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アトピー性皮膚炎の治療の失敗・その4

 アトピー性皮膚炎の治療の失敗例について、1回目は診察前の段階、2回目は診察と内服薬について、3回目に外用療法、いわゆるシャンプーによるスキンケアについてお話ししました。今回は4回目、栄養学的な側面、食事やおやつのことについてお話しします。

 

<7,食事制限?おやつだめ?>

 きちんと診察に来ていただいて、耳などのチェックも欠かさず行なっていて、確実にお薬を投与して貰い、シャンプー治療にも手抜かりが無いにもかかわらず、痒みが十分に改善されないような場合があります。こんなとき、食餌の変更に着手させていただくことがあります。
 
 アトピー性皮膚炎は食物アレルギーとは別の概念ではありますが、臨床的にこの二つをきっちり分けることができません。人、小児の方では「食物アレルギーはアトピー性皮膚炎の原因の一つになっている」という考えと「アトピー性皮膚炎であることが食物アレルギーの原因になっている」いう考えがあるくらい、お互いに作用し合っています。

 「背中側に病変は出ていない」し、「犬のアトピー性皮膚炎の要項にすべて当てはまっている」、教科書のモデルわんこになってもおかしくないくらいのアトピーわんこでも、食物アレルギーの治療である除去食に変えてみると、痒みが改善することがあります。

 アレルギーの理論は、アレルゲンの積み重ねでコップがいっぱいになったときに水がこぼれることが症状の発症に例えられています。(痒みの閾値理論です。)除去食に変更していただくのは痒みの閾値を下回る状態に導く管理を目的としているですが、これらの処方食には、皮膚の構造を作るアミノ酸が入っているし、必須脂肪酸やビタミンEなどが添加されているため、皮膚バリア機能を強化したり皮膚の炎症を軽減させるようにも働いてくれます。

 「お薬代、シャンプー代ときて今度は食事まで?」の声が聞こえてきそうですが、小麦がだめだったり、蕎麦が危険だったりする人と同じように、避けておきたいアレルゲンがあります。食事療法にもご協力いただけると治療の成功率はアップします。

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<除去食を与えているときの注意>

「除去食」は簡単に言ってしまうと「アレルギーを起こさない食事」で、新奇タンパクフードまたは加水分解フードがそれに相当します。この除去食をしばらく(3週間から6週間くらい)与え続け、皮膚の状態が安定するかどうかを確認します。(除去食試験といいます。)食事により改善がある場合、アトピー性皮膚炎に食物アレルギーが強く関与していることが考えられます。

 除去食を与えている間ですが、「食事は処方食だけど、おやつはなくしちゃぁかわいそうだから、今まで通りあげてます」という飼い主さんもおられてびっくりしちゃうのですが、おやつに対しても制限があります。むしろ、ここをしっかり守っていただかないと除去食試験を正しく判断することができませんので、同居犬猫の別の食事を食べてはいないか、家族の中の誰かがこっそりおやつを与えてはいないか、お薬やサプリメント、お薬投与時のごほうびや薬を包む製品の中にアレルゲンが関与したものがふくまれていないかどうかなども細かくピックアップしていただき、該当するものはすべて中止してください。お願いします。

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<除去食試験と食物負荷試験>

 除去食試験で安定が見られたあと、特定の食品由来のアレルゲンを同定するために食物負荷試験を行なうことがあります。食物再暴露試験ともいいます。食物アレルギーの時の検査です。
 方法は、安定した状況が得られたところで1品目ずつ食材を与えてアレルギー反応が出ないかどうかをチェックするものです。ご家庭で判断するのではなく、病院でさせていただきます。食物アレルギーを確実に診断治療することができるのは除去食試験と食物負荷試験の組み合わせですが、1品目ずつ2週間程度の期間をかけてチェックし、また除去食だけに戻して2週間くらいしてから別の食品が大丈夫かどうかを試していく方法になるため、時間がかかります。数か月とか、1年以上に及ぶこともあります。
 1品ずつ与えるのはハウスメイドの食材です。例えばチキンを食べても大丈夫かどうかを確認するのには、家で茹でたささみです。ささみの入ったフードとか、ササミでできたジャーキーではありません。

 「もう、この除去食に変えたら安定してきたから、ずっとこれを続けていくだけで、アレルゲンチェックはしなくてもいいかしら?」というご質問を受けることもあります。総合栄養食になっているのでこのままでも大丈夫です。けれどのちに、アレルギー関連とは別の疾患になって、そちらのために別の処方食に変えた方が良いようなときが来たときのことを考えると、何に対してアレルギー反応を起しているのかを知っておいた方が良いかもしれません。(現在、加水分解フードで腎臓病に対応している、というような処方食も出てきています。)

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 <もとのフードに戻してみた!>

 「除去食で安定が見られたからもとの食事に戻してみた」、というのは簡易方式ですが、再攻撃試験をやってみた、ということになります。たまに、自主的にこの試験を行なってくださる飼い主さんもおられます。

