ノミ・マダニ予防のこと

未だ寒い季節、動物病院は閑散期になっています。学会や講演会のほか、春先の繁忙期に入る前にと気を利かせてくださる企業さんの新薬説明会などが催されます。実際、どの季節にも開催されてはいるのですが、ことに毎週のようにタイトなスケジュールで入ってきます。

この学会やセミナー、説明会で伺ってきたお話は、飼い主さんにも知っていて貰いたいと思うところがあります。開催からのタイムラグはありますが、お話ししていきます。

 IMGP0906.jpg 
<新薬のこと>

まずは犬用のノミ・マダニ内服タイプの駆除/予防薬の説明会でのお話から。この日はこのお薬の開発秘話や、特性など、「開発に協力をしていない立場の」創薬が専門の先生からお話を伺うことができました。日本でも「私はこの企業さんから特別な利益供与を受けていません」と断言してからお話に入られる先生も出てこられました。「公正な立場で評価しますよ」の表明です。

さて、ご紹介して貰ったお薬のことです。これまでにあったノミ・マダニ駆除薬は、皮膚に滴下するタイプのお薬と、②飲んでもらうタイプの2タイプで、後者は犬用、ソフトチュアブルというジャーキーのような柔らかめのお薬でした。今回は②の飲んでもらうタイプで、クッキーのようなタイプになります。これまでのノミ・マダニ予防薬に対して「お薬が好きじゃない、食べなかった」という犬や、「食べたけど痒くなった」「嘔吐してしまった」「下痢になってしまった」犬にはレパートリーが広がった分、助かるかもしれません。有効性や安全性、投薬プランなどのお話は、処方の際にさせていただくことにします。

IMGP0907_2018031516434433e.jpg

<SFTS新情報2018.2> 
さらに、動物のSFTSウィルス感染症に関しての研究の第一人者で有り、かつ多くの臨床例をまとめてこられた感染症がご専門の先生から、これまでの発症事例の経緯や、今現在のウィルス保有動物の調査結果などについて大変興味深い情報を拝聴することができました。 

昨年8月のブログです。SFTSウィルス感染症のことについて。

http://heartah.blog34.fc2.com/blog-entry-978.html

 

さてSFTS、重症熱性血小板減少症候群は人と動物に共通の感染症です。「ダニを媒介して感染動物から人への感染する」つまり、「マダニ動物マダニ人」という感染経路をとると思われていたのが、新しく「マダニイヌ/ネコ人」や「マダニ人」の感染経路をとることができるということが分かってきました。こういうところがこの病気の恐ろしいところです。始めに感染した人から次に感染する人のことを「二次症例」といっていますが、中国での発症例では患者さんの診察を行った「コンサルタント医」、次に治療を行った「集中治療医」、さらに濃厚接触をされた「家族」、そしてご遺体の処理を行われた「納棺師」を巻き込んだものでした。

 

国立感染症研究所のHPを確認してください。

https://www.niid.go.jp/niid/ja/sfts/3143-sfts.html

 感染発生例についてのグラフは昨年末までの集計です。

IMGP0910_20180315164345d53.jpg 
<ダニ麻痺>
西の方で「重症熱性血小板減少症(SFTS)」がじわりじわりと感染を広げている一方で、昨年北海道では「ダニ媒介脳炎」に感染した方の報道がありました。平成29年度の獣医学術学会では、札幌からお越しの先生に「ダニ媒介脳炎」のお話をお伺いすることができました。

北と西でダニ関連の怖い病気があるわけですが、混同されてしまっている患者さんもおられるようです。結論としては「ダニ予防をしておかないと怖い病気があります」ということで一緒なのですが、病気としては全く別のものです。

ダニが媒介するウィルスにより重篤な脳炎から神経麻痺をおこす病気が犬にもあります。犬では「ダニ麻痺」という病名で学んできました。けれどあくまでも海外の病気、日本のダニから犬が神経系の病気になることはないだろうとしているので、神経系の病気を診るときウィルス由来の疾患は普段は頭の奥の引き出しにしまったままになっています。

