FC2ブログ

猫のハンドリング訓練

 「猫を病院に連れてくるのが大変」というお話しは実によく聞きます。まずお家でキャリーに入れるまでに大格闘があるそうです。キャリーを見たとたんに逃げる猫や、家族のただならぬ気配に異変を感じ既に前日から物陰に隠れて出てこない猫もいるようです。この状態の猫を無理矢理キャリーに押し込め、それから延々と猫の嫌いなことばかりが発生しています。猫は移動中の車の音も嫌いですし、病院に着いてから知らない人や動物に遭ったり、聞き慣れない音を耳にしたり、嗅いだことのない匂いを感じたりなど、猫は診察前にすでに多くのストレスがかかっています。中には「静かにしなさい!」と大声で叱ってくれたり、「このくらい我慢しなさい!」と頭を叩いたりなどしてくれるので、いよいよ診察が始まります、という段には猫のご機嫌悪化は最高潮になっています。
そんなにキャリーがキライでも、キャリーに入れてきて貰わないと、表で猫が車から脱走しちゃったら一大事です!

car_jiko_neko.png  
<こんな論文>
 
「猫のキャリートレーニングは動物病院受診ストレスを軽減する」という論文があります。昨年出されたものです。6週間のうちに28回キャリーに入れて車移動をした猫(トレーニング群)と何もしなかった猫(コントロール群)に分けて、診療所を訪問したときの猫の様子を観察した研究です。その結果、28回のトレーニングの前後で、キャリートレーニング群は何もしなかった猫(コントロール群)に比べて、車中のストレス指数が有意に減少していました。そしてごほうびを探す時間、口を舐める回数や姿勢を変える回数が増え、座っている時間も増えました。こうした診療前のストレス軽減効果は診察にも影響はあり、身体検査に手間取らないため検査時間が短縮されたそうです。

Carrier training cats reduces stress on transport to a veterinary practice
Lydia Pratsch, et,al
Applied Animal Behaviour Science , 204 , p64-74 , 2018

animal_cat_kowai.png  
<おねがいしたいこと>
さて、前回はキャリーケース・トレーニングについてお話ししました。
キャリーを異質な物と認識しないようにするため、またキャリーに入るのが恐怖にならないよう普段からならしておくためでした。飼い主さんが猫をキャリーに入れるまでの格闘を無くすことに主眼があります。

この実験では、その先のハンドリングも、トレーニングすると猫のストレス軽減になることを示してくれました。目的もなく猫を車に乗せるというのはなかなかできないことかもしれませんが、診療開始までの状況が改善されると猫にとっても私たちにとっても有益になります。今回は第3段階の訓練もお願いしたいと思います。

<ハンドリング・トレーニング>

キャリーケース・トレーニングの次の段階は「車に乗せる」ハンドリングトレーニングです。車に乗せるには一旦外に出るわけですが、ここで室内との温度差や音の変化が出てきます。キャリーを外から布で覆ってもらうと、外が見えなくなるし温度差が減り、また音を少しでも遮蔽する効果があり、猫に不安を与えません。

はじめは「キャリーで屋外に行く」だけで帰ってきてください。
次に「キャリーで外に出て」「車に乗せる」になります。車のドアを開けて車内に入れてドアを閉める、そしたらまた家に戻ってきます。
次の段階では「エンジンをかける」を行ないます。発車せず、車のエンジン音を聞かせるだけで戻ってきてください。
さいごは「短距離ドライブする」段階です。急発進、急ブレーキ、急停車どれも禁忌です。安全運転で家の周りくらいをぐるっと一周してきてください。少しずつ病院までの距離に慣らしてきてください。

車の乗り方から始める、まるで自動車学校の生徒になったような気分になるかもしれません。猫にとって車に乗ることは日常の出来事ではありません。どれだけうまくならしていただけるかはこの後の診察にも影響が出てきます。やさしいトレーニングをお願いします。くれぐれも、途中でコンビニによってお買い物、その間は車内に放置、ということがないようにしてください。

pet_doctor_juui.png 

<三方にとっていいことばかり>
このように猫の来院ストレスがなくなると、飼い主さんは猫を動物病院に連れてくることが「かわいそうだ」と思わなくなって、ちょっとした異常を見つけた段階で診察に来てくれるでしょう。定期的なワクチン接種や定期健康診断にも来院しやすくなるに違いありません。猫の病気を予防し、早期発見し、早期治療するのに欠かせない「来院」という第一段階がクリアーされます。

猫にストレスがなくなると、より日常的な猫を診察することになります。さらに、身体検査で体中を触られることにも、採血や採尿をされることも抵抗なく受け入れてくれるでしょう。猫が緊張のあまりウィークポイントをマスクして状態がよくわからない、というようなことがなくなりますから臨床徴候の見誤りや見逃しを無くすことができます。また血圧や血糖値も安定していれば「本当の値」として見ることができます。状態を判断するのに好都合です。

猫の方でも、ここではこの手順に従って触られる、この体勢を取って静かにしていればそれ以上のことは起こらないと学習するので、余計な恐怖を感じることもありません。不快度数減少です。そして順化してくれると診察や検査もスムーズに行きますから、不快持続時間も減少になります。猫のストレスは間違いなく減ることになります。

cat_koubakozuwari_gray.png 

<おわりに>

猫がキャリーに入っていたら扉を閉めて、ちょこっと部屋を移動してみるくらいの段階から始め、車でぐるっと回ってどこにも寄らず帰宅するなどの訓練。これは猫が忘れないくらいの間隔、週に1回くらいの頻度で行なうといいと思います。

今日は猫のハンドリング・トレーニングについてお話ししました。
猫の通院はどうして必要なのか、ことに高齢になった猫の場合については以前お話ししました。

「猫が病院嫌いなので連れていきたくないです」のお話しはこちら。

http://heartah.blog34.fc2.com/blog-category-102.html




スポンサーサイト

テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

ハート動物病院

Author:ハート動物病院
ハート動物病院です。
〒445-0062
愛知県西尾市丁田町杢左51-3
TEL/0563-57-4111
オフィシャルサイト:http://www.heart-ah.com/

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
ブログランキング
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード