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fimA検査

 犬の歯周病は細菌感染による病気、というお話をしました。おなじようなデンタル管理をしているのに歯周病がひどい犬とそうでない犬がいる。むしろ、同じように怠っているのに、あまりひどくなっていない犬がいる、といった方が正解かもしれません。この違いを説明するのに、口腔内にいる細菌についてのお話が必要です。

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悪玉歯周病菌のポルフィロモナス・グラエ菌。



<悪性度の高い口腔内細菌がある>

歯周病の原因となる細菌を遺伝子学的に調べたところ、悪性度の強い細菌があることがわかりました。そして怖いことに人の口腔内でもこの細菌は生きていけます。ということは、ひどい歯周病を持つ犬との接触により、人もその悪性度の高い細菌に感染する危険性を持ちます。これまで、「犬の歯周病」は犬の病気であって、わたしたちは「くさい」という被害はあるけれどそれ以上の悪影響は受けないという見方でした。しかし、人にも共通する細菌であることが判明すると、それは公衆衛生的な側面からも、犬の歯周病はしっかり治療しなければいけないということになります。

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歯周病がないグループ、歯肉炎のグループ、歯周病のグループ
に分けてポルフィロモナス菌の有無とC型を比べてみました。




<ポルフィロモナス菌>

歯周病の原因菌はいろいろあります。中でも人ではポルフィロモナス・ジンジバリス菌が問題になっています。犬や猫では同じポルフィロモナス菌(共通のDNAタイプを持っている)のうちポルフィロモナス・グラエ菌が問題になっています。2012年、山崎先生たちの研究で、ポルフィロモナス・グラエ菌が犬と一緒に生活している家族の16%から検出されたと報告されました。

なお、2015年の白井先生たちの報告によると、ポルフィロモナス菌は僧帽弁閉鎖不全症の病態進行にも関わりがあることが示されています。今後研究がさらに進むと、他の全身性疾患との関連も明らかになるかもしれません。

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ポルフィロモナス・グラエ菌の保有率も、
C型菌の保有割合も意外と高い。



<遺伝子学的検査>

ポルフィロモナス・グラエ菌は細菌の周りに線毛(せんもう)という多数のけばけばを持っています。細菌同士が集まるのにも便利ですし、動物の細胞に付着してそこに居着き、侵入するのにしっかりした足場になり、細菌が増殖するのに役立つ仕組みです。

ポルフィロモナス・グラエ菌をくわしく調べていくと、この線毛を構成している遺伝子の一部、fimAには3つの遺伝子型(ABC)があることがわかりました。そして、そのうちのC型は進行性の歯周病と関連し、特に悪性度が強いこともわかってきました。

2016年荒井先生たちの調査で、434頭の犬のうち78.6%に当たる341頭がポルフィロモナス・グラエ菌を持っていました。そしてタイプCを単独、またはAやBと共有して持つ個体はこのうちの52.1%、なんと半数以上の犬は悪性のタイプCの菌を持っています。

2017年の白畑先生の報告によれば、ポルフィロモナス・グラエ菌のタイプCを保有する犬では10歳で半数ちかくの歯が抜け落ちるという調査結果が出ています。

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悪性のリスクが高いのは。。。



<歯周病を重症化させる要素>

2016年の荒井先生たちの報告のつづきにもなりますが、歯周病の重症度が高いことと関連性のあったのは

    9歳以上

    ポルフィロモナス・グラエ菌の存在

    未去勢のオス犬

    パピヨンという犬種

    ミニチュアダックスという犬種

という結果が出ていました。

個人的に思っていた結果と重なる部分も多くみられました。

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検査を受けてみませんか。



<うちのこは大丈夫かしら>

こうしてこの菌の悪いことをお話ししてくると、うちのこにもポルフィロモナス・グラエ菌が、そして悪性のタイプCがあるかどうかが気になってきたかと思います。

はい。調べられます。

細いブラシで犬の歯垢をぬぐいます。ブラシを検査機関に送り、結果が返ってくるのを待ちます。約2週間で結果がわかります。

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綿棒よりもずーっと細いブラシで歯垢を採取します。


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こんなかんじ。


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はい。とれました。



<結果がわかったら>

まずは物理的な除菌。つまり、スケーリングなどの歯科処置を行ないます。それから抗菌薬も使用してしっかり菌を落とします。その後はいつもお願いしているデンタルケアの流れに従って、日々、お家で頑張っていただきます。6か月毎には検診に来院いただき、その際に必要と思われる処置や投薬(またはサプリメントの投与)を行ないます。

歯科処置は生涯に1度行なえばそれでよいというものではありません。そこそこキレイであっても日常のケアのおかげなわけですし、うわっ!に変わっている時は十分反省すべきおサボりがあった印です。必要な処置をまた行ない、再びお手入れを頑張る、この繰り返しです。

でも、まるっきり歯科衛生を滞っていたら、口腔内細菌は増殖し、全身の組織に細菌をまき散らし、心臓を始め他の組織にも影響を与える結果になるはず。面倒なデンタルケアかもしれませんが、やればやっただけの(目に見えないこともあると思いますが)結果はあります。愛犬の健康に、そしてあなた自身の健康のために、これからも頑張ってください。

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結果が出たら。スケーリングして除菌。抗菌薬で治療。
その後はおうちのデンタルケアと定期検診です。




今日はfimAの検査についてお話ししました。健康な歯で長生きできますように。

 
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