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エキノコックス・ふたたび

愛知県では2014年に阿久比町で捕獲された野犬からエキノコックス症を診断したという獣医師からの届け出を受け(当時も新聞紙上を賑わわせておりました)、その後も引き続き調査がされており、隣接する常滑市、半田市で採取された犬の糞便からも陽性例が検出されていました。

複数の感染例が確認されたことから多胞条虫が定着していると考えられています。

このたび遺伝子検査(PCR法)が導入され、精度の高い検査ができる体制になり、過去の検体を調べ直したところ、3検体でエキノコッカス陽性が判明しました。この調査は犬、キツネ、タヌキで実施されていますが、陽性反応を示したのはそれぞれ阿久比町、南知多町、知多市で捕獲された犬です。今回はこの件が報道されました。

 今週もまた、公衆衛生関連の、人と動物に共通した感染症である「エキノコックス症」についてお話することにします。

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<エキノコックスというのは?>

もともとは北海道のキタキツネにいる寄生虫です。犬やキツネが終宿主ですが、この寄生虫のライフサイクルの中で野ネズミが(豚などの家畜や人も!)中間宿主になります。

成虫の体長は2mmから5mmほどで、身体に数個の節(片節)があります。

中間宿主である人が感染した場合の病状は、終宿主である犬やキツネの病状よりもはるかに重症です。

 

<犬の感染>

自然界では寄生虫のいる野ネズミ(中間宿主)を食べて感染します。虫卵経由の感染はありません。

終宿主であるキツネや犬は、腸の中で虫が育ち、成虫になります。成虫が排泄する卵が糞便と一緒に出てきます。大量感染出ない限り、下痢などの症状は出ることがありません。

犬が感染した場合、犬が排泄する虫卵は人に感染を起こさせます。

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<人への感染>

エキノコックスに感染したキツネや犬の糞便中に虫の卵が排泄され、この虫卵に汚染された食物や水を偶発的に飲み込むと人が感染してしまいます。これには感染地域の野山に入り沢水を飲む、山菜採りを行い無意識に汚染された手指を口にしてしまう(野山から車に戻ってきて手を洗わないでおやつを食べる!)など考えられます。

人は中間宿主にあたり、犬やキツネのように腸内で成虫に育つことはありません。口から入った虫卵は腸の中でふ化して幼虫になり、その後肝臓や肺、脳などに移動して増殖します。袋状になって虫の集合体を形成する様なかたちです。すぐにそれによる症状を出すことはなく、数年から十数年くらい経過してから自覚症状が現れます。発見されるときは重篤な状態になっていることもあります。主な寄生先は肝臓なため、肝臓が腫れて大きくなるとか、お腹が痛むとか黄疸が出るなどの肝機能障害が現れます。診断には画像検査(超音波検査やCT検査など)と免疫血清学的な検査、手術で膨れた部位を切除した後に虫を検出することなどで、検査にしても治療にしてもたやすいことではありません。

犬に寄生した場合とは比べものにならないくらい重症ですし、まるきり別の病気といってもいいくらい性質が異なりますので、人に対しては十分な警戒と予防が大切です。

早期の診断は血清検査です。感染後すぐに抗体価が上がらないこともあるため数回の検査が必要になることもあります。保健所や医療機関でお尋ねください。

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<予防するには?>

野山に出かけたときに、

  沢水を飲まない。

  手をよく洗う。

  採取した山菜は生のまま食べない。

  靴についた泥はよく落とす。

などの対策が有効です。また

  犬を放し飼いにしない。

ことも大切です。

なお、北海道の人たちは決してキタキツネを触ることもないし、餌付けすることもありません。今、知多半島一帯も感染濃度は北海道ほどにはなっているとは思いませんが、一部地域(どこの当たりなのかはわかりません)では間違いなく感染元があると考えられます。野生動物(野犬も含めて、それが幼犬であったとしても)にむやみに触れないことは大切な予防法です。

ご旅行で北海道に出かけられた際は(ほんとにすぐ近くまでキタキツネが寄って来るし、かわいらしさのあまり触れたくなると思いますが、また子連れだとなおさらなのですが)、絶対に餌を与えないでください。

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<犬の駆虫について>

エキノコックスは条虫の仲間です。条虫に効く駆虫薬で退治することができます。23日もあれば完全な駆虫が完了します。毎月のフィラリア予防薬の中に条虫の駆除薬が含まれているものもあります。予防的な投与です。こうすることによって、飼い主への感染の危険性を排除することができるというわけです。

該当する野山に入っていったとか野ネズミを咥えていたなどが確認されたときも予防的な駆除薬の投与ができます。野ネズミを食べてから便の中に虫卵が排泄されるまでは26日以上かかるとされていますから、心配な出来事があってから20日までの間に薬を投与すれば、虫卵は全く排泄されません。

もし、エキノコックスに感染していた場合は、駆虫後の糞便中に虫卵が排泄されるため、糞便の適切な処理が必要です。

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<排泄された虫卵の生存>

感染源となる虫卵が糞便中に排泄されてからどのくらい生きているのでしょうか。エキノコックスの虫卵はさまざまな化学物質に対して抵抗性(消毒をしてもなかなか死なない)がありますが、高温には弱いそうです。北海道立衛生研究所によると、705分、100では1分以内に死滅するそうです。普通20℃25日、10℃90日、4℃128日から256日生存し、最も長い生存期間の記録は室温で730日間、実験室内の水中(4℃)では16ヶ月しても生存しているそうです。北の地で長く生きて行かれるのはそうした特性もあるのでしょうね。

 

<疑わしい犬の排便後消毒>

そのようなわけで、虫卵は熱に弱いので、次の感染に繋げないための犬の糞便処理は、焼却するか、または熱湯で消毒するのが効果的です。処理する糞便を扱うときも手袋を着用、マスクもしてください。

次亜塩素酸ナトリウムでは原液から1/2希釈の高濃度液で卵を殺す効果があるそうです。こちらはちょっと実現が難しい気もします。

野山から帰宅した後の(もしかしたらエキノコックスの虫卵が付着しているかもしれない)泥のついた靴や車のフットシートは熱湯をかけるのが良さそうです。作業していて衣類に付着したかもしれない、というときも熱湯にしばらく浸漬させてから洗濯するのが良さそうです。



*「流行地の飼い主のためのQ&A」を待合室に掲示しておきます。 
 
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