 「戻してみたいな、どうなるかな。」という考えが頭をかすめても、除去食は1~2か月ほど継続してみてください。その後、すっかり良くなったというところで、前のフードに戻して、もし症状が悪化してしまったらその食事(そのフードに含まれる何らかの原料)に対してはアレルギーがあると判断します。ですが、そのフードの中の何に対してアレルギー反応を起こしていたのかは読み取ることができません。このフードではいけなかった、という結果だけわかります。

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<アレルギーの血液検査・アレルゲン特異的IgE検査>

 以前紹介したことがあると思います。アレルゲン特異的IgE検査は、アトピー性皮膚炎の環境中のアレルゲンを調べるのに有用です。またどの食品がアレルゲンになっているのかを判別することができます。どんなアレルゲンに対して身体が反応しやすいのかをみる検査、という方が正しいかもしれません。低レベルでも反応が現れることに対して「正確性に欠ける」と評価する先生もおられるようですが、血液を解析するこの検査は信頼性が高いことに間違いありません。アレルゲンの原因を把握するには優れた検査だと思います。また時間をかけずにアレルゲンを知ることができるのは魅力的です。

 近頃ネットでは「毛を採取してアレルゲンを推測する検査」に人気があるようですが、こちらはこの検査とは全く異なるものですし、おすすめではありません。

 「除去食試験は食事変更だけで済むし、安定したからこのまま続けていく」と判断された場合には、特異的IgE検査を強くおすすめしてはいません。

 こちらの検査を実施した場合は、検査結果に基づいて、最良のフードをご呈示しますので、その中から選んでください。おやつも候補に上がります。ただし口にしても大丈夫だと科学的に報告が出たもの以外を与えるのはいけません。

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<減感作療法>

 人、小児の食物アレルギーには新しい対応がとられるようになってきているようです。これまで「アレルギーの原因となる食物を食べさせないのが最善の治療」とされてきたわけですが、「原因食物をごく少量から少しずつ毎日食べ続ける」取り組みです。もちろん医師の指導の下に行なわれるわけですが、先に「スキンケアの励行」をしてからの取り組みです。このようにして消化管からの免疫寛容が導かれて、これまでアレルゲンと感じ攻撃していた食物にアレルギー反応をしなくなるようです。

 この先、主流になるかもしれない
この方法は私たちが以前から行なってきた「減感作療法、舌下投与」に相当するものと思われます。減感作療法はアレルゲン特異的IgE検査を行なった後、治療に使用するサンプルを作ってもらい本格的な治療に入ります。
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<アトピー性皮膚炎の栄養学的治療>

 栄養学的にアトピー性皮膚炎の治療をする場合、皮膚バリア機能の改善としても、痒みの改善としても不飽和脂肪酸の補充(脂肪酸療法)があげられます。ω3脂肪酸(αリノレイン酸、EPA 、DHA)の投与です。

 マイクロバイオーム(生体内に住む微生物叢で、口腔内、腸内、皮膚常在菌などがあります)とアトピー性皮膚炎との間に密接な関連があるといわれています。特に腸内細菌との関係がいわれていて、プロバイオティクスの投与により改善が見られたり、痒みのステロイド薬の減薬に成功したという報告があります。

 過酸化脂質がアトピー性皮膚炎を悪化させることが指摘されています。そのため抗酸化薬(ビタミンEの補充など)も期待できそうです。

 肥満は皮膚の摩擦を起こしますので、もし肥満傾向にあるわんこの場合はぜひ減量に着手してください。

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<8,番外編>

 まさか、ノミ・マダニ予防薬の投与をお忘れということはありませんよね?時々、投与をされていなくて、こちらで薬浴した際にノミを見つけることがあります。アトピーさんはノミ一匹でも痒みが出ます。忘れないようにお願いします。

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<まとめ>

 「治らないアトピー性皮膚炎」の治療を成功に導く秘訣をまとめます。

  お薬が切れないうちに診察を受けに来てください

  おうちでの様子をしっかり観察し教えてください

  身体全体を見ていきましょう

  痒みを止めるのはプレドニゾロンだけではありません

  スキンケアはとっても重要です

  決め手のシャンプー剤を選びましょう

  食事やおやつにも気を使ってください

  ノミ・マダニのコントロールも忘れずに

 以上です。

 

 4週にわたってアトピー治療の失敗例についてお話ししました。「うちのわんこ」のためにできること、改善点はあったでしょうか。長期戦のアトピー性皮膚炎。治るどころか徐々に悪化していくのが特徴のアトピー性皮膚炎。今年の夏は暑さが長く続きそうです。スキンケアは気を抜けなそうです。これを読んでくださった飼い主さんのわんこが痒みのない日を過ごせますように。   合掌

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