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慢性腎臓病に使われるお薬


連日の猛暑で、犬も猫も食欲減退。活動性も低下。元気なく動きが悪いこともあります。水の飲み方に変化はありませんか。もどすようなことはありませんか。「水?減っているかな?」「あれれ?嘔吐した?」どうでしょうか。こんな質問にも「しょうが無いよね、暑いもの」「たまには吐くよね、猫だもの」で済まされてしまうと、慢性疾患の早期発見も、急性悪化も見逃してしまいます。

今日のお話はハートニュース8月号とかぶります。慢性腎臓病のことです。何度も繰り返すお話しで、新しいことが盛り込まれていないかもしれませんが、わかっていらっしゃることでも、また思い出して貰うために、しつこくお話しします。

 

<診断された日が始まりの日>

猫の腎臓病はたとえ治療をしていても進行していく病気です。「慢性腎臓病」だと診断したとき、これはゴールではなくてこれからの長い道のりのスタートです。

 ひとことで「腎臓病」といっても、初期のもの、中間のもの、進行した後期の段階のものまでさまざまで、大筋の治療は同じであっても細かな個々の状態(高血圧があるとか貧血があるとかなど)によって、対応は違ってきます。こうした治療は犬でも同様です。

 1みず

<いろいろな治療がある>

腎臓病というと、「毎日皮下点滴をしなくてはいけない」というイメージを抱かれる患者さんがいらっしゃいます。以前に飼っていた猫がそういう治療だったから、もしくはお知り合いの方の猫がそのような治療を受けていたからです。けれど、病名は同じでも病期(病気のステージ)も病態も違うので、選択する治療法は異なります。慢性腎臓病のときに使う主な治療(治療薬)を挙げてみます。

1. 水分を補う

初期は自分自身で水を飲むことに任せます。欲しいときに水がない!という事態は避けるようにします。給水の方法はどんなものでもかまいません。「カルキ臭くない水」「動く水」が好きなようです。いろいろ気づかってあげてください。

2.   高血圧の管理をする

腎臓病だとわかったら血圧測定を行ないます。そこで、もし血圧が高く、標的臓器に障害を与えそうなレベルであったとしたら、高血圧をコントロールする薬を服用してもらいます。

3. 蛋白尿の管理をする

  腎臓病の発見では、血圧測定のほか、尿検査も行ないます。そこで尿タンパクが一定の数値を超えるほどになっていれば、蛋白尿を管理する薬も処方になります。蛋白尿はそれ自体が腎臓を悪化させるし、たくさん尿タンパクが漏れ出て、体蛋白が減少してしまう(ネフローゼ症候群)になるのを避けなければいけません。

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4. リン吸着薬を使う

  病期が進んでいくと、リン制限食を食べていてもリンの腎臓からの排泄が滞りがちになります。そうなったら薬です。リン吸着薬は食べ物の中に含まれるリンを薬でとらえて体内に吸収させないようにし、糞便とともに体外に排泄させるようにするお薬です。薬のほかにサプリメントもあります。

5. アシドーシスの管理をする

  腎臓で窒素代謝物がうまく排泄されないと、身体の中に酸が溜まってきて、身体は酸性に傾いてしまいます。けだるい感じになり、生活の質を低下させます。身体を中性にもどすためアルカリ薬が必要になります。

6. 貧血の管理をする

  腎臓は赤血球を作るホルモンを産生していますが、腎臓病になるとこのホルモンが十分に作れなくなり、赤血球の数も減りますし、作れても寿命の短い赤血球になってしまいます。ホルモン補充の注射や、赤血球を作る材料でもある鉄剤を補って貧血を回避するようにします。

4リン 

7.
 嘔吐させない、食欲を出させる

  窒素代謝物の排泄が滞ってくると、気持ち悪くなって吐いたり、そうでなくても食欲が湧いてきません。窒素系の毒物を排泄させる治療だけでは追いつかないこともありますので、対症療法として嘔吐を止め食欲が出るお薬を使います。

8. 腎臓病用療法食を使う

  腎臓病のための食事は窒素系代謝物が最小量になるように設計されています。(必須アミノ酸が不足しないように配慮された良質な蛋白質で構成されています。)また低リン、低ナトリウムで、少量でも十分なカロリーが得られるように脂質はやや高めです。そのほか、不足しがちなビタミン類も補充されています。フードはドライタイプ、ウエットタイプがあります。また、胃瘻チューブを設置した動物のためのリキッドタイプもあります。

一般食に比べて長生きしたというデータが出ています。

7おうと

9. 活性炭製剤を使う

  「毒素の吸着薬」と言われているのが、活性炭製剤です。食事で生まれる窒素代謝産物を腸内で吸着し、体内に吸収されるのを防ぎます。毒素だけを吸着し、糞便として体外に排泄させる仕組みです。活性炭の表面の小さな穴に栄養素やお薬の成分は吸着しないようになっていますが、念のため一般の薬とは時間をずらして投与していただいています。

