FC2ブログ

レプトスピラ症

 稲刈りが進み、刈り取られて薄茶色になっているところ、これから刈り取りを待つだけになっている金色のところ、刈り取られたところに小さい芽が出て青々としているところ、とパッチワークのように色取られた田圃がきれいです。秋の田、農作業というと「秋疫」(秋やみ)という病気が思い出されます。「秋疫」はレプトスピラ菌による人の感染症です。今日は「レプトスピラ症」についてお話しします。

 kakashi.png

<レプトスピラ症ってどんな病気?>

レプトスピラ症はネズミから伝播された病原細菌による感染症で、人と動物に共通した病気でもあります。

昔は秋の稲刈り時期に農家の人たちの間で流行する病気でした。稲が実るとネズミが田圃に入るため、農作業の間に感染していたのです。昔の農作業は手作業だったため、指先に小さな擦り傷などができやすい状況でしたから、細菌がその傷から体内に侵入しやすかっただろうと思います。

感染源であるレプトスピラ菌は、ほどけたセーターの糸のようにくるくるっとよじれたかたちをしているため「らせん菌」と呼ばれるグループに入っています。

感染主(維持宿主とよびます)はネズミです。病原性のレプトスピラ細菌に感染した後、腎臓の中に菌を持っています(保菌しています)。菌を持ったネズミそのものは症状もなく過ごしています(不顕性感染といいます)が、常に尿中に菌を排泄しているため環境を汚染しています。ネズミの尿から排泄されたレプトスピラ菌はため水や池、川などに長い間生きています。台風や大水になったときに水面の近くに上がってきて、河川流域の雑草地(たいてい湿地になっています)には菌があふれるようになっています。人も犬も、ネズミの尿に汚染された水や土壌に接触すると皮膚(または粘膜)を経由してレプトスピラ菌に感染してしまいます。

人では四類感染症に指定されています。犬などの動物でも(牛や豚にも感染があります)、家畜伝染病予防法により届出が必要な伝染病になっています。

 animal_stand_nezumi_201809261139565ee.png

<近年の感染・発症状況>

近年、農作業の機械化によって農業従事者のレプトスピラ症は激減しています。その代わり、シーカヤックなどのレジャー、川で水泳をするなど水との接触のある人や、屋外の野ネズミではなくイエネズミのいる環境と関わりのある人たち、すなわち解体業や土木工事業、下水道工事業、電気工事業の関係者と、生鮮食料品や調理関係者の感染が増加してきています。

犬も猟犬に多く見られていたのが、イエネズミの影響により屋内飼育犬でも発生が増えてきています。

2004年から2013年の10年間における犬レプトスピラ症の届出は、多い年で150件にも登っています。届け出件数が21件以上の県は6県あり、愛知県は11件から20件の第2グループに入っています。

全国のネズミのレプトスピラ菌保有率を調べたところ、平均で2.5%、名古屋のマンホールでは7%という高い割合で見られていました。

中国や、フィリピン、タイ、インドなどでは現在も日常的に発生しており、特異的な例になりますが、2005年の静岡県での発症例はペット輸入業者が販売用に仕入れた小動物を経由しての発症でした。

沖縄では多数の報告、普通はまれな猫の感染も確認されていて、常在地になっているのではないかと考えられています。

観光地、都市部の発生やインターナショナルな経由での感染が、現在のレプトスピラ症です。

rouken.jpg 

<犬のレプトスピラ症の症状>

レプトスピラ症は血清型といわれるさらに細かな分類があります。血清型によって病気の症状は異なります。

軽いものでは嘔吐や脱水、黄疸で、元気や食欲がなくなります。結膜が赤く充血するのもわかります。総合すると軽度の腎障害や肝障害です。中には知らずに自然治癒していくものもあるようです。

さらに進行していくと、強い黄疸が加わり、舌が溶ける(壊死する)ことによりよだれを出します。尿色は黄疸のためのオレンジ色から出血性の赤い色になり、急性の腎障害、肝障害のレベルがさらに悪くなっています。

重症のものでは、黄疸や血尿の症状に加え、血便も見られます。粘膜や皮膚にも出血の跡を見つけることができます。

甚急性の場合は、はなはだしく進行が早いため、腎障害や肝障害を認めるまでもなく、ショック様症状で死亡してしまいます。

運良く治療に反応したものは、慢性化し保菌動物になります。重篤な症状を脱しても慢性の腎臓病や肝臓病からさまざまな病状を残すこともまれではありません。

 

<レプトスピラ症を診断するとき>

急な発症と黄疸や腎障害を示す血液検査や病検査の所見から、レプトスピラ症を疑うことになります。尿または血液を検査材料にして、特殊な検査機関に依頼して、細菌の遺伝学的な検査をして貰います。数日から1週間以上は検査に時間がかかります。場合によっては死後、確定診断が出るようなこともあります。「死んでしまうのなら確定診断は出なくてもいいかな」と思われるかもしれませんが、人にも感染する病気なので確定診断をして届け出が必要です。今後の対処にも役立つ情報になるため、遺伝子検査は必要な検査です。

 

<犬のレプトスピラ症の治療>

人への感染が心配な感染症ですので、隔離入院とし、補液と抗菌薬の治療を続けます。あとは対症療法です。

感染した血清型にもよりますが、早期の治療開始と犬の体力が生死を分けることになります。

 sick_vaccine.png

<ワクチンで予防する>

レプトスピラ菌は15の血清型が知られています。その中で、Leptospira Canicola(カニコーラ型)、Leptospira Hebdomadis(ヘブドマディス型)、Leptospira Interohaemorragiae(黄疸出血型)は特に検出の多い血清型で,

この3タイプはワクチンで予防が可能です。

アウトドアライフを家族で楽しみたいご家庭の犬、沼地や池にガシガシ入っていくアクティブな犬、もちろん猟犬には、屋外での活動が盛んになる季節の1か月前ころに、毎年強化免疫のためのワクチン接種を行なうようおすすめしています。また、近年ではイエネズミからの感染もあることから、完全屋内飼育の犬にも1年に1回の追加免疫は必要とされています。

この機会にワクチンの見直しをし、もし前回の接種から1年以上が経過している場合には、犬の健康時を見計らってワクチン接種にお越しください。犬と家族の健康を守る大切なワクチンです。


<そのほかの予防できること>

屋外で遊ぶときに、水辺に行かないようにする(たまり水を飲ませない)のはアクティブな愛犬と遊びに行く方は心得ていることと思います。
意外なことですが、日常は普通の生活をしている小型の犬でも危険はあり、集中豪雨で小川の水が氾濫したような場所でのお散歩も避けてください。
屋根裏にネズミが発生!という場合は積極的に対応してください。家族の力ではどうにもならないときには業者にお願いすることも考えてみてください。







スポンサーサイト

テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

ハート動物病院

Author:ハート動物病院
ハート動物病院です。
〒445-0062
愛知県西尾市丁田町杢左51-3
TEL/0563-57-4111
オフィシャルサイト:http://www.heart-ah.com/

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
ブログランキング
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード