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全身性高血圧症・続き

全身性高血圧症のお話、前回の続きです。



 <高血圧が影響を及ぼす臓器と障害>

高血圧症が継続している(慢性的な高血圧症になっている)と、腎臓や眼、脳(中枢神経系)、心血管系に障害を与えます。障害の中には陰に隠れて、わからない状態のものが多いです。ですから、たいていは気がついたときには後戻りできないようなことになっています。

障害を受ける臓器

高血圧による影響・症状

問題を発生させる

可能性がある血圧値

コメント

腎臓

腎機能低下の進行が早まる

蛋白尿が増す

血圧>160mmHg

原因か結果かがわからない

網膜剥離

眼の中の出血など

血圧>180mmHg

「高血圧性網膜症」

抑うつ状態になる

運動失調をおこす

発作を起こす

血圧>180mmHg

虚血性脳梗塞や

出血性損傷による

心臓

心肥大

不明

 

 IMGP1164.jpg

腎臓が悪いために高血圧になっているのですが、高血圧であることが腎臓病を発症させたり、病気の進行を早めたりすることになります。腎臓病の進行のバロメーターになるのは尿中のタンパクです。

眼は高血圧性網膜症として知られています。収縮期血圧が180mmHg以上でリスクが高まりますが、たいていは「眼がおかしい」と思ったときにはすでに失明しているケースがほとんどです。

高血圧性脳症では、「抑うつ状態」で静かになる(元気がない)か、「前庭疾患」のようにしっかり立っていられないなどの運動失調、けいれん発作などが突然始まります。収縮期血圧が180mmHg以上でリスクが高まります。

高血圧は心臓にも影響を与えます。「左室肥大」といっていますが、この結果流れが悪くなった場合、すでに僧帽弁閉鎖不全症のある犬では僧帽弁逆流を悪化させてしまいます。

 

ボーダーライン未満の血圧は臓器に及ぼす影響は最小限なので、それ以上診断をしていく必要はありませんが、150/95とか160/100あたりになるとやはりそれなりのリスクが出てきますので、血圧を上げる病気が潜んでいないかどうかを見つけることに加え、今後何か症状を出すことはないのか、時間を追って継続的に測定していきます。

IMGP1162.jpg 

<高血圧症の治療>

高血圧症の治療には、心臓病の初期に使われるのと同じ、レニンーアンギオテンシン系を阻害する薬(アンギオテンシン変換酵素阻害薬:ACE-I)が使われます。アンギオテンシン受容体遮断薬(ARB)も使われることがあります。この薬1種類だけで十分にコントロールできないときには別の薬(カルシウムチャンネルブロッカー:CCB)も加えます。

投薬を始めるサインは収縮期血圧が160mmHgを超えてきたとき、というのが多くの先生達の合意するところです。

 

<心臓病でも同じお薬が処方になる>

はじめに処方するのは心疾患で用いられるお薬と同じものです。この時点で心雑音を感じられないと、「心臓病じゃないのに、どうしてこの心臓用の薬を服用するのだろう」ということになるかもしれません。お薬には「慢性心不全用」の薬として表示してありますから。でも、今心雑音が聞こえる、聞こえないということではなく、高血圧症でも同じ薬が処方になるというところを理解しておいてください。そして継続により、腎臓はもちろんのこと、心臓も、眼も、脳も守られていきます。それから高血圧によって左心室肥大は降圧剤によって改善することも知られています。

IMGP1165.jpg 

<おわりに>

心雑音、犬の症状を中心に心臓(腎臓)保護薬の投薬を開始するのでは、身体を守りきれないかもしれないと思うこの頃です。心雑音の有無の判定には、獣医師側の主観によるところもあり、軽度の雑音を聞き逃してしまう心配があるし、犬の症状の有無に関して言えば、飼い主さんの主観や気づき、犬と一緒にいる時間などの制限があるからです。腎臓や心臓を守るための投薬開始サインの一つに血圧測定はあると思います。人と同じように、ある程度の年齢が来たらルーチンに血圧測定をするといいのかなぁと思います。

それから、治療による恩恵を受けているときは好状態が続いています。「もう治ったね」「薬は要らないね」と思ってしまうこともあるかと思います。「すっかりいつもと同じ、元気も食欲もある!」からです。けれど、薬によって、このような状態が得られているだけで、薬による援助がなくなると、身体はまたこの状態を維持するために無理をしなければいけないことになります。病気には「治らないけれどうまくつきあっていくと、進行を遅らせることができる病気」があります。心臓病や腎臓病と同じように高血圧症もそういう「コントロールしていく病気」の一つです。

 
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