10. 抗菌薬を使う

  慢性腎臓病では尿路の細菌感染率が高く、膀胱から逆行性に腎臓まで細菌が上っていくと、さらに腎臓機能を悪化させてしまいます。それで定期的に尿検査を行ない、感染が見つかれば抗菌薬で細菌をやっつけます。

11. 腸管に作用するサプリメントを使う

  窒素代謝物を栄養にする腸内細菌を増やし、尿毒症性毒素を食べて処理して貰います。腸内細菌が住みやすいようにプレバイオティクスのほかシンバイオティクスになっている製剤もあるし、リン吸着能を併せ持たせるように複数の物質を組み合わせたサプリメントもあります。

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12.
 プロスタサイクリン製剤を使う

  比較的新しい薬です。血管内皮細胞保護作用、血管拡張作用、炎症性サイトカイン産生抑制作用、抗血小板作用を通して、腎臓を保護し、腎臓病が進行したり悪化したりするのを防ぎます。

13. ω3脂肪酸系のサプリメントを与える

  ω(オメガ)3脂肪酸には抗高脂血症作用や抗炎症作用、抗血小板凝集作用など一部プロスタサイクリン製剤の作用と共通する作用があります。

14. 電解質バランスを調整する

  電解質の中でも、とくにカリウムは心臓の動きに直接関わってくるミネラルです。高すぎても低すぎても不整脈を発生させ、心停止を起こさせます。低いときはサプリメントで補い、高いときは静脈内点滴で徐々に低下させます。

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<細かな治療はみんなそれぞれ>

思いつくままに並べました。もしかするとこれ以外の薬を使う(使っている)ことがあるかもしれません。このたくさんの治療(薬)が慢性腎臓病のときに、いつも、すべて使われるというものではありません。その時々で必要になるものを選んで使います。病期の進行によって、追加で薬が増えることもあるし、それまでは使っていた薬を使わなくなることもあります。また個体によっても違いますので、お隣さんの猫が同じ慢性腎臓病だったとしても、うちの猫ちゃんと違う薬を使っているということもあります。「フードくらいは一緒だろう」と思われるかもしれませんが、病期によっては、また治療の段階によってはおすすめしないこともあります。100頭の慢性腎臓病の猫が居れば100通りの治療があります

 

<やっぱり検診が大切>

飼い主さんがわかる変化は、食事の量や準備した水の減り具合、活動性などで、これらは腎臓病に特化した情報ではありません。猫の身体を知るために必要なのは定期検診です。(定期検診は健康診断と少し違います。)定期検診は病期が進行していないか、合併症を併発してはいないか、もう少し薬を増やして身体を補助した方が良くはないだろうかなど、いろいろ評価し次に備えるのに有効です。健康診断が広い範囲のチェックを行なうのに対し、検診は腎臓関連にターゲットを絞って行なうチェック体制ですので、的を絞って効率的に検査を行なうことができます。

近頃注目している検査に「シスタチンC」という項目があります。予後の判定にも利用できそうです。健康診断ではあまり出てこない、腎臓に特化した検査を行なうのも検診(健診と検診、ちがうのです)ならではです。

慢性腎臓病であっても、早期に発見でき、すぐに治療をはじめていれば、数年の単位で猫の生活の質を高いまま、生活していくことが可能で、予後は良好です。かつてはできなかった治療が今できるようになっていることを鑑みると、長生きすることは大切です。

「猫が嫌がる」とか、「検査は猫にとってストレスがかかる」とか、マイナス思考はやめ、定期的に病院に猫を連れてくることで、猫を慣れさせる方向に努力をしてみてはいかがでしょうか。

 

 

今日のお話はこれでおしまいです。


先日「皮下点滴だけおいくらですか」というお問い合わせがありました。返答に困ってしまいました。
二次病院で診断され日常の治療だけをご希望される場合は、
最近の検査データと次回診察日まで必要な治療内容等の診療情報提供書とともにご来院ください。担当の先生とタッグを組んで最良の治療体勢が取れるようにしたいと思います。専門医さんとチームを組んでの仕事、大歓迎です。

8月の掲示板は、慢性腎臓病について。「好んで食べてくれるフードがなかなか見つからない」こともあるかもしれません。腎臓病用療法食について陳列しておきます。さらに、「できることがいろいろあるのね」と思っていただけるように、治療薬やサプリメントなども一緒にご紹介してあります。待ち時間等にご覧ください。なお、治療に関するご質問もお気軽にどうぞ。

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テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

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