うんちに毛が混じっている」ことや、朝方の吐物に「毛球が入っている」ことでグルーミング過多を知ることもあります。脱毛の前の頻度が増え、グルーミング時間が長いことに注目してもらえるとうれしいです。)

·         家具や壁、ドア、その他のものでしつこく爪研ぎを行います。

·         決められたトイレ外で不適切な排泄(尿のこともあるし便のこともあります)をしたり、壁面に向けてマーキング行為を行います 

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猫のストレスに対処する

猫のストレス関連行動は本質的に破壊的であることが多く、それが自己に向けられた場合は大変痛ましいので、ストレスがかかりそうだと分かっているのであれば、はじめから最小限の影響で済むように対処してやりたいです。

ストレスを誘発しそうな原因に心当たりがあるでしょうか。

新入りの猫が来るのが分かっていたら別の部屋を用意し、いきなり面会させないようにします。スムーズに同居できるようにさせてやるべきです。また来客があることがあらかじめ分かっているような場合にも静かな部屋作りのために準備しておくことがあります。

 

すでに困った行動が始まってしまった時、これらの行動は家庭や品物の被害の点で望ましくないだけでなく、猫がストレスに苦しんでいるという点で回避してやらなければいけません。猫のストレス関連行動は本質的に破壊的であることが多く、それが自己に向けられた場合は大変痛ましいので、ストレス行動の芽は小さいうちに摘み取ってやりたいです。ひどくしないうちに診察にお越しください。私たちは基礎的な身体疾患がないかどうかを確認して、ストレスがもとになっていると考えられた場合は、行動療法やサプリメントなどでの治療をご提案します。場合によっては抗不安薬や抗うつ薬などの薬物療法を併用する必要があるかもしれません。

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薬物療法

ストレスレベルを下げるために抗不安薬が必要になる場合があります。薬物療法は必ず行動療法と併用して行います。薬だけで手っ取り早く治すことはできません。これらの薬を使うことが正しい選択になるかどうかはしっかり話し合って決めることにします。また特殊薬になるので、処方はご家族の方の同意をいただいてからします。そしてこれらの治療薬の効果が出てくるまでには2週間から4週間ほどかかかるので、途中で「治らない」と判断せず継続してください。薬が継続されるときは副作用に注意を払うため、定期的に血液検査を行います。3ヶ月から数ヶ月ほど継続し、効果が得られたら薬の量を減らしていきます。

 

今日のお話はここまでです。

一般的な行動療法と、予防方法について次回お話しします。




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