人では1993年に確定診断された患者さんが国内初で、つい最近の2016年に2例目の、2017年に3例目4例目の患者さんが診断されています。いずれも北海道内の発症です。では北海道以外の地域には発症がないのかというと、東京近郊で1948年に日本脳炎の疑いであった患者さんの残されていた資料から遺伝子解析を行ったところ、ダニ媒介脳炎ウイルスに分類される型が検出されたそうです。また動物を対象にした血清疫学的調査によると、西日本にも近しい型のウィルスがいる可能性が示されているそうです。しかし確定診断のための詳しい検査は特殊なため、全国でも数か所の研究機関でしか行うことができません。もしかすると、これまでの重症報告のあった患者さん以外にも、軽い感染で済んでしまった人や症状が出なかった人など、また重症だったけれど診断には至らなかった人の中にもダニ媒介脳炎の患者さんがいたのかもしれないということでした。

ほかの多くのダニ媒介性疾患と同様、このウィルスも犬に感染しないとも限りません。そして北海道地区だけでなくどこでもその危険があると思います。SFTS以外もダニに感染すると危険な病気があることをお伝えしました。

IMGP0914.jpg 
<おすすめするノミ・マダニ予防>

さて、マダニの感染は明らかに発生件数が増えています。グラフからは月別の発生件数ですが、ピークは
5月ですが、4月から増加しているのが分かります。4月の気温ならまだ大丈夫かと思えばそうでもないのですね。それで、私たち自身を守るためにも「犬のノミ・マダニ予防は4月には始めてもらった方が安心」という結論になりました。

またSFTS症例の届出地域ですが、これまで当院で掲示してきた地図に比べ、こちらも広がりを見せています。

西尾地域でもマダニそのものの感染は増えてきています。バベシアの発生も数年前に一例ほど近くで報告されています。SFTSウィルス感染例はまだありませんが、「じわりじわり」というのがマダニ媒介性感染症の特徴だそうです。すぐ隣の県までかんせんが広がってきているということは、「愛知県は未だ大丈夫」なのではなく「もうじき感染がみられてもおかしくない」状況であることを示しているように思います。そんなわけで、
4月からノミ・マダニ予防を始めていただく」ことのほか、
月に1回、きっちり継続していただくことも大切ですし、
*「ことに西日本方面への里帰りやご旅行の際は予防を忘れないように
お願いしたいと思います。
野生動物の抗体陽性(過去に感染があったことをあらわします)は山梨県や千葉県でもみられていて、こうしたことも「東日本なら安全ということはない」ことを示しています。山梨県や長野県、岐阜県は夏になると気軽にお出かけしたい避暑地でもあるし、わんこと一緒にお出かけしたい所の代表格です。やはり「すぐそこまで危険は迫ってきている」と考えておく方がよいと思います。「ノミ・マダニ予防なしには(お散歩も含めて)お出かけはしない」くらいの気持ちでいた方がいいな、と判断しました。

IMGP0915.jpg 
 <おわりに>
「うちのこを守るために」ワクチン接種やノミ・マダニ予防をするのが普通の考えです。でももう少し広範囲に考えを広げていただきますと、「個々の予防が地域の感染を減少させ、ひいては全体の感染を無くす」ことに繋がるのだということが分かります。「ひとりひとりのご協力で感染撲滅できる日が来る」という公衆衛生的な意識をもってノミ・マダニ予防をしていただけるとありがたいと思います。

 

今日のお話はここまでです。

 
スポンサーサイト

テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

ハート動物病院

Author:ハート動物病院
ハート動物病院です。
〒445-0062
愛知県西尾市丁田町杢左51-3
TEL/0563-57-4111
オフィシャルサイト:http://www.heart-ah.com/

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
ブログランキング
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード