- 2018-06-03 :
- 歯科衛生
歯みがきガムの正しい使い方
今月の掲示板。チャート式でデンタルケアを選べます。
<まずは歯肉を健康にしてから>
いつもお話ししていますように、歯が汚れて茶色く変化してからあわてて対策を取ろうとする飼い主さんが多いのですが、すでにがっちり歯石が付いてからその上をこすってみても歯みがきではなく、歯石磨きになってしまいます。また、歯肉が赤く歯周炎を起こしている状態では歯茎に触れられると痛いので犬はいやがったりかみついたりしてきます。
まずは観察。治療の必要ありならば治療をします。そして健康な歯茎ときれいな歯に戻してから家庭でのケアは始めましょう。
お口が臭うのはお口の中の異常があるせいかも。
まずは診察から始めます。
<治療後のデンタルケア予定>
歯石をキレイにした後、お願いしているのは2週間の服薬で、これによって歯肉の炎症が治まります。赤く腫れていた歯茎がぴったり平らになって色も穏やかなピンク色になります。そしてその後、インターベリーを歯肉に塗って貰います。この頃にはお口のまわりを手で触れたり、お口の中に指が入ってきたりしても痛みがないため、犬は怒らなくなっています。それからこのインターベリーの期間は次にブラッシングしていただくための予備期間でもあり、飼い主さんにも犬にもお口をいじることに慣れて貰うのも目的の一つになっています。この期間を過ぎて、いよいよ本格的な歯ブラシデビューになるわけです。
<どんなときに使うと良いのか>
しかし歯をキレイにしたし、歯茎にも問題は無くなっているのにやっぱりお口に触れられたくない犬もいますし、過去に噛まれたことがある飼い主さんの中には、積極的な歯みがきケアが怖くてできないという方もいらっしゃいます。そのような「歯石除去の後のきれいな歯をキープしたいけど歯みがきはむずかしい」というときに、歯みがきガムは有効だと思います。つまり、ブラッシングが最良の方法だけれど、それができない場合に2番目におすすめの方法です。歯石付着防止効果はあります。(あくまでも補助的な方法であることは記憶にとどめておいてください。)
「歯みがきガムならいつもやっています!」とおっしゃる飼い主さん、多いです。でも、違うのです。市販の歯みがきガム、効果についての検証を行なっているわけでもないけれど、パッケージに「はみがき」の表示だけ付けているようなのもあるわけです。なので、本当に効果があるものを選びました。おすすめガム、オーラベット(緑のガム)とベジデントフレッシュ(茶色のガム)の特徴についてご紹介します。
一番簡単なのはタブレットや歯の処方食です。
デンタルガムによる歯みがきはその次くらい。
どちらのガムも弾力があり、歯に刺さるような感じになりますので、続けていくうちに歯垢が徐々にとれてきます。歯自体にある溝に入り込んだ汚れも取れやすいようです。歯周ポケットの中の歯垢もとれやすいです。これがいわゆる歯みがき効果です。市販のデンタルガムと名打っているものと違って、歯が折れる可能性は極めて低いです。
② 口臭がへる
消臭効果に優れていて口臭が軽減されます。オーラベット(緑のガム)にはデルモピノールという有効成分が入っています。ガムの白い部分です。これは他の歯みがきガムにはないオーラベットだけの特徴がここにあります。噛むと唾液が出て、有効成分が口の中に広がり、口臭予防になるという仕組みです。
ベジデントフレッシュ(茶色のガム)にはエリスリトールやザクロが入っています。これは細菌数を減らしバイオフィルム(歯垢:プラーク)の形成を押える効果があります。そのため口臭も軽減されます。
③ 嗜好性が高い
多くの犬は喜んでかじります。どちらもリピーターの多い人気商品です。
オーラベット(緑のガム)はバニラの香りがします。だから噛んだ後のお口で飼い主さんをペロペロしてきたとき、愛犬のお口からはホットケーキのような匂いがしてきます。
④認定を受けた歯みがきガム
どちらも厳しい認定評価を経た製品です。米国の獣医口腔衛生協議会(歯科専門医のグループ)が推奨している正真正銘のデンタルガムになります。「VOHCAccepted」のマークが付いているのがその印です。デンタルガムとして歯科ケア研究をしているメーカーさんから出ている、もっとも信頼できる歯みがきガムになります。
⑤低アレルギー
ベジデントフレッシュ(茶色のガム)はアレルゲンになりやすい牛肉、乳、小麦不使用。植物由来原料でできていてカロリーも低く抑えてあります。
⑥腸内環境を整える
ベジデントフレッシュ(茶色のガム)はチコリやゴボウにある多糖類や水溶性繊維が含まれていて、腸内の善玉菌を活性化させます。これは腸内フローラを調整して悪臭のガスを除去する作用もあります。
デンタルシートという手もあります。
ガムよりちょっと難易度は高め、歯ブラシほど難しくはありません。
<投与方法・これが大事!>
噛むことにより効果が得られるため、すぐに噛んで飲み込まないようにしてください。飼い主さんが手で持って与えるのが正しい与え方です。歯ブラシの代わりのガムなのですから、これが歯ブラシなんだな、という気持ちで噛ませてください。こうして与えていると飲み込むことはありません。噛みちぎって小さくなってくると、最後の方では食べてしまいますが、きちんと消化されます。万が一、気がつかないところで丸呑みしてしまっても、胃の中で溶けます。けれど丸呑みしてしまっては歯みがきガムとしての意味が無いです。小さくカットして与えるおやつではないし、犬が勝手にかじって遊ぶものでもありません。3分間はしっかりかじらせてください。全部の歯で噛めるようにガムを持つ手で誘導していきます。汚い部分で噛めるようにしたいのであれば、汚れポイントに向けて誘導していってください。
奥歯は歯ブラシもむずかしい場所になりますが、しっかり噛んで貰うと歯周ポケットの方まで歯垢を除去する効果も期待できます。ブラシングのごほうびに使うこともできます。奥歯のブラシングがむずかしいようであれば、歯みがきガムを奥歯で噛むように仕向けていき、歯みがきの仕上げとして使うのも良い方法です。
全部無くなるまでその日のうちに与えるのではなく、毎日3分間噛んでもらいます。
デンタルガム、デンタルシート。その次は歯ブラシです。
<効果が現れるのはちょっと先>
用法通りに使用し、続けていくと歯石予防効果や口臭軽減効果が実感できます。継続して歯科ケアすることが大切です。歯周病予防につながる歯科ケアのつもりで、飽きずに続けてください。もし忙しくて毎日のケアができないような場合でも、間を開けるとしたら3日までです。これは歯垢を形成しないうちの歯科ケアになります。
サンプルや商品、パンフレットをいろいろ置いておきました。
手にとってご覧ください。
がんばるオーナーさんを応援します。
<おしらせ>
当院では6月4日(旧虫歯予防の日)から8月4日(歯が白いの日)まで、歯と歯茎の健康増進をする強化月間にしています。口臭の原因物質である「チオール」の濃度をチェックする検査を無料で実施します。診察後「あなたのおうちのわんこ」に最適な歯科ケアについていっしょに考えていきましょう。無理なケアはおすすめしません。つづきませんから。
歯の健康を気にしていらっしゃる飼い主さん、どうぞお越しください。
なお、「歯ブラシでの歯みがきも難しいけれど、食べれるガムを見せたらそのまま手まで噛んでしまう、怖くて3分間もガムを持っていられない」と、ガムによるデンタルケアも無理!という患者さんにも、別のケア方法もご提案しています。あきらめないでください。