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猫の歯の吸収病巣

 118日は「いい歯の日」。犬の歯科ケアについてはお話ししていますが、猫の「歯」についてお話しすることがありませんでした。今日は猫に発生する歯の病気のことをお話しします。

 

<猫の口の中の病気>

猫の口の中の病気としては、「歯肉炎」が一番多いです。歯石と関連する歯肉炎が主です。それからウィルス感染と関連していそうな、または関連が見られない「口内炎」です。のどの奥の方と左右の頬の部分が真っ赤にただれてほんとに痛々しいやつです。その次あたりに「歯が折れた」とか「歯がない」「歯石」などの「歯」に限定されたことでの来院が多く、そのまた次あたりが「新生物」になるかと思います。新生物と言っているのは診察の段階ではまだ「腫瘍」か「歯肉の過形成」かどちらかわからないからです。

猫が口の中をそのまま見せてくれることはまれで、おうちの方もはっきりとわかっていない状況で診察に来られます。犬では「なんかくさい。口が臭い。」という来院理由のほかに「歯が汚い」を認識されていることが多いですが、猫の場合は口の中を確認されてこられることは少ないです。

 pet_ha_byouki_cat.png

<こんな症状で来院されます>

「よだれが多い」

「食べにくそう」

「食べが悪くなった」

「やわらかいのはいいけどドライは食べない」

「ウェットフードを食べない。ドライを丸呑みする」

「口の中がおかしい」

「魚の骨でも刺さっているのか?」

「口のどこかが痛いみたい」

「水を飲んでびっくりしている」(これは痛みによるものです)

など。いずれにしても口の中に違和感を感じているようです。

 season06_a07.png

<最近多いかも。猫の歯の病気>

あらら、こまりましたね。と口を開けて見せてくれる猫さんが半分ちょっと多めくらいでしょうか。それでも一瞬のうちに判断しなくてはいけないくらいの速さで判断です。歯茎が赤い!歯肉が下がってる!(歯は歯肉に隠れて見えない)歯石がついてる!そして、「ごめん、大きく口を開けたら痛かったね。」となり、猫さんには嫌われる原因を作ってしまいました。ほとんどこの観察スピードでは「歯肉炎です」にしか診断がつきません。

猫にも歯石は付くし、それに伴う歯肉炎があって、これから生きていくだろうと思われる年数のことや現在の生活の質(食べにくい、食べるのに痛そうなど)のことを考ええると、「麻酔かけて一回きれいな状態に戻しましょう!」ということになります。ここで残りの年数を気にするのは、「麻酔までかけて得られる利益はどんなものなんだ?」という自問でもあります。(ですので、あまりに高齢になっていると、麻酔下での歯科ケアを勧めるのに悩みます。)

けれど麻酔をかけてしっかり口腔内を調べることができると、見えてくるものがあります。無麻酔の下では抵抗があってほんの一瞬しか見えなかったけれど、麻酔があればじっくり観察できますから。それに歯科器具で歯肉をツンツンしても猫が怒ってすっ飛びあがるなんてこともありません。で、発見するのが「歯の吸収病巣」(tooth resorption)です。そしてこの頃の猫の歯で、なんかこれが多いのです。

 season06_a08.png

<歯の吸収病巣?>

「歯の吸収病巣」です。これが診断名です。

昔はこんなわけのわからない名前じゃなくて「う蝕」(虫歯)と紹介していました。そのあと、これって「う蝕」ではないぞ。歯がそのまま溶けてるし。あの治療をしたのに進行しているし。ということで、「う蝕」は使わなくなりました。

そのあとは「ネックリージョン」(neck lesion)なんて言っていた時もあります。歯の頚部に病変が生じていたからこんな名前になったのかもしれませんが、日本名でいうことがなくて、そのまま「ネックリージョンです」と紹介していました。なんか不親切な病院です。すみません。

で、今は「吸収病巣」と呼ぶようになっていますけど、この先も変わるかもしれません。なんかしっくりしない名前だから。(正確には虫歯じゃないけど虫歯の方がわかりやすいかも。虫歯だって虫が食ったわけじゃないのに虫歯だよ?と思っているのは私だけかもしれませんけど。)

 pet_ha_clean_neko.png

<どんな病変なのか>

初期段階のものは、見た目まさしく「虫歯」様。歯の表面、エナメル質に穴が開いて凹みができています。人の虫がが臼歯の噛み合わせの部分であるのに対し、猫の臼歯はとがっていて穴は歯の側面にできています。歯にできる病巣ですから、穴と言ってもごく小さなものです。ただ、「正しくは虫歯と違います」と言っているのは、人の虫歯が酸によって表面が溶けてしまっているのに対し、猫の歯の吸収病巣では「破歯細胞」によって起こっていることです。

小さな穴の状態のものから、それが深くなって歯が折れてしまったもの、歯茎に埋まっている歯根が骨に変わってきているものなど、目に見える変化からX線検査で確認するものまであります。

 

<原因は何?>

原因は不明です。咬み方(歯にかかる力の入り具合)?、免疫学的な異常があるから?、栄養的なバランス異常?、歯周に発生した炎症から?などいろいろなことが考えられています。

 

<麻酔中どのような治療をするのか>

基本は抜歯。とはいえ、スケーリングで請け負ったお仕事。見つけ次第、何本でも抜きまくるのは気が引けます。抜かなきゃいけなそうなものは抜き、削り取ってギザギザ突起を無くす作業までにとどめるものもあります。抜いた後や、平らにした部分は表面を歯肉で覆って細い糸で縫い合わせておきます。

 hamigaki_cat.png

<そのあとのケア>

すべて抜歯してしまうと完全治癒、ということになります。

でも全部の歯を抜いてしまっているわけではないので残る歯も同じようになってしまうかもしれない。かといって原因がはっきりわかっているわけではないので、何かをするにしても効果はわからない。

それでも、もしできるのであれば、歯磨きです。「歯の吸収病巣」ができている猫には歯石ができないという証明はないし、歯肉の炎症から来ているのか?とも考えられているとすれば、歯肉炎予防、歯磨きはやっておいても無駄にはなりません。どこまで猫さんが協力的になってくれるのかはまた別の問題ですが。

 

 

というところで今回のおはなしはおしまいです。

「歯が痛いの、やだぁ~。」は人も猫も共通です。

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テーマ : 動物病院
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