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猫の心因性脱毛症

猫本来の活動をできなくなっている現代の飼育環境で、猫は日常的にある程度のストレスをためながら生活しています。それで、ほんの少しのプラス要因が加わるとストレス関連性の病気を発症してしまいます。特発性膀胱炎は寒い季節に多い病気ですが、このほかに「病気なんだ!」と気づかれにくい行動学的な病気があります。猫とストレスについてお話をしています。

 猫のストレス行動の一つに「過度のグルーミング」があげられます。度が過ぎたグルーミングは決まった場所を舐め続けて終いには毛が無くなってつるんとした地肌が見えるまでになってしまうことがあります。今日は過剰なグルーミング行動によって発生する「心因性皮膚炎」についておはなしします。「皮膚炎」ではありますが、皮膚そのものに「炎症」が見られることもみられないこともあります。

 

猫の心因性脱毛症というのは

猫は通常、起床時間の525%を毛づくろいに費やすといわれています。(3050%だという先生もいらっしゃるくらいです。何ら明確な目標もないのに、グルーミングの動作が他の行動よりも優先されて行われることがあります。グルーミングは、単に身繕いのための行動ではなく、猫が不安や不満、葛藤などのストレスを感じたときに気分を変えるために行う行動でもあります。何らかの精神的な原因によって猫が身体の特定の一部分(数カ所のこともあります)を過度にグルーミングした結果、本来ならばふさふさした毛に覆われているはずの部分の毛がうすくなっていたり、肌が露出してしまった状態のとき、私たちは「猫の心因性脱毛症」を疑います。

猫の心因性脱毛症は、「知覚過敏症」に移行してしまうことがあります。また、「知覚過敏症」をすでに併発しているようなこともあります。これはさらに複雑な病気です。さらに、犬にもみられる「ウールサッキング」(毛布吸い)(毛織物摂食行動)や「尾追い」(尾かじり)などと並んだ「常同障害」として根幹の病気は同じとする考えがとられています。

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猫の心因性脱毛症の徴候

猫の心因性脱毛症の脱毛は、通常左右対称性に発生する脱毛で、典型的には胴体(わき腹)、お腹、太ももの内側、後ろ足の付け根、おしり(後ろ足の後面)に見られます。ぼんやりと毛が残っていることがほとんどですが、時には明らかに禿げているのが分かります。猫は舐めたり、噛んだりします。それで皮膚自体は正常に見える段階のものから、刺激を受けて赤くなっているもの、ときにはただれて小さな傷のよう(びらんや潰瘍)になったものまであります。

グルーミング過剰のとき、うんちを確認すると、うんちの中身がヘアボールでできていて、それがいつも以上にたくさんできていることに気づかれるかもしれません。また、空腹時の嘔吐(よく「胃液を吐いた」と表現されるのですが、黄色や白い液体または泡状の、またはどろっとした状態の吐物です)の中に、丸まった毛玉が混じっているのを見たり、そうした嘔吐が頻回に起ることを確認することがあるかもしれません。グルーミング過剰ははじめに毛球関連で消化器系に影響が出ることもあります。皮膚に問題が無いと「皮膚炎」にはなりません。「グルーミング過多」の兆候だけです。

猫によっては人が見ている前でグルーミングをしないため、行為そのものに気づかれないことがあります。こういう隠れてグルーミングをすることは「クローゼットの舐め」として知られています。

 

猫の心因性脱毛症の原因

猫が生活の中でストレスを抱えていると過度のグルーミングを引き起こす可能性があります。ストレスというのは不安や不満(こんな風にしたいのだけどできない)、葛藤(できないことを我慢している)により発生します。ほとんどは猫が過ごしている環境によるものです。猫のストレスの項目でもお話ししましたが、次のようなことが考えられます。

·         新しい家、リフォーム、部屋の模様替え(家具の配置変更)

·         家族のスケジュールの変更(家族の入院や勤務形態の変更などで、一緒にいる家族が家にいる時間が変わった)

·         他の動物を含む家族の数の変化

·         同居猫からの攻撃

·         家庭における騒音または激動(改築中とか、常に騒々しい家?)

