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重度の歯周病

 一年を振り返ってみて、重症の歯周病や、それによる併発疾患のわんちゃんや猫さんを診察する機会が多かったので、今月、もう一度、待合室に歯周病のことを掲示することにしました。

 

<歯周病は歯が汚れる病気?>

歯周病は「歯が汚くなる病気」ではありません。ひどくなると骨まで溶けて(骨吸収といいます)、骨が折れてしまう病気なのです。さらに、心臓や腎臓、肝臓、免疫系の病気まで呼び起こしてしまいます。とても怖い病気です。

 

<膿が出てくる>

初期は歯肉炎として、歯と接している歯茎の炎症ですが、歯周炎は細菌感染のために、歯が接する面全体としての歯周の炎症になります。歯周病は2つのパターンがあります。辺縁性歯周病は歯と歯茎の間の歯周炎です。歯茎が腫れて赤くなります。

もう一つは根尖性歯周病です。歯の根元に細菌が入り込んで、根っこの部分で炎症を起こします。こちらは目に見えない分、厄介ですし、重症になりやすいです。歯の根元に膿が溜まると、膨らんだ膿は出口を求めて「瘻管」(ろうかん)を作ります。膿の排泄口です。これが口の中に出たものは「内歯瘻」(ないしろう)になります。ほっぺの皮膚から口の外に出たものは「外歯瘻」(がいしろう)といいます。




<鼻に抜ける穴ができる>

上顎の犬歯は鼻の骨まであと1~2mmくらいのところに歯根があります。上顎犬歯の歯根部に問題が起こると、簡単に鼻の骨が溶け、口と通じる穴が開きます。くしゃみを頻発したり、常に鼻水や膿性の鼻汁が出てきます。

 

<骨が溶けて骨折する>

下顎の犬歯から臼歯(奥歯)で起こりやすいのですが、歯根部の炎症はそのまま、下顎の骨を溶かします。徐々に骨が溶け、最後は薄っぺらになった骨が折れてしまいます。


 

<全身への影響>

歯周病の原因は「食べかす」ではありません。細菌の塊です。菌が血管に入り、血液とともに全身を巡り、心臓へ(細菌性心内膜炎)、肝臓へ、腎臓へと回って悪さを起こします。また免疫系の病気を発症することもあります。

 
治療がむずかしい

進行した歯周病は麻酔下でないと処置できません。たいていは高齢で麻酔リスクが高くなっています。すでに心臓病や腎臓病を発症しているために、麻酔をかけることができないようなことも出てきます。
ほとんどの場合は歯を喪失することになります。歯槽骨に問題を起こしている場合、抜歯は必須です。
ごめんなさい。費用もそれなりにかかります。

ちなみに、麻酔をかけずにできる歯科処置の範囲は軽度の歯肉炎までです。それでも、おとなしくしていられない犬では歯の裏側まで処置することはできないので、できても完全ではありません。


 


<ちゃんとサインがあったはず!>

歯周病のサインは次の様なものがあります。

   口臭がある

   食餌中にごはんをこぼす

   唇が腫れている(汚れが付いている)

   頭をよく振る

   歯や顎をカチカチさせる

   口の周りが濡れている

   軟らかいものしか食べない

   ドライフードを噛む音がしない

   片側だけ目やにが付いている、涙が多い

   前足に血や汚れが付いている

   前足で口をこすっている

   口を床にこすりつけている

とにかく、痛いです。それで常にイライラしていたりしますが、わかりにくいサインのため気づかれにくいようです。十分に食べられなくなるため、体重減少がみられることもありますが、これまでの体重と今の体重を知らなければこれもわからないかもしれません。

「わかりにくいですよね。仕方がありません。」と飼い主さんを慰めるつもりはありません。むしろ「ちゃんとした飼い主さんだったら、わかりにくい症状だとしてもわかっています。」になります。「これまでの体重?え?知らん。ん?こんな症状?あったかなぁ?」は見ていなかった印です。十分反省していただきたいです。犬の飼い主さんだけではありません。猫も同じです。猫も歯周病になります。

 


<治療をはじめますか?>

動物の出しているサインに気づき、対処してやらないとだんだん悪化していきます。ただ、主訴が「口のにおい」であり、これに対しては「我慢できる」と言われてしまうと、手が出せません。動物の痛みや不都合さ(噛みにくいとか食べにくいとかいう問題です)に気づいて、これからのために治療をしてやれるかどうか、欲しいのは飼い主さんの「愛」です。

「ニオイのないお口」は、
①細菌の除去
②きれいな環境の維持
によってしか得られません。積極的な治療参加が欲しいところです。



<歯を丈夫にするためのケアはしています>

歯に関しては、歯ブラシがけができない分、ほかのことでしっかり対応しています。と言われることがあります。よくあるのは「硬いガム、牛の蹄(ひずめ)、豚の耳など、硬いものを噛ませていると歯石は付かない、これらを噛ませていれば丈夫な歯ができる」というものです。これは大いなる誤解です。これらは歯を折ったり、欠けらしたりすることはあっても歯石のコントロールにはなりません。残念ながら歯にとっては有害になることの方が多いのです。物理的に歯石が付かないようにと、硬いものを噛ませてくださっていますが、歯石の元は食べかすではなく細菌だからです。

歯科ケア専門のデンタルガムも、正しい物を選び、正しい方法で使ってこそ、有効な効果が得られるということも伝えてきます。つまり、ただ、与えておけば良いというものではありません。


 


<歯石を落としたらそれでおしまい?>

「麻酔をかけてスケーリングをした。」でも、それはこれまでの汚れをリセットしただけのことに過ぎません。①細菌の除去、これだけです。ここから歯肉の炎症を取り、これまでスルーしてきた歯科ケアに向き合い、②このままのきれいな歯をキープする努力が必要です。

デンタルケアは必ずしもブラシングだけではありません。状況に応じていくつもの方法があります。基本はブラシングですが、犬の性格やこれまでの習慣などもあって、すぐに到達できないこともあります。口腔内の悪玉菌をコントロールするサプリメントが利用可能です。また口腔内の洗浄のためにデンタルリンスやスプレーを使うことも有効です。「ブラシングまではできない」という場合でも、「なんとか指で歯肉をこするところまでは行けそうだ。」ということもあるかもしれません。ぜひデンタルジェルを併用して使い、口腔衛生に役立ちててください。こうしてお口に触らせることからはじめ、徐々に歯ブラシでのケアまで持っていく、ここを目標地点に置いて頑張っていただきたいと思います。痛みがなくなればお口を触らせるようになります。頑張ってください。



 

 
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