·         外に新しい動物を見る(野良猫が窓際にやって来て威嚇するなど)

·         退屈または欲求不満(刺激の少ない環境でもストレスになります)

ストレスの原因に心当たりはないかもしれません。

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行動の変化

セルフグルーミングの行動をとると猫はリラックスし、不安は解消されます。これは脳内に脳内麻薬物質(エンドルフィン・幸福ホルモンといいます)が放出され、快い情動が働くためです。それでグルーミング行動は繰り返し行われるようになります(自己強化といいます)。こんな風に時間が経って習慣になった行動は、環境のストレスとは無関係におこります。こうなると単純な「心因性皮膚炎」「舐性皮膚炎」という名称では片付けられないくらい発展した状態の、「常同障害」とか「強迫障害」になります。はっきりした「こころの病気」になるわけです。これは「尾かじり」や「知覚過敏症候群」でよく見られる徴候である「極度の自傷行為」や「自己攻撃」に進行することになります。

 

猫の心因性脱毛症の診断

心因性脱毛症を診断するための特殊な検査はありません。他のどの皮膚病でもないことを確認することで診断されることになります。例を挙げると

·         ノミアレルギー性皮膚炎

·         その他のアレルギー疾患(接触、吸入/アトピー、食物アレルギーなど)

·         ノミやダニ、シラミなどの外部寄生虫

·         細菌感染症や皮膚真菌症

·         皮膚にできた腫瘍

·         過度にグルーミングされた皮膚の痛み

です。

 

これらを鑑別診断するには身体検査といろいろな診断検査が含まれます。

·         顕微鏡下の毛髪検査(毛切れしたものかどうかを見ます)

·         血液検査(他の内臓疾患や代謝性疾患との関連性をみます)

·         皮膚掻爬試験(皮膚を削って破片を顕微鏡で観察します)

·         真菌培養(カビ菌による感染ではないかどうか確認します)

·         ノミの確認と駆除・予防剤の投与

·         アレルギー検査(血液の検査です)

·         除去食試験(低アレルギー性の食品を食べさせて、痒みが減るかどうかを確認します)

·         肛門嚢を調べ、処置をする

·         皮膚生検(病理学的な検査です)

·         潜在的な疼痛源を見つけるためのX線検査(関節痛などを探し出します)

 

診断的に薬を使ったり処方食を試したりすることがあります。これは外部寄生虫や食物アレルギーを原因として排除するために使うものです。原発の皮膚病によって最初は過剰な毛づくろいが始まるのですが、その後習慣的で強迫神経症的なグルーミング行動に変わって、見た目が複雑になっていることもあります。「ストレスだけが原因ではないのかもしれない」というところをきっちり調べ、診断的な治療を行うものです。すべての皮膚病が除外されて「心因性脱毛症」は診断されます。

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心因性脱毛症の治療

心因性脱毛症は、生活の中のストレスを減らすことによって治療されます。これには、行動の変更、つまり猫の遊び時間を増やすこと、刺激的な活動で環境を豊かにして退屈させないことも含まれます。

過度のグルーミング行動を無視することは重要です。特に注意を払うこと(声がけをする=たとえやめさせるためであっても、また叱るのも)は、過剰なグルーミング行動に対してご褒美を与えることになります。時には、飼育や遊びの時間など、他の行動を促し。グルーミングをやめさせるようにします。グルーミングしているときに罰を与えてはいけません。(コラッ!と大きな声を出すとか叩くとかすることです。)不安を増大させるため、結果的に過剰なグルーミング行動を増やしてしまいます。

同居猫とのトラブルが原因になっている場合には、攻撃的な猫から分離することは非常に役に立ちます。また猫が安心して身を隠す場所があることも重要です。

12回くらい、少なくとも15分間は猫と遊ぶのが、有益な戦略になっていることが報告されています。

抗不安薬や抗うつ薬が必要なレベルになっているときには、これらの薬を処方することがあります。これらの薬物は、通常、効果の発現までに4週程度を要します。約12週間、または症状が減るまで投与してもらうことになります。ときにはもっとかかることもあります。効果が見られてからもしばらく投与は続けていただき、ゆっくりと薬を減らしていきます。一部の猫は薬剤を減らすことができず、無期限に必要になることがあります。そういうときは薬による副作用をチェックするために血液検査を実施し、獣医学的な意味で十分な監視をすることになります。抗うつ薬の多くは、広く処方されていますが、ご家族が希望しない場合には使いません。

行動療法、薬物療法のほか、サプリメントやフェロモンなども有効です。

 

どうにも変化が見られないほどに重症化していると判断した場合には、動物行動学の専門家に紹介するかもしれません。

 

 

今日は猫のストレス行動である「過度のグルーミング」と、「心因性脱毛症」についてお話ししました。

 
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テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

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